特許第6538560号(P6538560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6538560ソルボサーマル処理によるチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法、ならびに前記混合酸化物を含む電極およびリチウム蓄電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538560
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】ソルボサーマル処理によるチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法、ならびに前記混合酸化物を含む電極およびリチウム蓄電池
(51)【国際特許分類】
   C01G 33/00 20060101AFI20190625BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20190625BHJP
【FI】
   C01G33/00 A
   H01M4/485
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-537320(P2015-537320)
(86)(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公表番号】特表2016-500635(P2016-500635A)
(43)【公表日】2016年1月14日
(86)【国際出願番号】FR2013052099
(87)【国際公開番号】WO2014060662
(87)【国際公開日】20140424
【審査請求日】2016年7月21日
【審判番号】不服2018-10538(P2018-10538/J1)
【審判請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】1259881
(32)【優先日】2012年10月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リュシエンヌ・ビュアニック
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フランソワ・コリン
(72)【発明者】
【氏名】リーズ・ダニエル
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 菊地 則義
【審判官】 小川 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−196641(JP,A)
【文献】 特開2010−188226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 33/00
B01J 21/00-38/74
H01M 4/48- 4/485
J−GLOBAL
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって、非晶形のチタンおよびニオブ混合酸化物を調製する段階と、
前記ソルボサーマル処理の最後に得られたチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕する段階と、
破砕後に得られた混合酸化物をか焼する段階と、
を含む、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項2】
チタンおよびニオブ前駆体のソルボサーマル処理を200から250℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項3】
か焼する段階より前に、非晶形の混合酸化物を洗浄することを特徴とする、請求項1または2に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項4】
前記か焼する段階を700から1200℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項5】
前記チタン前駆体が、オキシ硫酸チタン(TiOSO)、チタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH)、塩化チタン(TiCl)、チタンブトキシド(Ti(OC)を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【請求項6】
前記ニオブ前駆体が、塩化ニオブ(NbCl)、ニオブエトキシド(Nb(OC)を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のチタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法に関する。本発明はまた、この混合酸化物に基づく電極、および前記電極を備えたリチウム蓄電池に関する。
