(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理装置であって、
前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得手段と、
前記記録位置取得手段によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、
前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換手段と、
を備えていることを特徴とする印刷装置の画像処理装置。
印刷媒体の搬送方向と直交する方向及び印刷媒体の搬送方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理装置であって、
前記印刷媒体の移動に応じて回転する搬送ローラの回転に応じたパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、
前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得手段と、
前記記録位置取得手段によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記パルス信号出力手段で検出されたパルス信号の変動に起因する搬送方向におけるズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、
前記ズレ量と搬送方向における前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記パルス信号の変動に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換手段と、
を備えていることを特徴とする印刷装置の画像処理装置。
印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理方法であって、
前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得過程と、
前記記録位置取得過程によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出過程と、
前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換過程と、
を実施することを特徴とする印刷装置の画像処理方法。
印刷媒体の搬送方向と直交する方向及び印刷媒体の搬送方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理方法であって、
前記印刷媒体の移動に応じて回転する搬送ローラの回転に応じたパルス信号を検出するパルス信号検出過程と、
前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得過程と、
前記記録位置取得過程によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記パルス信号検出過程で検出されたパルス信号の変動に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出過程と、
前記ズレ量と搬送方向における前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記パルス信号の変動に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換過程と、
を備えていることを特徴とする印刷装置の画像処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の装置は、印刷ユニットの記録限界であるノズル単位で斜行量に応じたずらし処理を行っている。したがって、ノズル間隔の整数倍とならないような斜行量によっては十分な補正ができず、位置ズレを十分に抑制できないことがある。なお、位置ズレを十分に抑制できないと、印刷品質の低下を招くので、位置ズレの抑制は重要な課題である。
【0006】
なお、上述した斜行とは異なる原因によって上記同様の課題が生じることもある。つまり、上述したインクジェット印刷装置では、搬送ローラに取り付けられたロータリエンコーダにより連続紙の搬送速度を検出し、その搬送速度と印刷ヘッド間の距離に応じてインク滴の吐出タイミングを調整している。しかしながら、熱等に起因してその搬送ローラが周方向に膨張することがあり、このような状態になると搬送速度が一定であるにもかかわらず、搬送速度が誤検出されるので、搬送方向において位置ズレが生じる。この場合も、斜行同様に記録限界のノズル単位でのずらし処理では不十分な場合が生じ得る。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、画像処理を工夫することにより、見かけ上の位置ズレを抑制することができる印刷装置の画像処理装置及びその画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理装置であって、前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得手段と、前記記録位置取得手段によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記印刷媒体の斜行に応じてずらし
