特許第6538997号(P6538997)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6538997
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】取り付けユニット
(51)【国際特許分類】
   F16B 2/26 20060101AFI20190625BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   F16B2/26
   G09F9/00 350A
   G09F9/00 302
   G09F9/00 313
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-16548(P2019-16548)
(22)【出願日】2019年1月31日
【審査請求日】2019年2月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597168505
【氏名又は名称】株式会社新和プラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】100194456
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 勇
(72)【発明者】
【氏名】田邊 正人
【審査官】 川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2002/0060275(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0113512(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0258691(US,A1)
【文献】 米国特許第07495846(US,B1)
【文献】 特開2012−188121(JP,A)
【文献】 特開2010−105696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/133−1/1334
1/1339−1/1341
1/1347
G09F9/00−9/46
H01L27/32
51/50
H05B33/00−33/28
H05K5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆物の側面及び背面に廻したコードと、前記被覆物の正面を覆う覆物に前記コードを取り付けて、前記被覆物に前記覆物を縛止する取り付け具とで構成され、
前記コードは、可撓性で、弾性表面を有しており、
前記取り付け具は、前記覆物の縁に固着させる固着部と、前記コードの取付部と、前記固着部及び取付部を繋ぐ、柱状又は棒状の可撓性を有しているしなり部と、で構成されており、
前記取付部は、板状で、当該板状の表裏の面を貫き、当該表裏の面に対して角張った開口縁の2以上の孔を有しており、
前記2以上の孔は、当該2以上の孔に縫うように差し込まれた前記コードに想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上、前記コードがずれ動かないという条件を満たす大きさ及び間隔で設けられている、ことを特徴とする取り付けユニット。
【請求項2】
前記しなり部が前記取付部と繋がる第1接続部は、前記取付部に取り付けられたコードに前記最大張力F1を加えたときに、前記第1接続部直前のしなり部に沿う方向に対して取付部が予め定めた角度θmax以上に曲がらない硬さを有している、ことを特徴とする請求項1に記載の取り付けユニット。
【請求項3】
前記取り付け具は、板状プラスチック樹脂で、前記しなり部は、前記取付部よりも薄い部分を、中間領域、又は、全長さに渡って有している、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の取り付けユニット。
【請求項4】
前記しなり部が前記固着部と繋がる第2接続部は、前記しなり部の撓む方向に直交する向きの幅が前記しなり部から前記固着部へと向かうにつれて末広がりとなっている、ことを特徴とする請求項3に記載の取り付けユニット。
【請求項5】
前記孔は3以上設けられており、前記最大張力F1よりも大きな予め定めた想定外張力F2を加えても予め定めた期間T1以上、前記コードがずれ動かないという条件を満たす大きさ及び間隔で設けられている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の取り付けユニット。
【請求項6】
前記コードは直径2mmの円柱状のウレタン無垢長尺材で、前記孔は3つ設けられており、前記孔の直径は前記コードの直径の2倍以下である、ことを特徴とする請求項5に記載の取り付けユニット。
