【文献】
Jonne Lindeberg, et al.,A 1.5-V Direct Digital Synthesizer With Tunable Delta-Sigma Modulator in 0.13-um CMOS,IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS,米国,IEEE,2005年 9月,VOL.40, NO.9,pp.1978-1982
【文献】
Dayu Yang, et al.,Delta-Sigma Modulation for Direct Digital Frequency Synthesis,IEEE TRANSACTIONS ON VERY LARGE SCALE INTEGRATION(VLSI) SYSTEMS,米国,IEEE,2009年 6月,VOL.17, VOL.6,pp.793-802
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記のDDS等を備える基準信号発生装置は、例えば、携帯電話やWiMAX等の基地局に設置される。近年では、携帯電話等の通信データ量の増加 に対応するために、この基地局を多数設けることが行われている。従って、コンパクトかつ安価な構成の基準信号発生装置が求められている。
【0008】
電子部品をコンパクトかつ安価にする方法として、例えば、必要な機能を半導体チップ上で実現する方法が考えられる。しかし、上記特許文献の構成は、チャー ジポンプ等のアナログ部品を多く含んでいる。アナログ部品で構成される部分をチップ化し、コンパクトな構成の実現をするには、設計や検証に時間が掛かり、 開発費用も高価になる等、実現が困難な場合が多い。
【0009】
また、従来のDDSでは、生成された信号はD/Aコンバータによって アナログ信号に変換される。しかし、D/Aコンバータをチップ化することは上述のように困難である。しかし、チップ化せずにD/Aコンバータ機能を基板上 に実装する場合は、アナログ部品を多く含むこととなり、コンパクトな構成の実現の妨げとなっていた。更に、従来のD/Aコンバータは、低ビットの場合は分 解能が低くなってしまい、高ビットの場合はコストが高くなるという点でも改善の余地があった。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、多くのデジタル部品を含んで構成されるとともに分解能を向上させたDDSを提供することにある。
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のダイレクトデジタルシンセサイザが提供される。即ち、このダイレクトデジタルシンセサイザは、数値制御発振器 と、ΔΣ変調部と、フィルタ部と、を備える。前記数値制御発振器は、デジタル信号を出力する。前記ΔΣ変調部は、前記数値制御発振器が出力する信号又は当 該信号に基づく信号をΔΣ変調する。前記フィルタ部は、前記ΔΣ変調部がΔΣ変調した信号をアナログ信号として出力する。
【0013】
これにより、ΔΣ変調部を備えることで、従来はアナログ部品で構成されていたD/Aコンバータの大部分をデジタル回路で実現できる。従って、DDSの大部 分をチップ化してコンパクトな構成を実現することができる。また、ΔΣ変調を行うことによりノイズシェービング(詳細は後述)により量子化誤差を抑えるこ とができるので、D/A変換後の信号の分解能を向上させることができる。
【0014】
前記のダイレクトデジタルシンセサイザにおいては、前記数値制御発振器から入力された信号の位相に応じた振幅の信号を出力することで、入力された信号を正弦波信号に変換する変換情報記憶部を備えることが好ましい。
【0015】
これにより、DDSに一般的に採用される構成を活かしつつ、DDSのデジタル化を実現することができる。また、このDDSを備えるPLL回路を作成した場 合、フィルタ部で正弦波信号を抽出する構成と異なり、フィルタ部の帯域幅を広くしても高調波が出力されないので、リファレンス信号に同期するまでの時間を 短くすることができる。
【0016】
前記のダイレクトデジタルシンセサイザにおいては、前記フィルタ部は、前記数値制御発振器が出力する信号又は当該信号に基づく信号から、一定範囲の周波数の信号を通過させることで、所定の周波数の正弦波信号を抽出することが好ましい。
【0017】
