特許第6538519号(P6538519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538519
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】ダンパ装置及びステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20190625BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   B62D3/12 503C
   B62D3/12 511
   F16F7/00 F
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-208061(P2015-208061)
(22)【出願日】2015年10月22日
(65)【公開番号】特開2017-77873(P2017-77873A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】大橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】花田 祐樹
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−128981(JP,A)
【文献】 特開2002−349618(JP,A)
【文献】 特開2014−100935(JP,A)
【文献】 特開2005−088777(JP,A)
【文献】 特開2015−063157(JP,A)
【文献】 特開2013−023154(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0284733(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 3/12
F16F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部及び大径部を備えるシャフトと、
筒状に形成され、前記シャフトを軸線方向に相対移動可能に挿通し、前記大径部の端面に対して軸線方向に対向する規制面を備えるハウジングと、
前記軸部に挿通され、前記大径部の端面と前記規制面との軸線方向の間に介装される衝撃吸収部材と、を備えるダンパ装置であって、
前記衝撃吸収部材は、
前記大径部の端面に接触可能な円環部を備える衝撃受部材と、
前記規制面と前記円環部との間に配置され、前記ハウジングの内周面に対して径方向隙間を有し且つ前記ハウジングに保持され、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料で成形される弾性体と、
前記円環部の外周面に全周に亘って接着され、前記ハウジングの内周面に対して径方向隙間を有して配置され、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料で成形される弾性膜と、を備える、ダンパ装置。
【請求項2】
前記円環部の外周面のうち前記規制面側の角部は、前記規制面に向かって縮径するように形成され、
前記弾性体は、前記円環部に接着され、
前記弾性膜は、前記弾性体と一体的である、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記角部の軸線方向断面形状は、円弧凸状である、請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記衝撃受部材は、
前記ハウジングの内周面に対向する筒部、及び、前記筒部から径方向外方に延在し、前記規制面に対向する前記円環部を有しており、
前記弾性体は、
前記ハウジングの内周面、前記規制面、前記筒部の外周面及び前記円環部により形成される空間に配置され、
前記大径部が前記円環部に衝撃力を付与しない場合に、
前記弾性体は、前記ハウジングの内周面及び前記筒部の外周面の少なくとも一方との間に隙間を介して配置され、
前記大径部が前記円環部に衝撃力を付与した場合に、
前記弾性体は、前記規制面及び前記円環部により軸線方向に押し付けられることにより、前記隙間を充填するように、前記ハウジングの内周面、前記規制面、前記筒部の外周面及び前記円環部、の全てに接触した状態に変形し、
前記衝撃受部材は、前記規制面に対して非接触状態を維持したまま、変形した前記弾性体によって前記ハウジングに対する相対移動を規制される、請求項2又は3に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記規制面側の内周面に凹状係止部を備え、
前記弾性体は、前記ハウジングの前記凹状係止部に嵌合される凸状係止部を備え、
前記衝撃受部材は、前記凸状係止部を前記凹状係止部に嵌合させることで、前記ハウジングに保持される、請求項1ないし4の何れか一項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
請求項1−5の何れか一項に記載のダンパ装置を備えるステアリング装置であって、