た位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、位置ズレ量算出手段は、記録位置取得手段で取得された基準画像と対象画像の記録位置について、印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換手段は、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、基準画像または対象画像について剰余に基づく重み付けを行う。さらに、位置ズレ補間画像変換手段は、剰余が存在する基準画像または対象画像に隣接する、剰余がない基準画像または対象画像について重み付けより小さな小重み付けを行って、印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような斜行量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。また、本来はずらす必要がない剰余がない画像のうち、重み付けを行った画像に隣接するものについては小重み付けを行った位置ズレ補間画像に変換するので、境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、印刷媒体の搬送方向と直交する方向及び印刷媒体の搬送方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理装置であって、前記印刷媒体の移動に応じて回転する搬送ローラの回転に応じたパルス信号を出力するパルス信号出力手段と、前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得手段と、前記記録位置取得手段によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記パルス信号出力手段で検出されたパルス信号の変動に起因する搬送方向におけるズレ量を算出する位置ズレ量算出手段と、前記ズレ量と搬送方向における前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記印刷媒体の搬送速度の変動に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、位置ズレ量算出手段は、記録位置取得手段で取得された基準画像と対象画像の記録位置について、パルス信号出力手段で検出されたパルス信号の変動に起因する搬送方向におけるズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換手段は、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、基準画像または対象画像について剰余に基づく重み付けを行う。さらに、位置ズレ補間画像変換手段は、剰余が存在する基準画像または対象画像に隣接する、剰余がない基準画像または対象画像について重み付けより小さな小重み付けを行って、パルス信号の変動に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような搬送方向におけるズレ量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。また、本来はずらす必要がない剰余がない画像のうち、重み付けを行った画像に隣接するものについては小重み付けを行った位置ズレ補間画像に変換するので、境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【0012】
本発明において、前記位置ズレ補間画像変換手段は、前記基準画像または前記対象画像の所定個数の画素を含む区間内における最小値がマイナスで最大値が1であるSinc窓関数を用い、前記基準画像または前記対象画像の画素間を所定の分割数で分割し、前記Sinc窓関数の中心を前記剰余に応じた位置から、さらに前記分割数の最小単位の位置だけシフトして配置して前記重み付け及び前記小重み付けを行うことが好ましい(請求項3)。
【0013】
剰余に応じてSinc窓関数をシフトさせることにより、比較的容易に重み付け及び小重み付けを行うことができる。
【0014】
また、本発明において、前記位置ズレ補間画像変換手段は、前記基準画像または前記対象画像の所定個数の画素を含む区間内における最小値が0で最大値が1未満である指数窓関数を用い、前記基準画像または前記対象画像の画素間を所定の分割数で分割し、前記指数窓関数の中心を前記剰余に応じた位置に配置して前記重み付け及び前記小重み付けを行うことが好ましい(請求項4)。
【0015】
剰余に応じて指数窓関数をシフトさせることにより、比較的容易に重み付け及び小重み付けを行うことができる。また、指数窓関数の最小値が0であるので、隣接する画像との連続性を良好にすることができる。
【0016】
また、本発明において、前記印刷ユニットに前記位置ズレ補間画像を出力する際には、前記位置ズレ補間画像に対してずらす量に応じた網掛け処理を行う網掛け処理手段をさらに備えていることが好ましい(請求項5)。
【0017】
網掛け処理手段により位置ズレ補間画像に対して網掛け処理を行うことにより、位置ズレ補間画像を印刷ユニットの複数個の記録部で印刷することができる。
【0018】
また、本発明において、前記位置ズレ補間画像変換手段は、前記基準画像及び前記対象画像のうち線画領域については、位置ズレ補間画像に変換しないことが好ましい(請求項6)。
【0019】
文字やQRコード(登録商標)などの線画領域については位置ズレ補間画像に変換しないので、輪郭を明瞭なままにできる。したがって、線画の認識を良好にできる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明は、印刷媒体の搬送方向と直交する方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理方法であって、前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得過程と、前記記録位置取得過程によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出過程と、前記ズレ量と前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記印刷媒体の斜行に応じてずらし