これにより、変換情報記憶部(ROMテーブル)が不要となるので、高容量のROMを用いることなく分解能を向上させることができる。従って、よりコンパク トかつ高分解能なDDSが実現できる。また、通過させる周波数帯(通過領域)が異なるフィルタ部を使い分けることにより、基本波の整数倍の周波数の正弦波 を出力することができる。
【0018】
前記のダイレクトデジタルシンセサイザにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、こ のダイレクトデジタルシンセサイザは、前記数値制御発振器から入力された信号の位相に応じた振幅の信号を出力することで、入力された信号を正弦波信号に変 換する変換情報記憶部を備える。前記変換情報記憶部が変換した正弦波信号、及び、前記フィルタ部が抽出した正弦波信号のうち、一方の信号が外部へ出力され る。
【0019】
これにより、ユーザの要望や使用環境に適した方の信号を利用可能なDDSが実現できる。
【0020】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の基準信号発生装置が提供される。即ち、この基準信号発生装置は、前記ダイレクトデジタルシンセサイザと、制御部 と、出力部と、を備える。前記制御部は、前記数値制御発振器が出力した信号又はそれに基づく信号と、リファレンス信号と、の位相又は周波数を比較し、比較 結果に基づいて前記数値制御発振器を制御する。前記出力部は、前記ダイレクトデジタルシンセサイザが出力する信号又は当該信号に基づく信号を基準信号とし て出力する。
【0021】
これにより、デジタル部品の割合が多く、コンパクトな構成が実現可能な基準信号発生装置が実現できる。
【0022】
前記の基準信号発生装置においては、適切な前記リファレンス信号を利用できないと判断したときに、前記基準信号を生成するための自走用制御信号を生成する自走制御部を備えることが好ましい。
【0023】
これにより、障害物や妨害電波等により適切なリファレンス信号が利用できなくなった場合であっても、高精度な基準信号を出力し続けることができる。
【0024】
前記の基準信号発生装置においては、少なくとも前記数値制御発振器の消費電力を低減させる制御を行う電力制御部を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、数値制御発振器を利用しないときは、クロックを停止したり、供給する電圧を低減又はゼロにしたりすることで、基準信号発生装置の消費電力を低減することができる。
【0026】
前記の基準信号発生装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この基準信号発生装置は、GNSS衛星からの電波に基づいて、位置情報を取得 するGNSS受信部を備える。前記ダイレクトデジタルシンセサイザ及び前記制御部を含み、基準信号を発生させる部分を信号発生部と称したときに、前記電力 制御部は、当該信号発生部の消費電力を低減させる制御を行う。
【0027】
これにより、GNSS部が出力する位置情報のみが必要であって基準信号の出力が不要な場合は、信号発生部の消費電力を低減することで、基準信号発生装置の消費電力を大幅に低減することができる。
【0028】
前記の基準信号発生装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、この基準信号発生装置は、GNSSアンテナと、GNSS受信部と、を備える。 前記GNSSアンテナは、前記制御部と同じ基板に取り付けられ、GNSS衛星からの測位信号を受信する。前記GNSS受信部は、前記制御部と同じ基板に取 り付けられ、前記GNSSアンテナが受信した測位信号に基づいてリファレンス信号を生成する。
【0029】
これにより、GNSSアンテナと基板とを接続するケーブルを配設する必要がなくなるため、基準信号発生装置の設置コストを低減することができる。
【0030】
本発明の第3の観点によれば、以下の信号出力方法が提供される。即ち、この信号出力方法は、デジタル信号出力工程と、変調工程と、アナログ信号出力工程 と、を含む。前記デジタル信号出力工程では、数値制御発振器によりデジタル信号を出力する。前記変調工程では、前記デジタル信号出力工程で出力された信号 をΔΣ変調する。前記アナログ信号出力工程では、フィルタ処理を行うことにより、前記変調工程で出力された信号をアナログ信号として出力する。
