(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の前記コイルユニットの前記導体巻き回し部の軸方向位置が、前記管材の軸方向に沿って隣り合う前記管外周部材の軸方向位置にそれぞれ一致する軸長の前記支持部材により、前記コイルユニットを保持する請求項2に記載の電磁成形方法。
前記コイルユニット保持工程は、前記支持部材の挿入側先端に設けた係合部を前記コイルユニットの挿入側先端部に係合させて、前記コイルユニットと前記支持部材とを同軸に保持する、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の電磁成形方法。
前記管材と、該管材の外周に配置された前記管外周部材との軸方向断面において、前記管材の外周面と、該外周面に対向する前記管外周部材の対向面とを、互いに平行に配置する、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の電磁成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の実施形態では、軸長の長いインパネレインフォースに、部材取り付け用のブラケットを電磁成形により取り付ける場合を例に説明するが、本発明は、これに限らず、他の用途、他の種類の管材に、管外周部材等の剛体を電磁成形して取り付けることにも適用可能である。
【0012】
<成形体の構成>
図1は電磁成形された成形体を模式的に示す外観斜視図である。
成形体11は、アルミニウム管材(以下、管材と略称する。)13と、管材13の軸方向中間部の外周に設けられたブラケット15A,15Bと、管材13の両端の外周に設けられたブラケット15C、15Dとを有する。ブラケット15A,15B,15C,15D(管外周部材)は、それぞれ円形の貫通孔17を有し、各貫通孔17に断面円形の管材13が挿通された状態で固定される。
【0013】
管材13は、押出成形や板材の溶接により製造でき、図示例の円管に限らず、断面が正方形又は長方形の四角管、断面が六角形の六角管、断面が八角形の八角管であってもよい。管材13の材質としては、アルミニウム合金(JIS6000系、7000系等)が好適な材料の一つとして挙げられる。例えば、管材13として、A6063押出用アルミニウム合金からなる中空パイプを用いることができる。
【0014】
ブラケット15A,15B,15C,15D(以下、これらを纏めてブラケット15とも呼称する)は、成形後に管材13と一体に構成される剛性部材である。ブラケット15は、JIS規格のSS400等の鋼、アルミ押出材(例えば、6063T5(JIS H 4100))、アルミ鋳物(例えば、AC4CH Al(JIS H 5202))、等の金属部材であり、成形体11の使用条件によっては、樹脂射出成形材等を用いることもできる。ブラケット15の貫通孔17は、管材13が円管である場合に円形状とされるように、貫通孔17は管材13の断面形状の相似形であることが好ましい。貫通孔17は、電磁成形による拡管前の管材13の外径よりも僅かに大きい内径に形成される。
【0015】
<電磁成形装置の構成>
次に、電磁成形により管材13をブラケット15にかしめて成形体11を作製する電磁成形装置100の構成を説明する。
【0016】
図2は電磁成形装置100の概略平面図である。
電磁成形装置100は、複数の治具プレート21と、治具プレート搬送機構23と、管材挿入機構25と、電磁成形用のコイルユニット27と、コイル移動機構29と、電流供給部31と、支持棒(支持部材)33と、支持棒33を軸方向に移動させる支持棒移動機構35と、を備える。
【0017】
この電磁成形装置100は、管挿入ステージST1と、拡管ステージST2とを有し、概略的には次のように動作する。管挿入ステージST1では、管材挿入機構25により、管材13を治具プレート21に移載する。治具プレート搬送機構23は、管材13が移載された治具プレート21を拡管ステージST2に搬送する。
【0018】
拡管ステージST2では、コイル移動機構29により、コイルユニット27を治具プレート21に支持された管材13に挿入する。また、支持棒移動機構35により、治具プレート21に支持された管材13に支持棒33を挿入する。そして、電流供給部31によりコイルユニット27に通電して、管材13を電磁成形により拡管することにより前述の成形体11が作製される。
【0019】
次に、上記した電磁成形装置100の各部についての詳細を、順次に説明する。
<治具プレート>
図3は治具プレート21の斜視図である。
治具プレート21は、基板41と、基板41上に固定されるブラケットホルダ43A,43B,43C,43Dと、ブラケットホルダ43C,43Cのそれぞれ軸方向外側に配置された管材位置決め部45,47と、を備える。なお、図中には、ブラケットホルダ43A,43B,43C,43Dに支持されるブラケット15A,15B,15C,15Dと、ブラケット15A,15B,15C,15Dの各貫通孔17に挿入される管材13(図中点線)と、を併せて示してある。
【0020】
基板41は、一枚の鋼材からなり、上面側にフェノール樹脂(ベークライト(登録商標))等の電気絶縁層が設けられる。この基板41によれば、管材13のような径に比較して軸長が長い長尺部材を、曲がりが少ない状態で保持できる。また、管材13に誘起される誘導電流が基板41に流れることがない。
【0021】
ブラケットホルダ43Aは、ブラケット15Aを収容し、不図示のトグルクランプ等により締め付けられる。これにより、貫通孔17を所定位置に位置決めされた状態でブラケット15Aが保持される。ブラケットホルダ43B,43C,43Dも同様に、ブラケット15B,15C,15Dをそれぞれ位置決めして保持される。よって、ブラケットホルダ43A,43B,43C,43Dに保持された各ブラケット15A,15B,15C,15Dの貫通孔17は、全て同軸に配置される。
【0022】
管材位置決め部45,47は、貫通孔17に挿入された管材13の端部を支持し、管材13が各貫通孔17の軸芯と同軸になるように位置決めする。したがって、管材13の外周面とブラケットの貫通孔17の内周面との間には、周方向に均等な径方向隙間が形成される。
【0023】
