【実施例1】
【0020】
図1から
図5に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明に係る天然芝施設1の実施例の模式図である。
図2は、本発明に係る天然芝施設1を上から見た図である。
図3、
図4、
図5は、競技領域100に床を設置する手順を示す図である。
天然芝施設1は、天然芝300を使用した競技施設であり、サッカーやアメリカンフットボール等に用いられる。また、天然芝300の上に、床を設置することで、他のイベント用に用いることも出来るものである。
天然芝施設1は、主に、競技領域100と柱立設部200と鉄骨組構造と床構造とから構成されている。例えば、ドーム型競技場が考えられる。
競技領域100は、天然芝300が植栽された部分である。天然芝300の下には、天然芝300を維持するための養土310があり、その下にはコンクリート基礎700が設けられている。コンクリート基礎700は、競技領域100の全面に設けられていてもいいし、柱立設部200の周囲のみ設けられていてもよい。天然芝300を植栽して行う競技としては、サッカーが主流である。天然芝300は、競技場の要素として重要であるが、維持管理に多くの作業が必要である。競技領域100内には、一定の間隔で、柱立設部200が設置されている。柱立設部200は、競技者に影響が出ない程度の深さに埋設されている。あまり浅い部分に埋設されると、天然芝300を踏んだ感触が変わり、競技者に違和感を与えることになる。
【0021】
柱立設部200は、競技領域100の上面に、イベント等用の床を設置するための支柱部400を固定する部分である。大きさは、特に限定はないが、例えば1辺50cmから1m程度である。柱立設部200は、天然芝300の面から50cm程度の深さに埋設されている。柱立設部200は、コンクリート基礎700上に設置されている。柱立設部200は、枠部210、蓋部220、柱固定部230、ボルト240から構成されている。枠部210は、柱立設部200の周囲の壁を構成し、柱立設部200全体を養土310から保護する。枠部210を用いないと、柱固定部230、ボルト240が、直接養土310と接触することになる。すると、養土310の湿気等によって、柱固定部230、ボルト240が腐食してしまう可能性がある。また、枠部210を設けることで、柱立設部200の使用時に、柱固定部230、ボルト240周辺の養土310を排除する必要が無くなり、作業時間を削減することが出来る。
【0022】
蓋部220は、柱立設部200の上部を覆うものである。柱立設部200を使用する際、柱立設部200の周辺の天然芝300、養土310を取り除き、蓋部220が完全に露出した時点で、蓋部220をはずす。こうすることで、天然芝300、養土310の取り除き量の目安になる。また、蓋部220をはずすことで、即時に、柱固定部230、ボルト240を使用可能状態とすることが出来る。蓋部220の材質は、湿気等による劣化が少なく、軽量であると好適である。
柱固定部230は、支柱部400を直接支える部分である。コンクリート基礎700に直接、支柱部400を設置してもよいが、平坦度がそのまま、上部の床の平坦度に影響することから、水平を出した、金属製プレートが好適である。支柱部400には、数トン程度の荷重がかかることから、柱固定部230についても十分な強度が必要である。
ボルト240は、柱固定部230と支柱部400を固定するものである。ボルト240の下部分は、コンクリート基礎700に対してアンカー構造で固定されている。ボルト240は、柱固定部230と支柱部400のフランジ430をナットで固定する。ボルト240の数は、8乃至12程度が適当である。
【0023】
鉄骨組構造として、支柱部400、梁部500で構成されている。天然芝300面から所定の高さにする支柱部400と、支柱部400の上部に接続し、床全体の支持を行う梁部500である。
支柱部400は、例えば2乃至4m程度の長さである。50cm程度が天然芝300の面よりも下に入り、梁部500が接続される部分を除いて、垂直方向に1乃至3m程度の空間が出来る構造である。このような空間を設けることで、床を設置している期間も、天然芝300の育成に適当な空間とすることが出来る。すなわち、例えば約1m程度の空間を設けることで、天然芝300のある空間に、競技領域100の一方からの送風が他方まで到達可能とすることが出来る。また、例えば3m程度の空間を設けることで、全面床610設置後も、芝刈機等の既存のメンテナンス機器を、そのまま使用することが出来る。尚、係る空間の高さは、上記の様に用途に合わせて決定されるほか、イベントによって任意に設定・変更することも可能であり、その際はイベントによる荷重耐力を考慮して決定される。
