(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、床下空間の空気を利用して、建築物の床上空間の換気と空調とを実現しうる換気空調システムに利用されるチャンバーボックスを提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基礎と地面と床とで囲まれた床下空間と、その上方の床上空間とを具えた建築物の換気空調システム
であって、チャンバーボックスと、前記チャンバーボックス内の空気を、前記床上空間に供給しうる給気装置とを含み、前記チャンバーボックスは、前記床下空間の空気を取り込む第1導入口を有する第1空間と、空気調和機によって空調された空気が導入される第2空間と、前記第1空間と前記第2空間とを連通又は遮断する開閉部と、前記第1空間に設けられた排気口とを有
し、前記空気調和機は、前記第2空間の中に収容されており、前記第2空間には、前記床上空間の空気を取り込むための床上空気導入口が設けられており、前記第2空間は、前記空気調和機が停止状態の時において、前記床上空気導入口から取り込まれた前記床上空間の空気を、前記第1空間に供給可能であり、前記給気装置は、前記排気口から供給される前記第1空間の空気を清浄化する空気浄化装置を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様では、前記床上空気導入口は、前記空気調和機の直上ではなく、水平方向にずれた位置に設けられていても良い。
【0010】
本発明の他の態様では、前記第2空間には、前記床上空間の空気と、前記空気調和機の排気部から吹き出される空調された空気との混合を防止するための遮蔽部がさらに設けられていても良い。
【0011】
本発明の他の態様では、略箱状をなし、上側の壁部には、脱着自在な蓋部が設けられていても良い。
【0012】
本発明の他の態様では、前記第1空間及び前記第2空間の壁面には、断熱材が配されていても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、基礎と地面と床で囲まれた床下空間と、その上方の床上空間とを具えた建築物の換気空調システムに用いられるチャンバーボックスである。
【0014】
前記チャンバーボックスは、床下空間の空気を取り込む第1導入口を有する第1空間と、空気調和機によって空調された空気が導入される第2空間と、前記第1空間と前記第2空間とを連通又は遮断する開閉部とを含むとともに、前記排気口が前記第1空間に開口していることを特徴とする。
【0015】
このようなチャンバーボックスは、床上空間に、「地面と熱交換した空気」、又は、「地面と熱交換した空気と、空気調和機によって空調された空気との混合空気」を選択的に供給可能である。
【0016】
上述のように、床下空間の空気の温度は、夏期では外気よりも低く、冬期では外気よりも高い。従って、例えば、空気調和機を積極的に使用するまでもない時期では、開閉部を切り替えて、チャンバーボックス内の第1空間と第2空間とを遮断することが望ましい。これにより、第1空間に導入されている床下空間の空気が、床上空間に供給され得る。これにより、地面と熱交換した床下空間の空気を利用して、建築物の床上空間の換気と空調とが同時に実現される。
【0017】
他方、夏期及び冬期では、チャンバーボックスの開閉部を切り替えて、第1空間と第2空間とを連通させることが望ましい。これにより、第1空間において、床下空間の空気と空気調和機でより積極的に空調された空気とが混合されて、床上空間に供給される。これにより、換気を行いながらより快適な空調を実現することができる。この場合において、換気には、床下空間の空気が利用されるため、それ以外の外気が直接導入される場合に比して、換気による温度変化をより小さく抑えることができる。また、副次的効果として、換気用の外気を導入する経路に、別途、熱ロスを防ぐ熱交換器ユニット等の設置を省略することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態の換気空調システム1が適用された建築物2の断面図が概念的に示されている。
図1に示されるように、本実施形態では、建築物2として、住宅Hが示されている。空調効果を高めるために、住宅Hは、優れた断熱性能、遮光性能及び気密性能を具えた工業化住宅であるのが望ましい。
【0020】
住宅Hは、床下空間3と、床上空間4とを具えている。床下空間3は、基礎5と地面6と床7とで囲まれた非居住空間である。床上空間4は、床下空間3の上方に設けられた空間であり、本実施形態では、複数の居室空間4A乃至4Cと、洗面室、トイレ等の非居室空間4Dとに区画されている。
【0021】