管材位置決め部45,47の位置決め機構は、特に限定されないが、管材13の端部を水平及び鉛直方向に移動調整できるチャック機構であってもよく、図示例のように、管材13の外径と略等しいガイド孔45a,47aが、貫通孔17の軸芯と同軸に形成された板材によるものであってもよい。いずれの場合でも、管材13の外周面と貫通孔17の内周面とが、平行に、好ましくは3°未満の傾斜に、さらに好ましくは1°以内の傾斜に調整できればよい。双方の面が上記の範囲内であれば、管材13が貫通孔17の内周面に密着して、良好にかしめることができる。
【0024】
<治具プレート搬送機構>
治具プレート搬送機構23は、一対の搬送用レール51と、搬送用レール51に沿って配置され、コンベヤチェーンが周回する搬送用コンベヤ(図示せず)とを有する。搬送用コンベヤには治具プレート21が載置され、コンベヤチェーンの駆動によって治具プレート21が搬送用レール51に沿って搬送される。つまり、治具プレート搬送機構23は、治具プレート21を、搬送用レール51に沿って管挿入ステージST1から拡管ステージST2に搬送する。
【0025】
<管挿入機構>
図2に示す管挿入ステージST1の管材挿入機構25は、治具プレート21の一端側(図中右側)に配置されたベース53と、ベース53上に設けられた管挿入駆動部55とを備える。
【0026】
管挿入駆動部55は、管材13の一端部を不図示のチャック機構に支持させ、管材13を治具プレート21へ向けて長手方向に移動させる。これにより、管挿入駆動部55は、管材13を、ブラケットホルダ43A,43b,43C,43Dに保持されたブラケット15A,15B,15C,15Dの貫通孔17(
図3参照)に挿入させる。
【0027】
治具プレート搬送機構23の治具プレート21とベース53とは、各上面が互いに平行となって配置される。そのため、管挿入駆動部55による管材13の移動によって、管材13は、治具プレート21側に支持されたブラケット15A,15B,15C,15Dの貫通孔17と同軸に保たれて挿入される。そして、管材13は、貫通孔17にガイドされて、管材位置決め部45,47により貫通孔17と同軸に位置決めされる。そのため、管材13は貫通孔17と高い精度で同軸に配置されることになる。
【0028】
<コイルユニット>
コイルユニット27は、拡管ステージST2における治具プレート21の一方の側(図中右側)に配置される。コイルユニット27の拡管ステージST2側の先端にはコイル部61が配置される。
【0029】
図4はコイルユニット27の模式的な構成図である。
コイルユニット27は、基端27aから先端27bへ向かう長手方向に沿って形成され、先端27b側から管材13に挿入される。
【0030】
コイルユニット27は、導体巻き回し部63と、一端部が導体巻き回し部63に接続され長手方向に延びる一対の導体延出部65a,65bと、長手方向に沿って設けられ少なくとも導体延出部65a,65bを支持する樹脂製の導体支持部67と、導体支持部67の他端部に接続されたコイル端子部69A,69Bと、を備える。
【0031】
導体巻き回し部63は、円柱形状の樹脂製の軸芯部材71における外周部に配置される。また、コイル端子部69A,69Bは、導体支持部67の基端側に設けた端子支持部73に配置される。軸芯部材71は、導体支持部67とは別体として、導体支持部67とは分割可能に形成されていてもよく、導体支持部67と一体に形成されていてもよい。
【0032】
図5はコイルユニット27に用いる導体の単体構成を模式的に示す導体の構成図である。
導体巻き回し部63と、導体延出部65a,65bは、中心に連通孔75が形成された管状の導体(ホローコンダクター)77からなる。また、連通孔75はコイル端子部69A,69Bにも形成される。連通孔75はポンプPに接続され、ポンプPから冷却媒体が供給される。これにより、通電時に発熱する導体巻き回し部63や導体延出部65A,65B等を冷却する。冷却媒体としては、エア、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が用いられる。
【0033】
図4に示す導体巻き回し部63の外周面には、導体77を覆う電気絶縁性を有する樹脂被覆層79が設けられる。樹脂被覆層79は、導体77の表面にガラス繊維のテープを巻きつけて軸芯部材71の外周に巻き回し、さらに、巻き回された導体77のテープに樹脂を含浸させることで形成される。また、樹脂被覆層79は、導体巻き回し部63の外周のみならず、導体巻き回し部63における隣接する導体間、及び導体巻き回し部63の内周にも設けられる。樹脂被覆層79の外周面は、必要に応じて切削、研削、研磨することで、滑らかな表面に仕上げられている。
【0034】
図6は導体支持部67の一部分解斜視図である。
導体支持部67は、
図4に示す軸芯部材71から基端27a側の端子支持部73までの間に設けられる。図示例の導体支持部67は、軸芯部材71とは別体に形成された円柱状の部材であり、軸方向直交断面が半円形の一対の分割片67A,67Bからなる。
【0035】
一対の分割片67A,67Bの少なくとも一方の分割対向面(図示例では81A)には、導体支持部67の長手方向に沿って一対の導体延出部65a,65bを互いに一定間隔で離間させて保持する一対の導体保持部83A,83Bが形成される。導体保持部83A,83Bは、互いに逆向きの電流が流れる一対の導体延出部65a,65bに発生する振動から、導体延出部65a,65bを保護している。
【0036】
<コイル移動機構>
次に、コイル移動機構29について説明する。
図2に示す拡管ステージST2のコイル移動機構29は、治具プレート21の一方の側(図中右側)に設けられたベース85と、ベース85に設けられコイルユニット27の基端部を支持するコイル移動部87とを備える。
【0037】
コイル移動部87は、コイルユニット27を把持するチャッキング部89と、コイルユニット27を長手方向に沿って移動させる図示しない駆動部とを有する。駆動部は、コイルユニット27を長手方向に進退駆動する。
【0038】
コイル移動機構29は、コイルユニット27を、管材13と同軸にして管材13内へ挿抜可能に支持する。コイル移動機構29によるコイルユニット27の移動によって、コイル部61を所望の拡管箇所に配置することができる。
【0039】
<電流供給部>
電流供給部31は、
図2に示すコイル部61に電磁成形のための電流を供給する。電流供給部31は、コイルユニット27のコイル端子部69A,69B(
図4参照)に接続する端子接続部91と、電源部93と、電源部93とコイル端子部69A,69Bとを接続する高圧電源ケーブル95とを有する。
【0040】
