特許第6539295号(P6539295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6539295
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/20 20060101AFI20190625BHJP
   H01L 23/467 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   H05K7/20 G
   H01L23/46 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-45172(P2017-45172)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-148188(P2018-148188A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2017年7月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】一條 義明
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博
【審査官】 鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/198642(WO,A1)
【文献】 特開2013−016681(JP,A)
【文献】 特開2008−140831(JP,A)
【文献】 特開2003−188321(JP,A)
【文献】 特開2007−208116(JP,A)
【文献】 特開2013−016569(JP,A)
【文献】 特開2013−093364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付けられるべき対象物上の複数の発熱源(10,10(L),10(L)’)に接触するベース部(12)と、前記ベース部に設けられて流通する空気により熱を放散するフィン部(13,13(U),13(D))を備えたヒートシンク(8)であって、
前記フィン部は、
吸引ファン(5)によって発生する空気の流通方向(F)に沿った長手形状であって、長手方向と交差する幅方向に所定の間隔をおいて配置された複数のフィン(14,14a)から構成され、
前記流通方向の上流側における前記フィンの前記間隔である第1間隔は、前記流通方向の下流側における前記フィンの前記間隔である第2間隔よりも大きく構成されており、
前記フィンは、前記長手方向の寸法が相対的に大きく、前記第1間隔で配置された複数の第1フィンと、前記長手方向の寸法が相対的に小さく、前記流通方向の下流側において前記第1フィンとの間隔が前記第2間隔となるように少なくともその一部が前記第1フィンと前記第1フィンとの間に配置された複数の第2フィンとを有しており、
前記フィンの前記間隔が一定である場合には前記取り付け時に許容温度を越えてしまうような前記発熱源である特定発熱源(10(L)’)が配置された特定位置を基準とし、前記フィンの前記間隔が前記第1間隔である第1領域(S1)と前記フィンの前記間隔が前記第2間隔である第2領域(S2)との境界を、前記特定位置の直上を含む上流側近傍に設定した当該ヒートシンク(8)と、
前記ヒートシンクの前記フィン部を覆うダクトと、
を具備し、
前記吸引ファンによって前記ダクト外も流通する空気の一部前記第2間隔の前記フィンの上流側に供給されるように、前記特定位置に対応する前記ダクトの位置に開口部(30)を形成し、
前記ダクト内を流通する空気によって前記フィン部から熱を放散して前記発熱源を冷却する冷却装置。
【請求項2】
前記ヒートシンクにおいて、前記特定位置のうち、前記特定発熱源の上流側縁の位置を基準とし、前記第1領域と前記第2領域との境界を、前記上流側縁の位置の直上を含まない上流側近傍に設定したことを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記第2間隔で配置された複数の前記フィンからなる前記フィン部の前記幅方向の寸法が、前記第1間隔で配置された複数の前記フィンからなる前記フィン部の前記幅方向の寸法よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィン部が設けられたベース部を発熱源に接触させ、フィン部を流通する空気により熱を放散して発熱源を冷却するヒートシンクと、このヒートシンクの周囲に空気の流路を形成するダクトを備えた冷却装置に係り、特に、発熱源が空気の上流側にあるか下流側にあるかを問わず均等に冷却することができる冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に複数の電子素子を搭載して一定の機能を発揮するように構成された電子機器は、モジュール又はユニット等と称されて単体で使用されるか、又は各種の電子装置に構成要素として組み込まれて使用される。