特許第6539402号(P6539402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6539402
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】肩保護部付きの衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
   A41D13/05 112
【請求項の数】1
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-206193(P2018-206193)
(22)【出願日】2018年11月1日
【審査請求日】2019年2月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518387996
【氏名又は名称】株式会社トラスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】前定 達雄
【審査官】 住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0247744(US,A1)
【文献】 特開2003−105607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の身体における肩を覆う部分にクッション性を有する肩保護部が設けられ、
肩保護部が、同一の寸法形状に揃えられた複数のクッション部材を互いに隙間を隔てた状態で衣服生地に固着することにより形成された
肩保護部付きの衣服であって、
複数個のクッション部材を対称配置してなる六角形状の単位領域が敷き詰め配置されることにより、肩保護部が構成されるとともに、
隣り合うクッション部材の間に形成される隙間が直線状に繋がらない状態とされ、
且つ、
肩保護部の単位面積当たりのクッション部材の面積の割合が70%以下とされた
ことを特徴とする肩保護部付きの衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の身体における肩を覆う部分にクッション性を有する肩保護部が設けられた肩保護部付きの衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
宅配便の配達員は、箱に入れられた重い荷物を肩の上に担いで配達することが多い。このため、配達員は、肩を痛めることや、肩にアザができることが多く、肩にまつわる職業病に頭を悩ませている。また、宅配便の配達員に限らず、祭で神輿を担ぐ場合や、重い荷物を入れたリュックやランドセルを背負う場合や、重い荷物を入れたカバンを肩から掛ける場合や、スポーツを行う場合(例えば、ラグビーやアメリカンフットボールでタックルをする場合等)でも、肩に負荷がかかる。
【0003】
この点、これまでには、肩を保護するものとして、肩当てパッド(例えば、特許文献1の図1における「肩当てパッド1」を参照。)が提案されている。この種の肩当てパッドは、通常、ベルト(特許文献1の肩当てパッド1では同文献の図1における「弾性帯状バンド3」)を用いて、使用者の肩部に取り付けるようになっている。しかし、この種の肩当てパッドは、使用者自身がそれを肩部に取り付ける必要があった。このため、この種の肩当てパッドは、その取り付け作業が煩わしかった。加えて、この種の肩当てパッドは、必ずしも適切な箇所に取り付けられるとは限らないことに加えて、適切な箇所に取り付けたとしても、使用するうちにその位置がずれてしまい、肩を保護できなくなる虞もあった。
【0004】
また、これまでには、着用者の身体における肩を覆う部分に肩保護部を設けた衣服(例えば、特許文献2の図1の「スポーツ用衣服A」における「肩パット5」や、特許文献3の図面及び「意匠に係る物品の説明」の欄を参照。)も提案されている。この種の肩保護部付きの衣服において、肩保護部は、衣服生地に対してクッション部材を固着することによって設けられる。肩保護部付きの衣服は、その衣服を着用すれば、自然と肩が保護された状態となるため、肩当てパッドを取り付ける煩わしさがないという点で優れている。加えて、肩保護部付きの衣服は、衣服に対する肩保護部の位置が定まっているため、上述した肩当てパッドと比較して、肩保護部の位置がずれにくいという利点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−176237号公報
