【課題を解決するための手段】
【0012】
本方法は特に、チタンおよびニオブベースの前駆体のソルボサーマル合成を含む。このようなソルボサーマル処理は、低いか焼温度を維持することを可能にし、イオン伝導が促進される。本発明による方法は、特定の雰囲気を必要としない。
【0013】
より詳細には、本発明は、
少なくとも1つのチタン前駆体および少なくとも1つのニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって、非晶形のチタンおよびニオブ混合酸化物を調製する段階と、
前記ソルボサーマル処理の最後に得られたチタンおよびニオブ混合酸化物を機械的に破砕する段階と、
破砕後に得られた混合酸化物をか焼する段階と、
を含む、チタンおよびニオブ混合酸化物の調製方法に関する。
【0014】
得られたチタンおよびニオブ混合酸化物は、好ましくは、式Ti
xNb
2yO
(2x+5y)(またはxTiO
2+yNb
2O
5):式中、xは1から2の範囲内であり、yは1から12の範囲内である、に対応しており、xおよびyは必ずしも整数である必要はないが、好ましくは整数である。
【0015】
[ソルボサーマル処理]
一般的に、ソルボサーマル処理は、
チタンおよびニオブ前駆体を溶液にする段階と、
前駆体を沈殿させる段階と、
得られた沈殿前駆体を加圧下で熱処理する段階と、
を含む。
【0016】
前駆体を溶液にする段階は、エタノールなどのアルコール中で有利に実施される。変形例として、イソプロパノール、ブタノール、またはグリコールなどのその他のアルコールも使用可能である。
前駆体は、有利には、均一な混合物を形成するために同一の溶液中で可溶化される。
得られた混合物の沈殿は、有利には約10にpHを調整することよって実施得る。この段階は、有利には、アンモニアの添加によって実施され得る。
前駆体混合物の沈殿は、ペースト状となり得る。
【0017】
一般的に、沈殿した前駆体の混合物に行われるソルボサーマル処理は、200から250℃の範囲内の温度、有利には220℃程度の温度で実施され得る。
昇温は、1から5℃/分の範囲内、有利には2℃/分に対応し得る。
一方で、冷却の傾斜は1から10℃/分の範囲内、有利には5℃/分であり得る。
ソルボサーマル処理の時間は、2から10時間の範囲内、有利には5時間程度とすることができる。一般的に、処理時間は、混合物を加熱および冷却するために必要な時間は含まない。
しかしながら、条件は、処理される材料の量に依存し得る。
【0018】
好ましい実施形態によると、ソルボサーマル処理は、加圧下で熱処理を行うために、熱水圧力容器(反応炉、オートクレーブ)内で実施される。容器(一般的にポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))製)のデッドボリュームは、有利には全容積の3分の2であり得る。
【0019】
[洗浄]
本発明による方法は、か焼段階の前に少なくとも1つの洗浄段階を含み得る。
ソルボサーマル処理が終了するとすぐに、有利にはペースト状で現れる、得られた混合物(非晶形の混合酸化物)は、混合酸化物から不要な複生成物を分離するために洗浄することができる。
洗浄段階は、好ましくは蒸留水で実施される。洗浄は、上澄み液のpHが6から7の範囲内になるまで、次の遠心分離段階によって実施され得る。このような洗浄は特に、存在し得る残留硫酸、塩化物および水酸化物の除去を可能にする。
洗浄の最後に、有利には空気で、特に、有利には少なくとも60℃かつ150℃未満の温度を有するストーブ中で、混合物を乾燥させる。
【0020】
[破砕]
本発明による方法は、チタンおよびニオブ前駆体のソルボサーマル処理によって得られた非晶質混合酸化物を機械的に破砕する段階を含む。
破砕は、任意の洗浄の後に有利に実施される。しかしながら、破砕は、か焼段階より前に実施される。
破砕は、300から500回毎分の範囲内、有利には500回毎分程度の速度で粉砕ミルで一般的に実施される。
例えば粉砕ミルは、Retsch−S−100型遠心ボールミルとすることができる。
破砕段階は、有利には15から120分間、より有利には30分間程度続ける。
破砕は特に、か焼段階の前に粒度を均一化させることを可能にする。
【0021】
さらに、本出願人は、か焼段階より前に破砕の段階を実施することで、中間破砕を行わずにソルボサーマル工程によって合成した酸化物と比較して、チタンおよびニオブ混合酸化物に優れた電気化学的サイクル安定性をもたらすことを確認した。
