特許第6538967号(P6538967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6538967自動車用の超ロバスト2軸回転速度センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538967
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】自動車用の超ロバスト2軸回転速度センサ
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/5747 20120101AFI20190625BHJP
【FI】
   G01C19/5747
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-511247(P2018-511247)
(86)(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公表番号】特表2018-527571(P2018-527571A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2016064826
(87)【国際公開番号】WO2017036627
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年2月28日
(31)【優先権主張番号】102015216460.8
(32)【優先日】2015年8月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ラスル
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト クールマン
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ハッタス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヘプナー
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン シュミット
(72)【発明者】
【氏名】トアステン バルスリンク
【審査官】 八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−519267(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/125099(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/5733−19/5747
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転速度センサ(1)であって、
主延在平面(100)を有する基板(3)と、
前記主延在平面(100)に対して平行な第1の軸(X)に対して平行である軸まわりの前記回転速度センサ(1)の第1の回転速度を検出するための少なくとも1つの第1の回転速度センサ構造体(2)と、
前記主延在平面(100)に対して垂直な第2の軸(Z)に対して平行である軸まわりの前記回転速度センサ(1)の第2の回転速度を検出するための少なくとも1つの第2の回転速度センサ構造体(4)と、
を備えている回転速度センサ(1)において、
前記回転速度センサ(1)は、
前記第1の回転速度センサ構造体(2)の、前記基板(3)に対して可動である少なくとも1つの第1の構造体(5)と、当該第1の回転速度センサ構造体(2)の、前記基板(3)及び当該第1の構造体(5)に対して可動である少なくとも1つの第2の構造体(9)とを、それぞれ変位させるための、かつ、
前記第2の回転速度センサ構造体(4)の、前記基板(3)に対して可動である少なくとも1つの第3の構造体(13)と、当該第2の回転速度センサ構造体(4)の、前記基板(3)及び当該第3の構造体(13)に対して可動である第4の構造体(15)とを、それぞれ変位させるための
駆動装置(17)を備えていることにより、前記第1の構造体(5)と前記第2の構造体(9)と前記第3の構造体(13)と前記第4の構造体(15)とが、機械的に連結された振動を行うように励振可能となっており、
前記第1の構造体(5)と前記第4の構造体(15)とが、前記第1の軸(X)に対して垂直かつ前記第2の軸(Z)に対して垂直な第3の軸(Y)に対して平行である運動成分をそれぞれ有する、互いに同相の直線振動と、前記第2の構造体(9)及び前記第3の構造体(13)に対して逆相の直線振動とを行うように励振可能であり、