【特許文献2】実用新案登録第3100069号公報
【特許文献3】意匠登録第1596690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2のスポーツ用衣服における肩パット5のように、大きな寸法のクッション部材を衣服生地に固着すると、着用者の肩の動きが肩保護部によって阻害されるという欠点があった。この点、特許文献3の作業用衣服のように、肩保護部を構成する弾性体(クッション部材)を多数に分割した構造とすると、肩保護部が着用者の肩の動きを阻害しにくくすることができる。
【0007】
しかし、肩保護部を複数のクッション部材で構成する場合において、肩保護部が着用者の肩の動きを阻害しないようにしようとすると、肩保護部の単位面積当たりのクッション部材の面積の割合を少なくする(クッション部材をある程度「粗」な状態で配置する)必要がある。というのも、クッション部材は、ある程度厚みを有するものであるため、肩保護部を複数のクッション部材で構成する場合であっても、それらのクッション部材を「密」な状態で配置すると、着用者が肩を動かすときに、隣り合うクッション部材が干渉して着用者の肩の動きが阻害される虞があるからである。
【0008】
ただし、肩保護部の単位面積当たりのクッション部材の面積の割合を少なくすると、肩保護部による肩の保護機能が低下するというジレンマに陥る。特に、特許文献2のスポーツ用衣服や特許文献3の作業用衣服のように、隣り合うクッション部材の間に形成される隙間(本明細書においては、この隙間を「クッション部材の目地」と呼ぶことがある。)が直線状に繋がっているものでは、上述した宅配便の配達員のように、箱に入れられた重い荷物を肩に載せる場合に、その箱の底面と側面との境界に形成される直線状のエッジが、クッション部材の目地に落ち込みやすく、肩を十分に保護することができないことがある。神輿を担ぐ際にも、神輿の棒(通常、角材により形成される。)の外周面に形成される直線状のエッジがクッション部材の目地に落ち込む虞がある。
【0009】
この点、肩保護部を構成するクッション部材を入り組んだ複雑な形態にすれば、肩保護部が着用者の肩の動きを阻害しないようにしながらも(肩保護部の単位面積当たりのクッション部材の面積の割合を少なくしながらも)、クッション部材の目地が直線状にならないようにすることができる。しかし、この場合には、クッション部材の配置に手間を要するようになり、肩保護部付きの衣服の製造コストが高くなるという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、肩保護部が着用者の肩の動きを阻害しないようにしながらも、直線状のエッジを有する物(箱等)を肩に載せた場合であっても、肩保護部を構成するクッション部材の目地にその直線状のエッジが落ち込みにくくして肩の保護機能を維持することのできる肩保護部付きの衣服を提供するものである。また、クッション部材の配置をシンプルにして肩保護部付きの衣服の製造コストを抑えることも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、
着用者の身体における肩を覆う部分にクッション性を有する肩保護部が設けられ、
肩保護部が、複数のクッション部材を互いに隙間を隔てた状態で衣服生地に固着することにより形成された
肩保護部付きの衣服であって、
複数のクッション部材が、略同一の寸法形状に揃えられるとともに、
隣り合うクッション部材の間に形成される隙間(クッション部材の目地)が直線状に繋がらない状態とされ、
且つ、
肩保護部の単位面積当たりのクッション部材の面積の割合が70%以下とされた
ことを特徴とする肩保護部付きの衣服
を提供することによって解決される。
【0012】
ここで、「隣り合うクッション部材の間に形成される隙間(クッション部材の目地)が直線状に繋がらない状態」とは、肩保護部の一側の縁部から他側の縁部に延びるクッション部材の目地が一直線状にならないこと(折れ線状又は曲線状になっていること)をいう。このように、クッション部材の目地が直線状に繋がらないようにすることによって、直線状のエッジを有する物(箱等)を肩に載せた場合であっても、その直線状のエッジがいずれかのクッション部材に載るようにして、クッション部材の目地に落ち込まないようにすることができる。
【0013】
