(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
巻取りパッケージ(5)を回転可能に保持する、旋回可能に支持されたパッケージフレーム(11)と、前記巻取りパッケージ(5)が巻取りプロセス中に接触しているローラ(34)と、巻取り中断後に前記巻取りパッケージ(5)の表面に巻き上げられた上糸を収容する、必要な場合に負圧を供給可能な糸サクション装置(21)と、を備えた綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部(1)であって、
前記糸サクション装置(21)は、巻取り装置(4)の領域に定置に配置された装置であり、上側の成形プレート(22)と、可動に支持された下側の成形プレート(23)とを有しており、
該下側の成形プレート(23)は、前記ローラ(34)を中心にして旋回可能であり、前記上側の成形プレート(22)と前記下側の成形プレート(23)とは、前記上糸を収容するために、前記巻取りパッケージ(5)の表面の領域において該両方の成形プレート(22,23)の間に、負圧を供給可能なサクションノズル輪郭を形成するようになっていることを特徴とする、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部。
前記糸サクション装置(21)は、下側の開口(25)及び上側の開口(26)を除いて閉鎖された糸ガイド通路(6)の端部材であり、前記開口(25,26)は必要な場合に閉鎖可能である、請求項1記載の作業部。
前記上側の成形プレート(22)は、通常の巻取り運転中、常に上側の作業位置(OAS)に位置決めされていて、該上側の作業位置(OAS)において前記上側の成形プレート(22)の前縁(27)は、巻成方向(W)に回転する巻取りパッケージ(5)の表面に隣接して位置している、請求項1記載の作業部。
前記下側の成形プレート(23)は、前記上側の成形プレート(22)に比べて、前記ローラ(34)に対してより近接して配置されており、前記下側の成形プレート(23)の後縁(42)は、通常の巻取り運転中、前記ローラ(34)の、前記上側の成形プレート(22)の前縁(27)とは反対の側で、前記巻取りパッケージ(5)の表面の領域に位置決めされている、請求項1記載の作業部。
【背景技術】
【0002】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械、特にいわゆる綾巻きパッケージオートワインダの作業部では、作業プロセスにおいて上流側に配置された繊維機械、例えばリング精紡機において製造された、比較的僅かな糸材料しか有していない貯えボビン、例えば紡績コップが、著しく大きな糸体積を有する綾巻きパッケージに巻き返される。
【0003】
このような繊維機械の作業部は、例えば特許文献1に記載のように、紡績コップから綾巻きパッケージへの糸走路の領域に、種々様々な糸監視装置及び糸処理装置を有しており、これらの装置によって走行する糸は、巻返し過程の間にさらに、場合によっては存在する糸欠陥を監視される。
【0004】
所定の限界値を上回る糸欠陥が発見されると、このような糸欠陥は切除され、多くの場合空気力によって形成される、本来の糸とほぼ同じ糸継ぎ部、いわゆる糸スプライシング部が形成される。
【0005】
このような公知の綾巻きパッケージオートワインダの作業部は、それぞれ特に巻取り装置を有しており、この巻取り装置は、綾巻きパッケージを回転可能に保持する旋回可能なパッケージフレームと、例えば、綾巻きパッケージを摩擦によって回転させかつ巻き取られる糸を同時に綾振りする、いわゆる糸ガイドドラムとを備えている。
【0006】
このような作業部は、通常さらにそれぞれ、下糸センサ、糸テンショナ、糸切断装置を備えた糸クリアラ、糸張力センサ、糸捕捉ノズル、及びしばしばパラフィン処理装置を有している。
【0007】
糸切れ後又はコントロールされたクリアラ切断後に糸端部を再び糸継ぎするために、このような作業部はさらに、糸スプライシング装置と糸取扱い装置とを有しており、この糸取扱い装置は、旋回可能に支持された負圧供給可能な、上糸用のサクションノズル、及び旋回可能に支持された同様に負圧供給可能な、下糸用のグリッパ管として形成されている。
【0008】
このときサクションノズル及びグリッパ管は、通常、機械長手方向に延在する負圧トラバースに接続されていて、必要な場合に、綾巻きパッケージに巻き上げられた糸端部もしくは貯えボビン上に落下した糸端部を糸スプライシング装置に運ぶために働く。
【0009】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の上に述べた作業部は、実地において、原則的に良好であることが判明しているが、しかしながら、特に重い糸の場合に、上糸の糸端部を収容する時の成功率がしばしば不十分である、という欠点を有している。