換気空調システム1は、外気を床下空間3に導入するための基礎給気口8と、床下空間3に配されたチャンバーボックス9と、チャンバーボックス9内の空気を床上空間4に供給しうる給気装置10とを含んでいる。本実施形態の換気空調システム1では、さらに、集熱装置22を含むものが示されているが、この装置は、任意の要素である。
【0022】
基礎給気口8は、基礎5の立ち上がり部に設けられた一つの開口である。この基礎給気口8を介して、外気が床下空間3に取り込まれる。本実施形態では、床下空間3に積極的に外気を導入するために、基礎給気ファン11が、例えば、基礎給気口8の近傍に設けられている。基礎5は、発泡樹脂等の断熱材により、外気から断熱されていることが望ましい(図示省略)。
【0023】
床下空間3に供給された外気は、床下空間3の地面6を介して、地冷熱と熱交換する。これにより、床下空間3の空気は、夏期には外気よりも低く、冬期には外気よりも高い温度を持ち得る。床下空間3の地面6は、例えば、土間コンクリート等で仕上げられている。
【0024】
図2には、チャンバーボックス9の一例が、拡大して示されている。なお、
図1のチャンバーボックス9は、概念的に示されたものであるから、
図2に示されているチャンバーボックス9とは必ずしも一致していない。
図2に示されるように、チャンバーボックス9は、略箱状であり、第1空間9Aと、第2空間9Bと、これらの間に設けられた開閉部9Cとを含んでいる。このチャンバーボックス9は、床上空間4に供給するための空気を蓄える空間として用いられる。
【0025】
第1空間9Aは、チャンバーボックス9の水平方向の一端側に設けられている。第1空間9Aは、床下空間3内に完全に収容されている。第1空間9Aを区画するチャンバーボックス9の壁面には、断熱材12が配されている。これにより、第1空間9Aは断熱され、外部への熱の散逸を防止することができる。
【0026】
第1空間9Aには、床下空間3の空気を取り込むための第1導入口13が設けられている。従って、第1空間9Aには、第1導入口13から床下空間3の空気(即ち、地冷熱と熱交換された外気)が導入される。この例では、第1導入口13は、第1空間9Aの上面側に設けられているが、その位置は任意に定めることができる。本実施形態では、第1導入口13には、開閉部30が設けられている。開閉部30は、例えば、電気制御可能なダンパーであって、通常は、第1空間9Aと床下空間3とが連通するように開いている。
【0027】
第1空間9Aには、さらに、集熱装置22で温められた外気を取り込むための第2導入口19が設けられている。従って、第1空間9Aには、集熱装置22で温められた外気を取り込むこともできる。本実施形態では、第2導入口19には、開閉部21が設けられている。開閉部21は、例えば、電気制御可能なダンパーであって、通常は、第1空間9Aと集熱装置22との間が遮断されるように閉じている。一方、集熱装置22からの空気をチャンバーボックス9の第1空間9Aに取り込む場合、例えば、開閉部21を操作して第2導入口19が開く。この場合、第1導入口13は、開閉部30を操作して閉じられても良い。
【0028】
また、第1空間9Aには、その中の空気を排出するための排気口14が設けられている。排気口14は、例えば、第1空間9Aの側面に設けられている。排気口14には、給気装置10のダクト10Aの一端10Aiが接続されている。これらについては、後で詳述する。
【0029】
第2空間9Bは、チャンバーボックス9の水平方向の他端側に設けられている。本実施形態では、第2空間9Bを区画する上側の壁部17は、床7に設けられた開口部7aから床上空間4に露出している。上側の壁部17には、例えば、脱着自在な蓋部15が設けられているのが望ましい。この蓋部15を取り外すことにより、チャンバーボックス9内の点検やメンテンナンスが床上空間4側から容易に行える利点がある。
【0030】
第2空間9Bには、空気調和機(エアコン)16が収納されている。空気調和機16を収容するために、第2空間9Bは、例えば、第1空間9Aよりも大きい容積を有するものとして構成されている。
【0031】
本実施形態の空気調和機16は、一般的な家庭用のセパレート型エアコンであり、その室内機が第2空間9Bに配置されている。室外機(図示省略)は、建築物2の外部に設置されている。空気調和機16は、空気を吸い込む吸気部16aと、内部で冷媒と熱交換された空気を排気する排気部16bとを有している。従って、空気調和機16を運転することにより、第2空間9Bには、空調された空気が導入される。第2空間9Bを区画するチャンバーボックス9の壁面にも、断熱材12が配されているのが望ましい。これにより、第2空間9Bは断熱され、熱の流出入を防止することができる。
【0032】