本発明を使用する分野は、特にポータブル電子デバイス、ハイブリッドまたは電気自動車用の電力の貯蔵、また光電池由来の電力の貯蔵にも関する。
【背景技術】
【0002】
ニッケルカドミウム(Ni−Cd)、ニッケル水素(Ni−MH)、またはリチウム型などの蓄電池の電気エネルギー貯蔵能力は、電子デバイスのユーザーに著しいエネルギーの自給を提供する。
このような蓄電池の最適化には、エネルギー密度の向上、言い換えると、体積および質量単位当たりの貯蔵エネルギー容量の向上が特に必要とされる。これに関して、質量および体積エネルギー密度がNi−CdおよびNi−MH蓄電池よりも一般的に大きいため、特にポータブルデバイスの分野ではリチウム蓄電池が広く使用されている。
【0003】
例えば、200Wh/kg程度のエネルギー密度を有するリチウムイオン蓄電池が開発された。比較として、Ni−CdおよびNi−MH蓄電池は、それぞれ50および100Wh/kgを超えない。
このような蓄電池の最適化によってまた、新たな電極材料の開発および使用がもたらされた。
市販のリチウム蓄電池の正極活物質の場合、LiCoO、LiNiO、および混合化合物Li(Ni、Co、Mn、Al)Oなどの層状化合物、またはLiMnに近い組成のスピネル型構造を有する化合物がある。
【0004】
しかしながら、負極活物質は一般的に、炭素(黒鉛、コークスなど)、LiTi12スピネル、またはリチウムと合金を形成する金属(Sn、Siなど)である。黒鉛およびチタン酸化物負極化合物の理論的な実用比容量は、それぞれ約370mAh/gおよび170mAh/gである。
【0005】
黒鉛より容量は低いが、化合物LiTi12は、特に(i)約1.6Vの高い作動電位であり、非常に安全である、(ii)非常に優れた高レートサイクル性、に関して利点を有する。
その他の材料、特にニオブ酸化物、チタンおよびニオブ混合酸化物が開発された。ニオブは、チタンに近い作動電位を有する。ニオブはさらに、金属当たり2つの電子を交換することができる(Nb5++2e⇔Nb3+)。
【0006】
チタンおよびニオブ混合酸化物の中で、ATiNbO型(A=H、Li)層状酸化物、TiNb、TiNb、およびTiNb1029について言及することができる。これらの化合物の中には250mAh/g程度の容量を有するものもある。しかしながら、これらの酸化物の中には、リチウム蓄電池に必要な可逆性を提供しないという欠点を有するものがある。
【0007】
さらに、これらの混合酸化物の容量は、高レートで大幅に減少するものがある。ニオブドープおよび炭素被覆は、この容量損失を軽減または解消し得る。しかしながら、この技術は、産業規模での想定が困難な実験条件(真空、不活性雰囲気)を必要とする。
【0008】
これらの欠点を克服するために、ゾルゲル法によるTiNbの合成が開発された。ここで、この方法は、フッ酸の使用を暗示する。さらに、TiNb化合物の低レート特性は280mAh/gに達するが、高レートでの使用では容量が低下する。
【0009】
その他の合成、特に固体プロセスによるTi0.9Nb2.1の合成が開発された。この材料は、炭素で被覆した場合、9Cで190mAh/gの容量を有しており、これは低レート容量の67%である。しかしながら、この合成もまた、ニオブドープおよび炭素被覆段階のための制約のある実験条件(真空および不活性雰囲気)を必要とする。
【0010】
本出願人は、真空または不活性雰囲気などの実験条件を必要としない、チタンおよびニオブ混合酸化物の合成方法を開発した。
したがって、本発明は、従来の酸化物に対して改良された高レート挙動を有するチタンおよびニオブ混合酸化物材料を高速で調製することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本出願人は、従来の方法と比較してエネルギーをあまり必要とせずに、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製を可能にする方法を開発した。さらに、この方法は、得られる混合酸化物の特性、および混合酸化物を含む蓄電池の電気化学特性もまた最適化することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本方法は特に、チタンおよびニオブベースの前駆体のソルボサーマル合成を含む。このようなソルボサーマル処理は、低いか焼温度を維持することを可能にし、イオン伝導が促進される。本発明による方法は、特定の雰囲気を必要としない。
【0013】
より詳細には、本発明は、
少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって、非晶形のチタンおよびニオブ混合酸化物を調製する段階と、