前記回転速度センサ(1)は、前記第1の回転速度に起因して前記第1の構造体(5)にかかる第1の力作用と、前記第2の構造体(9)にかかる、当該第1の力作用に対して逆相の第2の力作用とを検出することができるように、かつ、前記第2の回転速度に起因して前記第3の構造体(13)にかかる第3の力作用と、前記第4の構造体(15)にかかる、当該第3の力作用に対して逆相の第4の力作用とを検出することができるように、構成されており、
前記第1の回転速度センサ構造体(2)は、前記基板(3)と前記第1及び第2の構造体(5,9)とに対して可動である少なくとも1つの第5の構造体(7)、並びに、前記基板(3)と前記第1,第2及び第5の構造体(5,9,7)とに対して可動である少なくとも1つの第6の構造体(11)を備えており、前記第5の構造体(7)と前記第6の構造体(11)とは、機械的に連結された振動を行うように励振可能であり、
前記第5の構造体(7)は、前記第3の軸(Y)に対して平行な運動成分を有する、前記第2及び第3の構造体(9,13)に対して同相である直線振動と、前記第1、第4及び第6の構造体(5,15,11)に対して逆相である直線振動とを行うように励振可能であり、
前記回転速度センサ(1)は、前記第1の回転速度に起因して前記第5の構造体(7)にかかる第5の力作用と、前記第6の構造体(11)にかかる、当該第5の力作用に対して逆相の第6の力作用とを検出することができるように、構成されている、
ことを特徴とする回転速度センサ(1)。
【請求項2】
前記第2の回転速度センサ構造体(4)は、前記基板(3)と前記第3及び第4の構造体(13,15)とに対して可動である少なくとも1つの第7の構造体(51)、並びに、前記基板(3)と前記第3、第4及び第7の構造体(13,15,51)とに対して可動である少なくとも1つの第8の構造体(53)を備えており、前記第7の構造体(51)と前記第8の構造体(53)とは、機械的に連結された振動を行うように励振可能であり、
前記第7の構造体(51)は、第3の軸(Y)に対して平行な運動成分を有する、前記第1、第4及び第6の構造体(5,15,11)に対して同相である直線振動と、前記第2、第3、第8及び第5の構造体(9,13,53,7)に対して逆相である直線振動とを行うように励振可能であり、
前記回転速度センサ(1)は、第2の回転速度に起因して前記第7の構造体(51)にかかる第7の力作用と、前記第8の構造体(53)にかかる、当該第7の力作用に対して逆相の第8の力作用とを検出することができるように、構成されている、
請求項に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項3】
前記駆動装置(17)は、少なくとも1つの第1の駆動ユニット(21)と、当該第1の駆動ユニット(21)に結合された少なくとも1つの第2の駆動ユニット(31)と、当該第1及び第2の駆動ユニット(21,31)から空間的に分離された少なくとも1つの第3の駆動ユニット(27)と、当該第3の駆動ユニット(27)に結合された少なくとも1つの第4の駆動ユニット(37)とを備えており、
前記第1の駆動ユニット(21)と、前記第2の駆動ユニット(31)と、前記第3の駆動ユニット(27)と、前記第4の駆動ユニット(37)とは、同一構成である、
請求項1又は2に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項4】
前記第3の構造体(13)は、前記第3の力作用を検出するための第1の部分構造体(213)を備えており、かつ、前記第4の構造体(15)は、前記第4の力作用を検出するための第2の部分構造体(215)を備えており、
前記第1の部分構造体(213)と前記第2の部分構造体(215)とは、同一構成である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項5】
前記第7の構造体(51)は、前記第7の力作用を検出するための第3の部分構造体(251)を備えており、かつ、前記第8の構造体(53)は、前記第8の力作用を検出するための第4の部分構造体(253)を備えており、
前記第3の部分構造体(251)と前記第4の部分構造体(253)とは、同一構成である、
請求項に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項6】
前記回転速度センサ(1)は、
前記第1、第2、第3及び第4の構造体(5,9,13,15)と前記駆動装置(17)とを結合するため、及び/又は、前記第3の構造体(13)と前記第5の構造体(7)とを結合するため、及び/又は、前記第4の構造体(15)と前記第6の構造体(11)とを結合するための、少なくとも1つの第1の結合手段(101)、又は、