た位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換過程と、を実施することを特徴とするものである。
【0021】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、位置ズレ量算出過程では、記録位置取得過程で取得された基準画像と対象画像の記録位置について、印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換過程では、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、基準画像または対象画像について剰余に基づく重み付けを行う。さらに、位置ズレ補間画像変換過程は、剰余が存在する基準画像または対象画像に隣接する、剰余がない基準画像または対象画像について重み付けより小さな小重み付けを行って、印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような斜行量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。また、本来はずらす必要がない剰余がない画像のうち、重み付けを行った画像に隣接するものについては小重み付けを行った位置ズレ補間画像に変換するので、境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明は、印刷媒体の搬送方向と直交する方向及び印刷媒体の搬送方向に所定間隔で配置された複数個の記録部を有し、印刷の基準となる基準印刷ヘッドと、前記基準印刷ヘッドに対して搬送方向に離間して配置され、前記基準印刷ヘッドによる印刷に対して合わせて印刷を行う対象印刷ヘッドとの少なくとも2つの印刷ヘッドからなる印刷ユニットにより印刷媒体に印刷を行う印刷装置の画像処理方法であって、前記印刷媒体の移動に応じて回転する搬送ローラの回転に応じたパルス信号を検出するパルス信号検出過程と、前記基準印刷ヘッドにより印刷される基準画像と、前記対象印刷ヘッドにより印刷される対象画像との記録位置を取得する記録位置取得過程と、前記記録位置取得過程によって取得された基準画像と対象画像の記録位置について、前記パルス信号検出過程で検出されたパルス信号の変動に起因するズレ量を算出する位置ズレ量算出過程と、前記ズレ量と搬送方向における前記所定間隔との剰余がある場合には、前記基準画像または前記対象画像について前記剰余に基づく重み付けを行い、前記剰余が生じている前記基準画像または前記対象画像に隣接する、前記剰余がない前記基準画像または前記対象画像について前記重み付けより小さな小重み付けを行って、前記印刷媒体の搬送速度の変動に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する位置ズレ補間画像変換過程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
[作用・効果]請求項8に記載の発明によれば、位置ズレ量算出過程では、記録位置取得過程で取得された基準画像と対象画像の記録位置について、パルス信号検出過程で検出されたパルス信号の変動に起因する搬送方向におけるズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換過程では、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、基準画像または対象画像について剰余に基づく重み付けを行う。さらに、位置ズレ補間画像変換過程では、剰余が存在する基準画像または対象画像に隣接する、剰余がない基準画像または対象画像について重み付けより小さな小重み付けを行って、パルス信号の変動に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような搬送方向におけるズレ量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。また、本来はずらす必要がない剰余がない画像のうち、重み付けを行った画像に隣接するものについては小重み付けを行った位置ズレ補間画像に変換するので、境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る印刷装置の画像処理装置によれば、位置ズレ量算出手段は、記録位置取得手段で取得された基準画像と対象画像の記録位置について、印刷媒体の斜行に起因するズレ量を算出する。位置ズレ補間画像変換手段は、ズレ量を所定間隔で除したときの剰余が存在する場合には、基準画像または対象画像について剰余に基づく重み付けを行う。さらに、位置ズレ補間画像変換手段は、剰余が存在する基準画像または対象画像に隣接する、剰余がない基準画像または対象画像について重み付けより小さな小重み付けを行って、印刷媒体の斜行に応じてずらした位置ズレ補間画像に変換する。剰余分に応じた重み付けを行って位置ズレ補間画像としているので、どのような斜行量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。また、本来はずらす必要がない剰余がない画像のうち、重み付けを行った画像に隣接するものについては小重み付けを行った位置ズレ補間画像に変換するので、境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の一実施例について説明する。
図1は、実施例に係るインクジェット印刷システムの全体を示す概略構成図であり、
図2は、各印刷ヘッドとセンサとの位置関係を平面視で示した模式図である。
【0027】
実施例に係るインクジェットシステムは、給紙部1と、インクジェット印刷装置3と、排紙部5とを備えている。
【0028】
給紙部1は、長尺の連続紙WPをロール状で水平軸周りに回転可能に保持し、インクジェット印刷装置3に対して連続紙WPを巻き出して供給する。また、排紙部5は、インクジェット印刷装置3で印刷された連続紙WPを水平軸周りに巻き取る。連続紙WPの供給側を上流とし、連続紙WPの排紙側を下流とすると、給紙部1はインクジェット印刷装置3の上流側に配置されており、排紙部5はインクジェット印刷装置3の下流側に配置されている。