【請求項7】
前記被覆物は矩形の画面を持つディスプレイで、前記覆物はディスプレイの保護パネルである、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の取り付けユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆物に覆物を取り付けるための取り付けユニット及び当該ユニットに用いる取り付け具に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆物に覆物を取り付けるものの一例として、ディスプレイに保護パネルを取り付けるための取り付けユニットが種々提案されている。例えば、図16に示すように、ディスプレイ100に保護パネル200を取り付ける取り付けユニット300として、ディスプレイの側面及び背面に廻したコード301と、コード301を保護パネル200の縁に取り付けるための取り付け具310とで構成されるものが知られている。取り付け具310は、矩形の鉄板を保護パネル200の厚みの分の間隔を開けた状態で二つ折りにしたものであって、コード301を通す孔312及びねじ穴313の開けられた本体311と、保護パネル200に締結固定させるためのねじ314と、を備えている。コード301の先端は、孔312を通された後に、抜け出ないように留め具302が取り付けられている。また、このような、取り付け具として特許文献1、2のような技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−302327号公報
【特許文献2】実用新案登録第3158019号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図16に示す取り付け具310は、折り曲げ加工、2か所の孔開け加工、更に、ねじ314が必要で、コード301を孔312から抜けないようにする留め具302を準備し、更に、取り付ける必要があり、加工費、部品代等がかさみ、コスト高であった。
【0005】
また、特許文献1には、アクリル板の上部にねじ穴を開け、取り付けるディスプレイの上部の幅分のL型2連金具を取り付けた構成の保護パネルが提案されている。商品の多様化がすすむ現在、薄い又は厚みのあるディスプレイ、上部にエッジがなく、なだらかに傾斜のついた、膨らみのある背面形状のディスプレイ等が存在する。このようなディスプレイ全てに対応し、しっかりと固定できる金具は無く、無理に取り付けようとすれば、保護パネルが壊れてしまう虞れもある。このため、実際には、幾つかの金具を準備する必要が生じ、コスト高につながる。
【0006】
特許文献2には、アクリル板の上部にディスプレイに係止する折り曲げ部分を設けておき、当該アクリル板の上下に、縛止(固縛を含め「縛って止める」の意味で用いる。以下同じ)用のコードを通す孔を開けておき、孔を通した前記コードを反対側に折り曲げて、接着固定する保護パネルが提案されている。孔を通したコードを反対側に折り曲げて接着する作業は、手間であり、コスト高につながるだけでなく、時間の経過とともにコードにたるみが出てきたときに、長さ調節できない。
【0007】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、非常に簡易な構成であるにも拘わらず、縛止用のコードの長さを再調節可能な状態で、種々の側面及び背面形状の被覆物(例えばディスプレイ)に覆物(例えば保護パネル)をしっかりと、しかし、覆物を壊すような無理な力をかけずに固定できる取り付けユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明に係る覆物の取り付けユニットは、被覆物の側面及び背面に廻したコードと、前記被覆物の正面を覆う覆物に前記コードを取り付けて、前記被覆物に前記覆物を縛止する取り付け具とで構成され、前記コードは、可撓性で、弾性表面を有しており、前記取り付け具は、前記覆物の縁に固着させる固着部と、前記コードの取付部と、前記固着部及び取付部を繋ぐ、柱状又は棒状の可撓性を有しているしなり部と、で構成されており、前記取付部は、板状で、当該板状の表裏の面を貫き、当該表裏の面に対して角張った開口縁の2以上の孔を有しており、前記2以上の孔は、当該2以上の孔に縫うように差し込まれた前記コードに想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上、前記コードがずれ動かないという条件を満たす大きさ及び間隔で設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
前記しなり部が前記取付部と繋がる第1接続部は、前記取付部に取り付けられたコードに前記最大張力F1を加えたときに、前記第1接続部直前のしなり部に沿う方向に対して取付部が予め定めた角度θmax以上に曲がらない硬さを有していることが好ましい。