にもかかわらず、本発明の肩保護部付きの衣服では、肩保護部の単位面積当たりのクッション部材の面積の割合(以下においては、この割合を「(肩保護部における)クッション部材の占有率」と呼ぶことがある。)が70%以下に抑えられている。このため、肩保護部が着用者の肩の動きを阻害しないようにすることができる。加えて、クッション部材は、通常、被覆生地よりも重量がある(面密度が大きい)ため、クッション部材の占有率が高いと、着用者が肩に重量感を覚える虞があるところ、クッション部材の占有率を70%以下に抑えることで、着用者が肩に重量感を覚えにくくすることも可能になる。したがって、肩保護部付きの衣服の着心地を良好にすることが可能になる。
【0014】
また、本発明の肩保護部付きの衣服では、肩保護部を構成する複数のクッション部材が略同一の寸法形状のものとなっている。このため、クッション部材の配置をシンプルにして、肩保護部付きの衣服の製造コストを抑えることもできる。
【0015】
本発明の肩保護部付きの衣服は、上記の条件(複数のクッション部材が略同一の寸法形状であるという条件と、クッション部材の目地が直線状に繋がらないという条件と、クッション部材の占有率が70%以下という条件)を満たすのであれば、クッション部材の形態や配置は、特に限定されない。このような条件を満たすクッション部材の形態や配置の態様としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0016】
まず、1個又は同方向の複数個の長手状のクッション部材を配置してなる単位領域を、一の単位領域に配置された一のクッション部材の向きと、当該一の単位領域に隣接する他の単位領域に配置された他のクッション部材の向きとが略直交した状態で敷き詰め配置することにより、肩保護部を構成する態様である。以下においては、この態様でクッション部材を配置して構成した肩保護部を「クッション部材直交配置型の肩保護部」と呼ぶことがある。次に、複数個のクッション部材を対称配置してなる六角形状の単位領域を敷き詰め配置することにより、肩保護部を構成する態様である。以下においては、この態様でクッション部材を配置した肩保護部を「クッション部材六角配置型の肩保護部」と呼ぶことがある。
【0017】
これらクッション部材直交配置型の肩保護部やクッション部材六角配置型の肩保護部を採用すると、後述するように、複数のクッション部材が略同一の寸法形状であるという条件と、クッション部材の目地が直線状に繋がらないという条件と、クッション部材の占有率が70%以下という条件とを同時に満たすことが可能である。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によって、肩保護部が着用者の肩の動きを阻害しないようにしながらも、直線状のエッジを有する物(箱等)を肩に載せた場合であっても、肩保護部を構成するクッション部材の目地にその直線状のエッジが落ち込みにくくして肩の保護機能を維持することのできる肩保護部付きの衣服を提供することが可能になる。また、クッション部材の配置をシンプルにして肩保護部付きの衣服の製造コストを抑えることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の肩保護部付きの衣服を前方から見た状態を示した正面図である。
図2図1の肩保護部付きの衣服を後方から見た状態を示した背面図である。
図3】第一実施態様の肩保護部を示した一部破断斜視図である。
図4】第一実施態様の肩保護部を示した平面図である。
図5】第二実施態様の肩保護部を示した平面図である。
図6】第三実施態様の肩保護部を示した平面図である。
図7】第四実施態様の肩保護部を示した平面図である。
図8】第五実施態様の肩保護部を示した平面図である。
図9】第六実施態様の肩保護部を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[肩保護部付きの衣服]
本発明の肩保護部付きの衣服の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の肩保護部付きの衣服10を前方から見た状態を示した正面図である。図2は、図1の肩保護部付きの衣服10を後方から見た状態を示した背面図である。
【0021】