両端部がタイロッドを介して転舵輪に連結されると共に軸線方向に往復移動して前記転舵輪を転舵する転舵シャフトであり、前記タイロッドに揺動可能に連結される前記大径部を備える前記シャフトと、
前記転舵シャフトを収容する前記ハウジングと、
前記衝撃吸収部材と、
を備える、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパ装置、及びこのダンパ装置を用いたステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリング装置では、タイロッドを介して転舵輪(タイヤ)に連結される転舵シャフトを軸線方向に往復移動させることにより、転舵輪の向きを変える。転舵シャフトは、ハウジングに摺動可能に収容されている。転舵シャフトがその往復移動範囲の限界に達すると、転舵シャフトの端部に形成された大径部がハウジングに衝突し、転舵シャフトの移動範囲が物理的に規制される。具体的には、運転者によるステアリングホイールの操作に伴って、転舵シャフトを軸線方向に移動させる力が(正)入力される。又は、転舵輪が縁石に乗り上げる等の作用により、転舵輪から転舵シャフトに対し、転舵シャフトを軸線方向に移動させる過大な力が(逆)入力される。正、逆の入力に伴って、大径部がハウジングに衝突するまで転舵シャフトが軸線方向に移動すると、「エンド当て」が生じる。
ステアリング装置では、エンド当て部にダンパ装置を用いてエンド当て時の衝撃を吸収する。係るダンパ装置としては、大径部の端面とハウジングとの軸線方向の間に、ハウジングに包囲された状態で介装される衝撃吸収部材を備えるものが知られている。
【0003】
特許文献1のステアリング装置は、ボールジョイント部材(大径部)とラックハウジングとの間に介装される緩衝部材(衝撃吸収部材)を備える。衝撃吸収部材は、大径部がハウジングに向けて衝突しようとする際に、大径部からの衝突を受けて弾性部材によって衝突衝撃を吸収する。衝撃吸収部材は、大径部に接触して衝突衝撃を受けるフランジ状のストッパ部材(衝撃受部材)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−63157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の衝撃吸収部材は、フランジ状のストッパ部材において大径部からの衝撃を受け、軸線方向に沿って変位しながら衝撃を吸収するので、ストッパ部材とハウジングの内周面との間に所定の径方向の隙間を必要とする。また、衝撃吸収部材は、ストレート状のハウジングに挿入され、弾性体本体部の径方向に凸設された保持部(片)をハウジングの内周面と所定の部材との間に弾装させて固定される。ストッパ部材は、弾性体本体部の固定保持部と軸線方向に沿って反対側に一体化される。よって車体の振動によって、弾性体本体部が固定保持部を支点に振動して、ストッパ部材がハウジングの内周面に衝突することによる接触音が発生する場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされた発明であり、ダンパ装置の部材間の特に径方向の接触に起因して発生する接触音を低減するダンパ装置及びステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のダンパ装置は、軸部及び大径部を備えるシャフトと、筒状に形成され、前記シャフトを軸線方向に相対移動可能に挿通し、前記大径部の端面に対して軸線方向に対向する規制面を備えるハウジングと、前記軸部に挿通され、前記大径部の端面と前記規制面との軸線方向の間に介装される衝撃吸収部材と、を備えるダンパ装置であって、前記衝撃吸収部材は、前記大径部の端面に接触可能な円環部を備える衝撃受部材と、前記規制面と前記円環部との間に配置され、前記ハウジングの内周面に対して径方向隙間を有し且つ前記ハウジングに保持されるゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料で成形される弾性体と、前記円環部の外周面に全周に亘って接着され、前記ハウジングの内周面に対して径方向隙間を有して配置され、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料で成形される弾性膜と、を備える。
【0008】
また、本発明のステアリング装置は、本発明のダンパ装置を備え、両端部がタイロッドを介して転舵輪に連結されると共に軸線方向に往復移動して前記転舵輪を転舵する転舵シャフトであり、前記タイロッドに揺動可能に連結される前記大径部を備える前記シャフトと、前記転舵シャフトを収容する前記ハウジングと、前記衝撃吸収部材と、を備える。
【0009】
本発明のダンパ装置又はステアリング装置によれば、円環部が、ハウジングの内周面に対して、弾性膜を介して配置される。車両の振動等によって円環部が径方向に変位した場合に、円環部がハウジングに接触するのではなく、弾性膜がハウジングに接触する。従って、弾性膜がハウジングに接触することで、接触音を低減できる。
【0010】