【0031】
これにより、ΔΣ変調を行うΔΣ変調部を備えることで、従来はアナログ部品で構成されていたD/Aコンバータの大部分をデジタル回路で実現できる。従っ て、DDSの大部分をチップ化してコンパクトな構成を実現することができる。また、ΔΣ変調部を備えることで、D/A変換後の信号の分解能を向上させるこ とができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基準信号発生装置10の構成を示すブロック図である。
【0034】
基準信号発生装置10は、接続されるユーザ側の機器に基準信号等を提供するためのものである。基準信号発生装置10が基準信号を供給する対象としては、例 えば、携帯電話の基地局、地上デジタル放送の送信局及びWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)通信設備等がある。
【0035】
本実施形態の基準信号発生装置10は、GPS受信部21と、PLL(Phase Locked Loop)回路51と、DDS(ダイレクトデジタルシンセサイザ)52と、を主要な構成として備えている。
【0036】
基準信号発生装置10の信号入力部41には、GPSアンテナ(GNSSアンテナ)11が接続されている。GPSアンテナ11がGPS衛星(GNSS衛星) から受信した測位用信号は、この信号入力部41を介して、GPS受信部21へ入力される。GPS受信部21は、この測位用信号に基づいて測位計算を行うこ とで、リファレンス信号(1秒に1回のパルス信号)を生成する。このリファレンス信号は、協定世界時(UTC)の1秒に正確に同期するように適宜較正され ている。
【0037】
次に、PLL回路51について説明する。PLL回路51は、
図1に示すように、制御部22と、NCO(数値制御 発振器)23と、分周部24と、で構成されている。このPLL回路51では、GPS受信部21が出力したリファレンス信号と、NCO23が出力した信号を 分周した信号と、の位相比較を行い、当該比較結果に基づいてNCO23が出力する信号の周波数が調整される。以下、PLL回路51を構成する各機器につい て詳細に説明する。
【0038】
制御部22には、前記リファレンス信号と、NCO23が出力した信号を分周した信号と、が入力され る。制御部22は、これらの信号の位相を比較して位相差を求め、その位相差に基づく信号(位相差信号、周波数制御量)を生成する。制御部22は、この周波 数制御量の高周波成分の遮断及び雑音の除去を行った後に、周波数制御量をNCO23へ出力する。なお、制御部22は、両信号の比較結果を出力する構成であ れば良く、信号の処理方法は任意である。
【0039】
NCO23は、基準信号の基となる信号を出力するためのデジタル制御発振器であ る。NCO23は、図略のレジスタと加算器とを備えている。NCO23は、加算器及びレジスタにより、出力値が徐々に増大するとともに、所定の周期で出力 値が0に戻る信号(ノコギリ波、
図2(b)を参照)を出力する。なお、以下の説明ではNCO23の出力値を、その周期的な変化に着目して、特に「ノコギリ 波の位相」と呼ぶことがある。
【0040】
また、NCO23には、制御部22から周波数制御量が入力されている。NCO23は、この 周波数制御量に基づいて、リファレンス信号と、NCO23が出力する信号を分周した信号と、の間の位相差を無くすようにノコギリ波を生成する。ノコギリ波 は、DDS52が備える各部によって適宜変換された後に、分周部24へ出力される。
【0041】
分周部24は、DDS52から出力さ れた信号を分周して高い周波数から低い周波数に変換し、得られた信号(位相比較用信号)を制御部22へ出力するように構成されている。例えば、基準周波数 信号が10MHzである場合、分周部24は、この10MHzの信号を分周比1/10000000で分周して、1Hzの位相比較用信号を生成する。そして、 この位相比較用信号は、基準タイミング信号として出力部44から外部のユーザ側のシステムへと出力される。
【0042】
