特許第6538691号(P6538691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイアジェネティクス・インコーポレイテッドの特許一覧

特許6538691核酸増幅のための携帯機器の動作用ハードウェア及びモバイルソフトウェア
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538691
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】核酸増幅のための携帯機器の動作用ハードウェア及びモバイルソフトウェア
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20190625BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20190625BHJP
【FI】
   C12M1/00 A
   C12Q1/6851 Z
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-537764(P2016-537764)
(86)(22)【出願日】2014年8月26日
(65)【公表番号】特表2016-537994(P2016-537994A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】US2014052690
(87)【国際公開番号】WO2015031351
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年8月15日
(31)【優先権主張番号】61/870,208
(32)【優先日】2013年8月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516058148
【氏名又は名称】ダイアジェネティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・エム・ジェンキンズ
【審査官】 戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】 DIAGENETIX INC. (Home),2013年 5月26日,p.1,URL,https:web.archive.org/web/20130515200917/http://diagenetix.com/
【文献】 DIAGENETIX INC. (Product & Technology),2013年 8月23日,p.1,URL,https:web.archive.org/web/20130823220601/http://diagenetix.com/product-and-technology
【文献】 Diagenetix, Inc. Water Testing with Smart-DART Platform.,2013年 6月 5日,p.1-4,URL,https://www.youtube.com/watch?v=Hd3rk6AfDqw
【文献】 Phytopathology,2013年 6月,vol.103, no.6(Suppl.),pp.S2.72-S2.73
【文献】 Genie II,2012年,pp.1-4
【文献】 J. Biochem. Biophys. Methods,2004年,vol.59, no.2,pp.145-157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/6844−1/6867
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/
WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅核酸分子の検出用に構成された装置であって、
第1収容部と第2収容部とを備え、前記第1及び第2収容部は留め具によりお互いに連結可能であり、前記第1及び第2収容部間の境界面はガスケットを備え、
前記連結された第1及び第2収容部は、
a)反応ブロックと、
b)前記反応ブロックに電気的に接続された回路基板と、
c)前記回路基板に電気的に接続されたバッテリと
を取り囲み、
前記第1収容部は、前記反応ブロックと通信するためのアクセス領域を備え、
前記反応ブロックは、
複数の横断開口部と複数の底門部とを備える加熱容器を挟んだ両側に位置する第1光源バンク及び第2光源バンクと、
前記第1光源バンクと前記加熱容器の前記複数の横断開口部との間、及び前記第2光源バンクと前記加熱容器の前記複数の横断開口部との間の光通信をそれぞれ行う第1及び第2励起フィルタと、
前記加熱容器の前記複数の底門部と光通信を行う第1検出器バンク及び第2検出器バンクと、
前記加熱容器の前記複数の底門部と前記第1検出器バンクとの間、及び前記加熱容器の前記複数の底門部と前記第2検出器バンクとの間の光通信をそれぞれ行う第1発光フィルタ及び第2発光フィルタとを備え、
前記第1収容部は、前記反応ブロックへのアクセスを塞ぐ反応蓋を備え、
前記第1及び第2収容部のうちの1つは、オンオフスイッチを備え、
前記第1及び第2収容部のうちの1つは、電源プラグを備える、
前記装置。
【請求項2】
前記第1及び第2収容部はさらに表示灯を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記表示灯は前記第1収容部に接続されたLED表示灯であり、前記収容部と前記LED表示灯の間にはガスケットが備えられる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記反応ブロックはさらに反応チューブを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記電源プラグ及び前記オンオフスイッチは、前記第2収容部にそれぞれ結合され、前記収容部との境界面にガスケットをそれぞれ有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第1光源バンクは、第1光学収容部に取り付けられた第1励起LEDパネルであり
前記第2光源バンクは、第2光学収容部に取り付けられた第2励起LEDパネルであり
前記第1発光フィルタ及び前記第2発光フィルタを含むフィルタホルダが、前記第1及び第2収容部の底部を連結し、
前記反応ブロックは、前記第1及び第2光学収容部の両方の上部を連結する、1以上のガスケットを備える上部カバーを備え
前記加熱容器は、1以上の反応チューブウェルを備える、
請求項に記載の装置。
【請求項7】
前記加熱容器は、埋込型温度センサと温度を調整するアクチュエータとを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記温度センサは熱電対であり、前記アクチュエータはポリイミドフィルムヒータである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1及び第2励起LEDパネルはそれぞれ、前記第1及び第2光学収容部に留め具で取り付けられる、請求項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、核酸分子のリアルタイム増幅及び検出のための方法及びハードウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光に基づいたリアルタイム核酸増幅監視は、例えばある疾患状態に関連する病原菌または遺伝子の存在を特定するために、試料中の目的遺伝子の検出する現在の技術水準である。数多くの分子増幅技術は、増幅反応(複数可)が進むにつれ蛍光発光が増加する固有蛍光プローブ設計と組合わされてきた。従来、これらの原理を使用する診断機器は、PCRを使用し急速熱循環を要したため、一般に研究室環境に限られ、かつデスクトップまたはラップトップコンピュータにインターフェイス接続された、送電線から著しい量の電力を引き出す大きなデスクトップ機器が必要であった。等温増幅法の使用等、プロセス技術の向上により、従来の研究室の外部の遠隔設定アプリケーションに適した簡素で消費電力の低い携帯機器の開発が可能となった。
【0003】
しかしながら、核酸分子のリアルタイム検出のためのソフトウェア及びハードウェアは、さらなる改善を要する。本開示は当該ニーズ及びその他を満たす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、増幅核酸分子の検出用に構成された装置を提供する。当該装置は、第1収容部と、第2収容部とを備える。第1及び第2収容部は、留め具によりお互いに連結可能である。第1及び第2収容部間の境界面は、ガスケットを備える。連結された第1及び第2収容部は、a)反応ブロックと、b)反応ブロックに電気的に接続された回路基板と、c)回路基板に電気的に接続されたバッテリとを取り囲む。第1収容部は、反応ブロックと通信するためのアクセス領域を備える。第1収容部は、反応ブロックへのアクセスを塞ぐ反応蓋を備える。第1及び第2収容部のうちの1つは、オンオフスイッチを備える。第1及び第2収容部のうちの1つは、電源プラグを備える。
【0005】
いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部はさらに、表示灯を備える。いくつかの実施形態において、表示灯は、第1収容部に接続されたLED表示灯であり、当該収容部とLED表示灯の間にはガスケットが備えられる。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、反応チューブを備える。いくつかの実施形態において、電源プラグ及びオンオフスイッチは、第2収容部にそれぞれ結合され、当該収容部との境界面にガスケットをそれぞれ有する。
【0006】
いくつかの実施形態において、反応ブロックは、第1光学収容部に取り付けられた第1励起LEDパネルと、第2光学収容部に取り付けられた第2励起LEDパネルと、第1及び第2光学収容部の両方の上部を連結する、1以上のガスケットを備える上部カバーと、1以上の反応チューブウェルを有する加熱ブロックと、第1及び第2収容部の底部を連結する、1以上の発光フィルタを有するフィルタホルダとを備える。いくつかの実施形態において、反応ブロックは、1以上の励起フィルタ用の任意のスロットを備える。
【0007】
いくつかの実施形態において、加熱ブロックは、埋込型温度センサと、温度を調整するアクチュエータとを備える。いくつかの実施形態において、温度センサは熱電対であり、アクチュエータはポリイミドフィルムヒータである。いくつかの実施形態において、第1及び第2励起LEDパネルはそれぞれ、第1及び第2光学収容部に留め具で取り付けられる。いくつかの実施形態において、第1及び第2光学収容部は、第1及び第2LED励起パネルからの光を伝導するように構成された複数の光路を備える。
【0008】
いくつかの実施形態において、反応ブロックは、複数の横断開口部と複数の底門部とを備える加熱容器を挟んだ両側に位置する第1光源バンク及び第2光源バンクと、第1光源バンクと加熱容器の複数の横断開口部との間、及び第2光源バンクと加熱容器の複数の横断開口部との間の光通信をそれぞれ行う第1及び第2励起フィルタと、加熱容器の複数の底門部と光通信を行う第1検出器バンク及び第2検出器バンクと、加熱容器の複数の底門部と第1検出器バンクとの間、及び加熱容器の複数の底門部と第2検出器バンクとの間の光通信をそれぞれ行う第1発光フィルタ及び第2発光フィルタとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】装置の代表的な実施形態の非限定的な実装例を、3次元形状の分解図で示す。
図2】装置の代表的な実施形態の別の非限定的な実装例を、3次元形状の分解図で示す。
図3】反応ブロックの代表的な実施形態の非限定的な実装例を、相対配向を例示するために3次元形状で表示する。
図4】反応ブロックの代表的な実施形態の非限定的な実装例を、本明細書で説明される装置の3次元形状の分解図で示す。
図5】共通加算接合部を介して単一信号処理経路にインターフェイス接続された単一検出器バンク(D1〜D8)により監視される全ての放射光で、光源バンク(LED1〜LED8・・・)が複数の試料及び/または光チャネルを順次照らす、時間領域多重化のための汎用回路の実装の代表的実施例を示す。
図6】マシンインターフェイスを介した特定用途向け診断装置(スレーブ)に対するモバイルコンピューティング装置(マスタ)の代表的インターフェイスを例示する。
図7】診断装置を操作するためのモバイルコンピューティング装置上のモバイルアプリケーションの代表的メイン/スタート画面を示す。
図8】ユーザが「接続メニュー(CONNECT MENU)」ボタンを選択した時に表示される、無線接続するのに利用可能な診断装置を一覧表示する代表的表示画面を示す。当画面で利用可能な装置を選択することにより、当該装置との無線接続が開始される。
図9-1】所望の診断装置を選択した後に生成される代表的表示画面、並びに「方法の編集(Edit methods)」タッチキーを選択した時の追加表示画面、及び「新規方法の追加(Add New Method)」タッチキーを選択した後に生成される表示画面を示す。
図9-2】図9−1の続き。
図9-3】図9−2の続き。
図10】診断装置に搭載された温度センサを再校正するため、または蛍光標準液に関する任意のユーザ指定蛍光校正値を入力するための代表的校正メニューを示す。
図11】信頼性の高い温度制御を確実にするために、システム温度センサを校正する代表的方法を示す。
図12】試料の場所、時間、説明を検索可能データベースに記録するインタラクティブGPSツールの代表的使用を示す。
図13】GPSデータベースに記憶された情報も含む、分析中の試料に関する情報を記録するための代表的ラベル付けアクティビティを示す。
図14-1】診断反応の代表的開始と、携帯機器における診断反応のその後のリアルタイム結果表示とを示す。
図14-2】図14−1の続き。
図15】利用可能結果の共有を、電子メールにより、またはクラウドベースのオンラインディレクトリに対し、もしくはクラウドベースのオンラインディレクトリから行う、または記録された増幅結果をグラフ表示する、またはインタラクティブマップ上にカラーコード化された試験結果を表示するための代表的メニューを示す。
図16-1】増幅に関して観測された閾値時間に基づいて、試料における遺伝子コピー数の定量化を示す。
図16-2】図16−1の続き。
図16-3】図16−2の続き。
図17-1】モバイルコンピューティング装置に搭載されたアプリケーションの様々なオプションを列挙するフローチャートを示す。
図17-2】図17−1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示される実施形態は、核酸等温増幅反応を実行する簡素な携帯診断装置から取得したデータを操作及び管理するために、モバイルコンピューティングプラットフォーム(すなわちスマートフォン、タブレット、外部携帯コンピュータ等)の機能性を活用する。このようなモバイルコンピューティングプラットフォームへこれら機能をエクスポートすることにより、直感的なユーザインターフェイス上のパフォーマンスが高められると同時に、特定用途向け機器のサイズ、複雑性、費用が劇的に削減可能となる。これらの利点は、本明細書に含まれる説明から明らかである他の利点と同様に、本開示以前に利用されえない。
【0011】
本開示は、増幅核酸分子の検出用に構成された装置を提供する。代表的装置が、複数の試料における多数の増幅核酸分子を検出するのに使用可能な装置の分解図を例示する図1において示される。いくつかの実施形態において、代表的装置は、第1収容部(30)と第2収容部(90)とを備える。いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部は、1以上の留め具(100)により、お互いに連結される。ねじ等の任意の種類の留め具が使用可能である。いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部の間の境界面は、ガスケット(80)を備える。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部のうちの1つは電源オンオフスイッチ(110)を備え、そして第1及び第2収容部のうちの1つは電源プラグ(120)を備える。いくつかの実施形態において、電源プラグ及び電源オンオフスイッチはそれぞれ、第2収容部に接続される。いくつかの実施形態において、電源プラグと収容部の間にガスケットが配置される。いくつかの実施形態において、オンオフスイッチと収容部の間にガスケットが配置される。いくつかの実施形態において、電源オンオフスイッチは、装置に対し直接電源を変えるトグルスイッチでありうる、またはソフトスイッチとして実装された瞬時接点スイッチでありうる。後者の実装の場合、例えば接点スイッチは、起動中に別個の経路を介して電源オン信号をラッチする装置コントローラにより、回路に電力を供給するハイサイドトランジスタスイッチに対する信号を変調可能である。そしてある条件が満たされた場合(例えば、接点スイッチが解放後にある時間押下され、かつ反応が起こっていない場合)、コントローラ信号をアンラッチして自身の電源を切るアクティビティのため、接点スイッチからの信号が監視されうる。さらに、例えば装置が電源の入った状態でも長時間にわたり遊休状態である場合に、装置が自動にシャットダウンしてバッテリを保存することを可能にするために、ソフトスイッチ構成が使用されうる。電源プラグは、装置を電源部またはコンセントに接続するために使用されうる。いくつかの実施形態において、電源プラグは、電力を供給し装置を稼働させるために使用されうる。いくつかの実施形態において、電源プラグは、バッテリを再充電するのにも使用されうる。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部はさらに、表示灯(10)を備える。いくつかの実施形態において、表示灯は、第1収納部に接続されたLED表示灯である。いくつかの実施形態において、収容部とLED表示灯の間にガスケットが存在する。表示灯は、回路基板と通信し、反応及び/または検出の状態を装置のユーザに簡単かつ可視的に伝えることが可能である。例えば、いくつかの実施形態において、カラーコード化された電源及び接続状態を表すために、多色のLEDが使用される。当該実装例において、緑等の第1色は、装置が電源の入った状態で遊休またはスタンバイモードであることを示しうる。青等の第2色は、装置が外部モバイル装置に対し有効な無線接続を有することを示しうる。赤等の第3色は、装置内で反応が進行中であることを示しうる。いくつかの実施形態において、ステータスLEDは、ユーザがすばやく充電状態を推定できるように、バッテリ残量に比例した使用率で変調される。表示灯は、光、湿気、その他汚染物質の侵入を遮断するためガスケットを使用して、第1収容部内または装置の表面のどこにでも搭載可能である。
