【文献】
Pergamum Announces Final Data from Phase I/II Study in Patients with Chronic Leg Ulcers,2013年10月10日,URL,https://www.promorepharma.com/en/pergamum-announces-final-data-from-phase-iii-study-in-patients-with-chronic-leg-ulcers/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
ヒトLL−37のアミノ酸配列を、以下の配列番号1に示す。
LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES [配列番号1]
【0020】
LL−37は、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えばカリウムおよびナトリウム)およびアルカリ土類金属カチオン(例えばカルシウムおよびマグネシウム)の塩、アンモニウム塩またはN−メチルグルカミン−(メグルミン)のような水溶性アミン付加塩ならびに低級アルカノールアンモニウム塩および薬学的に許容される有機アミンの他の塩基塩を含む、薬学的に許容される塩基付加塩の形で用いられる。LL−37は、酢酸塩の形で使用される。
【0021】
本発明の方法/使用は、HTH潰瘍、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍および圧迫潰瘍を含む慢性潰瘍の治療に特に有用である。特に言及される潰瘍には、DFU、特に、VLUのような下腿潰瘍が含まれる。
【0022】
以下に記載されているように、本明細書に例示されている特定の製剤において、用いられた特定の媒体1mL当たり0.5mgの濃度のLL−37は、3日毎に潰瘍に適用される場合に、創傷面積1cm
2当たり約13μgの有効用量のLL−37をもたらすと算出された。1.6mg/mLの濃度は、40μg/cm
2の有効用量を与える。しかし、3.2mg/mLの濃度は、80μg/cm
2となり、臨床的利益を全く生み出さなかった。
【0023】
よって、潰瘍を治療するために創傷面積1cm
2当たりに適用されるLL−37の用量は、LL−37が、約40μgから約80μgの範囲内の値未満(言い換えれば、LL−37が、約40μgから約80μgの間である値未満)であり得る。潰瘍に適用されるLL−37の用量の適した上限は、創傷面積1cm
2当たりに適用されるLL−37が、約75μgであり、約70μg/cm
2のような値、例えば約65μg/cm
2または60μg/cm
2、約55μg/cm
2など、約50μg/cm
2または約45μg/cm
2のような値であり得る。創傷面積1cm
2当たりに適用されるLL−37の適した下限は、約1μgであり、約3μgのような値、約5μgなど、約10μg/cm
2のような値、例えば約15μg/cm
2または20μg/cm
2,約25μg/cm
2など、約30μg/cm
2または約35μg/cm
2のような値であり得る。
【0024】
本発明者らは、VLUおよびDFUのような慢性潰瘍が、3日毎に適用される場合の、創傷面積1cm
2当たりに適用される約80μg未満の用量のLL−37によって、効果的に治療されることを見出した。これは、各治療日につき創傷面積1cm
2当たりに適用される約26.7μgのLL−37に相当する。
【0025】
「治療1日につき創傷面積1cm
2当たり約26.7μg未満であるLL−37の用量をもたらす医薬製剤」とは、本発明者らは、
(i)製剤が、以下の性質を有する;および/または
(ii)製剤の適用頻度が、以下のようなものである
ことを含意または意味する:
潰瘍を治療するために創傷部位において働くLL−37の量は、各治療日につき創傷面積1cm
2当たり約26.7μgを超えない。
【0026】
明瞭に述べると、以下に例示されている特定の製剤において、用いられた特定の媒体1mL当たり0.5mgの濃度のLL−37は(すなわち、以下に記載されている特定の医薬製剤)、3日毎に適用される場合に、創傷面積1cm
2当たり約13μgの有効用量のLL−37をもたらした。これは、各治療日につき創傷面積1cm
2当たり約4.3μgのLL−37に相当する。同様に、1.6mg/mLの濃度は、各日につき13.3μg/cm
