特許第6538811号(P6538811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538811
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】検査装置及びコンテナを検査する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20190625BHJP
   G01N 23/10 20180101ALI20190625BHJP
【FI】
   G01N23/04 340
   G01N23/10
   G01N23/04 310
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-232978(P2017-232978)
(22)【出願日】2017年12月4日
(65)【公開番号】特開2018-151370(P2018-151370A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2017年12月4日
(31)【優先権主張番号】201611221485.2
(32)【優先日】2016年12月26日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】趙 自然
(72)【発明者】
【氏名】顧 建平
(72)【発明者】
【氏名】易 茜
(72)【発明者】
【氏名】劉 必成
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/126649(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/121039(WO,A1)
【文献】 特表2015−520846(JP,A)
【文献】 特表2012−518782(JP,A)
【文献】 特表2000−514183(JP,A)
【文献】 特表2015−513072(JP,A)
【文献】 特開2010−190900(JP,A)
【文献】 特開2001−004560(JP,A)
【文献】 特表2009−519471(JP,A)
【文献】 特表2012−531962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0205590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
G06T 7/00− 7/90
A61B 6/00− 6/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパースアレイ検知器を含む走査装置で被検コンテナを透過走査して走査データを取得するステップであって、前記スパースアレイ検知器は、直線アイレ検知器の各検知器ユニットを中心線に対して水平な方向にランダムに分布され、スパースアレイ分布を形成し、前記中心線は前記直線アイレ検知器の延伸方向にある線であり、前記被検コンテナは前記走査装置に対して走行する、ステップと、
各検知器ユニットの前記中心線に対する遅れ距離ΔDに基づいて各検知器ユニットの走査情報を補正することによって、深さ方向における特定深さ位置でデジタルフォーカシングを行うステップと、
デフォーカスの画素値をフィルタリングし、該特定深さ位置におけるスライス画像を取得するステップと、
該スライス画像には危険品や不審物が含まれるか否かを判断するステップと、
を含むコンテナを検査する方法。
【請求項2】
式(1)に基づいてデジタルフォーカシングを行う、
ここで、Lは放射線源から検知器平面までの水平距離であり、ΔDは検知器ユニットのスパースアレイ検知器中心線に対するオフセット量を表す前記遅れ距離であり、Δxは同一投影放射線による深さZの物体点の結像位置オフセット量を表す、請求項1に記載の方法。
Δx=(L−Z)/L・ΔD………(1)
【請求項3】
前記スパースアレイ検知器は、
前記放射線中の第1のエネルギー範囲にある放射線を検知する第1群のスパースアレイ検知ユニットと、
前記放射線中の第1のエネルギー範囲よりも高い第2のエネルギー範囲にある放射線を検知する第2群のスパースアレイ検知ユニットとを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記スパースアレイ検知器の各検知ユニットは、低エネルギー検知部分、金属フィルタ及び高エネルギー検知部分を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
異なる深さ位置に対して、それぞれデジタルフォーカシングを行うとともに、デフォーカスの画素値をフィルタリングすることで、各位置のスライス画像を取得し、これらのスライス画像を動画で連続的に再生する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
入力装置により深さ位置を連続的に調節するステップと、
