(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の回転子において、円盤状の基材に複数の永久磁石を如何にして固定するかが、アキシャルギャップ型回転電機において屡々問題となる。すなわち、前記回転子は微小なアキシャルギャップを介して固定子と対向配置されるため、軸方向に突出して固定子と干渉するような固定部材は採用できない等、永久磁石の固定のために取り得る手段には制限が生じる。特に、渦電流対策として永久磁石を小片に分割した場合には、その磁石小片の確実な固定には困難を伴う。
【0006】
特許文献1では、接着剤を用いて磁石小片同士を互いに固定する手法が開示されている。接着剤による固定は、機械的な固定部材を用いない点で有利であり、また、基材と永久磁石という線膨張率の異なる部材同士の接合には有効である。しかし、たとえ小片に分割したとしても、永久磁石には渦電流が発生し、発熱する。永久磁石が高温となることによって、一般に前記接着剤が脆弱化し、接着されていた永久磁石が基材から剥離してしまうという問題が生じ得る。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、アキシャルギャップ型回転電機において、回転子の円盤状基材に永久磁石を確実に取り付けることができる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に係るアキシャルギャップ型回転電機は、磁性コア及び励磁コイルを備える固定子と、回転中心軸の周囲に周方向に配列された複数の永久磁石と、これら永久磁石を支持する円盤状の基材とを備え、前記固定子に対して軸方向に間隔を空けて配置された回転子と、前記永久磁石を前記基材に固定する固定部材と、を備え、前記永久磁石は、前記固定子と対向する表面と、前記基材と対向する裏面とを備え、その周縁部に被係止部を備え、前記固定部材は、前記被係止部と係合する係止部と、前記基材に対して機械的な固定構造を形成する固定部とを含み、前記係止部は前記永久磁石の前記表面から突出することなく前記被係止部と係合する、アキシャルギャップ型回転電機
において、前記複数の永久磁石は、各々が一の磁極を形成する永久磁石であり、各永久磁石がさらに複数の磁石小片に分割され、これら磁石小片がそれぞれ前記被係止部を有し、前記磁石小片は、前記永久磁石を、前記円盤状の基材の周方向に分割した小片からなり、これら小片が隣接して配置されることで一つの扇形の永久磁石が形成され、前記被係止部は、当該磁石小片の、前記基材の径方向における両端部に配置されている。
【0009】
この回転電機によれば、固定部材の係止部が、永久磁石の被係止部と係合することによって永久磁石を拘束する一方、この係止部は永久磁石の前記表面から突出しないので、固定子に対して干渉することはない。また、前記被係止部は、永久磁石の周縁部に配置されるので、当該永久磁石が作る磁気回路に影響を与えない。従って、アキシャルギャップが微小であっても、磁気的な能力を低下させることなく、永久磁石を前記円盤状の基材へ良好に固定することができる。
また、各永久磁石がさらに複数の磁石小片に分割されているので、一の極を形成する永久磁石に発生する渦電流を抑制しつつ、磁石小片の基材からの剥離を確実に防止することができる。さらに、周方向に分割された磁石小片が、その径方向の両端部に配置された被係止部において、係止部にて拘束される。従って、磁石小片が発生する磁力を低下させることなく、確実に当該磁石小片を基材に固定させることができる。
【0010】
上記の回転電機において、前記被係止部は、前記永久磁石の前記表面から前記裏面に向けて没した凹部であり、前記係止部は、前記凹部に収容されている構成とすることができる。
【0011】
この回転電機によれば、前記係止部が前記凹部に収容される態様で、永久磁石と係合する。従って、シンプルな構造での永久磁石の基材への固定が実現できる。
【0012】
上記の回転電機において、前記被係止部は、前記永久磁石の前記裏面側の幅を前記表面側の幅よりも長くすることにより、当該永久磁石の周縁に形成された傾斜面であり、前記係止部は、前記永久磁石と略同じ厚さを有すると共に、前記傾斜面と面接触する逆傾斜面を有する構成とすることができる。
【0013】
この回転電機によれば、永久磁石の周縁に形成された傾斜面を、係止部の逆傾斜面によって押さえ込むという安定的な態様で、永久磁石を基材へ固定することができる。
【0014】
上記のアキシャルギャップ型回転電機において、前記複数の永久磁石は、各々が一の磁極を形成する永久磁石であり、各永久磁石がさらに複数の磁石小片に分割され、これら磁石小片がそれぞれ前記被係止部を有していることが望ましい。
【0015】
この回転電機によれば、一の極を形成する永久磁石に発生する渦電流を抑制しつつ、本発明に係る係止部及び被係止部を適用することで、磁石小片の基材からの剥離を確実に防止することができる。
【0016】
上記の回転電機において、前記磁石小片は、前記永久磁石を、前記円盤状の基材の径方向に分割した小片からなり、前記被係止部は、当該磁石小片の、前記基材の周方向における両端部に配置されていることが望ましい。