前記ソルボサーマル処理の最後に得られたチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕する段階と、
破砕後に得られた混合酸化物をか焼する段階と、
を含む、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法に関する。
【0014】
得られたチタンおよびニオブ混合酸化物は、好ましくは、式TiNb2y(2x+5y)(またはxTiO+yNb):式中、xは1から2の範囲内であり、yは1から12の範囲内である、に対応しており、xおよびyは必ずしも整数である必要はないが、好ましくは整数である。
【0015】
[ソルボサーマル処理]
一般的に、ソルボサーマル処理は、
チタンおよびニオブ前駆体を溶液にする段階と、
前駆体を沈殿させる段階と、
得られた沈殿前駆体を加圧下で熱処理する段階と、
を含む。
【0016】
前駆体を溶液にする段階は、エタノールなどのアルコール中で有利に実施される。変形例として、イソプロパノール、ブタノール、またはグリコールなどのその他のアルコールも使用可能である。
前駆体は、有利には、均一な混合物を形成するために同一の溶液中で可溶化される。
得られた混合物の沈殿は、有利には約10にpHを調整することよって実施得る。この段階は、有利には、アンモニアの添加によって実施され得る。
前駆体混合物の沈殿は、ペースト状となり得る。
【0017】
一般的に、沈殿した前駆体の混合物に行われるソルボサーマル処理は、200から250℃の範囲内の温度、有利には220℃程度の温度で実施され得る。
昇温は、1から5℃/分の範囲内、有利には2℃/分に対応し得る。
一方で、冷却の傾斜は1から10℃/分の範囲内、有利には5℃/分であり得る。
ソルボサーマル処理の時間は、2から10時間の範囲内、有利には5時間程度とすることができる。一般的に、処理時間は、混合物を加熱および冷却するために必要な時間は含まない。
しかしながら、条件は、処理される材料の量に依存し得る。
【0018】
好ましい実施形態によると、ソルボサーマル処理は、加圧下で熱処理を行うために、熱水圧力容器(反応炉、オートクレーブ)内で実施される。容器(一般的にポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))製)のデッドボリュームは、有利には全容積の3分の2であり得る。
【0019】
[洗浄]
本発明による方法は、か焼段階の前に少なくとも1つの洗浄段階を含み得る。
ソルボサーマル処理が終了するとすぐに、有利にはペースト状で現れる、得られた混合物(非晶形の混合酸化物)は、混合酸化物から不要な複生成物を分離するために洗浄することができる。
洗浄段階は、好ましくは蒸留水で実施される。洗浄は、上澄み液のpHが6から7の範囲内になるまで、次の遠心分離段階によって実施され得る。このような洗浄は特に、存在し得る残留硫酸、塩化物および水酸化物の除去を可能にする。
洗浄の最後に、有利には空気で、特に、有利には少なくとも60℃かつ150℃未満の温度を有するストーブ中で、混合物を乾燥させる。
【0020】
[破砕]
本発明による方法は、チタンおよびニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって得られた非晶質混合酸化物を機械的に破砕する段階を含む。
破砕は、任意の洗浄の後に有利に実施される。しかしながら、破砕は、か焼段階より前に実施される。
破砕は、300から500回毎分の範囲内、有利には500回毎分程度の速度で粉砕ミルで一般的に実施される。
例えば粉砕ミルは、Retsch−S−100型遠心ボールミルとすることができる。
破砕段階は、有利には15から120分間、より有利には30分間程度続ける。
破砕は特に、か焼段階の前に粒度を均一化させることを可能にする。
【0021】
さらに、本出願人は、か焼段階より前に破砕の段階を実施することで、中間破砕を行わずにソルボサーマル工程によって合成した酸化物と比較して、チタンおよびニオブ混合酸化物に優れた電気化学的サイクル安定性をもたらすことを確認した。
【0022】
[か焼]
チタンおよびニオブ混合酸化物のか焼は、700から1200℃、好ましくは700から1000℃の範囲内の温度で有利に実施される。
この段階は、30分から2時間、より有利には1時間程度続ける。
さらに、昇温速度は、1から5℃/minの範囲内、有利には3℃/min程度とすることができる。
冷却速度は、5から20℃/minの範囲内、有利には10℃/min程度とすることができる。
【0023】
この段階は、チタンおよびニオブ混合酸化物の組織の結晶化を促進する。また、本発明による方法の全ての段階と同様に、空気下で実施することができる。
