特許第6538503号(P6538503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6538503工作機械の幾何誤差同定方法及び幾何誤差同定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538503
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】工作機械の幾何誤差同定方法及び幾何誤差同定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/26 20060101AFI20190625BHJP
   G01B 21/20 20060101ALI20190625BHJP
   G01B 5/00 20060101ALI20190625BHJP
   G01B 5/008 20060101ALI20190625BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   B23Q15/26
   G01B21/20 101
   G01B5/00 P
   G01B5/008
   B23Q17/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-187076(P2015-187076)
(22)【出願日】2015年9月24日
(65)【公開番号】特開2017-61012(P2017-61012A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年3月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康功
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲也
【審査官】 松井 裕典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−044802(JP,A)
【文献】 特開2011−038902(JP,A)
【文献】 特開2012−240170(JP,A)
【文献】 特開平08−261711(JP,A)
【文献】 特開2003−019644(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0151001(US,A1)
【文献】 特開2016−083729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00−5/30
G01B 21/00−21/32
G01B 19/404
B23Q 17/00−23/00
B23Q 15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持するワーク回転軸と、工具を保持する主軸とを、3軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動させて前記ワークの加工を行う工作機械において、
前記ワーク回転軸に計測ターゲットを設置し、前記主軸に位置計測センサを、その中心軸が前記主軸の中心からオフセットする位置に装着して、前記計測ターゲットの三次元空間上の初期位置を前記位置計測センサで計測する初期位置計測ステップと、
前記初期位置計測ステップで計測した前記初期位置に基づいて前記ワーク回転軸を複数の角度に割出して前記計測ターゲットを複数の箇所に位置決めし、前記位置計測センサにより前記計測ターゲットの三次元空間上の位置を計測する誤差計測ステップと、
前記誤差計測ステップでの計測結果に基づいて、前記各軸間の幾何学的な誤差の演算を行う幾何誤差同定ステップと、を実行する幾何誤差同定方法であって、
前記計測ターゲットを球とし、前記位置計測センサを、先端にスタイラス球を備えたタッチプローブとして、
前記初期位置計測ステップでは、
前記主軸を任意の位置に割出して、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも5点以上接触させて計測を行った後、前記主軸を前記任意の位置から180°回転した位置に割出して、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも4点以上接触させて計測を行う中心位置計測ステップと、