前記第3、第4、第7及び第8の構造体(13,15,51,53)と前記駆動装置(17)とを結合し、かつ、前記第1の構造体(5)と前記第7の構造体(51)とを結合し、かつ、前記第2の構造体(9)と前記第8の構造体(53)とを結合するため、及び/又は、前記第3の構造体(13)と前記第5の構造体(7)とを結合するため、及び/又は、前記第4の構造体(15)と前記第6の構造体(11)とを結合するための、少なくとも1つの第1の結合手段(101)
を備えており、
前記第1の結合手段(101)は、前記第1の軸(X)に対して平行な方向と、前記第2の軸(Z)に対して平行な方向とに弾性変形可能であり、前記第3の軸(Y)に対して平行な方向には形状安定的である、
請求項2又は5に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項7】
前記第3の構造体(13)は、前記第3の力作用を検出するための第1の部分構造体(213)を備えており、かつ、前記第4の構造体(15)は、前記第4の力作用を検出するための第2の部分構造体(215)を備えており、
前記第1の部分構造体(213)と前記第2の部分構造体(215)とは、同一構成であり、
前記第7の構造体(51)は、前記第7の力作用を検出するための第3の部分構造体(251)を備えており、かつ、前記第8の構造体(53)は、前記第8の力作用を検出するための第4の部分構造体(253)を備えており、
前記第3の部分構造体(251)と前記第4の部分構造体(253)とは、同一構成であり、
前記回転速度センサ(1)は、前記第1の部分構造体(213)と前記第2の部分構造体(215)とを結合するため、及び/又は、前記第3の部分構造体(251)と前記第4の部分構造体(253)とを結合するための、少なくとも1つの第2の結合手段(102)を備えており、
前記第2の結合手段(102)は、前記第1の部分構造体(213)と前記第2の部分構造体(215)とが互いに逆相にのみ変位することができ、及び/又は、前記第3の部分構造体(251)と前記第4の部分構造体(253)とが互いに逆相にのみ変位することができるように、構成されている、
請求項に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項8】
前記回転速度センサ(1)は、前記第1の構造体(5)と前記第2の構造体(9)と前記第5の構造体(7)と前記第6の構造体(11)とを結合するための少なくとも1つの第3の結合手段(103)を備えており、
前記第3の結合手段(103)は、前記第3の軸(Y)に対して平行な軸まわりに第1の結合手段構造体(1103)と第2の結合手段構造体(2103)とが逆方向に旋回することができるように、当該第1の結合手段構造体(1103)と当該第2の結合手段構造体(2103)とを備えている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の回転速度センサ(1)。
【請求項9】
前記回転速度センサ(1)は、前記第1の構造体(5)と前記第5の構造体(7)とを結合し、かつ、前記第2の構造体(9)と前記第6の構造体(11)とを結合するための、少なくとも1つの第4の結合手段(104)を備えており、
前記第4の結合手段(104)は、前記第1の軸(X)に対して平行な軸まわりに旋回することができるように構成されており、
前記第4の結合手段(104)の質量中心は、機械的に連結された振動時には、前記基板(3)に対して固定されている、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の回転速度センサ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自動車環境におけるセーフティ関連の用途においては、それぞれ1つの決まった軸まわりの回転速度を測定することができる1軸回転速度センサが使用される。複数の異なる用途の組合せの場合(例えば、横滑り防止プログラム(ESP)又はロールオーバセンシング)、複数の軸まわりの回転速度を同時に測定する必要があり、このことは、実際には、複数の個々のセンサを使用することによって実現される。
【0002】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の回転速度センサに関する。
【背景技術】
【0003】