化合物の最適なか焼温度は、合成される混合酸化物の化学量論に依存することに留意すべきである。一般化することはできない。
【0024】
[前駆体]
チタン前駆体は、オキシ硫酸チタン(TiOSO)、チタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH)、塩化チタン(TiCl)、およびチタンブトキシド(Ti(OC)を含む群から有利に選択され得る。
ニオブ前駆体は、有利には、ニオブV化合物、および特に塩化ニオブ(NbCl)またはニオブエトキシド(Nb(OC)である。
【0025】
[混合酸化物‐使用]
本発明はまた、上述の方法によって得られたチタンおよびニオブ混合酸化物に関する。特に、式TiNb2y(2x+5y)(またはxTiO+yNb):式中、xは1から2の範囲内にあり、yは1から12の範囲内にある、を有する混合酸化物とすることができ、ここでxおよびyは必ずしも整数である必要はないが、好ましくは整数である。
【0026】
特定の実施形態によると、混合酸化物はTiNb、x=1およびy=1である。
別の特定の実施形態によると、混合酸化物は、TiNb1029、x=2およびy=5である。
本発明の方法は、従来の方法と比較して、混合酸化物の比表面積を増加させることを可能にする。したがって、材料の比容量の修正をもたらし得る。
【0027】
したがって、本発明の混合酸化物の比表面積は、有利には1m/gから50m/gの範囲内、より有利には5から45m/gの範囲内である。
有利には1マイクロメートルより小さな径を有する粒子の形態で現れ得る。しかしながら、このような粒子は数十マイクロメートルのクラスターを形成し得る。
【0028】
特に、か焼より前に破砕を行うことで、本発明の混合酸化物に二つの集団を有する特定の粒度分布を与えることが可能となる。集団の一方は、0.4マイクロメートルを中心とした0.2から1マイクロメートルの範囲内の平均直径を有するいわゆる一次粒子でできた第一集団であり、もう一方は一次粒子のクラスターでできた第二集団であって、前記クラスターは10マイクロメートルを中心とした4から14マイクロメートルの範囲内の平均直径を有する。
逆に言うと、破砕段階を行わない場合、粒度分布は分散するようである。
【0029】
このリチウム酸化物は、電極、特にリチウム蓄電池を対象とした電極の製造に使用され得る。
その特性に起因して、また従来の化合物と比較して、本発明のチタンおよびニオブ混合酸化物は、より多くのエネルギーを必要とする用途に使用され得る。
【0030】
例えば、先行技術のリチウム蓄電池で現在使用されているLiTi12化合物は175mAh/gの理論容量を有する一方で、TiNbおよびTiNb1029化合物は、それぞれ388mAh/gおよび396mAh/gの理論容量を有する。
さらに、化合物TiNbおよびTiNb1029の作動電位はLiTi12に近く、安全性の点でその利点を維持することが可能となる。
【0031】
[電極‐リチウム蓄電池]
本発明のチタンおよびニオブ混合酸化物を含む電極、およびこの種の電極を少なくとも1つ備えるリチウム蓄電池もまた本発明の一部を形成する。
したがって、本発明のチタンおよびニオブ混合酸化物は、Liイオン挿入物質としてこの種の構造において使用することができる。
【0032】
リチウム蓄電池とは特に、金属リチウムを活物質として含む負極と、挿入物質を含む正極とを備えた金属リチウム蓄電池、またはリチウムがLiイオンの状態を維持するリチウムイオン蓄電池を意味する。一般的に、後者の蓄電池の正極および負極は、それぞれ挿入物質を含む。
一般的に、リチウム蓄電池は、少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極とを備える。逆符号の電極は、電解液(イオン伝導体)で含浸される電極セパレータによって分離される。
【0033】
活物質として金属リチウムを有さない電極は、当業者の一般的知識に含まれる先行技術によって、特に少なくとも1つの電極活物質、電子伝導体、およびバインダを含むインクに基づいて調製することができる。
電極は、集電体として使用される金属板(例えばアルミニウム)上に堆積させることができる。
【0034】
バインダは、優れたイオン伝導および十分な機械的挙動を提供することを可能にする。特に、ポリエーテル;ポリエステル;カルボキシメチルセルロース;メチルメタクリレート、アクリロニトリル、またはフッ化ビニリデンなどの少なくとも1つのモノマーベースのポリマー;を含む群から選択された少なくとも1つの化合物とすることができる。
電子伝導体は、電極から集電体への電流移動を容易にすることを可能にする。ナノメートル範囲の炭素、例えばSuper P(登録商標)またはVGCF(「気相成長炭素繊維」)などとすることができる。
【0035】
