(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)が、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤を含有することを特徴とする請求項1の透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
前記脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の配合量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、1〜30重量部であることを特徴とする請求項1または2記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
前記鉄または錫を活性中心とする触媒(C)の配合量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、を0.002〜0.5重量部であることを特徴とする請求項4記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルム。
請求項1〜7のいずれかに記載の透明導電性フィルム用キャリアフィルムと、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムに積層された透明導電性フィルムを有する積層体であって、
前記透明導電性フィルムの少なくとも片方の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.透明導電性フィルム用キャリアフィルム
以下、本発明の実施の形態について、
図1を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は、
図1の実施形態に限定されるものではない。
【0030】
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルム20は、支持体4の少なくとも片面に粘着剤層3を有し、前記粘着剤層3の前記支持体と接触する面と反対側に粘着面Aを有する。なお、前記粘着面Aとは、
図1(a)に示すように、透明導電性フィルムが機能層付き透明導電性フィルム10である場合には、前記機能層2と接触する面であり、
図1(b)に示すように、透明導電性フィルム1が機能層を有さない場合には、透明導電性フィルムを構成する支持体(基材)1b表面(支持体1bの透明導電層1aが存在しない側)と接触する面である。
【0031】
(1)粘着剤層
本発明における粘着剤層は、ガラス転移温度が−50℃以下であり、かつ所定の組成のモノマー成分を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー(A)、および脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)、を含む粘着剤組成物から形成されたものである。
【0032】
<(メタ)アクリル系ポリマー(A)>
(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、モノマー成分全量に対して、炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートを59.5〜91重量%、水酸基含有モノマーを8.5〜40重量%、カルボキシル基含有モノマーを0.001〜0.5重量%、および、その他共重合可能なモノマーを0〜10重量%含有するモノマー成分を重合して得られるが、(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度(Tg)が−50℃以下になるように調整される。(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は、モノマー成分の組成比を適宜変えることにより、前記範囲内に調整することができる。(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度は、ジッピングの発生を抑制する点から、−55℃以下であるのが好ましく、さらには−60℃以下がより好ましく、さらには−65℃以下が好ましい。一方、ガラス転移温度が、低すぎる場合には、凝集力が得られず粘着力が高くなり過ぎたり、糊残りが生じる場合があるため、ガラス転移温度は−100℃以上であるのが好ましい。
【0033】
前記炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)の主モノマー成分である。前記アルキル基の炭素数は4〜14であるのが好ましく、さらには6〜14、さらには6〜9であるのが、(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度を−50℃以下に調整するうえで好ましい。前記炭素数2〜14であるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート(BA)、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート(2EHA)、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらを一種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でもn−ブチル(メタ)アクリレート(BA)や2−エチルへキシル(メタ)アクリレート(2EHA)が好ましく、特に、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート(2EHA)が好ましい。
【0034】
前記炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートの含有量は、モノマー成分中、59.5〜91重量%であり、さらには65〜91重量%、さらには70〜90重量%、さらには70〜85重量%であることが好ましい。前記炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合が59.5重量%未満であると、後述する水酸基含有モノマーやその他の共重合可能なモノマーの含有量が増大し、(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移温度が高くなりジッピングしやすくなる傾向がある。一方、前記炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートの含有割合が91重量%を超える場合には、相対的にポリマー中の架橋点が少なく耐熱性に劣るため好ましくない。
【0035】
また、前記炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートは、特に、粘着剤層に軽剥離が要求される場合は、前記炭素数6〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、前記炭素数6〜14のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートの含有量は前記炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレートの全量に対して、50重量%以上であるのが好ましく、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは80重量%以上であり、さらに好ましく90重量%以上である。
【0036】
前記水酸基含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)と反応可能である水酸基を含有する。水酸基含有モノマーの具体例としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0037】
また水酸基含有モノマーとしては、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;などがあげられる。
【0038】