かかる回転速度センサは、例えば、米国特許出願公開第2012/0210788号明細書(US2012/0210788A1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0210788号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011006394号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102010061755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の開示
従来技術に対する本発明の回転速度センサの利点は、従来技術に対して比較的小さい基板面積上に、直線加速度及び回転加速度に対してロバストである回転速度センサを実現することができることである。なおかつ、回転速度を検出するためのマイクロメカニカル構造体に必要とされる基板面積は、従来技術に対して比較的僅かのみとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このことを達成するためには、従来技術とは対照的に、第1の構造体と第4の構造体とが、第1の軸に対して垂直かつ第2の軸に対して垂直な第3の軸に対して実質的に平行である運動成分をそれぞれ有する、互いに同相の実質的な直線振動と、第2の構造体及び第3の構造体に対して逆相の実質的な直線振動とを行うように励振可能であり、回転速度センサは、第1の回転速度に起因して第1の構造体にかかる第1の力作用と、第2の構造体にかかる、当該第1の力作用に対して実質的に逆相の第2の力作用とを検出することができるように、かつ、第2の回転速度に起因して第3の構造体にかかる第3の力作用と、第4の構造体にかかる、当該第3の力作用に対して実質的に逆相の第4の力作用とを検出することができるように、構成されている。
【0007】
かかる構成によって特に、直線加速度及び回転加速度に対してロバストである2軸回転速度センサを簡単、低コスト、かつ、機械的に頑強に実現することができる。このことは、特に、2つの回転速度センサコアを組み合わせて共同で駆動することにより達成される。例えば、本発明によって、Z回転速度に対応するセンサコアとX回転速度に対応するセンサコアとを組み合わせて、1つの駆動回路のみを備えた1つの新たなセンサコアを構成することができ、この1つの新たなセンサコアが2軸まわりの回転速度を測定することができる。それと同時に、センサは外部の直線加速度及び回転加速度に対してもロバストとなり、これにより、自動車環境におけるセーフティ関連用途に課される要求を満たすことができる。共同で駆動される2つのセンサコアを上述のように組み合わせることにより、センサコア及びASIC(application specific integrated circuit)双方の構成要素を削減することができる。よって、最終製品はよりコンパクトとなり、その製造コストは、2つの個別センサを用いる場合より廉価になる。共同で駆動することにより、駆動構造体及び電気的接続端パッドの双方を削減することができる。さらに、共同で駆動することにより、ASICの構成もよりコンパクトにすることができる。というのも、設ける必要がある駆動制御回路は1つだけとなるからである。共同で駆動することの利点は、特に、両コアの2つの異なる駆動周波数を回避することができることである。このようにして、例えば、駆動力の寄生クロストークによる相互間の影響が回避される。個別のコアの場合には、それぞれ、駆動方向と検出方向とに運動できなければならないコリオリ質量体が、適切な結合構造体を介して、駆動方向にのみ振動しなければならない駆動構造体に結合される。本発明においては、複数の異なるチャネルのコリオリ質量体が直接結合される。このことによって、例えば、内側のコリオリ質量体が外側のコリオリ質量体によって駆動される回転速度センサを実現することができる。その際には、駆動構造体は、例えば、外側のコリオリ質量体にのみ作用する。
【0008】
従属請求項と、図面を参照した以下の記載内容とから、本発明の有利な実施形態や発展形態を導き出すことができる。
【0009】
本発明の有利な一実施形態においては、第1の回転速度センサ構造体は、少なくとも、基板と第1及び第2の構造体とに対して可動である1つの第5の構造体、並びに、基板と第1、第2及び第5の構造体とに対して可動である少なくとも1つの第6の構造体を備えており、第5の構造体と第6の構造体とが、機械的に連結された振動を行うように励振可能であり、第5の構造体は、第3の軸に対して実質的に平行な運動成分を有する、第2及び第3の構造体に対して同相である実質的な直線振動と、第1、第4及び第6の構造体に対して逆相である実質的な直線振動とを行うように励振可能であり、回転速度センサは、第1の回転速度に起因して第5の構造体にかかる第5の力作用と、第6の構造体にかかる、当該第5の力作用に対して実質的に逆相の第6の力作用とを検出することができるように、構成されている。かかる構成によって、コンパクト、簡単、かつ、特に、直線加速度及び回転加速度に対してロバストである態様で、第1の回転速度を検出することができるという利点が奏される。このことによって、特に、従来技術に対して比較的小さい所要スペースで、互いに垂直な2つの回転まわりの2つの回転速度を検出する回転速度センサを実現することができる。さらに本実施形態によって、4つの質量体を有する耐直線加速度性かつ耐回転加速度性のX回転速度センサと、2つの質量体を有する耐直線加速度性かつ耐回転加速度性のZ回転速度センサとの組合せが可能になる。