このようなユニットは、使用時に電子素子が熱を発生するため、この熱を効果的に放散して電子素子の温度が使用上の許容温度を越えないように配慮する必要がある。このようなユニットの一例である半導体モジュールを冷却するための発明が、下記特許文献1に開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示された発明は、半導体モジュールをヒートシンクで冷却するモータ制御装置に関するものである。この発明のモータ制御装置は、ベース部11とベース部11に設けたフィン12を備えたヒートシンク1と、ヒートシンク1のフィン12と対向し、ヒートシンク1を冷却するファン3と、ヒートシンク1に密着する半導体モジュールとを備えている。このヒートシンク1によれば、フィン12のファン3と対向する部分に、フィン間隔の広い幅広ピッチ部123を設けている。
【0004】
ヒートシンクとファン間の空隙を小さくし過ぎると、ファンからの冷却風がヒートシンクのフィン間に流れ込まない問題が生じるが、この発明におけるヒートシンクによれば、ヒートシンクのフィンのピッチを、ファンと対向する部分で広くしているので、ファンからの冷却風をスムーズにフィン間に流入させることができる。これにより、フィン間に流れる冷却風の風量を増して、ヒートシンクの冷却性能を向上させ、モータ制御装置の全体を小形化することができるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−177314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
基板上に複数の電子素子を搭載したユニットを、前述したようなヒートシンクで冷却する場合には、基板上の複数の電子素子にヒートシンクのベース部を接触させ、フィンに沿って空気を流通させることにより、複数の電子素子からベース部に伝導した熱をフィンで空気に放散する。
【0007】
ところが、ユニットの基板上に搭載された電子素子の数が多く発熱量が大きい場合、又は空気の流通方向に沿って上流側から下流側に向けて発熱量の大きい電子素子が複数個並んで配置されているような場合には、空気の流通方向の上流側は冷却され易いが、これよりも下流側は空気の温度が上昇して冷却されにくくなるため、上流から下流に向けて基板温度が上昇する温度勾配が生じてしまい、基板全体としての温度を均一化することが困難であった。
【0008】
上記特許文献1に記載の発明におけるヒートシンクは、前述した通り、ファンからの冷却風をスムーズにフィン間に流入させてヒートシンクの冷却性能を向上させることを特徴としているが、上述したように電子素子の数が多く全体としての発熱量が大きい場合や、上流側から下流側に向けて発熱量の大きい電子素子が並んで配置されている場合のように、上流側に比べて下流側の冷却条件が厳しい条件下では、必ずしも効果的な冷却効果は期待できなかった。
【0009】
図7は、複数の電子素子を実装した基板100の図示手前側に設けた比較例のヒートシンク101を示す正面図であって、電子素子の使用時におけるヒートシンク101の温度を、ソフトウエアを用いたシミュレーションによって計算し、ヒートシンク101の図面に重ねてコンターで表したものである。なお、この比較例のユニットはダクトで覆われてはいない。
【0010】
ヒートシンク101は、板状のベース部102と、ベース部102に設けられたフィン部103を備えている。フィン部103は、空気の流通方向である図中左右方向に沿った長手形状であって、長手方向と直交する上下方向に所定の間隔をおいて配置された複数のフィンから構成される。ユニットは、ヒートシンク101のベース部102よりもやや大きい基板100の上に、発熱源である電子素子(図示せず)が配置されているが、特に発熱の大きな電子素子が空気の流通方向に沿って略等間隔で3つの位置に設けられている。ヒートシンク101は、ユニットの電子素子にベース部102を接触させており、図中、左側から右側に向けて空気がフィン部103を流通すると、空気により熱が放散されてユニットが冷却される。
【0011】