【0029】
インクジェット印刷装置3は、給紙部1から供給された連続紙WPを取り込むための駆動ローラ7を上流側に備えている。駆動ローラ7によって給紙部1から巻き出された連続紙WPは、複数個の搬送ローラ9に沿って下流側の排紙部5に向かって搬送される。最下流の搬送ローラ9と、排紙部5との間には、駆動ローラ11が配置されている。この駆動ローラ11は、搬送ローラ9上を搬送されている連続紙WPを排紙部5に向かって送り出す。また、複数個の駆動ローラ9のうち、駆動ローラ7と後述する印刷ユニット13との間に配置されている搬送ローラ9には、ロータリエンコーダ12が取り付けられている。このロータリエンコーダ12は、搬送ローラ9の回転速度に応じたパルス信号を出力する。
【0030】
なお、上述したインクジェット印刷装置3が本発明における「印刷装置」に相当し、連続紙WPが本発明における「印刷媒体」に相当する。また、ロータリエンコーダ12が本発明における「パルス信号出力手段」に相当する。
【0031】
インクジェット印刷装置3は、駆動ローラ7と駆動ローラ11との間に、印刷ユニット13と、乾燥部15と、検査部17とを上流側からその順に配置されている。乾燥部15は、印刷ユニット13によって印刷された部分の乾燥を行う。検査部17は、印刷された部分に汚れや抜け等がないかを検査する。
【0032】
印刷ユニット13には、連続紙WPの搬送方向に沿って複数個の印刷ヘッド19が配置されている。本実施例では、例えば、4個の印刷ヘッド19が配置されているものとする。各印刷ヘッド19は、連続紙WPに向けてインク滴を吐出する。
【0033】
本実施例では、各印刷ヘッド19を、上流側から順に印刷ヘッド19aと、印刷ヘッド19bと、印刷ヘッド19cと、印刷ヘッド19dと称する。以下の説明においては、4個の印刷ヘッド19をそれぞれ区別する必要がある場合には、印刷ヘッド19に小文字のアルファベットを付して示すが、それぞれの区別が不要な場合には印刷ヘッド19と単に示すことにする。
【0034】
各印刷ヘッド19は、連続紙WPの搬送方向に向かって所定距離だけ互いに離間して配置されている。第1の印刷ヘッド19a、第2の印刷ヘッド19b、第3の印刷ヘッド19c、第4の印刷ヘッド19dは、それぞれインク滴を吐出する複数個のインクジェットノズル20を備えたノズル部21を備えている。
【0035】
これらの印刷ヘッド19a〜19dは、少なくとも2色のインク滴を吐出し、連続紙WPに多色印刷が可能に構成されている。例えば、印刷ヘッド19aはブラック(K)であり、印刷ヘッド19bはシアン(C)であり、印刷ヘッド19cはマゼンタ(M)であり、印刷ヘッド19dはイエロー(Y)である。また、各ノズル部21は、連続紙WPの搬送方向に直交する方向(
図1における紙面の手前奥方向)にも複数個のインクジェットノズル20を備えているとともに、連続紙WPの搬送方向にも複数個のインクジェットノズル20を備えている。本実施例では、複数個のインクジェットノズル20が連続紙WPの搬送方向から見て所定間隔Lで配置され、連続紙WPの搬送方向に直交する方向から見ても所定間隔Lで配置されているものとする。具体的には、例えば、所定間隔L=21μmであって、1200dpiの解像度で印刷が可能であるとする。例えば、印刷物における位置ズレの制御目標を35μm程度とすると、所定間隔Lのおよそ1/4に相当する5μm程度の単位で補正を行うことができれば、十分に制御目標内でズレを制御できる。
【0036】
なお、上述した複数個のインクジェットノズル20が本発明における「複数個の記録部」に相当する。
【0037】
印刷ユニット13の上流側には、第1のセンサ23が配置され、印刷ユニット13の下流側には、第2のセンサ25が配置されている。これらの第1のセンサ23及び第2のセンサ25は、連続紙WPの搬送経路における幅方向の端部に配置され、幅方向における連続紙WPの側端面の位置を検出する。第1のセンサ23及び第2のセンサ25は、連続紙WPが正常に搬送されている際の搬送線にあたる基準線に対して、連続紙WPの側端面が傾斜したこと、及びその斜行の度合いを検出し、斜行の度合いに応じた信号を出力する。
【0038】
インクジェット印刷装置3は、制御部27を備えている。この制御部27は、図示しないCPUやメモリを備え、さらに、画像処理ユニット29を備えている。制御部27は、連続紙WPに描画する画像のデータである印刷データを外部コンピュータ(不図示)から受信し、その印刷データに基づいて連続紙WPを搬送させる。
【0039】
画像処理ユニット29は、記録位置取得部31と、位置ズレ量算出部33と、位置ズレ補間画像変換部35と、重み付け係数記憶部37と、網掛け処理部39とを備えている。
【0040】
記録位置取得部31は、制御部27が受信した印刷データに基づいて、各印刷ヘッド19で印刷される各画像の記録位置を取得する。また、位置ズレ量算出部33は、第1のセンサ23及び第2のセンサ25からの信号に基づいて斜行度合いを判断するとともに、各印刷ヘッド19における各画像の記録位置のズレ量を算出する。さらに、位置ズレ補間画像変換部35は、ズレ量と所定間隔Lとの剰余がある場合には、各画像について剰余に応じた重み付けを行って各画像について斜行方向にずらす位置ズレ補間画像に変換する。また、これに合わせて、位置ズレ補間画像変換部35は、ズレ量と所定間隔Lとの間に剰余がなくても、ズレ量と所定間隔Lとの間に状がある画像に隣接する画像については、ズレ量と所定間隔Lとの間に剰余がある場合の重み付けよりも小さな重み付け(小重み付け)を行って、各画像について斜行方向にずらす位置ズレ補間画像に変換する。
【0041】
重み付け係数記憶部37は、位置ズレ補間画像変換部35が変換を行う際に使用する重み付け係数を予め記憶している。重み付け係数は、例えば、ルックアップテーブル形式で記憶されている。網掛け処理部39は、位置ズレ補間画像に対して網掛け処理を施し、網掛け処理された各位置ズレ補間画像を各印刷ヘッド19に対して出力し、連続紙WPに対して印刷を行う。