本発明の肩保護部付きの衣服10は、図1及び図2に示すように、着用者の上半身を覆うことができる形態(シャツ状の形態)を有しており、着用者の肩を覆う部分にクッション性を有する肩保護部11が設けられたものとなっている。肩保護部11は、複数のクッション部材11aを互いに隙間を隔てた状態で衣服生地に固着することにより形成されている。この肩保護部11によって、肩に重い物を載せた場合や、肩に衝撃を受けた場合等に、着用者の肩を保護することができるようになっている。本発明の肩保護部付きの衣服10は、それを着用しただけで、肩が保護された状態となるため、使用感に優れたものとなっている。
【0022】
クッション部材11aの素材は、クッション性を有するものであれば特に限定されない。クッション部材11aは、ゴムや、樹脂の発泡体等、各種の弾性材料を用いることができる。本実施態様の肩保護部付きの衣服10においては、クッション部材11aとしてクロロプレンゴムを用いている。クロロプレンゴムは、強度があるだけでなく、耐熱性や耐寒性にも優れているため、本発明の肩保護部付きの衣服10のクッション部材11aとして好適に用いることができる。クッション部材11aとしては、冷感作用や発熱作用を有するものを用いることもできる。また、クッション部材11aは、クッション部材11aのクッション性を阻害しない範囲で、磁性体や、遠赤外線効果を奏する物質を内包(粉状態を練り込む態様をも含む。)したものとすることもできる。これにより、クッション部材11aに血行促進作用を発揮させ、着用者の肩コリを軽減等することも可能になる。クッション部材11aは、ある程度厚みを有する形態とされる。クッション部材11aの厚さは、通常、2〜15mm程度、好ましくは、3〜10mm程度とされる。
【0023】
衣服生地に対するクッション部材11aの固着方法は、特に限定されない。例えば、接着剤を用いてクッション部材11aを固着することもできる。しかし、この場合には、使用を重ねるうちに、クッション部材11aが衣服生地から剥がれ落ちる虞がある。また、縫着によりクッション部材11aを固着することもできる。しかし、この場合には、クッション部材11aの縫着に手間を要するという欠点がある。このため、本実施態様の肩保護部付きの衣服10では、後掲する図3に示されるように、衣服生地12の表面に配置したクッション部材11aのさらに上側から被覆シート13を被せ、その被覆シート13を衣服生地12に対して溶着することにより、衣服生地12にクッション部材11aを固着している。これにより、衣服生地12に対してクッション部材11aを強固に固着するだけでなく、その固着作業を簡単に行うことも可能になる。
【0024】
本発明の肩保護部付きの衣服10は、アウターと、ミドルレイヤーと、インナーのいずれとすることもできる。しかし、本発明の肩保護部付きの衣服10は、上記のように、肩保護部11を有するものであるところ、この肩保護部11が着用者の身体に対してズレ動くことは好ましくない。ところが、アウターやミドルレイヤーは、着用者の身体よりも余裕を持ったサイズとされることが多い。このため、アウターやミドルレイヤーに肩保護部11を設けると、肩保護部11がズレ動きやすくなる。
【0025】
これに対し、インナーは、着用者の肌にフィットするサイズとされることが多く、インナーに肩保護部11を設けると、肩保護部11がズレ動きにくくなる。特に、着用者の肌を圧迫することで筋肉をサポートし、運動機能を支援するインナータイプのコンプレッションウェアは、着用者の肌に密着するため、肩保護部11をズレ動きにくくすることができる。このため、本発明の肩保護部付きの衣服10に係る構成は、インナーで採用することが好ましく、特に、コンプレッションウェアで採用することが好ましい。本実施態様の肩保護部付きの衣服10も、インナータイプのコンプレッションウェアとしている。肩保護部付きの衣服10を構成する衣服生地の種類は、特に限定されないが、肩保護部付きの衣服10をコンプレッションウェアとする場合には、伸縮性の高い素材とされる。
【0026】
また、本実施態様の肩保護部付きの衣服10は、長袖となっているが、これに限定されない。肩保護部付きの衣服10は、半袖やノースリーブ(ただし、着用者の肩を覆う部分を有する形態である必要がある。)とすることもできる。
【0027】
本発明の肩保護部付きの衣服10において、肩保護部11は、上記のように、複数のクッション部材11aを互いに隙間を隔てた状態で衣服生地に固着することにより形成されるところ、
[条件1] 複数のクッション部材11aが、略同一の寸法形状を有する。
[条件2] 隣り合うクッション部材11aの間に形成される隙間(目地)が直線状に繋がらない。
[条件3] 肩保護部11の単位面積当たりのクッション部材11aの面積の割合が70%以下である。