以上に説明し た構成によって、PLL回路51のループが構成される。例えば、経時変化や周囲の温度変化及び電源電圧等に起因して、NCO23の加算器が積算を行うタイ ミングが変わってしまったとする。この場合、NCO23の出力するノコギリ波の位相が変化し、安定した基準信号が出力できなくなる。しかしながら、PLL 回路51は、GPS受信部21から入力される正確な1PPS信号に基づいて、ノコギリ波の位相のズレがなくなるようにNCO23をデジタル制御している。 従って、上記のように加算器が積算を行うタイミングが変わった場合であっても、基準信号発生装置10のから出力される基準信号を高精度に保つことができ る。
【0043】
次に、DDS52について説明する。DDS52は、
図1に示すように、NCO23と、正弦波変換ROM(変換情報記 憶部)25と、三角波変換回路26と、選択部27と、ΔΣ変調部28と、BPF(バンドパスフィルタ、フィルタ部)29と、から構成されている。なお、 フィルタ部としては、BPFに代えてLPF(ローパスフィルタ)を利用することもできる。
【0044】
正弦波変換ROM25は、 NCO23の出力値(ノコギリ波の位相)と、この出力値に対応付けて設定された正弦波の振幅と、をテーブルとして記憶している。正弦波変換ROM25は、 このテーブルに基づいて信号の変換を行うことにより、ノコギリ波を正弦波に変換することができる。正弦波変換ROM25が変換した信号は、選択部27へ出 力される。
【0045】
三角波変換回路26は、NCO23が生成したノコギリ波の後半の半周期分を反転させることにより、ノコギリ波 を三角波に変換する回路である。以下、
図2を参照して、この三角波変換回路26について具体的に説明する。
図2(a)に示す表の「変換前」の列には、 NCO23が出力するノコギリ波の位相の変化が3ビットの2進数で記されている。この表に示すように、ノコギリ波は出力値を1ずつ増加させる波形を示すこ とが分かる(
図2(b)の左側のグラフを参照)。三角波変換回路26は、ノコギリ波の前半部分(d1〜d4)に対して「000」との排他的論理和をとるよ うに構成されるとともに、このノコギリ波の後半部分(d5〜d8)に対して「111」との排他的論理和をとるように構成された論理回路である。排他的論理 和をとることにより、
図2(a)の右側の「変換後」の列に記されているように、後半部分の出力値がビット反転する。以上のようにして、前半部分 (d1〜d4)は徐々に出力値が大きくなり、後半部分(d5〜d8)は徐々に出力値が小さくなる三角波信号を得ることができる(
図2(b)の右側のグラフ を参照)。三角波変換回路26が出力した三角波信号は、選択部27へ出力される。
【0046】
選択部27は、正弦波変換ROM25が出力した正弦波信号、及び、三角波変換回路26が出力した三角波信号のうち何れか一方をΔΣ変調部28へ出力する。選択部27が出力する信号は、初期設定又はユーザの操作等により決定される。
【0047】
ΔΣ変調部28は、選択部27が出力した信号を変調する。ΔΣ変調部28は、
図3に示すように、減算部(微分器)61と、加算部(積分器)62と、記憶部63と、量子化部64と、を備えている。
【0048】
加算部62及び記憶部63は、入力される信号を積分して量子化部64へ出力する。量子化部64は、加算部62の出力を量子化して、所定時間だけ遅延させた 後に、量子化した信号を減算部61へ出力する。減算部61は、入力信号から、この量子化された信号を減算して、加算部62へ出力する。
【0049】
このように、量子化雑音を含む量子化された入力信号をフィードバックすることにより、量子化部64では、量子化雑音の低周波成分を抑えることができる(ノ イズシェービング)。そのため、量子化部64のビット数を高くすることなく高い分解能を実現することができる。従って、従来の多ビットのD/Aコンバータ よりも部品コストを低減することができる。なお、ΔΣ変調部28は、
図3に示したような一次のΔΣ変調部であっても良いし、2次以上としたΔΣ変調部で あっても良い。
【0050】
また、ΔΣ変調部28は、デジタル回路で構成することができる。従って、本実施形態のDDS52は、大部 分(NCO23からΔΣ変調部28まで)がデジタル部品で構成されるため、これらの機能を半導体チップ上で容易に実現することができる。従って、コンパク トかつ安価な構成が実現できる。
【0051】
BPF29は、所定の周波数帯(通過帯域)の信号のみを通過させ、それ以外の周波数の信 号を通過させない構成のアナログフィルタである。このフィルタを通過させることにより、ΔΣ変調部28の出力する信号をアナログ信号として出力することが できる。また、正弦波変換ROM25が変換した正弦波信号がBPF29を通過することで、当該信号の高周波成分等が除去される。一方、三角波変換回路26 が変換した三角波信号がBPF29を通過することで、三角波は正弦波とその奇数倍音を重ね合わせた波であるため、所定の周波数の正弦波信号が抽出される。