本明細書において弾性体及び弾性膜は、一般的に定義される「ゴム状弾性」を発現する材料素材で成形された部材を示し、その限りにおいて限定されない。弾性体及び弾性膜としては、ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料を好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のステアリング装置を示す概略図である。
図2】本実施形態のダンパ装置を示す断面図である。
図3図2の衝撃吸収部材の部分断面を示す斜視図である。
図4】弾性膜の接触部を拡大して示す部分断面図である。
図5】衝撃吸収部材の円環部を拡大して示す部分断面図である。
図6】「エンド当て」前後のダンパ装置を説明する断面図である。
図7】変形例のダンパ装置に係る弾性膜の接触部を拡大して示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のダンパ装置について、このダンパ装置を用いた本発明のステアリング装置の具体的な実施形態に基づいて、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明のステアリング装置は、電動パワーステアリング装置、後輪操舵装置、ステアバイワイヤ装置などに適用できる。図1において、ステアリング装置STは、操舵機構10、転舵機構20、及びダンパ装置50を有する。
【0013】
(1.ステアリング装置の構成)
図1に示したとおり、操舵機構10は、ステアリングホイール11、及びステアリングシャフト12を備える。ステアリングホイール11は、ステアリングシャフト12の端部に固定される。ステアリングシャフト12は、転舵輪26を転舵するために、ステアリングホイール11に加えられる操舵トルクを伝達する。ステアリングシャフト12は、コラム軸13、中間軸14、及びピニオン軸15を連結して構成される。ピニオン軸15は、入力シャフト15a、出力シャフト15b、及びトーションバー15cを有する。入力シャフト15aの入力側部分には、中間軸14の出力側部分が接続され、出力シャフト15bの出力側部分には、ピニオン歯15dが形成される。
【0014】
転舵機構20は、転舵シャフト21、及び略円筒状に形成されたハウジング22を有する。転舵シャフト21は、軸線方向Aに沿って直線往復移動可能にハウジング22に収容されて支持される。以下の説明において、この転舵シャフト21の軸線方向に沿った方向を単に「A軸方向(図1参照)」とも称する。ハウジング22は、第1ハウジング22aと、第1ハウジング22a(の図1中、軸線方向Aの左側)に固定された第2ハウジング22bとを備える。
【0015】
また、ピニオン軸15は、第1ハウジング22a内において回転可能に支持される。転舵シャフト21には、ラック歯21aが形成され、ラック歯21a及びピニオン歯15dは、互いに噛合されて、ラックアンドピニオン機構23を構成する。第1ハウジング22aには、ラックアンドピニオン機構23が収容される。
【0016】
転舵シャフト21は、軸部211の両端部に大径部51,51を有する。大径部51,51は、転舵シャフト21の両端の軸部211が拡径されて形成される。大径部51には、ボールスタッド27が収容されており、ボールジョイントを形成する。ボールスタッド27,27の両端部には、タイロッド24,24が連結され、タイロッド24,24の先端は、転舵輪26が組み付けられたナックルに連結される。これにより、ステアリングホイール11が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト12に伝達され、ピニオン軸15が回転される。ピニオン軸15の回転は、ピニオン歯15d及びラック歯21aによって、転舵シャフト21の直線往復移動に変換される。そして、このA軸方向に沿った移動がタイロッド24,24を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪26,26が転舵され、車両の進行方向が変更される。なお、符号25は、ハウジング22の内部を含む転舵機構20の収容空間の気密性を保つためのブーツである。
【0017】
ハウジング22の両端部には、後述する衝撃吸収部材53,53が設けられる。衝撃吸収部材53,53は、第1ハウジング22aの一方側端部と第2ハウジング22bの他方側端部に形成される大径部用ハウジング52,52に収容され、その規制面52b,52bに装着される(図2参照)。衝撃吸収部材53,53は、転舵シャフト21の直線移動を停止するための大径部51,51と対向するように、大径部51,51と規制面52b,52bとの間に介装される。そして、転舵シャフト21が軸線方向Aに移動し、転舵輪26,26が最大操舵角に達した場合、大径部51が、衝撃吸収部材53に衝突する「エンド当て」が生じる。衝撃吸収部材53は、このときの衝突の衝撃を吸収する。
【0018】
(2.ダンパ装置)