という3つの条件を備えたものとなっている。
【0028】
上記の条件1を満たすことによって、クッション部材11aの配置をシンプルにして、肩保護部付きの衣服10の製造コストを抑えることが可能となっている。また、上記の条件2を満たすことによって、直線状のエッジを有する物(箱等)を肩に載せた場合であっても、その直線状のエッジがいずれかのクッション部材11aに載るようにして、クッション部材11aの目地に落ち込まないようにすることが可能となっている。さらに、上記の条件3を満たすことによって、肩保護部11が着用者の肩の動きを阻害しないようにすることや、着用者が肩に重量感を覚えにくくすることができ、肩保護部付きの衣服の着心地を良くすることが可能となっている。
【0029】
上記の条件1〜3を満たすクッション部材11aの形態や配置は、1通りではなく、複数通りある。以下においては、本発明の肩保護部付きの衣服で採用可能な肩保護部11について、第一実施態様から第六実施態様までの6つの実施態様を例に挙げて説明する。しかし、本発明の肩保護部付きの衣服10の技術的範囲は、これら6つの実施態様の肩保護部11を用いるものに限定されない。肩保護部11を構成するクッション部材11aの形態や配置は、上記の条件1〜3を満たす範囲で、適宜変更を施すことができる。
【0030】
[第一実施態様の肩保護部]
まず、第一実施態様の肩保護部11について説明する。図3は、第一実施態様の肩保護部11を示した一部破断斜視図である。図4は、第一実施態様の肩保護部11を示した平面図である。
【0031】
第一実施態様の肩保護部11は、上述した「クッション部材直交配置型」に該当するものとなっている。すなわち、第一実施態様の肩保護部11は、図4に示すように、1個の長手状のクッション部材11a(同図の例では1個の矩形状のクッション部材11a)を配置してなる単位領域(同図における破線Lで区画された領域)を、一の単位領域に配置された一のクッション部材11aの向きと、当該一の単位領域に隣接する他の単位領域に配置された他のクッション部材11aの向きとが略直交した状態で敷き詰め配置したものとなっている。
【0032】
ここで、「単位領域」とは、肩保護部11を同一寸法且つ同一形状で区画する領域である。第一実施態様の肩保護部11において、単位領域は、図4の拡大部分における点P,P,P,P,P,P,P,P,P,P10,P11,P12 で囲まれた領域(網掛けハッチングで示した領域)となっている。第一実施態様の肩保護部11における単位領域は、略「I」字状を為す十二角形となっている。この単位領域を、隣り合う単位領域に属するクッション部材11aの向きが直交するように90°向きを変えながら敷き詰め配置(隙間のない状態で配置)することで、肩保護部11を構成している。
【0033】
第一実施態様の肩保護部11において、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)は、長手状(いずれかの方向に延びた形状)であれば、特に限定されない。しかし、クッション部材11aは、線状(棒状)や帯状や矩形状等の単純な形状であることが好ましい。図4に示す例では、それぞれのクッション部材11aの平面視形状を矩形状としている。同例における矩形状のクッション部材11aは、角部を有する形態となっているが、その角部を、丸みを帯びた形状(アール形状)とすることも好ましい。これにより、上記のように、衣服生地12に対して被覆シート13を溶着することによってクッション部材11aの固着を行う場合に、被覆シート13がシワのない綺麗な状態で溶着することが可能になる。全てのクッション部材11aは、全て同一寸法で同一形状となっている。
【0034】
第一実施態様の肩保護部11は、上記のように、同一形状で同一寸法のクッション部材11aを規則正しく配置することで構成されているため、クッション部材11aの配置に手間取らない。このため、肩保護部付きの衣服10の製造コストを抑えることが可能となっている。加えて、第一実施態様の肩保護部11は、図4を見れば明らかなように、隣り合うクッション部材11aの間に形成される隙間(クッション部材11aの目地)が直線状に繋がらない状態となっている。このため、肩保護部11に直線状の物を置いても、その直線状の物のいずれかの箇所がいずれかのクッション部材11aの上に載るようになっている。したがって、直線状のエッジを有する物(箱等)を肩保護部11の上に載せても、その直線状のエッジがクッション部材11aの目地に落ち込まないようにすることができるようになっている。