【0042】
画像処理ユニット29は、第1のセンサ23と第2のセンサ25の出力に基づいて斜行が生じていることを検出し、そのズレ量と所定間隔Lとの剰余がない場合であって、剰余がある画像に隣接していない場合には、位置ズレ補間画像変換部35による位置ズレ補間画像への変換を行わない。この場合には、ズレ量に応じて他のインクジェットノズル20から吐出を行わせるように画像を位置ズレ画像に変換するだけである。
【0043】
なお、上述した画像処理ユニット29が本発明における「画像処理装置」に相当し、記録位置取得部31が本発明における「記録位置取得手段」に相当し、位置ズレ量算出部33が本発明における「位置ズレ量算出手段」に相当し、位置ズレ量補間画像変換部35が本発明における「位置ズレ量補間画像変換手段」に相当し、網掛け処理部39が本発明における「網掛け処理手段」に相当する。
【0044】
ここで
図2及び
図3を参照して、斜行に起因する位置ズレについて説明する。なお、
図2は、各印刷ヘッドとセンサとの位置関係を平面視で示した模式図であり、
図3は、斜行に起因する幅方向への位置ズレの説明に供する図である。以下の説明においては、発明の理解を容易にするために、印刷ヘッド19aと第2の印刷ヘッド19bの2個の印刷ヘッド19だけを例にとって説明する。
【0045】
連続紙WPに斜行が生じていない場合には、連続紙WPは、その側端部が搬送路上の基準線RL(Y軸)に沿って移動する。しかし、連続紙WPに斜行が生じると、連続紙WPは、例えば、その側端面が、基準線RLから搬送方向と直交する方向に傾斜した斜行線GLに沿って移動する。なお、搬送方向に直交し、最上流に配置されている印刷ヘッド19aの長手方向に沿った線をX軸とする。このX軸は、水平面内でY軸に直交している。
【0046】
ここで、例えば、印刷ヘッド19a(「基準印刷ヘッド」に相当する)に対する第2の印刷ヘッド19b(「対象印刷ヘッド」に相当する)におけるズレ量がMDとなる場合について説明する。このズレ量MDは、例えば、印刷ヘッド19aにより基準画像FG1が印刷され、その下流にある第2の印刷ヘッド19bにより対象画像FG2が印刷され、斜行がなければそれらが同じ位置に重なる印刷データである場合に、基準画像FG1に対して搬送方向と直交する方向に斜行量に応じてずれて参照画像FG2が印刷されてしまう場合のずれのことである。このときに基準画像FG1に対する対象画像FG2の搬送方向と直交する方向におけるズレ量は、
図3に示すようにMDとなる。
【0047】
このズレ量MDは、第1のセンサ23及び第2のセンサ25と印刷ヘッド19a及び印刷ヘッド19bとの位置関係などに基づいて、上述した位置ズレ量算出部33によって算出される。このズレ量MDが所定間隔Lで割り切れる場合、つまり、ズレ量MDが所定間隔Lの整数倍である場合、換言すると、ズレ量MDを所定間隔Lで除して剰余がない場合には、位置ズレ補間画像変換部35は、印刷データを位置ズレ補間画像に変換することなく、ズレ量MDに応じてインクジェットノズル20単位(記録限界である画素単位)で印刷データを斜行方向にシフトした位置ズレ画像を生成する。その一方、ズレ量MDが所定間隔Lで割きれない場合、つまり、ズレ量MDが所定間隔Lの整数倍でない場合、換言すると、ズレ量MDを所定間隔Lで除して剰余がある場合には、位置ズレ補間画像変換部35は、後述するように剰余分に応じた重み付けを行って、印刷データを斜行方向にずらした位置ズレ補間画像に変換する。但し、上述した剰余がない場合であっても、上記のようにズレ量MDと所定間隔Lとに剰余が生じる画像に隣接する画像の場合には、たとえ剰余が生じない場合であっても、上記の重み付けよりも小さな重み付けを行って印刷データを斜行方向にずらした位置ズレ補間画像に変換する。
【0048】
ここで
図4を参照し、上述されたインクジェット印刷装置3による印刷動作について説明する。なお、
図4は、印刷処理を示すフローチャートである。
【0049】
ステップS1
制御部27は、外部のコンピュータから印刷データを受信する。
【0050】
ステップS2(記録位置取得過程)
記録位置取得部31は、印刷データに基づいて、印刷ヘッド19a及び印刷ヘッド19bで印刷される基準画像と対象画像との記録位置を取得する。
【0051】
ステップS3(位置ズレ量算出過程)
位置ズレ量算出部33は、第1のセンサ23及び第2のセンサ25の出力信号に基づいて、印刷ヘッド19aと印刷ヘッド19bで印刷される画像データの記録位置についてズレ量MDを算出する。
【0052】
ステップS4
位置ズレ補間画像変換部35は、ズレ量MDと所定間隔Lとの剰余があるか否かによって処理を分岐する。剰余がある場合には、ステップS5に分岐し、剰余がない場合には、ステップS6に分岐する。
【0053】
ステップS5(位置ズレ補間画像変換過程)
剰余がある場合には、位置ズレ補間画像変換部35は、インクジェットノズル20ごと、つまり画素ごとにシフトしても適切に補正できない。そこで、位置ズレ補間変換部35は、例えば、印刷ヘッド19bで印刷される対象画像をズレ量MDに基づく重み付けを行って補間処理を施し、位置ズレ補間画像に変換する(詳細後述)。
【0054】
ステップS6
ズレ量MDと所定間隔Lとの剰余がある画像に隣接しているか否かによって処理を分岐する。具体的には、隣接していない場合には、ステップS7に分岐し、隣接している場合には、ステップS8に分岐する。
【0055】
ステップS7
位置ズレ補間画像変換部35は、印刷ヘッド19bで印刷される対象画像をインクジェットノズル20ごとにシフトした位置ズレ画像を生成する。
【0056】
ステップS8
位置ズレ補間画像変換部35は、剰余がある画像に隣接する場合には、ステップS5における重み付けよりも小さな重み付けを行って補間処理を施し、位置ズレ補間画像に変換する(詳細後述)。
【0057】
ステップS9
