(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分析ゾーン、前記分配ゾーン及び前記通気ゾーンが複数の連続セグメントとして構成され、各セグメントは長さ対深さ比を有し、前記複数のセグメントの長さ対深さ比の合計が25よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は2に記載のサンプラ。
前記分配ゾーン、前記分析ゾーン及び通気ゾーンが複数の連続セグメントとして構成され、各セグメントは長さ対深さの比を有し、前記セグメントの長さ対深さ比は、前記第1開口からの距離が増加するに従って連続的に増加することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のサンプラ。
前記分配ゾーンの端部から前記第2開口部に向かって延びる前記溶鋼の流れ方向において、前記分析ゾーンの少なくとも一部の幅寸法の増大がないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のサンプラ。
前記第1開口部及び前記第2開口部が前記サンプルキャビティ内に形成された唯一の開口部であり、前記流入導管の端部が前記第1開口部内に固定され、前記ガスカプラの端部が前記第2開口部内に固定されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載のサンプラ。
前記流入導管、前記分配ゾーン、前記分析ゾーン、前記通気ゾーン及び前記ガスカプラが、溶鋼の流れ方向にこの順番で連続的に配置されていることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載のサンプラ。
前記カバープレートと前記ハウジングとが一緒に組み立てられたときに、前記カバープレートが前記第1面に沿って前記ハウジングの前記リッジに密着していることを特徴とする、請求項17に記載のサンプラ。
【背景技術】
【0002】
溶融状態の金属を処理する間に、例えば金属サンプルの化学組成又は金属組織の分析又は評価のために、プロセスの様々な段階で溶融金属の代表的なサンプルを得ることが必要である。製造中及びさらなる処理中に溶融金属(特に鋼)を分析するための様々な方法が当該技術分野で知られている。例えば、独国特許第3344944号には、鋼の製造及びさらなる処理加工の間に鋼を分析するための方法が記載されている。この方法は、連続的に実施される次の工程を特徴する:(1)サンプリングランスをマガジンに装填し、そのサンプルタイプを自動的に事前選択し;(2)制御スタンドからコンバータ又は電気炉内のブローイング段階の間に溶鋼のサンプルを採取し;(3)サンプリングランスを開梱し、その段ボール及びセラミック部品を開梱機に投棄し;(4)早期欠陥検出のためにサンプルの質量と特定の値とを比較し;(5)サンプルを、水、空気、不活性ガス及びドライアイスと共に供給される冷却部に通し;(6)自動送受信ステーションを有する空気圧チューブコンベヤセクションによってカートリッジを用いてサンプルを搬送し;(7)自動サンプル研磨機内でスペクトル分析用のサンプルを調製し;(8)研磨された鋼サンプルの欠陥及び欠陥のドキュメンテーションを検出し;(9)鋼サンプルを、マニピュレータを使用して分光計のペトリステージに移し;(10)分光計でサンプルを分析し;及び(11)分析データを制御スタンドに通信する。典型的な製鉄所では、上記の工程のうちのいくつかは手作業であり、他のものはロボット式である。しかし、分析プロセス全体は時間がかかり、労働集約的である。
【0003】
溶融金属浴からサンプルを取り出すための従来のサンプリング装置(例えば、独国特許第3344944号のサンプリングランス)も、公開された特許及び特許出願からも知られている。特許又は特許出願の対象ではない他の従来のサンプリング装置は、例えば市場での入手可能性のため公知である。これらの従来のサンプリング装置又はサンプラは、一般に、発光分析及び金属組織学的分析に使用するための固体金属のクーポン又はディスクを与える。
【0004】
このようなサンプリング装置によって得られる凝固金属クーポンの幾何学的形状及び寸法は、金属のタイプ又は金属学的な要望に特有のものである場合がある。しかし、浸漬装置によって得られるサンプルの一般的なカテゴリーは、円板形又は楕円形で、直径又は長い方の長さが28〜40mmのサンプルである。最も一般的には、このようなサンプルは、約32mmの直径又は長い方の長さ及び4〜12mmの厚さを有する。ロリポップサンプラとして一般的に知られているサンプラの中には、使用者の要求に応じて円形から楕円形又はそれよりも長いものまでを範囲とする異なる形状のサンプルを生成するものもあるが、大抵のサンプルは約32mmの直径又は長い方の長さを有する。