前記中心位置計測ステップでの計測結果から、前記球の中心位置と、前記主軸の中心からの前記タッチプローブの中心軸のオフセット量との演算を行う球中心位置・オフセット量演算ステップと、
前記球中心位置・オフセット量演算ステップで得られた前記球の中心位置に基づいて、前記球に対して前記タッチプローブの接触方向が同じ方向となるように前記主軸を割出し、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも2点以上接触させて計測を行うスタイラス球半径計測ステップと、
前記スタイラス球半径計測ステップでの計測結果から、前記スタイラス球の半径の演算を行うスタイラス球半径演算ステップと、
前記主軸を任意の位置に割出して、前記球中心位置・オフセット量演算ステップで得られた前記球の中心位置に基づいて、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも5点以上接触させて計測を行うスタイラス径補正値計測ステップと、
前記スタイラス径補正値計測ステップでの計測結果と、前記球中心位置・オフセット量演算ステップで得られた前記球の中心位置及び前記オフセット量とに基づいて、前記スタイラス球の径の補正値の演算を行うスタイラス径補正値演算ステップと
を実施し、前記球の前記初期位置を計測すると同時に前記スタイラス球の径の補正値を用いて前記タッチプローブのキャリブレーションを行うことを特徴とする工作機械の幾何誤差同定方法。
【請求項2】
前記中心位置計測ステップでは、前記主軸を割出す前記任意の位置を、前記並進軸の可動範囲と、前記初期位置計測ステップを開始した際の前記並進軸の位置と、前記主軸の中心からの前記タッチプローブの中心軸の概算オフセット量とに基づいて決定することを特徴とする請求項に記載の工作機械の幾何誤差同定方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の工作機械の幾何誤差同定方法を、コンピュータに実行させるための工作機械の幾何誤差同定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械において幾何誤差を計測して同定するための方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、並進3軸と回転2軸を有する5軸制御マシニングセンタ(以下、「5軸機」という。)の模式図である。この5軸機は、工具を保持し回転させることが可能な主軸2と、工作物を保持し回転および傾斜可能なテーブル3とを有している。主軸2は互いに直交する並進軸Z軸及びX軸により、ベッド1に対して2自由度の並進運動が可能である。テーブル3は、クレードル4上で回転軸C軸回りで回転可能に設けられ、クレードル4は、ベッド1でZ軸とX軸とに直交する並進軸Y軸方向へ移動可能に設けられるトラニオン5に回転軸A軸回りで回転可能に支持される。よって、テーブル3は、C軸とA軸とにより2自由度の回転運動と、Y軸により1自由度の並進運動がベッド1に対して可能である。前記各軸は、図2に示す制御装置10によって制御された各軸のサーボモータ11X〜11Cにより駆動し、テーブル3に保持した工作物を主軸2に保持した工具により加工を行う。12はプログラム等の記憶手段、13はプログラムや加工条件等の入力手段である。
5軸機のような多軸工作機械は駆動軸数が多いため、駆動軸数が少ない機械に対し運動精度が悪化する傾向にある。その主要因として、各軸間の誤差である幾何学的な誤差(以下、「幾何誤差」という。)がある。この幾何誤差を機械の製造・組立段階で小さくして高精度化を図るのはコスト・技術的に困難な面があり、幾何誤差を補正して制御することにより、多軸工作機械の高精度化を図る技術が開発されている。
【0003】
5軸機の幾何誤差を補正制御するためには、機械に内在する幾何誤差を計測して、同定する必要がある。機械の幾何誤差を計測、同定する方法として、特許文献1のような方法が提案されている。特許文献1に記載の方法は、主軸に位置計測センサであるタッチプローブを装着して、テーブルに計測ターゲットであるターゲット球を設置し、ターゲット球をさまざまな位置に割り出して、各割出し位置でターゲット球の中心位置をタッチプローブにより計測し、得られた円弧軌跡をもとに機械の幾何誤差を同定する方法である。