電源部93は、コンデンサに充電したエネルギーを、スイッチを通じて数ミリsec以内の極めて短い時間でパルス状の大電流として出力する。出力されたパルス電流は、高圧電源ケーブル95を通じてコイル部61に供給される。電磁成形の1回当たりの投入エネルギーは、例えば20kJ程度に達する。
【0041】
上記スイッチとしては、ギャップスイッチ、サイラトロンスイッチ、メカニカルスイッチ、半導体スイッチ、イグナイトロンスイッチ等が利用可能である。
【0042】
<支持棒移動機構>
支持棒移動機構35は、拡管ステージST2の治具プレート21のコイル移動機構29側とは反対の他端側(図中左側)に配置される。支持棒移動機構35は、ベース96と、ベース96に設けられ支持棒33を長手方向に移動自在に支持する支持棒移動部97とを有する。
【0043】
支持棒移動部97は、支持棒33の基端部を支持するチャッキング部99と、チャッキング部99により支持された支持棒33を長手方向に移動させる不図示の駆動部とを有する。駆動部は、支持棒33を長手方向に進退駆動する。
【0044】
図7は支持棒33の先端部に設けたコイル保持部111の拡大斜視図である。
支持棒33は、治具プレート21側の先端部に、コイル保持部111が設けられる。コイル保持部111は、電気絶縁性を有する絶縁体であり、有底の円筒形状に形成される。コイル保持部111の円筒外周面111aは、管材13の内径と等しいか僅かに小さな外径φDrを有する。また、コイル保持部111の先端には、軸断面が円形の係合凹部113が形成される。
【0045】
係合凹部113は、コイルユニット27のコイル部61の外径と略等しい内径φdrを有し、支持棒33と同軸に形成される。なお、コイル保持部111は図示例の構成に限らず、管材13内でコイルユニット27のコイル部61側を保持できる構成であれば任意の形状であってもよい。
【0046】
コイル保持部111は、その全体が絶縁体である以外にも、少なくとも係合凹部113が形成される側の端面、及び係合凹部113の内面が、電気絶縁性を有していればよい。
【0047】
<第1の電磁成形方法>
次に、上記構成の電磁成形装置100により、
図1に示す管材13を電磁成形する手順を順次説明する。
【0048】
図8は管挿入ステージST1の治具プレート21上に保持されたブラケット15A,15B,15C,15Dの貫通孔17に、管材13を挿入する管挿入工程を示す工程説明図である。
まず、管材13を用意して、この管材13を、
図2に示す管材挿入機構25の管挿入駆動部55内のチャック機構に取り付ける。
【0049】
また、治具プレート21のブラケットホルダ43A,43B,43C,43Dに、ブラケット15A,15B,15C,15Dをそれぞれ取り付ける。各ブラケット15A,15B,15C,15Dは、それぞれ貫通孔17を同軸にしてブラケットホルダ43A,43B,43C,43Dに固定される。これにより、管挿入駆動部55に支持された管材13、ブラケット15A,15B,15C,15Dの各貫通孔17、管材位置決め部45,47のガイド孔45a,47aは、軸線Axを軸心としてそれぞれ同軸に配置される。
【0050】
(管挿入工程)
次に、管挿入駆動部55の駆動により、管材13を治具プレート21に向けて移動させる。すると、管材13は、一方の管端部13aが管材位置決め部45のガイド孔45a,ブラケット15C,15A,15B,15Dの貫通孔17、管材位置決め部47のガイド孔47aにこの順で挿入される。そして、挿入先端側の管端部13aが管材位置決め部47のガイド孔47aに支持され、挿入後端側の他方の管端部13bが管材位置決め部45のガイド孔45aに支持される。
【0051】
これにより、管材13は、軸線Axを軸芯としてブラケット15A,15B,15C,15Dに、高精度な同軸状態で位置決めされる。管挿入駆動部55は、管材13を治具プレート21に移載した後、
図8に点線で示す退避位置まで後退される。
【0052】
図2に示す治具プレート搬送機構23は、管挿入ステージST1において上記の管材13が支持された治具プレート21を、拡管ステージST2に搬送する。
【0053】
(コイルユニットと支持部材の配置工程)
図9A、
図9Bは治具プレート21上に支持された管材13にコイルユニット27と支持棒33とを挿入して管材13を拡管する拡管工程を段階的に示す工程説明図である。
【0054】
図9Aに示すように、拡管ステージST2に搬送された治具プレート21には、コイル移動機構29に支持されたコイルユニット27と、支持棒移動機構35に支持された支持棒33とが、管材13の軸芯上で、端部同士を対面させて管材13を挟んで同軸に対向して配置される。
【0055】
(コイル移動工程)
そして、
図9Bに示すように、コイル移動機構29はコイルユニット27を治具プレート21に向けて移動させ、コイル部61を管材13内のブラケット15Aの軸方向位置に配置する。ここで、コイルユニット27を管材13内に挿入する際、コイルユニット27が管材13と同軸であることがコイルの挿入性の観点から好ましいが、厳密に同軸でなくてもよい。なお、ここではブラケット15Aの軸方向位置での電磁成形を例に説明するが、電磁成形を実施する順序は各ブラケット15A,15B,15C,15Dの軸方向位置で任意に設定できる。
【0056】
(コイルユニット保持工程)
次に、支持棒移動部97を駆動して、支持棒33を治具プレート21に向けて移動させ、コイル保持部111をコイル部61に突き合わせる。これにより、コイル部61の挿入側先端部がコイル保持部111に保持されて、コイル部61が管材13内に安定して支持される。コイル移動機構29は、コイル部61がコイル保持部111に保持された位置で、コイルユニット27の軸方向移動を規制する。
【0057】
図10は管材13内でコイル部61がコイル保持部111に保持された状態を示す断面図である。
【0058】
コイル保持部111は、円筒外周面111aが管材13の内周面13cに沿って滑りながら移動してコイル部61に突き当たる。突き当たった際、内径がφdrの係合凹部113に、外径がφDc(≒φdr)のコイル部61の挿入先端が嵌入される。このようにして、コイル部61の挿入側先端部が管材13内でコイル保持部111に保持される。
【0059】
したがって、コイル部61は、ブラケット15Aの軸方向位置で、コイル保持部111を介して管材13の内周面に径方向に関して固定される。その結果、管材13内においては、管材13の中心軸をAx1、コイルユニット27の中心軸をAx2、支持棒33(コイル保持部111)の中心軸をAx3とした場合、これら、中心軸Ax1,Ax2,Ax3は同軸に配置される。