網掛け処理部39は、基準画像と対象画像(位置ズレ補間画像または位置ズレ画像)に対して網掛け処理を施す。
【0058】
ステップS10
制御部27は、網掛け処理された基準画像と対象画像とを印刷ユニット13によって印刷させる。
【0059】
ここで、
図5〜
図8を参照して、上述した重み付け処理及び小重み付け処理について説明する。なお、
図5は、Sinc関数による重み付け処理を説明するための模式図であり、
図6及び
図7は、Sinc関数による重み付け処理の具体例を示す模式図であり、
図8は、実データによる画像と変換された位置ズレ補間画像とを示す模式図である。
【0060】
位置ズレ画像変換部35は、上述したように、ズレ量MDと所定間隔Lとに剰余がある場合には、例えば、印刷データの対象画像FG2を位置ズレ補間画像に変換する。対象画像FG2は、所定間隔Lごとに実データを有する。重み付け係数CTは、例えば、三次のSinc関数である。このSinc関数を最小値がマイナスで最大値が1の窓付きの有限長とし、ルックアップテーブル形式で重み付け係数記憶部37に予め記憶してある。好ましくは、重み付け係数CTは、剰余ごとに求めて格納しておく。ここでは、例えば、画素間を所定の分割数として8分割し、剰余が所定間隔Lの1/8単位ごとに重み付け係数CTを格納しておく。
【0061】
位置ズレ補間画像変換部35は、ずらす画像である対象画像FG2について、1個の画素を含む近傍の4個の画素値に相当する範囲の画素値について、重み付け係数CTを対象画像の1個の画素値から剰余分に、さらに所定の分割数の最小単位の位置だけシフトした位置に適用する。これが「重み付け」に相当する。具体的には、
図6に示すように、剰余が1/4であった場合、重み付け係数CTを1/4からズレ量の方向に1/8シフトした3/8の位置に適用する。また、
図7に示すように、剰余が1/2であった場合、重み付け係数CTを1/2からズレ量の方向に1/8シフトした5/8の位置に適用する。図示省略しているが、同様に、剰余が3/4であった場合、重み付け係数CTを3/4からズレ量の方向に1/8シフトした7/8の位置に適用する。
【0062】
また、位置ズレ補間画像変換部35は、本来ずらさない画像であっても、ずらす画像に隣接する場合には、重み付け係数CTを対象画像の1個の画素から所定の分割数の最小単位の位置だけシフトした位置に適用する。これが「小重み付け」に相当する。つまり、
図5に示すように、重み付け係数CTを0からズレ量の方向に1/8シフトした位置に適用する。
【0063】
以下の式のように、対象画像FG2の画素P(i):P1〜P4と、ずらしたSinc関数と位置が一致するものの積和をとることで、例えば、画素P2+1/4+1/8の位置の画素の値をQ(i):Q1〜Q4として補間することができる。
【0064】
Q(i)=Σ(i=−1〜2)P(i)×Sinc(i)
=P1×Sinc1+P2×Sinc2+P3×Sinc3+P4×Sinc4
【0065】
このようにして、対象画像FG2が位置ズレ補間画像tFG2に変換される(
図8)。これにより、ズレ量MDが所定間隔Lの整数倍でなく、所定間隔Lの1/4,2/4,3/4のズレであった場合でも対応できる。したがって、どのような斜行量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。しかも、剰余がなく、ずらさない画像であっても、ずらす画像に隣接する場合も含めて1/8の重み付けを行うので、後述するように境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【0066】
但し、インクジェットノズル20は、画素間の所定の分割数の最小単位1/8よりも大きな所定間隔Lであるので、そのままでは位置ズレ補間画像tFG2を適切に印刷できない。そこで、網掛け処理部39によって以下のような処理を施す。なお、1/8単位のシフトを含む微小な画素値の変化を図示することが困難であるので、以下の網掛け処理においては、1/4単位の補間を行った場合を例にとって説明する。
【0067】
ここで、
図9及び
図10を参照する。なお、発明の理解を容易にするため、ここではズレ量MDが1/2であるとして以下に説明する。
図9は、実データの画像に網掛け処理を行う際の説明に供する図であり、
図10(a)は、実データの画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図であり、
図10(b)は、実データの画像を1ドット分だけシフトした位置ズレ補間画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図であり、
図10(c)は、実データの画像を0.5ドット分だけシフトした位置ズレ補間画像と、網掛け処理後の画像を示す模式図である。本実施例では、印刷ヘッド19が大滴と、大滴より小さい中滴と、中滴より小さい小滴の三種類のインク滴を吐出するものとする。
【0068】
大滴サイズ網データと、中滴サイズ網データと、小滴サイズ網データと、実データ(ここでは対象画像FG2とする)の画素値とが
図9に示すものであったとする。なお、各種網データのうち、大滴サイズ網データが優先的に施される。この場合には、対象画像FG2の実データにおける各画素値のうち、大滴サイズ網データの数値よりも大きな画素については大滴を適用する。次に、中滴サイズ網データ、小滴サイズ網データの順序で適用する。すると、網掛けされた対象画像hFG2が生成される。
【0069】
各種の実データと、網掛け処理後のデータを並べたのが
図10である。
図10(a)は、対象画像FG2と網掛け処理後の対象画像hFG2である。
図10(b)は、剰余がない画像に隣接せず、1ドットずらした対象画像FG2aと網掛け処理後の対象画像hFG2aである。
図10(c)は、1/2ドットずらした対象画像FG2の位置ズレ補間画像tFG2と網掛け処理後の位置ズレ補間画像htFG2である。
【0070】
1ドットずらした対象画像FG2a(
図10(b))は、位置をずらしていない網掛け処理後の対象画像hFG2(