2の有効用量を与える。しかし、3.2mg/mLの濃度は、各日につき26.7μg/cm
2となるが、臨床的利益を全く生み出さなかった。
【0027】
この点において、より高い頻度で(例えば毎日)適用される場合には、用いられる同じ特定の媒体1mL当たり、LL−37が約0.5mg未満である濃度が、創傷部位においてより多くのLL−37が、潰瘍を治療するために働くので、臨床的利益をもたらすことが予測される。同じことが、同じ特定の媒体からなる約3.2mg/mL以上の濃度にも当てはまり、3日毎よりも低頻度で適用される。
【0028】
同様に、異なる製剤(例えば、より長期放出および/または徐放性製剤)が用いられる場合には、いずれの時点においても潰瘍を治療するために働くLL−37の量は、以下に具体的に例示されている製剤における場合よりも少ない。この結果、創傷部位においてより少ないLL−37が、いずれの投与時間でも潰瘍を治療するために働くことになる。よって、類似の量のLL−37が、創傷部位においていずれの投与時間でも潰瘍を治療するために働くことを保証するために、初期にはより高濃度のLL−37が、そのような製剤中に使用される。そのような製剤も、同じ効果を生み出すために、低頻度で適用される。
【0029】
本発明のさらなる態様によると、慢性潰瘍の治療の方法であって、
(a)LL−37および1つまたはそれ以上の薬学的に許容される賦形剤または担体系を含む医薬製剤の、前記潰瘍への局所適用;ならびにその後の
(b)ドレッシングの適用
を含み、
前記製剤の前記適用は、前記潰瘍を治療するために各治療日につき創傷面積1cm
2当たりに適用されるLL−37が約26.7μg未満であるLL−37の用量(例えば、約13.3μgから約26.7μgの間である値未満である用量)を創傷部位にもたらす、前記方法が提供される。
【0030】
本発明の方法に用いられる医薬製剤を、潰瘍への(本明細書に定義されているような)直接局所適用のために製剤化することができる。そのような製剤の非限定例は、液体または半固形製剤であり、任意の液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、ゲル剤またはローション剤を含み、ただし、それを適用した後、密着した状態で、創傷部位に物理的にとどまることができるほど、それは、室温(例えば約20℃から約25℃の間)でおよび大気圧(例えば約1気圧)で、十分に粘性である。
【0031】
液体または半固形製剤は、例えば、重力の影響下で、室温でおよび大気圧で、粘性であるべきであり、つまり、完全には自由流動性であるべきではない。しかし、それは、室温および大気圧下で実質的に固体状態であるために、普通のおよび/または適度な指圧で、適切な医療器具を使用して、例えばそれを創傷に塗り広げるなどの取り扱いができないほど粘性であるべきでもない。製剤は、単位創傷面積当たりの規定用量を送達するために、適切なスプレー(例えばポンプ作用またはエアロゾル)デバイスを使用して噴霧することによって、創傷に適用することもできる(例えば、国際特許出願WO2011/056116を参照のこと)。
【0032】
それ故に、製剤に適した粘度は、用いられる添加剤によって決まるが、約1から約100Pa・sの範囲であり、約50Pa・sのような値、例えば約25Pa・s、約15または約10Pa・sなどの値であり得る。前述の粘度値は、標準的な粘度計またはレオメーターによって測定されるような、室温(上記で定義されている)および大気圧(上記で定義されている)における動粘度である。
【0033】
LL−37を潰瘍に適用するために使用される医薬製剤は、水性溶液を含む。水性溶液は、(pH、イオン強度、等張性などに関して)生理学的にまたは薬学的に許容される性質を有する溶液である。例えば、水および他の生体適合性の溶媒を含む等張性溶液、生理食塩水およびグルコース溶液のような水性溶液ならびにハイドロゲル形成材料が用いられる。水性溶液は、例えば、酢酸塩緩衝剤で緩衝化することができる。
【0034】
医薬製剤は、微生物の増殖を防ぐための保存剤、酸化防止剤、張性改変剤(tonicity−modifying agent)、着色剤などのような、薬学的に許容される添加剤も含み得る。水性懸濁剤において、組成物は、懸濁化剤および安定化剤と組み合わせることができる。
【0035】
本発明の一態様では、LL−37を、水性溶媒(例えば、水または酢酸緩衝液)中に溶かし、適切な増粘剤を加えて、粘性の、塗り広げられる水性軟ゲル剤、クリーム剤またはローション製剤を作成する。