【0005】
二重厚さサンプラとして一般に知られている他のサンプラは、同じサンプル内の2つの厚さを結合させる。二重厚さサンプルの分析について、12mm断面がスペクトル分析される部分である。この厚さの凝固サンプルは、金属及び非金属偏析がない分析表面を達成するために0.8〜5mmの表面研削が必要であることが分かった。表面処理の必要性を排除することで分析時間が短縮され、経済的に有利になると考えられる。しかし、これは、サンプルキャビティを溶融金属で均一に充填し、サンプルセクション全体が均一に固化するように溶融金属サンプルを急速に冷却することによってのみ達成可能である。
【0006】
典型的なサンプリング装置は、サンプリング装置を溶融金属浴に浸漬すると溶融金属が充填されるように構成されたサンプルチャンバ又は金型キャビティを含む。金型キャビティ又はサンプリングチャンバの形をたどる金型は、典型的には、2つの部分のクラムシェル型構成又は平板によって上側及び下側が覆われたリングのいずれかである。米国特許第3,646,816号にはこのタイプの消耗用浸漬サンプラが記載されており、このサンプラでは、ディスク状のサンプルの両方の平坦な表面は、より急速な固化を達成するための冷却プレートと、分析前の清浄化をそれほど必要としない一対の滑らかな表面とによって形成される。米国特許第4,211,117号などの他の先行技術特許は同様の概念に関するものであるが、米国特許第4,401,389号及び同第5,415,052号は、この金属サンプルを他のセンサ(それらのうちの一つは温度測定センサとすることができる)と組み合わせた例を提供する。
【0007】
従来、限られた状況を除いて、金属学的プロセスの場所で得られた凝固金属サンプルは、離れた化学研究室に物理的に輸送され、そこで、凝固金属サンプルの組成がアークスパーク発光分光装置を使用して測定される場合が多い。発光分光法(又は「OES」)システムは、一般に、金属サンプルの化学組成を決定するため並びにそれらの迅速な分析時間及び固有の精度による溶融金属の処理を制御するために最も有効なシステムである。その後、この分析の結果が金属学的プロセスの場所に戻され、そこで、作業者がこれらの結果を利用してさらなる処理に関する決定を行う。大まかに言えば、OES分析手順は、導電性金属サンプルをその分析表面がOES機器、すなわち発光分光計のステージの所定の領域上に表を下にして配置することから始まる。より具体的には、サンプルは、分光計の分析開口部を跨いで閉じ、アノードがサンプルの分析表面にほぼ当接するように配置される。サンプルの所望の配置及びアノードと分析表面との近接が達成されたら、アノードと分光計ステージに電気的に接続された導電性金属サンプルとの間でスパークが放出される。この接続は、ほとんどの場合、重力を小さな荷重と組み合わせて行われる。発光分光器の分析開口部は、典型的には約12mm幅である。この距離は、アノードと計器ハウジングとの間のスパークがアークを発するのを回避する。光検出器は、サンプル表面の掘削された材料から放出された光を受け取る。アノードと金属サンプルとの間の空間によって部分的に形成されたスパークチャンバは、誤った分析値につながるおそれのある空気侵入を回避するためにアルゴンその他の不活性ガスで連続的にパージされる。
【0008】
分光器の分析開口部にわたって平坦にするために、金属サンプルはいかなる伸張部分も有することができず、金属サンプルの分析表面は平滑でなければならない(すなわち、サンプルハウジングのうち、分析表面の平面を破壊する部分は存在することができない)。サンプルは、分光計の分析開口部に広がっていなければならず、スパークチャンバの不活性ガスパージを容易にし、かつ、アノードに向かって連続したサンプル表面を呈するのに十分に平坦なものでなければならない。
【0009】
このような分析装置を金属学的プロセスの場所の近くの工場環境に配置すると、輸送及び取り扱いの労力を排除することにより、よりタイムリーな結果が得られ、大幅なコスト削減が得られることが実証されている。これらのタイプの局所分析システムのための金属学的サンプルを与えることに関連するいくつかの問題並びにこれらの問題に対するいくつかの従来技術の解決策がいくつか存在する。例えば、凝固中又は凝固したサンプルの熱い金属表面を大気に曝すことにより、その表面に、後でサンプルをOESで分析するために機械的粉砕によって除去しなければならない酸化物が急速に形成されることが分かった。この問題に対する解決策の一つは、金属サンプルをサンプルチャンバから取り出す前に金属サンプルを室温に近づけるために凝固金属の熱を除去することであった。