【0060】
また、管材13は、前述した管材位置決め部45,47(
図3参照)によってブラケット15A,15B,15C,15Dと同軸に配置される。そのため、ブラケット15A(15B,15C,15Dも同様)に形成された貫通孔17の中心軸も同様に、管材13の中心軸Ax1と同軸に配置される。貫通孔17の内径φdbは、管材13の外径φDpよりも大きい(φDp<φdb)。
【0061】
なお、管材13とコイルユニット27は、コイルユニット27がコイル保持部111に保持されたときに同軸となるが、管材13内へコイルユニット27を挿入する時点で、管材13とコイルユニット27との同軸状態が維持されていてもよい。
【0062】
図11は
図10のXI−XI線の概略断面図である。
コイル保持部111は、コイル部61を同軸に支持することで、コイル部61と管材13の内周面13cとの間には、周方向に均等な隙間δ1が形成される。また、ブラケット15Aの貫通孔17と管材13の外周面13dとの間には周方向に均等な隙間δ2が形成される。
【0063】
(かしめ工程)
次に、
図9Bに示す状態で、電流供給部31(
図2参照)によってコイル部61に通電する。
図12はコイル部61による管材13の電磁成形の様子を示す概略構成図である。同図においては、管材位置決め部45(
図9A参照)を省略している。
管材13のブラケット15Aの軸方向位置では、コイル部61の通電による磁界によって誘導電流が誘起される。この誘導電流により生じるローレンツ力によって、管材13は図中点線で示すように拡管する。
【0064】
このとき、ブラケット15Aがコイル部61の軸方向中央に配置されるため、ブラケット15Aの貫通孔17に管材13の外周面が拡管して押し当てられる。また、ブラケット15Aの軸方向両脇側では、コイル部61が配置される軸方向領域内(磁界が強い領域)で管材13に環状の膨出部121が形成される。その結果、一対の膨出部121がブラケット15Aを軸方向に挟み込むように形成され、管材13がブラケット15Aにかしめられる。
【0065】
上記の管材13の電磁成形による拡管を、
図9Bに示すブラケット15B,15C,15Dについても同様に実施する。つまり、上記の一例として示すブラケット15Aの軸方向位置で管材13を電磁成形で拡管した後、コイル移動機構29は、コイルユニット27の軸方向規制を解除し、コイル部61を、次に電磁成形するブラケットの軸方向位置に移動させる。また、支持棒33も同様に移動させ、移動先のコイル部61を管材13内で支持する。
【0066】
コイル保持部111は、電磁成形位置毎にコイル部61と分離させ、次の電磁成形位置で再度突き合わせて嵌合させてもよく、1回目の拡管時にコイル部61と嵌合させた状態を保持しながら、支持棒33を次の電磁成形位置に軸方向移動させることでもよい。
【0067】
図13は管材13の電磁成形後の概略断面図である。
上記した電磁成形による拡管は、ブラケット15A,15B,15C,15Cの各軸方向位置で順次に実施される。これにより、管材13は、各軸方向位置でブラケット15A,15B,15C,15Cにかしめられる。
【0068】
そして、上記した電磁成形の後、
図3に示すブラケットホルダ43A,43B,43C,43Dの固定を解除することで、各ブラケット15A,15B,15C,15Dがかしめ固定された成形体を取り出す。こうして、
図1に示す状態の成形体11が得られる。
【0069】
<管材、コイル等の同軸配置による効果>
本構成の電磁成形装置100によれば、コイル部61が管材13の拡管位置において、管材13と同軸に配置される。また、管材13がブラケット15A,15B,15C,15Cの貫通孔17と同軸に配置される。そして、コイル部61は、支持棒33の先端に設けたコイル保持部111によって、管材13と同軸に管材13内で径方向に関して固定される。そのため、
図11に示すように、コイル部61と管材13との間の隙間δ1と、管材13とブラケット15A,15B,15C,15Cとの間の隙間δ2が、それぞれ周方向に高い精度で均一にされる。
【0070】
隙間δ1が周方向に均一になることで、コイル部61から発生する磁界が均等に管材13に及び、管材13には周方向に均一な誘導電流が誘起される。
【0071】
ここで、隙間δ1が周方向に不均一であると、管材13の周方向位置によって、コイル部61に近い部位と遠い部位が生じ、誘起される誘導電流の大きさに差が生じる。すると、管材13に作用する電磁力にバラつきが生じ、管材13の位置によって塑性変形量が異なってしまう。
【0072】
しかし、本構成によれば、隙間δ1が周方向に均一にできるため、管材13には放射状に均等な電磁力が作用して、管材13が均等に塑性変形する。これにより、
図24Bの領域217に示すような拡管不足の発生を防止できる。
【0073】
また、隙間δ2が周方向に均一な隙間になることで、均等に塑性変形した管材13の外周面が、周方向にわたって同時に、しかも略等しい電磁力でブラケット15A,15B,15C,15Cに突き当たる。その結果、管材13がブラケット15A,15B,15C,15Cの軸方向両脇側で膨出する膨出部121が、周方向に均一に形成される。
【0074】
ここで、管外周部材であるブラケットが金属部材の場合、拡管時に管材13がブラケットの貫通孔17端部に時間差を有して接触すると、管材13に誘起された誘導電流は、最初に接触した接触点からブラケット側に逃される。すると、最初の接触点での変形量が大きく、他の部位では変形量が少なくなり、膨出部121の形状が周方向、径方向に不均一となる。その場合、管材13とブラケットとのかしめ強度が不十分となる。
【0075】
しかし、本構成の電磁成形装置100によれば、管材13とブラケットの貫通孔17とが同軸に位置決めされるため、隙間δ2が周方向に均一となり、拡管時に管材13がブラケットの貫通孔17端部に時間差なく接触することになる。よって、管材13の膨出部121が周方向に均等に形成され、管材13とブラケットとが強くかしめ接合される。このようにして、長尺状の管材13をブラケット15A,15B,15C,15Dに均等なかしめ状態で接合させることができる。
【0076】
<第2の電磁成形方法>
次に、第2の電磁成形方法の手順を説明する。
図14A〜
