(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538991
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】圧搾空気駆動式タガネ
(51)【国際特許分類】
B25D 9/00 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
B25D9/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-546714(P2018-546714)
(86)(22)【出願日】2018年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2018011276
(87)【国際公開番号】WO2018180832
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2018年9月5日
(31)【優先権主張番号】特願2017-64810(P2017-64810)
(32)【優先日】2017年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 史雄
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 啓輔
【審査官】
須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−289607(JP,A)
【文献】
実公昭62−016295(JP,Y2)
【文献】
特公昭46−021354(JP,B1)
【文献】
特公昭43−002179(JP,B1)
【文献】
特公昭41−010153(JP,B1)
【文献】
実開平02−143184(JP,U)
【文献】
実開平04−073477(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25D9/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端に設けられた後端閉止部材と、前端に設けられて前端開口を画定する前端筒状部材とを有するシリンダと、
該シリンダ内に該シリンダの軸線方向で摺動可能にされ、複数のニードルを該前端開口から前方に延出するように保持するニードルホルダ及び該ニードルホルダの後方位置に配置されたピストンを含む、可動エレメントであって、該ピストンは該シリンダ内で該ピストンの後部に形成される前進駆動室に圧搾空気が導入されることにより前方に駆動されて該ニードルホルダにその後方から前方への打撃力を加えるようになされており、該ニードルホルダは該シリンダの内周面に対して密封係合され該軸線方向で摺動可能とされた大径のホルダ本体と、該ホルダ本体から前方に延びて該前端筒状部材の内周面に対して密封係合され該軸線方向で摺動可能とされた小径の筒状部とを有し、該ホルダ本体は、その前端で該筒状部の後端の周りに形成された環状前端面と、該ニードルを該筒状部の内側を前後方向で延びるようにして収納する該軸線方向で貫通するニードル保持孔を有し、該ニードルホルダは、該ピストンの打撃力により前方に駆動されて、該環状前端面が該前端筒状部材の後端部に突き当たる前端位置まで変位可能とされており、該シリンダの内周面は該前端筒状部材の後端の位置から該軸線方向の後方に延び該ホルダ本体の外周面よりも大径で該ニードルホルダの外周面との間に後進駆動室を画定する室画定凹部を有するようになされている、可動エレメントと、
圧搾空気を前記前進駆動室に供給する前進駆動用通路及び該後進駆動室に供給する後進駆動用通路を有し、該前進駆動用通路及び該後進駆動用通路を介して該圧搾空気を該前進駆動室及び該後進駆動室に交番的に供給するための圧搾空気供給通路であって、該後進駆動用通路は、該シリンダを通り、該ホルダ本体の外周面と摺動係合する該シリンダの内周面に開口する後進駆動用シリンダ通路と、該ホルダ本体の外周面及び該外周面と摺動係合する該シリンダの内周面の少なくとも一方に該軸線方向で延びるように設けられ該後進駆動用シリンダ通路に連通している後進駆動用連通凹部とを有し、該ニードルホルダが該前端位置とされたときに該後進駆動用連通凹部が該後進駆動室に連通されて圧搾空気を該後進駆動室に供給するように構成されている圧搾空気供給通路と、