調節ステップに従って、異なる深さ値でのスライス画像を動画で再生するステップと、をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
スパースアレイ検知器における各検知ユニットの中心線に対するオフセットに基づき、検知されたデータをもとに被検体の二次元透過画像を構成するステップをさらに含む請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記二次元透過画像とスライス画像の対応する深さ値を合わせて、危険品や不審物のコンテナ内の位置を確定するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
放射線源及びスパースアレイ検知器を含み、被検コンテナを透過走査し、走査データを取得し、前記スパースアレイ検知器は、直線アイレ検知器の各検知器ユニットを中心線に対して水平な方向にランダムに分布され、スパースアレイ分布を形成し、前記中心線は前記直線アイレ検知器の延伸方向にある線であり、前記被検コンテナは前記走査装置に対して走行する走査装置と、
各検知器ユニットの前記中心線に対する遅れ距離ΔDに基づいて各検知器ユニットの走査情報を補正することによって、深さ方向における特定深さ位置でデジタルフォーカシングを行い、デフォーカスの画素値をフィルタリングすることで、該特定深さ位置におけるスライス画像を取得し、該スライス画像には危険品や不審物が含まれるか否かを判断するデータ処理装置と、を含む検査装置。
【請求項10】
前記スパースアレイ検知器は、
前記放射線中の第1のエネルギー範囲にある放射線を検知する第1群のスパースアレイ検知ユニットと、
前記放射線中の第1のエネルギー範囲よりも高い第2のエネルギー範囲にある放射線を検知する第2群のスパースアレイ検知ユニットとを含む、請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記スパースアレイ検知器の各検知ユニットは、低エネルギー検知部分、金属フィルタ及び高エネルギー検知部分を含む、請求項9または10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記データ処理装置は式(2)に基づいてデジタルフォーカシングを行い、
ここで、Lは放射線源から検知器平面までの水平距離であり、ΔDは検知器ユニットのスパースアレイ検知器中心線に対するオフセット量を表す前記遅れ距離である、Δxは同一投影放射線による深さZの物体点の結像位置オフセット量を表す、請求項9〜11のいずれか1項に記載の検査装置。
Δx=(L−Z)/L・ΔD………(2)
【請求項13】
前記データ処理装置は、
深さ位置を連続的に調節する入力装置と、
調節過程に従って、異なる深さ値でのスライス画像を動画で再生する表示装置とをさらに含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項14】
前記データ処理装置は、スパースアレイ検知器における各検知ユニットの中心線に対するオフセットに基づき、検知されたデータをもとに被検体の二次元透過画像を構成する、請求項9〜13のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項15】
前記データ処理装置は、前記二次元透過画像とスライス画像の対応する深さ値を合わせて、危険品や不審物のコンテナ内の位置を確定する、請求項14に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は放射線検査技術に関し、具体的には、検査装置、及びコンテナを検査する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線透過技術は、空港や税関などの場所におけるコンテナ貨物検査によく用いられる。X線透過技術は直線検知器アレイを用いてコンテナの二次元透過画像を取得する。例えばX線はコリメートされて扇形の放射線ビームを形成し、被検体を透過して検知される。物体が静止する時、検知器は、放射線面への物体の一次元投影だけを受け取る。物体が、放射線面に垂直な方向に運動する時、物体の各部分が順次に放射線ビームを通過するため、検知器は直線走査によって物体全体の二次元投影画像を取得する。しかしながら、上記検査方式では、コンテナ内物体の奥行方向における投影は重畳し、深さ情報を失う。特に爆発物、危険品などの低原子番号材料について、X線透過後の階調の減衰は明らかではなく、この種類の物体の形状、位置などの特徴に対する視認、識別にひどく影響する。
【0003】
現在、三次元透視画像を取得する常用的な手段としては、CT断層結像とステレオマッチング技術等がある。CT断層結像技術は、複雑で、コストが高く、かつ結像時間が長いため、工業上のリアルタイム検出におけるその応用は制限されている。ステレオマッチング過程では、比較的複雑な物体の階調再構成と境界処理が複雑で、計算量も大きく、実際の応用が難しい。したがって、他の技術を研究してコンテナ内物体の三次元結像情報を取得する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