本実施形態では、チャンバーボックス9の第2空間9Bに、床上空間4の空気を空気調和機16の吸気部16aへ供給するための床上空気導入口18が設けられている。床上空気導入口18は、チャンバーボックス9の上側の壁部17に、例えば、吸い込みグリルとして設けられている。これにより、床上空間4の空気が、この床上空気導入口18を介して、第2空間9Bの空気調和機16の吸気部16aへと供給される。これは、居室等に比べて小さい空間である第2空間9B内での空気調和機16のショートサーキットを防止するのに役立つ。このような作用をより確実に発揮させるために、床上空間4の空気と、空気調和機16の排気部16bから吹き出される空調された空気との混合を防止するための遮蔽部40がさらに設けられても良い。
【0033】
遮蔽部40は、例えば、動作制御可能なダンパーからなり、空気調和機16の吸気部16aと排気部16bとを遮断する遮断位置と、吸気部16aと排気部16bとを連通させる連通位置とに切換え可能に構成されている。
【0034】
第1空間9Aと第2空間9Bとの間には、開閉部9Cが設けられている。開閉部9Cによって、第1空間9Aと第2空間9Bとは、相互に連通するか又は遮断される。開閉部9Cは、例えば、電気制御によって作動するダンパー等が好適に用いられ、図示しない制御装置等によって、その動作位置が切り替えられる。
【0035】
開閉部9Cが遮断位置に切換えられている場合、第1空間9Aと第2空間9Bとは、それぞれ独立した2つの空間を構成する。この場合、チャンバーボックス9の第1空間9Aには、「地面6と熱交換した床下空間3の空気」のみが供給される。一方、開閉部9Cが連通位置に切換えられている場合、第1空間9Aと第2空間9Bとは、相互に連通した実質的に一つの空間を構成する。この場合、チャンバーボックス9の第1空間9Aには、空気調和機16が運転されていると、「地面6と熱交換した床下空間3の空気」と、「空気調和機16によって空調された空気」との「混合空気」が供給される。
【0036】
図1に示されるように、給気装置10は、ダクト10Aと、給気用のファン10Bと、空気浄化装置10Cとを含んでいる。
【0037】
ダクト10Aは、一端10Aiがチャンバーボックス9の排気口14に接続されかつ他端10Aoが床上空間4の各居室空間4A、4B及び4C並びにトイレや洗面室などの非居室空間4Dの天井部分に位置している。ダクト10Aの各他端10Aoは、それぞれ、通過する風量を調節可能なダンパー20を介して、各居室空間4A、4B及び4C並びにトイレや洗面室などの非居室空間4Dに連通している。また、本実施形態では、ダクト10Aとして、1階用と2階用の2系統が設けられているが、これらを集約して一つの系統とされても良い。
【0038】
給気用のファン10Bは、ダクト10Aの一端10Aiと他端10Aoとの間に設けられている。ファン10Bは、ダクト10Aの一端10Aiから他端10Aoに向かう強制的な空気の流れを生成する。従って、ファン10Bを運転することにより、チャンバーボックス9の第1空間9A内の空気は、排気口14から、ダクト10Aの他端10Aoへと送給される。
【0039】
空気浄化装置10Cは、例えば、ダクト10Aの一端10Aiと他端10Aoとの間に設けられており、本実施形態では、ファン10Bの上流側に設けられている。空気浄化装置10Cは、ダクト10A内の空気から花粉、微粒子状物質、塵埃等を除去するものであれば、種々の形式のものが採用できる。
【0040】
この実施形態では、ファン10B及び空気浄化装置10Cは、いずれも、床下空間3に配置されている。これにより、床上空間4のスペースの有効活用が可能になる。
【0041】
さらに、本実施形態の換気空調システム1には、集熱装置22が設けられている。集熱装置22は、自然エネルギーを利用した空気集熱式のもので、例えば、屋根に設けられた集熱部22aと、集熱部22aで温められた外気をチャンバーボックス9の第1空間9Aに供給するダクト22bとを含んでいる。
【0042】
集熱部22aは、屋根との間に外気を導入可能に設置されたガラス集熱部を具えている。ガラス集熱部から透過する太陽光によって、前記外気が温められる。この外気は、ダクト22bを介して、チャンバーボックス9へと送られる。
【0043】
ダクト22bは、一端が集熱部22aに連通するとともに、他端がチャンバーボックス9の第1空間9Aに設けられた第2導入口19(
図2に示す)に接続されている。図示していなが、ダクト22bの途中に、その一端から他端に向かう空気の流れを積極的に生成するために、ファンが設けられても良い。
【0044】
以上のように構成された本実施形態の換気空調システム1によれば、床上空間4の換気を行うことができる。この場合、例えば、チャンバーボックス9の開閉部9Cが遮断位置に切換えられ、第1空間9Aと第2空間9Bとを遮断して、給気装置10のファン10Bが運転される。