【0036】
LL−37は、水性溶液中に製剤化される場合、上記のように、十分な粘度を有するクリーム剤、ゲル剤またはローション剤を得るために、増粘剤とともに製剤化することもできる。ハイドロゲル形成材料を含む適した薬剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマーブロックコポリマーなどのような合成ポリマー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースなどを含むセルロースエーテルのような半合成ポリマー;アカシア、カラギーナン、キトサン、ペクチン、デンプン、キサンタンガムなどのような天然ゴムを含む。言及されているそのような材料は、医薬品グレードのポリビニルアルコール(例えば、約70から約99%の範囲(例えば、約85から約89%の間)の加水分解度および約15,000から約130,000の範囲の分子量を有する)を含む。
【0037】
生体付着性および/または粘膜付着性である製剤を使用することは有利であり得る。
【0038】
しかし、当業者は、本明細書に提示されている関連情報を入手すれば、創傷の単位面積当たりに適用されるべきLL−37の最大量(治療1日についての最大量を含む)に関して、通常の技術を使用して、用いられる添加剤(すなわち賦形剤、担体、増粘剤および他の成分)について、単位創傷面積当たり(1日につき)の用量が適切となり得るように、その特定の製剤中に使用されるLL−37の正確な濃度について確かめることができることを理解することが重要である。
【0039】
例えば、製剤は、LL−37活性について、バイオアッセイを用いて試験し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のLL−37と比較することができる。バイオアッセイは、抗菌アッセイまたは真核細胞株の応答に基づいたアッセイであり得る。生物学的効果がPBS中のLL−37の特定の濃度(例えば10μg/ml)の効果に等しい、検討される製剤中のLL−37の濃度を使用して、用量ファクターを計算することができる。例えば、PBS中の約10μg/mlのLL−37と同じ生物学的効果を達成するために、検討される製剤中で約20μg/mlの濃度のLL−37が必要とされる場合には、約2という用量ファクターを導くことができ、それを使用して、製剤中のLL−37の濃度を2倍にすることで、創傷面積当たり、所望の用量のLL−37を送達することができる。
【0040】
当業者によって認識されているように、用いられる1つまたはそれ以上の添加剤がLL−37と相互作用して、LL−37を露出させる、製剤から創傷部位へのLL−37の放出を実質的に防ぐおよび/または相乗効果をもたらす場合には、上記の一般的な通常の技術が適用できないため、結果的に、治療1日につき単位創傷面積当たり、前述の範囲外のLL−37の用量となる。他方では、添加剤が製剤からのLL−37の持続放出を可能にする場合には、上記のように、用いる濃度を計算する際に、このことを考慮に入れるべきである。
【0041】
本発明の方法/使用において、本明細書に記載されているようなLL−37を含む医薬製剤は、上記のように、最初に、潰瘍に直接(すなわち中間工程なしに)および局所適用される。製剤の適用に続いておよびそれに対して別個に、ドレッシングが別個に適用される。その後のおよび別個のドレッシングの適用は、例えば、(創傷組織にLL−37の結合を可能にするために)LL−37を含む医薬製剤の適用を、約10分のような約5分以上の時間行うことができるが、約30分のような約20分以下の時間で行うこともできる。
【0042】
用いられるドレッシング材は、不活性な(すなわち、実質的に非毒性の)材料であり得、創傷ケアにおける使用に適したおよび/または創傷治癒過程を助ける(例えば、加速する)および/または創傷の感染を防ぐことができる材料であり得る。例えば、ドレッシングは、上皮の再生ならびに/または創傷上皮および/もしくは創傷間質の治癒の能力を高めることができる。一実施形態では、創傷ケア製品は、上皮および/または間質細胞の増殖を高めることができる。
【0043】
ドレッシングは、創傷の滲出液を吸収することもできる。
【0044】
それ故に、ドレッシングは、アルギン酸塩、シートハイドロゲル、ハイドロファイバー、フォームおよびそれらの混合物からなる群から選択される材料を含み得る。
【0045】