【0014】
いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部は、留め具(複数可)により連結されて、反応ブロック(50)と、回路基盤(60)と、バッテリ(70)とを取り囲む。いくつかの実施形態において、回路基板は、反応ブロックとバッテリに電気的に接続される。いくつかの実施形態において、回路基板は、装置を操作し、かつ外部または内部ユーザインターフェイスと通信するように構成されうる。任意のバッテリは、装置に電力を供給するのに十分なエネルギーと定格電流を有する限り、使用可能である。バッテリは、永続的(すなわち交換不可能)なものか、または交換可能なものでありうる。いくつかの実施形態において、バッテリは充電式である。いくつかの実施形態において、バッテリは非充電式である。いくつかの実施形態において、第2収容部は、バッテリを第2収容部内において第2収容部の最下部より上に配置することを可能にする高架隆起部を備える。いくつかの実施形態において、第1収容部は、反応ブロックと通信するためのアクセス領域を備える。いくつかの実施形態において、第1収容部は、反応ブロックへのアクセスを塞ぐ反応蓋(20)を備える。反応蓋は、ユーザが1以上の反応チューブを装置に挿入可能なように、取り外し可能でありうる。いくつかの実施形態において、反応ブロックは、1以上の反応チューブ(40)を含む。
【0015】
反応ブロック内に単一ウェルを含む別の代表的装置が、図2において示される。
【0016】
いくつかの実施形態において、反応ブロックは核酸増幅反応を行う構成部品を含む。代表的反応ブロックが、図3において示される。いくつかの実施形態において、反応ブロックは、加熱容器(1)を挟んだ両側に第1光源バンク(2)と第2光源バンク(3)とを備える。いくつかの実施形態において、加熱容器は、複数の横断開口部を備える。いくつかの実施形態において、加熱容器は、複数の底門部を備える。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、第1光源バンクと加熱容器の複数の横断開口部との間、及び第2光源バンクと加熱容器の複数の横断開口部との間の光通信をそれぞれ行う第1励起フィルタ(4)と第2励起フィルタ(5)とを備える。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、加熱容器の複数の底門部と光通信を行う第1検出器バンク(9)と第2検出器バンク(8)とを備える。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、加熱容器の複数の底門部と第1検出器バンクとの間、及び加熱容器の複数の底門部と第2検出器バンクとの間の光通信をそれぞれ行う第1発光フィルタ(7)と第2発光フィルタ(6)とを備える。
【0017】
別の代表的反応ブロックが、図4において示される。いくつかの実施形態において、反応ブロックは、第1光学収容部(12)に取り付けられた第1励起LEDパネル(11)と、第2光学収容部(13)に取り付けられた第2励起LEDパネル(11)とを備える。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、第1及び第2光学収容部の両方の上部を連結する、1以上のガスケット(15)を備える上部カバー(14)を備える。いくつかの実施形態において、第1及び第2収容部は、1以上の留め具(16)により、お互いに取り付けられる。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、反応チューブを収容するための1以上の反応チューブウェルを有する加熱ブロック(17)を備える。反応チューブは、増幅核酸分子の反応または検出に好適な任意のチューブでありうる。いくつかの実施形態において、試料は、加熱ブロックに配置された標準0.2mlPCRチューブに入れられる。いくつかの実施形態において、反応ブロックはさらに、1以上の発光フィルタ(19)を有するフィルタホルダ(18)を備える。いくつかの実施形態において、フィルタホルダは、第1及び第2収容部の底部を連結する。いくつかの実施形態において、光学収容部は、装置の頂部収容部におけるガスケット付開口部を介してアクセス可能であり、そしてフィルタホルダは、光検出回路の上にある光学収容部の底部におけるスロットに挿入される。いくつかの実施形態において、第1及び第2励起LEDパネルはそれぞれ、第1及び第2光学収容部に1以上の留め具(21)で取り付けられる。いくつかの実施形態において、第1及び第2光学収容部は、第1及び第2LED励起パネルからの光を伝導するように構成された複数の光路(22)を備える。光路は、本質的に収容部の穴であり、反応チューブ内の試料に光を伝導し、増幅産物の検出及び分析を容易にする。
【0018】
いくつかの実施形態において、加熱ブロックはさらに、埋込型温度センサ(図示せず)と、温度を調整するアクチュエータ(図示せず)とを備える。温度センサは、任意の熱電対、サーミスタ、固体センサ、赤外線温度計/高温計、または抵抗温度装置を含むがこれに限定されない、温度測定に使用される任意の技術でありうる。温度アクチュエータは、抵抗ヒータ、熱電素子、または冷却部の蒸発器もしくは凝縮器を含むがこれに限定されない、熱生成または熱輸送に関する任意の技術に基づきうる。いくつかの実施形態において、K型統合熱電対で測定された温度は、所望温度と比較され、当該温度差は所望温度に達するために(抵抗)ポリイミドフィルムヒータを通る電流を制御するのに使用される。いくつかの実施形態において、温度センサは熱電対であり、アクチュエータはポリイミドフィルムヒータである。
【0019】
いくつかの実施形態において、複数の発光フィルタは、例えば多重増幅反応に使用される異なる蛍光色素からの異なる蛍光スペクトルを測定するのに使用される。いくつかの実施形態において、これらのフィルタは、2色性または干渉フィルタである。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1励起LEDパネルは、第1光学収容部上の1つの台に、1つの留め具または複数の留め具セットにより取り付けられる。いくつかの実施形態において、第2励起LEDパネルは、第2光学収容部上の別の台に、自身の1つの留め具または複数の留め具セットにより取り付けられる。励起LEDパネルは、反応を分析及び検出可能なように、LEDパネルから放射されている光が反応チューブ内の試料に直接あたる任意の様式で構成されうる。いくつかの実施形態において、これらパネルはねじで留められるが、特定の種類の留め具が決定的であるわけではなく、任意の種類の留め具または係止機構も使用可能である。
【0021】
反応ブロックにおいて蛍光を測定するために、反応チューブ内の試料は、スペクトルが限定された光源により照らされ、そしてその結果生じる蛍光発光が、対応する光検出器により検出される。試料照明のための光源には、励起スペクトルを制限するために励起フィルタの使用に関わらず、LED、レーザ、白熱灯またはその他のランプ技術を含む、可視、UVまたはIRスペクトルの光を生成する任意の技術が含まれうる。光検出器は、任意の種類の光ダイオード、光電子放射センサ、光電子増倍チューブ、光導電セル、またはその他の感光素子を含みうる。
【0022】
高感度でありながら安価な検出を実現するために、個々の光センサは、光検出器と増幅器の入力ピンを囲む導電型ガードを使用してトランスインピーダンス構成内の電位計レベルの演算増幅器にそれぞれインターフェイス接続された、低暗電流レンズ付光ダイオードでありうる。これは、1つの検出器からの信号が他の検出器への転送伝導路を介して漏洩することを防ぐのに使用されうる。各光増幅器からの電圧は、マイクロコントローラ上の十分な分解能のアナログデジタル変換を使用してプログラム可能な増幅を実現するために、標準電圧加算増幅器を使用する共通接合部と、後続のハードウェアフィルタ及び増幅段に合わせ入れられる。あるいは、個々の光検出器は、LED照明に使用される同一のアドレス指定信号を使用して増幅器及び読出し回路に対し多重化され、これにより不特定の検出器からのノイズを重ねることなく信号対ノイズ比が改善されうる。
【0023】
本開示は、核酸分子を検出するのに使用可能な回路の実施形態も提供する。いくつかの実施形態において、試料または光チャネルのアレイにおける蛍光検出の多重化の複雑性は、全ての検出器信号を単一信号処理経路に合わせ入れ、かつ別個のアドレス指定可能な光源により各試料または光チャネルを順次照らして時間領域における多重化を実行することにより、軽減される。信号処理は発光検出においてハードウェア的に最も集中的な態様であるため、全てのチャネルを単一処理経路へまとめることは、強固に取付けられた構成部品の凹凸の多いアレイを使用する設計のハードウェア及び空間要件を著しく単純化する。従って、いくつかの実施形態において、検出器信号は、単一処理経路から分析される。あるいは、照明している光源に対応する個々の検出器は、試料照明に使用される同一のアドレス指定信号を使用して読出し回路に対し多重化され、結果、非常に少し費用/複雑性が増した状態で信号対ノイズ比が改善されうる。