を有する圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項2】
該後進駆動用連通凹部が該ホルダ本体の該外周面に形成され、該ホルダ本体の該外周面における前端と該後進駆動用連通凹部の軸線方向前端との間の部分が該シリンダの該内周面に密封係合している状態では該後進駆動用連通凹部の該後進駆動室との連通を阻止するようにされている請求項1に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項3】
該後進駆動用連通凹部は該ホルダ本体の該外周面の周方向で延びる環状凹部とされている請求項2に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項4】
該後進駆動用連通凹部が該シリンダの該内周面に形成され、該後進駆動用シリンダ通路の該開口と該室画定凹部との間に延在し、該ホルダ本体の該外周面は該後進駆動用連通凹部に対して密封係合し該後進駆動用シリンダ通路の該開口よりも前方で該後進駆動用連通凹部に摺動可能とされている密封凸部を有し、該密封凸部は該ニードルホルダが該前端位置にされたときに該後進駆動用連通凹部から前方に離れ、該後進駆動用連通凹部を介して該後進駆動用シリンダ通路を該室画定凹部に連通するようにする請求項1に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項5】
該ニードル保持孔はそれぞれ該ニードル保持孔の後端近くから該ホルダ本体の後端面に向けて次第に拡径するニードル頭部受け部を有し、該ニードル頭部受け部は該ニードル保持孔に挿通されて保持されるニードルの後端部に設けられる頭部を該頭部の後端が該ニードル頭部受け部から後方に突出するようにして受け入れるようにされており、該ニードルホルダの後端面にその周縁に沿って該突出したニードルの頭部よりも後方に突出した環状突起部を有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項6】
該シリンダを同軸状にして収納する筒状のハウジングを有し、
該シリンダの外周面と該ハウジングの内周面との間に該軸線方向で延びるように形成され、該ハウジング内に導入された圧搾空気を該シリンダの外周面に沿って通す圧搾空気供給通路を有し、該後進駆動用シリンダ通路は該シリンダを半径方向で貫通して該圧搾空気供給通路に連通している請求項1乃至5のいずれか一項に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項7】
該圧搾空気供給通路は該シリンダと該ハウジングとの間に形成された筒状の通路とされている請求項6に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項8】
該可動エレメントは、該ピストンと該ニードルホルダとの間に該軸線方向で変位可能に設けられたアンビルを有し、該アンビルは前方に駆動されたピストンによって後方から打撃されて前方に駆動され該ニードルホルダに該ピストンからの打撃力を伝えるようになされており、
該ニードルホルダはその直径方向中心を軸線方向に貫通する排気通路を有し、該排気通路は該ニードルホルダが該前端位置となったときに該前進駆動室に連通され該前進駆動室内の圧搾空気を該ニードルホルダの前方外部に排出するようにされている請求項1乃至7のいずれか一項に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【請求項9】
該ニードル保持孔のそれぞれに該軸線方向で変位可能に保持され該ニードルホルダから軸線方向前方に延びて該シリンダの該前端開口から前方に延出する該ニードルを更に有し、該頭部が、該ニードル頭部受け部から後方に突出する該後端から前方に向かって次第に縮径する側面を有し、該側面が該ニードル頭部受け部の面に当接するようにされている請求項5に記載の圧搾空気駆動式タガネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧搾空気により駆動される圧搾空気駆動式タガネに関する。