【0010】
前記取り付け具は、板状プラスチック樹脂で、前記しなり部は、前記取付部よりも薄い部分を、中間領域、又は、全長さに渡って有していることが好ましい。
【0011】
前記しなり部が前記固着部と繋がる第2接続部は、前記しなり部の撓む方向に直交する向きの幅が前記しなり部から前記固着部へと向かうにつれて末広がりとなっていることが好ましい。
【0012】
前記孔は3以上設けられており、前記最大張力F1よりも大きな予め定めた想定外張力F2を加えても予め定めた期間T1以上、前記コードがずれ動かないという条件を満たす大きさ及び間隔で設けられていることが好ましい。
【0013】
前記コードは直径2mmの円柱状のウレタン無垢長尺材で、前記孔は3つ設けられており、前記孔の直径は前記コードの直径の2倍以下であることが好ましい。
【0014】
前記被覆物は矩形の画面を持つディスプレイで、前記覆物はディスプレイの保護パネルであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の取り付けユニットを用いれば、被覆物の縁に取り付け具の固着部を固着した状態で、被覆物の背面及び側面に廻されたコードを、取り付け具の取付部の2以上の孔を縫うように差し込むだけで、当該コードの弾性表面に孔の角張った開口縁が食い込んで係止され、長さの再調節可能な状態で、被覆物に覆物をしっかりと固定できる。更には、しなり部の働きにより、被覆物の側面及び背面の形状に沿うように、コードをしっかりと縛止できると当時に、その復元力によってコードに張力を与え、覆物をしっかりと固定できる。更には、このしなり部がしなることによって、固着部に加えられる覆物から剥がれようとする力を軽減し、覆物を壊すような力がかからないようにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の取り付けユニットを用いて、被覆物のディスプレイに、覆物の保護パネルを取り付ける実施形態の分解斜視図。
図2】本発明の取り付けユニットを用いて保護パネルを取り付けた(縛止した)ディスプレイの背面図。
図3】本発明の取り付けユニットを構成する取り付け具の斜視図。
図4】同取り付け具の(a)は正面図(b)は右側面図(c)は左側面図(d)は背面図(e)は平面図(f)は底面図。
図5】取り付け具の取付部に設けてある3つの孔の直径と、円柱状縛止用コードの直径との関係を示す図。
図6】取付部の3つの孔に、コードを縫うように差し込んだ状態の斜視図。
図7】(a)(b)(c)は取付部の孔の開口縁が角張っている状態を示す断面図。
図8】(a)はコードをしっかりと固定できる取付部の孔の直径及び間隔について種々実験するのに用いた実験用の取付部と、(b)は当該実験用取付部の孔にコードを縫うように差し込み、定めた方向に張力を加えることを示す図。
図9】(a)(b)はしなり部と取付部とが繋がる第1接続部の厚みによって、第1接続部直前のしなり部に沿う向きに対して取付部が曲がる程度に違いが生じることを説明する図。
図10】保護パネルに取り付けられた、取り付け具の固着部としなり部とを繋ぐ第2接続部の状態を示す斜視図。
図11図10に示す取付容易のために、第2接続部に折り目を付けた状態を示す斜視図。
図12】保護パネルに取り付けられた、取り付け具の固着部としなり部とを繋ぐ第2接続部の状態を示す別の斜視図。
図13図12に示す取付容易のために、第2接続部に折り目を付けた状態を示す斜視図。
図14】保護パネルに取り付けられた、取り付け具の固着部としなり部とを繋ぐ第2接続部の状態を示す別の斜視図。
図15図14に示す取付容易のために、第2接続部に折り目を付けた状態を、(a)は背面から見た斜視図、(b)は側方から見た斜視図。
図16】従来の取り付けユニットの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の取り付けユニットは、被覆物の側面及び背面に廻したコードと、被覆物の正面を覆う覆物に前記コードを取り付けて、被覆物に前記覆物を縛止(固く縛り止める固縛の意味だけでなく、位置ずれしないように縛って止める場合も含む語として用いる。以下同じ)する取り付け具とで構成される。コードは可撓性で弾性表面を有している。取り付け具は覆物の縁に固着させる固着部と、コードの取付部と、固着部及び取付部を繋ぐ、断面矩形又は多角形等の柱状、又は、断面円形又は楕円形等の棒状で、可撓性を有しているしなり部と、で構成されている。取付部は、板状で、この板状の表裏の面を貫き、表裏の面に対して角張った開口縁の2以上の孔を有している。「角張った」とは、表裏の面と孔の縁が、丸み無くシャープに交わる関係をいう。この2以上の孔は、円形の他、多角形の場合も考えられるが、その開口縁が角張った形状になっているので、これらの孔に縫うように差し込まれたコードに張力を加えると、開口縁がコードに食い込んで、コードを滑らないようにする。その大きさ及び間隔は、想定する最大張力を加えても予め定めた期間(例えば1年)以上ずれ動かないという条件を満たすように、実験的に求めた値に設定される。この構成を採用したことによって、本発明の取り付けユニットは、種々の形状の側面及び背面の被覆物に沿うように、コードを長さ調節可能な状態で、しっかりと固定することができる。更には、しなり部がしなることによって、固着部に加えられる、覆物から剥がれようとする力を軽減し、覆物を壊すような無理な力がかからないようにする。