【0010】
直接分析(DA)サンプラは、DAサンプルを生成する新たに開発されたタイプの溶融金属浸漬サンプラである。DAサンプルは、分析前にあらゆる種類の表面準備を必要としないため、OES分析方法を利用することにより、タイムリーな化学結果の入手可能性及び実験室時間の節約の両方に大きな経済的利益をもたらすことができる。
【0011】
米国特許第9,128,013号には、局所分析を目的とする鋼を製造するためのコンバータプロセスから急速に冷却されたサンプルを回収するためのサンプリング装置が記載されている。このサンプリング装置は、少なくとも2つの部分によって形成されたサンプルチャンバを備え、ここで、サンプルチャンバアセンブリの質量に対するサンプルキャビティ内に取り込まれた溶融物の質量の特定の比によって、サンプルキャビティを満たす溶融物の急速冷却が可能になる。このサンプルチャンバを測定プローブから取り出すことによってサンプル表面を大気に曝すと、溶融物はすでに酸化ができるだけ防止されるほど十分に冷却されているため、サンプル表面の後処理は不要である。
【0012】
同様のDA型サンプラが米国特許出願公開第2014/318276号から公知である。このDA型サンプラのサンプルキャビティの一方の端部は、流入導管を介してサンプラの浸漬中に溶融金属浴に接続される一方で、サンプルキャビティの反対側の端部は結合デバイスと連通している。浸漬中、ただし、サンプルキャビティに溶融金属を充填する前に、サンプルキャビティを不活性ガスでパージして、サンプル材料の早期充填及び酸化を回避する。流入導管は、サンプルキャビティの平坦面に対して垂直に配置される。サンプルキャビティの通気は、浸漬方向に対してサンプルキャビティの分析表面の下に配置される。
【0013】
上記サンプリング装置は、製鋼プロセス、特にコンバータ用途に使用されることが意図される。鋼サンプル及び鋼浴温度は、米国特許出願公開第2014/318276号によれば、ブローを中断した後の傾斜コンバータ又はサブランスと呼ばれる特別な装置によって測定される。後者の場合、コンバータは直立状態に留まり、ブロープロセスを続行することができるため、時間を節約することができる。酸素製鋼プロセスは、鋼の重量、温度及び組成についての正確な終点値を達成することを目的とする。炭素、リン及び硫黄の濃度、場合によっては最終的な鋼特性に有害な特殊元素について、それらの鋼中の含有量が組成目標ウィンドウ内にあるように監視される。高速分析DA型サンプラは、従来のサンプリング装置よりはるかに短い時間で組成を確認することができる。というのは、分析手順が、凝固サンプルを離型し、サンプルを分光計に移し、サンプルを分析のためにOESステージに置くことにまで減らされているからである。
【0014】
コンバータ用途では、鋼の酸素含有量は高いと考えられる。特に、酸素吹き込みプロセスの終了時に、鋼の酸素含有量は、典型的には500〜1000ppm程度である。この浴から採取されたサンプルは、鋼の降温(すなわち、冷却中)がその温度及びその炭素含有量に関する酸素溶解度を超えるときに冷えて一酸化炭素を排出する。これらの気泡により、不規則な表面及び中空のスポンジ様構造のサンプルとなる。この冷却中の問題を回避するために、米国特許第4,037,478号及び同第4,120,204号に記載されているような従来技術のサンプラには、脱酸素剤、最も一般的にはアルミニウム及びジルコニウムが設けられる。しかしながら、小さな断面及び急速冷却サンプルチャンバを有する急速充填DAサンプラは、サンプルの断面が減少するにつれて脱酸素剤の分布が乏しくなることが示されているため、サンプル量の減少には限界がある。
【0015】
したがって、改善された分布を得るために、急速冷却サンプラに脱酸材料を混合するための手段を提供する必要がある。
【0016】
また、従来のサンプリング装置によって生成されたサンプルは、分光器開口部に平行な方向に少なくとも32mmの直径を有し、分光器開口に垂直な方向に4〜12mmの厚さを有する。このような寸法は、金属サンプルの分析表面を機械的に粉砕して表面から酸化物を浄化し、必要な平坦トポグラフィを与える事前分析準備装置によって容易に処理できる。また、この幾何学的形状は、分析及び除去を介してサンプルを準備から進めて次のサンプルを待つロボットマニピュレータにも便利である。典型的な鋼鉄実験室におけるロボット装置は、根本的に異なるサンプルの幾何学的形状を受け入れるように修正することが困難である。