【背景技術】
【0002】
圧搾空気駆動式タガネは、筒状部材内に該筒状部材の軸線方向で後方から前方にむけて順次取り付けられ該筒状部材に対してそれぞれ摺動可能とされたピストン、アンビル、及びニードルホルダを有し、該ニードルホルダには前方に延びるニードル(針タガネ)が保持されている。圧搾空気をピストン後部に形成される前進駆動室に供給すると、ピストンが前方に駆動されアンビルの後部を打撃し、アンビルが前方に駆動されて、該アンビルに押されてニードルホルダが前方に駆動される。また、該ニードルホルダが前方に駆動された時点で、前進駆動室の圧搾空気が外部に排出されると共に、ニードルホルダの前端側に形成される後進駆動室に圧搾空気が供給されて、該ニードルホルダ、アンビル及びピストンを後方に戻すようになっている。ニードルホルダが前方に駆動されることにより、当該ニードルの先端が被作業部位を打撃して斫り(はつり)などの所用の作業を行うようになっている。
【0003】
このような圧搾空気式タガネのニードルホルダは、筒状部材の内周面に対して密封係合され該軸線方向で摺動可能とされた大径のホルダ本体と、該ホルダ本体から同軸状に前方に延びて筒状部材の前端開口の内周面に対して密封係合され該軸線方向で摺動可能とされた小径の筒状延長部とを有する。該ホルダ本体はその前端で該筒状延長部の後端の周りに形成された環状前端面を有し、上記後進駆動室は、ニードルホルダを収納している筒状部材の内周面、前端開口の後側面、筒状延長部の外周面、及びホルダ本体の環状前端面により画定されるようになっている。
【0004】
従来のこのような圧搾空気駆動式タガネでは、ホルダ本体に複数のニードルを前後方向にそれぞれ通すニードル保持孔が当該ホルダ本体の半径方向中心の周りに多数設けられると共に、該ホルダ本体の外周面近くにはニードル保持孔に平行に延びてホルダ本体の環状前端面に開口して後進駆動室に圧搾空気を供給するための複数の軸線方向通路が設けられるようになっている。(特許文献1及び2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−289607号
【特許文献2】実公昭62−16295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されたような圧搾空気駆動式タガネでは、後進駆動室への圧搾空気供給用の軸線方向孔が上述の如くホルダ本体の環状前端面に開口するようにホルダ本体の外周面近くに設けられるようにされている。ニードルホルダは上述の如くピストンによる打撃により激しく往復動が繰り返されるものであり、このため上記軸線方向孔から当該ホルダ本体外周面までの肉厚はそのような激しい往復動に耐えられるよう十分なものにしなければならず、これは圧搾空気駆動式タガネを小型化するために当該ニードルホルダの外径寸法を小さくしようとするときの制限要素となっていた。
【0007】
本発明は、このような点に鑑み、ニードルホルダの外径寸法を従来のものに比べて小さくすることを可能とする圧搾空気駆動式タガネを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る圧搾空気駆動式タガネは、
後端に設けられた後端閉止部材と、前端に設けられて前端開口を画定する前端筒状部材とを有するシリンダと、
該シリンダ内に該シリンダの軸線方向で摺動可能にされ、複数のニードルを該前端開口から前方に延出するように保持するニードルホルダ及び該ニードルホルダの後方位置に配置されたピストンを含む、可動エレメントであって、該ピストンは該シリンダ内で該ピストンの後部に形成される前進駆動室に圧搾空気が導入されることにより前方に駆動されて該ニードルホルダにその後方から前方への打撃力を加えるようになされており、該ニードルホルダは該シリンダの内周面に対して密封係合され該軸線方向で摺動可能とされた大径のホルダ本体と、該ホルダ本体から前方に延びて該前端筒状部材の内周面に対して密封係合され該軸線方向で摺動可