創傷の滲出液を吸収することができる追加的なドレッシングは、親水コロイド、コラーゲンベースの材料、ヒアルロン酸ベースの材料、デキストリノマー、デキストリノマー/カデキソマーおよび酸化再生セルロースを含む。
【0046】
ドレッシングは、典型的には、固体乾式不織布シート(または「フェルト」)、凍結乾燥シート、リボンまたはロープの形で提供され、滲出液が非常に多い創傷を治療するのに特に適している。
【0047】
例示的な市販のアルギン酸塩ベースの材料は、Suprasorb(登録商標)(Sammons Preston、USA)およびKaltostat(登録商標)(ConvaTec、UK)を含む。
【0048】
ドレッシングは、シートハイドロゲルを含み得るまたはそれからなり得る。そのような創傷ケア材料は、滲出液がない創傷を治療するのに特に適している。適したシートハイドロゲルは、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマーブロックコポリマーなどのような合成ポリマー;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロースおよびエチルヒドロキシエチルセルロースなどを含むセルロースエーテルのような半合成ポリマー;アカシア、カラギーナン、キトサン、ペクチン、デンプン、キサンタンガムなどのような天然ゴムならびにアルギン酸塩からなる群から選択される、1つまたはそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーを含み得る。
【0049】
例示的な市販のシートハイドロゲルは、Elastogel(登録商標)(Southwest Technologies Inc.、USA)およびSuprasorb(登録商標)G(Sammons Preston、USA)を含む。
【0050】
さらなる選択肢として、ドレッシングは、ハイドロファイバーを含み得るまたはそれからなり得る。そのようなドレッシングを含む創傷ケア製品は、典型的には、乾式不織布シート、凍結乾燥シートまたはリボンもしくはロープの形で提供され、滲出液が少量から多量の創傷または乾燥域および湿潤域の両方を有する創傷に使用するのに特に適している。
【0051】
適したハイドロファイバーは、カルボキシメチルセルロースを含み得るまたはそれからなり得、Aquacel(登録商標)およびVersiva(登録商標)(両方ともConvaTec、UK)ならびにSolvaline(登録商標)N(Activa Healthcare、UK)を含む。
【0052】
さらなる選択肢として、ドレッシングは、Allevyn(登録商標)製品系列(Smith & Nephew、UK)、Mepilex(登録商標)、(Moelnlycke、Sweden)およびTegaderm(登録商標)(3M、UK)のようなポリウレタンフォームを含み得るまたはそれからなり得る。
【0053】
使用の前に、医薬製剤およびドレッシングを滅菌し、微生物不透過性容器の中にパッケージすべきである。滅菌は、無菌製造および/または照射による最終(すなわち、製造後)滅菌のような、当技術分野においてよく知られている技術を使用して達成される。
【0054】
上述のように、ドレッシング材は、不活性であるべきであり、したがって、LL−37と何らかの形で相互作用して、例えば、それを化学的にまたは物理的に劣化させるべきではない。
【0055】
それ故に、ドレッシングは、同様にまたはあるいは、合成ポリマー、デンプンおよび/または多糖類を含み得る。例えば、ドレッシングは、水性ポリマーマトリックス、セルロース誘導体、アクリレートコポリマー、ゴム、多糖および/またはポリ乳酸ポリマーを含み得る。そのような材料は、水溶性であり得るおよび/または有孔性であり得る。
【0056】
本発明の方法/使用において、LL−37を含む製剤は、上記のように、正確な投与量で潰瘍に直接適用され、その後、治療された創傷領域を覆うためにドレッシングが適用される。
【0057】
場合により、第2の従来のドレッシングが、第1のドレッシングの最上部を覆って適用される。さらに、ある場合には、透過性の非付着性ドレッシングが、潰瘍とドレッシングとの間のいずれかの場所に適用される。
【0058】
ドレッシングの適用後、有利には、Cellona(登録商標)(Activa、UK)またはSoffban(登録商標)(Smith & Nephew、UK)のような延性、柔軟性および吸収性のクッション、Comprilan(登録商標)(Smith & Nephew)のような圧縮包帯および/またはZipZoc(登録商標)(Smith & Nephew)のような医療用ストッキングを含む、適切な圧迫手段が適用される。