支柱部400の下部には、柱固定部230と固定するためのフランジ430が設けられている。支柱部400の上部には、梁部500と接続するための梁接続部410が設けられている。梁接続部410には、複数の孔があり、ボルト、ナットで梁部500の柱接続部510と接続される。梁接続部410の下部には、梁保持部420が設けられ、梁部500を支える構造である。梁部500の支持強度の増加と、作業時の梁部500の位置決めを容易にするためである。
【0024】
梁部500は、作業用床600、全面床610を支持する部分である。梁部500の柱接続部510は、支柱部400の梁接続部410に接続される。梁部500は、2つの支柱部400の間に渡され、梁部500全体として、面を形成する。梁部500の上には、作業用床600が固定される。固定は、例えば、梁部500と作業用床600に開けた孔をボルト、ナットで固定する方法で行われる。
【0025】
ところで、柱立設部200並びに支柱部400の他の構成態様として、図示されていないが、コンクリート基礎700に支柱部400を挿嵌可能な所要深さの穴部を形成すると共に、該穴部の内面に雌ネジ構造を形成することで、該穴部自体を柱固定用のボルト構造を備える柱固定部230とする態様が考え得る。このとき、該穴部に立設される支柱部400の下部にフランジ部430は設けられておらず、代わって支柱部400の外周面下部には、穴部内面に形成された雌ネジ構造に対応する所要高さ分の雄ネジ構造が形成されており、該穴部に支柱部400を螺合させつつ直接挿嵌することで、柱立設部200へ支柱部400を固定することが可能となる。
【0026】
床構造として、作業用床600、全面床610で構成される。作業用床600は、梁部500に対して固定される。作業用床600は、設営のための作業車を移動可能な程度の強度を持つ。作業用床600上を作業車が通ることで、天然芝300を痛めることなく、効率的に作業を進めることが出来る。
全面床610は、イベント等のための会場の床である。作業用床600の間に渡す様に設置される。全面床610の強度は、使用するイベントでの荷重に十分耐えられる強度を持つ。予め、最大荷重を想定して、全面床610の強度、材質を決定してもいいし、開催するイベントごとに、全面床610の種類を変更しても良い。
また、床構造の一部若しくは全部は、強度的に問題無ければ、孔部を備えた有孔状若しくは格子状構造の床材あるいは透明若しくは半透明の床材で構成してもよい。かかる構成を採用することで、イベント中も太陽光をはじめとする外部からの光が床を透過して天然芝300に入り、芝を養生することが出来る。
【0027】
尚、上記では、床構造が、作業用床600と全面床610で構成される場合について説明し、図面もその場合について図示されているが、床構造について、作業用床600無しに全面床610のみで構成される場合も考え得る。すなわち、梁部500に対して全面床610を直接固定する態様である。このとき、作業用床600が存しないことから、設営のための作業車は使用せず、大型クレーンや既設の天井クレーン等を使用して全面床610の設営作業が行われることとなる。
【0028】
(以下、順次繰り下げ)
図2に沿って、競技領域100における柱立設部200の配置位置について説明する。競技領域100全面に天然芝300が植栽されている。支柱部400を設置する箇所に、柱立設部200を設置、埋設する。柱立設部200は深く埋設されるので、競技者が柱立設部200の埋設のための違和感を感じることはない。競技領域100をイベント用に変更する際、柱立設部200の周辺のみ、天然芝300、養土310を掘り起こし、柱立設部200を露出させる。
図2でもわかるように、支柱部400の範囲の面積は、競技領域100全体からすると、極めて小さく、天然芝300全体の状態をほぼ維持したまま、イベント用の床を設置することが出来る。
イベント用の床を設置する方法として、天然芝300をすべて、除去する方法も考えられるが、そうすると、イベント終了後に、天然芝300を植栽するために多くの時間と費用が必要となる。それに対して、本発明では、天然芝300の状態を維持したまま、床を設置できるので、時間と費用を軽減することが出来る。
【0029】