【0024】
いくつかの実施形態において、単一の検出器、または例えば図5に示されるように各試料(S1〜S4;4つの試料を例示する非限定実施例であるが、装置は特定の数の試料に限定されない)及び光チャネルからの全ての発光を発光フィルタ(例えばEMF1及びEMF2)を介して測定する検出器バンク(D1〜D8;4つの試料のいずれかからの2つの異なる光チャネルの検出を例示する非限定実施例であるが、装置は特定の数の検出器または光チャネルに限定されない)は、単一信号処理経路に共通加算接合部を介してインターフェイス接続され、これにより各検出器の個々の信号処理アーキテクチャを実装するのに比べて空間複雑性は著しく軽減され、そして各対応信号が多重化される。多重化は、励起フィルタ(例えばEXF1及びEXF2)を介して、一意の試料/光チャネルをアドレス指定する各励起源(例えばLED1〜LED8)の選択/順次照明(時間領域多重化)により達成される。いくつかの実施形態において、図5の実施例を参照すると、共通信号処理経路は、追加の多重化ハードウェアを要することなく、内部に複数のアナログデジタル変換チャネルを有する単一マイクロコントローラチップ(MCU)を使用してプログラム可能な感光度を実現する複数の増幅段(例えばA1及びA2)を備える。費用及び複雑性の増加が限定された状態で信号対ノイズ比を改善するために、個々の検出器は、対応光源を選択するのに使用される同一のアドレス指定信号を使用して共通信号処理/読出し回路に対するアナログスイッチと多重化されうる。当手法により、不特定検出器からのノイズは信号に重ねられることなく、信号対ノイズ比は潜在的に改善される。いくつかの実施形態において、装置は、複数の検出器を備える。いくつかの実施形態において、装置は、複数の光チャネルを備える。いくつかの実施形態において、装置は、例えば本明細書に記載される複数の発光フィルタを備える。
【0025】
感温反応に対する温度制御を可能にするために、簡素なフィードバック制御システムが、抵抗ヒータとアルミニウム試料容器に搭載された温度センサと共に使用されうる。例えば、シリアルLCDまたはタッチスクリーンディスプレイに接続することで、またはユーザ制御の取込みを簡易化しうるカスタムアプリケーションを実行するスマートフォンもしくはPC等の外部装置に無線ブルートゥースを介して接続することで、マイクロコントローラMCUから表示装置へのデジタル通信により読出し/ユーザインターフェイスが起動されうる。装置は、本明細書に記載の方法を利用して通信を行うことも可能である。
【0026】
図5は、光源により照らされている試料アレイS1〜S4の破線複製を図示することで概念を2次元表示により示す一方、図3及び4は、当多チャネル配置の実装を代表的3次元実施形態により示す。装置及び反応ブロックの非限定例示的実施形態は、本明細書に記載された図1〜4において参照可能である。図3において、様々な光学構成部品の相対配向の明確な図解のため、全ての個々の構成部品の剛性取付けブロックは図示されないことに留意されたい。従って、いくつかの実施形態において、構成部品は、剛性ブロックに取付けられる。図4は、反応ブロックの別の非限定実施例を示す。当図は、異なるLEDが使用され、励起フィルタが存在せず、装置の幾何学的配置においていくつかのマイナーな変更があることを除いては、全体として概念的に図3と同じである。装置は、本明細書に記載されているように構成可能である。
【0027】
本開示は、例えば目的の特定病原体、またはある生理もしくは疾病状態を示す遺伝子の検出を可能にするために、配列特異核酸ポリマー鎖を検出するように設計された分析装置を操作する方法も提供する。このような分析装置が、本明細書において開示される(図1〜4の代表的実施形態を参照)。しかし本明細書に記載の方法は、蛍光ベースのリアルタイム増幅法を使用する任意の装置において適用可能である。いくつかの実施形態において、方法は、モバイルコンピューティングプラットフォーム(例えばAndroid(アンドロイド)OSまたはiOS)を使用して実施される。いくつかの実施形態において、方法は、コンピュータプロセッサにより実行される。いくつかの実施形態において、方法は、コンピュータにより実行される。コンピュータは、本明細書に記載の方法により実行されるように構成またはプログラム可能である。
【0028】
いくつかの実施形態において、モバイルコンピューティング装置(マスタ;例えばグラフィカルタッチスクリーンのユーザインターフェイスを有するスマートフォンまたはタブレット)は、特定用途向け診断装置(スレーブ;本明細書にて開示されたもの等;例えば図1〜4を参照)上の簡易マイクロコントローラに対し無線で命令を出すように構成される。当該特定用途向け診断装置(スレーブ)はデータを送り返し、そして送り返されたデータはモバイルコンピューティング装置上のソフトウェアにより表示及び管理される(図5参照)。スレーブ診断装置は、その回路基板内に好適に配置されたホストマイクロプロセッサ(MCU)を備える。当該ホストマイクロプロセッサ(MCU)は、マスタモバイルコンピューティング装置からの命令を解釈する(すなわち診断反応が管理される搭載加熱ブロック上の温度を適宜制御する、装置に含まれる試料反応内の蛍光を読出す等)、もしくはこれらの結果をモバイルコンピューティング装置に送り返す、またはこれらの任意の組合せを行うように構成可能である、または構成されている。モバイルコンピューティング装置上のタッチスクリーンはまた、多機能で使いやすいグラフィカルインターフェイスを実現するように開発または構成可能であり、そしてシステムの実用性を高めるために、GPS及びWi−Fi等の豊富な追加機能が使用される。さらに、複数のスレーブが同一のマスタに対し多重化可能なように、マスタモバイルコンピューティング装置とスレーブ特定用途向け装置の間の通信は暗号化され、装置間の通信損失を自動認識し対応するためにアルゴリズムが使用され、そしてスレーブ装置(複数可)における致命的な熱破損を防ぐのに役立つソフトウェアが備えられうる。
【0029】
モバイルコンピューティングプラットフォームに必須のハードウェアは、ユーザに付加価値を提供するため、すぐに活用可能である。例えばほとんどのスマートフォン及びタブレットは、本明細書に記載されるように例えば、試験が行われた所在地を簡単かつ自動に記録するのに使用されうるGPS機能が備わった状態で入手され、そしてあるイベントが起こった場合に警報を自動送信するため(例えば試料内における選択生物学的薬剤の検出は検疫所へ自動伝達されうる)、または電子メールにより、もしくは遠隔クラウドベースサーバを介して結果を共有することを簡易にするために、Wi−Fiまたはデータネットワークへのアクセスが使用されうる。疾病の伝染、進行、病原力に影響を及ぼす気象条件及びその他の現象といった別の情報システムと連結された時に特に便利な、疾病リスクマップ等の便利なツールを自動生成するために、広大な地理空間にわたる多数のユーザ間の情報連携が利用されうる。
【0030】
図5に例示されるように、マスタモバイルコンピューティング装置とスレーブ特定用途向け装置間のインターフェイスは、例えばRS232、USB、ブルートゥース等の任意の標準通信ハードウェア及びプトロコルを使用して構成されうる。これらは非限定実施例であり、任意の通信プロトコルまたはハードウェアが使用可能である。いくつかの実施形態において、モバイルコンピューティング装置は、特定用途向け装置と無線通信を行い、当該装置からの全てのデータを解釈及び管理する。
【0031】
装置間の通信が間欠的でありうる場合、特にブルートゥース等の無線通信においてユーザがスレーブ装置の範囲外にマスタ装置を移動した場合、通信中断イベントが起こっても両装置が動作を継続できるように装置は構成される。従って、いくつかの実施形態において、全ての指示はマスタ装置上のユーザインターフェイスを介して入力された命令に起因し、スレーブ装置はこれに応じて要求された機能(すなわち温度制御、蛍光及び温度読出し等)を実行し、マスタ装置がデータ表示及び管理できるようにデータを返す。これらの実施形態は、マスタ装置がクラッシュしうる、または所期データが返されるのを待った状態でフリーズしうる、また同様にスレーブ装置がルーチンにロックされ致命的装置障害が起こりうる、というような状況を防止するであろう。後者の例のように、温度を調べてヒータへの電力を適宜調整するよう更新された命令がスレーブ装置に出されない場合、スレーブ装置はヒータに利用可能な電力を100%投入することに固定され、結果、加熱素子、温度ヒューズを焼き尽くすか、そうでなければ装置への著しい熱的損傷を被ることが考えられる。従って、本明細書に記載される方法は、重要なデータの損失を含む通信損失の影響を防ぎうる。
【0032】
いくつかの実施形態において、通信損失によるマスタ装置上のソフトウェアクラッシュを防ぎ、かつ複数のスレーブ装置に対する多重化インターフェイス接続を可能にするため、スレーブ装置から返されたデータは、返されたデータの種類、データを送信した特定の装置、及びデータが記録された時間に適したコードで暗号化される。いくつかの実施形態において、マスタ装置は、返されるはずのデータのビットごとに個別のスレッドを開始する必要はなくなるが、任意の返される暗号化データ一式を待ち、適宜データを処理する単一通信サービスを有しうる。
