特許第6538747号(P6538747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538747
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】鉄道模型システムの制御装置
(51)【国際特許分類】
   A63H 19/24 20060101AFI20190625BHJP
   A63H 19/28 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   A63H19/24
   A63H19/28 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-76524(P2017-76524)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-175148(P2018-175148A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】島添 敏之
(72)【発明者】
【氏名】千田 政明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 渉
【審査官】 前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−225472(JP,A)
【文献】 特開平04−197876(JP,A)
【文献】 特公昭58−006513(JP,B2)
【文献】 特開2016−202608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00−37/00
B61L 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のレール間(以下、単に「レール」という)に印加されている制御信号を含む交流電力を、車輪を介して受電して走行する複数の模型列車がレール上を走行可能な鉄道模型システムにおいて、前記レール上を走行中の前記模型列車それぞれの在線区間を決定して各模型列車に対する前記制御信号を生成する制御装置であって、
前記在線区間に基づき、1又は連続する複数の区間でなる前記模型列車の進路を構成して現示を制御する連動処理部と、
前記模型列車の次の進路が停止現示の場合に、当該模型列車を当該次の進路の外方に停止させる情報を前記制御信号に含めて送信する走行制御部と、
前記在線区間に基づき、前記模型列車が停止現示の進路へ誤進入したこと(以下この誤進入した模型列車を「誤進入模型列車」という)を検出する誤進入検出部と、
前記誤進入の検出がなされた場合に、当該誤進入した進路の進入可能条件を満たすか否かを判定し、前記進入可能条件を満たすならば、前記誤進入模型列車に対して当該誤進入した進路の走行を継続させる情報を前記制御信号に含めて送信させ、前記進入可能条件を満たさず且つ後退可能条件を満たすならば、前記誤進入模型列車に対して当該誤進入した進路を進出するまで後退させる情報を前記制御信号に含めて送信させる誤進入時制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記レールは、前記在線区間の単位となる区間が、区間境界が電気的に絶縁されて構成され、各区間それぞれのレールに前記交流電力が共通印加されてなり、
前記制御装置は、前記レールに前記共通印加される前記交流電力に、前記各模型列車に対する制御信号を重畳させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記誤進入時制御部は、
前記誤進入の検出がなされた場合に、前記誤進入した進路の前記進入可能条件を満たすかの判定がなされるまで、前記誤進入模型列車を停止させる情報を制御信号に含めて送信する、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記誤進入時制御部は、
前記誤進入した進路の直前の進路の区間を、前記誤進入模型列車の在線区間に含んでいることを前記後退可能条件に更に含めて、前記後退可能条件を満たすかを判定する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記誤進入時制御部は、
前記誤進入した進路の直前の進路に含まれる所定の区間が、前記誤進入模型列車以外の模型列車の在線区間でないことを前記後退可能条件に更に含めて、前記後退可能条件を満たすかを判定する、
請求項1〜4の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記誤進入時制御部は、
前記進入可能条件を満たさず、且つ、前記後退可能条件を満たさない場合に、所定の誤進入報知を行う、
請求項1〜5の何れか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール上を複数の模型列車が走行する鉄道模型システムの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道模型では、レールに供給した交流電力を、車輪を介して受電することでモータを回転させて模型車両が走行する方式が良く知られている。このとき、模型車両は単体車両のみで走行させることも、複数連結させて走行させることも可能である。どちらの場合も1つの列車を構成することとなるため、以下「模型列車」と呼ぶ。また、“鉄道模型”というと、模型車両という狭義の意味とも読めるため、本明細書では、車両側とレール側(いわば地上側)との両者を含む意味の“鉄道模型”のことを「鉄道模型システム」と呼ぶ。