これらの水酸基含有モノマーのなかでも、その重合性や、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)との反応性の点から2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特に4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。これら水酸基含有モノマーは単独で用いてもよいし、組み合わせてもよい
【0039】
前記水酸基含有モノマーの含有量は、モノマー成分中、8.5〜40重量%であり、8.5〜35重量%であることが好ましく、10〜30重量%であることがよりより好ましく、11〜25重量%であることがさらに好ましく、16〜25重量%であることが最も好ましい。前記水酸基含有モノマーの含有割合を8.5重量%以上とすることは、水酸基含有モノマーの含有割合を確保して、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)との架橋形成により、ジッピングの発生を抑制する点で好ましい。特に、粘着剤層に軽剥離が要求される場合は、11重量%以上であることが好ましい。水酸基含有モノマーの含有量が8.5重量%未満の場合には、ポリマー中の架橋点が少なく耐熱性に劣るため好ましくない。
【0040】
前記カルボキシル基含有モノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ、カルボキシル基を含有する。カルボキシル基含有モノマーは、架橋反応をより効率的に行うことができ、また被着体表面と相互作用することにより粘着力を向上させられる点から用いることができる。カルボキシル基を含有するモノマーの具体例としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などがあげられる。これらのカルボキシル基含有モノマーのなかでも、その重合性や、凝集性、価格、汎用性の点からアクリル酸が好ましい。
【0041】
前記カルボキシル基含有モノマーの含有量は、モノマー成分中、0.001〜0.5重量%であり、0.005〜0.4重量%であることが好ましく、0.0075〜0.3重量%であることがよりより好ましく、0.01〜0.2重量%であることがさらに好ましく、0.01〜0.1重量%であることが最も好ましい。前記カルボキシル基含有モノマーの含有割合を0.001重量%以上とすることは、貼りあわせて加熱した後に一定以上の粘着力となってハガレの問題を防ぐという点から好ましい。カルボキシル基含有モノマーの含有量が0.5重量%を超える場合にはポットライフが短くなるため好ましくない。
【0042】
前記モノマー成分には、炭素数が2〜14のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基含有モノマー及びカルボキシル基含有モノマーの他に、共重合可能なモノマーを含有することができる。前記共重合可能なモノマーは、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有する重合性モノマーであり、1種類以上の重合性モノマーを含むことができる。前記その他の共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル系ポリマー(A)のガラス転移点を−50℃以下になるものを適宜選択して用いる。その他の共重合可能なモノマーは単独で用いても良いし組み合わせて用いても良いが、前記その他の重合性モノマーの配合量としては、モノマー成分中0〜10重量%であり、0〜9重量%、さらには0〜8重量%、さらには0〜7重量%、さらには0〜6重量%、さらには0〜5重量%が好ましい。
【0043】
前記その他の重合性モノマーとしては、例えば、炭素数が1のアルキル(メタ)アクリレートであるメチル(メタ)アクリレートや、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマー等、架橋化基点として働く官能基を有するモノマー成分を適宜用いることができる。これらのモノマー成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
前記酸無水物基含有モノマーとしては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などがあげられる。
【0045】
前記スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などがあげられる。
【0046】
前記リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、メタクリル酸2−(ホスホノオキシ)エチル、メタクリル酸3−クロロ−2−(ホスホノオキシ)プロピルなどがあげられる。
【0047】
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリルなどがあげられる。
【0048】
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどがあげられる。
【0049】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレンなどがあげられる。
【0050】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどがあげられる。
【0051】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0052】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0053】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0054】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、前記モノマー成分を重合することにより得られるものであり、その重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合でき、作業性等の観点から、溶液重合がより好ましい。また、得られるポリマーは、ホモポリマーやランダムコポリマー、ブロックコポリマーなどいずれでもよい。
【0055】
本発明に用いられる(メタ)アクリル系ポリマー(A)は、重量平均分子量が30万〜500万が好ましく、より好ましくは40万〜200万、特に好ましくは50万〜100万である。重量平均分子量が30万より小さい場合は、被着体である(機能層付き)透明導電性フィルムへの濡れ性の向上により、剥離時の粘着力が大きくなるため、剥離工程(再剥離)での被着体損傷の原因になることがあり、また、粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、重量平均分子量が500万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し、被着体である(機能層付き)透明導電性フィルムへの濡れが不十分となり、被着体と透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0056】
<脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)>
本発明では、イソシアネート系架橋剤のなかでも、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)を用いる。脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)との組み合わせにおいて用いられる。これらを含む粘着剤組成物から形成された粘着剤層により、エージングにおける環境(例えば、温度や湿度環境)が変化した場合においても適度の粘着力を維持することができる。当該粘着剤層は、エージング後に、貼り合され積層体とした状態で加熱環境下においた場合にも、適度の粘着力を維持することができる。
【0057】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0058】
また、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)は、上記ジイソシアネートの多量体(2量体、3量体、5量体など)、ウレタン変性体、ウレア変性体、ビウレット変性体、アルファネート変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0059】
脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の市販品としては、例えば、「コロネートHL」「コロネートHX」「コロネートHK」[以上、日本ポリウレタン工業社製]などが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
なお、架橋剤としては、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)とともに、他のイソシアネート系架橋剤を用いることができる。イソシアネート系架橋剤はイソシアネート基を少なくとも2つ有する化合物であり、他のイソシアネート系架橋剤としては、たとえば、一般にウレタン化反応に用いられる公知の脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが用いられる。脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートについても、前記同様の多量体、変性体を用いることができる。但し、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのみを用いた場合には、エージングにおける環境(例えば、温度や湿度環境)が変化した場合において適度の粘着力を維持することが難しい。
【0061】
脂環族イソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0062】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソソアネート、2,6−トリレンジイソソアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0063】
脂環族イソシアネート、芳香族ジイソシアネートの市販品としては、例えば、商品名「ミリオネートMT」「ミリオネートMTL」「ミリオネートMR−200」「ミリオネートMR−400」「コロネートL」[以上、日本ポリウレタン工業社製];商品名「タケネートD−110N」「タケネートD−120N」「タケネートD−140N」「タケネートD−160N」「タケネートD−165N」「タケネートD−170HN」「タケネートD−178N」「タケネート500」「タケネート600」[以上、三井化学社製];などが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0064】
本発明において、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、さらには3〜25重量部、さらには6〜20重量部であることが好ましく、11〜20重量部であることが好ましく、16〜20重量部であることが最も好ましい。脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の含有量を1重量部以上とすることは、(メタ)アクリル系ポリマー(A)が有する水酸基との反応により、粘着剤層の架橋形成を十分に行い、凝集力を向上させて、ジッピングの発生を抑制する点で好ましい。また、凝集力により、耐熱性が得られ、また糊残りを低減できる点でも好ましい。一方、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の含有量を30重量部以下とすることで、架橋が進み過ぎて凝集力が大きくなりすぎないようにして、糊面凹凸の発生を抑制する点で好ましい。また、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)は含有量を1重量部以上とすることで、被着体である(機能層付き)透明導電性フィルムから本発明のキャリアフィルムを剥離する際に、剥離速度が遅い場合であっても、速い場合であっても適切な接着力を発現することができ、剥離性に優れるため、好ましい。
【0065】
本発明の粘着剤組成物は、前記脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)のほか、必要に応じその他の架橋剤(脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤以外の他のイソシアネート系架橋剤を含む)を含んでいても良い。その他の架橋剤としては、例えばエポキシ系架橋剤、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、及び金属キレート化合物等が用いられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。但し、
脂肪族イソシアネート系架橋剤(B)以外のエポキシ系架橋剤等を単独で用いたとしても、ジッピングの発生を十分に抑制することはできない。
【0066】
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名:TETRAD−X、三菱瓦斯化学(株)製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名:TETRAD−C、三菱瓦斯化学(株)製)などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0067】
前記メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン等があげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU(相互薬工(株)製)、商品名TAZM(相互薬工(株)製)、商品名TAZO(相互薬工(株)製)等があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0068】
金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、チタン、ニッケル、ジルコニウムなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、アセチルアセトンなどがあげられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0069】
これら脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)以外の架橋剤を併用する場合、その使用量は本発明の効果を損なわなければ特に限定されないが、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)との総量が、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、1〜30重量部であり、かつ、架橋剤全量における、脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の割合が、50重量%以上、さらには70重量%以上、さらには90重量%以上の範囲で用いることが好ましい。
【0070】
(鉄または錫を活性中心とする触媒(C))
本発明の粘着剤組成物は、鉄または錫を活性中心とする触媒(C)(以下、単に触媒(C)と称する場合がある)を含むことができる。触媒(C)は、イソシアネート系架橋剤(脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B))に対する触媒としてジッピングを抑えるうえで有効である。特に、鉄触媒は、少ない添加量であっても前記架橋速度を速めることができ、粘着剤層を固くして、糊面凹凸の発生についても抑制することができる。なお、触媒(C)は、少ない添加量では架橋速度が遅く糊面凹凸の発生を十分に抑制することはできない。一方、錫系の触媒は添加量を多くすると粘着剤組成物のポットライフが短くなり生産性に劣る。触媒(C)としては、鉄を活性中心とする触媒(以下、触媒(C1)と称する場合がある)が好ましい。
【0071】
鉄触媒(C1)としては、鉄キレート化合物を好適に用いることができ、たとえば一般式Fe(X)(Y)(Z)として表わすことができる。鉄キレート化合物は(X)(Y)(Z)の組み合わせにより、Fe(X)
3、Fe(X)
2(Y)、Fe(X)(Y)