【0059】
当業者であれば、本発明の方法/使用を実施する前に、死滅、損傷または感染した組織を除去し(デブリードマン)、適切な医療処置(消毒薬)を使用して、いずれの感染組織も治療し、適切な洗浄剤(例えば、水)を使用して、創傷領域を洗浄し、例えばガーゼを使用して、それを乾燥させることが必要であり得ることを認識している。掻爬術を前もって行うことも有り得る。
【0060】
その上、および有利には、製剤および/またはドレッシングはまた、創傷環境における微生物の増殖を防ぐ、停止する、減じる、またはそれ以外の場合、減少させることができる。それ故に、本発明の方法/使用において使用される製剤は、抗菌物質、例えば、デフェンシン、グラミシジンS、マゲイニン、セクロピン、ヒスタチン、ヒファンシン(hyphancin)、シンナマイシン、ブルホリン1(burforin 1)、パラシン1、プロタミンならびに親タンパク質の抗菌活性の少なくとも一部を保持するその断片、変異体および融合体からなる群から選択されるポリペプチド;ならびに銀、スルファジアジン銀、ポリヘキシニド、ヨウ素またはメトロニダゾールをさらに含み得る。
【0061】
本発明の方法/使用において、製剤、ドレッシングおよび/または圧迫手段は、治癒過程を助けるためおよび感染を防ぐために、一定の間隔で、創傷上で取り換えられるべきであることが認識される。
【0062】
「約」という語が本明細書において用いられる場合はいつでも、特に、製剤中のLL−37の用量および濃度、タイミング、粘度、用量ファクター、加水分解度、分子量などを含む量に関する状況では、そのような変数は、近似であり、したがって、本明細書において明記されている数から±10%、例えば±5%、好ましくは±2%(例えば±1%)変化し得ることが認識される。
【0063】
本発明の方法/使用は、製造するのが容易で安価であり、VLU、DFUなどを含む慢性創傷の効果的な治療を可能にする創傷ケア手段を提供する。
【0064】
本発明の方法/使用はまた、確立された医薬加工処理方法の使用を利用し、食品もしくは医薬品、医療用デバイス製品における使用を承認されている材料または同等の規制状態の材料を利用するという利点を有する。
【0065】
本発明の方法/使用はまた、VLU、DFUのような慢性創傷の治療のためであろうと、そうでなかろうと、先行技術において知られている類似の方法と比較して、より有効であり、発生する副作用がより少なく、より良好な患者許容性を有し、より良好な薬物動態プロフィールを有し、および/または他の有用な薬理学的、物理的または化学的性質を有することがあるという利点を有し得る。
【0066】
本発明は、以下の実施例によって、添付の
図1を参照して説明される。
図1は、HTH VLUに異なる濃度のLL−37を含む製剤を適用することによる、創傷治癒率の「折れ棒」解析からの推定値を示す図であり、実線はプラセボ群を表し、大きい破線は3.2mg/mL群を表し、より小さい破線は1.6mg/mL群を表し、点線は0.5mg/mL群を表す。
【実施例】
【0067】
HTH VLUを対象としたLL−37の二重盲検、無作為化、プラセボ対照、安全性およびパイロット用量反応試験
二重盲検、無作為化、プラセボ対照、第I/II相安全性およびパイロット用量反応試験を、ヒト対象について行った。最初の対象は2012年8月に登録され、最後の対象は2013年4月に完了した。
【0068】
本試験は、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)における、医薬品の臨床試験の実施に関する基準(GCP)の三極合意事項に基づくガイドライン、適用される現地規制およびヘルシンキ宣言において策定された倫理的原則に従って、デザイン、実施および報告され、スウェーデンの3施設にわたって行われた。
【0069】
選択基準
試験対象は、VLUまたは静脈成分優位性の静脈性−動脈性混合型潰瘍を有する、少なくとも18歳の男性対象または閉経後もしくは臨床的不妊症の女性を含んだ。
【0070】
除外基準は、5年以上寛解状態にあるのでない限り、対象が、標的潰瘍内にVLU以外の既知の主要病因を有する場合および悪性疾患(基底細胞癌を除く)を有する場合を含んだ。
【0071】