【0010】
上述のように形成された作業部の別の欠点としては、巻返しプロセス中にしばしばかなりの塵埃が発生し、これにより作業部が比較的早期に汚染され、再び手間を掛けてクリーニングしなくてはならないということがある。
【0011】
作業部におけるこのような汚染を回避するために、従って、作業部が、十分に閉鎖された糸ガイド通路を備えている構成、すなわち、糸が巻返し過程中に、周囲に対して十分に閉鎖された筒体内において走行するように、糸走路の領域を形成することが、既に提案されている。
【0012】
特許文献2に開示された綾巻きパッケージオートワインダでは、例えば、その作業部はそれぞれ、糸走路を取り囲む複数部分から成る糸ガイド通路を有しており、この糸ガイド通路は、貯えボビンの繰出し部と作業部の巻取り装置との間において延びている。
【0013】
必要な場合に負圧が供給可能な糸ガイド通路には、種々様々な糸監視装置及び糸処理装置のための複数の収容ハウジングもしくは収容部分が組み込まれている。糸ガイド通路の上端部には、幾分複雑化された可動に支持された糸サクション装置が設けられており、これに対して糸ガイド通路の下端部は、例えば鉛直方向に移動可能に支持されたサクション足を備えた繰出し補助装置を有している。
【0014】
さらに、糸ガイド通路内において発生する負圧流の流れ方向は確定されて設定可能であり、その結果、巻取り中断後に、比較的簡単かつ確実に、糸切れによって発生した糸端部を糸スプライシング装置に引き渡すことを、保証することができる。
【0015】
これら公知の綾巻きパッケージオートワインダでは、糸走路を取り囲む糸ガイド通路に糸監視装置及び糸処理装置を組み込むことによって、巻き返される糸は巻取り過程中に、その糸走路のほぼ最大部分において周囲に対して隔絶されるように取り囲まれており、このことは、特に作業部における汚れの発生に関して特にポジティブな影響を及ぼす。
【0016】
しかしながら、このようなそれ自体好適な公知の作業部にも、巻取りパッケージの領域にそれぞれ配置されている糸サクション装置の構成が比較的高価でありかつ幾分故障しやすい、という若干の欠点はある。
【0017】
糸ガイド通路の出口側に配置されたこの糸サクション装置は、サクションエア管片が接続されているサクションヘッド・収容ハウジングを有している。このサクションヘッド・収容ハウジングには、さらに、制限されて旋回可能に支持されたサクションヘッドと、異なった位置において位置決め可能な制御フラップとが接続されている。
【0018】
さらに例えば特許文献3に基づいて公知の、綾巻きパッケージを製造する繊維機械では、その作業部はそれぞれ、巻取りパッケージに接続された上糸と、繰出しボビンに接続された下糸とを糸継ぎするための装置を備えている。
【0019】
作業部はそれぞれ、糸継ぎ過程を制御するための作業部計算機と、上糸を収容するための第1のサクションノズルと、下糸を捕捉するための第2のサクションノズルとを有している。
【0020】
第1のサクションノズルは、旋回可能に支持された管状の接続部分と、定置のサクションノズルヘッド部分と、第1のサクションノズルにサクションエアを供給するサクション接続部とを有している。
【0021】
サクションノズルヘッド部分はそれぞれ、サクションスリットが巻取り装置における巻取りパッケージの領域に位置決めされるように、1つの作業部の巻取り装置の領域に配置されている。
【0022】
管状の接続部分は、必要な場合にサクションノズルヘッド部分から切り離されて旋回させられ、第1のサクションノズルによって収容された上糸が糸継ぎ装置に引き渡されるようになっている。
【0023】
しかしながら実地においては、特許文献3に記載されているように形成された作業部においても、困難な糸状態においては、上糸の糸端部の収容時にしばしば問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
上に述べた先行技術を出発点として、本発明の課題は、綾巻きパッケージを製造する繊維機械のための作業部を改良して、すべての運転条件下において信頼できる、複雑でない糸サクション装置を、特に綾巻きパッケージに巻き上げられた糸端部を収容するための糸サクション装置を有する、繊維機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
この課題を解決する本発明の構成では、作業部の糸サクション装置は、巻取り装置の領域に定置に配置された装置であり、上側の成形プレートと、可動に支持された下側の成形プレートとを有しており、該下側の成形プレートは、ローラを中心にして旋回可能であり、上側の成形プレートと下側の成形プレートとは、上糸を収容するために、巻取りパッケージの表面の領域において該両方の成形プレートの間に、負圧を供給可能なサクションノズル輪郭を形成するようになっている。
【0027】