従来技術における1つまたは複数の課題を鑑みて、コンテナなどのような被検体を検査する検査装置及び検査方法を提供する。
【0005】
本開示の1態様は、スパースアレイ検知器を含む走査装置で被検コンテナを透過走査して走査データを取得するステップと、深さ方向における特定深さ位置でデジタルフォーカシングを行うステップと、デフォーカスの画素値をフィルタリングし、該特定深さ位置におけるスライス画像を取得するステップと、該スライス画像には危険品や不審物が含まれるか否かを判断するステップと、を含むコンテナを検査する方法を提供する。
【0006】
一部の実施例において、下記の式に基づいてデジタルフォーカシングを行う。
Δx=(L−Z)/L・ΔD
【0007】
ここで、Lは放射線源から検知器平面までの水平距離であり、ΔDは検知器ユニットのスパースアレイ検知器中心線に対するオフセット量を表し、Δxは同一投影放射線による深さZの物体点の結像位置オフセット量を表す。
【0008】
一部の実施例において、前記スパースアレイ検知器は、前記放射線中の第1のエネルギー範囲にある放射線を検知する第1群のスパースアレイ検知ユニットと、前記放射線中の第1のエネルギー範囲よりも高い第2のエネルギー範囲にある放射線を検知する第2群のスパースアレイ検知ユニットとを含む。
【0009】
一部の実施例において、前記スパースアレイ検知器の各検知ユニットは、低エネルギー検知部分、フィルタ及び高エネルギー検知部分を含む。
【0010】
一部の実施例において、異なる深さ位置に対して、それぞれデジタルフォーカシングを行うとともに、デフォーカスの画素値をフィルタリングすることで、各位置のスライス画像を取得し、これらのスライス画像を動画で連続的に再生する。
【0011】
一部の実施例において、前記方法は、入力装置により深さ位置を連続的に調節するステップと、調節ステップに従って、異なる深さ値でのスライス画像を動画で再生するステップとを含む。
【0012】
一部の実施例において、前記方法は、スパースアレイ検知器における各検知ユニットの中心線に対するオフセットに基づき、検知されたデータをもとに被検体の二次元透過画像を構成するステップをさらに含む。
【0013】
一部の実施例において、前記方法は、前記二次元透過画像とスライス画像の対応する深さ値を合わせて、危険品や不審物のコンテナ内の位置を確定するステップを含む。
【0014】
本開示の他の1態様は、放射線源及びスパースアレイ検知器を含み、被検コンテナを透過走査し、走査データを取得する走査装置と、深さ方向における特定深さ位置でデジタルフォーカシングを行い、デフォーカスの画素値をフィルタリングすることで、該特定深さ位置におけるスライス画像を取得し、該スライス画像には危険品や不審物が含まれるか否かを判断するデータ処理装置とを含む、検査装置を提供する。
【0015】
一部の実施例において、前記スパースアレイ検知器は、前記放射線中の第1のエネルギー範囲にある放射線を検知する第1群のスパースアレイ検知ユニットと、前記放射線中の第1のエネルギー範囲よりも高い第2のエネルギー範囲にある放射線を検知する第2群のスパースアレイ検知ユニットとを含む。
【0016】
一部の実施例において、前記スパースアレイ検知器の各検知ユニットは、低エネルギー検知部分、フィルタ及び高エネルギー検知部分を含む。
【0017】
一部の実施例において、前記データ処理装置は下記の式に基づいてデジタルフォーカシングを行う。
Δx=(L−Z)/L・ΔD
【0018】
ここで、Lは放射線源から検知器平面までの水平距離であり、ΔDは検知器ユニットのスパースアレイ検知器中心線に対するオフセット量を表し、Δxは同一投影放射線による深さZの物体点の結像位置オフセット量を表す。
【0019】
一部の実施例において、前記データ処理装置は、深さ位置を連続的に調節する入力装置と、調節過程に従って、異なる深さ値でのスライス画像を動画で再生する表示装置とをさらに含む。
【0020】
一部の実施例において、前記データ処理装置は、スパースアレイ検知器における各検知ユニットの中心線に対するオフセットに基づき、検知されたデータをもとに被検体の二次元透過画像を構成する。
【0021】
一部の実施例において、前記データ処理装置は、前記二次元透過画像とスライス画像の対応する深さ値を合わせて、危険品や不審物のコンテナ内の位置を確定する。
【0022】
上記案を利用して、コンテナなどのような被検体には、危険品や不審物が含まれるか否かをより正確に確定することができる。また、透過画像と階層情報とを組み合わせることで、危険品や不審物のコンテナ内の正確な位置を確定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明をよりよく理解するために、以下の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