【0033】
通信損失イベントの自動認識は、データの最小損失を保証し、かつ前述のような致命的障害を防止するためにも重要である。このため、スレーブ装置が最後に指示を受信した時からの経過時間を単純に記録し、記録された経過時間を指示間の最大予想時間間隔と比べることで通信損失を認識する方法により、装置は構成される。例えば、リアルタイム増幅ルーチンにおいては、およそ1秒ごとに温度を調べてヒータを適宜調整する指示が予想されうる。妥当な時間内に指示が全く受信されなかった場合、スレーブ装置はこれを通信損失と認識し、そして例えば、接続が再確立されて再びマスタ装置によりデータが要求されうるまで観測データをローカルで記録し、自身の温度制御アルゴリズムを自動更新する等、自身の機能に関してより自律的に作動し始めうる。いくつかの実施形態において、マスタ装置とスレーブ装置のいずれか、または両方は、別の装置にクエリコードを自動送信し、そして適切な応答が予想時間内に返されなかった場合は通信損失と解釈しうる。当イベントにおいて、マスタ装置上のユーザインターフェイスは、ユーザに接続が切断されたことを警告し、そして接続を復旧しフォローアップクエリを送信するために定期的な試みが行われうる。一旦接続が復旧すると、スレーブ装置上にローカルに記憶されたデータの要求は再送信され、そして通信不可能であった間に記録された全てのデータは、マスタ装置により処理されるように、適切な暗号化を施して送信されうる。
【0034】
いくつかの実施形態において、スレーブ装置上のヒータへの過剰な電力による致命的熱破損に対する追加防御として、予期しない行動を自動認識するスレーブ及びマスタ上の方法が実施されうる。例えば、スレーブ装置上の温度センサが何らかの理由で使用不可または切断された状態になった場合、スレーブは正確に温度を制御できなくなるだけでなく、ヒータ自身も燃えつかせうる。温度制御は一般に、所望温度を観測温度と比較し、これらの温度が等しくなるようにヒータへの電力を調整する(すなわち観測温度が所望温度より低い場合はさらに多くの電力を投入する)ことにより達成される。温度測定の欠陥により観測温度が反応しない場合、コントローラは、熱破損が起こるまで過剰な電力を投入し続けうる。極度の破損及び火災は、ヒータブロックに接続された温度ヒューズ等のハードウェアにより防止されうる一方、温度測定回路の障害を自動で認知し、かつ問題が修正されるまでさらなるハードウェア損傷を防止するため自動でヒータの電力を止めるように設計された方法で、装置は構成されうる。温度測定または加熱回路における潜在的問題を特定するため、ソフトウェアは、経時的に記録された温度を、既知のシステムダイナミクスに基づいた予想システム応答と比較しうる。例えば、温度が所望値よりも低い場合、ヒータに投入される電力により経時的な温度上昇が起こると最初に予想される。経時的温度上昇率が、システムの温度性能に経験的に基づいた条件下で予想される最小閾値率を超えない場合、ソフトウェアはこれをヒータ及び/または温度センサに関するハードウェア問題として認識し、ヒータへの電力を自動で止めうる。同様に、温度が許容時間内に所望設定値の許容限度内に落ち着かない場合、装置はこれを逸脱したパフォーマンスとして認識し、問題が特定され修正されるまでヒータへの電力を止める。
【0035】
本明細書において開示される方法により、ユーザは、特定診断反応に関する異なる反応設定を保存及び選択することが可能になる。いくつかの実施形態において、ユーザは、選択された診断反応を開始する。反応は、例えばボタンを押下することにより選択されうる。ボタンは、物理的ボタンまたはタッチスクリーン上に存在するものでありうる。ボタンは、キーボード上のボタンのようである必要はなく、ユーザにより選択可能なオプションとして画面上に表示可能である。いくつかの実施形態において、ボタンが選択または押下されると、反応を選択し、パラメータセットに従って当該反応を実行する命令がハードウェアに与えられる。反応選択により、蛍光データがリアルタイムで記録され、解釈され、画面(例えばタッチスクリーン)上に表示されるように、反応中の機能性も有効になりうる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の反応のデータは、自動で記録され、そしてネットワークコンピュータシステム上のローカルに、または「クラウド」とも呼ばれるインターネット上に記憶された利用可能試験記録のメニューを介して移動することで、表示するために呼び戻すことが可能である。
【0036】
装置は、試験の場所に関するGPS座標を記録し、ユーザが各試料のラベルを入力すること(例えばその出所を説明するため)を可能にし、またはあるイベントが起こった時(すなわち調整試料が特定病原体に対して陽性であると判定された時)電子メールまたはテキストメッセージにより自動警報を送信するように構成されうる。
【0037】
核酸増幅に基づいた診断装置の制御方法の実施に関する非限定実施例が以下に示される。代表的方法は、以下のように実施されうる。いくつかの実施形態において、モバイルコンピューティング装置と診断装置の間のマシンインターフェイスは、iOS及びAndroid装置を含むほとんどのモバイルコンピューティングプラットフォーム上に遍在する無線ブルートゥース接続を介する。しかしながら、インターフェイスは、WiFi、セルラー、ジグビー(ZigBee登録商標)、X10、USB、RS232等を含むがこれに限定されない任意の通信プロトコルを介しうる。従来、USB及びRS232等の有線インターフェイスは、アドレス指定可能無線モデムリンクを介して等、無線インターフェイスを介してブリッジ可能である。モバイルコンピューティング装置上のアプリケーションのメイン./スタート表示画面(38)は、図7に示されるようなある基本オプションを有しうる。例えば、ボタンまたはタッチパッドキーは、モバイルコンピューティング装置またはそのタッチスクリーン上に表示されうる。図7を参照すると、ボタンまたはタッチパッドキーには、接続する特定装置を選択可能な別の画面形式へユーザが進むことを可能にする「接続メニュー(CONNECT MENU)」(31)と、様々なパラメータ用(例えば特定診断反応に関するパラメータを定義する、記録された結果を共有または表示する等)の別の画面形式へユーザが進むことを可能にする「オプション(OPTIONS)」(32)と、ユーザが分析方法を選び、実行中の反応に関する分析パラメータを調整することを可能にする「分析方法(ANALYSIS METHOD)」(33)とが含まれる。いくつかの実施形態において、ユーザに接続状態または装置のバッテリ残量を知らせる「接続(CONNECTION)」または「電源状態(POWER STATUS)」(34)を含むがこれに限定されない様々な表示が存在しうる。いくつかの実施形態において、「反応パラメータ(REACTION PARAMETERS)」(35)表示は、ユーザに現在選択されている方法の反応パラメータを知らせる。
【0038】
特定診断装置への接続は、利用可能な装置をモバイルコンピューティング装置上の「接続メニュー(CONNECT MENU)」ボタンまたはタッチキーを介して選択することで行われうる。モバイルコンピューティング装置上の「接続メニュー(CONNECT MENU)」ボタンまたはタッチキーが一旦押されると、接続可能な診断装置のオプションを示す新たな表示画面(41)が現れる(例えば図8を参照)。所望の診断装置は、リストの適切箇所を選択することにより適宜選択可能である。いくつかの実施形態において、当画面形式は、利用可能な装置を検索するタッチキー(42)及び/または前の表示画面を再読込みする「キャンセル(Cancel)」タッチキー(43)も表示する。
【0039】
一旦所望の診断装置が選択され、かつ所望の診断装置への接続が確立されると、別の表示画面(51)がユーザに対し利用可能となる。当表示画面には、「リアルタイムLAMP(Real−Time LAMP)」(52)と、「単一読出し(Single Reading)」(53)と、「標準化(Standardize)」(54)のタッチキーが含まれる(図9参照)。いくつかの実施形態において、装置への接続が確立すると、接続に関する特定詳細がユーザインターフェイス上に示されうる。当詳細には、接続された装置の識別(例えばハードウェアアドレスまたは名称)、及び装置のバッテリ残量等の情報が含まれるが、これに限定されない。図9を参照すると、メイン画面上の単一ボタンを押下することで、または「オプション(OPTIONS)」ボタンを押下することで、追加機能一式がドロップダウンメニューで現れる。追加機能には、「データの共有(Share data)」(55)、「方法の編集(Edit methods)」(56)、「カラーパレットのチャート作成(Chart-color palette)」(57)、「試料のラベル付け(Label samples)」(58)、「GISデータベースの管理(Manage GIS database)」(59)、「終了(Quit)」(61)が含まれるが、これに限定されない。
【0040】