既に述べたように、リチウム蓄電池は、電解液(イオン伝導体)で含浸された電極セパレータを備える。電解液は、Liイオン伝導体であり、Liカチオンが一方の電極からもう一方の電極へと移動することを可能にする。有利には、少なくとも部分的にリチウムからなるそのカチオンを有する塩および非プロトン性溶媒を含む。例えばLiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiRFSO、LiCHSO、LiN(RFSO、LiC(RFSO、LiTFSI(リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiBOB(ビス(オキサラト)ボラート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド)などのLiカチオンを含むリチウム塩でできていてよい。
【0036】
これらの式において、RF基は、有利にはフッ素原子、または1から8の炭素原子を含むことができるパーフルオロアルキル基である。
リチウム塩は、好ましくは非極性溶媒(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネートなど)に溶解し、リチウム蓄電池の逆符号の2つの電極の間に配置されたセパレータに支持される。
【0037】
電解液は、ポリマー系であってもよい。この場合、リチウム塩は有機溶媒に溶解しないが、特に、POE(ポリエチレンオキシド)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVdF(フッ化ポリビニリデン)またはその誘導体などの固体ポリマー複合体である。
【0038】
既に示唆したように、本発明のリチウム蓄電池は、金属リチウム蓄電池またはリチウムイオン蓄電池であってよい。
特定の実施形態によると、本発明のリチウム蓄電池は、その負極活物質として上述のチタンおよびニオブ混合酸化物を有するリチウムイオン蓄電池である。負極は、主にチタンおよびニオブ混合酸化物で作製することができる。
【0039】
この場合、正極は負極へのリチウム源となり得るあらゆる種類の周知の材料で作製することができる。電極材料は、初期にはLiイオンを供給し、その後それらを再挿入することができる。例えば、正極は、層状のLi1+vNiMnCo材料(式中、x+y+z+v=1)、LiNiMn2−uスピネル型材料(式中、0<u<1)、またはLiMPOリン酸塩型の材料(式中、M=Fe、Mn、Co、Ni)で作製することができる。
【0040】
したがって、リチウムイオン蓄電池では、リチウムは決して金属形態ではなく、それぞれ蓄電池の充電および放電のために、負極および正極の2つのリチウム挿入材料の間を行き来するLiカチオンの形態である。
金属リチウム蓄電池の場合、負極は金属リチウムでできており、正極の活物質は本発明のチタンおよびニオブ金属酸化物を含むことができる。
【0041】
本発明およびその利点は、本発明を図示するために提供された以下の非限定的な図面および実施例から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a】TiNb材料(750℃でか焼)の走査型電子顕微鏡による写真を示す。
図1b】本発明の方法によって得られたTiNb材料(機械的破砕および750℃でか焼)の走査型電子顕微鏡による写真を示す。
図1c】TiNb材料の粒径に対する体積百分率に対応するグラフを示す(機械破砕有りまたは無し、750℃でか焼)。
図2a】本発明の方法によって得られたTiNb1029(950℃でか焼)の走査型電子顕微鏡による写真を示す。
図2b】本発明の方法によって得られたTiNb1029(機械破砕および950℃でか焼)の走査型電子顕微鏡による写真を示す。
図3a】本発明の方法によって得られたTiNb材料(750℃でか焼)の電圧に対するC/10での比容量に対応するグラフを示す。
図3b】本発明の方法によって得られたTiNb1029材料(950℃でか焼)の電圧に対するC/10での比容量に対応するグラフを示す。
図4a】破砕有りまたは無しで、本発明の方法によって得られたTiNb材料(750℃でか焼)に対する、3.0と1.0Vの間で異なるレート(C/10Cおよび10C)でのサイクル回数に対する比容量の変化に対応するグラフを示す。
図4b】破砕有りまたは無しで、本発明の方法によって得られたTiNb1029材料(950℃でか焼)に対する、3.0と1.0Vの間で異なるレート(C/10Cおよび10C)でのサイクル回数に対する比容量の変化に対応するグラフを示す。
図5a】本発明の方法によって得られたTiNb材料(破砕有りまたは無し、950℃でか焼)に対する、3.0と1.0Vの間で異なるレート(C/10Cおよび10C)でのサイクル回数に対する比容量の変化に対応するグラフを示す。