【0017】
この回転電機によれば、径方向に分割された磁石小片が、その周方向の両端部に配置された被係止部において、係止部にて拘束される。従って、磁石小片が発生する磁力を低下させることなく、確実に当該磁石小片を基材に固定させることができる。
【0018】
上記の回転電機において、前記磁石小片は、前記永久磁石を、前記円盤状の基材の周方向に分割した小片からなり、前記被係止部は、当該磁石小片の、前記基材の径方向における両端部に配置されていることが望ましい。
【0019】
この回転電機によれば、周方向に分割された磁石小片が、その径方向の両端部に配置された被係止部において、係止部にて拘束される。従って、磁石小片が発生する磁力を低下させることなく、確実に当該磁石小片を基材に固定させることができる。
【0020】
上記の回転電機において、隣接する一の永久磁石と他の永久磁石、若しくは一の磁石小片と他の磁石小片が各々備える被係止部が、いずれも一個の前記固定部材の係止部と係合されていることが望ましい。
【0021】
この回転電機によれば、一個の固定部材にて、複数の永久磁石若しくは磁石小片を固定することができる。従って、部品点数の削減、及び固定部材の配置スペースの削減を図ることができる。
【0022】
被係止部として凹部を採用し、永久磁石として径方向に分割された磁石小片を用いる場合においては、前記被係止部は、前記磁石小片の前記周方向両端部に各々形成された半円形の凹部であり、前記固定部材は、前記固定部としての断面円形の胴部と、前記胴部よりも大径であり前記係止部としての断面円形の頭部とを備え、一の磁極に属する前記磁石小片の前記半円形の凹部と、これに隣接する他の極に属する前記磁石小片の前記半円形の凹部とによって、一の略円形の凹部が形成されるように前記隣接する二つの磁石小片が配置され、前記固定部材の前記頭部が前記略円形の凹部に収容される態様で、前記隣接する二つの磁石小片が固定されている構成とすることが望ましい。
【0023】
また、被係止部として傾斜面を採用し、永久磁石として周方向に分割された磁石小片を用いる場合においては、前記被係止部は、前記磁石小片の前記径方向両端部に各々形成された前記傾斜面であり、前記固定部材は、前記逆傾斜面を有する前記係止部としての固定治具と、該固定治具を前記基材に固定する前記固定部としての締結具とを備え、一の磁石小片と、これに隣接する他の磁石小片とが各々有する前記傾斜面の連設によって、一の拡大傾斜面が形成されるように前記隣接する二つの磁石小片が配置され、前記固定部材の前記逆傾斜面が前記一の拡大傾斜面を押圧する態様で、前記隣接する二つの磁石小片が固定されている構成とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、アキシャルギャップ型回転電機において、永久磁石を回転子の円盤状基材に確実に取り付けることができる。従って、永久磁石の基材からの剥離が生じることのない、アキシャルギャップ型回転電機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の構造を概略的に示す図である。本発明において、アキシャルギャップ型回転電機1は、例えばモータ又は発電機、若しくはこれらの兼用機の形態をとり得る。本実施形態では、アキシャルギャップ型回転電機の好ましい一例として、アキシャルギャップ型DCブラシレスモータを例示している。
【0027】
[アキシャルギャップ型回転電機の全体構造]
アキシャルギャップ型回転電機1は、ケーシング10と、このケーシング10からその一部が突出した回転軸11とを備える。回転軸11は、当該回転電機1がモータとして用いられる場合はトルクを発生する出力回転軸となり、発電機として用いられる場合は回転駆動力が入力される入力回転軸となる。
【0028】
回転電機1は、ケーシング10内に収容された円盤状の固定子2と、2個の円盤状の回転子3とを含む。固定子2と回転子3とは、回転軸11の軸方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、固定子2の一の円盤面に一方の回転子3が対向し、固定子2の他の円盤面に他方の回転子3が対向し、これにより2個の回転子3の間に固定子2が挟まれる形態の、ダブルロータ型の回転電機1を例示している。もちろん、回転電機1は、一の回転子3が一の固定子2と軸方向に対向配置されるシングルロータ型であっても良い。
【0029】
各回転子3は、固定子2に対して軸方向に間隔Gを空けて配置されている。間隔Gは、いわゆるアキシャルギャップであり、その長さは1mm〜数mm程度である。回転軸11は、円盤状の回転子3に、その回転中心と芯合わせして固定されている。2つの回転子3は、固定子2の中空部を貫通し、回転軸11と同じ軸上に配置された連結軸(図略)によって互いに連結されている。
【0030】
ここで、アキシャルギャップ型回転電機における、一般的な固定子2及び回転子3の構造例を説明しておく。