本発明の好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る糸サクション装置は特に、上記のように構成することによって糸サクション装置の領域において発生するサクション空気流の最適化が可能である、という利点を有している。
【0029】
すなわち、このような2つの成形プレートの使用と、下側の成形プレートの前縁が、回転する巻取りパッケージの表面の直ぐ近傍において個別に調節可能に位置決めされることとによって、巻取り中断後に、巻取りパッケージに巻き上げられた上糸の糸端部の収容を大幅に改善することができる。
【0030】
本発明の好適な態様では、上側の成形プレートは、旋回可能に支持されている。下側の可動の成形プレートに加えて、上側の成形プレートも同様に可動に支持された構成を有していると、両方の成形プレートを、回転する巻取りパッケージの表面の近傍において個別に位置決めすることができ、巻取りパッケージに巻き上げられた上糸の糸捕捉が、さらに最適化される。
【0031】
別の好適な態様では、両成形プレートは、互いに無関係に独立して確定されて制御可能である。このように構成されていると、必要な場合に、例えば、上糸の糸端部の収容の結果が所望の要求に相当していないことに基づいて、成形プレートの最終ポジションに関して後でも制御技術的に影響を及ぼすことが、問題なく可能である。例えば巻取りパッケージの表面に対する、上側の成形プレートの前縁の間隔、及び下側の成形プレートの前縁の間隔を、上糸の収容を改善するために後で修正することができる。
【0032】
さらに、下側の成形プレートの相応の制御によって、糸継ぎが行われた後で下側の成形プレートが常に、例えば糸ガイドドラムとして形成されたローラの糸ガイド溝への、スプライシングされた糸の問題のない挿通が損なわれないように、位置決めされていることを、保証することができる。
【0033】
第1の好適な態様では、本発明に係る糸サクション装置は、下側の開口及び上側の開口を除いて閉鎖された糸ガイド通路の端部材であり、開口は必要な場合に、適宜な装置によって同様に閉鎖可能である。
【0034】
上側の開口は、例えば上側の成形プレートの戻り旋回によって一時的に閉鎖することができ、このようにして糸ガイド通路内において、下糸の糸端部の収容に対してポジティブな影響を及ぼす流れ状態を生ぜしめることができる。
【0035】
すなわち、上側の成形プレートは、必要な場合に上側の作業位置、つまり上側の成形プレートが巻取りプロセス流に位置決めされ、成形プレートの前縁が巻成方向に回転する巻取りパッケージの表面の近傍に位置し、ひいては糸ガイド通路が上方に向かって完全に開放している上側の作業位置から、上側の成形プレートが糸ガイド通路の前に位置しかつこの糸ガイド通路を完全に閉鎖している下側の作業位置に旋回することができる。
【0036】
上側の成形プレートのこの閉鎖位置では、自体公知のようにかつ例えば特許文献2に比較的詳しく記載されているように、オリフィスディスク又はこれに類したものを用いて、糸ガイド通路におけるサクションエア流の方向が変化させられ、つまり、下糸の糸端部が紡績コップから解離され、好ましくは空気力作動式の糸スプライシング装置に運ばれるように働く負圧流が、紡績コップの領域において生じるように、変化させられる。
【0037】
好適な態様では、下側の成形プレートは、上側の成形プレートに比べて、ローラに対してより近接して配置されている。下側の成形プレートの後縁は、通常の巻取り運転中、ローラの、上側の成形プレートの前縁とは反対の側で、巻成方向に回転する巻取りパッケージの表面の領域に位置決めされている。
【0038】
上側の成形プレートは、通常の巻取り運転中、常に上側の作業位置に位置決めされていて、該上側の作業位置において上側の成形プレートの前縁は、巻取りパッケージの回転する表面に隣接して位置している。
【0039】
成形プレートのこのような位置決めによって、糸切れの場合又はコントロールされた糸クリアラ切断の場合に、高く上がる糸端部が、巻取りパッケージの横に跳ね上げられることを確実に回避することができる。特に上側の成形プレートは、上糸の糸端部を巻取りパッケージの表面の領域に留め、次いで本発明に係る糸サクション装置を用いて問題なく再び収容できるようにするために役立つ。
【0040】
さらに下側の成形プレートは、ローラと共に循環する空気流を上方に向かって巻取りパッケージへと変向するために役立つ。すなわち、糸端部が綾巻きパッケージの表面から早期に解離し、糸サクション装置によってもはや捕捉され得ないような状態が回避される。
【0041】
別の好適な態様では、成形プレートはそれぞれ、確定されて制御可能なアクチュエータを介して位置決め可能である。このとき成形プレートは、電気式のアクチュエータ又は空気力式のアクチュエータに接続されている。成形プレートを位置決めする電気式のアクチュエータとしては、例えばステップモータを使用することができ、ステップモータは周知のように、市場において安価に入手することができ、しかも繊維機械構造では実地において十分に良好であることが実証されている。