図10(a))に対して右側へ1ドット大きくずれているのがわかる。また、1/2ドットずらした網掛け処理後の対象画像htFG2(
図10(c))は、位置をずらしていない網掛け処理後の対象画像hFG2(
図10(a))と、1ドットずらした対象画像FG2a(
図10(b))との中間程度のズレが感覚的に得られていることがわかる。
【0071】
ここで
図11を参照する。なお、
図11は、位置ズレ補間画像の模式図であり、(a)は本実施例であり、(b)は参考例である。ここで、参考例は、本出願人によって出願された特願2014−183480号によるものである。この参考例は、本実施例と同様に、ズレ量と所定間隔Lの剰余に応じて重み付けを行うものの、剰余が生じる画像に隣接する剰余が生じない画像については小重み付けを行わない。また、重み付けにおいては、剰余分に応じた重み付けだけであって、小重み付け分のかさ上げを行っていない。そのため、本実施例(
図11(a))では、剰余がない0と1においても、ズレ量の方向に画素値に重みが付加されている点において参考例(
図11(b))と顕著に異なることがわかる。
【0072】
図12を参照する。なお、
図12は、印刷結果例を示し、(a)は本実施例であり、(b)は参考例である。
【0073】
本実施例(
図12(a))の場合は、剰余が生じる1/4、3/4と、これらに隣接する剰余が生じない0と1との境界において画素値が滑らかに変化している。そのため境界が目立たない。その一方、参考例(
図12(b))の場合は、剰余が生じる1/4、3/4と、これらに隣接する剰余が生じない0と1との境界において画素値に差が目立っている。そのため境界が目立つ。したがって、本実施例では、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できることがわかる。
【0074】
図13を参照する。なお、
図13は、実データのずらしなし画像と、各種ずらし量の画像とにおける画素値の変化を示すグラフであり、(a)は本実施例であり、(b)は指数関数の例であり、(c)は参考例である。
【0075】
このグラフから、本実施例(
図13(a))では、剰余に基づく位置ズレ補間画像を生成するシフト3/8(
図13(c)ではシフト1/4に対応)に隣接する、小重み付けを行う位置ズレ補間画像を生成するシフト1/8(
図13(c)ではシフト0/4に対応)との画素値の差が小さくなっていることがわかる。その一方、参考例(
図13(c))では、それらの間における画素値の差が大きくなっており、上述した
図12(b)の境界差が目立つことを裏付けている。
【0076】
なお、上述した実施例では、重み付け係数CTをSinc関数としたが、これに代えて指数関数を採用してもよい。ここで
図14〜
図16を参照する。なお、
図14は、指数関数による重み付け処理を説明するための模式図であり、
図15及び
図16は、指数関数による重み付け処理の具体例を示す模式図である。
【0077】
指数関数は、例えば、
図14に示すような汎用ガウス窓関数であり、μ=0、σ=0.5を用いた。この指数関数を最小値が0で最大値が1未満である窓付きの有限長とし、例えば、ルックアップテーブル形式で重み付け係数記憶部37に予め記憶する。重み付け係数CTを剰余ごとに求めて格納しておくことが好ましいのは、上述したSinc関数の場合と同様である。
【0078】
位置ズレ補間画像変換部35は、ずらす画像である対象画像FG2について、1個の画素を含む近傍の4個の画素値に相当する範囲の画素値について、重み付け係数CTを対象画像の1個の画素値の位置に適用する。これが「重み付け」に相当する。具体的には、
図15に示すように、剰余が1/4であった場合、重み付け係数CTを1/4の位置にそのまま適用する。また、
図16に示すように、剰余が1/2であった場合、重み付け係数CTを1/2の位置にそのまま適用する。図示省略しているが、同様に、剰余が3/4であった場合、重み付け係数CTを3/4の位置に適用する。
【0079】
また、位置ズレ補間画像変換部35は、本来ずらさない画像であっても、ずらす画像に隣接する場合には、重み付け係数CTを対象画像の1個の画素の位置に適用する。これが「小重み付け」に相当する。つまり、
図14に示すように、重み付け係数CTを0の位置に適用する。これは、指数関数の係数が最大で1未満であることにより、上述したSinc関数のように分割数の最小単位の位置だけシフトする必要がないからである。
【0080】
この指数関数を採用した場合であっても、
図13(b)に示すように、剰余に基づく位置ズレ補間画像を生成するシフト1/4に隣接する、小重み付けを行う位置ズレ補間画像を生成するシフト0/4との画素値の差が小さくなっていることがわかる。
【0081】
また、重み付け係数CTをバイキュービック法で求めるようにしてもよい。ここで
図17を参照する。
【0082】
バイキュービック法では、例えば、
図17に示すような演算式を用いる。この関数を最小値がマイナスで最大値が1の窓付きの有限長とし、例えば、ルックアップテーブル形式で重み付け係数記憶部37に予め記憶する。この場合は、上述したSinc関数と同様の手法で重み付け及び小重み付けを行えばよい。
【0083】
ここで、
図18を参照する。なお、
図18は、CMYKの4版からなる実データを印刷する場合の例を示す模式図である。ここでは、C版に魚の図柄とCOとRが、M版に魚の図柄とLOが、Y版に魚の図柄Rが、K版に魚の図柄とFishとQRコード(登録商標)がデータとしてあるものとする。
【0084】
上述した印刷処理をCMYKの4版からなる印刷データについて適用する場合は、以下のように実施することが好ましい。
【0085】
すなわち、画像処理ユニット29は、印刷データがCMYKから構成されている場合、各版の中における線画領域を抽出する。そして、位置ズレ補間画像変換部35は、その線画領域においてズレ量MDと所定間隔Lに剰余があった場合であっても、位置ズレ補間画像の生成を行わない。なお、線画領域とは、例えば、