タッチプローブはその先端にスタイラス球がついており、スタイラス球が測定対象に接触するとその瞬間に信号を発信する。図2で示した制御装置10は、接続された受信機14にてその信号を受信すると、その時点での各軸の現在位置に遅れ分を考慮した位置を接触位置とする。
しかし、スタイラス球の接触位置は、主軸中心から球の半径分オフセットした位置となっている。また、主軸中心とスタイラス球との芯ズレや接触を感知してから制御装置10が認識するまでの遅れ分、タッチプローブのセンサ特性によってもオフセットが発生する。さらに、接触方向によってもオフセット量が異なるため、予めこのオフセット量を接触方向ごとにキャリブレーションして制御装置10に記録させておく必要がある。
このキャリブレーション方法として、本件出願人は、特願2014−218476において、幾何誤差の計測を実施する過程でテーブルに設置されたターゲット球の中心位置を、スタイラス球の接触方向が同じとなるように主軸を割出して球の外周5点に接触させて計測を行い、再度主軸の定位置に割出した状態で球の外周に接触させて、そのときの接触位置と、ターゲット球の直径値とを用いてキャリブレーションを行う方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−38902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、図3に示す多軸工作機械は、工具を保持し工具を回転させることが可能なミーリング主軸22と、工作物を保持し回転可能な旋削主軸23とを有している。ミーリング主軸22は、刃物台24に内蔵されたB軸ユニットの回転軸B軸により1自由度の回転運動と、さらにコラム25に設けられた互いに直交する並進軸X軸と、Y軸と、Z軸とにより3自由度の並進運動がベッド21に対して可能である。旋削主軸23は、回転軸C軸により1自由度の回転運動がベッド21に対して可能である。各軸は、図4に示す制御装置30によって制御された各軸のサーボモータ31X〜31Cにより駆動し、旋削主軸23に保持した工作物をミーリング主軸22に保持した工具により加工を行う。32は記憶手段、33は入力手段、34は受信機である。
この多軸工作機械は、旋削加工をメインに行う旋盤をベースとした機械であるため、並進軸X軸のマイナス側の可動範囲が小さい。一方でタッチプローブの本来の目的は工作物を測定することにあるが、工作物が大きい場合にはX軸のマイナス側での測定ができないため、図5に示すようにミーリング主軸22の中心からタッチプローブ41の中心軸までがX軸のマイナス方向にオフセットした状態でタッチプローブ41が取り付けられる。42はスタイラス球、43はターゲット球である。
しかしながら、先願のキャリブレーション方法は、このようなミーリング主軸22の中心から中心軸がオフセットしたタッチプローブ41のキャリブレーション方法に対応したものとなっておらず、幾何誤差を計測、同定する過程でキャリブレーションを行うことができなかった。
【0006】
そこで、本発明では、中心軸が主軸中心からオフセットした位置計測センサを用いたものであっても、幾何誤差を計測、同定する過程においてキャリブレーションを行うことができ、高精度な幾何誤差の計測、同定が可能となる工作機械の幾何誤差同定方法及び幾何誤差同定プログラムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ワークを保持するワーク回転軸と、工具を保持する主軸とを、3軸以上の並進軸と1軸以上の回転軸とによって相対移動させて前記ワークの加工を行う工作機械において、
前記ワーク回転軸に計測ターゲットを設置し、前記主軸に位置計測センサを、その中心軸が前記主軸の中心からオフセットする位置に装着して、前記計測ターゲットの三次元空間上の初期位置を前記位置計測センサで計測する初期位置計測ステップと、
前記初期位置計測ステップで計測した前記初期位置に基づいて前記ワーク回転軸を複数の角度に割出して前記計測ターゲットを複数の箇所に位置決めし、前記位置計測センサにより前記計測ターゲットの三次元空間上の位置を計測する誤差計測ステップと、
前記誤差計測ステップでの計測結果に基づいて、前記各軸間の幾何学的な誤差の演算を行う幾何誤差同定ステップと、を実行する幾何誤差同定方法であって、
前記計測ターゲットを球とし、前記位置計測センサを、先端にスタイラス球を備えたタッチプローブとして、