【0035】
このように、第一実施態様の肩保護部11は、クッション部材11aの目地に直線状のエッジが落ち込まないものであるにもかかわらず、隣り合うクッション部材11aをある程度隙間を隔てた状態で配置できるものとなっている。このため、着用者が肩を動かしても、隣り合うクッション部材11aが干渉することがないようになっている。すなわち、肩保護部11が着用者の肩の動きを阻害しないようになっている。
【0036】
既に述べたように、肩保護部11の単位面積当たりのクッション部材11aの面積の割合(クッション部材11aの占有率)は、70%以下とされる。クッション部材11aの占有率は、単位領域に属するクッション部材11aの面積を、単位領域の面積で割ると求めることができる。着用者が肩を動かしやすくすることを考慮すると、クッション部材11aの占有率は、65%以下とすることが好ましく、60%以下とすることがより好ましい。ただし、クッション部材11aの占有率を低くしすぎると、肩保護部11の保護機能が低下する虞がある。このため、クッション部材11aの占有率は、通常、30%以上とすることが好ましく、35%以上とすることがより好ましい。第一実施態様の肩保護部11において、クッション部材11aの占有率は、約45%となっている。
【0037】
[第二実施態様の肩保護部]
続いて、第二実施態様の肩保護部11について説明する。図5は、第二実施態様の肩保護部11を示した平面図である。
【0038】
第二実施態様の肩保護部11も、第一実施態様の肩保護部11と同様、「クッション部材直交配置型」に該当するものとなっている。第二実施態様の肩保護部11については、第一実施態様の肩保護部11と異なる部分について説明し、第一実施態様の肩保護部11と共通する部分については説明を割愛する。
【0039】
第一実施態様の肩保護部11では、図4に示すように、1つの単位領域に1つのクッション部材11aが配置されていた。これに対し、第二実施態様の肩保護部11では、図5に示すように、1つの単位領域に同方向の複数個のクッション部材11a(図5の例では2個のクッション部材11a)が配置されている。このように、1つの単位領域に配置するクッション部材11aの数を増大させることにより、クッション部材11aの目地の幅を狭くしても、肩保護部11におけるクッション部材11aの占有率を低く抑えることが可能になる。このため、着用者の肩の動きやすさを維持しながら、クッション部材11aの目地に直線状のエッジがより落ち込みにくくすることができる。第二実施態様の肩保護部11において、クッション部材11aの占有率は、約48%となっている。
【0040】
また、第一実施態様の肩保護部11では、図4に示すように、それぞれのクッション部材11aの平面視形状が矩形状となっていた。これに対し、第二実施態様の肩保護部11では、図5に示すように、それぞれのクッション部材11aの平面視形状が、両端部が半円状に形成された帯状となっている。このように、クッション部材11aを、角部を有さない形状とすることにより、衣服生地12(図3)に対して被覆シート13(図3)を溶着することによってクッション部材11aの固着を行う場合に、被覆シート13がシワのない綺麗な状態で溶着することが可能になる。
【0041】
[第三実施態様の肩保護部]
続いて、第三実施態様の肩保護部11について説明する。図6は、第三実施態様の肩保護部11を示した平面図である。第三実施態様の肩保護部11については、第一実施態様の肩保護部11と異なる部分について説明し、第一実施態様の肩保護部11と共通する部分については説明を割愛する。
【0042】
第三実施態様の肩保護部11は、第一実施態様や第二実施態様の肩保護部11とは異なり、「クッション部材六角配置型」に該当するものとなっている。すなわち、第三実施態様の肩保護部11は、図6に示すように、複数個のクッション部材11a(図6の例では6個のクッション部材11a)を対称配置してなる六角形状の単位領域(同図における破線Lで区画された領域であって、同図の拡大部分における点P,P,P,P,P,Pで囲まれた領域(網掛けハッチングで示した領域))を敷き詰め配置したものとなっている。
【0043】