図7のコンター及び図中の温度表示から分かるように、図中左右方向の空気の流通方向に沿ったヒートシンク101の3つの位置には、周囲に比べて温度の高い箇所A1,A2,A3が現れている。図7中では、縦横2種類の矢印の交点で概略の位置を示した。これら各箇所A1,A2,A3の温度は、それぞれ、74〜75℃、76〜77℃、79〜80℃となっている。すなわち、空気の流通方向の上流側は冷却され易いが、これよりも下流側は空気の温度が上昇して冷却されにくくなるため、上流から下流に向けて基板温度が上昇する温度勾配が大きくなってしまい、ヒートシンク全体としての温度を均一に低下させられない状況が生じている。特に、最も下流の位置の温度は80℃に達しており、ユニットに搭載する電子素子の使用時の許容温度を越えてしまう可能性もある。
【0012】
本発明は、以上説明した従来の技術における種々の課題に鑑みてなされたものであり、フィン部が設けられたベース部を発熱源に接触させ、フィン部を流通する空気により熱を放散して発熱源を冷却するヒートシンクと、このヒートシンクの周囲に空気の流路を形成するダクトを備え、発熱源が空気の上流側にあるか下流側にあるかを問わず均等に冷却することができる冷却装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載された冷却装置7は、
取り付けられるべき対象物上の複数の発熱源10,10(L),10(L)’に接触するベース部12と、前記ベース部12に設けられて流通する空気により熱を放散するフィン部13,13(U),13(D)を備えたヒートシンク8であって、
前記フィン部13,13(U),13(D)は、
吸引ファン5によって発生する空気の流通方向Fに沿った長手形状であって、長手方向と交差する幅方向に所定の間隔をおいて配置された複数のフィン14,14aから構成され、
前記流通方向Fの上流側における前記フィン14の前記間隔である第1間隔は、前記流通方向Fの下流側における前記フィン14,14aの前記間隔である第2間隔よりも大きく構成されており、
前記フィンは、前記長手方向の寸法が相対的に大きく、前記第1間隔で配置された複数の第1フィンと、前記長手方向の寸法が相対的に小さく、前記流通方向の下流側において前記第1フィンとの間隔が前記第2間隔となるように少なくともその一部が前記第1フィンと前記第1フィンとの間に配置された複数の第2フィンとを有しており、
前記フィン14,14aの前記間隔が一定である場合には前記取り付け時に許容温度を越えてしまうような前記発熱源である特定発熱源10(L)’が配置された特定位置を基準とし、前記フィン14,14aの前記間隔が前記第1間隔である第1領域S1と前記フィン14,14aの前記間隔が前記第2間隔である第2領域S2との境界を、前記特定位置の直上を含む上流側近傍に設定した当該ヒートシンク8と、
前記ヒートシンクの前記フィン部を覆うダクト9と、
を具備し、
前記吸引ファン5によって前記ダクト9外も流通する空気の一部前記第2間隔の前記フィンの14,14a上流側に供給されるように、前記特定位置に対応する前記ダクト9の位置に開口部30を形成し、
前記ダクト9内を流通する空気によって前記フィン部13,13(U),13(D)から熱を放散して前記発熱源10,10(L),10(L)’を冷却することを特徴としている。
【0014】
請求項2に記載された冷却装置7は、請求項1記載の冷却装置7において、
前記ヒートシンク8において、前記特定位置のうち、前記特定発熱源10(L)’の上流側縁の位置を基準とし、前記第1領域S1と前記第2領域S2との境界を、前記上流側縁の位置の直上を含まない上流側近傍に設定したことを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載されたヒートシンク8は、請求項1又は2に記載のヒートシンク8において、
前記第2間隔で配置された複数の前記フィン14,14aからなる前記フィン部13,13(D)の前記幅方向の寸法が、前記第1間隔で配置された複数の前記フィン14からなる前記フィン部13,13(U)の前記幅方向の寸法よりも大きいことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された冷却装置によれば、ダクトが空気の通り道となるため、ヒートシンクをむき出しで配置している場合に比べ、ヒートシンクを収納したダクト内に空気を取り込み易い。そして、ダクト内でヒートシンクの周囲を所定の流通方向に沿って流通する空気は、特定発熱源の特定位置よりも上流側では、比較的広い第1間隔で配置されたフィンの間を通過し、相応の放熱力を発揮して発熱源を冷却する。そして、特定発熱源の特定位置よりも下流側においては、空気は上流側より狭い第2間隔で配置されたフィンの間に入る。より狭い第2間隔で配置されたフィンの間では、フィンの間隔が広い特定発熱源の上流側に比べ、流通する空気の抵抗が大きくなってフィンに空気が十分に当たり、放熱力が高くなる。その結果、特定発熱源の特定位置を境界とした空気の上流側と下流側において生じる温度勾配は可及的に小さくなり、発熱源の全体としての温度を従来に比べて均一化することができ、特定発熱源を始めとする発熱源が使用時に許容温度を越えてしまう危険性を回避できる。