2、Fe(X)(Y)(Z)のいずれかで表される。鉄キレート化合物Fe(X)(Y)(Z)において(X)(Y)(Z)はそれぞれFeに対する配位子であって、例えば、X、YまたはZがβ−ジケトンの場合、β−ジケトンとして、アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、5−メチル−ヘキサン−2,4−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタンー3,5−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、ノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、1−フェニル−ブタン−1,3−ジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、アスコルビン酸等があげられる。
【0072】
X、YまたはZがβ−ケトエステルの場合、β−ケトエステルとして、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−tert−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸−n−プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸−n−ブチル、プロピオニル酢酸−sec−ブチル、プロピオニル酢酸−tert−ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等があげられる。
【0073】
本発明においては鉄キレート化合物以外の鉄触媒を用いることもでき、たとえば鉄とアルコキシ基、ハロゲン原子、アシルオキシ基との化合物を用いることもできる。鉄とアルコキシ基との化合物の場合、アルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシル
オキシ基、フェノキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ベンジルオキシ基、1−ベンジルナフチルオキシ基等があげられる。
【0074】
鉄とハロゲン原子との化合物の場合、ハロゲン原子として、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等があげられる。
【0075】
鉄とアシルオキシ基との化合物の場合、アシルオキシ基として、2−エチルヘキシル酸、オクチル酸、ナフテン酸、樹脂酸(アビエチン酸、ネオアビエチン酸、d−ピマル酸、イソ−d−ピマル酸、ポドカルプ酸、グルコン酸、フマル酸、クエン酸、アスパラギン酸、α−ケトグルタミン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリシンやヒスチジン等のアミノ酸等を主成分とする脂肪族系有機酸や安息香酸、ケイ皮酸、p−オキシケイ皮酸等を主成分とする芳香族脂肪酸)等があげられる。
【0076】
本発明においては、これら鉄触媒(C1)のうち、反応性、硬化性の点でβ−ジケトンを配位子として持つ鉄キレート化合物が好ましく、特にトリス(アセチルアセトナート)鉄を用いることが好ましい。これら鉄触媒(C1)は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
なお、錫を活性中心とする触媒(C)としては、例えば、オクタン酸錫、オクチル酸錫、ブタン酸錫、ナフテン酸錫、カプリル酸錫、オレイン酸錫等の2価の有機錫化合物;ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジオレエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジフェニル錫ジアセテート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応物等の4価の有機錫化合物;ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、錫系キレート化合物、等が挙げられる。
【0078】
本発明において、前記触媒(C)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、0.002〜0.5重量部が好ましく、0.003〜0.3重量部であることが好ましく、0.004〜0.2重量部であることがより好ましい。前記触媒(C)の含有量を、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、0.002重量部以上とすることは、粘着剤層の架橋速度を速めることで粘着剤層を速く固くして、糊面凹凸の発生を抑制する点で好ましい。前記触媒(C)が少ない場合は、硬化性が不十分で作製した直後の粘着剤層の粘着力が大きくなってしまい、粘着剤層を剥がす際に糊残りを生じやすくなる場合があり、また経時での粘着力の変化が大きくなる場合がある。一方、前記触媒(C)の含有量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、0.5重量部を超えると、後述する触媒(C)の失活を防止するために必要とするケトーエノール互変異性を起こす化合物(D)を使用する場合に、必要な含有量が増え、
粘着剤層中に化合物(D)が残渣として残ってしまい、経時での粘着力の変化が大きくなる場合がある。
【0079】
本発明において前記触媒(C)は、当該触媒(C)の上記機能を有効に発揮するには、
脂肪族イソシアネート系架橋剤(B)の含有量に応じてその配合量を調整することが好ましい。すなわち脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)の配合量(100重量部)に対し前記触媒(C)を0.05〜12.5重量部で配合することが好ましく、0.075〜7.5重量部となる量で配合することがより好ましい。
【0080】
(ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D))
本発明の粘着剤組成物は、ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)(以下、ケト−エノール互変異性化合物(D)と称する場合がある)を含むことができる。カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系ポリマーを用いると、前記触媒(C)の機能を低下させ、架橋反応を速やかに完了させることができない場合がある。ケト−エノール互変異性化合物(D)は、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)を形成するモノマー成分が、カルボキシル基含有モノマーに対して好適に機能する。
【0081】
ケト−エノール互変異性化合物(D)とは、ケト(ケトン、アルデヒド)とエノールの間の互変異性(化1参照)を起こす化合物のことであり、前記触媒(C)に対しキレート化剤として作用し、カルボキシル基による触媒機能の失活を防止する化合物である。すなわち、前記触媒(C)は、カルボキシル基が存在するとそのカルボキシル基が前記触媒(C)の化学構造に変化を及ぼすことで触媒機能が低下するが、ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)が存在すると、カルボキシル基よりもケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)が前記触媒(C)近傍に優先的に配位することで、前記触媒(C)の化学構造の変化をブロックすることによりその失活が防止されると考えられる。
【化1】
(R
1,R
2,R
3は水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基等の置換基であって、分子内にヘテロ原子やハロゲン原子を含んでいてもよい)
【0082】
ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)としては、たとえばアセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、プロピオニル酢酸メチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸−n−プロピル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸−n−ブチル、プロピオニル酢酸−sec−ブチル、プロピオニル酢酸−tert−ブチル、アセト酢酸ベンジル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル等のβ−ケトエステル類;
