(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6539596
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】車両通信システム及び車両通信方法
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20190625BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20190625BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
E05B49/00 J
B60R25/24
H04Q9/00 301B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-8601(P2016-8601)
(22)【出願日】2016年1月20日
(65)【公開番号】特開2017-128913(P2017-128913A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小杉 正則
(72)【発明者】
【氏名】江川 哲也
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−090403(JP,A)
【文献】
特開2005−083011(JP,A)
【文献】
特開2013−193493(JP,A)
【文献】
特開2012−57368(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/243116(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 − 85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機側ローリングコードを記憶する携帯機側メモリと、使用者の操作に基づいて前記携帯機側ローリングコードを含む無線信号を送信する送信部とを備えた携帯機と、
前記無線信号を受信する受信部と、車載機側ローリングコードを記憶する車載機側メモリと、前記携帯機から送信される前記携帯機側ローリングコードと前記車載機側ローリングコードとを照合する第1照合を実行し、照合成立した場合にドアの施解錠を行うための信号を出力する第1照合部とを備えた車載機と、
前記携帯機との間で車両のエンジン始動に伴う第2照合を行う第2照合部と、
を有し、
前記携帯機は、前記第1照合時において前記携帯機側ローリングコードを第1の値分だけ更新し、前記第1照合完了後の前記第2照合において照合成立した場合に前記第1の値よりも大きな第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードを更新する更新部を備え、
前記車載機は、前記携帯機の更新部によって第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードが更新された際に、前記車載機側ローリングコードを前記携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行う処理部を備えたことを特徴とする車両通信システム。
【請求項2】
前記第2照合部による第2照合は、車両のエンジン始動に伴うキー操作に基づく照合である請求項1に記載の車両通信システム。
【請求項3】
前記第2照合部による第2照合は、車両のエンジン始動に伴うトランスポンダを用いた照合である請求項2に記載の車両通信システム。
【請求項4】
携帯機側ローリングコードを記憶する携帯機側メモリと、使用者の操作に基づいて前記携帯機側ローリングコードを含む無線信号を送信する送信部とを備えた携帯機と、
前記無線信号を受信する受信部と、車載機側ローリングコードを記憶する車載機側メモリと、前記携帯機から送信される前記携帯機側ローリングコードと前記車載機側ローリングコードとを照合する第1照合を実行し、照合成立した場合にドアの施解錠を行うための信号を出力する第1照合部とを備えた車載機と、
前記携帯機との間で車両のエンジン始動に伴う第2照合を行う第2照合部と、
を有し、
前記携帯機は、前記第1照合時において前記携帯機側ローリングコードを第1の値分だけ更新し、前記第1照合完了後の前記第2照合において照合成立した場合に前記第1の値よりも大きな第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードを更新し、
前記車載機は、前記携帯機の更新部によって第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードが更新された際に、前記車載機側ローリングコードを前記携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行うことを特徴とする車両通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両通信システム及び車両通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両通信システムの一つとして、携帯機に設けられたスイッチを操作することによって車両のドアを施錠したり、あるいは解錠することのできる、いわゆるリモートキーレスエントリシステム(RKEシステム)が周知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなRKEシステムでは、使用者によって携帯機のスイッチが操作される都度、携帯機側ローリングコードの値がインクリメントされるとともに、このローリングコード及び携帯機側識別コード(IDコード)を含む信号が携帯機から送信される。そして携帯機から送信される信号が車両に設けられた受信機によって受信されると、受信機では、受信した信号を同じく車両に設けられた制御装置に伝達する。制御装置は、こうして信号が伝達されると、まずは、信号に含まれている携帯機側IDコードと、同制御装置内のメモリに記憶されている車両側IDコードとの照合を行う。