前記初期位置計測ステップでは、
前記主軸を任意の位置に割出して、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも5点以上接触させて計測を行った後、前記主軸を前記任意の位置から180°回転した位置に割出して、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも4点以上接触させて計測を行う中心位置計測ステップと、
前記中心位置計測ステップでの計測結果から、前記球の中心位置と、前記主軸の中心からの前記タッチプローブの中心軸のオフセット量との演算を行う球中心位置・オフセット量演算ステップと、
前記球中心位置・オフセット量演算ステップで得られた前記球の中心位置に基づいて、前記球に対して前記タッチプローブの接触方向が同じ方向となるように前記主軸を割出し、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも2点以上接触させて計測を行うスタイラス球半径計測ステップと、
前記スタイラス球半径計測ステップでの計測結果から、前記スタイラス球の半径の演算を行うスタイラス球半径演算ステップと、
前記主軸を任意の位置に割出して、前記球中心位置・オフセット量演算ステップで得られた前記球の中心位置に基づいて、前記タッチプローブを前記球の外周に少なくとも5点以上接触させて計測を行うスタイラス径補正値計測ステップと、
前記スタイラス径補正値計測ステップでの計測結果と、前記球中心位置・オフセット量演算ステップで得られた前記球の中心位置及び前記オフセット量とに基づいて、前記スタイラス球の径の補正値の演算を行うスタイラス径補正値演算ステップと
を実施し、前記球の前記初期位置を計測すると同時に前記スタイラス球の径の補正値を用いて前記タッチプローブのキャリブレーションを行うことを特徴とする。
請求項に記載の発明は、請求項の構成において、前記中心位置計測ステップでは、前記主軸を割出す前記任意の位置を、前記並進軸の可動範囲と、前記初期位置計測ステップを開始した際の前記並進軸の位置と、前記主軸の中心からの前記タッチプローブの中心軸の概算オフセット量とに基づいて決定することを特徴とする。
請求項に記載の発明は、工作機械の幾何誤差同定プログラムであって、請求項1又は2に記載の工作機械の幾何誤差同定方法を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、幾何誤差を計測・同定するための計測ターゲットの初期位置計測と同時に位置計測センサのキャリブレーションを行うため、主軸中心から位置計測センサの中心軸までがオフセットした位置計測センサを用いたものであっても、幾何誤差を計測、同定する過程においてキャリブレーションを行うことができ、高精度な幾何誤差の計測、同定が可能となる。
特に、請求項に記載の発明によれば、中心位置計測ステップでは、並進軸の可動範囲を考慮して主軸の割出し位置を決定するため、並進軸の可動範囲を超えるなどして計測ができなくなることを可能な限り防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】5軸制御マシニングセンタの模式図である。
図2】5軸制御マシニングセンタの制御装置の構成図である。
図3】旋盤ベースの多軸工作機械の模式図である。
図4】多軸工作機械の制御装置の構成図である。
図5】ターゲット球と、主軸中心から中心軸がオフセットしたタッチプローブとの模式図である。
図6】幾何誤差を計測・同定する方法のフローチャートである。
図7】球の初期位置計測と、タッチプローブのキャリブレーション方法のフローチャートである。
図8】球中心位置・タッチプローブオフセット量を算出するための計測の模式図である。
図9】球中心位置・タッチプローブオフセット量を算出するための計測の模式図である。
図10】スタイラス球半径を算出するための計測の模式図である。
図11】スタイラス径補正値を算出するための計測の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
ここでは工作機械の一例として、図3に示した多軸工作機械を例示する。すなわち、3つの並進軸(X軸、Y軸、Z軸)と、2つの回転軸(B軸、C軸)とを有しており、ミーリング主軸22、旋回主軸23がそれぞれ本発明の主軸、ワーク回転軸となる。なお、本発明に関わる工作機械は図3に示す多軸工作機械に限らず、マシニングセンタや旋盤などであってもよい。