必要な規制当局(Swedish Medicinal Products Agency(MPA)の承認および倫理的な(地域の倫理委員会)承認ならびに文書によるインフォームドコンセントを得た後、合計56名の対象がスクリーニングのために来院し、その後、3週間の非盲検導入期に参加した。
【0072】
30cm
2を超えるおよび2cm
2未満の面積を有する標的創傷を、当初は除外した。しかし、含有率を増加させ、総試験時間を減じるために、対象21名の無作為化後に基準を修正し、40cm
2を超えるおよび1cm
2未満の面積を除外した。適格な対象が、参加基準を満たす2つ以上の創傷を有した場合には、試験責任医師が、標的創傷として最も適切なサイズ、形状および位置を有する創傷を特定した。対象1名につき創傷1つのみを、この試験で治療した。
【0073】
3週間の導入期間中、対象は、3(±1)日毎および週2回以下、プラセボ調製物(以下を参照のこと)の適用を6回(合計で)、創傷滲出液を管理するために、伸縮包帯法および適切なドレッシングを含む標準的な圧縮包帯法(スウェーデンのMPAによって定義されている)と組み合わせて受けた。
【0074】
潰瘍性面積の減少が、導入期の開始時と比較して1週当たり7%から13%の間を超えた(サイズによって)場合には、その潰瘍は、本試験の目的のためのHTHとは定義されなかった。そのような場合には、対象を本試験から除外し、転帰をスクリーニング失敗と記録した。
【0075】
導入期後、適格な対象34名は、ベースライン評価を受けた後、無作為化され、実薬治療(3つの治療含量のうちの1つ)またはプラセボを受けた。
【0076】
製剤および治療
上記の導入期後、4週間の治療期間が開始され、これには、8回の来院、最後の治療から3日(±1日)後の治療終了時の来院およびさらなる4週(±1〜7日)後の追跡来院が含まれた。
【0077】
対象は、4治療群に無作為化され、LL−37(選択すべき3つの含量のうちの1つ)またはプラセボを受けた。
【0078】
治療前の創面環境調整は、生育不可能な組織のデブリードマン、臨床感染症の治療および最も適切なドレッシングの選択を含んだ(以下を参照のこと)。創傷は、水道水を使用して洗浄され、ガーゼパッドで優しく乾燥させ、必要ならば、試験製品またはプラセボの適用前に、掻爬術が適用された。
【0079】
LL−37の滅菌濃縮物0.7mLを水に溶かし、1mL当たり2.5、8または16mgの濃度のLL−37にし、密閉ガラス製バイアル(APL、Umea、Sweden)中に入れて提供し、それらは試験前に2から8℃の間で保管された。創傷への適用直前に、これを、酢酸緩衝生理食塩水(APL AB)中ポリビニルアルコール13.1%(w/w)を含む粘性の賦形剤溶液5mLで希釈して、それぞれ0.5、1.6または3.2mg/mLの最終濃度とした。プラセボは、LL−37を含まない点以外は同じ溶液を正確に含んでいた。
【0080】
実薬治療またはプラセボの希釈された粘性の液剤を、浄化および乾燥させた潰瘍の中央に、1mLグレードの(1mL graded)シリンジを用いて、25μL/cm
2の量で局所適用し、試験薬を混合する際に使用されたシリンジプランジャーの丸みを帯びた頭部を使用して、潰瘍領域の全体一面に均一に広げた。
【0081】
5分間待機後(LL−37またはプラセボが、ドレッシング材によって吸収されるのを防ぐため)、上記の手順に続いてドレッシングおよび圧縮包帯を適用した。
【0082】
滲出液が中程度から多量の創傷には、Mepilex(登録商標)、Allevyn(登録商標)およびTegaderm(登録商標)のようなポリウレタンフォームで作られる吸収性の高いドレッシングを使用した。あるいは、吸収性のハイドロファイバードレッシングAquacel(登録商標)を使用した。滲出液が軽度から中程度の創傷には、付着性の端を有するまたは有しない非付着性ドレッシングを使用した。使用したドレッシングは、Solvaline(登録商標)Nまたは組み合わされたポリウレタン/ハイドロファイバードレッシングVersiva(登録商標)であった。乾燥した創傷には、Aquacel(登録商標)ハイドロファイバードレッシングを使用した。
【0083】