【0024】
以下、本発明の一実施の形態に係る取り付けユニットについて、被覆物に種々の形状の側面及び背面の物があるディスプレイ、覆物に保護パネルを想定して、具体的に説明する。
【0025】
図1は、本発明の取り付けユニット1を使って、ディスプレイ100に、保護パネル200を取り付ける実施形態で、取り付けユニット1の取り付け方を説明する図である。取り付けユニット1は、保護パネル200の上部の縁に2か所、側部下側の縁に2か所に取り付けて用いる。
【0026】
図2は、4つの取り付けユニット1を使って、保護パネル200をディスプレイ100に取り付けた(縛止した)ときの、当該ディスプレイ100の背面の様子を示す。取り付けユニット1は、ディスプレイ100の側面及び背面に廻したコード2と、保護パネル200の縁に取り付けられ、コード2を取り付けることによって、保護パネル200をディスプレイ100に縛止する取り付け具3と、で構成されている。
【0027】
図3は、板状プラスチック樹脂製の取り付け具3の斜視図を示す。取り付け具3は、保護パネル200の縁に固着させる固着部4と、コード2の取付部5と、固着部4及び取付部5を繋ぐ、可撓性を有している柱状又は棒状のしなり部6と、で構成されている。
【0028】
柱状のしなり部6には、断面が矩形、その他の多角形の断面形状で、太さ又は厚みが均一のものだけでなく、途中で太さ又は厚みの変化する物も含め、柱状で長さのあるものを含む。また、棒状のしなり部6には、断面が円形、楕円形、その他の多様な断面形状で、太さが均一の物だけでなく、途中で太さの変化する物も含め、棒状で長さのあるものを含む。
【0029】
取り付け具3の取付部5は、板状で、この板状の表裏の面を貫き、表裏の面に対して角張った開口縁の2以上の孔、本実施形態では3つの孔5a、5b、5cを有している。「角張った」とは、板状の取付部5の表裏の面と孔の縁とが、丸み無くシャープに交わる関係をいい、90度に直交する場合(図7(a)を参照)の他、故意又は製造誤差又はバリ等により、孔の開口縁の一部又は全部において、90度以下、例えば89度等の鋭角に交わっている場合を含む(図7(b)(c)を参照)。孔5a、5b、5cは、円形の他、多角形の場合も考えられる。孔5a、5b、5cに縫うように差し込まれたコード2に張力を加えたとき、この角張った開口縁は、コード2に食い込んで、動かないようにする。
【0030】
図4は、取り付け具3の6面図で、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は左側面図、(d)は背面図、(e)は平面図、(f)は底面図を示す。取り付け具3は、透明なポリカーボネート製又はポリエステル製で、厚さTh1=2mmの固着部4、厚さTh2=1mmのしなり部6、厚さTh3=2mmの取付部5で構成されている。固着部4は、図4(a)において縦7mm、横50mmで、図4(d)の背面図で上を向いて描かれている面、即ち、保護パネル200に取り付ける面に強力な両面テープ4aが貼り付けられている。しなり部6は、図4(a)において縦75mm、横3mmで、固着部4及び取付部5よりも薄い部分を、中間領域、又は、全長さに渡って有していることによって可撓性を与えられている。しなり部6の内、当該しなり部6が取付部5と繋がる部分を第1接続部7といい、しなり部6が固着部4と繋がる部分を第2接続部8という。第2接続部8は、しなり部6の一部であり、図4(a)において縦8mmの長さを有している。第2接続部8の厚さTh4は、しなり部6の他の部分よりも更に薄く0.6mmで、しなり部6の撓む方向(図4(a)において表裏方向)に直交する向き(図4(a)において左右方向)の幅は、横3mmのしなり部6の他の部分と同じ横幅W1=3mmから始まり、しなり部6から固着部4へと向かうにつれて末広がりとなっており、固着部4の部分では横幅W2=6mmとなっている。当該形状を採用することによって、ディスプレイ100の側部の厚み、背部の形状、そして、取付部5に取り付けられたコード2によって、特に図4(a)において左右方向に引っ張られた時の追随性を高めると共に、末広がり形状としたことによって、裂けるのを防ぐ。また、取り付け具3は、厚みを変えることによって可撓性の程度を変えており、この形状を採用したことによって、1つの金型で製造可能で、極めて少ない工程で製造できる利点を有する。