能とされた小径の筒状部とを有し、該ホルダ本体は、その前端で該筒状部の後端の周りに形成された環状前端面と、該ニードルを該筒状部の内側を前後方向で延びるようにして収納する該軸線方向で貫通するニードル保持孔を有し、該ニードルホルダは、該ピストンの打撃力により前方に駆動されて、該環状前端面が該前端筒状部材の後端部に突き当たる前端位置まで変位可能とされており、該シリンダの内周面は該前端筒状部材の後端の位置から該軸線方向後方に延び該ホルダ本体の外周面よりも大径で該ニードルホルダの外周面との間に後進駆動室を画定する室画定凹部を有するようになされている、可動エレメントと、
圧搾空気を前記前進駆動室に供給する前進駆動用通路及び該後進駆動室に供給する後進駆動用通路を有し、該前進駆動用通路及び該後進駆動用通路を介して該圧搾空気を該前進駆動室及び該後進駆動室に交番的に供給するための圧搾空気供給通路であって、該後進駆動用通路は、該シリンダを通り、該ホルダ本体の外周面と摺動係合する該シリンダの内周面に開口する後進駆動用シリンダ通路と、該ホルダ本体の外周面及び該外周面と摺動係合する該シリンダの内周面の少なくとも一方に該軸線方向で延びるように設けられ該後進駆動用シリンダ通路に連通している後進駆動用連通凹部とを有し、該ニードルホルダが該前端位置とされたときに該後進駆動用連通凹部が該後進駆動室に連通されて圧搾空気を該後進駆動室に供給するように構成されている圧搾空気供給通路と、
を有する。
【0009】
本発明に係るこの圧搾空気駆動式タガネにおいては、該ニードルホルダが該前端位置にされたときに後進駆動用シリンダ通路の該開口を該後進駆動室に連通するための通路を、前述の従来のもののようにニードルホルダの外周面近くに軸線方向孔として設けるのではなく、ホルダ本体の外周面及び該外周面と摺動係合する該シリンダの内周面の少なくとも一方に軸線方向で延びるように設けられた凹部(後進駆動用連通凹部)としている。このため上記軸線方向孔を設けた場合に当該ニードルホルダの強度を保つために該軸線方向孔からホルダ本体の外表面までの肉厚を大きくするといった必要がなく、また、圧搾空気供給のために必要とされる流路断面を、ニードルホルダ内を通る軸線方向孔として設けた場合の軸線方向孔の直径寸法に比べて極めて小さな深さ寸法の凹部で同流路断面を得ることが可能となる。このため本発明のこの圧搾空気駆動式タガネでは、ニードルホルダの直径を従来のものに比べて大幅に縮小することが可能となる。
【0010】
該後進駆動用連通凹部の具体的例としては、該ホルダ本体の該外周面に形成され、該ホルダ本体の該外周面における前端と該後進駆動用連通凹部の軸線方向前端との間の部分が該シリンダの該内周面に密封係合している状態では該後進駆動用連通凹部の該後進駆動室との連通を阻止するようにされるようなものとすることができる。
【0011】
より具体的には、該後進駆動用連通凹部は該ホルダ本体の該外周面の周方向で延びる環状凹部とすることができる。
【0012】
該後進駆動用連通凹部としては、上記のホルダ本体の外周面に設けたものに換えて又はそれに加えて、該シリンダの該内周面に形成され、該後進駆動用シリンダ通路の該開口と該室画定凹部との間に延在するように設け、該ホルダ本体の該外周面が該後進駆動用連通凹部に対して密封係合し該後進駆動用シリンダ通路の該開口よりも前方で該後進駆動用連通凹部に摺動可能とされている密封凸部を有し、該密封凸部は該ニードルホルダが該前端位置にされたときに該後進駆動用連通凹部から前方に離れ、該後進駆動用連通凹部を介して該後進駆動用シリンダ通路を該室画定凹部に連通するようにすることができる。
【0013】
該ニードル保持孔はそれぞれ該ニードル保持孔の後端近くから該ホルダ本体の後端面に向けて次第に拡径するニードル頭部受け部を有し、該ニードル頭部受け部は該ニードル保持孔に挿通されて保持されるニードルの後端部に設けられる頭部を該頭部の後端が該ニードル頭部受け部から後方に突出するように受け入れるようにされており、該ニードルホルダの後端面にその周縁に沿って該突出したニードルの頭部よりも後方に突出した環状突起部を有するようにすることができる。ニードル間の間隔を狭めやすいようにするものである。