【0004】
そして、この照合を通じて互いのIDコードが一致している旨が判断された場合には、信号に含まれている携帯機側ローリングコードの値と、同制御装置内のメモリに記憶されているローリングコードの値とを比較する。その結果、携帯機側ローリングコードの値が車両側ローリングコードの値よりも大きく、且つ、それらの差分値が所定の閾値未満である場合には、携帯機の認証が成立したと判定して、車両ドアに設けられているドアロック機構を駆動させて車両ドアをロックしたり、あるいはアンロックしたりする。またこのとき、制御装置は、信号に含まれている携帯機側ローリングコードの値を新たな車両側ローリングコードの値としてメモリに記憶する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−224663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような車両通信システムにおいて、例えば、或るタイミングにおいて悪意のある第三者が携帯機から発信されるローリングコードを含む信号A1を取得し自身が所持する機器に記憶させ、その信号A1を車載機に届かないようにした場合、車両のドアの解錠は実施されない。このため、正規の使用者が携帯機を再度操作することが考えられるが、その場合、前回の信号A1に対してインクリメントされたローリングコードを含む信号A2が発信されることとなる。この信号A2を悪意のある第三者が取得し、その信号A2の代わりに自身の機器に記憶させた信号A1を車載機に対して発信した場合、車両のドアの解錠が実施される。これによって正規の使用者は無事に解錠できたと考える。しかしながら、悪意のある第三者が持つ機器には信号A2が記憶されているため、この信号A2を用いてドアの解錠を行う、所謂ロールジャムを行うことが可能となっており、セキュリティの面で更なる向上が望まれている。
【0007】
本発明は、こうした実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、セキュリティ向上を図ることができる車両通信システム及び車両通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、車両通信システムは、携帯機側ローリングコードを記憶する携帯機側メモリと、使用者の操作に基づいて前記携帯機側ローリングコードを含む無線信号を送信する送信部とを備えた携帯機と、前記無線信号を受信する受信部と、車載機側ローリングコードを記憶する車載機側メモリと、前記携帯機から送信される前記携帯機側ローリングコードと前記車載機側ローリングコードとを照合する第1照合を実行し、照合成立した場合にドアの施解錠を行うための信号を出力する第1照合部とを備えた車載機と、前記携帯機との間で車両のエンジン始動に伴う第2照合を行う第2照合部と、を有し、前記携帯機は、前記第1照合時において前記携帯機側ローリングコードを第1の値分だけ更新し、前記第1照合完了後の前記第2照合において照合成立した場合に前記第1の値よりも大きな第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードを更新する更新部を備え、前記車載機は、前記携帯機の更新部によって第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードが更新された際に、前記車載機側ローリングコードを前記携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行う処理部を備えたことを要旨とする。
【0009】
この車両通信システムによれば、携帯機は、第1照合時において携帯機側ローリングコードを第1の値分だけ更新し、第1照合完了後の前記第2照合において照合成立した場合に第1の値よりも大きな第2の値分だけ携帯機側ローリングコードを更新する。そして、車載機は、携帯機の更新部によって第2の値分だけ携帯機側ローリングコードが更新された際に、車載機側ローリングコードを携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行う。このような構成とすることで、車載機側ローリングコードと携帯機側ローリングコードとを通常の更新(第1の値分だけの更新)よりも大きな値で更新することができる。そのため、仮に第1照合時における携帯機側ローリングコードを悪意のある第三者に不正取得された場合であっても、ローリングコードを車載機側、携帯機側ともに不正取得されたローリングコードよりも大きな値となるため第三者による利用が不能であり、セキュリティ向上を図ることができる。
【0010】
上記車両通信システムにおいて、前記第2照合部による第2照合は、車両のエンジン始動に伴うキー操作に基づく照合であることが好ましい。