図5b】本発明の方法によって得られたTiNb1029材料(破砕有りまたは無し、750℃でか焼)に対する、3.0と1.0Vの間で異なるレート(C/10Cおよび10C)でのサイクル回数に対する比容量の変化に対応するグラフを示す。
図6a】従来技術による固体プロセスによって得られたTiNb材料の走査型電子顕微鏡による写真を示す。
図6b】従来技術による固体プロセスによって得られたTiNb1029材料の走査型電子顕微鏡による写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[実施例1]本発明の方法によるTiNbの合成(図1aおよび1b)
アルゴン雰囲気下で機械撹拌しながらNbCl(3.13g)を10mLの無水エタノールに溶解する。溶液は空気下で移動させる。
15質量%のオキシ硫酸チタン(TiOSO)(6.17g)の硫酸溶液をこの溶液に加える。
次いで、10mLのエタノールを加えて前駆体を溶解する。これらの工程は全てマグネチックスターラーで撹拌しながら行う。
28質量%のアンモニア水溶液をゆっくり加えることによって、溶液のpHを10に調整する。
得られたペーストは、オートクレーブ内に配置された90mLの容積を有するテフロン容器に移し、昇温および冷却速度それぞれ2および5℃/minで220℃まで5時間加熱する。
6から7の間のpHが得られるまで遠心分離によって、ペーストを蒸留水で洗浄する。
【0044】
化合物を60℃まで12時間加熱し、次いでヘキサン中で500rpmで30分間機械的に破砕する。
溶媒の蒸発後、昇温/冷却速度3℃/minで粉末を750℃で1時間か焼してTiNbを結晶化させる。
熱処理、破砕処理、およびか焼処理後の材料の比表面積、および材料の外観を表1および図1に示す(サンプル2、4、6)。
この材料を、破砕処理を行っていない同一の材料(サンプル1、3、5)と比較する。
【0045】
[実施例2]本発明の方法によるTiNb1029の合成(図2aおよび2b)
アルゴン雰囲気下で機械撹拌しながらNbCl(3.63g)を10mLの無水エタノールに溶解する。
溶液は空気下で移動させる。
15質量%のオキシ硫酸チタン(TiOSO)(2.865g)の硫酸溶液をこの溶液に加える。
次いで、10mLのエタノールを加えて前駆体を溶解する。これらの工程は全てマグネチックスターラーで撹拌しながら行う。
28質量%のアンモニア水溶液をゆっくり加えることによって、溶液のpHを10に調整する。
ペーストは、オートクレーブ内に配置された90mLの容積を有するテフロン容器に移し、昇温および冷却速度それぞれ2および5℃/minで220℃まで5時間加熱する。
6から7の間のpHが得られるまで遠心分離によって、ペーストを蒸留水で洗浄する。
【0046】
化合物を60℃まで12時間加熱し、次いでヘキサン中で500rpmで30分間機械的に破砕する。
溶媒の蒸発後、昇温/冷却速度3℃/minで粉末を950℃で1時間か焼してTiNb1029を結晶化させる。
熱処理、破砕処理、およびか焼処理後の材料の比表面積、および材料の外観を表2および図2に示す(サンプル8、10、12)。
この材料を、破砕処理を行っていない同一の材料(サンプル7、9、11)と比較する。
【0047】
[実施例3]実施例1および2の材料を含む金属リチウム蓄電池(図3から5)
以下の要素を組み立てることによってボタン電池型の金属リチウム蓄電池を調製する。
‐集電体として使用されるニッケルディスク上に堆積されたリチウム負極(16mm径、130μm厚)
‐実施例1および2によって調製された本発明の材料(80質量%)、電子伝導体としてSuper P炭素(10質量%)、バインダとしてフッ化ポリビニリデン(10質量%)、を含む25μm厚を有する複合膜からサンプルされた14mm径を有するディスク形状の正極であって、全ての材料はアルミニウム集電体(20μm厚を有するシート)上に堆積されている、正極
‐エチルカーボネート、プロピレンカーボネート、およびジメチルカーボネートの混合物中にLiPF塩が溶解した(1mol/L)電解液で含浸されたセパレータ
【0048】
実施例1および2に記載された材料で調製された蓄電池の電気化学特性を図3から5に図示する。
これらを、か焼していない実施例1および2の材料で調製した蓄電池の特性と比較する。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
[比較例]CE1およびCE2(図6
それぞれチタンおよびニオブ酸化物の機械破砕の後に1150℃で24時間か焼する、従来技術の固体プロセスによって、TiNb(CE1)およびTiNb1029(CE2)酸化物を調製した。
これらの材料の比表面積値を表3にまとめる。
【0052】
【表3】
図1a
図1b
図1c
図2a)】
図2b)】
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6a)】
図6b)】