「方法の編集(Edit methods)」オプションを選択すると、新たな表示画面(63)が利用可能になる(図9参照)。この新たな表示画面は、既存の分析手法(64)を一覧表示する。これらの既存の分析手法は、削除または編集可能であり、あるいは新たな分析手法が作成可能である。例えば、ユーザが特定の分析手法の編集を所望する場合、ユーザはリストから所望の分析手法を選択しうる。編集可能なパラメータを一覧表示した新たな表示画面(図示せず)が現れる。新たな分析手法の入力を所望する場合、ユーザはタッチキー「新規方法の追加(Add New Method)」(65)を選択し、これにより新たな表示画面(67)が利用可能になりうる。当画面表示は、リストに追加する新たな分析手法に関する様々なパラメータオプション、並びに様々なパラメータ設定を行うためのタッチキーのキーボードを含む。このようなオプションには、「LAMP温度(℃)(LAMP Temperature(℃))」(72)、「LAMP反応時間(分)(LAMP Reaction Time(min))」(73)、「変性温度(℃)(Denature Temperature(℃))」(74)、「変性時間(分)(Denature Time(min))」(75)、「蛍光読出し間隔(秒)(Fluorescence Reading Interval(sec))」(76)を含むがこれに限定されないパラメータのタッチキーと対応テキストボックスとが含まれる。タッチキーは、追加温度設定、継続時間設定、光検出増幅設定、及びその他の設定を含むがこれに限定されない他のパラメータにも含まれうる。所望のタッチキーの選択により、ユーザがキーボードを使用して所望値を入力する対応テキストボックス内にカーソルが配置される。さらに、ユーザがキーボードを使用して新たな診断手法の名称を入力できる「方法名(Method Name)」(71)テキストボックスが存在する。一旦全ての新たな診断手法がアプリケーションに入力され、及び/または所望の既存の診断手法が変更されると、ユーザは、タッチキー「終了(Quit)」(66)を選択し、これにより前表示画面(51)が利用可能になりうる。
【0041】
接続された装置は、単一ボタンナビゲーションにより、またはオプションメニューを介して、精度の高いプロセス制御を確実に行うために装置温度センサが校正されることを可能にし、かつ許可する校正メニューへ到達することで、校正可能である。これにより、ユーザは、所定の基準蛍光強度が設定された標準試料に対し、所望の基準値を定義することも可能になる。図10を参照すると、例えば、接続された装置の校正を所望するユーザは、表示画面(51)から「標準化(Standardize)」タッチキーを選択し、これにより校正メニューを提供する新たな表示画面(81)が生成される。診断装置上の不揮発性メモリ(例えばEEPROM)は、工場においてデフォルト値にプログラムされた校正値を記憶しているであろうが、装置により温度測定ハードウェアと回路は変化するため、温度の再校正を行うことは精度を向上し、そして蛍光校正オプションは、ユーザが所定の基準に対し所望の基準蛍光値を定義することを可能にする。温度校正を行う際、1つのオプションにより、ユーザは所望設定値に温度を制御するように装置に指示を送信可能になり、そして一旦温度が定常状態に達し、基準センサ(82)により記録されると(例えば図11参照)、ユーザは装置の実温度に関してプログラムすることが許可される。その後装置は、実温度と温度測定システムの対応測定数値とをEEPROMに記録し、そして当データは、好適なアルゴリズムを使用して最良適合校正式を推定するのに使用されうる。当プロセスは、前述の方法のいずれかにより外部基準温度センサの値をモバイルアプリケーションに直接伝達することで、装置を校正するように自動化可能である。
【0042】
記録保持と結果解釈を、特に試料の出所に関して簡易化するために、モバイルアプリケーション内のインタラクティブマップに基づいたアクティビティは、試料の場所、時間、及び説明の検索可能データベースを管理するためにGPSセンサにアクセスしうる(図12参照)。例えば、表示画面(51)上のオプションメニューから「GISデータベースの管理(Manage GIS database)」を選択することで、マップを表示する新たな表示画面(83)が現れ、現在時刻、編集可能テキスト説明、及びGPS位置等のパラメータが試料データベースに記録され、そしてマップ上の記録位置近くを長くクリックすることでデータベースから入力内容が削除されうる。ドロップダウンメニューを増やして試験済試料の関連情報の記録を簡単にするために、データベース内の情報が使用されうる。
【0043】
反応を実行するための準備において(または反応中に開くグラフィカル表示ウィンドウにおいて;以下参照)、ユーザは反応において分析中の各試料の識別情報を入力するために新たなウィンドウを開きうる(例えば図13参照)。表示画面(51)から「試料のラベル付け(Label samples)」タッチキーを選択することにより、データラベルのオプションを提供する新たな表示画面(84)が生成される。例えば、ラベルは、地理的出所、採集日時、または分析中の試料の性質もしくはその他の詳細について記述し、そしてこれらデータは完了済試験のデータ記録に自動で含まれる。
【0044】
モバイルコンピューティング装置に接続された好適に校正された機器は、単一ボタンまたはタッチキーを選択してリアルタイム診断反応を実行するのに使用されうる(例えば図14参照)。例えば、「リアルタイムLAMP(RealTime LAMP)」ボタンまたはタッチキー(52)を選択することにより、新たな表示画面(85)が生成される。当アクティビティにおいて、試料ごとにリアルタイム蛍光データが表示され、そして当該グラフィカルデータは、試料が目的の配列を含んでいるかいないかを判断するためにユーザによって容易に解釈されうる。例えば、増幅反応を開始する陽性試料は、蛍光発光において簡単に識別可能なS字型増加を経時的に示しうる(例えば図15参照)。各試料の解釈を簡易化するために、リアルタイムで各試料のデータを二者択一的に表示または非表示にし、かつ、異なる蛍光スペクトルを利用する多重化反応が使用されている場合は(すなわち、対照DNAのスパイクされた部分に対し陽性内部対照反応を実行するため、または同一の反応内の複数の標的配列を同時に特定するため)、異なる光チャネルからの結果を表示するチェックボックスが利用可能である。メイン画面上で、利用可能な方法はいずれも対応ドロップダウンリストから選択可能であり、ユーザが反応を開始した時に対応する反応パラメータが使用され、そして反応名が、試験中の個々の試料の出所と説明を記述するユーザが入力した他の情報とともに結果の中に記録されうる。
【0045】
結果分析を簡易化するための代案として、標的DNAを含む試料の特徴的スパイクにつながる経時的蛍光変化率が表示されうる。インタラクティブ表示は、重畳する蛍光スペクトルを有する蛍光物質の一意的寄与を推測するために、例えば異なる光チャネルからの観測蛍光信号を逆重畳積分する異なる数学的データ分析をユーザが適用することも可能にする。ソフトウェア内の自動分析アルゴリズムは、ユーザにとってわかりやすいように、個々の反応に関してどの試料が陽性であるか特定しうる。一実施例において、経時的蛍光データに最小二乗回帰曲線が適する時、いくつかの連続した観測を通して蛍光値が予想からある閾値分増加したことが観測された場合(当該閾値は最良適合曲線の周りの背景ノイズの実行推定に基づく)、試料は標的DNAの存在に関して陽性と評価される。同様に、分類アルゴリズムは、平均変化率を標準偏差の所定閾値数だけ超える一意的最大値を、蛍光変化率が超える場合に、試料は陽性であると分類しうる。
【0046】
試料が増幅の明確な兆候を示すことが観測される「閾値時間」は、元の試料内の標的DNA配列のコピー数に関する定量的情報を、定量的PCRの確立したプロトコルに類似する手法を使用して、自動で推測するのにも使用されうる。増幅反応は本質的に指数関数的であるため、アンプリコンの所定の閾値コピー数(観測された蛍光に比例する)が観測されうる時間は、配列の最初のコピー数に数学的に関連する。これら数量は、既知の関係を通して相関し、観測された閾値時間から試料内のコピー数を推定する校正式を展開するのに使用されうる。
【0047】
反応結果が完成し、データが装置上に記憶された後、共有または表示するための利用可能なデータファイルのメニューを表示する新たな表示画面(86)へ移動するために、ユーザは表示画面(51)から「データの共有(Share data)」タッチキーを選択しうる(図16参照)。例示的アプリケーションにおいて、記録されたデータは、グラフ表示するために選択可能である。試験結果の表示には、増幅結果のグラフ表示、標的核酸配列の存在に関する推論を含むテスト結果のテキスト要約、インタラクティブマップ上のカラーコード化されたテスト結果、またはこれらの任意の組合せが含まれうる。あるいは、選択されたテスト結果は、新たな表示画面(87)において示されるように、電子メールの添付として、または遠隔サーバ上のディレクトリに共有可能である。装置は、これらの機能のいずれか、または全てを実行するように構成されうる。
【0048】