これらの他のドレッシングと組み合わせてガーゼパッドを使用して、圧縮中に感受性部分の荷重をなくした。Cellona(登録商標)またはSoffban(登録商標)を含む、100%ビスコース、延性、柔軟性および吸収性のクッションを使用した。Comprilan(登録商標)は、最も一般的に使用されている圧縮包帯であり、本試験で使用した。2種の包帯(8および10cm幅)を、足指の付け根から螺旋状に膝のちょうど真下まで、およそ50%伸ばして結んだ。あるいは、上述の創傷ドレッシングのいくつかと組み合わせて、ZipZoc(登録商標)医療用ストッキングおよびCoplus(登録商標)もしくは類似の自己付着性包帯またはProfore Lite(登録商標)を許可した。Dauerタイプの長く伸びる包帯も、使用することができた。このタイプの包帯が有する高い静止圧のために、それは、夜間にまたは対象が長期間安静位であった場合には、一時的に取り外された。
【0084】
追加的な治療は、皮膚の問題の治療のための特定の局所クリーム剤を含んだ。創縁近くの皮膚を浸軟から保護するために、亜鉛ペーストまたはCavilon(登録商標)を、潰瘍周囲の皮膚に使用した。ヒドロコルチゾンクリーム剤または軟膏剤(局所ステロイド群Iまたはヒドロコルチゾン−イミダゾールクリーム剤)を、潰瘍周囲の湿疹に使用した。皮膚が乾燥し、うろこ状であった場合には、CanodermまたはPropydermクリーム剤を許可した。
【0085】
上記の手順を、3(±1)日毎に、4週間の治療期間にわたって、週2回以下で繰り返した。これは合計8回の適用に相当した。
【0086】
治療に続いて、対象を4週間(±1〜7日)追跡した。
【0087】
試験は、創傷治癒率、ドレッシング時およびその前の24時間の両方での創傷部位における疼痛を、視覚的アナログ尺度(VAS)を使用して評価した。試験が短期間であり、標本数が少ないことに基づくと統計学的に有意な結果は期待されなかったが、完全治癒の発生率を全て記録した。創傷治癒の程度を示すために、創傷サイズ測定を、試験期間にわたって繰り返し行った。1回おきの来院時に、Visitrak(商標)面積測定器を使用して、創傷面積を測定し、創傷部位における疼痛および創傷の特徴(臭気、スラフ、肉芽形成および壊死組織)を記録した。創傷状態は、創傷の写真を使用して記載することとした。
【0088】
有害事象(AE)および局所忍容性を、すべての来院時に評価した。対象には、いずれのAEも報告するように忠告し、いずれかの重要なAEが起こった場合に、連絡するための電話番号を書いた緊急連絡先カードを渡した。臨床検査による安全性評価およびLL−37に対する抗体の発現の検討のために、血液を採取した。臨床検査値およびバイタルサインの変化を評価し、LL−37に対する自己抗体形成についての分析を行った。
【0089】
安全性評価項目は、
・ 炎症の臨床的徴候(浮腫、発赤、臭気および温度上昇)または皮膚の刺激状態(落屑、発赤、丘疹、小水疱、膿疱)によって例示されるような、創傷および隣接皮膚における重症の局所反応の発生率;いずれの局所反応も、等級化した尺度(0〜3)で記録された;
・ ベースライン(無作為化来院)と比較して、創傷面積の30%を超える増加の発生率;
・ ベースラインからの臨床検査値およびバイタルサインの変化;
・ AEの全発生率
を含んだ。
【0090】
有効性評価項目は、
・ 試験期間内の創傷治癒率;
・ 無作為化時のベースラインからの30%を超える面積縮小を達成している潰瘍の数;および
・ VASスコア(0〜10)を使用した局所疼痛の変化
・ ベースラインからの創傷の特徴:(スラフ、滲出液、肉芽形成組織、壊死のスコア)の変化(尺度0〜3)
を含んだ。
【0091】
解析
統計解析は、SAS(登録商標)ソフトウェア(バージョン9.2以上;SAS Institute、Cary、NC、US)を使用して実施した。
【0092】
治療期間にわたる治癒率を推定するために、創傷面積を各対象について経時的にモデリングし、治癒率と用量との間の関係性を検討した。
【0093】
治癒率定数(すなわち、創傷面積の変化または数学的に変換された創傷面積/日)の推定値を、4つの各治療群について導き、95%信頼区間(CI)を求めた。初期の創傷面積および治癒率を表す2つのパラメータを有するデータに、指数関数的減衰モデルを当てはめた。モデルは、
Y=α×e
−βt
[式中、αは、初期の創傷面積(すなわち無作為化来院時)を意味し、βは、1日当たりの治癒率として表されるサイズの縮小を意味し、Yは、創傷面積を意味し、tは、無作為化来院からの時間(日)を意味する]という形を有した。
【0094】
試験治療の適用が治癒過程にどのように影響を及ぼしたかについて評価するために、すべての導入期のデータを組み込んだ追加的な解析を行った。これは、「折れ棒」アプローチを使用し、適したデータ変換後(例えばlog、平方根)、経時的な線形応答によって、無作為化前および無作為化後のデータを概算して評価した。