図2は、一般的な固定子2及び回転子3の構造例を示す分解斜視図である。
図2には、回転子3の回転中心軸AX(回転軸11の軸心)が示されている。固定子2は、周方向(回転子3の回転方向)に配列された複数の電磁石ユニット20を含む。各電磁石ユニット20は、扇形の磁性コア21と、磁性コア21に装着された励磁コイル22とを備える。複数の磁性コア21は、図略のコア支持部材によって支持され、回転中心軸AXの軸回りに円環状に均等に配置されている。
【0031】
磁性コア21は、圧粉コアであることが好ましい。圧粉コアは、電気絶縁膜で被覆された鉄粉が強固に押し固められることによって形成されたコアである。渦電流を抑制するという観点からは、この圧粉コアに加え、複数枚の電磁鋼板の積層体からなる積層コアも用い得る。圧粉コアは、前記積層コアに比べて気密性が高く、また成型の自由度も高いため、磁性コア21としてはより好ましい。本実施形態では、磁性コア21は、その軸方向の両端面に鍔部211が形成されたボビン形状を有している。
【0032】
励磁コイル22は、ボビン形状の磁性コア21を巻芯として絶縁電線が所要のターン数だけ巻回されてなる。励磁コイル22への直流電流の通電によって、回転軸11と平行な方向に磁性コア21を貫く磁束が発生する。また、励磁コイル22への直流電流の通電方向を正逆反転させることで、前記磁束の方向を反転させることができる。各励磁コイル22へ通電及び通電方向の切り替えは、図略のドライバ回路によって制御され、これにより回転子3を回転軸11回りに回転させる磁力線が形成される。
【0033】
回転子3は各々、複数の永久磁石40と、これら永久磁石40を支持する円盤状の基材31とを備えている。各永久磁石40は、軸方向視で扇形の平板型の磁石である。基材31は、固定子2と対向する側に、回転中心軸AXと直交する円形の支持面31Sを有する。複数の永久磁石40は、支持面31Sの中心点O(回転中心軸AXと交差する点)の周囲に、S極とN極とが周方向に交互に並ぶように、支持面31Sの外周縁付近に、環状に配列されている。
【0034】
円盤状の基材31は、鋼材などの磁性体で形成された部材であり、上述の永久磁石40の支持機能と、永久磁石40のバックヨークとしての機能とを兼ねている。固定子2と対向する表面がS極に着磁されている永久磁石40は、その裏面がN極となる。これに隣接する永久磁石40は、表面がN極で裏面がS極である。基材31は、これら永久磁石40の裏面側を支持すると共に、裏面側のS極−N極との間に磁路を形成する役目を果たす。従来、永久磁石40は、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような接着剤を用いて、基材31の支持面31Sに固定されるのが一般的である。これは、ネオジウム等からなる永久磁石40と鋼材等からなる基材31という、線膨張係数の異なる2つの部材を接合させるのに、接着剤が好適だからである。
【0035】
以上の通り構成された回転電機1において、問題となるのが、永久磁石40の渦電流による発熱である。永久磁石40は、回転子3の回転時に、時間的に変化する磁界に曝される。これにより、永久磁石40には渦電流が誘起され、ジュール熱によって自己加熱するようになる。永久磁石40が高熱化すると、その磁力が低下すると共に、基材31に当該永久磁石40を接着している接着剤を脆弱化させるようになる。この脆弱化によって、永久磁石40が基材31から剥離する不具合が発生する場合がある。
【0036】
図3は、回転子3の他の構造例を示す分解斜視図である。ここに示す回転子3は、一の極を形成する永久磁石が、複数の磁石小片401、402、403からなる永久磁石ユニット400にて構成されている。つまり、
図2に示した永久磁石40を、円盤状基材31の径方向に3個の磁石小片401、402、403に分割している。これら磁石小片401、402、403は、同様に接着剤によって基材31に固着される。
【0037】
分割された磁石小片401、402、403を用いることで、渦電流の発生量を小さくすることができる。しかしながら、たとえ永久磁石を分割して小容積化しても、これら磁石小片401、402、403には不可避的に渦電流が発生し、発熱する。従って、上述した接着剤の脆弱化の現象は生じてしまい、永久磁石ユニット400が基材31から剥離の問題を完全に払拭することはできない。以下、このような回転子3における永久磁石の剥離の問題を解消できる実施形態を示す。
【0038】
[第1実施形態]
図4は、本発明の第1実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の固定子2及び回転子3を示す分解斜視図である。第1実施形態で例示する回転電機の基本構造は、先に示した
図2、
図3のものと同じく、2個の回転子3の間に1個の固定子2が挟まれてなるダブルロータ型の回転電機である。固定子2の構成は、先に説明したものと同じであるため、ここでは説明を省く。
【0039】