【0031】
図5は、コード2と、取り付け具3の取付部5に設けられている孔5a、5b、5cとの大きさの関係を示す。コード2は、可撓性及び弾性表面を有している長尺材で、例えば、直径R1の円柱状のウレタン無垢長尺材、又は、円柱状のビニールコーティングワイヤーを用いる。孔5a、5b、5cの直径R2は、コード2と略同一の大きさのものから、この孔に縫うように差し込んだコード2に想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かない、という条件を満たす限りにおいて、隙間のある大きさまでの範囲内で設定可能である。
【0032】
図6は、3つの孔5a、5b、5cを縫うようにコード2を差し込んだ状態を示す。コード2を矢印A方向に引っ張ると、孔5cの本図下側の開口縁P1と、孔5bの本図上側の開口縁P2とがコード2に食い込んで、コード2を滑らさないようにする。孔5a、5b、5cは、コード2に想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かない、という条件を満たす大きさ及び間隔で設けられる。通常の使用時に想定される最大張力F1は500g程度である。期間T1は例えば1年である。
【0033】
なお、取付部5の孔は、2つの場合でも、使用するコード2に想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かないという条件を満たすように、直径及び間隔の設定が可能である。例えば、直径2.1mmの孔2つを間隔(孔の中心間隔をいう。以下同じ)3mmで設け、直径2mmのコード2を縫うように差し込み、想定最大張力F1=500gでひっぱった場合、ずれ動くことは全く無かった。しかし、約2kgを越える力で無理やり引っ張ると、コードが伸びて細くなり、ずれ動き始めた。約2kgを越える力が加えられるのは、実際上は、使用する人の手で想定外に強く引っ張られる場合と考えられる。
【0034】
孔は、3つ以上空いている方が、コード2のずれに対する耐性が飛躍的に高くなることが実験によって解った。コード2を想定最大張力F1を超える力で引っ張ると、まず、1つ目の開口縁P1の処にあるコード2が細くなりずれ動き始める。このとき、引っ張り力は、それよりも先端側にある開口縁P2のところまで伝わっていない。開口縁P1の処で滑り始める結果、開口縁P2のところで、仰角0度、即ち、真横にコード2を引っ張る力が作用する。この結果、2つめの孔の開口縁P2の処には、良好な引っ掛かりができ、それ以上コード2は滑らない。
【0035】
図7は、取付部5に設けられる孔の開口縁が「角張っている」状態を説明する断面図で、(a)は本実施形態で示す孔5a、5b、5cを示している。図示するように、孔5a、5b、5cの開口縁、特に、図6で示す開口縁P1、P2の位置は、縁の部分に丸みが設けられておらず、コード2が食い込みやすい鋭い直角又は鋭角に加工されている。
【0036】
図7(b)に示すように、取付部5に開ける孔は、開口縁が角張った形状をしており、コード2に食い込む形状であるという条件を満たす限りにおいて、孔の中で、直径に変化する部分5dがあっても良い。更には、図7(c)に示すように、取付部5に孔を開けた際に、いわゆるバリ5eが生じることがあるが、このバリ5eは、コード2に食い込みやすい鋭角を有する尖った構造物と捉えることができ、そのまま使っても良い。この点において、バリ5eを使う場合には、開口縁の角張った形状を保ちつつ、バリ5eを除去するというバリ取り処理が不要になるので、加工コスト低減できるという利点がある。
【0037】
図8(a)は、前記条件を満たす孔の大きさ及び間隔を実験的に求める際に用いる実験用取付部50の正面図を示し、(b)は実験用取付部50の孔にコード2を縫うように差し込んだ状態を示す。
【0038】
(実験1)
上述するように、直径R1が2mmのコード2使用時、直径R2が2.1mm以下のサイズの孔が2つ開いていれば、実際の使用で、コード2がずれ動くことが無い。更には、孔を3つにすれば、想定最大張力F1を超える強い想定外張力F2(例えば2kg)でコード2が引っ張られた場合でも、ずれ動くことを防ぐことができる。孔を3つ開ける場合、どの程度まで、孔の直径を大きくしても、使用可能なのか、実験によって確認した。
【0039】
室温約20℃、湿度約60%の雰囲気で、厚さ2mmの実験用取付部に、直径R2が4mmの孔を3つ、間隔15mmで設け、直径R1が2mmの円柱状のウレタン無垢長尺材30cmのコード2を縫うように差し込んで、矢印A方向に張力を加えた。最初、5kgの張力を与えたところ、コード2が瞬間的に伸びて素材破壊、即ち切れてしまったので、2kgの張力を想定最大張力F1を越える想定外張力F2として以降の実験を行った。結果は、約1分でコード2が少し滑り始め、約2分で大きく滑り出した。