アセチルアセトン、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、5−メチル−ヘキサン−2,4−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、6−メチルヘプタン−2,4−ジオン、2,6−ジメチルヘプタンー3,5−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、ノナン−4,6−ジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタン−3,5−ジオン、トリデカン−6,8−ジオン、1−フェニル−ブタン−1,3−ジオン、ヘキサフルオロアセチルアセトン、アスコルビン酸等のβ−ジケトン類;
無水酢酸等の酸無水物;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、メチルフェニルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等をあげることが出来る。これらの化合物の中でも、カルボキシル基による触媒機能の失活を防止する効果が高いβ−ジケトン類を用いることが好ましく、その中でもアセチルアセトンがより好ましい。
【0083】
ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)の含有量は、前記触媒(C)に対するケト−エノール互変異性化合物(D)の重量比(D/C)が3〜70となるよう含有し、10〜70となるよう含有することが好ましく、20〜60となるよう含有することがより好ましく、40〜55となるよう含有することが更に好ましい。ケト−エノール互変異性化合物(D)と前記触媒(C)の含有量比が70を超えると、前記触媒(C)に対して過剰にケト−エノール互変異性化合物(D)が含まれた状態となり、ケト−エノール互変異性化合物(D)が配合液中の脂肪族ポリイソシアネート系架橋剤(B)と副反応を起こすため、硬化時に水酸基と反応できるイソシアネート基が減少し、十分な硬化性を得ることができなくなる。一方、ケト−エノール互変異性化合物(D)と鉄触媒(C)の含有量比が3未満であると、前記触媒(C)に対して過小にケト−エノール互変異性化合物(D)が含まれた状態となり、カルボキシル基による触媒機能の失活を防止することができず、硬化が不十分となる。
【0084】
ケト−エノール互変異性を起こす化合物(D)は、前記触媒(C)に対するケト−エノール互変異性化合物(D)の重量比(D/C)が3〜70となるよう含有されればよいが、その場合、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、0.15〜35重量部配合されることが好ましく、0.2〜20重量部含有されることがより好ましい。ケト−エノール互変異性化合物(D)の含有量が、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、35重量部を超えると、粘着剤層中に化合物(D)が残渣として残ってしまい、経時での粘着力の変化が大きくなる場合がある。一方、ケト−エノール互変異性化合物(D)の含有量が、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、0.15重量部未満では、カルボキシル基による触媒機能の失活を防止することができず、硬化が不十分となる場合がある。
【0085】
また、本発明の粘着剤組成物には、前記(メタ)アクリル系ポリマー(A)の他に、放射線反応性不飽和結合を2個以上有す多官能モノマーを配合することができる。多官能モノマーは(メタ)アクリル系ポリマー(A)を調製する際に、モノマー成分として用いることができる。かかる場合には、放射線などを照射することにより(メタ)アクリル系ポリマー(A)を架橋させる。一分子中に放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとしては、たとえば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基などの放射線の照射で架橋処理(硬化)することができる1種または2種以上の放射線反応性
不飽和結合を2個以上有す多官能モノマーがあげられる。また、前記多官能モノマーとしては、一般的には放射線反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
前記多官能モノマーの具体例としては、たとえば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどあげられる。
【0087】
前記多官能モノマーの配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部(固形分)に対し、30重量部以下が好ましく、さらには1〜30重量部であることが好ましく、2〜25重量部であることがより好ましい。
【0088】
放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線などがあげられるが、制御性及び取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200〜400nmの紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプなどの適宜光源を用いて照射することができる。なお、放射線として紫外線を用いる場合には粘着剤組成物に光重合開始剤を配合する。
【0089】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
【0090】
光ラジカル重合開始剤として、たとえば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステルなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0091】
光カチオン重合開始剤として、たとえば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。光重合開始剤は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、通常0.1〜10重量部配合し、0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0092】
さらに、アミン類などの
光重合開始助剤を併用することも可能である。前記光
重合開始助剤としては、たとえば、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
光重合開始助剤は、(メタ)アクリル系ポリマー(A)100重量部に対し、0.05〜10重量部配合するのが好ましく、0.1〜7重量部の範囲で配合するのがより好ましい。
【0093】
さらに、本発明に用いられる粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜配合することができる。
【0094】
本発明において用いられる粘着剤層は、以上のような粘着剤組成物から形成されるものである。また、本発明の(機能層付き)透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、かかる粘着剤層を支持体(基材、基材層)上に形成してなるものである。その際、(メタ)アクリル系ポリマーの架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を支持体等に転写することも可能である。
【0095】