図14Cは第2の電磁成形方法におけるコイルユニット保持工程、コイル移動工程の手順を示す工程説明図である。以下の説明においては、同一の部材や部位に対しては同一の符号を付与することで、その説明を簡単化、または省略する。
【0077】
第2の電磁成形方法では、コイルユニット保持工程が、コイル移動工程の前に実施される以外は、前述した第1の電磁成形方法の手順と同様である。
【0078】
まず、前述の
図9Aに示すように、管材13をブラケット15A,15B,15C,15Cの貫通孔17に挿入し、長手方向両端部を管材位置決め部45,47により支持させる。この状態では、
図14Aに示すように、管材13の一端の軸方向外側にコイルユニット27のコイル部61が配置される。
【0079】
次に、
図14Bに示すように、支持棒33を管材13の他端から挿入して、管材13の一端から突出させ、コイル部61の管材13側の先端部に突き合わせる。これにより、コイル部61の先端が、コイル保持部111の係合凹部113に嵌入され、コイルユニット27が支持棒33と同軸に支持される。
【0080】
そして、
図14Cに示すように、コイル部61の先端をコイル保持部111に保持させたまま、コイルユニット27を管材13側に移動させ、コイル部61を、拡管位置となるブラケット15Cの軸方向位置に配置する。このとき、支持棒33は、コイルユニット27に従動して管材13内に引き戻され、コイル部61を管材13内で径方向に固定する。また、コイル部61は、不図示のコイル移動部によるコイルユニット27の固定によって、軸方向移動が規制される。
【0081】
コイル部61がブラケット15Cの軸方向位置に配置された後、コイル部61を通電して、管材13を拡管する。すると、管材13のコイル部61の対面する領域がブラケット15Cに向けて塑性変形し、ブラケット15Cの軸方向両脇に膨出部121が形成される。その結果、管材13がブラケット15Cにかしめられる。
【0082】
この手順によれば、コイル保持部111が管材13の外側でコイル部61に嵌入されるため、コイル部61のコイル保持部111への保持状態を簡単に確認できる。また、保持状態の微調整も作業性よく実施でき、したがって、コイル保持部111とコイル部61との係合不良が生じ難くなり、精度の良い電磁成形が行える。
また、コイルユニット27を支持棒33によって保持された状態でブラケット15Cの軸方向位置に配置させるため、コイルユニット27が支持棒33によって管材13内をガイドされながら移動する。このため、コイルユニット27を、管材13との引っ掛かりを生じることなくブラケット15Cの軸方向位置に配置でき、コイルユニット27の軸方向の位置合わせがしやすくなる。また、コイルユニット27の軸方向位置の微調整が可能となり、より精度の高い電磁成形が可能となる。
【0083】
上記の手順では、コイルユニット27と支持棒33のコイル保持部111とを管材13の管外で突き合わせているが、管材13の管内で突き合わせてもよい。その場合、コイルユニット27と支持棒33のコイル保持部111とが管材13の径方向に規制され、双方を同軸に位置決めしやすくなる。
【0084】
<第3の電磁成形方法>
次に、第3の電磁成形方法の手順を説明する。
図15は第3の電磁成形方法を実施する電磁成形装置200の概略平面図である。
電磁成形装置200は、複数の治具プレート21と、治具プレート搬送機構23と、管材挿入機構25と、コイルユニット27A,27Bと、コイル移動機構29A,29Bと、電流供給部31A,31Bと、コイル保持部125と、を備える。コイル移動機構29A,29B、及び電流供給部31A,31Bは、前述の電磁成形装置100におけるコイル移動機構29、電流供給部31と同様の構成である。
【0085】
この電磁成形装置200は、前述した電磁成形装置100の支持棒移動機構35(
図2参照)の代わりに、コイル移動機構29Aを軸方向に反転させたコイル移動機構29Bを設けている。また、このコイル移動機構29に支持されるコイルユニット27Bの挿入側先端部には、コイル保持部(支持部材)125が取り付けてある。つまり、本構成のコイルユニット27Bとコイル移動機構29Bは、前述の支持棒33と支持棒移動機構35としても機能する。
【0086】
図16はコイルユニット27Bの挿入側先端部の概略拡大図である。
コイル部61Bの挿入側先端部に取り付けたコイル保持部125は、軸方向両端に係合凹部127,129が形成される。一方の係合凹部127は、コイル部61の先端部が嵌入され、コイル保持部125がコイルユニット27Bと一体にされる。コイル保持部125の係合凹部129は、前述のコイル保持部111の係合凹部113と同様の形状を有する。
【0087】
コイル保持部125の他方の係合凹部129は、後述するように
図15に示すコイルユニット27Aのコイル部61Aの先端部が嵌入される。
【0088】
図17は
図15に示す電磁成形装置200のコイル部61Aによる管材13の電磁成形の様子を示す概略構成図である。
コイルユニット27Aは、管材13の一端から挿入され、コイル部61Aがブラケット15Cの軸方向位置に配置される。また、コイルユニット27Bは、管材13の他端から挿入され、挿入側先端部のコイル保持部125にコイル部61Aの挿入側先端部が保持される。この状態でコイル部61Aに通電することで、管材13が拡管して、ブラケット15Cにかしめられる。
【0089】
本構成によれば、複数のコイルユニット27A,27Bを管材13に挿入することで管材13を拡管できる。そのため、前述の支持棒33(
図2参照)を管材13に挿入して電磁成形し、電磁成形後に支持棒33を抜き去り、改めて支持棒33の挿入側からコイルユニットを差し込んで電磁成形するといった工程を省略できる。これにより、生産性が著しく向上する。また、コイル部61Bの先端に設けられたコイル保持部125により、コイル部61A,61B双方の芯出しができるため、電磁拡管精度が向上する。
【0090】
上記例では、コイルユニット27Bにコイル保持部125を取り付けているが、コイルユニット27Aにコイル保持部125を取り付けてもよい。
【0091】
また、上記した工程では、管材13のブラケット15Cの軸方向位置でコイルユニット27Aとコイル保持部125を突き合わせているが、ブラケット15Cの軸方向位置以外の管材13内で突き合わせてもよい。その場合、コイルユニット27Aをコイル保持部125に保持させて、コイルユニット27A,27Bを一体に移動させ、コイル部61Aをブラケット15Cの軸方向位置に配置できる。これによれば、コイル部61Aの軸方向位置の微調整が可能となり、より精度の良い電磁成形が行える。