上述したダンパ装置50について、図2、3を用いて更に説明する。ダンパ装置50は、運転者の操舵に伴う正入力、又は車両の外部から転舵輪26を介して逆入力が転舵シャフト21に入力されるのに伴って、大径部51が大径部用ハウジング52の規制面52bに衝突しようとする際の衝撃を、衝撃吸収部材53によって衝撃吸収するための装置である。図2に示すとおり、ダンパ装置50は、転舵シャフト21と、大径部用ハウジング52と、衝撃吸収部材53と、を備える。
【0019】
なお、実施形態のダンパ装置50は、ステアリング装置STの軸線方向Aの左右両側2カ所において装着されている。以下の説明において、図1中、軸線方向Aに沿った右側を「一方」側、左側を「他方」側とし、特に断りが無ければ、2カ所に装着されるダンパ装置50のうち他方側のダンパ装置50の構成について、主に説明する。
【0020】
転舵シャフト21は、軸部211及び該軸部211と接続する大径部51を備える。転舵シャフト21は、大径部51を介して軸線方向Aに沿った一方側において、ラック歯21aが形成された軸部211を接続すると共に、他方側において、ボールスタッド27の軸部を連結する。
【0021】
大径部51は、自身の軸線方向Aの一方側端部511において転舵シャフト21と接続し、大径部51の一方側端部511が、転舵シャフト21の軸部211よりも大径に形成される。転舵シャフト21の軸部211の端面212には、軸線方向Aの他方側に開口する雌ねじ部213が形成される。大径部51の一方側端部511には、雌ねじ部213と螺合する雄ねじ部51bが形成される。雄ねじ部51bは、軸線方向Aに沿って一方側に突出される。雄ねじ部51bが雌ねじ部213に螺合されることにより、転舵シャフト21に対して大径部51の他方側にボールスタッド27を連結可能になる。
【0022】
また、雄ねじ部51bの根元には、転舵シャフト21の端面212、すなわち軸部211の終端が当接する大径部の当接端面51aが形成される。当接端面51aは、雄ねじ部51bの根元から径方向に形成される。本実施形態では、当接端面51aが転舵シャフト21の終端に相当し、いわゆるラックエンドになり、(衝撃吸収部材53が装着されない状態では)当接端面51aにおいて規制面52bに係止可能となり、転舵シャフト21が直線往復移動する際のストッパを担う。
【0023】
大径部51は、他方側の端部においてボールスタッド27を連結し、ボールスタッド27、タイロッド24、及びナックルを介して転舵輪26を連結する(図1参照)。ボールスタッド27の他方側にはその軸部が形成され、この軸部の端部と、転舵輪26を連結するナックルとが、タイロッド24を介して連結される。これにより、転舵シャフト21が軸線方向Aに直線移動することによって、大径部51に装着されるボール部27bを回動中心としてタイロッド24が揺動され、当接端面51aが規制面52bに装着された衝撃吸収部材53に係止するまで、転舵輪26が転舵される。
【0024】
大径部用ハウジング52は、筒状に形成され、転舵シャフト21を軸線方向Aに相対移動可能に挿通し、大径部51の当接端面51aに対して軸線方向Aに対向する規制面52bを備える。
【0025】
大径部用ハウジング52は、第1及び第2の各ハウジング22a、22bの一方及び他方側の端部に接続されるハウジング22の一部分であり、軸線方向Aに沿って転舵輪26が配置される側に開口する略有底円筒状に形成される。大径部用ハウジング52の内部には、転舵シャフト21の軸部211を挿通状態で収容するシャフト収容部52eと、軸線方向Aに沿って外側に開口し、軸部211及び大径部51を収容可能な大径部収容部52aが形成される。大径部収容部52aは内径がほぼ一定に維持されるように形成されており、その底壁を形成する底面が、大径部51の当接端面51aと対向する規制面52bを形成する。規制面52bは、転舵シャフト21の終端となる当接端面51aを衝撃吸収部材53を介して当接させて、その直線移動範囲を物理的に規制する面である。
【0026】
また、大径部用ハウジングの内周面52cの一部分であって、規制面52bから立設する底方の角部には、規制面52bと面一状をなすように、径方向外方に向けて凹設される環状の凹状係止部52dが形成される。弾性体53bの凸状係止部536と嵌合することにより、衝撃吸収部材53を規制面52bに装着するための凹部である。
【0027】
(3.衝撃吸収部材)
衝撃吸収部材53は、大径部用ハウジング52に収容された状態で軸部211に挿通され、大径部51の当接端面51aと規制面52bの軸線方向Aの間に介装される。衝撃吸収部材53は、エンド当て時の衝突衝撃を吸収する部材であり、この衝撃を受ける衝撃受部材53aと、衝撃を吸収する弾性体53bと、後述する弾性膜535aを備える。
【0028】
より具体的には、衝撃吸収部材53は、円環部532を有するプレート筒状の鉄製の衝撃受部材53aと、略円筒形状をなす弾性体53bとを備える。図3に示すように、衝撃吸収部材53は、弾性体53bの貫通孔に衝撃受部材53aの筒部531を挿入した、略円環柱状の全体形状をなす。衝撃吸収部材53は、弾性体53bの他方側端面533a及び弾性膜535aを円環部532に接着して一体化される。衝撃吸収部材53は、衝撃受部材53aの他方側の被当接端面532aが大径部51の当接端面51aと対向配置するように、大径部用ハウジング52の規制面52bに装着される。