回転子3は、円盤状の基材31と、各々が一の磁極を形成する複数の磁極ユニットPとを備えている。円盤状の基材31は、上述の円形の支持面31Sに加え、該基材31を軸方向に貫通する複数のネジ孔32を備えている。基材31は、磁極ユニットPを支持面31Sにおいて支持すると共に、磁極ユニットPが備える永久磁石のバックヨークとしての機能を果たす。複数の磁極ユニットPは、基材31の回転中心軸の周囲に、周方向に配列されている。
【0040】
図5は、一つの磁極ユニットPの構成を示す分解斜視図である。磁極ユニットPは、永久磁石4と、この永久磁石4を基材31に固定する固定部材5と、永久磁石4の外周側を保持する固定ピース6とを備えている。永久磁石4は、さらに複数の磁石小片に、すなわち第1磁石小片41、第2磁石小片42及び第3磁石小片43に分割されている。これら磁石小片41〜43は、
図3に示した磁石小片と同様に、基材31の径方向に分割された小片であり、これらが隣接して配置されることによって一つの扇形の永久磁石4が形成されている。
【0041】
第1〜第3磁石小片41〜43は、それぞれ軸方向視で略台形の形状を有している。第1磁石小片41は、扇形の永久磁石4の円弧中心に最も近い小片であって、周方向幅が最も短いピースである。第3磁石小片43は、前記円弧中心から最も遠い小片であって、周方向幅が最も長いピースである。第2磁石小片42は、前二者の中間に位置する小片であって、両者の中間の周方向幅を有するピースである。
【0042】
第1磁石小片41は、固定子2と対向する表面41Sと、基材31と対向する裏面41Rとを備えている。表面41S及び裏面41Rは、共に平坦な台形面である。表面41Sは、同じく平坦な台形面である磁性コア21の鍔部211の表面と平行に、所定のアキシャルギャップを置いて対向配置される。裏面41Rは、基材31の支持面31Sに固定部材5の締付力によって直接圧接される、或いは接着剤を介して圧接される面である。第2磁石小片42及び第3磁石小片43も、上記と同様な表面及び裏面を備えている。
【0043】
第1磁石小片41は、その周縁部に4つの側面を備えている。4つの側面は、第1磁石小片41の周方向の側面である一対の周側面411と、径方向内側の内側面413と、当該内側面413よりも周方向に長い外側面414とからなる。周側面411は、周方向長さが異なる内側面413と外側面414とを繋ぐ面であり、一対の周側面411間の間隔は径方向外側に向けて拡開している。これら側面は、支持面31Sに対して概ね垂直な面である。
【0044】
第1磁石小片41の周方向両端部、つまり各々の周側面411には、半円錐状(軸方向視では半円形)の凹部412(被係止部)が形成されている。凹部412は、表面41Sから裏面41Rに向けて没した凹部であり、表面41Sには第1磁石小片41の周方向中心に向けて凸の半円形の開口縁を、周側面411には裏面41Rに向けて凸の半円形の開口縁をそれぞれ有している。この凹部412は、後述する皿頭ネジの頭部を収容する皿もみとなる凹部である。
【0045】
第2磁石小片42及び第3磁石小片43も、周方向の長さが異なる以外は、第1磁石小片41と同様な形状を有している。すなわち、第2磁石小片42は、一対の周側面421、内側面423及び外側面424を備え、第2磁石小片42の周方向両端部、つまり各々の周側面421には、半円錐状の凹部422(被係止部)が形成されている。また、第3磁石小片43は、一対の周側面431、内側面433及び外側面434を備え、第3磁石小片43の周方向両端部、つまり各々の周側面431には、半円錐状の凹部432(被係止部)が形成されている。
【0046】
永久磁石4としては、例えばネオジム磁石、サマリウムコバルト磁石、フェライト磁石等を例示することができる。これらの永久磁石は、原材料粉末を最終形状に成型加工した後に、強力な磁界中に前記成型加工体を曝す等の着磁操作が行われることによって製造される。このため、磁化される前に磁石の形状加工を行うことができるので、分割された磁石小片41〜43の作製、並びに凹部412、422、432を形成する面取り加工を自在且つ容易に行うことができる。
【0047】
固定ピース6は、回転子3の回転時に、第1〜第3磁石小片41〜43が遠心力によって径方向外側に抜け出すことを防止する部材である。固定ピース6は、第3磁石小片43の外側面434と対向し、この外側面434と周方向の長さが略同一の押さえ面61と、基材31に当該固定ピース6を固定させるための止め孔62とを備えている。止め孔62は、固定ピース6の周方向中央部に一つだけ設けられている。
【0048】
第1〜第3磁石小片41〜43が基材31に固定される際、第1磁石小片41の外側面414と第2磁石小片42の内側面423とが、また、第2磁石小片42の外側面424と第3磁石小片43の内側面433とが、それぞれ密に接することとなる。さらに、第3磁石小片43の外側面434と固定ピース6の押さえ面61とが密に接し、該押さえ面61が永久磁石4の遠心力を受け止める。
【0049】