【0017】
請求項2に記載された冷却装置によれば、ダクトの外面に沿って流通している空気の一部がダクトの開口部からダクトの内部に流入する。開口部から流入した空気は、狭い第2間隔で配置されたフィン間に入る。フィンから熱を奪いながらダクト内を流れて来た空気の温度よりも、ダクトの外を流れて開口部から入ってきた空気の温度の方が低いので、この温度の低い空気によって特定発熱源の発熱が集中的に冷却される。
【0018】
請求項3に記載されたヒートシンクによれば、フィン間隔が広い上流側のフィン部とその近傍では、フィン間を流通する空気の抵抗よりも、フィン部の外側の空間に沿って流通する空気の抵抗の方が小さいため、多くの空気が当該空間に入り込む。そして、当該空間に沿って流通する空気が片側にのみ存在するフィンから受ける熱は、上流側のフィン部のフィン間を流通する空気が両側にあるフィンから受ける熱よりも少ない。このように、間隔の広い上流のフィンから出てきた空気に比べて温度が低く、また流量も多い当該空間からの空気が、下流において間隔の狭いフィン間に入る。このため、比較的温度の低い空気が大きな抵抗をもってフィン間を流れ、フィンに十分に当たって高い放熱力が得られるため、下流側のフィン部の幅方向の両端部分では特に強い冷却効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係る電子装置の内部が見えるように筐体の天板を除去した状態を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る電子装置に装着されるユニットの斜視図である。
図3】第1実施形態におけるユニットからダクトを除去した状態を示す正面図である。
図4】第1実施形態に係る電子装置に装着されるユニットの拡散分解斜視図である。
図5】第1実施形態に係る電子装置に装着されるユニットの正面図であって、特にユニットの使用時におけるヒートシンクの温度を、ヒートシンクに重ねてコンターで表した図である。
図6】第1実施形態に係る電子装置の使用時において、ユニットに設けられた複数の発熱源の位置(横軸)に対するジャンクション温度(縦軸)の関係を示すグラフと、同条件下においてフィンの間隔が一定である比較例のヒートシンクによる同様の関係を示すグラフとを、同一図中に示した表図である。
図7】電子装置に装着される比較例のユニットの正面図であって、フィンの間隔が一定である比較例のヒートシンクの使用時の温度を、ヒートシンクに重ねてコンターで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図7を参照して第1実施形態の電子装置1を説明する。本発明の冷却装置が適用される電子装置1の種類は特定のものに限定されないが、本実施形態では、電子装置1の一例として、図1に示すように、移動体端末の検査装置であるラジオコミュニケーションアナライザーを挙げた。ラジオコミュニケーションアナライザーは、移動体端末の多用な通信方式の規格ごとに基地局の機能を発揮する装置であって、必要とする機能に合せて作成したユニットをスロットに挿入することで移動体端末の検査を行う。
【0021】
図1に示すように、電子装置1の筐体2の内部には、電子機器であるユニット3を取り付けるための枠状の構造体であるフレーム4が取り付けられている。このフレーム4の内部には、フレーム4の上側の開口から薄板状の複数のユニット3,3aが挿入できるようになっており、フレーム4の内部で各ユニット3,3aは所定間隔をおいて互いに略平行な状態で並んで配置されるように構成されている。図1に示す例では、ユニット3,3aの挿入位置であるスロットがフレーム4内に7つ設けられており、装着されている7つのユニット3,3aのうち2つが本発明のヒートシンクを有するユニット3(図2参照)であり、他の5つが他の種類のユニット3aである。
【0022】