【0029】
衝撃受部材53aは、筒部531、及び、筒部531から径方向外方に延在し、大径部用ハウジング52の規制面52bに対向し、大径部51の当接端面51aに接触可能な円環部532を備える。衝撃受部材53aは、軸線方向Aに沿った断面視がL字をなしており、筒部531は、略L字の軸線方向Aに沿った1辺をなし、円環部532は、軸線方向Aと垂直方向に沿った他の1辺をなす。衝撃受部材53aは、円環部532において大径部51の当接端面51aから当接ないし衝突による衝撃力を受け、弾性体53bに圧縮力を加えながら衝撃を伝えて減衰させる部材である。
【0030】
筒部531は、ほぼストレート状の円筒形状をなす。筒部531の内周面531aは、大径部用ハウジング52に取付けられた状態で、軸部211を挿通するための衝撃吸収部材53の貫通孔を形成する。筒部531の外周面531bは、弾性体53bの内周面534を緩挿可能な外径に形成される。軸線方向Aに沿った筒部531の全長は、後述する衝撃吸収部材53の圧縮代Xに対応して形成される。筒部531は、弾性体53bの内周面534の弾性変形方向を、軸線方向Aに沿うように規制するための部位であり、弾性体53bが、筒部531を超えて径方向内方にはみ出し変形するのを防止する。
【0031】
円環部532は、筒部531から径方向外方に延在する円環板状をなす。その円環の他方側の表面(端面)は、大径部51に接触可能な一様な平面状の被当接端面532aをなす。その円環の外周面532dの一方(規制面)側の角部532cは、規制面52bに向かって縮径するように形成される(図5等参照)。角部532cは、軸線方向Aに沿った断面視において円弧凸状(以下「R形状」とも記す)をなすように、径方向内方に向けて漸次に縮径される。円環部532は、円環のうち径方向外方に配置する3分の1程度の部位において、被当接端面532aの裏面532bの側が傾斜状をなすように、径方向外方に向けて徐々に滑らかな薄肉状をなす。よって、図4及び図5に示すように、円環部532の外周縁部は、裏面532bから先細に連続形成される外周面532d(端面)をなす。円環部532の外径は、大径部用ハウジング52の内周面52cの内径と、円環部の外周面532dとの隙間が小さくなるように形成される。また、円環部の裏面532bには、弾性体53bの他方側端面533aが接着される。円環部の外周面532dには、他方側端面533aと連続形成され、弾性体の外周面535の他方側の角部をなすように形成された弾性膜535aが接着される。ゴム材料であれば加硫接着できる。接着は、接触可能な裏面532b及び外周面532dの全面において行う。
【0032】
次に、弾性体53bについて説明する。以下の弾性体の説明において、特に断りが無ければ、無変形状態の弾性体53bについて説明する。弾性体53bは、外周面535の軸線方向Aの中央部においてくびれた凹部535cが形成された略鼓筒状の本体部53cに、軸線方向Aの一方側端部においてフランジ状の凸状係止部536が径方向外方に凸設された全体形状を形成する。弾性体53bの本体部53cは、規制面52bから径方向外方に延在されたハウジングの凹状係止部52dに凸状係止部536を嵌合させ、且つハウジングの内周面52cに対して径方向隙間Sを有する状態で、大径部用ハウジング52の内周面52c、規制面52b、筒部の外周面531b及び円環部532により形成される初期空間S内に配置される。
【0033】
弾性体53bは、円環部532の角部532c及び外周面532dに全周に亘って接着され、ハウジングの内周面52cに対して径方向隙間を有して配置される弾性膜535aと一体的に形成される。外周面532dを覆う弾性膜535aとハウジングの内周面52cとの間でなす径方向隙間Gは、本体部53cとハウジングの内周面52cとがなす径方向隙間Sのうち最小隙間に相当する。以下の説明において、弾性膜535aを弾性体53bの一部分(弾性体の外周面535の他方側をなす角部分)として記載する。
【0034】
弾性体53bの他方側端面533aは、円環部532の裏面532bに(加硫)接着される。接着部533cは、最大限の接着面積を確保するように、円環部の裏面532bの全面に形成され、円環部の角部532cから外周面532dに沿っても同様に連続して形成される。よって、他方側端面533aの径方向外方側は、角部532cのR形状に沿って曲面をなしながら円環部の外周面532dを連続的に覆う。弾性膜535aは、弾性体の他方側端面533aと外周面535とがなす角部であり、主に円環部の角部532c及び外周面532dに沿った近傍部位である。他方側端面533aは、外周面532dを覆う弾性膜535aの内周面に連続するように形成される。ハウジングの内周面52cに対向する弾性膜535aの径方向の膜厚は、円環部の外周面532dを覆う部分で最も薄く膜厚Tとなり、外周面532dから規制面52bに向けて角部532cをなす終点(R状曲面をなす始点(図5中に符号Rで示す))に至るまで徐々厚くなるように形成される。
【0035】