【0003】
模型列車を自動運転させる技術として、例えば、特許文献1には、複数の模型列車それぞれに対する制御情報を含む制御信号をレールに供給する駆動電力に重畳することで、複数の模型列車を個別に制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−342862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の模型列車を自動運転させる場合には、模型列車同士の衝突を防止する進路制御のために各模型列車の在線位置を検知する必要があるが、在線位置の検知として、レールを区切った区間単位での連続的な在線検知を用いる必要がある。
【0006】
しかしながら、複数の模型列車の在線位置を検知し、各模型列車に対する制御を行うため、模型列車の走行速度が速い場合や区間長が短い場合などには、停止や減速といった速度制御が間に合わず、進入の許可が得られていない区間への誤進入(過走)が生じ得る。このような誤進入の対処としては、全ての模型列車を停止させ、オペレータの手作業によって誤進入した模型列車を当該区間の手前方(外方)に移動させるといった手法が取られていたが、このような作業を模型列車の誤進入が生じる都度に行うことは煩わしい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、模型列車が誤進入した場合の対処を自動的に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための第1の発明は、
左右のレール間(以下、単に「レール」という)に印加されている制御信号を含む交流電力を、車輪を介して受電して走行する複数の模型列車がレール上を走行可能な鉄道模型システムにおいて、前記レール上を走行中の前記模型列車それぞれの在線区間を決定して各模型列車に対する前記制御信号を生成する制御装置であって、
前記在線区間に基づき、1又は連続する複数の区間でなる前記模型列車の進路を構成して現示を制御する連動処理部と、
前記模型列車の次の進路が停止現示の場合に、当該模型列車を当該次の進路の外方に停止させる情報を前記制御信号に含めて送信する走行制御部と、
前記在線区間に基づき、前記模型列車が停止現示の進路へ誤進入したこと(以下この誤進入した模型列車を「誤進入模型列車」という)を検出する誤進入検出部と、
前記誤進入の検出がなされた場合に、当該誤進入した進路の進入可能条件を満たすか否かを判定し、前記進入可能条件を満たすならば、前記誤進入模型列車に対して当該誤進入した進路の走行を継続させる情報を前記制御信号に含めて送信させ、前記進入可能条件を満たさず且つ後退可能条件を満たすならば、前記誤進入模型列車に対して当該誤進入した進路を進出するまで後退させる情報を前記制御信号に含めて送信させる誤進入時制御部と、
を備えた制御装置である。
【0009】
第1の発明によれば、模型列車が停止現示の進路へ誤進入した場合に、走行を継続させる、或いは、誤進入した進路を進出するまで後退させる。この制御は全て自動で行われるため、誤進入模型列車の自動運転は誤進入した後も継続して行われることとなる。すなわち、誤進入した進路の進入可能条件を満たす場合には、安全が確保されているので、誤進入した進路の走行を継続させても問題ない。また、進入可能条件を満たさない場合、後退可能条件を満たすならば、誤進入模型列車を後退させて誤進入した進路から進出させることで、自動運転を継続させることができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明の制御装置であって、
前記レールは、前記在線区間の単位となる区間が、区間境界が電気的に絶縁されて構成され、各区間それぞれのレールに前記交流電力が共通印加されてなり、
前記制御装置は、前記レールに前記共通印加される前記交流電力に、前記各模型列車に対する制御信号を重畳させる、
制御装置である。
【0011】
第2の発明によれば、レール上の全ての模型列車の動力源として供給する交流電力を共通としつつ、各模型列車を個別に制御することができる。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明の制御装置であって、
前記誤進入時制御部は、
前記誤進入の検出がなされた場合に、前記誤進入した進路の前記進入可能条件を満たすかの判定がなされるまで、前記誤進入模型列車を停止させる情報を制御信号に含めて送信する、
制御装置である。
【0013】
第3の発明によれば、停止現示の進路への誤進入を検出した場合に、走行を継続させるか後退させるかといった誤進入に対する制御を決定する前に、誤進入模型列車を直ちに停止させることで、先行の模型列車への衝突防止の対処を優先することができる。
【0014】