【0040】
(実験2)
前記実験1の条件の内、3つの孔を間隔9mmに変更した場合の結果は、約3分でコード2が少し滑り始め、約4分で大きく滑り出した。
【0041】
(実験3)
前記実験1の条件の内、3つの孔を間隔7mmに変更した場合の結果は、約5分でコード2が少し滑り始め、約6分で少しだけ滑ったところで止まった。
(実験4)
前記実験1の条件の内、3つの孔を間隔6mmに変更した場合の結果は、コード2の動きを目視確認できなかった。コード2の使う位置を10回以上変えて実験してみた。1度だけ、微妙にずれ動いたが、その他の9回は、1時間放置しても全く動かなかった。
【0042】
(実験5)
前記実験1の条件の内、3つの孔を間隔5mmに変更した場合の結果は、コード2の使う位置を10回以上変えて実験してみたが、1時間放置しても全く動かなかった。さらに、より長時間の観察を行った。前記実験1の条件の内、湿度が約50%で、室温が外気温度に応じて7度〜15度に変化する雰囲気、という条件で実験を行ったが、10日間放置しても全く動かなかった。
【0043】
(実験6)
前記実験1の条件の内、3つの孔の直径R2を4mmから3.5mmに変更し、間隔を20mmに変更した場合の結果は、コード2の使う位置を10回以上変えて実験してみたが、1時間放置しても全く動かなかった。さらに、より長時間の観察を行った。前記実験1の条件の内、湿度が約50%で、室温が外気温度に応じて7度〜15度に変化する雰囲気、という条件で実験を行ったが、10日間放置しても全く動かなかった。
【0044】
以上の実験から、コード2として直径R1が2mmの円柱状のウレタン無垢長尺材を用いる場合には、孔の直径R2が4mmの場合には、間隔を5mm以下にし、直径R2が3.5mmの場合には間隔を20mm以下にすれば、例えば1年たって、コード2が収縮しても500gの想定最大張力F1を4倍ほど超える2kgの想定外張力F2が加わることは無く、結果として、期間T1(例えば1年)の間にずれは生じないと推定される。
【0045】
実験1乃至実験6から、コード2として直径R1が2mmの円柱状のウレタン無垢長尺材を用いる場合、孔が3つ以上設けられており、孔の直径R2がコード2の直径R1の2倍以下の場合、想定最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かないという条件を満たす直径及び間隔が設定可能であることが解った。
【0046】
(実験7)
室温約20℃、湿度約60%の雰囲気で、厚さ2mmの実験用取付部に、直径R2が4mmの孔を3つ、間隔20mmで設け、外径が1.5mm、ワイヤー芯の直径が1mmのビニールコーティングワイヤー(被覆ワイヤー)のコードを縫うように差し込んで、矢印A方向に2kgの張力を加えた。結果は、コード2の使う位置を10回以上変えて実験してみたが、1時間放置しても全く動かなかった。即ち、コード2として外径が1.5mm、ワイヤー芯の直径が1mmのビニールコーティングワイヤー(被覆ワイヤー)を用いる場合には、孔の直径R2が4mmの場合、間隔20mm以下であれば、ずれは生じない。
【0047】
実験7から、コード2としてビニールコーティングワイヤーを用いる場合、孔が3つ以上設けられており、その形状が円形で、コード2の直径の2.33倍以下の場合、想定最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かないという条件を満たす直径及び間隔が設定可能であることが解った。また、孔の間隔はコード2の直径の13.33倍以下であれば、想定最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かないという条件を満たすのに、好ましいことが解った。
【0048】
なお、同じ、直径のウレタン無垢長尺材、ビニールコーティングワイヤーであっても、表面に潤滑コーティング剤が塗布されている製品もある。このため、取付部5に設ける孔の大きさ(直径)及び間隔は、使用するコード2に想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かないという条件を満たすように、実験的に求めた値に設定される。このように、条件を満たす大きさ及び間隔は、事実、設定可能である。
【0049】
(第1接続部について)
図9(a)(b)に示すように、しなり部6が取付部5と繋がる第1接続部7には、取付部に5取り付けられたコード2に最大張力F1を加えたときに、点線で示す矢印方向に曲がる力がかかる。第1接続部7は、第1接続部7直前のしなり部6に沿う方向(実線で示す矢印方向)に対して取付部5の曲がる角度θ1が、予め定めた角度θmax以上に曲がらない硬さを有している。
【0050】