【0011】
最初に幾何誤差について説明する。幾何誤差を隣り合う軸間の相対並進誤差3成分および相対回転誤差3成分の合計6成分(δ、δ、δ、α、β、γ)で定義する。
本例の多軸工作機械の場合、各軸間と、C軸と工作物間と、B軸と工具間とに前記6成分の幾何誤差がそれぞれ存在するため、合計36個の幾何誤差が存在する。ただし、36個のうち冗長な関係のものを除くと13個であり、幾何誤差が存在する軸間を工具側からの順番を添え字として表すと、13個の幾何誤差は、δx1、δz1、α、β、α、γ、β、γ、α、δx5、δy5、α、βとなる。これらは順に、B軸中心位置X方向誤差、B軸中心位置Z方向誤差、刃物台−Y軸間直角度、B軸原点誤差、B−Z軸間直角度、B−X軸間直角度、Z−X軸間直角度、X−Y軸間直角度、Y−Z軸間直角度、C軸中心位置X方向誤差、C軸中心位置Y方向誤差、C−Y軸間直角度、C−X軸間直角度である。
【0012】
幾何誤差を計測・同定するためには、図5に示すように多軸工作機械のミーリング主軸22にオフセットしたタッチプローブ41を装着し、旋削主軸23の偏心位置にターゲット球43を固定する。また、タッチプローブ41の先端にはスタイラス球42が取り付けられており、ターゲット球43の直上にスタイラス球42の先端が位置するよう位置決めをしておく。さらに、タッチプローブ41の軸方向の補正値を公知の方法により取得し、ターゲット球43の直径値についても三次元測定機などで測定して制御装置30の記憶手段32に記録させておく。また、記憶手段32には、幾何誤差を計測・同定するための計測条件(旋回主軸23の割出し角度など)と、ミーリング主軸22中心からタッチプローブ41中心軸までのオフセット量概算値と、スタイラス球42の半径概算値等についても入力手段33を介して記録させておく。
【0013】
次に、図3の多軸工作機械において、制御装置30が記憶手段32に記録されたプログラムに基づいて実行する幾何誤差の計測、同定方法について、図6に示すフローチャートをもとに説明する。
まず、旋削主軸23に固定されたターゲット球43の中心位置の計測を行う(S1、初期位置計測ステップ)。但し、ここでは同時に、後述のように記憶手段32に記録されているスタイラス球42の径補正値を用いてタッチプローブ41のキャリブレーションも行う。次に、S1で計測したターゲット球43の中心位置と、記憶手段32に記録された計測条件などをもとに、計測条件に従って旋回主軸23を割出した際のターゲット球43の中心指令位置と、タッチプローブ41をターゲット球43の直上に位置決めするための位置とを算出する(S2)。次に、計測条件に従って旋回主軸23を割出し、S2で算出した位置決め位置にタッチプローブ41の位置決めを行い(S3)、ターゲット球43の外周表面にスタイラス球42を接触させてターゲット球43の中心位置を計測する(S4)。次に、全ての割出し位置で計測が完了したか否かを判定し(S5)、完了するまでS3〜S5の誤差計測ステップを繰り返す。全ての割出し位置で計測が完了すると、S2で算出したターゲット球43の中心指令位置と、S4で計測したターゲット球43の中心計測位置とをもとに幾何誤差の同定計算を公知の方法で行う(S6、幾何誤差同定ステップ)。
【0014】
次に、制御装置30がS1で行うターゲット球43の中心位置の計測と、タッチプローブ41のキャリブレーションの詳細について、図7に示すフローチャートおよび図8図11に示す模式図をもとに説明する。
まず、並進軸X軸とY軸との可動範囲と、計測を開始したときの並進軸X軸とY軸との現在位置(xs, ys)と、ミーリング主軸22の中心からタッチプローブ41の中心軸までのオフセット量概算値tplx’と、スタイラス球42の半径概算値tc’と、ターゲット球43の直径dと、をもとに、ミーリング主軸22の割出し位置を決定する(S11)。
この割出し位置について、タッチプローブ41のオフセットがミーリング主軸22の中心からX軸のマイナス方向となるように割出した状態の割出し位置を0°、X軸のプラス方向となるように割出した状態の位置を180°、Y軸のプラス方向となるように割出した状態の位置を90°、Y軸のマイナス方向となるように割出した状態の位置を270°とする。以下の数1を満たす場合には、ミーリング主軸22の割出し位置を0°とする。数1を満たさず、数2を満たす場合には、ミーリング主軸22の割出し位置を90°とする。