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明の制御装置であって、
前記誤進入時制御部は、
前記誤進入した進路の直前の進路の区間を、前記誤進入模型列車の在線区間に含んでいることを前記後退可能条件に更に含めて、前記後退可能条件を満たすかを判定する、
制御装置である。
【0015】
第4の発明によれば、誤進入した進路の直前の進路の区間を、誤進入模型列車の在線区間に含んでいるとは、誤進入模型列車が直前の進路を完全に進出していない状態にあることを意味する。つまり、本来停止するはずの進路を誤進入模型列車が抜けきっていない状態であり、当該進路が停止現示であり、後続の模型列車が進入して来ることはないため、誤進入模型列車が後退した際に後続の模型列車と衝突することはなく、誤進入模型列車を安全に後退させることができる。
【0016】
第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明の制御装置であって、
前記誤進入時制御部は、
前記誤進入した進路の直前の進路に含まれる所定の区間が、前記誤進入模型列車以外の模型列車の在線区間でないことを前記後退可能条件に更に含めて、前記後退可能条件を満たすかを判定する、
制御装置である。
【0017】
第5の発明によれば、誤進入した進路の直前の進路に含まれる所定の区間には後続の模型列車が進入していないため、誤進入模型列車が後退した際に後続の模型列車と衝突することはなく、誤進入模型列車を安全に後退させることができる。
【0018】
第6の発明は、第1〜第5の何れかの発明の制御装置であって、
前記誤進入時制御部は、
前記進入可能条件を満たさず、且つ、前記後退可能条件を満たさない場合に、所定の誤進入報知を行う、
制御装置である。
【0019】
第6の発明によれば、進路の進入可能条件を満たさず、且つ、後退可能条件を満たさない場合、誤進入模型列車は後退させることもできず、停止現示の進路に誤進入したまま自動運転に復帰できない。このような場合には、停止現示の進路への誤進入が生じたことをユーザに向けて報知し、手作業による対処を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】鉄道模型システムの構成図。
図2】模型列車が停止現示の進路に誤進入した場合の制御例。
図3】模型列車が停止現示の進路に誤進入した場合の制御例。
図4】模型列車が停止現示の進路に誤進入した場合の制御例。
図5】制御システムの構成図。
図6】制御装置の機能構成図。
図7】走行経路データの一例。
図8】進路定義データの一例。
図9】走行状況データの一例。
図10】転てつ機状態データの一例。
図11】信号機状態データの一例。
図12】誤進入時制御処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[システム構成]
図1は、本実施形態の鉄道模型システム1の構成を概略的に示した図である。図1に示すように、鉄道模型システム1は、レール10と、このレール10上を走行可能な複数の模型列車20と、制御システム40とを備えて構成される。
【0022】
ここで、模型列車20とは、一体として走行する1両以上の模型車両を意味する。すなわち、模型車両が単体で走行する場合にはその単体の模型車両のことを意味し、複数の模型車両が連結して走行する場合にはその連結した模型車両群のことを意味する。図面では、理解を容易にするために、模型列車20を1両の模型車両で構成しているかのように図示するが、2両以上の模型車両を連結して構成しても良い。
【0023】
レール10は複数の区間に区切られ、区間境界12は電気的に絶縁されている。また、レール10の分岐部分に転てつ機模型14が設けられているとともに、模型列車20の進路の発点となる区間境界12には、当該進路を防護する信号機模型16が並置されている。
【0024】
そして、各区間のレール10は、制御システム40と電源線30で接続され、この電源線30を介して、制御システム40から、模型列車20に搭載されたモータの駆動電力となる共通の交流電力が供給される。供給される交流電力には、模型列車20に対する制御信号が重畳されている。
【0025】
また、レール10に接続された電源線30には電流センサ32が設けられており、制御システム40は、電流センサ32による各区間のレール10の通流結果を用いて、レール10上を走行中の各模型列車20の在線区間を決定し、各模型列車20に対する制御信号を生成する。
【0026】
制御信号には、レール10上の全ての模型列車20に対する制御情報が、そのIDと対応付けて含まれている。制御信号には、各模型列車20に対する走行速度(例えば、高速・中速・低速・停止等の段階的な速度)や走行方向を指示する制御情報が含まれる。各区間のレール10には共通に交流電力が供給され、その交流電力に制御信号が重畳されることから、レール10上の全ての模型列車20に、順番に制御情報を送信する周期には一定の時間を要し、この所定の繰り返し周期で制御信号が繰り返し送信される。
【0027】
模型列車20は、車輪を介してレール10上の交流電力を受電し、受電した交流電力によってモータを駆動して走行する。また、模型列車20には、交流電力に重畳されている制御信号を抽出するフィルタ回路や、抽出した制御信号から自列車に対する情報を選択し、選択した情報に従ってモータの回転方向や回転速度を制御する制御回路が搭載されており、抽出した情報に従った走行を行うように構成されている。