サッカーで使用するドーム型競技場の競技エリアの大きさは、概ね長さ120m、幅90m程度である。10m間隔で、柱を設置した場合、長さ方向の柱の数は、13本。幅方向の柱の数は、10本程度である。
床設置時に、取り除いた芝は、別途、保管してもいいし、廃棄してもよい。イベント終了まで保管するとしても、少量であるので、保管は容易である。イベント終了後に、柱立設部200の部分に天然芝300を戻す必要があるが、狭い領域であるので、植栽は容易である。
【0030】
図3、
図4、
図5に沿って、設置手順を説明する。天然芝300を使用する競技で使用するときは、柱立設部200は、天然芝300、養土310の下に埋設されている(
図3(a))。柱立設部200は、蓋部220で覆われているので、柱立設部200の内部に水等が入ることはなく、柱固定部230、ボルト240は腐食することなく、保存されている。
競技場をイベント等に変更する際、柱立設部200の周辺を掘り起こし、柱立設部200を露出させ、蓋部220をはずす(
図3(b))。柱立設部200の周囲の天然芝300、養土310が柱立設部200の内部に崩れ落ちない程度に掘り、その後、蓋部220をはずす。柱立設部200の埋設してある位置を、わかりやすくするため、柱立設部200の位置に、競技の支障にならないようなマーカーを設置してもよい。また、柱立設部200の設置位置は、格子状となる場合が多いので、競技領域100の周囲に、マーカーを設置し、紐等で格子位置を特定しても良い。
柱立設部200の柱固定部230に対して、支柱部400を設置する(
図3(c))。支柱部400のフランジ430には、孔が開けられているので、その孔がボルト240に合うように、設置する。フランジ430は、ナット等によって、柱固定部230に対して、強固に固定される。
支柱部400に対して、梁部500を設置する(
図4(a)、
図5(a))。支柱部400の梁保持部420で、支柱部400と梁部500の位置を合わせ、柱接続部510と梁接続部410を合わせ、ボルト、ナットで固定する。梁部500は、床の荷重を受け止めることから、H鋼等の強度の高い鋼材を使用する。支柱部400と梁部500の位置精度が、床の平坦度に影響することから、高精度での設置が必要である。
梁部500に対して、作業用床600を設置する(
図4(b)、
図5(b))。梁部500と作業用床600は、ボルト、ナット等で、強固に固定する。作業用床600の上に、作業者、作業工具、作業車等が、乗ることになるので、作業用床600は、それに耐え得る強度が必要である。作業用床600を設けることで、床設置作業時に、作業者、作業車は、天然芝300を無用に痛めることなく、作業を行うことが出来る。
作業用床600に対して、全面床610を設置する(
図4(c)、
図5(c))。全面床610は、短冊型で、作業用床600に沿って配置する。全面床610は、行うイベントの種類によって、材質、強度を変えても良い。
【0031】
尚、イベントの内容によって、競技領域100内の荷重が大きく異なる場合は、荷重の少ない範囲は、柱立設部200を一部使用せず、荷重の多い範囲では、柱立設部200をすべて使用するようにしてもよい。そうすることで、柱立設部200を掘り返す作業を軽減出来る。
【0032】
このように、本発明によれば、鉄骨組で芝生を完全に覆う事で長期間、サッカー等の球技以外での使用が可能となる。また、芝生面とイベント用の床が2層となるため、芝生全体を別の場所に移動する等の手間が不要である。
また、鉄骨組を撤去後、柱立設部を埋め戻し、埋め戻した部分のみ芝生を張ることで、1乃至2日でサッカー等の球技が可能となる。さらに、設置、撤去とも一般的な建築機材を使用出来るため、低コストでの運用が可能である。またさらに、芝生面から床まで、一定の距離を離すことで、鉄骨組、床構造の下で芝生育成、管理が出来る。
【0033】
上述のように、本発明に係る天然芝施設1によれば、短期間で、容易に、芝と床を切り替えられることが可能であり、可動率を向上させ効率的な施設の運営を行うことが出来ると共に、設置後の床と天然芝の面との間に空間が形成されるため、該床により芝が外気から遮断されて断熱機能を発揮して芝育成に必要な温度管理が楽になり、外部から雑草の種が入り難くなって、雑草の除去手間を大きく減らすことも可能であって、除草剤や農薬等の散布量を減少させることも出来、さらには、敷設される芝の養生・育成の為に必要な種々の建築制限を受けることなく、設計の自由度が増大する、といった多くの優れた効果を奏するものである。
【実施例2】
【0034】