【0052】
以上のようにして生成された正弦波信号は、正弦波の基準周波数信号として出力部42から外部のユーザ側のシステムへと出力される。また、この正弦波信号は、ハードリミッタ31によって矩形波信号に変換される。
【0053】
ハードリミッタ31によって変換された信号は、矩形波の基準周波数信号として、出力部43から外部のユーザ側のシステムへと出力される。また、この矩形波 信号は、上述の分周部24へ出力される。分周部24は、上述のように、この矩形波信号を分周することで、比較用信号を生成する。
【0054】
次に、正弦波変換ROM25を利用して正弦波信号を出力する場合と、三角波変換回路26を利用して正弦波信号出力する場合と、の違いについて説明する。
【0055】
正弦波変換ROM25を利用して正弦波信号を出力する場合、BPF29の帯域幅をある程度広くしても、除去される周波数の範囲が変化するだけであり、さほ ど問題は生じない。従って、BPF29の帯域幅を広くしてNCO23の周波数制御範囲を広くすることで、リファレンス信号に同期するまでの時間を短くする ことができる。
【0056】
これに対し、三角波変換回路26を利用して正弦波信号出力する場合、BPF29の帯域幅を広くしてしまう と、抽出対象の正弦波だけでなく、その高調波も抽出されてしまう。従って、BPF29の帯域幅を狭くせざるを得ないため、リファレンス信号に同期するまで の時間が長くなってしまう。
【0057】
つまり、リファレンス信号に同期するまでの早さという観点では、正弦波変換ROM25を利用した方が優れている。
【0058】
また、正弦波変換ROM25を利用して正弦波信号を出力する場合、NCO23の性能を十分に発揮させるためには、ノコギリ波の位相と正弦波の変位との対応 関係を正弦波変換ROM25に多数記憶させる必要がある。従って、分解能を向上させるためには、記憶容量の大きなROMが必要となるので、回路規模が大き くなり、装置の小型化の妨げとなってしまう。
【0059】
これに対し、三角波変換回路26を利用して正弦波信号を出力する場合、上記のROMを必要とせずに正弦波信号を生成することができる。従って、装置の小型化を実現しつつ、高い分解能を達成することができる。
【0060】
つまり、分解能の高さ及び装置の小型化という観点では、三角波変換回路26を利用した方が優れている。
【0061】
本実施形態では、正弦波変換ROM25及び三角波変換回路26の何れを利用するかを選択部27により選択可能であるため、リファレンス信号に同期するまで の早さを重視する場合は正弦波変換ROM25を利用し、分解能の高さ及び装置の小型化を重視する場合は三角波変換回路26を利用するといった態様で基準信 号発生装置10を使用できる。
【0062】
なお、上記の構成はBPF29を通過させること等により、ジッタを除去することができる。しかし、ジッタを問題としない場合は、
図4のように構成しても良い、
図4は、NCO23の出力先として調整部37と選択部38とを備える。
【0063】
調整部37は、NCOの出力のうちMSB(Most Significant Bit)等を抽出し、NCO23の出力を2値化する。選択部38には、調整 部37から入力された信号と、ハードリミッタ31から入力された信号と、が入力される。選択部38は、入力された信号のうち何れか一方を分周部24へ出力 する。選択部27が出力する信号は、初期設定又はユーザの操作等により決定される。
【0064】
選択部38によって選択部27が出力 する信号が選択された場合、この信号はBPF29を経由しないため、周波数制御範囲を広くすることができる。従って、リファレンス信号に同期するまでの早 さをより向上させることができる。一方で、調整部37はNCO23が出力するデジタル信号を2値化しているため、量子化誤差が大きくなってしまい、分解能 が低下してしまう。
【0065】
次に、基準信号発生装置10の変形例について説明する。なお、以下に説明する変形例においては、上記実施形態と同一又は類似するものには同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