【0092】
さらに、コイルユニット27Aとコイル保持部125とを、管材13の管外で突き合わせてもよい。その場合、コイルユニット27Aの撓みを抑えられ、コイルユニット27A,27B同士の同軸を調整しやすくなる。また、コイルユニット27Aのコイル保持部125への保持状態を簡単に確認でき、保持状態の微調整も作業性よく実施できる。その結果、コイルユニットと支持部材とを同軸に位置決めしやすくなり、コイルユニットの保持を確実に行え、精度の良い電磁成形が行える。
【0093】
図18は軸方向長さが調整されたコイル保持部125Aを用いる管材13の電磁成形の様子を示す概略構成図である。
コイル保持部125Aは、コイル部61A,61Bの挿入側先端部を収容する係合凹部129,127の底部同士の軸方向長さWが、隣り合うブラケット(例えば15A,15C)の軸方向間隔L
Bに応じて決定される。
【0094】
図示例では、ブラケット15Aとブラケット15Cの軸方向位置で管材13を電磁成形する場合を示している。ここで、コイル部61Aの中心をブラケット15Cの軸方向位置に配置し、コイル部61Bの中心をブラケット15Aの軸方向位置に配置する。このときのコイル部61A,61Bの中心同士の軸方向間隔をL
Cとする。
【0095】
この場合、コイル保持部125Aは、軸方向間隔L
Cが軸方向間隔L
Bと等しくなる(L
C=L
B)軸方向長さWに設定される。これによれば、コイル保持部125Aにコイル部61A,61Bが保持されたコイルユニット27A,27Bは、一方のコイル部61Aをブラケット15Cの軸方向位置に配置することで、他方のコイル部61Bがブラケット15Aの軸方向位置に配置される。
【0096】
図18に示すコイル部61A,61Bの配置状態で、各コイル部61A,61Bを通電することで、管材13を、ブラケット15A,15Cの各軸方向位置で一度に拡管できる。これにより、かしめ工程が簡素化され、電磁成形のタクトタイムを短縮できる。
【0097】
<第4の電磁成形方法>
次に、第4の電磁成形方法の手順を説明する。
図19は第4の電磁成形方法に用いるコイルユニットの模式的な構成図である。
本構成のコイルユニット28は、軸方向に沿った複数箇所(図示例では2箇所)に、コイル部62A,62Bが配置される。コイル部62A,62Bは、前述したコイル部61と同様の構成を有する。
【0098】
コイル部62A,62Bは、それぞれ独立したコイル部であり、個別に通電される。また、コイル部62Aとコイル部62Bとの間には導体支持部68Aが設けられ、コイル部62Bから基端28aまでの間には導体支持部68Bが設けられる。
【0099】
端子接続部91では、コイル部62Aからの導体延出部65a,65bの基端にコイル端子部69A,69Bが接続される。また、コイル部62Bからの導体延出部65a,65bの基端にコイル端子部70A,70Bが接続される。
【0100】
図20A〜
図20Cは第4の電磁成形方法に用いるコイルユニット28のコイル移動工程、コイルユニット保持工程、かしめ工程の手順を示す工程説明図である。
図20Aに示すように、コイルユニット28を管材13の一端側に配置して、
図20Bに示すように、コイルユニット28を管材13に挿入する。ここで、コイルユニット28は、コイル部62A,62Bの中心位置同士の軸方向間隔Laを、ブラケット15A,15Cの軸方向間隔Lbと一致させている。そのため、コイル部62A,62Bは、管材13内へ挿入することによって、ブラケット15A,15Cの軸方向位置にそれぞれ一度に配置される。
【0101】
次に、支持棒33を管材13の他端側から挿入し、支持棒33の先端に設けたコイル保持部(支持部材)111をコイル部62Aに突き合わせる。コイル保持部111は、係合凹部113にコイル部62Aの先端を嵌入させ、コイルユニット28を管材13内で保持する。
【0102】
これにより、コイル部62A,62Bは、管材13と同軸に位置決めされる。また、管材13は不図示の管材位置決め部によって、ブラケット15A,15Cの貫通孔17と同軸に位置決めされる。さらに、コイルユニット28は、不図示のコイル移動部により軸方向移動が規制される。
【0103】
そして、
図20Cに示すように、管材13内に固定されたコイル部62A,62Bに通電することで、管材13を拡管させて膨出部121を形成し、管材13をブラケット15A,15Cにかしめる。
【0104】
なお、この場合も同様に、管材13のブラケットの軸方向位置以外の管内、又は管材13の管外で、コイル保持部111をコイル部62Aに突き合わせて保持した後、コイル保持部111にコイル部62Aを保持させたまま支持棒33とコイルユニット28とを一体に移動させて、各コイル部62A,62Bを所望の拡管位置に配置してもよい。また、各コイル部62A,62Bのいずれか一方をブラケット15A,15Cのいずれかの軸方向位置に配置して電磁成形した後、いずれか他方を残りのブラケットの軸方向位置に配置して電磁成形してもよい。このように、コイルユニット28の複数箇所に設けたコイル部62A,62Bを順次に電磁成形に使用することでもよい。
【0105】
上記構成のコイルユニット28は、長手方向に沿った2箇所にコイル部62A,62Bを設けているが、コイル部の設置数は2つに限らず、3つ以上であってもよい。
【0106】
本構成のコイルユニット28によれば、複数のコイル部が一体に設けられるため、それぞれのコイル部を管材13と同軸に高い精度で位置決めできる。よって、コイル部毎に異なる配置ずれが生じず、簡単に位置決め精度を向上できる。これにより、コイル部の位置決め作業が簡素化され、作業効率が向上し、タクトタイムの短縮化が図れる。
【0107】
図21は管材13の軸方向両端から一対のコイルユニット28A,28Bを挿入して、ブラケット15A,15B,15C,15Dを同時に電磁成形する様子を示す工程説明図である。
【0108】
コイルユニット28A,28Bは、それぞれ前述のコイルユニット28と同様の構成を有する。また、コイルユニット28A,28Bの少なくともいずれか一方の挿入先端側にコイル保持部125Bが取り付けられている。本構成では、コイルユニット28B側にコイル保持部125Bを配置している。
【0109】