【0015】
【数1】
【数2】
【0016】
数1において、xplはX軸方向のプラス可動限界位置、xmlはX軸方向のマイナス可動限界位置、数2において、yplはY軸方向のプラス可動限界位置、ymlはY軸方向のマイナス可動限界位置である。従って、数1及び数2の双方を満たさない場合には、計測することが困難であると判断して、操作者にその旨を報知するとともに計測を中断する。
【0017】
次に、S11で決定した位置にミーリング主軸22を割出し(S12)、Z軸のマイナス方向にZ軸を動作させて、ターゲット球43のZ軸方向の頂点付近にタッチプローブ41を接触させて、接触時のZ軸座標値zm1を取得し(S13)、ターゲット球43の直径dと、タッチプローブ41の軸方向の補正値tlとをもとに、以下の数3によりZ軸方向仮中心位置zo’を算出して(S14)、記憶手段32に記録する。
【0018】
【数3】
【0019】
次に、ターゲット球43のX軸プラス方向の頂点付近にタッチプローブ41を移動させ、X軸マイナス方向にX軸を動作させてターゲット球43のX軸プラス方向頂点付近に接触させて、接触時のX軸座標値xp1を取得して記憶手段32に記録する(S15)。次に、ターゲット球43のX軸マイナス方向の頂点付近にタッチプローブ41を移動させ、X軸プラス方向にX軸を動作させてターゲット球43のX軸マイナス方向頂点付近に接触させて、接触時のX軸座標値xm1を取得して記憶手段32に記録する(S16)。
続いて、ターゲット球43のY軸プラス方向の頂点付近にタッチプローブ41を移動させ、Y軸マイナス方向にY軸を動作させてターゲット球43のY軸プラス方向頂点付近に接触させて、接触時のY軸座標値yp1を取得して記憶手段32に記録する(S17)。次に、ターゲット球43のY軸マイナス方向の頂点付近にタッチプローブ41を移動させ、Y軸プラス方向にY軸を動作させてターゲット球43のY軸マイナス方向頂点付近に接触させて、接触時のY軸座標値ym1を取得して記憶手段32に記録する(S18)。
【0020】
次に、ターゲット球43の中心位置とタッチプローブ41のオフセット量との計測が完了したか判定し(S19)、完了していない場合は、ミーリング主軸22を、S11で決定した割出し位置から180°の位置に割出して(S20)、S15〜S18を繰り返し、接触時の座標値xp2、xm2、yp2、ym2を取得する。図8,9は、S14およびS20でミーリング主軸22を0°もしくは180°の位置に割出して、ターゲット球43にタッチプローブ41をX軸方向から接触させた場合の模式図である。このS13〜S18までの5点の計測と、S20で位相を変えた後のS15〜S18までの4点の計測とが中心位置計測ステップとなる。
こうしてS19でターゲット球43の中心位置とタッチプローブ41のオフセット量との計測が完了したと判定された場合、次にターゲット球43のX軸とY軸方向の中心位置(xo, yo)と、タッチプローブ41のオフセット量tplx、tplyを以下の数4、数5により算出して記憶手段32に記録する(S21、球中心位置・オフセット量演算ステップ)。
【0021】
【数4】
【数5】
【0022】
次に、ミーリング主軸22を0°の位置に割出して、S21で算出したY軸方向中心位置にY軸を位置決めして、ターゲット球43のX軸プラス方向の頂点付近にタッチプローブ41を移動させ、X軸マイナス方向にX軸を動作させてターゲット球43のX軸プラス方向頂点付近に接触させて、接触時のX軸座標値xp3を取得して記憶手段32に記録する(S22)。次に、ミーリング主軸22を180°の位置に割出して、ターゲット球43のX軸マイナス方向の頂点付近にタッチプローブ41を移動させ、X軸プラス方向にX軸を動作させてターゲット球43のX軸マイナス方向頂点付近に接触させて、接触時のX軸座標値xm3を取得して記憶手段32に記録する(S23)。図10は、S22とS23でターゲット球43に対しタッチプローブ41をX軸方向から接触させた場合の模式図である。このS22とS23とがスタイラス球半径計測ステップとなる。
なお、S22とS23では、ミーリング主軸22の割出し位置を0°と180°とし、ターゲット球43に対してタッチプローブ41をX軸方向から接触させたが、S11でミーリング主軸22の割出し位置を90°と決定した場合には、割出し位置を90°、270°とし、ターゲット球43に対してタッチプローブ41をY軸方向から接触させてもよい。