この場合の該ニードルの頭部は該ニードル頭部受け部に対応して後方に向けて次第に広がる側面を有するようなものとすることができる。
【0014】
具体的には、
該シリンダを同軸状にして収納する筒状のハウジングを有し、
該シリンダの外周面と該ハウジングの内周面との間に該軸線方向で延びるように形成され、該ハウジング内に導入された圧搾空気を該シリンダの外周面に沿って通す圧搾空気供給通路を有し、該後進駆動用シリンダ通路は該シリンダを半径方向で貫通して該圧搾空気供給通路に連通したものとすることができる。
【0015】
該圧搾空気供給通路は該シリンダと該ハウジングとの間に形成された筒状の通路とすることができる。
【0016】
該可動エレメントは、該ピストンと該ニードルホルダとの間に該軸線方向で変位可能に設けられたアンビルを有し、該アンビルは前方に駆動されたピストンによって後方から打撃されて前方に駆動され該ニードルホルダに該ピストンからの打撃力を伝えるようになされており、
該ニードルホルダはその直径方向中心を軸線方向に貫通する排気通路を有し、該排気通路は該ニードルホルダが該前端位置となったときに該前進駆動室に連通され該前進駆動室内の圧搾空気を該ニードルホルダの前方外部に排出するようにすることができる。
【0017】
該ニードル保持孔のそれぞれに該軸線方向で変位可能に保持され該ニードルホルダから軸線方向前方に延びて該シリンダの該前端開口から前方に延出する該ニードルを更に有し、該頭部が、該ニードル頭部受け部から後方に突出する該後端から前方に向かって次第に縮径する側面を有し、該側面が該ニードル頭部受け部の面に当接するようにすることができる。
【0018】
以下、本発明に係る圧搾空気駆動式タガネの実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る圧搾空気駆動式タガネの斜視図である。
【
図2】
図1の圧搾空気駆動式タガネが駆動されていない状態の縦断面図である。
【
図3】
図2の縦断面図における一部を拡大して示す図である。
【
図4】
図2と同様の図であるが、前進駆動室に圧搾空気が導入されてピストンが前進しアンビルを打撃している状態を示している。
【
図5】
図4の縦断面図における一部を拡大して示す図である。
【
図6】
図2と同様の図であるが、ニードルホルダが前端位置に至ったときの状態を示している。
【
図7】
図6の縦断面図における一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように本発明に係る圧搾空気駆動式タガネ10は、複数(図においては6本)のニードル(針タガネ)12を備え、当該圧搾空気駆動式タガネ10の後端の空気導入孔11(
図2)に接続される図示しない圧搾空気供給管を通して導入される圧搾空気によりニードル12を全体として前後に駆動し、その先端で被作業部位を打撃して斫り(はつり)などの作業を行うものである。
【0021】
図2に示すように、圧搾空気駆動式タガネ10は、筒状のハウジング14と、該ハウジング14内に同軸状に取り付けられたシリンダ16とを有する。当該圧搾空気駆動式タガネ10はさらに、該シリンダ16内において軸線方向で後方から前方に順次取り付けられたピストン18、アンビル20、及びニードルホルダ22を有する。ニードルホルダ22は、各ニードル12を当該ニードルホルダ22の前端開口17から前方に延出するように保持している。図示の例では、ハウジング14はハウジング後部14aと該ハウジング後部14aに結合されたハウジング前部14bとからなる。シリンダ16は筒状のシリンダ本体16aと、該シリンダ本体16aの後端に取り付けられ該後端を閉じる後端閉止部材16bと、シリンダ本体16aの前端に取り付けられて前方に延び、前端開口17を画定している前端筒状部材16cとからなる。
【0022】
シリンダ16内にはピストン18と後端閉止部材16bとの間に前進駆動室24(
図2、
図4、
図6)が、ニードルホルダ22と前端筒状部材16cとの間に後進駆動室26が形成され、ハウジング後部14aに設けられたバルブ28を介して上述の空気導入孔11に連通されてハウジング14の内周面とシリンダ16の外周面との間に延びる筒状の圧搾空気供給通路30を通して前進駆動室24と後進駆動室26に圧搾空気が交番的に供給されるようになっている。