【0042】
しかしながら択一的な態様では、成形プレートを位置決めするために、空気力式のアクチュエータを使用することも可能である。例えば空気力式のスラストピストン装置を使用することができる。このような空気力式のスラストピストン装置もまた、比較的安価であり、繊維機械構造において以前から高評価の部材である。
【0043】
本発明に係る糸サクション装置のさらに別の態様では、糸サクション装置に必要な場合に、負圧を供給可能な旋回可能に支持されたサクション管が連結可能である。このような構成においても、運転条件に応じて好適に位置決め可能であり、かつ必要な場合に上糸の糸端部の確実な収容を保証する、確定されて制御可能な成形プレートを使用することができる。
【0044】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳説する。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0047】
図1には、巻取り装置4の領域において糸ガイド通路6の端部に配置された本発明に係る糸サクション装置21を備えた、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部1が斜視図で示されている。
【0048】
一般的に公知であるように、このような綾巻きパッケージを製造する繊維機械、例えば綾巻きパッケージオートワインダは、通常、このような同一の作業部1を多数有しており、これらの作業部1においては、通常、リング精紡機において製造された紡績コップであって、比較的僅かな糸材料しか有していない貯えボビン2が、通常は綾巻きパッケージである大きな体積の巻取りパッケージ5に巻き返される。
【0049】
完成した綾巻きパッケージ5は、次いで、同様に公知のように、自動作動式のサービスユニット、例えばいわゆる綾巻きパッケージ交換装置を用いて、機械長手方向に延在する綾巻きパッケージ搬送装置に引き渡され、機械端部に配置されたパッケージチャージステーション又はこれに類した所に運ばれる。
【0050】
このような綾巻きパッケージオートワインダの作業部1は、幾つかの紡績コップを貯えることができる円形マガジンを備えているか、又は綾巻きパッケージオートワインダは、
図2に示すように、コップ・巻管搬送システム43として形成された補給装置(Logistikeinrichtung)を有している。
【0051】
このような自体公知のコップ・巻管搬送システム43では、鉛直方向に方向付けられて搬送皿48に配置された紡績コップ2もしくは空管が循環する。
【0052】
図1及び
図2に示すように、供給された貯えボビン2は、作業部1の領域においてそれぞれ繰出し部ASにおいて位置決めされ、この繰出し部ASにおいて綾巻きパッケージ5に巻き返される。
【0053】
個々の作業部1はそのために、種々様々な糸監視装置もしくは糸処理装置を有しており、これらの糸監視装置もしくは糸処理装置は、貯えボビン2の糸29の糸欠陥が巻返し過程中に監視され、かつ検出された糸欠陥を、糸29が巻取りパッケージ5に巻き取られる前にクリアラ除去することを保証する。
【0054】
このような綾巻きパッケージオートワインダの作業部1は、例えば巻取り装置4、好ましくは空気力作動式の糸スプライシング装置として形成された糸継ぎ装置8、糸テンショナ9、糸クリアラ10及び糸張力センサ35を有している。このような作業部1はさらに追加的に、パラフィン処理装置(図示せず)を備えていてよい。
【0055】
このような作業部1の巻取り装置4はそれぞれ、旋回軸線30を中心にして可動に支持されたパッケージフレーム11と、綾巻きパッケージ駆動装置とを有している。
【0056】
本実施の形態では、綾巻きパッケージ駆動装置は、ローラ34として、好ましくは糸ガイドドラムとして形成されており、この糸ガイドドラム34は、綾巻きパッケージ5を摩擦によって回転させ、かつ同時に、巻取りパッケージ5に巻き取られる糸29を綾振りするために働く。
【0057】
糸ガイドドラム34は、本実施の形態では、制御可能な駆動装置37に接続されている。
【0058】
図1に示した実施の形態によれば、繰出し部ASに位置決めされた貯えボビン2と巻取り装置4との間に、糸走路を取り囲む糸ガイド通路6が延びており、この糸ガイド通路6には、必要な場合に確定されて、例えば機械固有の負圧システムの負圧を供給することができる。糸ガイド通路6は、入口側に、例えばテレスコープ式に伸縮可能に形成されたサクション足19として形成された繰出し補助装置3を備えており、すなわちサクション足19は、双方向矢印36によって単に略示された駆動装置を用いて、鉛直方向に移動可能に支持されており、かつ必要な場合に、例えば下糸の糸端部を収容するために、少なくとも部分的に、貯えボビン2の上に降下させることができる。