【0010】
本発明の有利な一実施形態においては、第2の回転速度センサ構造体は、少なくとも、基板と第3及び第4の構造体とに対して可動である1つの第7の構造体、並びに、基板と第3、第4及び第7の構造体とに対して可動である少なくとも1つの第8の構造体を備えており、第7の構造体と第8の構造体とが、機械的に連結された振動を行うように励振可能であり、第7の構造体は、第3の軸に対して実質的に平行な運動成分を有する、第1及び第4及び/又は第6の構造体に対して同相である実質的な直線振動と、第2、第3及び第8及び/又は第5の構造体に対して逆相である実質的な直線振動とを行うように励振可能であり、回転速度センサは、第2の回転速度に起因して第7の構造体にかかる第7の力作用と、第8の構造体にかかる、当該第7の力作用に対して実質的に逆相の第8の力作用とを検出することができるように、構成されている。かかる構成によって、コンパクト、簡単、かつ、特に、直線加速度及び回転加速度に対してロバストである態様で、第2の回転速度を検出することができるという利点が奏される。このことによって、特に、上方向乃至下方向に運動する質量体とを同一にすることができる。特に、このことによって、同相で振動する構造体の質量の総和を、逆相で振動する構造体の質量の総和と実質的に一致させることができる。このようにして、かかる対称性により、駆動運動状態の部分振動体の振幅が全て等しくなり、また、プロセスのばらつきによって相違することもなくなることが保証される。特に、対称的な配置体は外部加速度に対してよりロバストになる。というのも、かかる配置体においては、励振可能なモードもこれに対応して対称的となり、差動処理によって信号を出力しなくなるからである。
【0011】
有利な一実施形態においては、駆動装置は少なくとも1つの第1の駆動ユニットと、当該第1の駆動ユニットに結合された少なくとも1つの第2の駆動ユニットと、当該第1及び第2の駆動ユニットから空間的に分離された少なくとも1つの第3の駆動ユニットと、第3の駆動ユニットに結合された少なくとも1つの第4の駆動ユニットとを備えており、第1の駆動ユニットと、第2の駆動ユニットと、第3の駆動ユニットと、第4の駆動ユニットとは、実質的に同一構成となっている。このことによって、機械的に連結された振動と、特に、各構造体の互いに同相乃至逆相の実質的な直線振動とを、特に1つの駆動周波数で、駆動装置における機械的連結によって支援することができる、という利点が奏される。
【0012】
有利な一実施形態においては、第3の構造体は、第3の力作用を検出するための第1の部分構造体を備えており、かつ、第4の構造体は、第4の力作用を検出するための第2の部分構造体を備えており、第1の部分構造体と第2の部分構造体とは実質的に同一構成である。よって、有利には、駆動運動が、第2の回転速度を検出するための検出運動から機械的に分離される。このことにより、第2の回転速度に起因する検出信号の、特に簡単な処理が可能になる。
【0013】
有利な一実施形態においては、第7の構造体は、第7の力作用を検出するための第3の部分構造体を備えており、かつ、第8の構造体は、第8の力作用を検出するための第4の部分構造体を備えており、第3の部分構造体と第4の部分構造体とは実質的に同一構成である。よって、有利には、駆動運動が、第2の回転速度を検出するための検出運動から機械的に分離され、直線加速度及び回転加速度に対してロバストである回転速度センサが実現される。このことにより、直線加速度及び回転加速度に対してロバストである回転速度センサと共に、第2の回転速度に起因する検出信号の特に簡単な処理を実現することができる。第7及び第8の構造体を有しない非対称の場合と同等の検出容量を実現するために、Z検出櫛形体を半分に短くする場合、コリオリフレーム及び検出フレームを2倍に保有する。
【0014】
有利な一実施形態においては、回転速度センサは、
・第1、第2、第3及び第4の構造体と駆動装置とを結合するため、及び/又は、第3の構造体と第5の構造体とを結合するため、及び/又は、第4の構造体と第6の構造体とを結合するための、少なくとも1つの第1の結合手段、又は、