【0017】
しかし、従来技術のサンプル容積は、必要最小限の分析表面積に到達するのに必要な金属の最小容積よりも大きい。したがって、従来技術の装置のサンプル容積は、酸化物のない表面を得るために必要な溶融金属サンプルの急速凝固を妨げる。そのため、従来の装置は、表面準備なしにOESによって確実に分析できない。回収後に大量の冷却プレート及びサンプラハウジングを使用して大容積の金属サンプルを低温にすることは、迅速な離型のためには実用的でなく、浸漬サンプリング装置として使用するには不経済である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
詳細な説明
本発明は、OESによる直接分析のための凝固鋼の凝固ストリップサンプルを製造するための浸漬サンプリングプローブに関する。
【0047】
図1を参照すると、浸漬サンプリングプローブ10、特に溶融金属サンプリングプローブ10が示されている。最も好ましくは、プローブ10は溶鋼の浸漬及びサンプリングに適している。プローブ10は測定ヘッド5を備える。測定ヘッド5は、樹脂結合珪砂からなることが好ましい。しかし、当業者であれば、測定ヘッド5は、溶融金属に浸漬される物体を形成するのに適していることが知られている任意の材料から作製できることが分かるであろう。
【0048】
測定ヘッド5はキャリア管1に支持されている。好ましくは、キャリア管1は紙製キャリア管である。使用時に、好ましくは、測定ヘッド5を溶融金属浴(図示せず)の表面よりも下に浸漬方向Iに浸漬するのに必要な機械的作用を与えるようにプローブホルダ又はランス(図示せず)がキャリア管1の内部容積部に挿入される。
【0049】
測定ヘッド5は、溶融金属のサンプルを収集し回収するためのサンプリングチャンバ3を備える。本明細書では、浸漬サンプリングプローブ10に関してサンプルチャンバ3を説明しているが、当業者であれば、サンプルチャンバ3は、任意のタイプの溶融金属サンプリング装置と共に利用できることが分かるであろう。したがって、本明細書に記載されたサンプルチャンバ3の組み立て及び構成は、浸漬サンプリングプローブ10だけでなく、任意のタイプの溶融金属サンプリング装置に適用可能である。
【0050】
好ましくは、サンプルチャンバ3は、2つの部分のサンプリングチャンバである。具体的には、
図2を参照すると、サンプルチャンバ3は、ハウジング30とカバープレート32とから構成される。ハウジング30は、アルミニウム、銅及び回収された金属サンプルに電気的に結合するための同様の熱伝導特性及び電気伝導特性を有する他の金属(これらに限定されない)などの、良好な熱及び電気伝導体である1種以上の材料から形成される。好ましくは、ハウジング30はアルミニウム製である。閉鎖されたプレート32の質量は、好ましくは、サンプルチャンバ3の全質量の10〜20%を占める。ハウジング30は、識別手段を有する破壊不能な方法によって示すことができる。
【0051】
サンプルチャンバ3の2つの部分30、32は、好ましくは、溶融金属がサンプルチャンバ3に流入してこれを充填する力のためサンプリングチャンバ3の2つの部分30、32が分離する傾向に抵抗するのに十分な圧縮力でクランプ4(クリップともいう)によって共に保持される。クランプ4は、好ましくは金属製クランプである。しかしながら、当業者であれば、クランプ4は、溶融金属に浸漬することができ、かつ、必要な圧縮力を与える別の好適な材料から作製できることができることが分かるであろう。
【0052】
図1を参照すると、測定ヘッド5は、第1端部12と、対向する第2端部14とを有する。測定ヘッド5の第1端部12は浸漬端部に相当する。測定ヘッド5の第2端部14は、ランス又はプローブホルダに面するように構成される。サンプルチャンバ3は、第1端部16と、対向する第2端部18とを有する。サンプルチャンバ3の第1端部16は浸漬端部に相当する。当業者であれば、用語「浸漬端部」とは、溶融金属中に浸漬方向Iに最初に浸漬される物体の端部を意味することが分かるであろう。
【0053】
サンプルチャンバ3は、本明細書でさらに詳細に説明するように、溶融金属を受け取るように構成されたサンプルキャビティを備える。サンプルキャビティは、長手方向軸Xに沿ってサンプルチャンバ3の第1端部16の近くから第2端部18に向かって延在する(