固定部材5は、本実施形態では複数の皿頭ネジである。本実施形態では、固定部材5として、第1磁石小片41を基材31に固定する一対の第1皿頭ネジ51と、第2磁石小片42を基材31に固定する一対の第2皿頭ネジ52と、第3磁石小片43を基材31に固定する一対の第3皿頭ネジ53と、固定ピース6を基材31に固定する一つの第4皿頭ネジ54とを備えている。
【0050】
第1皿頭ネジ51は、雄ねじのネジ切り部を備えた胴部511(固定部)と、胴部511の一端に連なりテーパ状に拡径する皿頭部512(係止部)とを備える。胴部511は、ネジ軸方向と直交する断面の形状が円形であり、皿頭部512の断面は胴部511よりも大径の円形である。胴部511は、基材31のネジ孔32に螺合され、これにより基材31に対する機械的な固定構造を形成する部分である。皿頭部512は、凹部412と係合する部分であり、ネジ締結用の六角レンチを受け入れる六角孔を有している。皿頭部512の一部が凹部412を押さえる状態で、胴部511が所定位置のネジ孔32に螺合されることによって、第1磁石小片41が基材31に固定される。皿頭部512は、ネジ締結時において凹部412に収容され、表面41Sから突出しないサイズに設定されている。つまり、皿頭部512は、表面41Sから突出することなく、凹部412と係合している(
図7参照)。
【0051】
他の皿頭ネジ52、53、54も、第1皿頭ネジ51と同じ構造である。一対の第2皿頭ネジ52は、第2磁石小片42の周方向両端部に配置されている凹部422と各々係合するように基材31に螺合され、第2磁石小片42を基材31に固定する。一対の第3皿頭ネジ53は、第3磁石小片43の周方向両端部に配置されている凹部432と各々係合するように基材31に螺合され、第3磁石小片43を基材31に固定する。第4皿頭ネジ54は、固定ピース6の止め孔62を通して基材31のネジ孔に螺合され、固定ピース6を基材31に固定する。
【0052】
本実施形態では、第1〜第3皿頭ネジ51〜53は、各々が一の磁石小片だけを固定しているのではなく、これに隣接する他の磁石小片も固定している例を示している。この点について、
図6及び
図7に基づいて説明する。
図6は、磁石小片41〜43の基材31への取り付け状態を示す平面図、
図7は、
図6のVII−VII線断面図である。
【0053】
図6では、ある磁極ユニットP(一の磁極)と、磁極ユニットPの反時計方向(上流と扱う)に隣接する上流磁極ユニットPA(他の磁極)と、時計方向(下流と扱う)に隣接する下流磁極ユニットPB(他の磁極)とを抜き出して示している。磁極ユニットPの第1、第2、第3磁石小片41P、42P、43Pは、それぞれ、上流磁極ユニットPAの第1、第2、第3磁石小片41PA、42PA、43PAと間隙dをおいて周方向に並び、また、下流磁極ユニットPBの第1、第2、第3磁石小片41PB、42PB、43PBと間隙dをおいて周方向に並んでいる。つまり、各磁極ユニットの同じサイズの磁石小片が、径方向の同じ位置に、間隙dをおいて周方向に配置されている。
【0054】
これにより、例えば
図7にも示している通り、磁極ユニットPの第1磁石小片41Pの上流側の半円形凹部412と、上流磁極ユニットPAの第1磁石小片41PAの下流側の半円形凹部412とによって、間隙dを挟んで、一つの略円形の凹部が形成されている。そして、この略円形の凹部に一つの第1皿頭ネジ51Aの皿頭部512が収容される態様で、隣接する二つの第1磁石小片41P、41PAが固定されている。上記のような略円形の凹部は、磁極ユニットPの第2、第3磁石小片42P、43Pの上流側の凹部422、423と、上流磁極ユニットPAの第2、第3磁石小片42PA、43PAの下流側の凹部422、423とによっても形成されている。これらの略円形の凹部には、各々第2、第3皿頭ネジ52A、53Aが一つずつ収容される態様で、隣接する2個の磁石小片が固定されている。
【0055】
同様に、上記の略円形の凹部は、磁極ユニットPの第1、第2、第3磁石小片41P、42P、43Pの下流側の凹部412、422、423と、下流磁極ユニットPBの第1、第2、第3磁石小片41PB、42PB、43PBの上流側の凹部412、422、423とによっても形成されている。これら略円形の凹部に、各々第1、第2、第3皿頭ネジ51B、52B、53Bが一つずつ収容される態様で、隣接する2個の磁石小片が固定されている。
【0056】
図7を参照して、一つの前記略円形の凹部における磁石小片の固定構造をさらに詳述する。磁極ユニットPの第1磁石小片41P及び上流磁極ユニットPAの第1磁石小片41PAの裏面41Rは、接着剤Jを介して基材31の支持面31Sに接合されている。この接着剤Jは省くことができるが、より安定的に磁石小片41P、41PAを支持面31Sへ固定するためには、接着剤Jの層を介在させることが望ましい。
【0057】
第1磁石小片41Pの上流側の周側面411と第1磁石小片41PAの下流側の周側面411とが対向し、また、両者の凹部412同士が対向することで、一つの略円錐形の凹部が形成されている。第1皿頭ネジ51の胴部511は、基材31のネジ孔32に締結され、皿頭部512は前記略円錐形の凹部に収容されている。皿頭部512の円錐テーパ面513の上流側部分によって、