【0095】
適切な場合には、治療間の全差異を経時的に評価するために、繰り返し行った測定値の解析を使用して、疼痛スコアを解析した。モデルは、治療および時間ならびに2つの間の相互作用の項を含んだ。
【0096】
少なくとも1つのAEを経験した、各治療群における対象の割合を使用して、いずれかのAEの発生率を推定し、関連する95%CIを求めた。CIは、Altmanら,Statistics with Confidence,BMJ Publication Group(2000)に詳述されている方法を使用して算出した。この方法は、標本数が少ないまたは発生率が低い場合に適切であった。適切な場合には、AEの発生率と用量との関係性を検討した。グレード3(重症の)局所反応の全発生率を、LL−37で治療した対象について、95%CIとともに示した。臨床検査値は、参照範囲とともに、治療後の値対ベースラインのプロットで示すこととした。
【0097】
結果
合計31名の対象が、8回の治療適用の全クールを受けた。残りの3名の対象のうち、2名(0.5mg/mL治療群)は、7回の適用を受け、1名の対象(プラセボ群)は、3回の適用を受けた。
【0098】
指数関数的減衰モデルを創傷面積に当てはめたところ、データへの適合は良好であった。
【0099】
LL−37の0.5mg/mL用量の治癒率定数(0.039)は、プラセボ(0.007、p=0.003)についての治癒率定数とは有意に異なり、創傷面積のより速い縮小(すなわち改善された治癒)を示した。非線形混合効果モデルを使用し、差の推定値を得、それの標準誤差で割ることによって、パラメータ間の差の有意性を算出し、結果をt分布と比較した。
【0100】
LL−37の1.6mg/mL用量の推定治癒率定数である0.019も、5%の水準で統計学的に有意ではなかった(p=0.09)ものの、プラセボと比較して、創傷面積のより速い縮小を示した。LL−37の高用量(治癒率定数0.004)群とプラセボ群との間の統計学的有意差はなかった。低用量群および中用量群は、統計学的に区別できなかった。創傷面積の平均縮小の測定を用いた、各治療についての推定治癒率定数を、以下の表1に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
全体的に見て、創傷面積の最も高度な縮小は、すべての来院にわたって、LL−37の1.6mg/mL用量について認められた。LL−37の1.6mg/mL用量についての創傷面積の平均縮小は、無作為化から試験の終了までで5.29cm
2であった(以下の表2を参照のこと)。
【0103】
【表2】
【0104】
指数関数的減衰モデルの治癒率定数は、プラセボ群に対して、低用量(0.5mg/mL)群については6倍の差、中用量(1.6mg/mL)群については3倍の差を示した(0.5mg/mLについてはp=0.003および1.6mg/mLについてはp=0.088)。それ故に、これらの製剤は、創傷面積のより速い縮小を生じ、ひいては改善された治癒応答を起こした。しかし、LL−37の高用量(3.2mg/mL)群とプラセボ群との間に、推定治癒率定数の差はなかった。
【0105】
導入期からのデータを組み込むためにおよび治療の追加が治癒率に影響を及ぼしたかどうかを評価するために、折れ棒解析を行ったところ、前の解析と一致した。
図1に示すように、より低い2通りの用量のLL−37はいずれも、導入期中よりも無作為化後に、創傷面積のより大きい縮小を有しており、これは、治療前の値と比較して、統計学的に有意な、改善された治癒を示していた(0.5mg/mLおよび1.6mg/mLのそれぞれについて、p<0.001およびp=0.011)。無作為化後の治癒率と導入期との間の統計学的有意差は、高用量についてもプラセボについても見られなかった。導入期中の変化率はゼロに非常に近かった。これは、応答者が試験から除外されたため、予期されたことであった。
【0106】
結論
より低い2つの用量(0.5および1.6mg/mL)のLL−37の投与に応答した創傷治癒が、顕著にかつ有意に改善されていることが観察された。この試験の結果は、3日毎の0.5(創傷面積1cm
2当たり13μgのLL−37に等しい)および1.6mg/mL(創傷面積1cm
2当たり40μgのLL−37に等しい)の用量が、創傷治癒の有意な刺激をもたらすことを示唆している。あるいは、より高用量をより低頻度で適用することが適切な可能性もある。