管材13の一端側からコイルユニット28Aが挿入され、管材13の他端側からコイルユニット28Bが挿入される。そして、コイルユニット28Aのコイル部62Aと、コイルユニット28Bのコイル保持部125Bとが突き当たり、コイル保持部125Bにコイルユニット28Aのコイル部62Aが保持される。
【0110】
コイル保持部125Bの軸方向長さは、
図18に示す場合と同様に、
図21のブラケット15A,15Bの軸方向間隔に応じて設定される。また、コイル部62A,62Bの軸方向間隔は、
図20Aに示す場合と同様に、
図21のブラケット15Aと15Bの軸方向間隔、ブラケット15Bと15Dの軸方向間隔と等しく設定される。
【0111】
したがって、コイルユニット28A(又は28B)のコイル部62Aをブラケット15A(又は15B)の軸方向位置に位置決めすることで、全てのコイル部62A,62Bが、拡管位置となるブラケット15A,15B,15C,15Dの軸方向位置に配置される。
【0112】
そのため、本構成によれば、複数のコイル部の少なくとも一つを軸方向に位置決めすることで、全てのコイル部を所望の軸方向位置に配置させることができる。よって、コイル部の位置決め作業がより簡素化され、作業効率が向上し、タクトタイムの短縮化が図れる。この場合も同様に、管材13のブラケットの軸方向位置以外の管内、又は管材13の管外で、コイル保持部125Bをコイル部62Aに突き合わせて保持した後、コイル保持部125Bにコイル部62Aを保持させたままコイルユニット28Aとコイルユニット28Bとを一体に移動させて、各コイル部62A,62Bを所望の拡管位置に配置してもよい。
【0113】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0114】
コイル保持部の係合凹部は、円筒状の内周面を有する有底凹部で示しているが、係合凹部の形状はこれに限らない。例えば、
図22に示すように、コイル保持部111Aの係合凹部113Aを、コイル部への挿入方向後方側(図中左側)に向けて徐々に縮径する、軸断面がテーパ状の側面131を有した形状にしてもよい。
【0115】
この場合、コイル保持部111Aをコイル部に突き合わせる際に、コイル部が側面131にガイドされながら係合凹部113Aに嵌入される。よって、コイル部は、多少の芯ズレがあっても側面131のテーパによりガイドされながら係合凹部113Aに挿入され、高精度に支持棒33と同軸状態に保持される。
【0116】
また、コイル保持部111は、コイル部側に形成した凹部に嵌入される凸部を有していてもよい。つまり、係合凹部113は、いずれか一方の凹部にいずれか他方の凸部が嵌合することで、互いが同軸に配置される構成であれば、その形状は任意であってよい。
【0117】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 管材の外周の軸方向に沿った複数箇所に管外周部材を配置する工程と、
導体巻き回し部、一端部が前記導体巻き回し部に接続され長手方向に延びる導体延出部、前記長手方向に沿って設けられ少なくとも前記導体延出部を支持する樹脂製の導体支持部を備えるコイルユニットを、前記管材の軸方向一端側に配置する工程と、
少なくとも前記管材側の先端が絶縁体からなる支持部材を、前記管材の軸方向他端側に配置する工程と、
前記コイルユニットと前記支持部材とを前記管材の軸方向に相対移動させて突き合わせ、前記支持部材の先端部で前記コイルユニットを同軸に保持させるコイルユニット保持工程と、
前記コイルユニットの前記導体巻き回し部を、前記管材内の前記管外周部材の軸方向位置に配置するコイル配置工程と、
前記コイルユニットの前記導体巻き回し部に通電して発生する電磁力により、前記管材を拡管させて前記管材に前記管外周部材を固着させるかしめ工程と、
を有し、
前記管材の前記複数箇所のそれぞれで、前記コイルユニットを前記支持部材に保持させたまま前記コイル配置工程及び前記かしめ工程をこの順に実施する電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、コイルユニットの挿入側先端部が支持部材によって精度良く保持されるため、コイルユニットが長尺な管材内に挿入された場合でも、コイルユニットが管材内で偏心し難くなる。このため、管材の電磁成形のばらつきが低減し、また、管材の管外周部材への固着状態が良好となって管材を管外周部材に均等なかしめ状態で接合させることができる。さらに、保持部材によってコイルユニットが軸方向に移動しないように固定されるため、コイルユニット側だけで軸方向移動を規制する場合よりも、電磁成形時のコイルユニットの軸方向移動を抑制しやすくなる。
【0118】
(2) 管材の外周の軸方向に沿った複数箇所に管外周部材を配置する工程と、
導体巻き回し部、一端部が前記導体巻き回し部に接続され長手方向に延びる導体延出部、前記長手方向に沿って設けられ少なくとも前記導体延出部を支持する樹脂製の導体支持部を備える一対のコイルユニットを、前記管材の軸方向一端側と他端側に配置する工程と、
一対の前記コイルユニットを前記管材の軸方向に相対移動させて突き合わせ、前記コイルユニットの少なくとも一方の挿入側先端部に設けられ少なくとも軸方向両端が絶縁体からなる支持部材の先端部で、該支持部材と対面する前記コイルユニットの先端部を同軸に保持させるコイルユニット保持工程と、
前記コイルユニットの前記導体巻き回し部を、前記管材内の前記管外周部材の軸方向位置に配置するコイル配置工程と、
前記管外周部材の軸方向位置に配置された前記導体巻き回し部に通電して発生する電磁力により、前記管材を拡管させて前記管材に前記管外周部材を固着させるかしめ工程と、
を有し、
前記管材の前記複数箇所のそれぞれで、前記コイルユニットを前記支持部材に保持させたまま前記コイル配置工程及び前記かしめ工程をこの順に実施する電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、コイルユニットの挿入側先端部が支持部材によって精度良く保持されるため、コイルユニットが長尺な管材内に挿入された場合でも、コイルユニットが管材内で偏心し難くなる。このため、管材の電磁成形のばらつきが低減し、また、管材の管外周部材への固着状態が良好となって管材を管外周部材に均等なかしめ状態で接合させることができる。さらに、保持部材によってコイルユニットが軸方向に移動しないように固定されるため、コイルユニット側だけで軸方向移動を規制する場合よりも、電磁成形時のコイルユニットの軸方向移動を抑制しやすくなる。また、一対のコイルユニットが共に管材内へ挿入されて、複数の拡管箇所を一度に又は続けて電磁成形できる。そのため、拡管箇所毎に保持部材を管材から抜去して新たにコイルユニットを挿入する場合と比較して、生産効率が向上する。