図1に示すように、電子機器の筐体2の右側面には、2基の吸引ファン5が設けられており、フレーム4の内部に設けられた薄形のユニット3の表面に沿って、図中左側の上流から同右側の下流に向けた流通方向Fに沿って冷却用の空気を流通させるようになっている。また、流通する空気の上流側に当たる筐体2の左側面は、吸引ファン5で引かれた空気が筐体2内に入れるように空気透過構造となっている。また、筐体2の前面には、電子装置であるラジオコミュニケーションアナライザーの操作部や表示装置が設けられている。
【0023】
図2は、本発明のヒートシンクを有する実施形態のユニット3の斜視図である。なお、実施形態のユニット3は、後述するように、電子素子を実装した基板6と、この電子素子を冷却する冷却装置7から構成されており、冷却装置7はヒートシンク8とダクト9から構成されている。図2の前面側にあるダクト9を取り外し、内部のヒートシンク8を見せたのが図3の正面図である。そして、図3の前面側にあるヒートシンク8を奥側の基板6から取り外すとともに、前記ダクト9ともに表したのが図4の拡散分解斜視図である。
【0024】
図2図4に示す基板6の上面には、図4に示すように発熱源となる複数の電子素子10が実装されている。電子素子10の種類や機能は問わないが、いずれも使用時には熱を発する。そして、特に空気の流通方向Fに沿って基板6上に等間隔で設定された3つの位置には、他の電子素子10に比べて発熱量が大きい同一種類の電子素子10(L)がそれぞれ取り付けられている。また、基板6の下縁には、ユニット3をスロット内に装着した際に、ユニット3を電子装置1に接続するためのコネクタ11が設けられている。
【0025】
図2図4に示すように、基板6上の電子素子10に接するように、ヒートシンク8が設けられている。ヒートシンク8は、後述するダクト9とともに、電子素子10の冷却装置7を構成する部材である。図3及び図4に示すように、ヒートシンク8は、基板6と略同形で基板6より若干小さい矩形のベース部12と、ベース部12の前面側に設けられたフィン部13を有している。図示はしないが、ベース部12の背面側(基板6側)には、最も背の高い電子素子10に対応する部分に当該電子素子10(L)の外形に見合った浅い凹部が形成されている。これは、電子素子10(L)とベース部12を熱伝導パテで接着する際、その厚さをなるべく薄い値に統一するためである。また、フィン部13は、空気の流通方向Fに沿った長手形状の板材であって、長手方向と交差する方向に所定の間隔(ピッチとも称する)をおいて配置された複数のフィン14から構成されている。フィン14は、ベース部12の長手方向と、空気の流通方向Fに平行である。なお、本実施形態では、ベース部12の面内の方向であって、ベース部12又はフィン14の長手方向に直交する方向(ベース部12の短手方向)をフィン部13の幅方向と称する。
【0026】
図3及び図4に示すように、前記流通方向Fの上流側におけるフィン14の間隔を第1間隔と呼び、流通方向Fの下流側におけるフィン14の間隔を第2間隔と呼ぶとすれば、第1間隔は第2間隔の略2倍である。すなわち、流通方向Fの下流側では、流通方向Fの上流側におけるフィン14とフィン14の間に当たる位置にも、フィン14が設けられており、流通方向Fの上流側のフィン14の数は上流側のフィン14の数の略2倍となっている。
【0027】
図4に示すように、電子源10のうちで特に発熱量が大きく、流通方向Fに沿って基板6上に間隔をおいて配置された3つの電子素子10(L)のうち、流通方向Fの最も下流にある電子素子10(L)を特定発熱源と呼び、その位置を特定位置と呼ぶ。なお、特定発熱源である電子素子10(L)を特に符号10(L)’で指し示す。この特定位置を基準とした場合、流通方向Fについて特定位置よりも上流側が、フィン14の間隔が第1間隔である第1領域S1である。また、同じく流通方向Fについて特定位置よりも下流側が、フィン14の間隔が第2間隔である第2領域S2である。また、換言すれば、フィン14の間隔が広い上流の第1領域S1と、フィン14の間隔が狭い下流の第2領域S2の境界は、特定電子素子10(L)’の上流側の縁辺15となる。
【0028】
フィン14の間隔の広狭の境となる特定発熱源の特定位置は、次のように定められる。すなわち、フィン14の間隔が全長にわたって一定(例えば前記第1間隔)であったとすると、「発明が解決しようとする課題」で説明したように、空気の流通方向Fの上流側は冷却され易いが、これよりも下流側は空気の温度が上昇して冷却されにくくなる。このため、先に図7を参照して説明した例と同様、電子素子10を使用している際のヒートシンク8の温度を測定すると、流通方向Fに沿って下流にいくほど温度が上昇し、何れかの位置において周囲と極端に温度が異なる高温の領域が現れる。すなわち、上流から下流に向けて基板6の温度が急上昇する大きな温度勾配が生じる。このように、周囲と比べて特異な高温の領域が現れるヒートシンク8上の位置に相当する発熱源を、特定発熱源と呼び、本実施形態では前述した発熱量が大きい3つの電子素子10(L)のうち、最も下流にある電子素子10(L)’が特定発熱源に相当する。