・第3、第4、第7及び第8の構造体と駆動装置とを結合し、かつ、第1の構造体と第7の構造体とを結合し、かつ、第2の構造体と第8の構造体とを結合するため、及び/又は、第3の構造体と第5の構造体とを結合するため、及び/又は、第4の構造体と第6の構造体とを結合するための、少なくとも1つの第1の結合手段
を備えており、第1の結合手段は、第1の軸に対して実質的に平行な方向と、第2の軸に対して実質的に平行な方向とに弾性変形可能であり、第3の軸に対して実質的に平行な方向には実質的に形状安定的である。例えば、互いに直接結合されたコリオリ質量体が相互に妨害しないようにするため、駆動方向の力、即ち、Y軸に対して平行に作用する力が、1つのコリオリ質量体から他の1つのコリオリ質量体へ良好に伝達され、なおかつ、結合されたコリオリ質量体の検出方向の力、即ち、X軸及びZ軸に対して平行に作用する力が、1つのコリオリ質量体から他の1つのコリオリ質量体へ伝達されるのが可能な限り小さくなるようにすべく、第1の結合手段は、Xチャネル及びZチャネルのコリオリ質量体間に設けられている。このことによって、共同駆動による2つのセンサコアの組合せを備えた1つの回転速度センサを、簡単、機械的に頑強かつ低コストで実現することができる。特に、本実施形態によって、外側の構造体、即ち、第1の結合手段を介して駆動装置と直接相互作用する構造体から、内側の構造体、即ち、第1の結合手段を介して駆動装置と直接相互作用しない構造体へ、駆動運動を伝達することが可能になり、これにより、外側の構造体と内側の構造体とが、機械的に連結された振動を行うように励振されることが可能になる。
【0015】
有利な一実施形態においては、回転速度センサは、第1の部分構造体と第2の部分構造体とを結合するため、及び/又は、第3の部分構造体と第4の部分構造体とを結合するための、少なくとも1つの第2の結合手段を備えており、第2の結合手段は、第1の部分構造体と第2の部分構造体とが互いに実質的に逆相にのみ変位することができ、及び/又は、第3の部分構造体と第4の部分構造体とが互いに実質的に逆相にのみ変位することができるように、構成されている。このことによって、有利には、直線加速度及び回転加速度に対するロバスト性の向上を示す、第2の回転速度を検出する回転速度センサが実現される。
【0016】
有利な一実施形態においては、回転速度センサは、第1の構造体と第2の構造体と第5の構造体と第6の構造体とを結合するための少なくとも1つの第3の結合手段を備えており、第3の結合手段は、第3の軸に対して実質的に平行な軸まわりに第1の結合手段構造体と第2の結合手段構造体とが実質的に逆方向に旋回することができるように、当該第1の結合手段構造体と当該第2の結合手段構造体とを備えている。このことによって、有利には、直線加速度及び回転加速度に対するロバスト性の向上を示す、第1の回転速度を検出する回転速度センサが実現される。特に、本実施形態によって、第1の構造体と第2の構造体と第5の構造体と第6の構造体とが、機械的に連結された振動を行うように励振可能となり、それと同時に、第1の力作用と第2の力作用と第5の力作用と第6の力作用とに沿って変位可能となるように、第1の構造体と第2の構造体と第5の構造体と第6の構造体とを結合することができる。
【0017】
有利な一実施形態においては、回転速度センサは、第1の構造体と第5の構造体とを結合し、かつ、第2の構造体と第6の構造体とを結合するための、少なくとも1つの第4の結合手段を備えており、第4の結合手段は、第1の軸に対して実質的に平行な軸まわりに旋回することができるように構成されており、第4の結合手段の質量中心は、上記の機械的に連結された振動時には、基板に対して実質的に固定されている。かかる実施形態によって、有利には、第4の結合手段は、駆動運動においては静止し、検出運動においては、主延在平面に対して平行な平面から傾動運動を行うことができる。このことによって、第4の結合手段を機械的結合構造体として使用することができるだけでなく、同時に、コリオリ検出又は連動のための電極として使用することもできる。このことによって、コンパクトなセンサ構成を実現することができるという利点が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施例の回転速度センサの概略図である。
図2図1の回転速度センサの概略図である。
図3】本発明の第2の実施例の回転速度センサの概略図である。
図4図3の回転速度センサの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態