【0028】
また、転てつ機模型14及び信号機模型16それぞれは、不図示の制御線で制御システム40と接続されており、制御システム40によって、転てつ機模型14の転換方向(例えば、定位・反位等)や、信号機模型16の現示(例えば、停止現示・進行現示等)が制御される。すなわち、制御システム40(より具体的には、連動処理部74(図6参照))の連動処理によって、転てつ機模型14は、進路を構成するように所定方向に転換・鎖錠され、また、信号機模型16は、防護する進路内を模型列車20が走行しても良いことを表す進行現示(青表示)や、当該信号機模型16の内方に停止しなくてはいけないことを表す停止現示(赤表示)を含む現示を示すように制御される。
【0029】
[模型列車の制御]
(A)基本
鉄道模型システム1では、模型列車20同士の衝突を防止して安全に走行させるために連動処理を行っている。すなわち、連動処理として、手動操作若しくは所定条件による自動制御により、1又は連続する複数の区間でなる進路を設定し、転てつ機模型14を所定方向に転換するように制御して進路を構成し、鎖錠条件や列車在線状態などを照査し進路内を模型列車20が走行しても問題ない場合に信号機模型16を進行現示(青表示)とする。そして、進行現示に従って走行するように模型列車20を制御する。
【0030】
(B)誤進入
しかし、鉄道模型システム1では、上述の通り、全ての模型列車20に対する制御情報を制御信号として生成・供給しており、制御信号の送信周期には一定の時間を要するため、各模型列車20は、自身への制御情報を常時受信できる状況になく、模型列車20に対する停止制御が間に合わず、模型列車20が停止現示の進路(言い換えれば、当該進路を防護する信号機模型16が停止現示を示すように制御されている状態)に進入してしまう誤進入が発生することがある。また、模型列車20が進路内方に進入する直前に進路を復位(取消)し、進行現示から停止現示(赤表示)に変化した場合にも、模型列車20に対する停止制御が間に合わず、模型列車20が停止現示の進路に進入してしまう誤進入が発生することがある。本実施形態は、このように、模型列車20が停止現示の進路へ誤進入したときの制御に特徴があり、極力、元の走行に復帰して走行を継続できるように制御することを原則としている。
【0031】
具体的には、先ず、模型列車20が誤進入した進路の進入可能条件を満たすか否かを判定し、その判定結果に応じて、誤進入した模型列車20(以下、「誤進入模型列車」という)に対する制御を決定する。進入可能条件とは、当該進路上の転てつ機模型14が所定方向に転換・鎖錠され、当該進路内の所定の鎖錠条件(進路鎖錠)がすべて鎖錠され、当該進路内のすべての区間に模型列車20の在線がない場合である。すなわち、信号機模型16は停止現示であるが、当該進路内を模型列車20が走行しても衝突などのおそれが無い状態である。
【0032】
図2図4は、模型列車20aが停止現示の進路に誤進入した場合の制御を説明する図である。何れも、模型列車20aは、区間1T〜6Tを含む複数の区間に区切られているレール10上をA方向(図中右方向)に走行しており、進路1R(進路1Rの着点となる区間2T)から、停止現示の進路2R(進路2Rの発点となる区間3T)に進入した場合を示している。
【0033】
図2は、誤進入した際、その誤進入した進路2Rの進入可能条件が満たされている場合である。図2では、進路2Rに対する信号機模型16aは停止現示であるが、区間4T内の転てつ機模型14は所定方向(定位)に転換・鎖錠されており、且つ、進路2Rの区間3T〜5Tの全てに他の模型列車20が在線しておらず、且つ鎖錠されている状態となっている。つまり、進路2Rは、誤進入模型列車20aによる進入可能条件を満たす状態にある。
【0034】
このような場合、誤進入模型列車20aは、誤進入した進路2Rの着点まで走行可能であるため、走行を継続させる。詳細には、停止現示の進路2Rに誤進入した時点で一旦停止させるが、進路2Rの進入可能条件を満たすことを確認した後に、走行を開始させ、進路2Rの着点(区間5T)に停止させるように制御する。
【0035】
図3図4は、誤進入した際、その誤進入した進路2Rの進入可能条件が満たされていない場合である。図3図4では、誤進入した際、進路2Rのうちの区間5Tには先行する他の模型列車20bが位置しており、進路2Rは進入可能条件を満たしておらず、信号機模型16aは停止現示となっている。このように、誤進入した際、誤進入した進路の進入可能条件が満たされていない場合には、後退可能条件を満たすか否かを判定し、満たすならば、誤進入模型列車20を、誤進入した進路から完全に進出するまで後退させる。後退可能条件は、誤進入模型列車20を、誤進入した進路の外方の目標停止位置まで安全に後退させることが可能であることを判定する条件である。具体的には、“誤進入直前の進路に対する内方区間を誤進入模型列車20の在線区間に含んでいる”、或いは、“誤進入直前の進路に対する内方区間の在線がない”ことである。ここで、“誤進入直前の進路に対する内方区間”とは、誤進入した進路の直前の進路の区間(誤進入した進路の直前の進路に含まれる区間)のことであり、本実施形態では、誤進入した進路の直前の進路に含まれる所定の区間のことである。例えば、図3図4に示すように、模型列車20が進路2Rに誤進入した場合には、直前の進路1Rの区間2T,1T,・・・のうち、着点である区間2Tからの所定数の区間が相当する。