【0029】
このように、フィン間隔が一定の場合に大きな温度勾配を発生させる特定発熱源の位置(つまりは前述の特定位置)を定め、これよりも下流でフィン14の間隔を狭くすればよい。このようにすれば、特定発熱源よりも下流ではフィン間を流通する空気の抵抗が大きくなってフィン14に空気が十分に当たり、放熱力が高くなる。その結果、特定発熱源の特定位置を境界とした空気の上流側と下流側で生じる温度勾配は可及的に小さくなり、複数の発熱源を有する基板6の全体としての温度を従来に比べて均一化することができる。これにより、特定発熱源を始めとする発熱源が使用時に許容温度を越えてしまう危険性を回避できる効果が得られる。なお、電子素子10,10(L),10(L)’を所定の条件下で問題なく使用できる許容温度としては、種々の指標から定義される各種温度が採用可能であるが、例えば接合部温度(ジャンクション温度)を用いることができる。
なお、第1領域S1と第2領域S2の境界は、特定電子素子10(L)’の縁辺15に合った位置としたが、これに限るものではない。当該境界を縁辺15の上流側の近傍と設定しても、同等の作用効果を得ることができる。
【0030】
図3及び図4に示すように、第2間隔で配置された下流側のフィン部13(D)全体の幅方向の寸法は、第1間隔で配置された上流側のフィン部13(U)全体の幅方向の寸法よりも大きい。すなわち、下流側のフィン部13(D)は、上流側のフィン部13(U)の幅方向で最も外側にあるフィン14よりもさらに外側となる2つの位置に、それぞれ2本ずつのフィン14aをさらに有している。なお、図3に示すように、下流側のフィン部13(D)において図示上側の2本のフィン14aの方が、図示下側の2本のフィン14aよりもやや長い。
【0031】
なお、以上説明したヒートシンク8はアルミ製であるが、放熱能力を高めるために、アルミ材押し出し成形で作成するよりも、ベース部12にフィン部13をかしめで取り付ける工法を採用することが好ましい。
【0032】
また、図1図4に示すように、ヒートシンク8のベース部12の上縁には、銅製の熱伝導部材16が取り付けられている。図1に示すように、筐体2の内部の各スロットにユニット3aを挿入した後、二点鎖線で示すアルミ製のカバー(蓋体)17で筐体2の上面の開口を閉止し、カバー17の所定位置に形成した孔からボルト18を挿入して熱伝導部材16のねじ孔にねじ込んで固定すれば、筐体2とカバー17とユニット3が一体に固定される。従って、ヒートシンク8が吸収した熱は、フィン部13で放熱される外、熱伝導部材16からカバー17に伝導して放熱される。
【0033】
図2及び図4に示すように、ユニット3は、ヒートシンク8を覆うダクト9を有している。ダクト9は、前述したヒートシンク8とともに、電子素子10の冷却装置7を構成する部材である。ダクト9は、ヒートシンク8のベース部12と略同形でベース部12より若干大きい矩形の板体である。ダクト9の上縁と下縁には、ヒートシンク8のベース部12を囲う上フランジ9aと下フランジ9bがそれぞれ設けられている。下フランジ9bはベース部12の全体を覆っている。上フランジ9aは、熱伝導部材16の部分を除いてベース部12の下流側の略半分を覆っている。流通方向Fについてダクト9の上流側は入口20となっており、吸引ファン5に引かれて流動する空気がダクト9内に流入する。流通方向Fについてダクト9の下流側は出口21となっており、ヒートシンク8に沿って流通した空気がダクト9外に流出する。
【0034】
図2及び図4に示すように、ダクト9には開口部30が設けられている。開口部30は縦長矩形であり、その長辺は特定発熱源である電子素子10(L)’の縦寸法に略一致し、その短辺は電子素子10(L)’の横寸法の略半分となっている。開口部30は、前記特定発熱源の特定位置と対応する位置に形成されている。より詳細に説明すれば、開口部30は、その上流側の縦縁辺30aが、電子素子10(L)’の上流側の縁辺15と略一致する位置に形成されている。従って、ダクト9外を流通する空気が開口部30からダクト9の内部に入ると、狭い第2間隔のフィン14の上流側に供給され、特定発熱源としての電子素子10(L)’を効率的に冷却することができる。