本変形例の基準信号発生装置10は、落雷や妨害電波等によってリファレンス信号を取得できなくなった場合であっても、所定の精度を維持しながら基準信号を 送信する機能を有している。基準信号発生装置10は、この機能を実現するための構成として、自走制御部33と、自走選択部34と、を備えている。
【0067】
本変形例では、選択部27には、自走選択部34、正弦波変換ROM25、及び三角波変換回路26が出力した信号が入力されている。変形例の基準信号発生装 置10は、ΔΣ変調部28の後段にVCXO等を配置することもできるし、NCO23等を発振器として利用することもできる。VCXO等が配置される場合、 選択部27は、自走選択部34が出力した信号をΔΣ変調部28へ出力する。一方、NCO23等を発振器として利用する場合、選択部27は、正弦波変換 ROM25又は三角波変換回路26が出力した信号をΔΣ変調部28へ出力する。
【0068】
自走制御部33には、制御部22が出力す る周波数制御量が入力される。自走制御部33は、同期状態である場合は、図略の温度センサが検出した温度と、上記のVCXOが出力した信号の周波数と、の 対応関係を記憶する。なお、この対応関係は、製品の出荷前に求めても良いし、製品の出荷前に求めた値を修正して使用しても良い。また、自走制御部33は、 温度センサが検出した現在の温度と、上記で求めた温度特性と、を考慮して、周波数制御量を補正する。
【0069】
自走選択部34に は、制御部22が出力した周波数制御量と、自走制御部33が補正した周波数制御量と、が入力される。自走選択部34は、適切なリファレンス信号が利用でき るときは、制御部22の周波数制御量を出力し、適切なリファレンス信号が利用できないときは、自走制御部33の周波数制御量を出力する。
【0070】
自走制御部33が出力する周波数制御量は、環境の変化(具体的には温度の変化)を考慮して定められているので、自走状態において環境が変化した場合であっ ても、高精度な基準信号を出力し続けることができる。また、ΔΣ変調部28の後段に配置される発振器として周波数安定度の高いOCXOを用いることで、長 い時間高い周波数安定度を維持することができる。
【0071】
なお、ΔΣ変調部28の後段にVCXO等が配置されない構成は、上記実施形態の構成と同様なので、説明を省略する。この構成は、VCXO等を配置しないことにより、VCXO等を配置する構成と比較して、コストを削減することができる。
【0072】
次に、基準信号発生装置10で消費電力を低減させる制御を行う変形例について説明する。なお、本明細書において、「消費電力を低減」とは、消費電力を通常時よりも小さくすることであり、消費電力をゼロにする場合も含む概念である。
【0073】
初めに
図6を参照して、電力を供給するか否かを切り替える制御を行うことで、消費電力を低減する構成の基準信号発生装置10について説明する。本変形例の基準信号発生装置10は、電源71と、電源制御部72と、を備えている。
【0074】
電源71と電源制御部72とはケーブル等によって電気的に接続されている。また、電源制御部72は、電力を供給するためのケーブル等を用いて、GPS受信 部21及び信号発生部53等に接続されている。電源制御部72は、外部信号や内部の処理装置等から指示を受けて、GPS受信部21に電力を供給するか否 か、及び、信号発生部53に電力を供給するか否かを切替可能である。
【0075】
なお、信号発生部53は、入力されたリファレンス信号に基づいて基準信号を発生させる部分であり、上述のPLL回路51及びDDS52等を含む部分である。
【0076】
ところで、本願のようにデジタル部品が多い基準信号発生装置10は、大部分を半導体チップ上に実現できるので、コンパクトかつ安価に構成することができ る。従って、GPS受信部21が出力する測位結果のみが必要であっても、チップ化した基準信号発生装置10が用いられる場合がある。この場合、信号発生部 53へ電力を供給しないように(又は供給する電力を減らすように)電源制御部72に指示することで、基準信号発生装置10の消費電力を低減することができ る。
【0077】
次に、
図7を参照して、供給するクロックを低減することで基準信号発生装置10の消費電力を低減する構成について説明する。
図7に示すように、本変形例の基準信号発生装置10は、クロック生成部73を備えている。
【0078】