異なる図において同一の構成要素には、常に同一の符号を付している。従って、同一の構成要素については、通常、1回のみ言及乃至説明する。
【0020】
図1は、本発明の第1の実施例の回転速度センサ1の概略図であり、回転速度センサ1は、主延在平面100を有する基板3と、第1の軸Xに対して実質的に平行な軸まわりの当該回転速度センサ1の第1の回転速度を検出するための第1の回転速度センサ構造体2と、第2の軸Zに対して実質的に平行な軸まわりの当該回転速度センサ1の第2の回転速度を検出するための第2の回転速度センサ構造体4とを備えている。回転速度センサ1は、さらに、第1の構造体5と第2の構造体9と第3の構造体13と第4の構造体15と第5の構造体7と第6の構造体11とが機械的に連結された振動を行うように励振することができるように、
・第1の回転速度センサ構造体2の、基板3に対して可動である第1の構造体5と、基板3及び第1の構造体5に対して可動である第2の構造体9と、基板3並びに第1及び第2の構造体5,9に対して可動である第5の構造体7と、基板3並びに第1、第2及び第5の構造体5,9,7に対して可動である第6の構造体11とを、それぞれ変位させるため、かつ、
・第2の回転速度センサ構造体4の、基板3に対して可動である第3の構造体13と、基板3及び第3の構造体13に対して可動である第4の構造体15とを、それぞれ変位させるための
駆動装置17を備えている。
【0021】
例えば、第1の構造体5と第4の構造体15と第6の構造体11とは、第3の軸Yに対して実質的に平行な運動成分をそれぞれ有する、互いに同相の実質的な直線振動と、第2、第3及び第5の構造体9,13,7に対して逆相の実質的な直線振動とを行うように励振可能となっている。さらに、回転速度センサ1は、例えば、第1の回転速度に起因して第1の構造体5にかかる第1の力作用と、第2の構造体9にかかる、第1の力作用とは実質的に逆相の第2の力作用と、第5の構造体7にかかる第5の力作用と、第6の構造体11にかかる、第5の力作用とは逆相の第6の力作用とを検出することもできるように、構成されている。さらに、回転速度センサ1は、例えば、第2の回転速度に起因して第3の構造体13にかかる第3の力作用と、第4の構造体15にかかる、第3の力作用とは実質的に逆相の第4の力作用とを検出することができるようにも構成されている。
【0022】
図2は、図1の回転速度センサ1の概略図であり、図2においては、回転速度センサ1の概略的な運動形態が示されている。質量体乃至構造体5,7,9,11,13及び15の隣の矢印は、駆動運動例を示している。また、破線の矢印は測定対象の外側回転速度を示している。これは、図2においては、例えば、構造体5,7,9,11にかかる第1の回転速度、並びに、構造体13及び15にかかる第2の回転速度である。さらに、質量体上の実線の矢印は合成力作用を示しており、これは、例えば、印加された第1及び第2の回転速度に起因して各力作用に沿って質量体の変位を生じさせるものである。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施例の回転速度センサ1の概略図であり、本実施例においては、第2の回転速度センサ構造体4は、基板3と第3及び第4の構造体13,15とに対して可動である第7の構造体51、並びに、基板3と第3,第4及び第7の構造体13,15,51とに対して可動である第8の構造体53を備えており、第7の構造体51と第8の構造体53とは、機械的に連結された振動を行うように励振可能である。ここでは、第7の構造体51は、例えば、第3の軸Yに対して実質的に平行な運動成分を有する、第1、第4及び第6の構造体5,15,11に対して同相の実質的な直線振動と、第2、第3、第8及び第5の構造体9,13,53,7に対して逆相の実質的な直線振動とを行うように励振可能となっている。さらに、回転速度センサ1は、例えば、第2の回転速度に起因して第7の構造体51にかかる第7の力作用と、第8の構造体53にかかる、第7の力作用とは逆相の第8の力作用とを検出することができるようにも構成されている。図3に示されている回転速度センサは、例えば、さらに、2つの側方シーソー要素を備えており、これは、第3の構造体13を第7の構造体51に結合し、かつ、第4の構造体15を第8の構造体53に結合している。これによって、有利には、同一のZ検出周波数が得られる。
【0024】
図4は、図3の回転速度センサ1の概略図であり、図4においては、回転速度センサ1の概略的な運動形態が示されている。図2と同様に、質量体の隣の矢印は駆動運動例を示しており、破線の矢印は測定対象の外側回転速度を示しており、質量体上の実線の矢印は、合成力作用を示している。
【0025】