図18における「COLOR Fish」などの文字や、QRコード(登録商標)などのコード類のことである。
【0086】
具体的な印刷処理の流れは
図19のようになる。なお、
図19は、線画領域を含む実データの印刷処理例を示すフローチャートである。
【0087】
処理のおおまかな流れは、上述した
図4と同様である。異なるのは、線画領域の有無を判断するステップS4aとステップS6aである。これらのステップS4a,S6aにおいて線画領域がある場合には、ズレ量に剰余があっても、ズレ量に剰余がある画像に隣接してもノズル単位での位置ズレ補正画像への変換しか行わない。
【0088】
このような線画領域については、位置ズレ補間画像への変換を例外的に行わないことにより、位置ズレ補間画像への変換によって輪郭がぼやけ、線画として不鮮明になることを防止できる。したがって、線画の認識を良好にできる。
【0089】
上述した実施例では、連続紙WPの搬送方向
と直交する方向における位置ズレを補正しているが、本発明は、搬送方向における位置ズレについても適用することができる。ここで、
図20を参照する。なお、
図20は、ロータリエンコーダに起因する搬送方向への位置ズレの説明に供する図である。
【0090】
図1に示すように、インクジェット印刷装置3は、連続紙WPを駆動ローラ7,11によって搬送しつつ印刷を行う。例えば、印刷条件の搬送速度となるように駆動ローラ7,11の回転を制御部27が制御する。制御部27は、駆動ローラ7の下流であって、印刷ヘッド19aの上流側にある搬送ローラ9に連結されたロータリエンコーダ12からのパルス信号と、各印刷ヘッド19a〜19dの位置関係とに基づいて各印刷ヘッド19a〜19dからのインク滴の吐出タイミングを操作している。
【0091】
ところで、インクジェット印刷システムの構成によっては、インクジェット印刷装置3の搬送ローラ9は、印刷された後に乾燥処理された連続紙WPを搬送することがある。すると、搬送ローラ9が連続紙WPの熱によって膨張して周長が長くなる。そのため、搬送速度が一定であっても、ロータリエンコーダ12から出力されるパルス間隔が長くなる。したがって、制御部27は、搬送速度が変化したと判断して、印刷ヘッド19a〜19dからのインク滴の吐出タイミングを変えてしまい、吐出タイミングが不適切になって搬送方向における位置ズレを生じる。
【0092】
ここで
図20を参照する。なお、
図20は、ロータリエンコーダに起因する搬送方向への位置ズレの説明に供する図である。
【0093】
例えば、搬送ローラ9の膨張に起因してロータリエンコーダ12のパルス間隔が長くなると、制御部27は、連続紙WPが遅れて搬送されると判断する。例えば、印刷ヘッド19aによって基準画像FG1が印刷された後、印刷ヘッド19bにより対象画像FG2が印刷される際に、制御部27はタイミングを遅らせる。すると、実際には連続紙WPの搬送速度は一定であるので、対象画像FG2は基準画像FG1に対して搬送方向にてズレ量MDだけずれることになる。
【0094】
このような搬送方向のズレ量MDが生じる場合であっても、位置ズレ量算出部33がロータリエンコーダ12のパルス間隔の変動に基づいて各画像の記録位置のズレ量を算出する。そして、算出されたズレ量MDと、インクジェットノズル20の搬送方向における所定間隔Lとの剰余に応じて上述したように印刷処理を行うことにより、どのような搬送方向におけるズレ量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。
【0095】
具体的には、
図21に示すように印刷処理を行えばよい。なお、
図21は、搬送方向におけるズレ量に基づく印刷処理を示すフローチャートである。
【0096】
処理のおおまかな流れは、上述した
図4と同様である。異なるのは、搬送方向におけるズレ量を算出するステップ3aである。このステップ3aにおいてロータリエンコーダ29のパルス信号の変動に起因する搬送方向におけるズレ量を算出する。そして、このズレ量と、搬送方向におけるインクジェットノズル20の所定間隔との剰余に応じて位置ズレ補間画像に変換したり、ノズル単位でずらした位置ズレ画像に変換したりする。なお、剰余がなくても剰余がある画像に隣接する場合には、位置ズレ補間画像を生成することも上述した処理と同様である。
【0097】
このように印刷処理を行うことにより、どのような搬送方向におけるズレ量であっても十分に見かけ上の位置ズレを抑制できる。また、本来はずらす必要がない剰余がない画像のうち、重み付けを行った画像に隣接するものについては小重み付けを行った位置ズレ補間画像に変換するので、境界が目立たなくなり、位置ズレ補間画像を用いても印刷品質の低下を抑制できる。
【0098】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0099】
(1)上述した実施例では、対象画像FG2を位置ズレ補間画像tFG2としたが、基準画像FG1をズレ量MDの方向とは反対側にずらして位置ズレ補間画像tFG1としてもよい。
【0100】
(2)上述した実施例では、位置ズレ補間画像に変換する際に、三次のSinc関数、指数関数、バイキュービック法を用いているが、本発明はこれらの補間手法に限定されるものではない。
【0101】
(3)上述した実施例では、重み付けを行う際に、ずらす画像の1個の画素値を含む近傍の4個の画素値に相当する範囲を対象に処理したが、本発明はこの範囲に限定されるものではない。例えば、処理時の負荷が問題にならなければ、5個以上の画素値に相当する範囲を対象に処理してもよい。
【0102】
(4)上述した実施例では、インクジェット印刷装置3を例にとって説明したが、本発明は印刷ヘッドが搬送方向に離間して配置されている他の印刷方式の印刷装置にも適用できる。
【0103】
(5)上述した実施例では、インクジェット印刷装置3の印刷媒体として連続紙WPを例にとって説明したが、本発明は、印刷媒体が連続紙WPに限定されるものではなく、例えばフィルムなどであっても適用できる。