【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
発明の利点
本発明の実施形態は、好ましい方法により、わずかな構造空間しか必要とせずかつ低コストで、測定の正確な線形変位センサを提供することができる。
【0007】
本発明は、車両環境(自動車、貨物車、オートバイ、商用車)に使用可能な線形変位センサに関する。例えば、線形変位センサは、二輪車のスプリング撓み深さを測定するために、又は、自動変速機のギア位置を検出するために使用することができる。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、励磁コイルに交流電圧が印加されたときにセンサコイル内において交流電圧が誘導されるように配置されたセンサコイルと励磁コイルとを有するベース要素を備えている。例えば、これらのセンサコイルと励磁コイルとがベース要素によって提供されるプリント回路基板内において平面コイルとして実施されてもよい。
【0009】
さらに、線形変位センサは、測定経路に沿った方向においてベース要素と相対的に摺動可能である少なくとも部分的に導電性の摺動要素を備えている。この摺動要素は、例えば金属から製造されていても、及び/又は、実質的に直方体であってもよく、この場合、摺動要素は、その側縁部を介して、ベース要素によって提供されるレール上で測定経路に沿って誘導され得る。
【0010】
センサコイルは、2つの逆向きの部分巻線を有し、摺動要素は、センサコイルが配置される、測定経路に沿った可変の幾何学的構成を有しており、それにより、センサコイルの部分巻線と励磁コイルとの誘導結合と、それに伴ってセンサコイル内において誘導される交流電圧の振幅とが、ベース要素に対する摺動要素の相対位置に依存する。2つの逆向きの部分巻線、即ち、それぞれのコイルに電圧が印加されたときに電流が逆向き(例えば、左回り又は右回り)に流れる部分巻線により、励磁コイルは、2つの部分巻線が励磁コイルと同等のインダクタンスで結合する場合に、センサコイル内において交流電圧を誘導することができない。しかしながら、部分巻線の誘導結合は、摺動要素の可変の幾何学的構成(例えば、摺動要素内の傾斜した溝)に基づいて、摺動要素の相対位置に依存する。そのため、誘導された交流電圧の振幅も相対位置に依存し、この振幅からは、評価ユニットによって摺動要素の相対位置が算出され得る。
【0011】
評価ユニットによって測定することができるコイル(補正コイル及び/又はセンサコイル)の交流電圧の振幅は、当該コイルの信号として解釈することができる。従って、この信号は、評価ユニットによってデジタル化することができ及び/又は後続処理することができる。
【0012】
コイルの部分巻線は、(コイルの開口部への視線方向において)同一の面を周回するコイルの1つ以上の導体ループを含むことができる。コイルの導体ループの交点は、コイルの2つの部分巻線を相互に分離することができる。この交点は、2つの部分巻線の接合箇所として解釈することができる。
【0013】
さらに、線形変位センサは、補正コイルを含み、当該補正コイルは、測定経路に沿って一定の摺動要素の幾何学的構成上に配置されており、それにより、補正コイルの誘導結合と、それに伴って補正コイル内において誘導される交流電圧の振幅とが、ベース要素に対する摺動要素の横方向のオフセットに依存する。この場合には、横方向のオフセットとは、測定経路に対して実質的に直交する方向におけるベース要素に相対する摺動要素の摺動として理解されたい。そのために、横方向のオフセットは、構造許容誤差によって生じ得る。
【0014】
摺動要素の横方向のオフセットのもとでは、センサコイルと励磁コイルとの結合が変化し、測定が改ざんされる可能性がある。即ち、評価ユニットは、本来の相対位置に対するオフセットを有し得る相対位置を特定する。補正コイルは、このオフセットを補正又は補償するために用いられる。また、補正コイルにも、励磁コイル(例えば、別個の励磁コイル又はセンサコイルの励磁コイル)によって交流電圧が誘導されるが、しかしながら、この交流電圧は、一定の幾何学的構成(例えば、測定経路に対して平行な溝及び/又は摺動素子の縁部など)に基づいて測定経路に沿った相対位置ではなく横方向のオフセットに依存する。
【0015】
この目的のために、評価ユニットは、例えば、センサコイル内において誘導される交流電圧の振幅の他に、補正コイル内において誘導される交流電圧の振幅を測定し、そこから相対位置のための補正値を決定することができる。(場合によっては、係数によって増幅される)補正コイルからの交流電圧をセンサコイル内の交流電圧に加算してこれを補正することも可能である。この場合においては、評価ユニットによって測定された、センサコイル内の交流電圧の振幅は、既に補正されている。