この車両通信システムによれば、車両のエンジン始動に伴うキー操作に基づく照合であるため、キー操作に基づく照合をきっかけに第2の値分だけ携帯機側ローリングコードの更新並びに車載機側ローリングコードを携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行うことができる。
【0011】
上記車両通信システムにおいて、前記第2照合部による第2照合は、車両のエンジン始動に伴うトランスポンダを用いた照合であることが好ましい。
この車両通信システムによれば、車両のエンジン始動に伴うトランスポンダを用いた照合であるため、実際のエンジン始動よりも前に行われるトランスポンダ照合をきっかけに第2の値分だけ携帯機側ローリングコードの更新並びに車載機側ローリングコードを携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行うことができる。
【0012】
上記課題を解決するために、車両通信方法は、携帯機側ローリングコードを記憶する携帯機側メモリと、使用者の操作に基づいて前記携帯機側ローリングコードを含む無線信号を送信する送信部とを備えた携帯機と、前記無線信号を受信する受信部と、車載機側ローリングコードを記憶する車載機側メモリと、前記携帯機から送信される前記携帯機側ローリングコードと前記車載機側ローリングコードとを照合する第1照合を実行し、照合成立した場合にドアの施解錠を行うための信号を出力する第1照合部とを備えた車載機と、前記携帯機との間で車両のエンジン始動に伴う第2照合を行う第2照合部と、を有し、前記携帯機は、前記第1照合時において前記携帯機側ローリングコードを第1の値分だけ更新し、前記第1照合完了後の前記第2照合において照合成立した場合に前記第1の値よりも大きな第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードを更新し、前記車載機は、前記携帯機の更新部によって第2の値分だけ前記携帯機側ローリングコードが更新された際に、前記車載機側ローリングコードを前記携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行うことを要旨とする。
【0013】
この車両通信方法によれば、セキュリティ向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の車両通信システム及び車両通信方法は、セキュリティ向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態における車両通信システムのブロック構成図。
【
図2】車両通信システムの動作例を説明するためのタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、車両通信システムの一実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両通信システム1は、車両2の車両ドアの施解錠を遠隔操作するために使用者によって所持される携帯機3と、車両2に搭載されるとともに携帯機3との無線通信を通じて車両ドアの施解錠の指示を行う車載機4とを有する。なお、本実施形態の車両通信システムは、車両ドアの施解錠を携帯機側から遠隔操作するリモートキーレスエントリシステム(RKEシステム)である。
【0017】
携帯機3は、ドアロックの施錠を指示するためのロックスイッチ11と、ドアロックの解錠を指示するためのアンロックスイッチ12と、携帯機3の統括的な制御を司る携帯機側制御部13と、UHF帯の電波による信号を送信する送信部14とを備えている。
【0018】
携帯機側制御部13はメモリ13aを備えている。メモリ13aには、携帯機3の固有のIDコードと、携帯機側ローリングコードとが記憶されている。携帯機側制御部13は、ロックスイッチ11が操作されたときドアロックの施錠を指示する操作コード、IDコード及びローリングコードを含む操作信号(無線信号)を送信部14から送信する。また、携帯機側制御部13は、アンロックスイッチ12が操作されたときドアロックの解錠を指示する操作コード、IDコード及びローリングコードを含む操作信号(無線信号)を送信部14から送信する。なお、本実施形態では携帯機側ローリングコードは施錠・解錠のいずれであっても共有のローリングコードを利用している。即ち、あるタイミングにおける施錠時のローリングコードが「99」であれば、次の解錠時のローリングコードは「100」となり、継続して携帯機側制御部13によってインクメント(更新)されるようになっている。
【0019】
また、携帯機3は、携帯機側制御部13と電気的に接続されるトランスポンダ通信回路15(
図1においてトラポン通信回路と表記)を有する。トランスポンダ通信回路15は、コイル及びICチップ等からなる。このトランスポンダ通信回路15は、後述するイモビライザ通信機32からの駆動電波を受けると、自身のコイルに誘起電力が生じる。トランスポンダ通信回路15はコイルに生じた誘起電力を消費して自身のIDコードを含むトランスポンダ応答信号(以下、トラポン応答信号)を送信する。このトラポン応答信号は操作信号と同様の構成とされる。
【0020】
図1に示すように、車載機4は、車両側制御部21と、車両側制御部21と電気的に接続される受信部22とを有する。
受信部22は、UHF帯の電波による信号が受信可能となっており、携帯機3側の送信部14から送信される操作信号を受信可能となっている。
【0021】
車両側制御部21は、メモリ21aを有し、車両2(車載機4)に登録された携帯機のIDコードと、車載機側ローリングコードとが書き込み保存されている。