次に、以下の数6によりスタイラス球42の半径tcを算出する(S24、スタイラス球半径演算ステップ)。
【0023】
【数6】
【0024】
次に、ミーリング主軸22を0°の位置に割出して(S25)、S21で算出したX軸とY軸方向中心位置にX軸とY軸とを位置決めして、Z軸をターゲット球43のZプラス方向頂点真上に位置決めし、Z軸のマイナス方向にZ軸を動作させて、ターゲット球43のZ軸方向の頂点真上にタッチプローブ41を接触させて、接触時のZ軸座標値zm4を取得する(S26)。そして、ターゲット球43の直径dと、タッチプローブ41の軸方向の補正値tlとをもとに、以下の数7によりZ軸中心位置zoを算出して記憶手段32に記録する(S27)。
【0025】
【数7】
【0026】
次に、S21で算出したY軸方向中心位置にY軸を位置決めし、S27で算出したZ軸中心位置と、S24で算出したスタイラス球42の半径とをもとに、ターゲット球43のX軸プラス方向の頂点真上にタッチプローブ41を移動させ、X軸マイナス方向にX軸を動作させてターゲット球43のX軸プラス方向頂点に接触させて、接触時のX軸座標値xp4を取得して記憶手段32に記録する(S28)。次に、ターゲット球43のX軸マイナス方向の頂点真上にタッチプローブ41を移動させ、X軸プラス方向にX軸を動作させてターゲット球43のX軸マイナス方向頂点に接触させて、接触時のX軸座標値xm4を取得して記憶手段32に記録する(S29)。図11はこの計測の模式図である。
次に、ターゲット球43のY軸プラス方向の頂点真上にタッチプローブ41を移動させ、Y軸マイナス方向にY軸を動作させてターゲット球43のY軸プラス方向頂点に接触させて、接触時のY軸座標値yp4を取得して記憶手段32に記録する(S30)。次に、ターゲット球43のY軸マイナス方向の頂点真上にタッチプローブ41を移動させ、Y軸プラス方向にY軸を動作させてターゲット球43のY軸マイナス方向頂点に接触させて、接触時のY軸座標値ym4を取得して記憶手段32に記録する(S31)。このS25〜S31までの5点の計測がスタイラス径補正値計測ステップとなる。
【0027】
そして、スタイラス42の径補正値tc1(X軸プラス方向の径補正値)、tc2(X軸マイナス方向の径補正値)、tc3(Y軸プラス方向の径補正値)、tc4(Y軸マイナス方向の径補正値)を以下の数8により算出して記憶手段32に記録する(S32、スタイラス径補正値演算ステップ)。
【0028】
【数8】
【0029】
このように、上記形態の幾何誤差同定方法及び幾何誤差同定プログラムによれば、幾何誤差を計測・同定するためのターゲット球43の初期位置計測と同時にスタイラス径補正値を用いてタッチプローブ41のキャリブレーションを行うため、ミーリング主軸22の中心からタッチプローブ41の中心軸までがオフセットしたタッチプローブ41を用いたものであっても、幾何誤差を計測、同定する過程においてキャリブレーションを行うことができ、高精度な幾何誤差の計測、同定が可能となる。
特にここでは、中心位置計測ステップにおいて、並進軸の可動範囲を考慮してミーリング主軸22の割出し位置を決定するため、並進軸の可動範囲を超えるなどして計測ができなくなることを可能な限り防ぐことができる。
【0030】
なお、上記形態における、中心位置計測ステップ、スタイラス球半径計測ステップ、スタイラス径補正値計測ステップのそれぞれの計測点数については、数を増やしても差し支えない。
また、上記形態では幾何誤差の同定方法を多軸工作機械の制御装置がプログラムに従って実行する内容としているが、同定方法を実行する制御手段としては内部の制御装置に限らず、当該制御装置に接続された外部のコンピュータであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
21・・ベッド、22・・ミーリング主軸、23・・旋回主軸、24・・刃物台、25・・コラム、30・・制御装置、32・・記憶手段、33・・入力手段、34・・受信機、41・・タッチプローブ、42・・スタイラス球、43・・ターゲット球。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11