【0036】
つまり、図3のように、停止現示の進路2Rへの進入直後など、誤進入模型列車20aが本来停止すべき進路1Rから完全に進出していない場合や、図4のように、誤進入模型列車20aが本来停止すべき進路1Rから完全に進出しているが、進路1Rの内方区間1T,2Tに後続の他の模型列車20cが位置しない場合が、後退可能条件を満たす場合に相当する。
【0037】
図3では、誤進入模型列車20aは本来停止すべき進路1Rから進出していないため、後続の模型列車20は進路1Rに進入することはない。つまり、“誤進入直前の進路1Rに対する内方区間”に相当する進路1Rの着点である区間2Tが誤進入模型列車20の在線区間に含まれており、後退可能条件である“誤進入直前の進路に対する内方区間を誤進入模型列車20の在線区間に含んでいる”ことを満たしている。なお、“誤進入直前の進路に対する内方区間”は、誤進入した進路の直前の進路に含まれる所定の区間であるから、この後退可能条件は、“誤進入した進路の直前の進路の区間を誤進入模型列車の在線区間に含んでいること”と言い換えることができる。このため、誤進入模型列車20aを、誤進入した進路2Rから完全に進出するように後退させてその外方隣接区間である区間2Tに停止させる。詳細には、停止現示の進路2Rに進入した時点で誤進入模型列車20aを一旦停止させ、進路2Rの進入可能条件を満たさず、且つ、後退可能条件を満たすことを確認した後に進路2Rから進出するまで後退させて停止させる。
【0038】
また、図4では、誤進入模型列車20aは本来停止すべき進路1Rから完全に進出しており、後続の模型列車20cは、進路1Rの着点である区間2Tを含む区間1T,2Tにはまだ進入していない。つまり、“誤進入直前の進路に対する内方区間”に相当する進路1Rの着点である区間2Tからの二区間1T,2Tに後続の模型列車20cが在線しておらず、後退可能条件である“誤進入直前の進路に対する内方区間の在線がない”ことを満たしている。なお、“誤進入直前の進路に対する内方区間”は、誤進入した進路の直前の進路に含まれる所定の区間であるから、この後退可能条件は、“誤進入した進路の直前の進路のうち、当該直前の進路に含まれる所定の区間が、前記誤進入模型列車以外の模型列車の在線区間でないこと”と言い換えることができる。このため、誤進入模型列車20aを、誤進入した進路2Rから完全に進出するように後退させて外方隣接区間である区間2Tに停止させる。詳細には、停止現示の進路2Rに進入した時点で誤進入模型列車20aを一旦停止させ、進路2Rの進入可能条件を満たさず、且つ、後退可能条件を満たすことを確認した後に進路2Rから進出するまで後退させて停止させる。
【0039】
また、誤進入した進路の進入可能条件を満たさず、且つ、後退可能条件を満たさない場合には、誤進入模型列車20aを直ちに停止させ、誤進入を報知する所定の報知処理を行う。所定の報知処理としては、所定の報知メッセージを、スピーカから放音出力する、或いは、ディスプレイに表示出力するといったことや、所定のランプを点灯するといったことが考えられる。更に、誤進入した進路や模型列車を報知メッセージに含めるようにしても良い。報知処理によって、ユーザの手作業での対処を促すことができる。
【0040】
このように、模型列車20が停止現示の進路に誤進入した場合には、安全を確認した上で、走行を継続させる、或いは、後退させて停止現示の進路から進出させて、極力、元の走行に復帰して走行を継続できるようにするという自動的な対処を実現している。
【0041】
[制御システム]
図5は、制御システム40の構成を概略的に示す図である。なお、図5では、模型列車20への給電および制御情報の送信等を主に示しており、転てつ機模型14や信号機模型16については図示を省略している。図5に示すように、制御システム40は、給電部42と、通流検知部44と、制御装置50とを有する。
【0042】
給電部42は、各区間の左右のレール10間に接続された電源線30を介して当該左右のレール10間に交流電力を印加する。この交流電力には、制御装置50によって生成された制御信号が重畳されている。
【0043】
通流検知部44は、各区間の電源線30それぞれに設けられた電流センサ32の計測値によって、当該区間のレール10上での通流を検知する。ある区間のレール10上に模型列車20が位置しない場合、レール10間は電気的に開放された状態であり、レール10間に電流は流れない。一方、ある区間のレール10上に模型列車20が位置する場合、その模型列車20の車輪22を介してモータ24や模型列車20に装備されたLED等の照明に電流が流れる(通流する)。その際に流れる電流の大きさは、模型列車20のモータ24や模型列車に装備されたLED等の電力消費によって変動する。通流検知部44は、区間毎に、レール10に所定値以上の電流が流れているか否か(通流の有無)を検知する。
【0044】