支持体(基材、又は基材層ともいう。)上に、粘着剤層を形成する方法は、特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物を支持体に塗布(たとえば、固形分としては、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。)し、重合溶剤等を乾燥除去して粘着剤層を支持体上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を支持体上に塗布して、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを作製する際には、支持体上に均一に塗布できるよう、粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0096】
また、前記粘着剤組成物の塗布方法としては、粘着テープ等の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法などがあげられる。
【0097】
支持体に塗布した粘着剤組成物を乾燥する際の乾燥条件は、粘着剤組成物の組成、濃度、組成物中の溶媒の種類等によって適宜決定できるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、80〜200℃で10秒〜30分程度で乾燥することができる。
【0098】
また、上述のように任意成分とする光重合開始剤を配合した場合には、支持体(基材、基材層)の片面または両面に塗工した後、光照射することにより粘着剤層を得ることができる。通常は、波長300〜400nmにおける照度が1〜200mW/cm
2である紫外線を、光量400〜4000mJ/cm
2程度照射して光重合させることにより粘着剤層が得られる。
【0099】
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の厚みは、5〜50μmが好ましく、より好ましくは10〜30μmである。前記範囲内であると、密着性と再剥離性のバランスに優れ、好ましい態様となる。本発明に用いられる支持体(基材層)の少なくとも片面に、上記粘着剤層を塗布等して形成し、フィルム状やシート状、テープ状などの形態としたものである。
【0100】
(2)支持体
本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムを構成する支持体(基材)(
図1中の4)として、特に制限されないが、例えば、紙などの紙系支持体;布、不織布、ネットなどの繊維系支持体(その原料としては、特に制限されず、例えば、マニラ麻、レーヨン、ポリエステル、パルプ繊維などを適宜選択することができる);金属箔、金属板などの金属系支持体;プラスチックのフィルムやシートなどのプラスチック系支持体;ゴムシートなどのゴム系支持体;発泡シートなどの発泡体や、これらの積層体(例えば、プラスチック系支持体と他の支持体との積層体や、プラスチックフィルム(又はシート)同士の積層体など)等の適宜な薄葉体を用いることができる。
【0101】
前記プラスチックのフィルムやシートにおける素材としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂;環状オレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);酢酸ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS);ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);芳香族ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。これらの素材は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも特に、前記ポリエステル系樹脂は、強靭性、加工性、透明性等を有するため、これを透明導電性フィルム用のキャリアフィルムに使用することにより、作業性・検査性が向上することとなり、より好ましい態様となる。
【0102】
前記ポリエステル系樹脂としては、シート状やフィルム状等に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート
などが挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は単独(ホモポリマー)で使用してもよく、また2種以上を混合・重合(コポリマー等)して使用してもよい。特に、本発明においては、透明導電性フィルム用キャリアフィルムとして用いるため、支持体として、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。ポリエチレンテレフタレートを用いることにより、強靭性、加工性、透明性に優れた透明導電性フィルム用キャリアフィルムとなり、作業性が向上し、好ましい態様となる。
【0103】
前記支持体の厚みは、25〜300μmが一般的に用いられるが、75〜200μmが好ましく、より好ましくは80〜140μmであり、特に好ましくは90〜130μmである。前記範囲内であると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを、(機能層付き)透明導電性フィルムに貼付して使用することにより、コシがなく、撓みやすい前記透明導電性フィルムの形状を保持することができ、加工工程や搬送工程等において、シワやキズなどの不具合の発生を防止でき、有用である。
【0104】
また、前記支持体には、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型及び防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。特に静電防止処理を行う際には、支持体と粘着剤層の間に静電防止層を設けることが好ましい。
【0105】
なお、粘着剤層と支持体間の密着性を向上させるため、支持体の表面にはコロナ処理などを行ってもよい。また、支持体には背面処理を行ってもよい。
【0106】
本発明の(機能層付き)透明導電性フィルム用キャリアフィルムは、必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤表面にシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系または脂肪酸アミド系などの離型剤処理されたセパレータを貼り合わせることが可能である。セパレータを構成する基材としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0107】
また、前記セパレータ用の支持体には、必要に応じて、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理、塗布型、練り込み型、蒸着型などの静電防止処理をすることもできる。特に、静電防止処理を行う場合には、支持体と離型剤の間に静電防止処理層を設けることが好ましい。
【0108】
2.(機能層付き)透明導電性フィルム
透明導電性フィルム(薄層基材)1は、
図1に示すように、透明導電層1aと支持体1bを有するフィルムを挙げることができる。
【0109】
支持体1bとしては、樹脂フィルムや、ガラスなどからなる基材(例えば、シート状やフィルム状、板状の基材(部材)など)などが挙げられ、特に、樹脂フィルムをあげることができる。支持体1bの厚さは、特に限定されないが、10〜200μm程度が好ましく、15〜150μm程度がより好ましい。
【0110】
前記樹脂フィルムの材料としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチック材料があげられる。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状オレフィン系樹脂及びポリエーテルスルホン系樹脂である。
【0111】
また、前記支持体1bには、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電層1a等の前記支持体1bに対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電層1aを設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0112】