【0035】
図2及び図4に示すように、ダクト9の入口20は拡大部22によって出口21よりも広くなっている。図2に示すように、熱伝導部材16の近傍及びその後方の空間を流れる空気はヒートシンク8による電子素子10,10(L),10(L)’の冷却には寄与しないので、この位置の上流側に拡大部22を設け、この位置を流通している空気を拡大部22によってダクト9内に導き、冷却に用いている。
【0036】
図3に示すように、間隔が広い第1領域S1のフィン部13において、幅方向について一番外側にある図中上下2本のフィン14とダクト9との間の空間S3は、第1領域S1のフィン14の間隔よりも広い。従って、ダクト9内に入った空気は、空気抵抗が小さい当該空間S3に多く入り込む。また、当該空間S3に沿って流通する空気が、片側にのみ存在するフィン14から受ける熱は、上流側のフィン部13(U)のフィン14,14間を流通する空気が両側にあるフィン14,14から受ける熱よりも少ない。従って、当該空間S3から第2領域S2の間隔の狭いフィン14a,14に入り込む空気による冷却効果は特に大きくなる。すなわち、第2領域S2の間隔の狭いフィン14a,14では、流通する空気の抵抗が大きくなり、フィン14a,14に空気が十分に当たり、放熱力が高くなるため、第2領域S2の幅方向の両端(図3において第2領域S2の上端及び下端)では特に強い冷却効果が得られる。
【0037】
次に、以上の構成における効果を説明する。
電子装置1の使用時には、内部に収納したユニット3が発熱するため、吸引ファン5を駆動して冷却する。図1において、吸引ファン5に吸引された空気は、筐体2の左側面(図中左側)から筐体2内に入り、筐体2内の各ユニット3,3a間を通過してこれらを冷却した後、筐体2の右側面(図中右側)の吸引ファン5から筐体2外に排気される。
【0038】
筐体2内に入った空気は、一般的に抵抗の小さいところを選んで流通するため、図1においてユニット3が挿入されていないスロットがあれば、空気は抵抗の大きいユニット3を避けて空きのスロットに流れてしまう。しかしながら、図1に示すように、本実施形態のダクト9を有するユニット3aと、ダクト9がないその他のユニット3が筐体2内に隙間なく並んでいる場合には、その他のユニット3よりも、ダクト9で筒状の空気の通り道を構成した実施形態のユニット3aの方が空気を取り込み易い。
【0039】
図2及び図4に示すように、拡大部22を備えたユニット3の入口20から取り込まれた十分な量の空気は、特定発熱源である電子素子10(L)' よりも上流側(第1領域S1)では、比較的広い第1間隔で配置されたフィン14の間を通過し、相応の放熱力を発揮して発熱源(電子素子10,10(L))を冷却することができる。
【0040】
特定発熱源である電子素子10(L)' の特定位置よりも下流側(第2領域S2)においては、空気は上流側より狭い第2間隔で配置されたフィン14の間に入る。第2領域S2に供給される空気は、第1領域S1で冷却に供されて温度が上昇している空気ではあるが、比較的狭い第2間隔で配置されたフィン14の間では、上流側の第1領域S1に比べて流通する空気の抵抗が大きくなるので、フィン14に空気が十分に当たり、相対的に高い放熱力が得られる。
【0041】
さらに、図2において、ダクト9の外面に沿って流通している空気の一部は、ダクト9に形成された開口部30からダクト9の内部に流入する。開口部30から流入した空気は、フィン14の間隔が狭い第2領域S2に入る。フィン14から熱を奪いながらダクト9内を第1領域S1から第2領域S2に流れて来た空気の温度よりも、ダクト9の外を流れて開口部30から第2領域S2に入ってきた空気の温度の方が低いので、この温度の低い空気が特定発熱源である電子素子10(L)' の発熱を集中的に冷却するため、第2領域S2での冷却効果は特に高くなる。
【0042】
その結果、特定発熱源である電子素子10(L)' の特定位置を境界とした空気の上流側と下流側で生じる温度勾配は可及的に小さくなり、発熱源(電子素子10,10(L),10(L)’)の全体としての温度を従来に比べて均一化することができる。
【0043】