また、車両側制御部21は、受信部22を介して受信される無線信号の処理や、制御対象であるドアロック装置31に対してドアの施解錠を行うための信号を出力する。より具体的には車両側制御部21は、受信部22を介して得られる携帯機3側の操作コード、IDコード及びローリングコードを含む操作信号と自身のメモリ21aに保存されたIDコード及びローリングコードとを照合する第1照合を実行し、ドア錠の施錠・解錠の指示する信号をドアロック装置31に出力する。
【0022】
ドアロック装置31は、ドア錠を施解錠する装置であり、車両側制御部21から解錠を指示する信号が入力されるとドア錠を解錠し、施錠信号が入力されるとドア錠を施錠するとともに、ドア錠の施解錠状態を示す施解錠状態信号を車両側制御部21に出力する。このため、車両側制御部21は、施解錠状態信号に基づいて、ドア錠の施解錠状態を認識可能となる。
【0023】
図1に示すように車両2は、イモビライザ通信機32を有する。イモビライザ通信機32は、外部に駆動電波を出力するものである。車両側制御部21は、例えばエンジン停止状態においてブレーキペダルが踏み込まれたとき、指令信号をイモビライザ通信機32に出力する。イモビライザ通信機32は、車両側制御部21からの指令信号に基づき駆動電波を送信する。ここで、例えば携帯機3がメカニカルキーの場合、車両のキーシリンダー内に挿通された状態で駆動電波を受けて携帯機3のトランスポンダ通信回路15が起動する。そして、トランスポンダ通信回路15は、トラポン応答信号を送信する。イモビライザ通信機32は、トラポン応答信号を受信すると、この信号をパルス信号に復調し、これを車両側制御部21へ出力する。車両側制御部21は、トラポン応答信号受信(パルス信号)がイモビライザ通信機32から出力されると、第2照合としてのトランスポンダ照合(以下、トラポン照合)が成立したと判定する。車両2のエンジンが停止している場合において、トラポン照合が成立した状態で、携帯機3(メカニカルキー)が操作されると、車両側制御部21は、エンジン制御装置33を通じてエンジンを作動させる。なお、携帯機3が所謂電子キーの場合には、キーシリンダーがエンジンスイッチに置き換わり、エンジンスイッチ近傍に駆動電波が発信されるため、エンジンスイッチ近傍に携帯機3をかざした状態でトラポン照合が可能となる。
【0024】
また、本実施形態のイモビライザ通信機32は駆動電波の他、トラポン照合(第2照合)が成立した旨を携帯機3(トラポン通信回路15)に伝える照合成立信号を送信するようになっている。これは、例えば車両側制御部21によってトラポン照合が成立したと判定した場合に、車両側制御部21はイモビライザ通信機32を介して照合成立信号を出力させる。イモビライザ通信機32によって出力される照合成立信号をトランスポンダ通信回路15にて受信すると、その信号を適宜復調し、携帯機側制御部13に出力する。携帯機側制御部13は、前記照合成立信号がトランスポンダ通信回路15から入力されると、メモリ13a内に記憶された携帯機側ローリングコードを通常値(第1の値V1=1)よりも大きな第2の値V2(例えば「9」)増加させるようになっている。このとき、車両側制御部21は、携帯機側ローリングコードと一致させるように車載機側ローリングコードを増加させるようになっている。エンジン始動後における車載機側ローリングコードと携帯機側ローリングコードとの一致方法としては、携帯機3(送信部14)から車載機4(受信部22)に操作信号(操作コードは省略可)を出力することで最新の携帯機側ローリングコードを取得し、このコードと一致させるように車載機側ローリングコードを増加させることが考えられる。なお、これ以外の方法であってもよく、要は車載機側ローリングコードと携帯機側ローリングコードとを一致させればよい。
【0025】
次に、上記のように構成された車両通信システムの一動作例を
図1及び
図2を用いて説明する。
図1及び
図2に示すように、携帯機3のアンロックスイッチ12が或るタイミングにおいて操作された場合、アンロックスイッチ12が操作されたときドアロックの解錠を指示する操作コード、IDコード及び携帯機側ローリングコードを含む操作信号を送信部14から送信する。このときの携帯機側ローリングコードを「100」とする。
【0026】
このとき、例えば、第三者の受信機によって操作信号が取得されるとすると、車両2(車載機4)側において解錠操作が実施されないため、使用者によって再度アンロックスイッチ12が操作されることとなる。このとき、アンロックスイッチ12の操作されることで、携帯機側制御部13は、自身のメモリ13aに記憶されたローリングコードを通常値(第1の値V1=1)増加させる。即ち、ローリングコードが「101」となる。そして、そのローリングコードを含む操作信号を送信部14から出力する。
【0027】
このとき、例えば、前述の第三者の受信機によって操作信号(ローリングコード=111)が取得されて、値が「100」の状態のローリングコードを含む操作信号が第三者の送信機から出力されると車載機4の受信部22でその操作信号を受信する。すると、車両側制御部21は、受信部22で受信した操作信号のローリングコード及びIDコードと車両側制御部21のメモリ21a内のローリングコード及びIDコードとを比較する第1照合を実施する。そして第1照合が成立すると、車両側制御部21は、受信した操作信号が正規の操作信号であるとしてドアロック装置31を介して車両ドアを解錠する。
【0028】