図1】本開示の実施例による検査装置を示す構造模式図
図2図1に示す検査装置に含まれるスパースアレイ検知器の構造を説明する模式図
図3図1に示す検査装置に含まれる計算装置の構造を説明する模式図
図4】本開示の実施例による結像過程を説明する模式図
図5】本開示の実施例による結像原理を説明する模式図
図6】本開示の実施例による結像過程を説明する模式的なフローチャート
図7】本開示の実施例で使用した擬似二重エネルギー検知器の検知ユニットの構造模式図
図8】本開示の実施例によるコンテナ中の危険品を位置決めするフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例を詳細に説明するが、ここで説明する実施例は例示的なものに過ぎず、本発明を制限するためのものではない。以下の説明において、本発明に対する理解を深めるために、特定な細部を多く説明する。しかしながら、これらの特定な細部を用いて本発明を実行する必要がないことは、当業者にとって自明なことである。他の実例において、本発明を混乱させないために、公知の構造、材料または方法は具体的に説明されていない。
【0025】
明細書全体において、「1実施例」、「実施例」、「1例示」または「例示」に言及する場合は、該実施例または例示を結合しながら記載される特定的特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に出現する「1実施例において」、「実施例において」、「1例示」または「例示」という語句は必ずしも同一の実施例または例示を指すとは限らない。なお、何れの適当な組み合わせ及び/又はサブコンビネーションにおいても特定的特徴、構造又は特性を1つまたは複数の実施例や例示に組み合わせることができる。なお、当業者であれば理解できるように、ここで使用する「及び/又は」という専門用語は、1つまたは複数の関連の列記項目の何れかと全ての組み合わせを含む。
【0026】
従来技術における1つまたは複数の課題について、本開示の実施例は、スパースアレイ検知器で結像検査を行う技術を提出している。水平方向に離散分布した検知器アレイで被検体を走査してから、走査画像に対してデジタルフォーカシングを行うことで、物体の奥行方向における異なる階層の画像を取得することができ、このようにして被検体の階層情報を取得する。なお、一部の実施例において、深さ方向における再構成の空間分解効果を向上させるために、多重エネルギー検知器を用いることにより、X線中の低エネルギー成分をより充分に利用し、比較的薄い対象を識別することができる。他の実施例において、階層深さ情報を二次元透過図に合わせることができ、即ちコンテナ内の危険品/不審物に対して三次元空間位置決めすることができる。
【0027】
本開示の実施例によると、スパース分布されたアレイ検知器及び結像方法を用いることで、コンテナ内の被検体の深さ方向における階層情報を取得することができる。また、多重エネルギー検知器により、X線中の低エネルギー成分を充分に利用し、比較的薄い物品を検査して、空間分解能力を高めることができる。また、深さ情報とX線透視図とを合わせて、被検体の三次元画像及び危険品位置決めを取得することができる。
【0028】
図1は本開示の実施例による検査装置を示す構造模式図である。図1に示すように、本開示の実施例による検査装置100は、X線源110、スパースアレイ検知器130、データ採集装置150、制御器140、及び計算装置160を含み、コンテナ、トラックなどのような被検体120を安全検査し、例えば危険品及び/又は不審物が含まれるか否かを判断する。該実施例において、検知器130とデータ採集装置150を分けて説明するが、当業者であれば理解できるように、それらを集積してX線検知・データ採集装置と称してもよい。
【0029】
一部の実施例によると、上記のX線源110は同位体であってもよく、X線機または加速器等であってもよい。X線源110は、単一エネルギーであってもよく、二重エネルギーであってもよい。このようにして、X線源110とスパースアレイ検知器130、及び、制御器140と計算装置160によって被検体120を透過走査し、検知データを取得する。例えば被検体120の走行中、オペレータは、計算装置160のマンマシンインターフェースを利用して、制御器140によって、放射線を出すことをX線源110に命令するようにコマンドを出し、放射線は被検体120を透過した後、スパースアレイ検知器130とデータ採集装置150により受けられ、かつ計算装置160によりデータを処理し、透過画像を取得することができる一方、被検体の深さ方向における階層情報を取得することができ、ある層におけるスライス情報を取得して後続の危険品/不審物の検査に情報を提供することもできる。このようにして、例えば原子番号などのような特徴値を比較するすると、コンテナ内の不審物の位置を確定することができ、三次元位置決めを迅速的に行い、オペレータが危険品/不審物の位置を見出すことに便利である。