【0059】
糸ガイド通路6は、糸走行方向Fにおいてサクション足19の下流側に、糸テンショナ9のための収容部分33と、この収容部分33に接続して、糸スプライシング装置8のための比較的大きな収容ハウジング18とを有している。
【0060】
糸ガイド通路6は、さらに収容部分32,31を備えており、これらの収容部分32,31は、糸走行方向Fにおいて収容ハウジング18の下流側に配置されていて、これらの収容部分32,31には、糸クリアラ10もしくは糸張力センサ35が設置されている。この領域においてはまた、パラフィン処理装置のための収容ハウジング(図示せず)を、糸ガイド通路6内に組み込むことも可能である。
【0061】
出口側において糸ガイド通路6は、本発明に係る糸サクション装置21を有しており、この糸サクション装置21は、確定されて制御可能な上側の成形プレート22と、確定されて制御可能な下側の成形プレート23とを有している。
【0062】
図1では図面を見易くするために図示されていない下側の成形プレート23は、好ましくはステップモータとして形成されていて軸受装置38に固定されているアクチュエータ39を用いて、旋回可能である。上側の成形プレート22は、好ましくは同様にステップモータとして形成された相応のアクチュエータ20を用いて位置決め可能である。
【0063】
図1においてさらに示すように、糸サクション装置21は開口26を介して糸ガイド通路6に接続されている。
【0064】
糸ガイド通路6は、糸サクション装置21の下において、サクションエア管片14が接続されているサクション開口28を介して、繊維機械の機械長手方向に延在するサクションエア通路17に接続されている。
【0065】
このときサクションエア管片14には、糸スプライシング装置8の収容ハウジング18をサクションエア通路17に接続するサクションエア管片12,13のように、例えばオリフィスディスク(Blendenscheibe)15を介して、必要な場合に負圧を供給することができる。すなわち、回転可能に支持されたオリフィスディスク15は、確定されて位置決め可能なサクション開口16を有しており、これらのサクション開口16は、オリフィスディスク15の位置に応じて、サクションエア管片12,13,14のうちの単数又は複数が空気を通流させるようにサクションエア管片17に接続されるように働く。
【0066】
図1に示したオリフィスディスク15の代わりに、サクションエア管片12,13,14に関連して、もちろん別の制御装置を設置することも可能である。例えばサクションエア管片のそれぞれが、個別の弁装置又はこれに類したものによってサクションエア通路17に接続されるような配置形態も可能である。
【0067】
図2には、綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部1のための別の実施の形態が概略的に側面図で示されている。
図1との関連において既に述べたように、このような作業部において、リング精紡機において製造された紡績コップ2が、大きな体積の綾巻きパッケージ5に巻き返される。
【0068】
綾巻きパッケージ5はその完成後に、好ましくは綾巻きパッケージ交換装置である自動作動式のサービスユニットを用いて、機械長手方向に延在する綾巻きパッケージ搬送装置49に引き渡され、機械端部に配置されたパッケージチャージステーション又はこれに類した所に運ばれる。
【0069】
図2に示すように、このような綾巻きパッケージを製造する繊維機械は、しばしばコップ・巻管搬送システム43として形成された補給装置を有しており、このコップ・巻管搬送システム43において搬送皿48に載置されて、紡績コップ2もしくは空管が循環する。さらにこのような繊維機械は、通常、中央制御ユニットを有していて、この中央制御ユニットは、機械バスを介して、個々の作業部1の作業部計算機56に接続されている。
【0070】
図2には、上に述べたコップ・巻管搬送システム43のうち、コップ供給区間44、可逆式に駆動可能な貯え区間45、作業部1に通じる横搬送区間46及び空管戻し区間47が示されている。
【0071】
供給された紡績コップ2は、横搬送区間46の領域において作業部1に位置している繰出し部ASにおいて、大きな体積の綾巻きパッケージ5に巻き返される。個々の作業部1は、公知のようにゆえにここでは略示したように、これらの作業部1の適正な運転を保証する種々様々な装置を有している。
【0072】
これらの装置は例えば、後で説明する上糸収容装置21,51、下糸を収容するためのグリッパ管52、並びに好ましくは空気力式のスプライサとして形成された糸継ぎ装置8である。
【0073】
このような作業部1は、さらに糸テンショナ9、並びに例えば糸クリアラ、パラフィン処理装置、糸切断装置、糸張力センサ及び下糸センサのような図示されていないその他の装置を有している。