いくつかの実施形態において、方法は、診断機器の加熱ブロック上の温度を制御するために使用される。いくつかの実施形態において、方法は、装置の各チャネル上で観測された蛍光値の単一読出しを行うようにマシンに指示する。校正メニューにより、ユーザは診断装置上において、温度センサの温度校正を行う、または自身の任意の蛍光校正を入力することが可能になる。
【0049】
装置は、核酸増幅またはその他の分析プロセス中に、試料または光チャネルのアレイにおいてリアルタイム蛍光測定を行う方法においても使用されうる。測定は、個々の試料または光チャネルをアドレス指定する強固に固定された光源のアレイで順次照明を行うことで、時間領域において多重化されうる。そして測定は、本明細書に含まれる説明及び構成部品に従って多重化されうる。リアルタイム蛍光分析システム内の試料及び/または光チャネルの発光は、共通(例えば単一)信号処理経路にインターフェイス接続された単一の検出器または検出器アレイにより検出される。そしてユーザに結果を提供するために、単一検出器または共通経路が分析されうる。
【0050】
装置は、水と埃の侵入を確実に最小限にするように構築されうる。従って、図1を参照すると、ガスケットは構成部品間の所望の任意の境界面において使用可能である。
【0051】
特定図面に関する前述の実施形態は、本明細書において示された内容の範囲に入る数多くの実施形態のうちの代表的なものに過ぎない。前述のオプション及び機能はそれぞれ、任意の数の表示画面から最終的に始まり、前述及びそれに伴う図面において明らかにされた順番または階層でユーザに提供される必要はない。図17に示されるフローチャートは、モバイルコンピューティング装置用のアプリケーションに含まれる様々なオプションを単に列挙する。各パラメータは、所望の任意の順番で実行可能であり、モバイルコンピューティング装置自体のボタン押下することで、またはアプリケーションの特定表示画面内のタッチキーを介して実行可能である。
【0052】
図17を参照すると、「接続」(200)、「方法の選択」(300)、「標準化」(400)、「データベースの管理」(500)、「試料のラベル付け」(600)、「リアルタイム診断」(700)、「データの共有」(800)を含むいくつかの機能ステップが示される。もちろんこれらの機能ステップの名称、並びにいかなるメニューまたは表示画面のいかなるオプションの名称も、所望の任意の名称に変更可能である。さらに、これらの機能ステップは、任意の特定順序で実行される必要はなく、そして機能ステップの任意のサブセットが実行可能である。従って、全てのステップ実行される必要はない。例えば、標準化ステップ(複数可)は、他の任意のステップ同様に、試料に診断手法を実行する前に必ずしも行われる必要はない。
【0053】
「接続」ステップには、利用可能な装置のリストから接続する装置を選択する(210)、及び利用可能な装置を検索する(220)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。
【0054】
「方法の選択」ステップには、利用可能な方法のリストから実行する方法を選択する(310)、及び新たな方法を追加する、または既存の方法を編集する(220)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。新たな方法の入力または既存の方法の編集を所望する場合、方法の名称を入力または変更する(330)、LAMP温度を入力または変更する(340)、LAMP反応時間を入力または変更する(350)、変性温度を入力または変更する(360)、変性時間を入力または変更する(370)、及び蛍光読出し間隔を入力または変更する(380)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。
【0055】
「標準化」ステップには、温度センサを校正する(410)、及び蛍光を校正する(420)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。
【0056】
「データベースの管理」ステップには、試料に関するデータベース入力内容を一覧表示する(510)、及びデータベース情報を入力する(520)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。新たなデータベース情報の入力を所望する場合、GPS位置(530)、及び編集可能テキスト説明(540)のオプションを含むがこれに限定されない追加オプションが存在する。
【0057】
「試料のラベル付け」ステップには、新たな試料の識別情報を入力する(610)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。新たな試料情報の入力を所望する場合、地理的出所(620)、採集日時(630)、及び試料に関する詳細(640)のオプションを含むがこれに限定されない追加オプションが存在する。
【0058】
「リアルタイム診断」ステップには、試料に診断方法を行う(710)、試料のリアルタイム蛍光データを表示する(720)、及び数学的分析オプションを設定する(730)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。
【0059】
「データの共有」には、データファイルのリストを表示する(810)、及びデータファイルを電子メールにより共有する(820)オプションを含むがこれに限定されないいくつかのオプションが存在する。
【0060】
本明細書において開示された内容がより効率良く理解されうるように、実施例が以下に提供される。これらの実施例は、例示的目的のみに使用され、いかなる様式でも請求内容を限定するものとして解釈されるべきではないことを理解すべきである。
【0061】
(実施例)
実施例1: Smart−DART(スマートダート)プラットフォームを使用した、キジラミにおけるカンキツグリーニング病菌(Candidatus liberbacter)の検出
携帯コンピューティング装置及び診断装置の適用
試料準備:
吸引器を使用して新鮮なキジラミが、95.0%のエタノールを含むバイアルに収集される。清潔な使い捨て紙製品一式を有する清潔なベンチトップが使用される。使い捨て手袋がはめられる。8つの紙フィルタが用意され、1〜20のキジラミが各紙フィルタ上に載置される。キジラミは、5分間空気乾燥される。白色8連PCRチューブストリップが、ラック上に配置される。50.0μlの抽出緩衝液(2mMのEDTA及び1.0%のトリトンX100を含むpH8.0の20mMのTris−HCl)が各チューブに分注され、そしてキャップが閉められる。1度に1つのチューブが開けられ、対応する紙フィルタから全ての乾燥済みキジラミがチューブの中へ落とされ、そしてキャップが閉められる。ラベル付けされたチューブごとに、試料情報(キジラミの数及び出所)が記録される。8連PCRチューブストリップは、Smart−DART部に配置され、85〜95℃で5〜10分間加熱される。これは、例えば所望の温度で所望の時間加熱するように新たな方法「試料準備」を、Smart−DARTアプリケーションにおいて定義することにより達成されうる。白色8連チューブストリップは、ラックへ戻される。手袋が交換され、その隣に透明8連PCRチューブストリップが配置される。チューブごとに新たなピペット先を使用して、各チューブに15.0μlの増幅マスタ混合物が配置される。チューブごとに新たなピペット先を使用して、各チューブに5.0μlのプライマとプローブの混合物が配置される。1度に1つのチューブが開けられ、5.0μlの試料が、各白色チューブから対応する透明チューブへ移される。ピペット先は処分され、新たなピペット先が次の試料(キジラミ抽出)に使用される。透明8連チューブストリップは、分析のためSmart−DART(登録商標)内に配置される。
【0062】
Smart−DART(登録商標)プラットフォームを使用した、カンキツグリーニング病菌(Candidatus liberbacter)を検査する試験の実行
(1)Smart−DART(登録商標)アプリケーションの開始、及びSmart−DART装置への接続
まずAndroid装置上で、Smart−DART(登録商標)アプリケーションを開く。当業者は、お互いに重なった箱の2次元配列のようにしばしば見える、ホーム画面上のアプリケーションメニューアイコンをクリックすることで、ほとんどのAndroid装置上のアプリケーションリストへ移動可能である。アプリケーションはアルファベット順で列挙されており、Smart−DARTアプリケーションはその中から見つかり、クリックすることで選択可能である。
【0063】
インターフェイス上の「接続ボタン(Connect button)」がクリックされると、接続オプションを表示するダイアログが現れる。メニューにより、ペア装置のリストが表示されうる(Smart−DART装置は、Roving Networks(ロービングネットワークス)社のRN−42ブルートゥースモデムを使用するため、デフォルトの装置名にはRNニーモニックと4桁のハードウェアIDが使用されることに留意)。各装置に接続するため、これらの装置のうちのいずれもクリック可能である(ペアリングは、対象装置が電源オンの状態で接続範囲内に存在することを意味するわけではないため、対象装置がそうでない場合には接続は失敗するであろうことに留意)。未ペア装置に接続するには、「装置の検索(Scan for devices)」ボタンを選択する。するとAndroidは、そのエリア内で利用可能なブルートゥース装置を含む未ペア装置リストを作成しうる。未ペア装置を選択した場合、アプリケーションによりペアリングキーが要求され(Smart−DARTのデフォルトペアリングキーは「1234」)、正しいキーを提供した場合は接続が開始される。接続が成功した場合、特定のSmart−DART装置で分析を校正及び実行するための追加制御が、接続ボタンの下にすぐに現れうる。