【0030】
図2図1に示す検査装置に含まれるスパースアレイ検知器の構造を説明する模式図である。本開示の実施例で用いるスパースアレイ検知器130は、直線アレイ検知器に比べて、直線アイレ検知器の各検知器ユニットを水平方向(例えば物体の運動方向)にランダムに分布させ、スパースアレイ分布を形成すると考えられる。図2に示す各検知ユニットは、スパースアレイ検知器の中心線に対してランダムに分布する。
【0031】
本開示の実施例によると、X線透視技術はX線で物体を照射し、内部物質の放射線に対する吸収差異に基づいて物体内部状況に関する画像を取得し、貨物検査を行う。直線検知器アレイを用いてコンテナ内物体の二次元透視画像を取得するが、物体の奥行方向における投影は重畳し、深さ方向の識別情報を失い、物体の形状、位置などの特徴に対する視認、識別に影響する。本開示の実施例によると、スパースアレイ検知器を用いてコンテナ内物体の深さ情報を取得し、三次元画像を形成することができ、即ちコンテナに対する安全検査の正確率と効率を大きく向上させることができる。例えば、直線検知器の代わりに、ランダム離散検知器アレイを用い、結像アルゴリズムにより処理して被検体の階層画像を取得することができる。
【0032】
図3図1に示す計算装置の構造模式図を示す。図3に示すように、スパースアレイ検知器130により検知された信号は、データ採集器により採集され、データは、インタフェースユニット167とバス163を介して記憶部161に記憶される。読出専用メモリ(ROM)162には、コンピュータデータプロセッサの配置情報及びプログラムが記憶されている。ランダムアクセスメモリ(RAM)163は、プロセッサ165の動作中に各種データを一時記憶するためのものである。また、メモリ161には、データ処理を行うためのコンピュータプログラムがさらに記憶されており、例えば物質識別プログラム及び画像処理プログラム等が記憶されている。内部バス163は、上記のメモリ161、読出専用メモリ162、ランダムアクセスメモリ163、入力装置164、プロセッサ165、表示装置166及びインタフェースユニット167に接続している。
【0033】
ユーザーがキーボード、マウスなどのような入力装置164で操作命令を入力した後、コンピュータプログラムのコマンドコードは、予定のデータ処理アルゴリズムを行うことをプロセッサ165に命令し、データ処理結果を取得した後、データ処理結果をLCD表示器などのような表示装置167に表示し、あるいはプリントなどのようなハードコピーで処理結果を直接に出力する。
【0034】
図4は本開示の実施例による結像過程を説明する模式図である。図4に示すように、縦一直線に配列される検知器ユニットを水平方向に離散させ、各検知器は中心線に対するランダムで水平な変位を有する。このようにして、放射線源110が出した放射線について、同一の時刻において、検知器アレイ130は物体の異なる位置を透過した1群の放射線を受ける。スパースアレイ検知器での結像原理は図5に示すように、放射線がx軸方向に走査し、各検知器ユニットが水平方向の所定範囲内においてランダムに離散分布され、スパースアレイ検知器の各検知器ユニットがいずれも、検知器アレイ中心線に対してランダムに与えられた水平変位ΔDを有し(検知器の設計時に知られる)、検知器平面からの水平距離がZである物体上のある点A_0が投影画像に出現することは、直線検知器の場合よりもΔx遅れる(図5における点A)。
Δx=(L−Z)/L・ΔD …… (1)
【0035】
上記式(1)において、Lは加速器標的から検知器面までの水平距離である。上記式(1)から分かるとおり、検知器結晶オフセット量ΔDが一定である場合、放射線源110が出した同一投影放射線上の異なる深さZの物体点に対して、結像位置のオフセット量Δxは異なる。
【0036】
本開示の実施例によって、上記再構成方法は画像に表すと、元の構造の明確な物体が乱雑に散在している点になるが、このような乱雑は検知器ユニットの位置により補正することができる。変位Δxで検知器平面からの距離がZである物体のある平面における構造が画像に出現することは、検知器中心線よりもΔD遅れる。したがって、該検知器ユニットの走査線を前に距離ΔD移動させれば、中心線に揃えることができる。全ての検知器を比例的に中心線に揃えると、該物体平面に位置する構造は明確に結像することができ、即ち「デジタルフォーカシング」することができる。全ての検知器の画素を水平変位ΔDで中心線に揃えるように補正すると、この深さ位置にある物体断面は明確に結像することができ、他の層における点は乱雑ノイズである。検知器が異なる水平変位ΔDを用いることで、物体の異なる深さZに対して階層結像することができる。つまり、ある確定深さ層Zにおける物体点は全て上式を満たすべきであり、この層に位置しない結像点はデフォーカスが生じる。故にデジタルフォーカシング、ノイズ除去、フィルタリングなどによりこの層Zに属する画像を抽出することができる。