コード2が細く伸びてしまう力よりも弱い力で引っ張る場合、角度θ1は30度ぐらい、好ましくは5度までの方が良好であった。第1接続部7の硬さが、角度θmaxが0度近くになるような硬さの場合、非常に強く引っ張らないとコード2は滑り始めないか、または、滑らずに切れてしまった。
【0051】
コード2は、孔の開口縁が食い込んでいる間は、しっかり止まっているが、コード2が引っ張られて細くなると、食い込み量が少なる結果、滑り始める。
【0052】
3つ孔を開けた場合、前記理由で角度θ1の許容度は大きくなるが、それでも、45度を超えた角度で引っ張ると滑り始めた。予め定めた角度θmax(例えば5度)以上に曲がらない硬さにすることによって、角度θ1の増加に伴う、孔の開口縁の食い込み量の減少による想定外のコード2のずれを未然に防止することができる。
【0053】
図9(b)は、しなり部6の厚みを均一にした場合の一例を示すが、しなり部6に用いる素材のもつ可撓性強度によっては、第1接続部7、中心部分のしなり方、第2接続部8に求められる要件を満たすことも可能である。
【0054】
(第2接続部について)
図4(a)に示したように、第2接続部8は、しなり部6の撓む方向に直交する向きの幅Wが、W1=3mmから、固着部4の直前約1mm後まで、ほぼ比例して幅約5mmとなっており、その後の約1mmの処でW2=6mmとなだらかに末広がりとなっている。当該構成を採用することによって、図10及び図12に示すように、斜め方向に張力が加えられたときに、固着部4の近くで、第2接続部8が裂けるのを防止する。図11及び図13に示すように、しなり部6が斜め方向に向くように、予め第2接続部8に折れ目を付けておく場合であっても、同様である。
【0055】
(しなり部について)
図14に示すように、可撓性を有しているしなり部6は、第1接続部7で取付部5との繋がり強度を保つだけでなく、ディスプレイ100の側面及び背面の形状に沿ってしなり、その復元力によって、取付部5の3以上の孔に縫うように差し込まれたコード2に張力を与え、保護パネル200のしっかりとした固定を可能にする。また、しなり部6は、第2接続部8でしなることによって、固着部4に加えられる、保護パネル200から剥がれようとする力を軽減する。本実施形態では固着部4の固定方法として両面テープを用いているが、この粘着力が強力な場合、剥がれようとする力を軽減することによって、固着部4が覆物である保護パネル200の縁を物理的に壊す危険性を低減できる。図15に示すように、しなり部6の向きを決めるため、予め第2接続部を直角方向に折り曲げ、折れ目を付けておく場合も同様である。
【0056】
なお、本発明は、説明した実施の形態に限らず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、固着部4の形状は、円形又は楕円形でも良く、固着方法として覆物の縁を挟んでクリップ式で取り付ける金具であっても良い。この場合であっても、しなり部6の働きにより、固着部4が覆物である保護パネル200の縁を壊す危険性を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
被覆物は、ディスプレイを例によって説明したが、これに限定されず、PCモニタ、TVの他、乗り物等、覆物の縁にコードを取り付けることによって覆うことができるものであればよい。被覆物が例えば乗り物の場合、覆物は乗り物カバーになる。また、被覆物が買い物をした時に生じる荷物又は商品箱の場合、覆物は運搬用カバーとなり、コードは取っ手の役割も果たす。
【符号の説明】
【0058】
1 取り付けユニット
2 コード
3 取り付け具
4 固着部
5 取付部
5a、5b、5c 孔
5c 孔の中の部分
5e バリ
6 しなり部
7 第1接続部
8 第2接続部
100 ディスプレイ
200 保護パネル
P1、P2 開口縁

【要約】
【課題】種々の側面及び背面形状の被覆物に覆物を固定する取り付けユニットを提供する。
【解決手段】本発明の取り付けユニット(1)は、被覆物の側面及び背面に廻したコード(2)と、被覆物を覆う覆物にコードを取り付けて縛止する取り付け具(3)とで構成され、コードは可撓性で弾性表面を有し、取り付け具は覆物の縁に固着させる固着部(4)、コードの取付部(5)、固着部及び取付部を繋ぐ柱状又は棒状の可撓性を有しているしなり部(6)で構成され、取付部は板状で、表裏の面を貫き、表裏の面に対して角張った開口縁の2以上の孔を有し、2以上の孔は、差し込まれたコードに想定する最大張力F1を加えても予め定めた期間T1以上ずれ動かないという条件を満たす大きさ及び間隔で設けられている、ことを特徴とする。当該構成により、コードを長さ調節可能な状態で、種々の側面及び背面形状の被覆物に覆物を縛止できる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16