図7中の左方の第1磁石小片41PAの凹部412が押圧され、下流側部分によって、右方の第1磁石小片41Pの凹部412が押圧されている。
【0058】
胴部511の、ネジ孔32との螺合部分よりも上方部分は、向かい合う周側面411間に収まっている。つまり、胴部511の直径は、上述の間隙d(
図6)よりも僅かに小さく設定されている。皿頭部512は、一対の凹部412で形成された略円錐形の凹部に完全に収容され、その頂面51Sは第1磁石小片41P、41PAの表面41Sとほぼ面一である。頂面51Sは表面41Sと面一、若しくは頂面51Sが表面41Sよりも凹没し、表面41Sから突出することなく凹部412と係合していれば良い。なお、アキシャルギャップ(
図1の間隔G)に影響を与えない範囲であって、部品公差等の影響でごく僅かに頂面51Sが表面41Sから突出していても、それは本発明でいう「突出することなく係合する」との範疇である。
【0059】
以上説明した第1実施形態に係る回転電機によれば、固定部材5の係止部(皿頭ネジ51〜53の皿頭部512)が、第1〜第3磁石小片41〜43の凹部412、422、423と係合することによってこれら磁石小片を拘束する一方、皿頭部512は磁石小片41〜43の表面41Sから突出しないので、固定子2に対して干渉することはない。従って、アキシャルギャップが微小であっても、磁石小片41〜43を円盤状の基材31へ良好に固定することができる。また、磁石小片41〜43が渦電流によって高熱化したとしても、これらが基材31から剥離することがない。
【0060】
また、被係止部としての凹部412、422、423は、永久磁石4(磁石小片41〜43)の周縁部に配置されているので、当該永久磁石4が作る磁気回路に影響を与えない。永久磁石4を基材31にネジを用いて固定する場合、永久磁石4の周方向中心付近にネジ孔を設けてネジ締めする手法も考えられる。しかし、中心付近にネジ孔を穿孔した場合、当該ネジ孔が磁路形成における障害となり、磁極ユニットPの磁力を低下させることになる。しかし、本実施形態では、永久磁石4の周縁部に磁石固定用の面取り部分が配置されているので、磁極ユニットPにおける磁路形成に影響を与えることはない。
【0061】
さらに、本実施形態では、一個の皿頭ネジ51〜53にて、複数の磁石小片41〜43を固定している。各磁極ユニットPの磁石小片41〜43の周方向両端部にそれぞれ皿頭ネジを適用しても良いが、この場合は皿頭ネジの個数が多くなると共に、皿頭ネジの配置スペースが必要となる。本実施形態によれば、皿頭ネジの使用個数の削減、及び皿頭ネジの配置スペースの削減を図ることができる。
【0062】
[第1実施形態の変形例]
図8は、第1実施形態の変形例に係る、永久磁石の基材31への取り付け状態を示す平面図である。上記実施形態では、一つの磁極ユニットPの永久磁石4が複数の磁石小片41〜43に分割され、これらが各々皿頭ネジ51〜53で基材31に固定される例を示した。これに代えて、
図8に示す変形例では、一つの磁極ユニットPの永久磁石を分割することなく、基材31に固定する態様を示している。
【0063】
図8では、ある磁極ユニットP、上流磁極ユニットPA及び下流磁極ユニットPBを抜き出して示している。各磁極ユニットP、PA、PBは、扇形の1枚物の永久磁石40P、40PA、40PBを各々備えている。永久磁石40P、40PA、40PBは、それぞれ被係止部として、その周方向両端部に半円錐状の凹部404を備えている。隣接する永久磁石40P及び上流の永久磁石40PAの凹部404同士で一つの略円錐形の凹部が形成され、また、同じく隣接する永久磁石40P及び下流側の永久磁石40PBの凹部404同士で一つの略円錐形の凹部が形成されている。これら凹部に、それぞれ一つの第1皿頭ネジ55A、55Bが収容される態様で、永久磁石40P、40PA、40PBが基材31に固定されている。永久磁石40P、40PA、40PBの渦電流による昇温の問題を、冷却手段の工夫によって克服できる場合は、本変形例の態様が、部品点数を一層減らすことができるので好ましい。
【0064】
この他、上記実施形態では、固定部材5として皿頭ネジを例示したが、これに限定されるものではない。固定部材5として各種のネジ部材、各所の固定具を適用することが可能であり、例えば座ぐりネジを用いることができる。座ぐりネジを適用する場合、永久磁石の両端部に設ける被係止部の形状は、半円柱型となる。あるいは、固定部材5としてリベットを用いるようにしても良い。この場合、基材31と機械的な固定構造を形成する固定部は、当該リベットのかしめ部となる。さらに、上記実施形態では、基材31の径方向に3つに分割された磁石小片41〜43を例示したが、分割数は任意であり、例えば2つに分割する、4つに分割するようにしても良い。
【0065】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の固定子2及び回転子3Aを示す分解斜視図である。第2実施形態で例示する回転電機の基本構造もまた、先に示した
図2、