【0045】
即ち、チャンバーボックス9の第1空間9Aの空気は、排気口14からダクト10A、空気浄化装置10Cを経由して清浄化された後、ダンパー20を介して、各居室空間4A乃至4C等の床上空間4に供給される。また、供給された外気の量に応じて、例えば、床上空間4の空気は、床上空間4に設けられた排気用のファン50によって屋外へと排出される。チャンバーボックス9の第1空間9Aには、第1導入口13から床下空間3の空気(外気)が導入されている。従って、このような運転により、各居室空間4A乃至4Cや非居室空間4D等の床上空間4が清浄化された外気で換気される。
【0046】
また、床下空間3で地面6と熱交換した空気の温度は、上述の通り、夏期では外気よりも低く、冬期では外気よりも高い。従って、空気調和機を積極的に使用するまでもない夏期又は冬期の初期段階では、床下空間3の空気を活用することで、空気調和機16を使用することなく床上空間4の温度調節(少し冷やす又は少し暖める)ことが可能になる。従って、空調コストを低減することができる。
【0047】
夏期及び冬期では、チャンバーボックス9の開閉部9Cを連通位置に切り替えて、第1空間9Aと第2空間9Bとを連通させることが望ましい。これにより、第1空間9Aにおいて、床下空間3の空気と、空気調和機16の冷房又は暖房運転でより積極的に空調された空気とが混合される。そして、この混合空気が給気装置10によって床上空間4に供給される。これにより、換気を行いながらより積極的に床上空間4の空調を実現することができる。
【0048】
しかも、前記混合空気には、換気用の外気として、床下空間3の空気が利用されるため、床下空間3以外の外気が直接導入される場合に比して、換気による温度変化をより小さく抑えることができる。また、副次的効果として、例えば、換気用の外気を導入する経路に、別途、熱ロスを防ぐ熱交換器ユニット等の設置を省略することもできる。
【0049】
また、空気調和機16が停止状態の時、例えば、遮蔽部40を開放することで、床上空間4の空気の一部を、チャンバーボックス9を経由して給気装置10に送ることができる。この場合、床上空間4を循環させながら、浄化することもできる。
【0050】
さらに、冬期では、床下空間3の空気よりも、集熱装置22で温められた外気の方が高温になることがある。このような場合には、第1導入口13が開閉部30で閉じられる一方、第2導入口19が開閉部21で開かれる。これにより、チャンバーボックス9の第1空間9Aには、床下空間3の空気に代えて、集熱装置22で温められたより高温の外気が導入される。従って、換気をしながら、自然エネルギーだけを利用して、床上空間4をより高い温度に調節することができる。
【0051】
図示していないが、本実施形態の換気空調システム1には、例えば、各居室空間4A乃至4Cに人感センサーや温度センサーが設けられても良い。そして、これらのセンサーの検知信号に基づいて、各ダンパー20の風量を個別に調節することもできる。
【0052】
図3には、他の実施形態のチャンバーボックス9の断面図が示されている。
図3において、
図2の実施形態と共通する要素については、同一の符号が付されている。この実施形態のチャンバーボックス9の遮蔽部40は、空気調和機16の排気部16bの上側に設けられた第1遮蔽部40aと、排気部16bの下側に設けられた第2遮蔽部40bとを含んでいる。これらの第1遮蔽部40a及び第2遮蔽部40bは、好ましくは、断熱材で覆われている。
【0053】
以上の遮蔽部40により、チャンバーボックス9の図において開閉部9Cよりも右側の空間は、空気調和機16の排気部で空調された空気のみが導入される第2空間9Bとしての空調空気領域9B1と、床上空間4の空気が存在する床上空気領域9B2とに区分される。そして、空気調和機16は、実質的に、その排気部16bのみが第2空間9Bに露出し、それ以外の部分は、床上空気領域9B2に露出している。このようなチャンバーボックス9では、空気調和機16を吸気部16aの温度の空気に曝すことができる(換言すれば、排気部16bのみを第2空間に露出させる)ので、例えば、空気調和機16に内蔵されている温度センサーが有効に活用され得る。もし、空気調和機16の温度センサーが、第2空間9Bの温度の影響を受けると、意図しない運転になるおそれがある。
【0054】
さらに、この実施形態では、床上空気導入口18が、空気調和機16の直上ではなく、水平方向にずれた位置に設けられている。これにより、屋内側からの水滴等の落下から、空気調和機16を保護することができる。
【0055】
以上本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。