【0022】
[か焼]
チタンおよびニオブ混合酸化物のか焼は、700から1200℃、好ましくは700から1000℃の範囲内の温度で有利に実施される。
この段階は、30分から2時間、より有利には1時間程度続ける。
さらに、昇温速度は、1から5℃/minの範囲内、有利には3℃/min程度とすることができる。
冷却速度は、5から20℃/minの範囲内、有利には10℃/min程度とすることができる。
【0023】
この段階は、チタンおよびニオブ混合酸化物の組織の結晶化を促進する。また、本発明による方法の全ての段階と同様に、空気下で実施することができる。
化合物の最適なか焼温度は、合成される混合酸化物の化学量論に依存することに留意すべきである。一般化することはできない。
【0024】
[前駆体]
チタン前駆体は、オキシ硫酸チタン(TiOSO
4)、チタンイソプロポキシド(Ti(OCH(CH
3)
2)
4)、塩化チタン(TiCl
4)、およびチタンブトキシド(Ti(OC
4H
9)
4)を含む群から有利に選択され得る。
ニオブ前駆体は、有利には、ニオブV化合物、および特に塩化ニオブ(NbCl
5)またはニオブエトキシド(Nb(OC
2H
5)
5)である。
【0025】
[混合酸化物‐使用]
本発明はまた、上述の方法によって得られたチタンおよびニオブ混合酸化物に関する。特に、式Ti
xNb
2yO
(2x+5y)(またはxTiO
2+yNb
2O
5):式中、xは1から2の範囲内にあり、yは1から12の範囲内にある、を有する混合酸化物とすることができ、ここでxおよびyは必ずしも整数である必要はないが、好ましくは整数である。
【0026】
特定の実施形態によると、混合酸化物はTiNb
2O
7、x=1およびy=1である。
別の特定の実施形態によると、混合酸化物は、Ti
2Nb
10O
29、x=2およびy=5である。
本発明の方法は、従来の方法と比較して、混合酸化物の比表面積を増加させることを可能にする。したがって、材料の比容量の修正をもたらし得る。
【0027】
したがって、本発明の混合酸化物の比表面積は、有利には1m
2/gから50m
2/gの範囲内、より有利には5から45m
2/gの範囲内である。
有利には1マイクロメートルより小さな径を有する粒子の形態で現れ得る。しかしながら、このような粒子は数十マイクロメートルのクラスターを形成し得る。
【0028】
特に、か焼より前に破砕を行うことで、本発明の混合酸化物に二つの集団を有する特定の粒度分布を与えることが可能となる。集団の一方は、0.4マイクロメートルを中心とした0.2から1マイクロメートルの範囲内の平均直径を有するいわゆる一次粒子でできた第一集団であり、もう一方は一次粒子のクラスターでできた第二集団であって、前記クラスターは10マイクロメートルを中心とした4から14マイクロメートルの範囲内の平均直径を有する。
逆に言うと、破砕段階を行わない場合、粒度分布は分散するようである。
【0029】
このリチウム酸化物は、電極、特にリチウム蓄電池を対象とした電極の製造に使用され得る。
その特性に起因して、また従来の化合物と比較して、本発明のチタンおよびニオブ混合酸化物は、より多くのエネルギーを必要とする用途に使用され得る。
【0030】
例えば、先行技術のリチウム蓄電池で現在使用されているLi
4Ti
5O
12化合物は175mAh/gの理論容量を有する一方で、TiNb
2O
7およびTi
2Nb
10O
29化合物は、それぞれ388mAh/gおよび396mAh/gの理論容量を有する。
さらに、化合物TiNb
2O
7およびTi
2Nb
10O
29の作動電位はLi
4Ti
5O
12に近く、安全性の点でその利点を維持することが可能となる。
【0031】
[電極‐リチウム蓄電池]
本発明のチタンおよびニオブ混合酸化物を含む電極、およびこの種の電極を少なくとも1つ備えるリチウム蓄電池もまた本発明の一部を形成する。
したがって、本発明のチタンおよびニオブ混合酸化物は、Li
+イオン挿入物質としてこの種の構造において使用することができる。
【0032】
リチウム蓄電池とは特に、金属リチウムを活物質として含む負極と、挿入物質を含む正極とを備えた金属リチウム蓄電池、またはリチウムがLi
+イオンの状態を維持するリチウムイオン蓄電池を意味する。一般的に、後者の蓄電池の正極および負極は、それぞれ挿入物質を含む。