前記透明導電層1aの構成材料としては特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物や、金属ナノワイヤー(例えば、銀ナノワイヤー)、金属メッシュ等が用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズなどが好ましく用いられ、ITOが特に好ましく用いられる。ITOとしては、酸化インジウム80〜99重量%及び酸化スズ1〜20重量%を含有することが好ましい。
【0113】
前記透明導電層1aの厚みは特に制限されないが、10〜300nmであることがより好ましく、15〜100nmであることがさらに好ましい。
【0114】
前記透明導電層1aの形成方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。
【0115】
また、透明導電層1aと支持体1bとの間に、必要に応じて、アンダーコート層、オリゴマー防止層等を設けることができる。
【0116】
また、前記透明導電層1aを有する透明導電性フィルム1は、光学デバイス用基材(光学部材)として用いることができる。光学デバイス用基材としては、光学的特性を有する基材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなど)、入力装置(タッチパネル等)等の機器を構成する基材(部材)又はこれらの機器に用いられる基材(部材)が挙げられる。これらの光学デバイス用基材は近年の薄膜化の傾向に伴い、コシがなくなり、加工工程や搬送工程等において、撓みや形状の変形を生じ易かった。本発明の透明導電性フィルム用キャリアフィルムを貼付して使用することにより、形状を保持することができ、不具合の発生を抑制でき、好ましい態様となる。
【0117】
前記透明導電性フィルムの透明導電層1aを設けていない側の面には、機能層2を設けることができる。
【0118】
前記機能層としては、例えば、視認性の向上を目的とした防眩処理(AG)層や反射防止(AR)層を設けることができる。防眩処理層の構成材料としては特に限定されず、例えば電離放射線硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、熱可塑性樹脂等を用いることができる。防眩処理層の厚みは0.1〜30μmが好ましい。反射防止層としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等が用いられる。反射防止層は複数層を設けることができる。
【0119】
また機能層としては、ハードコート(HC)層を設けることができる。ハードコート層の形成材料としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層の厚さとしては、0.1〜30μmが好ましい。厚さを0.1μm以上とすることが、硬度を付与するうえで好ましい。また、前記ハードコート層上に、前記防眩処理層や反射防止層やアンチブロッキング層を設けることができる。また、防眩機能、反射防止機能、アンチブロッキング機能、オリゴマー防止機能を有するハードコート層を用いることができる。
【0120】
前記機能層付き透明導電性フィルム(機能層を含む)の厚みとしては、210μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。前記範囲内の透明導電性フィルム(被着体)に対して、本発明の(機能層付き)透明導電性フィルム用キャリアフィルムを使用することにより、透明導電性フィルムが非常に薄い場合でもその形状を保持することができ、シワやキズ等の不具合の発生を抑制でき、好ましい態様となる。
【0121】
本発明において使用される前記粘着剤層の機能層に対する粘着力(常温:25℃、
図1中のA面に対する粘着力)としては、エージングにおける環境(例えば、温度や湿度環境)が変化した場合、透明導電性フィルムに貼りあわせて加熱した後に0.3〜3.5N/50mmであることが好ましく、0.3〜2.5N/50mmであることがより好ましく、0.3〜1.0N/50mmであることがさらに好ましい。前記範囲内であると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを透明導電性フィルムから剥離する際に、前記透明導電性フィルムの形状が、変形等を生じず、好ましい態様となる。また、特に、粘着力が3.0N/50mmを超えると、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを透明導電性フィルムから剥離する際に、前記透明導電性フィルムの形状が変形等を生じてしまう傾向があり、好ましくない。
【0122】
また、本発明において使用される前記粘着剤層の機能層に対する粘着力としては、透明導電性フィルムに貼りあわせて加熱した前後において、粘着力の差が0.5N/50mm以下であることが耐熱性の観点から好ましい。粘着力の差が0.5N/50mm以上の場合、加熱前後の透明導電性フィルムへの密着の度合いが大きく変化し、透明導電性フィルムの表面状態へ影響を及ぼすため好ましくない。
【0123】
また、本発明において使用される前記粘着剤層の機能層に対する粘着力としては、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを加温下でエージングする場合と、加湿下でエージングする場合で大きく変化しないことが好ましい。特に加湿下で粘着力が低下する場合、架橋剤が水分により自己重合を起こして硬化し、(メタ)アクリル系ポリマーとの反応に供されない様態となるため、好ましくない。加温下のエージングと加湿下のエージングでの粘着力の差は、透明導電性フィルムに貼りあわせ、加熱した後において0.2N/50mm以内であることが好ましい。
【0124】
3.積層体
また、本発明は、透明導電性フィルム用キャリアフィルムと、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムに積層された透明導電性フィルムを有する積層体であって、
前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムが本明細書に記載された透明導電性フィルム用キャリアフィルムであり、
前記透明導電性フィルムは透明導電層及び支持体を有し、
前記支持体の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体に関する。
【0125】
さらに、本発明は、透明導電性フィルム用キャリアフィルムと、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムに積層された透明導電性フィルムを有する積層体であって、
前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムが本明細書に記載された透明導電性フィルム用キャリアフィルムであり、
前記透明導電性フィルムは透明導電層及び支持体を有し、さらに前記支持体の前記透明導電層と接触する面とは反対側の表面に機能層を有しており、
前記機能層の前記支持体と接触する面とは反対側の表面に、前記透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の粘着面が貼り合わされていることを特徴とする積層体に関する。
【0126】
本発明の積層体に用いられる透明導電性フィルム用キャリアフィルム、透明導電性フィルムについては、前述のものを挙げることができる。
【実施例】
【0127】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。配合内容については、表1及び表2に示し、評価結果については、表2に示す。
【0128】
[実施例1]
<アクリル系ポリマー(A)の調整>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つロフラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90.98重量%、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)9.00重量%、およびアクリル酸(AA)0.02重量%のモノマー成分100重量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部、酢酸エチル205重量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を63℃付近に保って約4時間重合反応を行い、(メタ)アクリル系ポリマー(A1)溶液(約35重量%)を調製した。前記(メタ)アクリル系ポリマー(A1)の重量平均分子量は65万であり、Tgは−67.6℃であった。