【0023】
具体的には、圧搾空気供給通路30はシリンダ16の後方寄りに半径方向で貫通するように設けられた前進駆動用シリンダ通路16dに連通される後方通路部30aと、該後方通路部30aから前方に延びてシリンダ16の前方寄りに半径方向で貫通するように設けられた後進駆動用シリンダ通路16eに連通される前方通路部30bとを有している。ピストン18はその外周面に、後方寄りの位置から前端まで延びるように設けられている小径部18aと、小径部18aの後側の大径部18bとを有しており、小径部18a及び大径部18bはシリンダ16の内周面のそれぞれ対応する直径の部分と密封係合され且つ摺動可能とされている。小径部18aには直径方向で貫通する前進駆動用直径方向通路18dが設けられ、前進駆動用直径方向通路18dからはピストン18の後端面まで延びて前進駆動室24に連通する前進駆動用軸方向通路18cが設けられている。前進駆動用シリンダ通路16dを通された圧搾空気は、シリンダ16が
図2に示す後端位置にあるときに、シリンダ16の内周面と小径部18aとの間に形成される空間32、前進駆動用直径方向通路18d、前進駆動用軸方向通路18cを通して前進駆動室24に供給されるようになっている。後進駆動用シリンダ通路16eはニードルホルダ22が前方に駆動されたときに、ニードルホルダ22の外周面に設けられた後進駆動用環状凹部22a(
図7)を介して圧搾空気を後進駆動室26に供給できるようになっている。ニードルホルダ22は、具体的には、シリンダ16の内周面に対して密封係合し摺動可能とされた大径のホルダ本体22bと、ホルダ本体22bから前方に延びて前端筒状部材16cの内周面に対して密封係合され摺動可能とされる小径の筒状部22cとを有する。ホルダ本体22bはその前端で筒状部22cの後端の周りに形成された環状前端面22dを有しており、ニードルホルダ22は、アンビル20によって前方に駆動されたときに、環状前端面22dが前端筒状部材16cの後端部に突き当たる前端位置まで変位可能とされている。上述の後進駆動用環状凹部22aはホルダ本体22bの外周面にその前端及び後端から離れた中間位置に設けられている。シリンダ16の内周面は、前端筒状部材16cの後端の位置から軸線方向後方に延びホルダ本体22bの外周面よりも大径でニードルホルダ22の外周面との間に後進駆動室26を画定する室画定凹部16fを有している。ニードルホルダ22が前方に駆動されたとき(
図6、
図7)に後進駆動用環状凹部22aが後進駆動室26に連通する状態となり、該後進駆動室26に圧搾空気が供給されるようになっている。
【0024】
ニードルホルダ22は、ホルダ本体22bを前後方向で貫通しそれぞれニードル12を保持するニードル保持孔22eと、ホルダ本体22bの横断面中心を前後方向で貫通している排気通路22fとを有している。ニードル保持孔22eはその後端近くからホルダ本体22bの後端面に向けて次第に拡径する傾斜面22hを有するニードル頭部受け部22gを有し、ニードル12はニードル頭部受け部22gの傾斜面22hに対応する側面12aを有するニードル頭部12bを備える。ニードル頭部12bがニードル頭部受け部22gに受け入れられた状態では、ニードル頭部12bの側面12aがニードル頭部受け部22gの傾斜面22hに当接し、ニードル頭部12bの後端がニードル頭部受け部22gから後方に突出するようにされている。ニードルホルダ22の後端面にはその周縁に沿って、ニードル頭部受け部22gから後方に突出したニードル頭部12bよりもさらに後方に突出した環状突起部22jを有しており、アンビル20はこの環状突起部22jを介してニードルホルダ22への前方駆動力を伝達するようになっている。ニードル12はニードル頭部12bが上記のごときニードル頭部受け部22gに受け入れられることによりニードル保持孔22eとの整合が行われ、ニードル12がぶれにくいようにされている。
【0025】
圧搾空気駆動式タガネ10が