【0074】
全体を符号4で示した巻取り装置は、パッケージフレーム11から成っており、このパッケージフレーム11は、旋回軸線30を中心に可動に支持されていて、綾巻きパッケージ巻管を回転可能に保持する装置を有している。
【0075】
巻取りプロセス中、綾巻きパッケージ5はその表面で、例えば糸ガイドドラムであるローラ34に接触していて、この糸ガイドドラム34により摩擦によって回転させられる。
【0076】
上において既に述べたように、各作業部1は、上糸収容装置21,51とグリッパ管52とを有しており、これらはそれぞれ、サクションエア接続部を介して機械長手方向に延在するサクションエア通路17に接続されている。
【0077】
上糸収容装置21,51は、管状の接続部分51と定置のヘッド部分とを有しており、このヘッド部分は、本発明に係る糸サクション装置21として形成されている。管状の接続部分51は回転軸線54を中心にして旋回可能に支持されている。好ましくは管状の接続部分51には、この管状の接続部分51の旋回運動を実施する旋回駆動装置(図示せず)が対応配置されている。管状の接続部分51は、例えばその回転軸線54の領域において、弁装置(図示せず)又はこれに類したものを介して、サクションエア通路17に接続されている。管状の接続部分51の自由端部は、糸サクション装置21に接続可能であるので、この糸サクション装置21に負圧を供給して、例えば糸切れ後に綾巻きパッケージ5に巻き上げられた糸端部を捕捉することができる。
【0078】
糸サクション装置21は、例えば作業部ハウジング55に固定されていて、確定されて制御可能な成形プレート22,23を有しており、これらの成形プレート22,23は、糸ガイドドラム34を取り囲むように設置されている。
【0079】
成形プレート22,23の確定された旋回運動を実施するために、アクチュエータ20,39が設けられており、これらのアクチュエータ20,39については、以下において
図3〜
図6を参照しながら詳説する。
【0080】
グリッパ管52は、回転軸線53を中心にして旋回可能に支持されていて、その自由端部にさらにグリッパ管フラップを有しており、このグリッパ管フラップによって、グリッパ管開口を閉鎖することができる。
【0081】
図2は、通常の巻取りプロセス中における作業部1の状態を示す。管状の接続部分51はその自由端部で本発明に係る糸サクション装置21に接続されている。
【0082】
上側の成形プレート22は、作業位置にあり、この作業位置において成形プレート22の前縁27は、巻成方向Wにおいて回転する綾巻きパッケージ5の表面に隣接している。下側の成形プレート23もまたその後縁で、回転する綾巻きパッケージ5の表面に隣接している。
【0083】
グリッパ管52は、通常の巻取りプロセス中、下側位置に位置決めされている。つまりグリッパ管開口は、糸継ぎ装置8の下に位置決めされている。
【0084】
図3〜
図6は、作業部1の綾巻きパッケージ駆動装置の領域において糸ガイド通路6の終端部に配置された本発明に係る糸サクション装置21の各1つの実施の形態を示している。
【0085】
図3〜
図6は、糸サクション装置21の種々異なった部分図もしくは種々異なった運転位置を開示している。
【0086】
図3は、例えば、本発明に係る糸サクション装置21を、後ろから見て拡大した斜視図である。
【0087】
図面から分かるように、糸サクション装置21は、好ましくは糸ガイドドラムとして形成されたローラ34の領域に配置されており、このローラ34には電動機として形成された駆動装置37が接続されている。この駆動装置37は、確定されて制御可能であり、ローラ34の適正な運転のため、ひいては巻取り運転中にローラ34に支持された綾巻きパッケージ5の整然とした回転のために働く。つまり駆動装置37は、ローラ34をその回転軸線を中心にして適正に回転させる。
【0088】
さらに
図3には、上側の作業位置OASにおける糸サクション装置21の上側の成形プレート22が示されており、この上側の作業位置OASにおいて、側部のガイド装置40,41に可動に支持された成形プレート22の前縁27は、繰出し方向Rにおいてゆっくりと回転する巻取りパッケージ5(
図3には図示せず)の表面に近接して位置決めされている。
【0089】
図3において単に概略的に双方向矢印20によって示した、上側の成形プレート22のアクチュエータは、好ましくはステップモータとして形成されている。このステップモータは、
図3においては見えない軸受装置に固定されていて、この軸受装置に組み込まれた伝動装置を介して上側の成形プレート22を駆動する。
【0090】
図3においては見えないので破線で示した下側の成形プレート23は、アクチュエータ39によって確定されて駆動される。下側の成形プレート23のアクチュエータ39もまた同様に、上側の成形プレート22のアクチュエータ20のように、好ましくはステップモータとして形成されていて、上側の成形プレート22におけると同様に軸受装置38に固定されている。