図4参照)。
【0054】
サンプルチャンバ3の第1端部16は、好ましくは、流入導管7に取り付けられ又はそうでなければ流入導管7を備える。より詳細には、サンプルハウジング30の第1端部16は、流入導管7を受け入れるための第1開口部20を有する(
図4参照)。第1開口部20、したがって流入導管7は、好ましくはサンプルチャンバ3、具体的にはサンプルキャビティと整列する。流入導管7は溶融金属浴からサンプルチャンバ3への溶融金属の流れを可能にする。したがって、溶融金属は、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティに、サンプルキャビティの長手方向軸Xに平行な浸漬方向に導入される。流入導管7は、好ましくは石英材料、より好ましくは透明石英ガラス材料から作製される。しかしながら、流入導管7は、セラミック材料(これに限定されない)などの任意の他の好適な材料から作製されてもよいことが分かるであろう。
【0055】
流入導管7は、第1端部(図示せず)と、対向する第2端部22(
図4〜
図4A参照)とを有する。一実施形態では、流入導管7は、ブッシュ6(
図1参照)によって測定ヘッド5内に固定される。ブッシュ6は、好ましくはセメント材料製である。流入導管7の第2端部22は、実質的に気密的に接着剤27によってサンプルチャンバ3内に接着され又は取り付けられている。具体的には、流入導管7の第2端部22は、サンプルチャンバ3のハウジング30の第1開口20内に完全に配置され、その中で接着剤27によって接着されて、実質的に気密な接合部が達成される。「実質的に気密」とは、シール又は接合部が完全に気密又はかなりの程度気密であることを意味する。特に、流入導管7とガスカプラ2(本明細書に記載)との接合に関して、形成された接合部は、好ましくは、サンプルキャビティが浸漬深さで圧力レベルを超えて加圧できる程度に気密である。
【0056】
図1及び
図3を参照すると、流入導管7の第1端部は浸漬端部に相当する。第1端部は、第1保護キャップ8によって覆われているため、
図1及び
図3では見えない。特に、第1保護キャップ8は、接着剤11によって実質的に気密に流入導管7の第1端部に取り付けられている。第1保護キャップ8は金属製であることが好ましく、鋼製であることがより好ましい。第1保護キャップ8は、サンプルキャビティが十分にパージされ、閉じ込められた全ての空気がそこから排出できることを確保するための開口部(図示せず)(例えば、直径1mmの穴)を備えることができる。続いて、第2保護キャップ9が第1保護キャップ8を覆う(具体的には囲繞する)。第2保護キャップ9は、測定ヘッド5の第1端部12に取り付けられる。好ましくは、第2保護キャップ9は、金属製、より好ましくは鋼製である。一実施形態では、第2保護キャップ9は、紙の覆い(図示せず)によってさらに保護される。
【0057】
図1〜2及び
図4を参照すると、サンプルハウジング30の第2端部18は、カプラ2、より具体的にはガスカプラ2を受け入れるための第2開口部33を備える。したがって、第2開口部33は、好ましくはハウジング30内に完全に収容されるガスポートである。カプラ2は、実質的に気密な接合部を達成するために、接着剤26によってサンプルチャンバの第2端部18にあるガスポート33内でハウジング30にシールされる。したがって、カプラ2の端部は、サンプルチャンバ3のハウジング30の本体内に完全に配置される。
【0058】
カプラ2は、導管(図示せず)、より具体的にはガス導管と嵌合するように構成される。特に、ガス導管の第1端部がカプラ2に取り付けられ、ガス導管の反対側の第2端部が空気圧システム(図示せず)に取り付けられる。空気圧システムは、好ましくは、不活性ガスを、サンプルチャンバ3をパージして加圧するためにガス導管を介してサンプルチャンバ3に供給する。サンプルチャンバ3をパージし加圧するために使用できる不活性ガスの例としては、窒素又はアルゴンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、不活性ガス(例えば、窒素又はアルゴン)は、2barの圧力である。また、空気圧システムは、ガス導管を介してサンプルチャンバ3からの排気ガスの除去を容易にする。空気圧システムがカプラ2を介してプローブ10のサンプリングチャンバ3と連通している場合には、流入導管7の浸漬端部からサンプリングチャンバ3まで(すなわち長手方向軸Xに沿って)連続的なガス経路があり、これは実質的に漏れがないが、サンプルチャンバ3はサンプルにアクセスするために容易に分解される。