図4に示すように、円環部の外周面532dを覆う弾性膜535aが最も薄い部位での膜厚Tは、0.3〔mm〕程度である(接着部533cを含む)。また、弾性膜535aとハウジングの内周面52cとの間で両者が最も近接する径方向隙間Gは、0.15〜0.6〔mm〕程度である。なお、加硫接着であれば、円環部の裏面532b及び外周面532dに所定の接着剤を適用し、金型内に露出する裏面532b及び外周面532dに向けて未加硫ゴムを射出した後に加硫し、成形することにより行われる。
【0036】
弾性体53bの外周面535には、軸線方向Aの中央部において最もくびれて外径が小さな凹部535cが形成される。つまり、外周面535の外径は、本体部53c他方側の弾性膜535aがなす角部及び一方側の隅部535bにおいて大きく形成され、中央部に向けて最小になるように漸次に縮径される。弾性体53bの他方側(弾性膜535a)の外周面535は、接着部533cを介して円環部の外周面532dの全周面を覆う。
【0037】
また、弾性体53bの内周面534は、僅かな隙間を介して筒部531に緩挿される。つまり、弾性体53bの内周面534は、筒部531の外周面531bに接着されていない。また、弾性体53bの内周面534のうち規制面52bに配置する側の角部には、規制面52bに向かって拡径する拡径部534aが形成される。拡径部534aは、筒部531の端部531cより少しだけ円環部532側の位置から規制面52bに向かって拡径するように傾斜形成される。これにより、圧縮変形時の本体部53cが開口部53dにおいて咬み込まれないようにできる。
【0038】
本発明に係る弾性体及び弾性膜は、ゴム状弾性を発現するように成形された部材であれば特に限定されないが、架橋ゴム、熱硬化性又は熱可塑性の合成樹脂系エラストマー等の材料を用いて成形できる。架橋ゴムとしては、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン‐ブタジエンゴム、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(以下、NBRとも記す)等のジエン系ゴム及びこれらの不飽和結合部分に水素添加されたゴム等、熱硬化性合成樹脂系エラストマーとしては、エチレン‐プロピレンゴム等のオレフィン系ゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等を、熱可塑性合成樹脂系エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、塩化ビニル系等のエラストマーを例示できる。
本実施形態では、ステアリング装置STの大径部用ハウジング52に装着する衝撃吸収部材53に用いる弾性体53b及び弾性膜535aとしては、耐熱性、耐寒性、耐候性の観点から、NBR、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン‐プロピレンゴム等、更に耐油性の観点から、極性基を有するNBR、クロロプレンゴム等が好適に用いられる。
【0039】
(4.作用説明)
本実施形態に係るダンパ装置50は、大径部51が円環部532に衝撃力を付与した場合に、弾性体53bが、ハウジングの内周面52c、筒部の外周面531b、規制面52b及び円環部532、の全てに接触した状態に変形し、衝撃受部材53aが、規制面52bに対して非接触状態を維持して変形し、弾性体53bによって大径部用ハウジング52に対する相対移動を規制される構成を有している。ダンパ装置50は、この構成によって衝撃吸収するための装置であり、以下に説明する。
【0040】
例えば図3に示したような衝撃吸収部材53が大径部用ハウジング52内に配置される無変形状態において、弾性体53bの本体部53cは、図6に示すように、大径部用ハウジング52の内周面52c、規制面52b、筒部531の外周面531b及び円環部532により形成される初期空間Sの内部に配置される。また、図2に示すように、この状態において、弾性体53b、筒部531、ハウジングの内周面52cは、それぞれ転舵シャフト21の中心軸線Cに対して、同心円状に配置される。また、ハウジングの規制面52b、円環部532は、それぞれ転舵シャフト21の中心軸線Cと垂直方向に沿って平行配置される。また、衝撃力を受ける前の無変形状態では、筒部531の端部531cの端面と規制面52bとの間には、軸線方向Aに沿って、圧縮代Xより大きい間隔Dの開口部53dが形成されている(図6参照)。
【0041】
また、上記の無変形状態において、衝撃吸収部材53は、凸状係止部536と凹状係止部52dの嵌合によって、ハウジングの規制面52bに対して固定されている。よって、衝撃吸収部材53の一方側は、軸線方向A及び径方向に変位しにくくなっている。また、衝撃吸収部材53の他方側、すなわち規制面52bに対向して大径部51が配置される側は、衝撃吸収部材53が軸線方向Aに圧縮変形、及び径方向に変位可能に配置される。具体的には、規制面52bに装着された弾性体53bの一方側端面533bを固定支持点として、弾性体53bが有するゴム状弾性に従って軸線方向Aに圧縮変位可能であり、弾性体53bの剪断剛性に従って径方向隙間Sを介して径方向に変位可能である。衝撃吸収部材53の他方側の端部には、円環部532が配置する。円環部532は、衝撃吸収部材53において大径部51からの衝突衝撃を直接に受ける接触部位であるため、剛性を有する重い金属材料(鉄)で形成される。よって、衝撃吸収部材53は、自身が固定される一方側から離れた他方側において、車両の振動等で弾性体53bが径方向に変位することにより、円環部532の径方向の変位が大きくなり易い。