【0119】
(3) 一対の前記コイルユニットの前記導体巻き回し部の軸方向位置が、前記管材の軸方向に沿って隣り合う前記管外周部材の軸方向位置にそれぞれ一致する軸長の前記支持部材により、前記コイルユニットを保持する(2)の電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、一方のコイルユニットの導体巻き回し部を所望の管外周部材の軸方向位置に配置すると、他方のコイルユニットの導体巻き回し部も所望の管外周部材の軸方向位置に配置される。これにより、複数の軸方向位置で一度に拡管でき、かしめ工程が簡素化されて、電磁成形のタクトタイムを短縮できる。
【0120】
(4) 前記コイル配置工程の後に、前記コイルユニット保持工程を実施する(1)〜(3)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、コイルユニットが管外周部材の軸方向位置に配置された状態で、支持部材によってコイルユニットが同軸に保持される。
【0121】
(5) 前記コイルユニット保持工程の後に、前記コイル配置工程を実施する(1)〜(3)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、コイルユニットを支持部材によって保持された状態で管外周部材の軸方向位置に配置させるため、コイルユニットが保持部材によって管材内をガイドされながら移動する。このため、コイルユニットを、管材との引っ掛かりを生じることなく管外周部材の軸方向位置に配置でき、コイルユニットの軸方向の位置合わせがしやすくなる。また、コイルユニットの軸方向位置の微調整が可能となり、より精度の高い電磁成形が可能となる。
【0122】
(6) 前記コイルユニット保持工程は、前記管材の管内で前記コイルユニットを前記支持部材により保持する(5)の電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、支持部材によりコイルユニットを管材の管内で保持させるため、コイルユニットと支持部材とが管材の径方向に規制され、双方を同軸に位置決めしやすくなる。
【0123】
(7) 前記コイルユニット保持工程は、前記管材の管外で前記コイルユニットを前記支持部材により保持する(5)の電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、コイルユニットを管材の管内に延ばした状態で支持部材に保持させる場合と比較して、管外で保持させることでコイルユニットの撓みを抑えられ、コイルユニットを支持部材と同軸に調整しやすくなる。また、コイルユニットと支持部材とを管材の管外で突き合わせることで、コイルユニットの支持部材への保持状態を簡単に確認でき、保持状態の微調整も作業性よく実施できる。その結果、コイルユニットと支持部材とを同軸に位置決めしやすくなり、コイルユニットの保持を確実に行え、精度の良い電磁成形が行える。
【0124】
(8) 前記導体巻き回し部が軸方向の複数箇所に配置された前記コイルユニットを用いる(1)〜(7)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、導体巻き回し部が複数箇所に設けられることで、複数箇所の電磁成形を一度に又は順次に実施でき、生産効率が向上する。
【0125】
(9) 前記コイルユニット保持工程は、前記支持部材の挿入側先端に設けた係合部を前記コイルユニットの挿入側先端部に係合させて、前記コイルユニットと前記支持部材とを同軸に保持する、(1)〜(8)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、係合部によってコイルユニットと支持部材とが正確に同軸で位置決めされる。
【0126】
(10) 前記かしめ工程は、前記支持部材の外周面を前記管材の内周面に接触させて通電する、(1)〜(9)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、支持部材の外周面と管材の内周面との接触によって、支持部材が管材内に径方向に関して固定される。これにより、支持部材に保持されるコイルユニットと管材とが、より高精度に同軸状態にされ、電磁成形時に各部材に電磁力が作用しても、この同軸状態を維持し続けることができる。
【0127】
(11) 前記管材と、該管材の外周に配置された前記管外周部材との軸方向断面において、前記管材の外周面と、該外周面に対向する前記管外周部材の対向面とを、互いに平行に配置する、(1)〜(10)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、管材が拡管して管外周部材と接触する際、管材の外周面全体が管外周部材と同時に接触するようになる。したがって、管材に誘起された誘導電流が局所的に管外周部材へ逃されることなく、管材の周方向に均等な電磁拡管力が発生する。これにより、管材を均等に塑性変形させることができる。
【0128】
(12) 前記管外周部材は前記管材を挿通する貫通孔が形成され、
前記管材を前記貫通孔と同軸に支持する、(1)〜(11)のいずれか一つの電磁成形方法。
この電磁成形方法によれば、貫通孔の内周面が管材の外周面と平行となるため、内周面と外周面との間の隙間が一定になり、管材の拡管によって管材外周面の全体が貫通孔の内周面に同時に接触するようになる。
【課題】管材とコイルユニットとの軸芯ずれを防止して、成形用コイルを正確に位置決めすることで、長尺状の管材を管外周部材に均等なかしめ状態で接合できる電磁成形方法を提供する。
【解決手段】管材13の外周の複数箇所に管外周部材15Aを配置する。導体巻き回し部を有するコイルユニット27を管材13の軸方向一端側に配置し、支持部材33を管材13の軸方向他端側に配置する。コイルユニット27と支持部材33とを軸方向に相対移動させて支持部材33の先端部でコイルユニット27を同軸に保持させるとともに、コイルユニット27の導体巻き回し部を、管材13内の管外周部材15Aの軸方向位置に配置する。コイルユニット27に通電して発生する電磁力により管材13を拡管させて管材13に管外周部材15Aを固着させる。