【0059】
図3を参照すると、一実施形態では、カプラ2には、プローブホルダ上の対応する容器と嵌合するように構成されたガスコネクタ23が設けられている。より詳細には、ガスコネクタ23は、プッシュオン/プルオフタイプのコネクタアセンブリであり、プローブホルダ上の嵌合面にガスシール用のOリング24を備える。
【0060】
使用時に、測定ヘッド5は溶融金属浴に浸漬され、サンプルチャンバ3は、空気圧システムによって供給されかつカプラ2から長手方向軸Xに沿って流入導管7に向かって移動する不活性ガスによってパージされ加圧される。測定ヘッド5が溶融金属浴の表面の下に浸漬された後に、溶融金属の熱により第2保護キャップ9及び紙(存在する場合)の被覆が溶融し、それによって第1保護キャップ8が溶融金属に曝される。その後、第1保護キャップ8も溶融し、それによってサンプルチャンバ3が流入導管7を介し溶融金属浴と流体連通する。より具体的には、第2保護キャップ8が一旦溶融すると、不活性ガスの圧力は、空気圧システムがパージモードから排気モード又は真空モードに切り換わるまで開放流入導管7を介して(すなわち、流入導管7の第1端部を介して)サンプルチャンバ3から出る。次いで、溶融金属は、流入導管7を通って、特に第1端部から第2端部22に、その後サンプルチャンバ3のサンプルキャビティに入ると共に、ガスがカプラ2を介してサンプルチャンバ3から排出される。ガスは、好ましくは、充填溶融金属の自然の溶鋼静圧によって排出されるが、遠隔装置によってガス導管に加えられるわずかな真空によっても排出できる。
【0061】
図4〜
図6は、プローブ10の2つの部分のサンプルチャンバ3をより詳細に示す。サンプルチャンバ3のハウジング30は、第1側又は第1面40と、対向する第2側又は第2面42とを有する(
図4A及び6参照)。第1面40は分析面であり、これは、サンプルが収集され、分析中に光放出分光器のステージ上に表を上にするように構成されるハウジング30の幾何学的側面であることを意味する。この場合の下方向は、OESシステムのスパーク源に向かう方向である。第1面40は、浸漬端部とハウジング30の対向端部との間に延在する。より詳細には、第1面40は、第1平面AFにおいて、サンプルチャンバ3の第1端部16から第2端部18に向かって延在する。サンプルチャンバ3の第2端部18には、好ましくはハウジング30内に完全に収容されるガスポート33が設けられる。ガスポート33は、本明細書で説明するように、接着剤26(
図3参照)によって実質的に気密にハウジング30にシールされるカプラ2を収容する(
図1又は
図3に示すように)。
【0062】
図4及び
図6を参照すると、第1面40の部分は、溶融金属の通気及び収集のためのサンプルチャンバ3の異なる領域又はゾーンを形成するようにくり抜かれている。より具体的には、ハウジング30の第1面40は、以下のように、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティを集合的に形成する様々な凹部を備える:サンプルチャンバ3の第1端部16に近接しかつ流入導管7と直接連通する第1領域34、第1領域34上に重なる第2領域35、第2領域35に隣接する第3領域36。また、第1面40は、サンプルチャンバ3の第2端部18に近接し、かつ、ガスポート33と直接連通する第4領域38の形態の追加の凹部も備える。ガスポート33(及びカプラ2)及び流入導管7はハウジング30内に配置され、それによってこれらのものは直接連通し、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティと整列する。より詳細には、ガスポート33及び流入導管7は、好ましくは、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティに平行に延在し、より好ましくは、ガスポート33及び流入導管7は、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティの共通の長手方向軸Xに沿って延在する。
【0063】
図6を参照すると、第4領域38は、サンプルチャンバ3のハウジング30の第1面40に形成された窪み又は凹部によって画定された接続容積部である。したがって、接続容積部38は、第1面40に開放端部38aを有する。接続容積部38はガスポート33とガス連通している。溶融金属は、一般に第3領域36で凝固するので、本明細書で説明するように、接続容積部38は、一般に、溶融金属を受け入れるためのサンプルハウジングキャビティの一部とはみなされない。