【0016】
全体的に、この線形変位センサは、わずかな構造空間しか必要としない。なぜならば、コイルは、全てプリント回路基板内に集積化することができるからであり、及び/又は、摺動要素は、簡単な方法によって金属ブロックから製造することができるからである。また、摺動要素は、測定すべき部品のハウジングによっても提供することができる。取り付け許容誤差も、補償に基づいてより大きくすることができるため、構築技術及び接続技術に係るコストを安価に設定することが可能である。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、補正コイルは、少なくとも2つの逆向きの部分巻線を有する。補正コイルは、センサコイルとちょうど同様に、2つの逆向きの部分巻線を有し得る。これらの2つの逆向きの部分巻線は、当該2つの逆向きの部分巻線内において誘導された交流電圧を少なくとも部分的に相互に相殺する。これらの部分巻線及び/又はそれらの面の配置構成は、横方向のオフセットが存在しない場合には、総じて補正コイル内において交流電圧が誘導されないように設定されてもよい。
【0018】
摺動要素の一定の幾何学的構成が摺動要素の縁部であるならば、一方の部分巻線は、この場合においては、摺動要素の上方に配置され、他方の部分巻線は、摺動要素に隣接して配置されてもよい。これらの部分巻線間の接続箇所は、この場合においては、縁部に存在していてもよい。
【0019】
また、補正コイルの部分巻線は、摺動要素の一定の幾何学的構成にわたる測定経路に対して横方向に隣接して配置されてもよい。このようにして、摺動要素の横方向のオフセットは、部分巻線に関する一定の幾何学的構成の重畳に変化をもたらす。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、補正コイルは、4つの逆向きの部分巻線を有しており、当該4つの部分巻線のうち、2つの内側部分巻線は、可変の幾何学的構成上に配置され、2つの外側部分巻線は、それぞれ測定経路に沿って一定の幾何学的構成上に配置される。2つの内側部分巻線は、センサコイルと同様の幾何学的構成を有することができる。総じて補正コイルは、横方向のオフセットが存在しない場合には、少なくともセンサコイルの交流電圧に比例する交流電圧を供給することができる。横方向のオフセットが存在する場合には、2つの交流電圧の振幅は、相互に偏差する。従って、振幅の差分からは、評価ユニットによって、測定経路の相対位置に対するオフセット補正値を算出することができる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、2つ以上の補正コイルを含む。複数の補正コイルを用いることにより、一方では、横方向のオフセットの特定が改善され得る。任意選択的に、ベース要素に対する摺動要素の傾動及び/又はねじれを特定することができる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、例えば、それぞれ1つの巻線のみを有する2つの補正コイルを有する。この場合においては、評価ユニットは、それぞれ各補正コイル内において誘導された交流電圧を測定して、2つの振幅から(例えば減算によって)、横方向のオフセット又は相対位置に対するオフセット補正値を算出することができる。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、直列に接続された2つの補正コイルを有する。これらの2つの補正コイルは、横方向のオフセットが存在しない場合に当該2つの補正コイル内において誘導された交流電圧が相互に相殺されるように直列に接続されるならば、2つの補正コイルに印加される交流電圧の合計から相対位置に対するオフセット補正値を算出することが可能である。
【0024】
この場合においては、摺動要素の相対向する側縁部に配置されてもよい2つの補正コイルは、補正コイルの部分巻線の役割を果たし得る。しかしながら、2つの補正コイルは、相互に離間して配置させてもよい。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、1つ以上の補正コイルが、センサコイルと直列に接続される。このようにして、補正コイル及びセンサコイルのコイル面又は部分巻線の相応の選択のもとで、センサコイルのオフセットによるエラーを含んだ信号が、1つ以上の補正コイルの1つ以上の信号の加算及び/又は減算によって既に同様に補正することができる。補正コイル及び/又はセンサコイルの相互接続に応じて、横方向のオフセットを補正するためのデジタル化された信号の数学的処理は不要である。コイルの直列接続により、補正された信号が自動的に得られる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、2つの補正コイルを有し、当該2つの補正コイルは、それぞれ摺動要素の一定の幾何学的構成のもとで、可変の幾何学的構成の左右に配置されている。このようにして、補正コイルにより、摺動要素のねじれ及び/又は傾動を識別することができる。この場合、2つの補正コイルは、摺動要素の両側に配置されてもよい。