【0064】
(2)方法の作成及び編集
最初にSmart−DARTは、一般的なLAMP反応(30秒ごとに蛍光読出しを行いながら30分間65℃の反応、その後5分間80℃の変性ステップ)を実行するデフォルトの方法でプログラムされている。方法データベースは、画面下の「オプション(Options)」下の「方法エディタ(Method editor)」をクリックすることで、追加及び/または編集可能である。方法エディタ内では、リスト内の方法は、対象方法をクリックすることで編集され、また対象方法を長くクリックすることで削除されうる。代わりに、新たな方法は、方法エディタの右下にあるボタンをクリックすることで定義されうる。
【0065】
分析に使用する方法は、メイン画面の右上にある「方法選択(Method select)」ボタンをクリックすることで変更可能である。現在データベースにおいて定義済みの方法を全て含むポップアップリストが利用可能になり、当該リストから方法が選択される。現在選択している方法に関する反応パラメータが、下のテキストフィールドに表示されうる。
【0066】
(3)試料のデータラベルの入力
試料一式のリアルタイム分析が完了すると、各試料に対応するラベルが、保存されたデータファイルに記録される。これらのラベル内の情報は、反応の前または間に、対応するウィンドウ上の「データラベル(Data labels)」ボタンをクリックすることで変更可能である。ラベル付けアクティビティにおいて、各テキストフィールドの右にある陽性または陰性ボタンを選択することでフィールドに「陽性対照」または「陰性対照」を入力可能であり、またはフィールド内に試料を説明するための所望のテキストを入力可能である。各試料の「Dベース(D_base)」ボタンを選択することで、アプリケーションのGISデータベースにおける利用可能な場所、時間、試料説明のドロップダウンリストを開くことが可能である。当該GISデータベースは、GPS位置にアクセスするアクティビティに基づいたインタラクティブマップにおいてデータ追加される(GISデータベースの管理または追加を行うには、ホーム画面上の「オプション(Options)」下の「GISデータベースの管理(Manage GIS database)」を選択)。完了したら「ラベルの承認」を選択する。これにより前のウィンドウへ戻りうる。
【0067】
(4)Smart−DART状のリアルタイム反応の実行
好適な方法が選択され、かつSmart−DARTハードウェア装置が接続されたら、Smart−DART装置に試料を搭載し(ウェルは、電源ジャックにより近くLEDから最も遠い装置側から順番に、1から8まで番号が付けられている)、蓋をし、そして「接続メニュー(CONNECT MENU)の下にある「リアルタイムLAMP(Real−Time LAMP)」ボタンをクリックする。分析が自動に始まり、反応の進行に応じてデータがリアルタイムにグラフ表示される。リアルタイムウィンドウは、現在の装置温度、反応の経過時間、方法名、及び使用中の対応反応パラメータ/対応反応時間も表示する。表示データを選択する制御と、及び現在の分析結果をファイルに保存する制御も存在する。反応がまだ完了していない状態で「終了(QUIT)」ボタンがクリックされると、(本当にユーザが終了したいのか確認する適切な質問の後)反応は中止され、データがファイルに書込まれる。
【0068】
(5)データ接続を介したデータの共有
記録された各反応のデータは、Android装置上のDiagenetix(ダイアジェネティックス)ディレクトリ内に、コンマで区切られたスプレッドシートファイルとして記憶され、そしてこれらのファイルは、直接アプリケーションを介して他のユーザと簡単に共有することができる。単に「データの共有(Share data)」ボタンをクリックし、共有したいファイル(現段階では日時で命名され経時的に編成されているファイル)をクリックし、そして「送信(Send)」をクリックすると、ファイルが添付された状態の自身が選んだ電子メールプログラムへ移動しうる。あるいは、共有アクティビティにおいて、チェックを入れた所定のデータファイルに対し「グラフ描写(Plot)」を選択することで、増幅曲線グラフを見ることが可能であり、またはデータファイル内の試料が暗号化されたGPS情報を有する場合には、所望のファイルにチェックを入れた後に「マップ(Map)」をクリックすることで、カラーコード化されたテスト結果をインタラクティブマップ上に表示可能である。
【0069】
実施例2: Smart−DARTプラットフォームを使用した、枯れた植物組織おける青枯病菌(Ralstonia solanacearum)の検出(携帯コンピューティング装置及び診断装置の適用)
枯れた植物組織の一片が採集され、8連PCRチューブ(例えば白色PCRチューブ)のストリップにおける1つのチューブ内に配置される。新鮮な発芽組織の半インチ断片が望ましいが、茎または葉組織の同様の大きさの断片も使用可能である。清潔な使い捨て紙製品一式を有する清潔なベンチトップが使用され、かつ使い捨て手袋がはめられる。各試料チューブに100.0〜200.0μlの抽出緩衝液(pH8.0の20mMのTri−HCl、2mMのEDTA)が追加され、試料は10分間抽出緩衝液内に放置される。試料は優しく混ぜられ、Smart−DART部に配置され、85〜95℃で5〜10分間加熱される。必要であれば、抽出緩衝液を使用して希釈系列が作られる。新たな1対の手袋を使用して、透明8連PCRチューブストリップがラックに配置される。チューブごとに新たなピペット先を使用して、各チューブに15.0μlの増幅マスタ混合物が分注される。チューブごとに新たなピペット先を使用して、各チューブに5.0μlのプライマとプローブの混合物が分注される。白色ストリップ内の各チューブから5.0μlの上澄みが、透明8連チューブストリップ内の対応チューブへ移される。透明8連チューブストリップは、分析のためSmart−DART(登録商標)に挿入され、そしてSmart−DART(登録商標)プラットフォームを使用した植物組織における青枯病菌(Ralstonia solanacearum)の検出テストが実行される。同様のステップが、キジラミにおけるカンキツグリーニング病菌(Candidatus liberbacter)の検出に使用可能である。
【0070】
実施例3: Smart−DARTプラットフォームを使用した、灌漑用水における青枯病菌(Ralstonia solanacearum)の検出(携帯コンピューティング装置及び診断装置の適用)
試料準備:
灌漑用水試料が1.5mlの遠心分離チューブに収集される。清潔な使い捨て紙製品一式を有する清潔なベンチトップが使用され、かつ使い捨て手袋がはめられる。水試料は、0.4μm孔径のPVDF膜を有する市販の遠心分離フィルタ部へ移される。水試料は、デスクトップ遠心分離機で5分間遠心分離され、500.0μlの抽出緩衝液(pH8.0の20mMのTri−HCl、2mMのEDTA)で2回洗浄濾過される。PVDFフィルタは、カラムから取り外され、白色8連PCRチューブストリップ内に配置され、50.0μlの抽出緩衝液が追加される。PVDFフィルタと抽出緩衝液は勢いよく混ぜられ、そして白色8連PCRチューブストリップはSmart−DART部内に配置され、85〜95℃で5〜10分間加熱される。必要であれば、抽出緩衝液を使用して希釈系列が作られる。新たな1対の手袋を使用して、透明8連PCRチューブストリップがラックに配置される。チューブごとに新たなピペット先を使用して、各透明チューブに15.0μlの増幅マスタ混合物が分注される。チューブごとに新たなピペット先を使用して、各透明チューブに5.0μlのプライマとプローブの混合物が分注される。白色8連チューブストリップ内の各抽出チューブから5.0μlの試料の上澄みが、透明8連チューブストリップ内の対応チューブに注入される。透明8連チューブストリップは、分析のためSmart−DART(登録商標)に配置され、そして灌漑用水における青枯病菌(Ralstonia solanacearum)の検出テストがSmart−DART(登録商標)プラットフォームを使用して実行される。
同様のステップが、キジラミにおけるカンキツグリーニング病菌(Candidatus liberbacter)の検出に使用可能である。
【0071】
当業者には前述の説明から、本明細書において説明された内容に加えて、説明された内容に対する様々な修正は明らかであろう。このような修正もまた、添付の請求範囲の中に含まれるものとする。本願において引用された各参考文献(雑誌論文、米国特許、米国外特許、特許出願公報、国際特許出願公報、遺伝子バンク登録番号等を含むがこれに限定されない)は、その全体が参照により本願に組み込まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図17-1】
図17-2】