【0037】
一部の実施例において、異なる深さ位置に対して、それぞれデジタルフォーカシングを行うとともに、デフォーカスの画素値をフィルタリングし、各位置におけるスライス画像を取得し、これらのスライス画像を動画で連続的に再生することができる。例えば深さ位置Z1、Z2、……Z10合計十層のスライス画像をそれぞれ取得し、その後動画で再生したりユーザーが設定した速度で再生したりする。また例えば、入力装置164で深さ装置を連続的に調節し、計算装置160は深さ値の変化にしたがって、異なる深さ値でのスライス画像を動画で再生することができる。
【0038】
図6は本開示の実施例による結像過程を説明する模式的なフローチャートである。図6に示すように、ステップS610において、例えばオペレータは、計算装置160のマンマシンインターフェースを利用して、制御器140によって、放射線を出すことをX線源110に命令するようにコマンドを出し、放射線は被検体120を透過した後、スパースアレイ検知器130とデータ採集装置150により受けられ、コンテナなどのような被検体を一回透過走査する。
【0039】
次いで、ステップS620において、計算装置160でデータを処理し、例えば特定厚さ(深さ)層Zでの画素オフセットΔxを計算し、そしてステップS630において、画素に対してデジタルフォーカシングを行い、例えば上記式(1)を参考して特定位置Zでのフォーカシング後の画素値を計算する。全ての検知器の画素を水平変位ΔDで中心線に揃えるように補正すると、この深さ位置にある物体断面は明確に結像することができ、他の層における点はデフォーカスが生じ、乱雑ノイズと見なされる。
【0040】
その後、ステップS640において、画像に対してノイズ除去、フィルタリングなどの操作を行い、Z層以外の他の層にあるデフォーカス画素値を除去する。例えば、当業者は、異なる状況に応じて適切なノイズ除去アルゴリズムを選択し、フォーカシングした後の画像をノイズ除去し、デフォーカスの画素点の影響をなくすことができる。このようにして、ステップS650において、階層画像を取得し、つまり位置Zでのスライス画像を取得した。
【0041】
また、厚さ(深さ)によってサンプリングして計算することでコンテナ貨物の階層検出を実現することができる。実際に、コンテナ内物体はいずれも所定の厚さを有するため、厚さによる層数を適切な範囲に選択すると、階層結像効果を保証するだけではなく、検知器分布の設計にも便利である。
【0042】
また、本発明の一部の実施例によると、多重エネルギー検知器を用いることができ、例えばスパースアレイ検知器は、高エネルギー検知器群及び低エネルギー検知器群を含んでもよい。例えば、低エネルギーは3〜5MeVのエネルギー範囲を指してもよく、高エネルギーは7〜9MeVのエネルギー範囲を指してもよい。当業者は実際の必要に応じて高エネルギーと低エネルギーの範囲値を設置することができる。検知器のX線に対する吸収特性によると、比較的薄い検知器は、中低原子番号材料と高原子番号材料に対する区別効果が改善される。上記特徴を充分に利用するために、多重エネルギー検知器を設計することができる。
【0043】
図7は本開示の実施例で使用した擬似二重エネルギー検知器700の検知ユニットを示す構造模式図である。図7に示すように、高エネルギー検知器の前に比較的薄い検知器を低エネルギー検知器として1層加えて、低エネルギー検知器がエネルギースペクトル中の低エネルギー成分を検知する。図7に示すように、放射線源に近い方は比較的薄い低エネルギー検知器結晶710(例えば厚さ0.3mmのCsI(TI))が設けられ、その次は両層の検知器の間に挟まれる金属フィルタ720(例えば厚さ0.5mmのCu)が設けられ、その後は比較的厚い高エネルギー検知器結晶730(例えば厚さ4mmのCsI(TI))が設けられる。
【0044】
本開示の実施例によると、放射線源110は、二重エネルギー加速器または単一エネルギー加速器を用いることができる。尚、擬似二重エネルギー検知器の使用のため、使用する加速器は二重エネルギー加速器に限定されるものではなく、単一エネルギーX線加速器を用いればよい。X線はコリメートされて扇形の放射線ビームを形成し、被検体を透過して位置感度検知器アレイに到着する。物体が、放射線面に垂直な方向に運動する時、物体の各部分が順次に放射線ビームを通過し、検知器は直線走査によって物体全体の二次元投影画像を取得する。コンテナ内の物体の材料情報をさらに取得するためには、二重エネルギー加速器で透過図、材料図を取得し、さらにスパースアレイ検知器による深さ階層情報に合わせて三次元構造及び材料画像を形成する。
【0045】
本開示の実施例によると、計算装置160でコンテナの二次元透過図を取得することができる。例えば、スパースアレイ検知器の配列が既知である条件では、中心線に揃えることで二次元透過画像を復元することができる。
【0046】