【0042】
図4に示したとおり、車両の振動等によって、衝撃吸収部材53の円環部532が径方向に変位して径方向隙間Gを閉塞し、ハウジングの内周面52cに衝突する際には、円環部532は、弾性膜535aを介して内周面52cに接触する(図4の二点鎖線参照)。弾性膜535aによって、円環部の外周面532dとハウジングの内周面52cとの金属同士の衝突衝撃を吸収し、接触音を低減(音圧を減衰)できる。ハウジングの内周面52cに対向する弾性膜535aの膜厚は、円環部の外周面532dを覆う最も薄膜状の(膜厚Tの)部位から、規制面52bに向けて角部532cをなす終点(R状曲面をなす始点)に至る対応部位まで徐々厚くなるように形成され、接触音の低減効果が大きくなる。
【0043】
大径部51が円環部532に衝撃力を付与しない場合に、弾性体53bの本体部53cは、ハウジングの内周面52cとの間に径方向隙間Sを介して配置される。本体部53cは、仮に筒部531の端部531cが規制面52bに当接するように延在するとした際の架空の筒部の外周面との間に、隙間Sを介して配置される(図6上段参照)。
【0044】
そして、大径部51が円環部532に衝撃力を付与した場合に、本体部53cは、規制面52b及び円環部532によって軸線方向Aに押し付けられることにより、径方向隙間S、隙間Sが占めていた空間を充填するように圧縮変形する。筒部の端部531cの端面と規制面52bとの間の開口部53dの間隔が、間隔Dから徐々に縮まる。最終的には、本体部53cは、大径部用ハウジング52の内周面52c、ハウジングの規制面52b、筒部の外周面531b及び軸線方向Aに圧縮代Xだけ変位した後の円環部532図6下段において、圧縮変形後の部材等の符号に適宜にを付す)の全てに接触した状態に圧縮変形する。つまり、圧縮変形後の本体部53cは、軸線方向Aに圧縮代X(<間隔D)だけ変位した圧縮空間Sの内部に充満状態で配置される。
【0045】
このように、弾性体53bが圧縮する過程において、弾性体53bの他方側端面533aから弾性膜535aに連続する部分は、図5に示すように、円環部の角部532cから外周面532dに連続するなだらかなR形状に沿って形成されている。よって、円環部532を介して大径部51から受ける圧縮荷重Fに対して、弾性体53bないし一体化された弾性膜535aがなす隅部P近傍の部位において、応力が集中しにくくなっている。よって、弾性体53bの圧縮変形時に、ゴム状の弾性膜535aが流動する際の起点となり得る、円環部の角部532cを覆う曲面近傍の隅部Pに生じる応力が緩和される。円環部の外周面532dを軸線方向Aに沿って略直状に覆う弾性膜535aの部位(図4中符号Pで示す)が、弾性体53bの圧縮変形に伴って円環部の外周面532dを回り込んではみ出すように変形するのを抑制できる。
【0046】
また、圧縮代Xだけ変位した本体部53cは、圧縮空間S内に充満し、圧縮変形するための残余の空間を有さず体積飽和する。本体部53cは、大径部用ハウジング52と衝撃受部材53aとで形成される、基本的には外部と連通する間隙を有さない圧縮空間S内に密着状態で内接し、圧縮変形するために空間外部にはみ出す逃げ場を有さない。弾性体53bは、圧縮空間S内において、充満状態で円環部532と規制面52bとの間で介在し続け、衝撃力を受けた衝撃吸収部材53が圧縮代X(<間隔D)以上に軸線方向Aに変位するのを妨げる。衝撃吸収部材53の衝撃受部材53aは、その端部531cが規制面52bに対して衝突しない非接触状態の配置を維持し、大径部用ハウジング52に対する相対移動が規制される。よって、金属同士の両者が衝突するのを回避できる。そのうえで、圧縮した充満状態で介在する弾性体53bのゴム状特性によって、金属同士の両者が衝突する場合と比較すると、衝突衝撃が伝達されるのを抑制できる。
【0047】
円環部の外周面532dには、外周面532dを覆う弾性体の弾性膜535aが接着され、衝撃吸収部材53は、接触音の発生を低減する構成を有する。そのため、ハウジングの内周面52cと膜厚Tの弾性膜535aとの径方向隙間Gを極力小さくできる。つまり、円環部532の外径を大きく形成でき、外部と連通する間隙を有さない圧縮空間Sを大きく確保できる。弾性体53bの充満率を高めて衝撃吸収機能をよりよく発揮できる。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限られない。図7に示す円環部の裏面532bに角部532cが形成されなくても、更に筒部531を有さなくても構わない。この場合でも、円環部532の外周面532dは、弾性膜535aを介してハウジングの内周面52cに接触する(図7の二点鎖線参照)。弾性膜535aによって、円環部の外周面532dとハウジングの内周面52cとの金属同士の衝突衝撃を吸収して、接触音を低減できる。なお、図7中、上述の衝撃吸収部材53の各対応部位には、同じ符号を付した。