図6は、制御装置50の機能構成図である。図6によれば、制御装置50は、操作入力部52と、表示部54と、音出力部56と、通信部58と、処理部60と、記憶部80とを有する。
【0045】
操作入力部52は、例えば操作ボタンやスイッチ、タッチパネル等の入力装置で実現され、ユーザの操作に応じた操作信号を処理部60に出力する。表示部54は、例えば液晶ディスプレイやタッチパネル、表示ランプ等の表示装置で実現され、処理部60からの表示信号に基づく各種表示を行う。音出力部56は、例えばスピーカ等の音声出力装置で実現され、処理部60からの音声信号に基づく各種音出力を行う。通信部58は、例えば有線或いは無線の通信装置で実現され、外部装置とのデータ通信を行う。
【0046】
処理部60は、例えばCPU等の演算装置を有して構成され、記憶部80に記憶されたプログラムやデータに基づく各種演算処理を行って、制御装置50の全体制御を行う。本実施形態では、処理部60は、在線区間決定部62と、模型列車制御部64と、連動処理部74と、制御信号生成部76とを有する。
【0047】
在線区間決定部62は、通流検知部44の検知結果を用いて、レール10上を走行中の模型列車20それぞれの在線区間を決定する。具体的には、先ず、通流の検知結果(通流の有無)を用いて、区間毎の模型列車20の在線有無を示す在線状態を更新する。この在線状態の更新は、所定周期で繰り返し行う。すなわち、ある区間の通流の検知結果が“有り”ならば、当該区間の在線状態を“有り(在線)”とし、通流の検知結果が“無し”ならば、在線状態を“無し(非在線)”とする。なお、この在線状態の更新は、通流の検知結果が所定時間間隔で所定回数(例えば、2回)以上連続して一致した場合にのみ行うこととしても良い。これにより、通流検知部44の検知結果に一過性の不安定が生じても、模型列車20の在線状態を確実に把握することが可能となる。
【0048】
そして、この区間毎の在線状態を用いて、レール10上を走行中の模型列車20それぞれの先頭在線区間(先頭が位置する区間)を決定する。すなわち、模型列車20の先頭在線区間の在線状態が“有り”の状態で、次区間の在線状態が“無し”から“有り”に変化した場合に、模型列車20が次の区間に進入したとみなして、先頭在線区間を次区間に更新する。このようにして、各模型列車20の先頭在線区間を連続的に追跡する。
【0049】
なお、模型列車20の先頭在線区間は、例えば、鉄道模型システム1の立ち上げ時や、模型列車20の配置時の初期設定として、例えば、ユーザによる操作入力部52への操作入力等によって設定することができる。
【0050】
先頭在線区間の次区間は、レール10に設けられた各区間の繋がりを定めた線区定義データ84を参照して特定することができる。この線区定義データ84は、転てつ機模型14や信号機模型16の設置箇所に関する情報も含む。また、各区間の在線状態に関する情報は、在線データ88として管理されるとともに、各模型列車20の先頭在線区間に関する情報は、先頭在線区間データ90として管理される。
【0051】
模型列車制御部64は、進路制御部66と、走行制御部68と、誤進入検出部70と、誤進入時制御部72とを有し、レール10上の各模型列車20を制御する。
【0052】
進路制御部66は、各模型列車20の在線区間や、操作入力部52から入力された情報に基づき、各模型列車20の進路を設定及び復位する。すなわち、先頭在線区間データ90や走行経路データ96を参照して、各模型列車20の在線区間や走行中の進路、次の進路を判断する。そして、連動処理部74からの進路構成の通知によって、当該次の進路が構成されたと判断する。
【0053】
走行経路データ96は、各模型列車20のレール10上の走行経路を定めたデータである。走行経路は、進路の走行順序として定められている。図7は、走行経路データ96の一例である。図7によれば、走行経路データ96は、模型列車20それぞれの列車ID96aに対応付けて、走行順序96bに進路96cを列挙している。
【0054】
また、レール10上の進路は予め定められ、進路定義データ86として記憶されている。図8は、進路定義データ86の一例である。図8によれば、進路定義データ86は、進路それぞれの進路ID86aに対応付けて、当該進路上の区間86b及び転てつ機86cと、当該進路を防護する信号機86dとを、格納している。進路上の転てつ機86cは、進路を構成する転換方向も併せて格納している。
【0055】
各模型列車20の進路については、走行状況データ98として管理される。図9は、走行状況データ98の一例である。図9によれば、走行状況データ98は、模型列車20それぞれの列車ID98aに対応付けて、現在の進路98bと、次の進路98cと、次の進路98cが停止現示であるか進行現示であるかを表す構成状況98dとを格納している。
【0056】
走行制御部68は、模型列車20の次の進路が停止現示の場合に、当該模型列車20を当該次の進路の外方に停止させる情報を制御信号に含めて送信させる。すなわち、先頭在線区間データ90や走行状況データ98、進路定義データ86を参照して、模型列車20の在線区間や進路の構成状況を判断し、停止現示の進路の外方に停止させるように、模型列車20の走行速度や走行方向を指示する制御情報を生成し、制御信号生成部76に出力して交流電力に重畳させる。具体的には、模型列車20の次区間が次の進路であり、且つ、次の進路が停止現示ならば、当該模型列車20を停車させると判断し、それ以外ならば走行を継続させると判断するとともに走行速度を決定する。