一般的に、リチウム蓄電池は、少なくとも1つの正極と、少なくとも1つの負極とを備える。逆符号の電極は、電解液(イオン伝導体)で含浸される電極セパレータによって分離される。
【0033】
活物質として金属リチウムを有さない電極は、当業者の一般的知識に含まれる先行技術によって、特に少なくとも1つの電極活物質、電子伝導体、およびバインダを含むインクに基づいて調製することができる。
電極は、集電体として使用される金属板(例えばアルミニウム)上に堆積させることができる。
【0034】
バインダは、優れたイオン伝導および十分な機械的挙動を提供することを可能にする。特に、ポリエーテル;ポリエステル;カルボキシメチルセルロース;メチルメタクリレート、アクリロニトリル、またはフッ化ビニリデンなどの少なくとも1つのモノマーベースのポリマー;を含む群から選択された少なくとも1つの化合物とすることができる。
電子伝導体は、電極から集電体への電流移動を容易にすることを可能にする。ナノメートル範囲の炭素、例えばSuper P(登録商標)またはVGCF(「気相成長炭素繊維」)などとすることができる。
【0035】
既に述べたように、リチウム蓄電池は、電解液(イオン伝導体)で含浸された電極セパレータを備える。電解液は、Li
+イオン伝導体であり、Li
+カチオンが一方の電極からもう一方の電極へと移動することを可能にする。有利には、少なくとも部分的にリチウムからなるそのカチオンを有する塩および非プロトン性溶媒を含む。例えばLiClO
4、LiAsF
6、LiPF
6、LiBF
4、LiRFSO
3、LiCH
3SO
3、LiN(RFSO
2)
2、LiC(RFSO
2)
3、LiTFSI(リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド)、LiBOB(ビス(オキサラト)ボラート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチルスルホニル)イミド)などのLi
+カチオンを含むリチウム塩でできていてよい。
【0036】
これらの式において、RF基は、有利にはフッ素原子、または1から8の炭素原子を含むことができるパーフルオロアルキル基である。
リチウム塩は、好ましくは非極性溶媒(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、またはエチルメチルカーボネートなど)に溶解し、リチウム蓄電池の逆符号の2つの電極の間に配置されたセパレータに支持される。
【0037】
電解液は、ポリマー系であってもよい。この場合、リチウム塩は有機溶媒に溶解しないが、特に、POE(ポリエチレンオキシド)、PAN(ポリアクリロニトリル)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVdF(フッ化ポリビニリデン)またはその誘導体などの固体ポリマー複合体である。
【0038】
既に示唆したように、本発明のリチウム蓄電池は、金属リチウム蓄電池またはリチウムイオン蓄電池であってよい。
特定の実施形態によると、本発明のリチウム蓄電池は、その負極活物質として上述のチタンおよびニオブ混合酸化物を有するリチウムイオン蓄電池である。負極は、主にチタンおよびニオブ混合酸化物で作製することができる。
【0039】
この場合、正極は負極へのリチウム源となり得るあらゆる種類の周知の材料で作製することができる。電極材料は、初期にはLi
+イオンを供給し、その後それらを再挿入することができる。例えば、正極は、層状のLi
1+vNi
xMn
yCo
zO
2材料(式中、x+y+z+v=1)、LiNi
uMn
2−uO
4スピネル型材料(式中、0<u<1)、またはLiMPO
4リン酸塩型の材料(式中、M=Fe、Mn、Co、Ni)で作製することができる。
【0040】
したがって、リチウムイオン蓄電池では、リチウムは決して金属形態ではなく、それぞれ蓄電池の充電および放電のために、負極および正極の2つのリチウム挿入材料の間を行き来するLi
+カチオンの形態である。
金属リチウム蓄電池の場合、負極は金属リチウムでできており、正極の活物質は本発明のチタンおよびニオブ金属酸化物を含むことができる。
【0041】
本発明およびその利点は、本発明を図示するために提供された以下の非限定的な図面および実施例から明らかとなるであろう。