クロック生成部73は、主に信号発生部53内の機器で使用されるクロックを生成する機器である。また、クロック生成部73は、外部信号や内部の処理装置等から指示を受けて、信号発生部53内の機器へ供給するクロックの周波数を変化させることができる。
【0079】
従って、例えばGPS受信部21が出力する測位結果のみが必要な場合、クロック生成部73が生成するクロックの周波数を低減する(又はゼロにする)ことで、信号発生部53内の機器の消費電力を低減することができる。
【0080】
なお、
図6及び
図7で示した変形例では、信号発生部53内の全ての機器に対して、電力の供給及びクロックの周波数を変化させる構成だが、特定の機器(例えばNCO23)についてのみ、電力の供給又はクロックの周波数を変化させる構成であっても良い。
【0081】
また、クロック生成部73と、NCO23等の間にクロックゲーティング回路を設け、クロックゲーティング回路に外部信号が入力されたときのみNCO23等に供給するクロックを低減する(又はゼロにする)構成にすることもできる。
【0082】
以上に説明したように、本発明のDDS52は、NCO23と、ΔΣ変調部28と、BPF29と、を備える。NCO23は、デジタル信号を出力する。ΔΣ変 調部28は、NCO23が出力する信号に基づく正弦波信号又は三角波信号を変調する。BPF29は、ΔΣ変調部28が出力した信号をアナログ信号として出 力する。
【0083】
これにより、ΔΣ変調部28を備えることで、従来はアナログ部品で構成されていたD/Aコンバータの大部分をデ ジタル回路で実現できる。従って、DDS52の大部分をチップ化してコンパクトな構成を実現することができる。また、ΔΣ変調部28を備えることで、 D/A変換後の信号の分解能を向上させることができる。
【0084】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0085】
上記実施形態及び変形例では、正弦波変換ROM25及び三角波変換回路26の両方を備える構成を開示しているが、正弦波変換ROM25のみ又は三角波変換 回路26のみを備える構成であっても、DDS52の大部分をデジタル化できるという本発明の効果を実現することができる。
【0086】
上記実施形態及び変形例は、GPS衛星からの信号に基づいてリファレンス信号を生成する構成であるが、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用する構成であれば、適宜変更することができる。例えば、GLONASS衛星やGALILEO衛星からの信号に基 づいてリファレンス信号を生成する構成に変更することができる。また、外部装置からのリファレンス信号を取得する構成としても良い。
【0087】
GPS受信部21は、1PPSに代えて、PP2S等の1Hz以外の信号をリファレンス信号として生成する構成に変更することができる。また、GPS受信部21は、基準信号発生装置10の内部ではなく外部に配置されていても良い。
【0088】
三角波変換回路は、排他的論理和を用いる上記の構成に限られず、任意の構成の回路によって実現されていても良い。また、三角波変換回路を複数備え、上記で 示した三角波の一部(4分割したときの中央の2つ)を反転させて、1周期分の三角波から2周期分の三角波が得られる構成とすることができる。なお、三角波 変換回路を設けずに、NCO23が出力するノコギリ波がBPF29によって正弦波信号に変換される構成に変更することができる。
【0089】
上記実施形態及び変形例では、位相差を比較するPLL回路51を用いているが、周波数差を比較するFLL回路を用いることもできる。
【0090】
上記実施形態及び変形例では、GPSアンテナ11は、所定のケーブルを介して、PLL回路51等が形成された基板と接続される構成である。これに代えて、 この基板にGPSアンテナ11が直接的に取り付けられる構成であっても良い。この場合、ケーブルが不要となるので、基準信号発生装置の設置コストを低減で きる。
【0091】
上記の変形例は、供給する電力の低減又は供給するクロックの低減により、消費電力を低減させる構成であるが、その他の構成(信号発生部53を制御するソフトウェアを動作させない等)によって消費電力を低減させる構成に変更することができる。
【0092】
基準信号発生装置10が備える各部は、ハードウェアとして構成することに代えて、ソフトウェアにより構成することもできる。