【0057】
誤進入検出部70は、各模型列車20の在線区間に基づき、模型列車20が停止現示の進路へ誤進入したことを検出する。すなわち、先頭在線区間データ90や走行状況データ98、進路定義データ86を参照して、各模型列車20が次の進路に進入したかを判断し、模型列車20が次の進路に進入し、且つ、その次の進路が停止現示ならば、当該模型列車20は、停止現示の進路に誤進入したと判断する。
【0058】
誤進入時制御部72は、誤進入検出部70によって誤進入の検出がなされた場合に、当該誤進入した進路の進入可能条件を満たすか否かを判定し、進入可能条件を満たすならば、誤進入模型列車に対して当該誤進入した進路の走行を継続させる情報を制御信号に含めて送信させ、進入可能条件を満たさないが、後退可能条件を満たすならば、誤進入模型列車に対して当該誤進入した進路を進出するまで後退させる情報を制御信号に含めて送信させる。また、誤進入の検出がなされた場合には、誤進入した進路の進入可能条件を満たすかの判定がなされるまで、誤進入模型列車を停止させる情報を制御信号に含めて送信する。また、誤進入直前の進路内方区間が誤進入模型列車の在線区間であることを後退可能条件に更に含めて、後退可能条件を満たすかを判定する。また、誤進入直前の進路内方区間が誤進入模型列車以外の模型列車の在線区間でないことを後退可能条件に更に含めて、後退可能条件を満たすかを判定する。また、進入可能条件を満たさず、且つ、後退可能条件を満たさない場合に、所定の誤進入報知を行う。
【0059】
すなわち、先ずは、誤進入した模型列車20(誤進入模型列車)に対して停止させる制御情報を生成して制御信号生成部76に出力する。次いで、誤進入した進路の進入可能条件を満たすかを連動処理部74に問い合わせ、進入可能条件を満たすならば、誤進入模型列車に対して、誤進入した進路内の走行を継続させる制御情報を生成して制御信号生成部76に出力する。
【0060】
誤進入した進路が進入可能条件を満たさないならば、更に、先頭在線区間データ90や走行状況データ98、進路定義データ86を参照して、後退可能条件を満たすかを判断する。後退可能条件を満たすならば、誤進入模型列車に対して、誤進入した進路を完全に進出するように後退させる制御情報を生成して制御信号生成部76に出力し、後退可能条件を満たさないならば、誤進入を報知する所定の報知処理を行う。
【0061】
連動処理部74は、手動操作若しくは所定条件による自動制御により、1又は連続する複数の区間でなる模型列車20の進路を設定し、転てつ機模型14を所定の方向に転換して進路を構成するといった連動処理を行う。すなわち、操作入力部52から進路構成が要求されると、進路定義データ86を参照し、構成を要求された進路上の転てつ機模型14に対して定められた転換方向へ転換するように制御する。また、在線データ88を参照し、進路上の全ての区間に模型列車20が位置しないことを確認すると、鎖錠条件を満たしたと判断して、進路を鎖錠し、進路を防護する信号機模型16を進行現示となるように制御する。その後、要求された進路構成の完了を模型列車制御部64へ通知する。また、在線データ88などをもとに、模型列車20が進路に進入したと判断すると、当該進路を防護する信号機模型16を停止現示となるように制御する。
【0062】
転てつ機模型14及び信号機模型16は、連動処理部74による指示に従って動作しているものとし、それらの状態は、転てつ機状態データ92、及び、信号機状態データ94として管理される。
【0063】
図10は、転てつ機状態データ92の一例である。図10によれば、転てつ機状態データ92は、転てつ機模型14それぞれの転てつ機ID92aに対応付けて、連動処理部74が指示した転換方向である転換状態92bと、鎖錠状態92cとを格納している。
【0064】
図11は、信号機状態データ94の一例である。図11によれば、信号機状態データ94は、信号機模型16それぞれの信号機ID94aに対応付けて、連動処理部74が指示した現示94bを格納している。
【0065】
また、連動処理部74は、誤進入時制御部72からの問い合わせに応じて、指定された進路が進入可能条件を満たすかを判断する。すなわち、進路定義データ86や転てつ機状態データ92、在線データ88を参照し、進路上の転てつ機模型14が所定方向に転換・鎖錠されており、且つ、進路上の全ての区間に指定された模型列車20以外の模型列車20が位置していないといった、進入可能条件を満たすかを判断する。
【0066】
制御信号生成部76は、模型列車20に対する制御信号を生成し、給電部42が供給する交流電力に重畳させる。すなわち、走行制御部68や誤進入時制御部72から入力される模型列車20に対する制御情報をもとに、全ての模型列車20それぞれに対する最新の制御情報を含む制御信号を生成し、給電部42が供給する交流電力に重畳させる。制御信号生成部76は、この制御信号の生成、及び、交流電力への重畳を、所定の時間間隔で繰り返し行う。
【0067】