図3のものと同じく、2個の回転子3Aの間に1個の固定子2が挟まれてなるダブルロータ型の回転電機である。固定子2の構成は、先に説明したものと同じであるため、ここでも説明を省く。回転子3Aにおいて第1実施形態のものと相違している点は、永久磁石を周方向に分割した磁石小片が用いられる点と、磁石小片の被係止部及び固定部材の構造が異なる点である。
【0066】
回転子3Aは、円盤状の基材31Aと、各々が一の磁極を形成する複数の磁極ユニットPaとを備えている。基材31Aは、円形の支持面31Sに加え、該基材31Aを軸方向に貫通する複数のネジ孔であって、基材31Aの径方向の中間付近に環状に配列された複数の内側ネジ孔321と、周縁付近に環状に配列された外側ネジ孔322とを備えている。基材31Aは、磁極ユニットPaを支持面31Sにおいて支持すると共に、磁極ユニットPaが備える永久磁石のバックヨークとしての機能を果たす。複数の磁極ユニットPaは、基材31Aの回転中心軸の周囲に、周方向に配列されている。
【0067】
図10は、第2実施形態に係る磁極ユニットPaの構造を説明するための、回転子3Aの分解斜視図である。ここでは、磁極ユニットPa群の一部が基材31Aに取り付けられ、うち一つの磁極ユニットPaが分解されている状態を示している。磁極ユニットPaは、永久磁石4Aと、この永久磁石4Aを基材31Aに固定する固定ブロック7とを備えている。
【0068】
一の磁極ユニットPaの永久磁石4Aは、さらに複数の磁石小片に、すなわち第1磁石小片44、第2磁石小片45及び第3磁石小片46に分割されている。これら磁石小片44〜46は、
図3及び
図4に示した磁石小片とは異なり、円盤状の基材31Aの周方向に等分割された小片であり、これらが隣接して配置されることによって一つの扇形の永久磁石4Aが形成されている。第1〜第3磁石小片44〜46は、それぞれ軸方向視で径方向に細長い略台形の形状を有し、その台形の短辺側が径方向の内側に、長辺側が径方向の外側に配向するよう、基材31A上に配置されている。
【0069】
図11は、第1磁石小片44の基材31Aへの取り付け状態を示す一部破断斜視図、
図12は、その断面図である。第1磁石小片44は、径方向内側の端部に内側傾斜面441(被係止部)と、径方向外側の端部に外側傾斜面442(被係止部)をそれぞれ備えている。これら傾斜面441、442は、第1磁石小片44の裏面44R側の径方向幅を、表面44S側の径方向幅よりも長くすることにより、当該第1磁石小片44の周縁に形成された傾斜面である。つまり、内側傾斜面441は、表面44Sの径方向内側端縁から基材31Aの中心点方向に向けて裏面44Rへ下降する傾斜面であり、外側傾斜面442は、表面44Sの径方向外側端縁から基材31Aの外周縁方向に向けて裏面44Rへ下降する傾斜面である。
【0070】
第2磁石小片45及び第3磁石小片46も、上述の第1磁石小片44と同じ形状を有している。第1〜第3磁石小片44〜46は、基材31Aに固定される際、第1磁石小片44の内側傾斜面441と、第2、第3磁石小片45、46が各々有する内側傾斜面との連設によって、一つの集合された内側傾斜面が形成されるように配置される。同じく、第1磁石小片44の外側傾斜面442と、第2、第3磁石小片45、46が各々有する外側傾斜面との連設によって、一つの集合された外側傾斜面が形成されるように、第1〜第3磁石小片44〜46が配置される。
【0071】
固定ブロック7は、永久磁石4Aの内周縁側を係止する第1固定ブロック71(固定治具)と、永久磁石4Aの外周縁側を係止する第2固定ブロック72(固定治具)とからなる。第1固定ブロック71は、第1固定ネジ56(締結具)にて、内側ネジ孔321を用いて基材31Aに固定される。第2固定ブロック72は、第2固定ネジ57(締結具)にて、外側ネジ孔322を用いて基材31Aに固定される。本実施形態では、第1、第2固定ブロック71、72(係止部)と、第1、第2固定ネジ56、57(固定部)とによって、本発明の固定部材が構成されている。
【0072】
第1固定ブロック71及び第2固定ブロック72は、軸方向において第1〜第3磁石小片44〜46と略同じ厚さを有する、平板で略台形のブロックである。第1固定ブロック71は、逆傾斜面711、固定孔712及び一対の把持部713を有する。逆傾斜面711は、第1固定ブロック71の外周面側に配置され、第1〜第3磁石小片44〜46の密配列により形成される前記集合された内側傾斜面(つまり、永久磁石4Aの内側傾斜面)と面接触し、該内側傾斜面を押圧する。逆傾斜面711の周方向幅は、前記集合された内側傾斜面の周方向幅と略同じである。
【0073】
固定孔712は、第1固定ネジ56が挿通される孔である。第1固定ネジ56は皿頭ネジであり、固定孔712は該皿頭ネジの皿頭部と係合する形状を備えたネジ孔である。一対の把持部713は、逆傾斜面711の周方向両端から径方向外側へ各々突出する部分であり、
図10に示す通り、第1〜第3磁石小片44〜46の内側傾斜面付近の周方向両側面を把持する形態で拘束している。この拘束により、第1〜第3磁石小片44〜46の配列状態が乱れてしまうことが防止される。