第三実施態様の肩保護部11に示すように、クッション部材六角配置型の肩保護部11において、1つの単位領域に配置するクッション部材11aの個数は、2個以上とされる。ここで、クッション部材六角配置型の肩保護部11において、1つの単位領域に1つのクッション部材11aを配置する構成を除外している理由は、当該構成(1つの単位領域に1つのクッション部材11aを配置する構成)において、クッション部材11aの占有率を低く抑えながらも(肩保護部11が着用者の肩の動きを阻害しないようにしながらも)、クッション部材11aの目地が直線状に繋がらないようにする(クッション部材11aの目地に直線状のエッジが落ち込まないようにする)ためには、クッション部材11aの形態(平面視形状)を複雑な形態にする必要が生じ、クッション部材11aの配置に手間を要するようになるからである。
【0044】
第三実施態様の肩保護部11(クッション部材六角配置型の肩保護部11)において、1つの単位領域に配置するクッション部材11aの個数は、3個以上とすることが好ましい。これにより、クッション部材11aの形態(平面視形状)をより単純な形態にしやすくなる。ただし、第三実施態様の肩保護部11(クッション部材六角配置型の肩保護部11)では、それぞれの単位領域を構成する複数のクッション部材11aは、対称配置(通常、回転対称配置)されるところ、1つの単位領域に配置するクッション部材11aの個数を多くしすぎると、クッション部材11aの形態(平面視形状)は単純化できても、それぞれの単位領域におけるクッション部材11aの配置が複雑になる虞がある。このため、1つの単位領域に配置するクッション部材11aの個数は、10個以下とすることが好ましい。
【0045】
第三実施態様の肩保護部11において、1つの単位領域に配置するクッション部材11aの個数は、6個となっている。具体的には、図6における拡大部分に示すように、略平行に配された2個1組の平行四辺形状のクッション部材11aを、単位領域の中心点Cを中心として120°の回転対称に配置している。第三実施態様の肩保護部11において、クッション部材11aの占有率は、約37%となっている。
【0046】
[第四実施態様の肩保護部]
続いて、第四実施態様の肩保護部11について説明する。図7は、第四実施態様の肩保護部11を示した平面図である。
【0047】
第四実施態様の肩保護部11は、第三実施態様の肩保護部11と同様、「クッション部材六角配置型」に該当するものとなっている。第四実施態様の肩保護部11については、第三実施態様の肩保護部11と異なる部分について説明し、第三実施態様の肩保護部11と共通する部分については説明を割愛する。
【0048】
第三実施態様の肩保護部11では、図6に示すように、1つの単位領域に、2個1組のクッション部材11aを120°の回転対称に配置していた。これに対し、第四実施態様の肩保護部11では、図7に示すように、1つの単位領域に、4個1組のクッション部材11aを、180°の回転対称に配置している。また、第三実施態様の肩保護部11では、図6に示すように、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)が平行四辺形状となっていた。これに対し、第四実施態様の肩保護部11では、図7に示すように、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)が台形状となっている。第四実施態様の肩保護部11において、クッション部材11aの占有率は、約34%となっている。
【0049】
[第五実施態様の肩保護部]
続いて、第五実施態様の肩保護部11について説明する。図8は、第五実施態様の肩保護部11を示した平面図である。
【0050】
第五実施態様の肩保護部11も、第三実施態様や第四実施態様の肩保護部11と同様、「クッション部材六角配置型」に該当するものとなっている。第五実施態様の肩保護部11については、第三実施態様の肩保護部11と異なる部分について説明し、第三実施態様の肩保護部11と共通する部分については説明を割愛する。
【0051】
第三実施態様の肩保護部11では、図6に示すように、1つの単位領域に、2個1組のクッション部材11aを120°の回転対称に配置していた。これに対し、第五実施態様の肩保護部11では、図8に示すように、1つの単位領域に、合計3個のクッション部材11aを、120°の回転対称に配置している。また、第三実施態様の肩保護部11では、図6に示すように、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)が細長い平行四辺形状となっていた。これに対し、第五実施態様の肩保護部11では、図8に示すように、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)が菱形状となっている。第五実施態様の肩保護部11において、クッション部材11aの占有率は、約42%となっている。