その後、例えば使用者が携帯機3(メカニカルキー)をキーシリンダー内に挿通した状態でブレーキペダルが踏み込まれたとき、前記トラポン照合が行われ、このトラポン照合が成立した場合に車両側制御部21は第2照合が成立したと判定する。そして、トラポン照合が成立した状態で携帯機3を回動操作することで車両側制御部21は、エンジン制御装置33を通じてエンジンを作動させる。
【0029】
また、車両側制御部21によってトラポン照合が成立したと判定すると、車両側制御部21はイモビライザ通信機32を介して照合成立信号を出力させる。イモビライザ通信機32によって出力される照合成立信号をトランスポンダ通信回路15にて受信すると、その信号を適宜復調し、携帯機側制御部13に出力する。携帯機側制御部13は、前記照合成立信号がトランスポンダ通信回路15から入力されると、メモリ13a内に記憶された携帯機側ローリングコードを通常値(第1の値V1=1)よりも大きな第2の値V2(例えば「9」)増加させて携帯機側ローリングコードを「110」に更新するようになっている。
【0030】
そして車両側制御部21は、携帯機側ローリングコードと一致させるように車載機側ローリングコードを「10」増加させる。より具体的には、携帯機3(送信部14)から車載機4(受信部22)に操作信号(操作コードは省略可)を出力することで最新の携帯機側ローリングコードを取得し、このコードと一致させるように車載機側ローリングコードを増加させる。このようにすることで、最新のローリングコードがいずれも「110」となり、第三者が不正に取得したローリングコードの値(=101)よりも大きくなるため、第三者が不正に取得したローリングコードを無効化することができる。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)携帯機3は、第1照合時において携帯機側ローリングコードを第1の値V1分だけ更新し、第1照合完了後の第2照合において照合成立した場合に第1の値V1よりも大きな第2の値V2分だけ携帯機側ローリングコードを更新する。そして、車載機4は、携帯機3の更新部としての車両側制御部21によって第2の値V2分だけ携帯機側ローリングコードが更新された際に、車載機側ローリングコードを携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行う。このような構成とすることで、車載機側ローリングコードと携帯機側ローリングコードとを通常の更新(第1の値V1分だけの更新)よりも大きな値で更新することができる。そのため、仮に第1照合時における携帯機側ローリングコードを悪意のある第三者に不正取得された場合であっても、ローリングコードを車載機側、携帯機側ともに不正取得されたローリングコードよりも大きな値となるため第三者による利用が不能であり、セキュリティ向上を図ることができる。
【0032】
(2)車両のエンジン始動に伴うキー操作に基づく照合であるトランスポンダを用いた照合であるため、実際のエンジン始動よりも前に行われるトランスポンダ照合をきっかけに第2の値V2分だけ携帯機側ローリングコードの更新並びに車載機側ローリングコードを携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行うことができる。
【0033】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第2照合としてトラポン照合を採用したが、これに限らず、エンジン始動された場合に第2照合が成立したとする構成を採用してもよい。その一例として、以下のような方法が考えられる。
【0034】
例えば車両側制御部21によってエンジン制御装置33を通じてエンジンを作動させる際に、車両側制御部21がイモビライザ通信機32によりエンジン始動信号を出力させる。イモビライザ通信機32によって出力されるエンジン始動信号をトランスポンダ通信回路15にて受信すると、その信号を適宜復調し、携帯機側制御部13に出力する。携帯機側制御部13は、前記エンジン始動信号がトランスポンダ通信回路15から入力されると、メモリ13a内に記憶された携帯機側ローリングコードを通常値(第1の値V1=1)よりも大きな第2の値V2だけ増加させる。このように車両2のエンジン始動が行われたか否かを照合するため、エンジンが始動されたことをきっかけに第2の値V2分だけ携帯機側ローリングコードの更新を行うことができる。
【0035】
・上記実施形態では、携帯機3(メカニカルキー)をキーシリンダーに挿通した状態でブレーキペダルを踏むことでトランスポンダ照合(第2照合)が実施される構成としたが、単に携帯機3(メカニカルキー)をキーシリンダーに挿通時に実施する構成や、ブレーキペダルを踏むことなく単に携帯機3(メカニカルキー)をキーシリンダーに挿通時に第2照合が実施される構成を採用してもよい。また、携帯機3が電子キーの場合には、エンジンスイッチ(例えば押しボタン)を近傍にかざすだけでトランスポンダ照合を実施する構成としてもよい。
【0036】
上述したようにトランスポンダ照合をきっかけに第2の値V2分だけ携帯機側ローリングコードの更新並びに車載機側ローリングコードを携帯機側ローリングコードと一致させる処理を行うことができる。
【0037】
・車両通信システム1は、他の通信、形式や周波数を使用したシステム構成に変更可能である。
・上記実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…車両通信システム、2…車両、3…携帯機、4…車載機、13a…メモリ(携帯機側メモリ)、14…送信部、21…車両側制御部(第1照合部、第2照合部及び更新部)、21a…メモリ(車載機側メモリ)、22…受信部、V1…第1の値、V2…第2の値。