【0049】
(5.実施形態による効果)
上記実施形態によれば、衝撃吸収部材53は、大径部51の当接端面51aに接触可能な円環部532を備える衝撃受部材53aと、規制面52bと円環部532との間に配置され、ハウジングの内周面52cに対して径方向隙間Sを有し且つ大径部用ハウジング52に保持される弾性体53bと、円環部532の外周面532d、532dに全周に亘って接着され、ハウジングの内周面52cに対して径方向隙間Gを有して配置される弾性膜535a、535aと、を備える。
【0050】
よって、円環部532が、ハウジングの内周面52cに対して径方向隙間G及び弾性膜535aを介して配置される。車両の振動等によって径方向隙間Sを有し且つ大径部用ハウジング52に保持される弾性体53bを介して円環部532が径方向に変位した場合に、弾性膜535aがハウジングの内周面52cに接触する。円環部532が大径部用ハウジング52に直接接触しないので接触音を低減できる。
【0051】
また、上記実施形態によれば、円環部の外周面532dのうち規制面52b側の角部532cは、規制面52bに向かって縮径するように形成され、弾性体53bは、円環部532に接着され、弾性膜535aは、弾性体53bと一体的である。更に、角部532cの軸線方向Aの断面形状を円弧凸状(R形状)にできる。よって、弾性体53bの圧縮時に、角部532cを覆う弾性膜535aの隅部P近傍ないし隅部Pを起点に応力集中するのを防げる。弾性体53b、ひいては衝撃吸収部材53の耐久性向上に繋がる。
【0052】
また、上記実施形態によれば、衝撃受部材53aは、ハウジングの内周面52cに対向する筒部531、及び、筒部531から径方向外方に延在し、規制面52bに対向する円環部532を有しており、弾性体53bは、ハウジングの内周面52c、規制面52b、筒部の外周面531b及び円環部532により形成される初期空間Sに配置され、大径部51が円環部532に衝撃力を付与しない場合に、弾性体53bは、ハウジングの内周面52c及び筒部の外周面531bの間に径方向隙間S、隙間Sを介して配置され、大径部51が円環部532に衝撃力を付与した場合に、弾性体53bは、規制面52b及び円環部532により軸線方向Aに押し付けられることにより、径方向隙間S、隙間Sを充填するように、ハウジングの内周面52c、規制面52b、筒部の外周面531b及び円環部532、の全てに接触した状態に変形し、衝撃受部材53aは、規制面52bに対して非接触状態を維持したまま、変形した前記弾性体53bによってハウジングに対する相対移動を規制される。
【0053】
よって、弾性体53bが、軸線方向Aに押し付けられて径方向隙間S、隙間Sを充填されるように圧縮変形するため、弾性体53bは、円環部532の外周面532dを回り込んで流動する状態になり得る。この状態であっても、規制面52bに向かって縮径する形状の角部532cに沿って形成される弾性膜535aを有するので、隅部Pに応力集中するのを回避でき、弾性体53bの耐久性が高まる。
【0054】
また、上記実施形態によれば、大径部用ハウジング52は、内周面52cに凹状係止部52dを備え、弾性体53bは、ハウジングの凹状係止部52dに嵌合される凸状係止部536を備え、衝撃受部材53aは、凸状係止部を凹状係止部52dに嵌合させることで、大径部用ハウジング52に保持される。よって、ハウジングの規制面52bの側で固定される構造なので、衝撃吸収部材53の大径部51の側が車両の振動等により大きく変位し易くなっており、大径部51側の円環部532の接触音の低減効果がよりよく効奏する。
【0055】
また、上記実施形態によれば、上記の実施形態の何れかのダンパ装置50を備えるステアリング装置STであって、両端部がタイロッド24を介して転舵輪26に連結されると共に軸線方向Aに往復移動して転舵輪26を転舵する転舵シャフト21であり、タイロッド24に揺動可能に連結される大径部51を備える転舵シャフト21と、転舵シャフト21を収容する大径部用ハウジング52と、衝撃吸収部材53と、を備える。よって、上述したダンパ装置の効果を有するステアリング装置STを得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
ST…ステアリング装置、S…初期空間、S…圧縮空間、S、S…隙間、21…転舵シャフト(シャフト)、24…タイロッド、26…転舵輪、50…ダンパ装置、51…大径部、51a…当接端面、52…大径部用ハウジング(ハウジング)、52b…規制面、52c…(ハウジングの)内周面、53…衝撃吸収部材、53a…衝撃受部材、531…筒部、531b…(筒部の)外周面、532…円環部、532c…角部、532d,532d…(円環部の)外周面、53b…弾性体、533c…接着部、535a…弾性膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7