【0052】
6.第六実施態様の肩保護部
最後に、第六実施態様の肩保護部11について説明する。図9は、第六実施態様の肩保護部11を示した平面図である。
【0053】
第六実施態様の肩保護部11も、第三実施態様や第四実施態様や第五実施態様の肩保護部11と同様、「クッション部材六角配置型」に該当するものとなっている。第六実施態様の肩保護部11については、第三実施態様の肩保護部11と異なる部分について説明し、第三実施態様の肩保護部11と共通する部分については説明を割愛する。
【0054】
第三実施態様の肩保護部11では、図6に示すように、1つの単位領域に、2個1組のクッション部材11aを120°の回転対称に配置していた。これに対し、第六実施態様の肩保護部11では、図9に示すように、1つの単位領域に、合計6個のクッション部材11aを、60°の回転対称に配置している。また、第三実施態様の肩保護部11では、図6に示すように、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)が平行四辺形状となっていた。これに対し、第六実施態様の肩保護部11では、図9に示すように、それぞれのクッション部材11aの形態(平面視形状)が台形状となっている。第六実施態様の肩保護部11において、クッション部材11aの占有率は、約62%となっている。
【0055】
[その他]
本発明の肩保護部付きの衣服10は、上記のように、肩保護部10aが着用者の肩の動きを阻害しないようにしながらも、肩を保護することができるものとなっており、肩を保護する必要がある各種の衣服において採用することができる。肩を保護する必要がある衣服としては、作業着(配達員が配達時に着用する衣服を含む。)や、スポーツウェアのほか、神輿を担ぐ際に着用する祭用の衣服や、釣り等で着用するフローティングベストの下側に着用する衣服や、リュックやランドセルを背負う際や重い荷物を入れたカバンを肩から掛ける際に着用する衣服等が例示される。また、高所で作業を行う際には、「フルハーネス」と呼ばれる安全帯を着用することがあるところ、このフルハーネスを着用すると、両肩にベルトが掛け回された状態となるため、肩に負荷が掛かるが、このフルハーネスの下側に着用する衣服で本発明の肩保護部付き衣服10の構成を採用することもできる。このように、本発明の肩保護部付き衣服10の構成は、各種の衣服で採用することができるが、本発明の肩保護部付きの衣服10は、クッション部材11の目地が直線状に繋がらず、直線状のエッジを有する物を肩に載せた場合であっても、肩保護部10aを構成するクッション部材11の目地にその直線状のエッジが落ち込みにくいことから、直線状のエッジを有する物(箱等)を肩に載せる場面で着用される衣服として特に好適に採用することができる。このような場面で着用される衣服としては、宅配便の配達員が着用する衣服等が例示される。
【符号の説明】
【0056】
10 肩保護部付きの衣服
11 肩保護部
11a クッション部材
12 衣服生地
13 被覆シート
C 単位領域の中心点
L 単位領域の区画線
【要約】
【課題】
肩保護部が肩の動きを阻害しないようにしながらも、直線状のエッジを有する物を肩に載せた場合であっても、肩保護部を構成するクッション部材の目地にその直線状のエッジが落ち込みにくくして肩の保護機能を維持することのできる肩保護部付きの衣服を提供する。
【解決手段】
着用者の身体における肩を覆う部分にクッション性を有する肩保護部11が設けられ、肩保護部11が、複数のクッション部材11aを互いに隙間を隔てた状態で衣服生地12に固着することにより形成された肩保護部付きの衣服10において、複数のクッション部材11aを、略同一の寸法形状で揃えるとともに、隣り合うクッション部材11aの間に形成される隙間が直線状に繋がらない状態とし、且つ、肩保護部11の単位面積当たりのクッション部材11aの面積の割合を70%以下とした。
【選択図】 図1
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図2
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図6
図7
図8
図9