【0129】
<粘着剤溶液の調整>
上記(メタ)アクリル系ポリマー(A1)溶液(約35重量%)を酢酸エチルで29重量%に希釈し、この溶液の(メタ)アクリル系ポリマー100重量部(固形分)に対して、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製,商品名「コロネートHX」)12重量部、鉄触媒としてトリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製,商品名「ナーセム第二鉄」)0.015重量部、ケト−エノール互変異性を起こす化合物としてアセチルアセトン0.69重量部を加えて、25℃付近に保って約1分間混合撹拌を行い、(メタ)アクリル系粘着剤組成物(1)を調製した。
【0130】
<透明導電性フィルム用キャリアフィルムの作製>
上記(メタ)アクリル系粘着剤組成物(1)を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基材(厚さ125μm、支持体)の片面に塗布し、150℃で90秒間加熱して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。次いで、前記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したPET剥離ライナー(厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合せて、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを作製した。なお、使用時には、前記剥離ライナーは除去して使用した。
【0131】
[実施例2〜10、比較例1〜4]
表1及び表2に示すように、(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分や、粘着剤組成物を構成する架橋剤、触媒、ケト−エノール互変異性化合物の種類または配合量を変更した以外は、実施例1と同様の方法にて、透明導電性フィルム用キャリアフィルムを作製した。
【0132】
<(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定>
作製したポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグ
ラフィー)により測定した。
【0133】
装置:東ソー社製、HLC−8220GPC
カラム:
サンプルカラム;東ソー社製、TSKguardcolumn Super HZ−H
(1本)+TSKgel Super HZM−H(2本)
リファレンスカラム;東ソー社製、TSKgel Super H−RC(1本)
流量:0.6ml/min
注入量:10μl
カラム温度:40℃
溶離液:THF
注入試料濃度:0.2重量%
検出器:示差屈折計
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算により算出した。
【0134】
<(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度(Tg)(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0135】
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn(−)/(Tgn+273)]
(式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの重量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):−70℃
ブチルアクリレート(BA):−55℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA):−32℃
アクリル酸:106℃
メチルメタリレート(MMA):105℃
なお、文献値として「アクリル樹脂の合成・設計と新用途開発」(中央経営開発センター出版部発行)を参照した。
【0136】
実施例および比較例で得られた透明導電性フィルム用キャリアフィルムについて下記評価を行った。
【0137】
<粘着力測定>
得られた透明導電性フィルム用キャリアフィルム(PET剥離ライナー付)を、
(1)50℃で24時間:加熱エージング、
(2)40℃、92%
R.H.で24時間:加湿エージング、の各条件でエージング(保存)したものをそれぞれ用意した。
被着体として、SUS板(SUS430BA)に固定された幅50mm、長さ100mmの透明導電性フィルム(日東電工(株)製、エレクリスタ V150M-OFAD2,PETフィルムの片面に透明導電層を有し、他の片面に機能層を有するフィルム)の「機能層面」に、透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の「粘着面」を貼り合せて積層体を作製した(貼り合わせ機にて圧着:0.25MPa、圧着速度2.0m/min)。
当該積層体について、万能引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/min(低速剥離)、剥離角度180°の条件で透明導電性フィルムから透明導電性フィルム用キャリアフィルムを剥離し、このときの剥離力(N/50mm)を測定した(初期粘着力)。
また、上記と同様にして作製した積層体について、次いで、140℃で90分間加熱し、その後30分以上、常温(25℃)で放置した後、同環境下で、上記同様の方法で、剥離力(N/50mm)を測定した(加熱後の粘着力)。
【0138】
<ジッピング>
被着体として、SUS板(SUS430BA)に固定された幅50mm、長さ100mmのHCフィルム((株)きもと製、KBフィルムG01、PETフィルム上にハードコート層を有するフィルム)の「HC面:ハードコート面」に、透明導電性フィルム用キャリアフィルムの粘着剤層の「粘着面」を貼り合せた(貼り合わせ機にて圧着:0.25MPa、圧着速度2.0m/min)。次いで、140℃で90分間加熱し、その後30分以上、常温(25℃)で放置した後、同環境下で万能引張試験機を用いて、剥離速度0.3m/min、剥離角度180°の条件でHCフィルムから透明導電性フィルム用キャリアフィルムを80mm剥離し、このときの剥離力(N/50mm)を測定した。
上記剥離力の後半60mm分の測定データを用いて、下記の式によりジッピングの有無を判断した。
ΔF/F(Ave)<15%:ジッピングが発生しない(○)
ΔF/F(Ave)>15%:ジッピングが発生する(×)
F(Ave):平均剥離力
F(Max):最大剥離力
F(Min):最小剥離力
ΔF:F(Max)−F(Min)
【0139】
【表1】
注)2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、BA:ブチルアクリレート、HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート、AA:アクリル酸、MMA:メチルメタリレート。
【0140】
【表2】
注)架橋剤は、
C/HX:イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体,日本ポリウレタン工業社製,商品名「コロネートHX」);
C/HK:イソシアネート系架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体,日本ポリウレタン工業社製,商品名「コロネートHK」);
C/L:イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物,日本ポリウレタン工業社製,商品名「コロネートL」);
T/C:エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製,TETRAD−C);を示す。
触媒は、
鉄触媒:トリス(アセチルアセトナート)鉄(日本化学産業社製,商品名「ナーセム第二鉄」);
錫触媒:ジオクチル錫ジラウレート(東京ファインケミカル社製、商品名「エンビライザー OL−1」)、を示す。
ケト−エノール互変異性を起こす化合物は、アセチルアセトンを示す。