図1及び図3に示された実施例においては、駆動装置17は第1の駆動ユニット21と、当該第1の駆動ユニット21に結合された第2の駆動ユニット31と、当該第1及び第2の駆動ユニット21,31から空間的に分離された第3の駆動ユニット27と、第3の駆動ユニット27に結合された第4の駆動ユニット37とを備えている。図1及び図3に示された実施例においては、第1の駆動ユニット21と第2の駆動ユニット31と第3の駆動ユニット27と第4の駆動ユニット37とは、実質的に同一構成となっている。例えば、第1の駆動ユニット21と第2の駆動ユニット31、第3の駆動ユニット27と第4の駆動ユニット37とはそれぞれ、独国特許出願公開第102011006394号明細書(DE102011006394A1)に記載の駆動シーソー要素K4を用いて結合されている。
【0026】
図1及び図3に例として示された実施例においては、さらに、第3の構造体13は、第3の力作用を検出するための第1の部分構造体213を備えており、かつ、第4の構造体15は、第4の力作用を検出するための第2の部分構造体215を備えており、第1の部分構造体213と第2の部分構造体215とは実質的に同一構成である。図3に例として示された実施例においては、第7の構造体51は、第7の力作用を検出するための第3の部分構造体251を備えており、かつ、第8の構造体53は、第8の力作用を検出するための第4の部分構造体253を備えており、第3の部分構造体251と第4の部分構造体253とは実質的に同一構成である。
【0027】
図1及び図3に示された回転速度センサ1はさらに、第1の結合手段101と、第2の結合手段102と、第3の結合手段103と、第4の結合手段104とを備えている。例えば、第1の結合手段101は、X方向とZ方向とにおいて柔軟であり、かつ、駆動方向Yにおいては硬質である結合ばねK1を備えており、第2の結合手段102は、独国特許出願公開第102011006394号明細書に記載のZ検出の結合構造体K2を備えており、第3の結合手段103は、独国特許出願公開第102010061755号明細書(DE102010061755A1)に記載のXチャネルの結合構造体K3を備えており、第4の結合手段104は、独国特許出願公開第102010061755号明細書に記載のXチャネルの結合シーソー要素K4を備えている。
【0028】
結合手段101は、
図1に示されているように、第1、第2、第3及び第4の構造体5,9,13,15と駆動装置17とを結合し、かつ、第3の構造体13と第5の構造体7とを結合し、かつ、第4の構造体4と第6の構造体11とを結合するように、又は、
図3に示されているように、第3、第4、第7及び第8の構造体13,15,51,53と駆動装置17とを結合し、かつ、第1の構造体5と第7の構造体51とを結合し、かつ、第2の構造体9と第8の構造体53とを結合し、かつ、第3の構造体13と第5の構造体7とを結合し、かつ、第4の構造体15と第6の構造体11とを結合するように
設けられている。ここで、第1の結合手段101は、第1の軸Xに対して実質的に平行な方向と、第2の軸Zに対して実質的に平行な方向とに弾性変形可能乃至柔軟であり、第3の軸Yに対して実質的に平行な方向には実質的に形状安定的乃至硬質である。
【0029】
さらに、第2の結合手段102は、第1の部分構造体213と第2の部分構造体215とを結合するように(図1)、及び/又は、第3の部分構造体251と第4の部分構造体253とを結合するように(図3)設けられている。かかる構成において、第2の結合手段102は、第1の部分構造体213と第2の部分構造体215とが互いに実質的に逆相にのみ変位可能であるように、及び/又は、第3の部分構造体251と第4の部分構造体253とが互いに実質的に逆相にのみ変位可能であるように、構成されている。
【0030】
さらに、第3の結合手段103は、第1の構造体5と第2の構造体9と第5の構造体7と第6の構造体11とを結合するように設けられている。その際には、第3の結合手段103は、第1の結合手段構造体1103と第2の結合手段構造体2103とが、第3の軸Yに対して実質的に平行な軸まわりに、実質的に逆方向に旋回することができるように、当該第1の結合手段構造体1103と当該第2の結合手段構造体2103とを備えている。
【0031】
最後に、第4の結合手段104は、第1の構造体5と第5の構造体7とを結合し、かつ、第2の構造体9と第6の構造体11とを結合するように設けられている。ここで、第4の結合手段104は、第1の軸Xに対して実質的に平行な軸まわりに旋回可能に構成されている。さらに、第4の結合手段104の質量中心は、機械的に連結された振動の場合、基板3に対して実質的に固定されている。
図1
図2
図3
図4