【0091】
上側及び下側の成形プレート22,23は、それぞれローラ34に対して異なった間隔をおいて支持されている。つまり
図3に示した作業位置において、両成形プレート22,23はその間において、糸ガイド通路6を介して、特に上側の開口26を介して、負圧を供給可能なサクションノズル輪郭を形成している。
【0092】
図3においてさらに略示されているように、つまり同様に破線で、糸ガイド通路6に組み込まれたサクションエア管片14のサクション開口28が示されている。さらに、下側の成形プレート23のステップモータ39のための軸受装置38も示されている。
【0093】
図4には、上糸の糸端部を収容する間における1つの作業部1の巻取り装置4が側面図で示されている。
【0094】
本発明に係る糸サクション装置21によって取り囲まれている糸ガイドドラム34には、綾巻きパッケージとして形成されていてパッケージフレーム11に回転可能に支持された巻取りパッケージ5が接触しており、この巻取りパッケージ5は、糸ガイドドラム34によってゆっくりと方向Rで、つまり通常の巻成方向とは逆向きに、摩擦によって回転させられる。
【0095】
図面から分かるように、上側の成形プレート22及び下側の成形プレート23はその前縁が、ローラ34によってゆっくりと繰出し方向Rで回転させられる巻取りパッケージ5の表面の領域に位置決めされている。
【0096】
このとき上側の成形プレート22の駆動装置は、矢印20′によって象徴的に示されている。これに対して下側の成形プレート23のための駆動装置は、矢印39′によって略示されている。上において既に述べたように、好ましくは、上側の成形プレート22の駆動装置20及び下側の成形プレート23の駆動装置39は、ステップモータとして形成されている。
【0097】
この運転状態において、例えばサクションエア管片13及びオリフィスディスク15を介して、例えば機械長手方向に延在するサクションエア通路17に接続されている糸ガイド通路6は、さらに、
図1に示した下側の開口25の領域において、相応の装置によって閉鎖されている。
【0098】
このような状況において、糸ガイド通路6内には、通常の糸走行方向とは逆向きの負圧流7が発生し、この負圧流7は、上糸の糸端部を成形プレート22,23の間において巻取りパッケージ5の表面から収容し、糸ガイド通路6を介して確実に糸スプライシング装置8の領域に引き渡し、該糸スプライシング装置8内に挿入するために働く。
【0099】
図5には、下糸の糸端部を収容する間における1つの作業部1の巻取り装置4が示されている。図示のように、好ましくは、巻取りパッケージ5はローラ34から持ち上げられ、上側の成形プレート22は、その駆動装置20′′を用いて、糸ガイド通路6の開口26が上方に向かって閉鎖されるように位置決めされている。
【0100】
同時に糸ガイド通路6は、例えばサクションエア管片12及びオリフィスディスク15を介して、機械長手方向に延在するサクションエア通路17に接続されていて、糸ガイド通路6内において広い部分にわたって、糸走行方向Fに流れる負圧流が生ぜしめられるようになっており、この負圧流は、例えば繰出し補助装置3との関連において、下糸の糸端部を貯えボビン2から引き出し、糸ガイド通路6を介して糸スプライシング装置8の領域に引き渡し、該糸スプライシング装置8内に挿入するために役立つ。
【0101】
次いで下糸の糸端部は、糸スプライシング装置8内において上糸の糸端部とスプライシングされる。
【0102】
図6に示されている通常の巻取り運転中に、巻取りパッケージ5は、例えば糸ガイドドラムとして形成されたローラ34に接触していて、このローラ34により摩擦によって巻成方向Wに回転させられる。
【0103】
上側の成形プレート22はその駆動装置20′によってその上側の作業位置において位置決めされており、この上側の作業位置において、上側の成形プレート22の前縁27は、巻取りパッケージ5の回転する表面に隣接して位置している。
【0104】
下側の成形プレート23は、その駆動装置39′′によって後縁42が同様に、巻成方向Wに回転する巻取りパッケージ5の表面の領域に位置決めされているが、しかしながら下側の成形プレート23の後縁42は、ローラ34の、上側の成形プレート22の前縁27とは反対の側に位置している。
【0105】
閉鎖された糸ガイド通路6と本発明に係る糸サクション装置21とを備えた作業部1の作業形式は、以下の通りである。
【0106】
例えば糸切れ又はコントロールされたクリアラ切断に基づいて、作業部1の巻取り運転中に巻取り中断が発生すると、上糸の糸端部は、綾巻きパッケージ5の表面に巻き上げられ、これに対して下糸の糸端部は、糸テンショナ9においてクランプされるか又はさらに下方に向かって貯えボビン2の上に落下する。