【0064】
第3領域36は、接続容積部38とガス連通している通気ゾーンである。通気ゾーン36は、ハウジング30の第1面40に形成された窪み又は凹部によって画定される。したがって、通気ゾーン36は、第1面40にある開放端部36aと、対向する閉鎖底端部36bとを有する。通気ゾーン36の中心線は、好ましくは、第2領域35及びガスカプラ2と整列する。
【0065】
第2領域35は分析ゾーンである。分析ゾーン35は、ハウジング30の第1面40に形成された細長い窪み又は凹部によって画定される。したがって、分析ゾーン35は、第1面40にある開放端部35aと、反対側に部分的に閉鎖した底端部35bとを有する。より詳細には、閉鎖底端部35bの物理的境界は、分析ゾーン35の長さの一部を横切ってのみ延在する。
【0066】
一実施形態では、分析ゾーン35の対向する端部(すなわち、浸漬方向Iに関して先端部及び後端部)が機械加工を容易にするために丸められている。しかしながら、当業者であれば、端部はどのような形状であってもよいことが分かるであろう。
【0067】
分析ゾーン35の一部は、サンプルチャンバ3の第1領域34を覆う。より詳細には、分析ゾーン35の先端部(すなわち、サンプルチャンバ3の浸漬端部16に近接する分析ゾーン35の先端部)は、第1領域34(
図6参照)を覆い、かつ、それと直接連通する。したがって、第1領域34を覆う分析ゾーン35の部分は、閉鎖底端部35bによって物理的な境界とはならない。第1領域34は、流入導管7と直接連通する分配ゾーンである。より具体的には、溶融金属は、流入導管7の第2端部22から分配ゾーン34に直接導入される。このように、入口導管7は、長手方向軸線Xに平行な方向に分配ゾーン34と直接流体連通するように配置される。
【0068】
また、分析ゾーン35と分配ゾーン34との間に物理的な描写はない。しかしながら、これらは、本発明の実施のための規定寸法の点で別個の領域であると考えられる。特に、分析ゾーン35と分配ゾーン34との間の仮想境界線は、
図6に破線35cで示すように、本質的には閉鎖底端部35bの延長線であるところ、これは、分析ゾーン35と分配ゾーン34との間の境界線35cが閉鎖底端部35bと同じ位置にあることを意味する。分析ゾーン35は、本明細書でより詳細に説明するように、分配ゾーン34を覆う均一な深さのものであることが好ましい。
【0069】
集合的に、接続容積部38、通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34は、サンプルチャンバ3の中空容積部を形成する。通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34は、溶融金属を受け入れるキャビティを集合的に備えるところ、これは、溶融金属(特に溶鋼)が長手方向軸Xに沿って導入され、集められ、その後凝固して凝固金属サンプルSを形成し、最終的には直接分析されるサンプルキャビティを意味する。通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34は連続領域である。
【0070】
図4及び
図6を参照すると、ハウジング30の第1面40は、接続容積部38、通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34の凹部を取り囲む隆起部39を備える。より具体的には、隆起部(ここではリッジ39という)は、接続容積部38、通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34の集合的容積部を取り囲む。リッジ39の上部又は遠位リム39aは、好ましくは、第1面40の残部に対して(すなわち、第1平面AFに対して)0.2mm〜0.5mm、より好ましくは0.3mmの高さである。したがって、周囲リッジ39の遠位リム39aは、第1面40の第1平面AFから離間した第2平面APにある。第2平面APは、ここでは分析平面という。サンプルチャンバ3が金属で満たされると、凝固金属サンプルASの分析可能な表面ASは、本明細書でより詳細に説明するように分析平面AP内に位置する。
【0071】