記憶部80は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶装置で実現され、処理部60が制御装置50を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部60の作業領域として用いられ、処理部60が実行した演算結果等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部80には、制御プログラム82と、線区定義データ84と、進路定義データ86と、在線データ88と、先頭在線区間データ90と、転てつ機状態データ92と、信号機状態データ94と、走行経路データ96と、走行状況データ98とが記憶される。
【0068】
制御プログラム82は、レール10上の模型列車20の走行や、転てつ機模型14及び信号機模型16の動作を含む鉄道模型システム1を制御するためのプログラムであり、処理部60が読み出して実行することで、本実施形態の鉄道模型システム1の制御が実現される。
【0069】
[処理の流れ]
図12は、誤進入時制御処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、誤進入時制御部72が、誤進入検出部70によって停止現示の進路への誤進入が検出された模型列車20(誤進入模型列車)を対象として実行する処理である。
【0070】
誤進入時制御部72は、先ず、誤進入模型列車を直ちに停止させる(ステップS1)。すなわち、誤進入模型列車に対する停止させる制御情報を制御信号生成部76に生成・送信させる。以降も同様に、誤進入模型列車に対する制御は、誤進入時制御部72による制御信号生成部76への制御情報の生成・送信の制御によって実現される。次いで、連動処理部74に、誤進入した進路の誤進入模型列車による進入可能条件が満たされているかを問い合わせる(ステップS3)。進入可能条件を満たすならば(ステップS5:YES)、誤進入した進路を誤進入模型列車の現在の進路として更新し(ステップS7)、誤進入模型列車に誤進入した進路内の走行を継続させる(ステップS9)。
【0071】
一方、誤進入した進路の進入可能条件を満たさないならば(ステップS5:NO)、続いて、後退可能条件を満たすかを判断する。すなわち、誤進入模型列車が現在の進路を完全に進出したかを判断する。完全に進出していない、つまり、誤進入直前の進路内方区間が誤進入模型列車の在線として継続しているならば(ステップS11:NO)、後退可能条件を満たすので、誤進入模型列車を、誤進入した進路から進出するまで後退させ、完全に進出した後に停止させる(ステップS17)。
【0072】
誤進入模型列車が現在の進路を完全に進出しているならば(ステップS11:YES)、更に、誤進入直前の進路内方区間が他の模型列車20の在線区間となっているか、つまり、他の模型列車が在線しているかを判断する。他の模型列車が在線していないならば(ステップS13:NO)、後退可能条件を満たすので、誤進入した進路から進出するまで後退させ、完全に進出した後に停止させる(ステップS17)。
【0073】
誤進入模型列車が現在の進路を完全に進出し、且つ、誤進入直前の進路内方区間に他の模型列車20が在線するならば(ステップS13:YES)、後退可能条件を満たさないので、誤進入模型列車を停止させたまま、誤進入を報知する所定の報知処理を行う(ステップS15)。誤進入時制御処理は、このように行われる。
【0074】
[作用効果]
このように、本実施形態によれば、模型列車20が停止現示の進路へ誤進入した場合に、走行を継続させる、或いは、誤進入した進路を進出するまで後退させる。この制御は全て自動で行われるため、誤進入模型列車の自動運転は誤進入した後も継続して行われることとなる。すなわち、誤進入した進路の進入可能条件を満たす場合には、安全が確保されているので、誤進入した進路の走行を継続させても問題ない。また、進入可能条件を満たさない場合、後退可能条件を満たすならば、誤進入模型列車を後退させて誤進入した進路から進出させることで、自動運転を継続させることができる、後退可能条件としては、誤進入模型列車が直前の進路を完全に進出していない場合や、誤進入模型列車が直前の進路を完全に進出したが誤進入した進路直前の進路内方区間に後続の模型列車が在線していない場合が相当する。
【0075】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
1 鉄道模型システム
10 レール、12 区間境界
14 転てつ機模型、16 信号機模型
20 模型列車、22 車輪、24 モータ
30 電源線、32 電流センサ
40 制御システム
42 給電部、44 通流検知部
50 制御装置
52 操作入力部、54 表示部、56 音出力部、58 通信部
60 処理部
62 在線区間決定部
64 模型列車制御部
66 進路制御部、68 走行制御部
70 誤進入検出部、72 誤進入時制御部
74 連動処理部、76 制御信号生成部
80 記憶部
82 制御プログラム、84 線区定義データ、86 進路定義データ
88 在線データ、90 先頭在線区間データ
92 転てつ機状態データ、94 信号機状態データ
96 走行経路データ、98 走行状況データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12