なお、ダクト9に形成した開口部30の大きさ及び形状によって、特定発熱源である電子素子10(L)' の発熱を集中的に冷却する効果は変動する。特定発熱源である電子素子10(L)' による発熱を集中的に冷却するためには、電子素子10(L)' の領域の一部に相当する面積の開口部30を、電子素子10(L)' の領域の上流側に設けることが好ましい。実施形態のように、電子素子10(L)' の領域の半分の面積の開口部30を、電子素子10(L)' の領域の上流側に設ければ、ダクト9の外を流れている比較的温度の低い空気を、効率的に、かつ高い流速でダクト9内に導き入れることができ、特定発熱源たる電子素子10(L)' に相当するフィン14の部分にピンポイントで当てることができる。このとき、フィン14の第1領域S1と第2領域S2との境界も電子素子10(L)' の上流側(縁辺15の直上よりも上流側)に設定すると、より好適となる。この開口部30の面積を電子素子10(L)' の面積以上にすることは、開口部30から流入する空気の流速が小さくなるため好ましくない。また、この開口部30の形状を電子素子10(L)' の領域を越えるような形状にすることは、電子素子10(L)' に相当する位置以外の位置に開口部30からの空気を当てることになるため、好ましくない。
【0044】
図5は、本実施形態のユニット3のヒートシンク8を示す正面図であって、電子素子10(L)の使用時におけるヒートシンク8の温度を、ソフトウエアを用いたシミュレーションによって計算し、ヒートシンク8の図面に重ねてコンターで表したものである。
【0045】
図5のコンター及び図中の温度表示から分かるように、図中左右方向の空気の流通方向Fに沿ったヒートシンク8の3つの位置には、周囲に比べてやや温度の高い箇所H1,H2,H3が現れている。図7中では、縦横2種類の矢印の交点で概略の位置を示した。これら各箇所H1,H2,H3の温度は、それぞれ、左側(上流側)から順に、概ね74〜75℃、73〜74℃、76〜77℃となっている。このように、上流から下流に向けてヒートシンク8の温度が上昇する単純な温度勾配は解消されており、また各箇所における周囲との温度の差も小さくなっている。すなわち、図7に示した比較例のヒートシンク103に比べ、ヒートシンク8の全体としての温度は均一に低下しており、ユニット3に搭載する電子素子10,10(L),10(L)’の使用時の許容温度を越えてしまう可能性は小さくなっている。
【0046】
図6は、電子装置1の使用時において、ユニット3に設けられた発熱源(電子部品)の位置(横軸に示す)とジャンクション温度(縦軸に示す)との関係を示すグラフであって、実施形態と、フィンの間隔が一定(例えば実施形態の第1領域S1のフィン14の間隔)である比較例とを、同一図中に示したものである。
【0047】
図6に示す実施形態のデータは、図5に示したようなシミュレーション結果を複数取得して綜合し、本実施形態の一般的な傾向として示したものである。この図から理解されるように、本実施形態のヒートシンク8及びこのヒートシンク8を利用した冷却装置7によれば、冷却空気の流通方向Fに関する温度勾配が緩和され、電子部品の全体としての温度を従来に比べて均一化することができる。このため、電子部品の温度が使用時に許容温度を越えてしまう危険性を回避することができる。
【0048】
以上説明した実施形態では、複数のフィン14で構成されているフィン部13が、フィン14の間隔の広い上流の第1領域S1と、フィン14間隔の狭い下流の第2領域S2の2つに分かれており、空気の流通方向Fにおける特定発熱源の始点を、第2領域S2の始点と一致させた。しかしながら、特定発熱源の位置でフィン14の間隔を狭くして冷却力を上げるという本発明の趣旨に沿う範囲において、流通方向Fの位置が異なる特定発熱源を2以上設定し、フィン14の間隔が異なる3以上の領域を設定してもよい。つまり、流通方向Fに沿った2以上の特定発熱源の特定位置ごとに、流通方向Fの下流に向かうほどフィン14の間隔が段階的に狭くなるように構成してもよい。
【0049】
以上説明した実施形態では、特定発熱源は一つであり、ダクト9に形成した開口部30も一つであったが、特定発熱源を2以上設定するなら各特定位置ごとに開口部30を設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…電子装置
3…ユニット
6…基板
7…冷却装置
8…ヒートシンク
9…ダクト
10,10(L)…発熱源としての電子素子
10(L)’…特定発熱源としての電子素子
12…ヒートシンク8のベース部
13…ヒートシンク8のフィン部
13(U)…上流側のフィン部
13(D)…下流側のフィン部
14,14a…フィン
20…ダクトの入口
21…ダクトの出口
30…ダクトに形成された開口部
S1…フィンの間隔が広い特定位置より上流側の第1領域
S2…フィンの間隔が狭い特定位置より下流側の第2領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7