【0027】
本発明の一実施形態によれば、励磁コイルは、センサコイル及び補正コイル内において交流電圧を誘導するように構成されている。換言すれば、センサコイル及び1つ以上の補正コイルのために、単一の励磁コイルが使用され得る。1つの巻線のみを有し得る励磁コイルは、(センサ素子の平面図において)センサコイル及び/又は補正コイルを取り囲むことができる。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、補正コイル内において交流電圧を誘導するように構成された補正コイルのための付加的励磁コイルを含む。1つ以上の補正コイルのために、1つ以上の付加的励磁コイルを設けることも可能である。例えば、各補正コイルに対して固有の励磁コイルが設けられてもよい。これらの励磁コイルには、すべて同一の交流電圧を供給することができる。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、センサコイルの部分巻線は、測定経路に対して横方向において隣接して配置される。特に部分巻線の接続点は、摺動要素の可変の幾何学的構成の中心上に配置されてもよい。測定経路の一方の端部では、一方の部分巻線は、励磁コイルとの最大の誘導結合を有し、他方の部分巻線は、励磁コイルとの最小の誘導結合を有し得る。測定経路の他方の端部では、逆のことが当てはまり得る。
【0030】
センサコイルの部分巻線は、同一の面積を有することができ、それにより、部分巻線内へ誘導された交流電圧が、励磁コイルとの同等の誘導結合のもとで相殺される。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、線形変位センサは、それぞれ2つの逆向きの部分巻線を有する2つのセンサコイルを有し、この場合、2つのセンサコイルは、測定経路に対して横方向において隣接して摺動要素の可変の幾何学的構成上に配置される。このようにして、測定経路の(補正されていない)相対位置が、2つの測定信号に基づいて算出することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、可変の幾何学的構成は、測定経路に対して傾斜して延在する、摺動要素の溝を含む。この溝は、例えば金属から成る摺動要素内においてフライス加工することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、一定の幾何学的構成は、測定経路に対して平行に延在する、摺動要素の溝を含む。この溝も、例えば金属から成る摺動要素内においてフライス加工することができる。
【0034】
しかしながら、摺動経路に関して可変の及び/又は一定の幾何学的構成を提供するために、プラスチックから成る摺動要素のもとで、溝を金属要素により充填することも可能である。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、一定の幾何学的構成は、測定経路に対して平行に延在する、摺動要素の側縁部を含む。換言すれば、補正コイルは、摺動要素の(いずれにせよ既存の)側縁部上に位置付けすることができる。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、励磁コイル、センサコイル及び/又は補正コイルは、プリント回路基板内の平面コイルとして構成される。このプリント回路基板(これは多層構造を有していてもよい)は、コイルを形成する複数の導体線路を(複数の平面内に)有し得る。
【0037】
本発明の実施形態に対する着想は、特に、以下に説明する考察及び認識に基づいたものとみなすことができる。
【0038】
以下においては、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して説明するが、その際には、これらの図面も説明も本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。