図2に示す圧搾空気が導入されていない不作動の状態において、ハウジング後部14aに枢着されたレバー34を下げてバルブ28を開放すると、圧搾空気は上述の通り圧搾空気供給通路30の後方通路部30a、前進駆動用シリンダ通路16d、前進駆動用直径方向通路18d、前進駆動用軸方向通路18cを介して前進駆動室24に供給される。これによりピストン18は前方に駆動され、その前端に設けられている打撃突起18eによりアンビル20を後方から打撃する(
図4、
図5)。この状態では前進駆動室24から延びる前進駆動用直径方向通路18dがアンビル20の後側に形成された空間35に連通された状態となり、ピストン18を前方に駆動した前進駆動室24内の圧搾空気は、アンビル20に設けられた軸方向孔20aを通してアンビル20の前端面とニードルホルダ22の後端面との間にある空間36に通され、ニードルホルダ22の排気通路22fを介して外部に排気されるようになる。このとき、ホルダ本体22bの外周面の後進駆動用環状凹部22aはまだ後進駆動室26に連通しておらず、後進駆動室26には圧搾空気が供給されない。ニードルホルダ22が前進駆動されるときは、後進駆動室26の容積が縮小されることになるが、該後進駆動室26内の空気は、ニードルホルダ22の筒状部22cに設けられている半径方向排気孔22iを通して外部に排出され、ニードルホルダ22は後進駆動室26内の空気圧による抵抗を実質的に受けることなく前進できるようにされている。
【0026】
ピストン18により後方から打撃されたアンビル20は前方に駆動されてニードルホルダ22を前方に駆動し、該ニードルホルダ22は前端筒状部材16cと衝突する前端位置となる(
図6、
図7)。この状態では後進駆動用環状凹部22aは後進駆動室26に連通され、圧搾空気が後進駆動室26に供給され、ニードルホルダ22の後方への駆動が開始される。ニードルホルダ22によってアンビル20及びピストン18が
図2に示す状態に戻されると、再び圧搾空気によりピストン18が前方へ駆動される。このようにして、ニードルホルダ22の往復動が繰り返され、ニードル12による被作業部位への打撃作業が行われる。
【0027】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば上述した実施形態では、ニードルホルダ22が前方に駆動されたときに後進駆動用シリンダ通路16eを後進駆動室26に連通するのにホルダ本体22bの外周面に設けた後進駆動用環状凹部22aによって行っているが、この後進駆動用環状凹部をシリンダ16の内周面に後進駆動用シリンダ通路16eと室画定凹部16fとの間に延在するように設けるようにすることができる。この場合は、ホルダ本体22bの外周面に、この後進駆動用連通凹部に対して密封係合し後進駆動用シリンダ通路16eよりも前方で後進駆動用連通凹部に摺動可能とされている密封凸部を設け、ニードルホルダ22が前端位置に向けて駆動されたときにこの密封凸部が後進駆動用連通凹部から前方に離れ、それにより後進駆動用シリンダ通路16eと室画定凹部16fが連通されるようにすることができる。また、シリンダ本体と、後端閉止部材と、前端筒状部材とは別体のものとして示したが、これらは一体に成形することもできる。
【符号の説明】
【0028】
圧搾空気駆動式タガネ10;
空気導入口11;
ニードル(針タガネ)12;
側面12a;
頭部12b;
ハウジング14;
ハウジング後部14a;
ハウジング前部14b;
シリンダ16;
シリンダ本体16a;
後端閉止部材16b;
前端筒状部材16c;
前進駆動用シリンダ通路16d;
後進駆動用シリンダ通路16e;
室画定凹部16f;
ピストン18;
小径部18a;
大径部18b;
前進駆動用軸方向通路18c;
前進駆動用直径方向通路18d;
打撃突起18e;
アンビル20;
軸方向孔20a;
ニードルホルダ22;
後進駆動用環状凹部22a;
ホルダ本体22b;
筒状部22c;
環状前端面22d;
ニードル保持孔22e
排気通路22f
ニードル頭部受け部22g;
傾斜面22h;
半径方向排気孔22i;
環状突起部22j;
前進駆動室24;
後進駆動室26;
バルブ28;
圧搾空気供給通路30;
後方通路部30a;
前方通路部30b;
空間32;
レバー34;
空間35、36