【0074】
第2固定ブロック72も、同様な逆傾斜面721、固定孔722及び一対の把持部723を有する。逆傾斜面721は、第2固定ブロック72の内周面側に配置され、第1〜第3磁石小片44〜46の前記集合された外側傾斜面と面接触し、該外側傾斜面を押圧する。逆傾斜面721の周方向幅は、前記集合された外側傾斜面の周方向幅と略同じである。固定孔722は、皿頭ネジからなる第2固定ネジ57が挿通され、その皿頭部と係合する形状を備えたネジ孔である。一対の把持部723は、逆傾斜面721の周方向両端から径方向内側へ各々突出する部分であり、第1〜第3磁石小片44〜46の外側傾斜面付近の周方向両側面を拘束している。
【0075】
第1磁石小片44は、その径方向両端部に配置された内側傾斜面441及び外側傾斜面442が、逆傾斜面712、721で各々押圧(拘束)されることによって、基材31Aに固定される。第2、第3磁石小片45、46も同様である。具体的には、第1固定ブロック71の固定孔712と内側ネジ孔321とが位置合わせされ、且つ、逆傾斜面711が第1〜第3磁石小片44〜46の前記集合された内側傾斜面と当接した状態で、第1固定ネジ56が内側ネジ孔321に螺合される。また、第2固定ブロック72の固定孔722と外側ネジ孔322とが位置合わせされ、且つ、逆傾斜面721が第1〜第3磁石小片44〜46の前記集合された外側傾斜面と当接した状態で、第2固定ネジ57が外側ネジ孔322に螺合される。第1、第2固定ネジ56、57の螺合が、本実施形態では、基材31Aに対する機械的な固定構造の形成となる。
【0076】
第1、第2固定ネジ56、57の締め付けにより、逆傾斜面711、721が各々前記集合された内側傾斜面及び外側傾斜面を押圧するので、第1〜第3磁石小片44〜46は基材31Aに強固に固定されるようになる。
図12に示す通り、第1、第2固定ネジ56、57の締結後、その皿頭部の頂面は第1磁石小片44の表面44Sと面一である。また、既述の通り、第1、第2固定ブロック71、72と第1〜第3磁石小片44〜46とは略同じ厚さである。従って、アキシャルギャップが微小であっても、永久磁石4Aの固定のための部材が固定子2に対して干渉することはない。
【0077】
また、被係止部としての内側傾斜面441及び外側傾斜面442は、第1磁石小片44の径方向両端部、つまりその周縁部に配置されているので、当該永久磁石4Aが作る磁気回路に影響を与えない。さらに、3つに分割された磁石小片44〜46を、内径側については一つの第1固定ブロック71、外径側についても一つの第2固定ブロック72で固定しているので、部品点数を削減できる利点がある。
【0078】
[第2実施形態の変形例]
図13は、第2実施形態の変形例に係る、永久磁石4Bの基材31Aへの取り付け状態を示す平面図である。上記実施形態では、第1、第2固定ネジ56、57及び第1、第2固定ブロック71、72を固定部材として、周方向に分割された磁石小片を固定する例を示した。周方向に分割された磁石小片であっても、第1実施形態で例示した固定部材を採用することもできる。
【0079】
図13(A)では、一つの磁極ユニットの永久磁石4Bが、周方向に2つに分割された第4磁石小片47及び第5磁石小片48からなる例を示している。第4磁石小片47は、径方向内側の端部471に被係止部としての内側凹部473を、径方向外側の端部472に被係止部としての外側凹部474を有している。第5磁石小片48も、径方向内側の端部481に内側凹部483を、径方向外側の端部482に外側凹部484を有している。
【0080】
内側凹部473、483は、各々中心角が90度程度の円弧状凹部であり、両者が隣接して並ぶことで、一つの内側半円形凹部491が形成されている。同様に、外側凹部474、484が隣接して並ぶことで、一つの外側半円形凹部492が形成されている。そして、
図13(B)に示すように、内側半円形凹部491が皿頭ネジ58と、外側半円形凹部492が皿頭ネジ59と各々係合して、基材31Aに固定されている。この変形例によれば、固定ブロックのような部品の使用を省くことができる。
【0081】
この他、上記実施形態では、一つの磁極ユニットPの永久磁石4Aが周方向に複数の磁石小片44〜46に分割されている例を示した。これに代えて、永久磁石4Aを分割することなく、第1、第2固定ネジ56、57及び第1、第2固定ブロック71、72を用いて、基材31Aに固定するようにしても良い。また、磁石小片の傾斜面441、442、及び固定ブロックの逆傾斜面711、712は、両者が面接触できるものであれば良く、例えば曲面状、階段状にしても良い。
【0082】
以上説明した本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機1によれば、永久磁石を回転子の円盤状の基材に確実に取り付けることができる。また、永久磁石が形成する磁気回路にも影響を与えない。従って、永久磁石の基材からの剥離が生じることがなく、磁気的な能力にも優れた、アキシャルギャップ型回転電機を提供することができる。