他の実施例について
図6,7,8を用いて説明する。実施例1と同様の部分は省略する。
図6、
図8は、本発明に係る天然芝施設の光源部の設置を説明する図である。
図7は、本発明に係る天然芝施設の送風部の設置を説明する図である。
実施例1によって、天然芝を用いる競技場を他のイベント用に、迅速に変更可能となる。しかしながら、イベントが長期の場合に、芝に対する光、水等が十分でないと、イベント完了後に、ある程度、芝の養生が必要となってしまう。
【0035】
そこで、芝の上に床が設置された状態であっても、芝の育成、養生が可能な技術が求められていた。
【0036】
図6に、芝に光を照射する一例を示す。光源部800は、LEDを用いた光源であり、天然芝300に対して、所定光量の白色又は特定の色の光を所定の時間照射することが出来る。光源部800は、作業用床600、全面床610の底側、天然芝300側に配置されている。基本的に、天然芝300のある領域すべてに照射できるように配置される。電源線は、梁部500を伝って、競技領域100外まで伸び、商用電源等に接続される。
天然芝300への光は、イベントと無関係に照射の管理が出来るので、芝に理想的な光を与えることが出来る。
尚、床構造として、孔部を備えた有孔状若しくは格子状構造の床材あるいは透明若しくは半透明の床材で構成することで、太陽光をはじめとする外部からの光が床を透過光が床を透過して天然芝300に入り込む態様を採用した場合であっても、夜間など外部の光が存しない場合も想定されるため、上記光源部800を設置する態様は有用である。
【0037】
次に、
図7に、芝への送風の管理の例を示す。芝生育成に通風は大事な要素であって、これを容易に管理し得るものである。
図7(a)は、競技領域100の天然芝300と全面床610の間の空間に向けて、仕切り部720を介して、一方の送風機710から空気を送り、他方の送風機710から空間内の空気を外に出す構造を示している。また、
図7(b)は、全面床610の所定箇所に吸気口620と送風機710を備え、吸気口620から競技領域100の天然芝300と全面床610の間の空間に向けて空気を送り、送風機710から空間内の空気を外に出す構造を示している。天然芝300の上に遮蔽物である全面床610があり、密閉空間となると、湿度が上昇し、芝育成の環境として不適切になってしまう。そこで、送風機710を用いて、空気を入れ替えることで、湿度の上昇を抑える。また、夏季であれば冷風を送り、冬季であれば温風を送ることで、温度管理も出来、芝の育成環境を整えることが出来る。
また、送風時に、加湿量を変えることで、芝の育成環境を整えることが出来る。仕切り部720を介することで、天然芝300付近の雰囲気が、無用にイベント会場内に混ざることを防止することが出来る。
さらに、送風時に、二酸化炭素などの気体を送り込むことで、より芝育成の増進を図ることも可能となる。
このように、送風機を用いることで、天然芝300部分の湿度、温度管理を行うことができる。
【0038】
次に、
図8に、芝に光を照射する変形例を示す。
図6のように、作業用床600、全面床610に光源部800を配置すると、天然芝300に対して、直接光源部800の光が当たることとなるが、光源部800を作業用床600、全面床610に設置することが手間であるし、配線の処理も手間である。そこで、光源を柱立設部200の中に設置し、かかる柱立設部200内に設置された光源部800から、斜め横又は斜め上方に光を照射し、全面床610の底面に配置された反射部610によって、天然芝300に光を照射する構造である。反射部610は、アルミ箔のようなものでもいいし、白色のシートでも良い。このような構造とすることで、支柱部400設置時に光源部800も設置が出来るので作業性が向上する。また、予め、柱立設部200に対して、コンクリート基礎700から配線を引いておくことで、配線の手間を無くすことも出来る。
【0039】
このように、光源、送風機を用いることで、イベント期間中の芝の管理、養生を進めることが出来る。
【0040】
尚、図示されてはいないが、天然芝300に水や肥料を散布できる装置を、床構造の下方(全面床610の下面や梁部500の下面等)に組み込む態様を採用することも可能である。該装置の具体的態様について特に限定はないが、例えば通水管の所定中間箇所に開孔など複数の散水ノズルが弁構造を有して備わった構造の様な、常法の散水管構造等が考え得る。かかる態様を採用することで、芝育成の自動化をより効果的に図ることが出来る。