【0107】
このような巻取り中断後に、該当する作業部において巻取りプロセスを新たに開始できるようにするためには、初めに、上糸及び下糸の糸端部を再び1つの連続した糸に糸継ぎする必要がある。すなわち下糸及び上糸を、糸ガイド通路6の収容ハウジング18内に配置された糸スプライシング装置8にもたらし、そこで糸スプライシング装置8内に挿入する必要がある。次いで糸スプライシング装置8は、上糸及び下糸の糸端部を、好ましくは、場合によっては存在する糸欠陥部を除去した後で、再び本来の糸とほぼ同じになるように糸継ぎする。
【0108】
実地において、下糸を収容するためには最初にオリフィスディスク15が調節され、つまりサクションエア管片12は、オリフィスディスク15のサクション開口16のうちの1つを介して空気力式に連続して、機械長手方向に延在するサクションエア通路17に接続されるが、これに対してサクションエア管片13,14は閉鎖されたままになるように、調節される。さらに糸サクション装置21の上側の成形プレート22は、
図5に示すように閉鎖位置において位置決めされる。
【0109】
この状況において、糸ガイド通路6の領域には、糸走行方向Fに負圧流が生ぜしめられ、この負圧流は、サクション足19から糸ガイド通路6及びサクションエア管片12を介してサクションエア通路17に向けられている。通常糸テンショナ9において保持されている下糸は、このとき解放され、負圧流の影響を受けて、糸ガイド通路6における相応のガイド輪郭によって案内されて、サクションエア通路17へと滑動し、そして糸ガイド通路6の収容ハウジング18内に配置された糸スプライシング装置8内に適正に位置決めされる。例えばサクションエア管片12の領域に配置された下糸センサが、下糸の存在を検知し、次いで上糸検出を導入する。
【0110】
しかしながら糸切れ後に下糸の糸端部が貯えボビン2の上にまで落下しているような場合には、サクション足19の降下によって、下糸を貯えボビン2からも吸い込むことができ、下糸は同様に糸ガイド通路6を介してサクションエア通路17内に達する。
【0111】
すなわち、貯えボビン2に位置している下糸もまた、適正に糸スプライシング装置8に引き渡され、この糸スプライシング装置8内に挿入される。
【0112】
貯えボビン2からの下糸の糸解離を促進するために、サクション足19はさらに、貯えボビン2の巻成コーンへの圧縮エア衝撃の導入を可能にする装置が設けられていてよく、このような圧縮エア衝撃の導入は、糸解離特性に対して極めてポジティブな影響を及ぼす。
【0113】
綾巻きパッケージ5の表面に巻き上げられた、上糸の糸端部を捕捉するために、オリフィスディスク15は、サクションエア管片13がサクション開口16のうちの1つを介しいて空気力的に機械長手方向に延在するサクションエア通路17に接続されており、これに対してサクションエア管片12,14が閉鎖されたままであるように調節される。
【0114】
さらに、
図4に示すように、糸サクション装置21の上側の成形プレート22及び下側の成形プレート23は、ゆっくりと繰出し方向Rに回転する巻取りパッケージ5の表面の領域に近接して位置決めされ、このときにサクションノズル輪郭を形成する。さらに、好ましくは繰出し補助装置3の領域に配置された閉鎖オリフィス(図示せず)又はこれに類したものは、閉鎖位置にもたらされる。
【0115】
この状況では、糸ガイド通路6の領域において負圧流7が生ぜしめられ、この負圧流7は、糸サクション装置21の開口領域からサクションエア管片13を介してサクションエア通路17に向けられていて、綾巻きパッケージ5の表面に巻き上げられた、上糸の糸端部を、繰出し方向Rに回転する綾巻きパッケージ5から取り出すために働く。収容された上糸は、糸ガイド通路6及びサクションエア管片13を介してサクションエア通路17内に達し、このとき下糸と同様に、糸ガイド通路6における相応の輪郭によって案内されて、収容ハウジング18内に配置された糸スプライシング装置8内に適正に滑り込む。
【0116】
好ましくはサクションエア管片13の領域に設置された上糸センサが、糸を検知し、次いで本来の空気力式のスプライシング過程を導入する。
【0117】
上糸及び下糸の糸端部が糸スプライシング装置8の領域内に引き渡され、適正に糸スプライシング装置8内に位置決めされると、本来のスプライシング過程が実施され、残留糸は吸い出されて、巻取り過程が新たに開始される。
【0118】
本発明はもちろん、上に説明した実施の形態に制限されるものではなく、全般的な本発明の思想を逸脱することなしに、その他の実施の形態又は実施の変化形をも有することができる。
【0119】
綾巻きパッケージを製造する繊維機械の作業部に対する、
図1及び
図2に示した実施の形態の代わりに、もちろん、種々様々な点で上に述べた実施の形態とは異なっている、作業部をも使用することができる。