図8はコンテナ内の危険品を三次元位置決めするフローチャートである。図8に示すように、ステップS810において、スパースアレイ検知器を用いて被検体を透過走査し、走査データを取得する。
【0047】
その後、ステップS820において、異なる深さZに基づいて相応的なスライス画像を確定し、スライス画像に危険品または不審物がある時、相応的な深さ値Zを記録する。ステップS830において、既知のスパースアレイ検知器の配列の条件を利用し、中心線に揃えることで二次元透過画像を復元することができる。ステップS840において、記録された深さ値Z及び二次元透過画像を利用して危険品や不審物の三次元位置を確定する。例えば危険品や不審物の二次元画像における位置を確定することで、危険品や不審物の水平と垂直の座標を取得してから、深さ値Zに合わせてその三次元座標を確定することができる。他の実施例によると、使用した加速器は二重エネルギーのものであれば、さらに、三次元材料識別図を再構成することができる。
【0048】
上記実施例において、特定の順序に従って本開示の方法のフローを説明したが、当業者であれば理解できるように、一部のステップは、他の順序で行われてもよく、並行して行われてもよい。
【0049】
本開示の上記実施例はスパース分布された検知器ユニット及び再構成方法によって、被検体の階層情報を取得する。多重エネルギー検知器により、低原子番号物質及び比較的薄い物品をよりよく検知する。深さ階層情報とX線透過画像を合わせ、被検体の三次元画像及び危険品位置決めを取得する。このようにして、従来のX線透過システムが直線探知アレイを用いることによる奥行方向における情報重畳の不備を補い、コンテナに対する安全検査の正確率、効率及び画像表示効果を向上させる。
【0050】
以上の詳細な説明は、模式図、フローチャート及び/又は例示を用いることで、検査装置及び検査方法の多くの実施例を既に説明した。このような模式図、フローチャート及び/又は例示に1つまたは複数の機能及び/又は操作を含む場合、当業者であれば理解できるように、このような模式図、フローチャート又は例示における各機能及び/又は操作は、各種の構造、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア又は実質的にそれらの任意の組み合わせによって単独及び/又は共同に実現され得るものである。1実施例において、本発明の実施例に記載の主題の若干部分は、専用集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)又は他の集積方式によって実現され得る。しかしながら、当業者であれば理解できるように、ここで開示された実施例の一部は、全体又は部分的に集積回路中に均等して実現することができ、一台または複数台のコンピュータで運行する1つまたは複数のコンピュータプログラムであるように実現し(例えば、一台または複数台のコンピュータシステムで運行する1つまたは複数のプログラムであるように実現する)、1つまたは複数のプロセッサで運行する1つまたは複数のプログラムであるように実現し(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサで運行する1つまたは複数のプログラムであるように実現する)、ファームウェアであるように実現し、あるいは実質的に上記方式の任意組み合わせであるように実現する。かつ当業者は本開示に基づき、回路及び/又は書き込みソフトウェア及び/又はファームウェアコードを設計する能力を具備する。また、当業者であれば認識できるように、本開示に記載の主題の方式は、多種形式のプログラム製品とされて配布することができ、かつ実際に配布を実行する信号担持媒体の具体的な類型にもかかわらず、本開示に記載の主題の例示的な実施例に全て適する。信号担持媒体の例示は、例えばフロッピー、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルユニバーサルディスク(DVD)、デジタル磁気テープ、コンピュータメモリなどの記録型媒体、及びデジタル及び/又はアナログ通信媒体などの伝送型媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波、有線通信リンク、無線通信リンクなど)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0051】
複数の典型的な実施例を参照しながら本発明を説明したが、理解できるように、使用した専門用語は、説明や例示的なものであり、制限的な専門用語ではない。本発明は発明の精神又は実質を逸脱することなく多種の方式で具体的に実施することができるため、理解できるように、上記実施例は前述の何れかの細部に限定されず、添付された請求項が限定した精神と範囲内において、広く解釈されるべきであるため、請求項又はその均等範囲内に入る全ての変化及び変形はいずれも添付された請求項に覆われるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8