図5〜5Aを参照すると、カバープレート32は、ハウジング30と同じ材料から形成される必要はない。ハウジング30とは異なり、カバープレート32は、良好な導電体である材料から形成される必要はない。例えば、カバープレート32は、透明シリカガラス又は耐火セラミック材料から形成できる。しかしながら、好ましくは、カバープレート32は、ハウジング30と同じ材料から形成される。
【0072】
好ましくは、組み立ての実際的な目的のために、カバープレート32は、ハウジング30とほぼ同じ幅及び長さである。しかしながら、カバープレート32は、このような寸法に限定されず、ハウジング30よりも大きい又は小さい幅及び長さを有してもよいこと分かるであろう。
【0073】
カバープレート32は、第1側又は第1面44と、対向する第2側又は第2面46とを有する。カバープレート32は、好ましくは、第1面44から第2面46にまで延びる1mm〜5mmの厚さを有する。カバープレート32の第1面44は、サンプルチャンバ3の組立構成では、ハウジング30、より具体的にはハウジング30の第1面40に面するように構成される。カバープレート32の第1面44には、サンプルチャンバ3の組立構成においてハウジング30とカバープレート32との間に配置されるようにシール部材31が設けられる。シール部材31はガスシール部材であることが好ましい。具体的には、シール部材31はガスケットである。ガスケット31は、好ましくは、サンプルチャンバ3の組立構成において、リッジ39を包囲する又は取り囲むように寸法決めされる。ガスケット31の形状は問わない。ただし、ガスケット31は、ハウジング30の第1面40のリッジ39と同一形状に形成されていることが好ましい。
【0074】
一実施形態では、ガスケット31は、好ましくは、シリコーン又は任意の同様の重合体から形成される。当業者であれば、ガスケット31は、カバープレート32とハウジング30との間に気密シールを与える任意の材料から形成されてもよいことが分かるであろう。ガスケット31の材料をカバープレート32の第1面44に適用した後に、ガスケット31を乾燥させてからカバープレート32をハウジング30と組み立て、そしてクランプ4によって共に固定するため、ガスケット31はハウジング30に接着しない。
【0075】
当業者であれば、その代わりに、本発明の範囲から逸脱することなく、ガスケット31をOリング又は平坦なガスケット材料として形成できることが分かるであろう。例えば、別の実施形態では、ガスケット31は、好ましくは0.04〜0.1mmの厚さを有する平坦なガスケットとして適用されるプラスチック箔である。例えば、平坦なガスケットは、3M(商標)製の表面保護テープ(製品番号4011a)から形成できる。
【0076】
図6に示すように、サンプルチャンバ3の組立構成では、カバープレート32及びハウジング30を組み立てて、分配ゾーン34、分析ゾーン35及び通気ゾーン36を含むサンプルキャビティを形成する。好ましくは、カバープレート32は、ハウジング30のリッジ39上に(すなわち、分析平面APに)載置され、ガスケット31はハウジング30の第1面40に接触して、ガスケット31がリッジ39を取り囲む。より具体的には、サンプルチャンバ3の組立構成では、カバープレート32は、好ましくは、分析平面APにおいてリッジ39と密着し、ガスケット31の第1表面40に対するシールによるガスケット型フィットでハウジング30の第1表面40に対してシールされる。しかしながら、カバープレート32及びハウジング30は、リッジ39及び分析平面APの上方に延在する平面に沿って組立て可能であることが分かるであろう。
【0077】
したがって、カバープレート32は、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティを閉鎖する。また、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティは、流入導管7から長手方向軸Xに沿って加熱金属が導入され、収集され、その後急速に冷却されて凝固金属サンプルSを形成する容積部である。このように、組み立てられたサンプルチャンバ3内には2つの開口部しか形成されない。すなわち、流入導管7と連通する第1開口部20及びカプラ2と連通するガスポート33の開口部である。サンプルキャビティに収容された凝固金属サンプルSの分析表面は、分析平面APにある。さらに、第1開口部20及び関連する流入導管7並びにガスポート33及び関連するカプラ2は、分析平面APから離間され、かつ、それと交差しない。
【0078】
以下では、各ゾーン34、35、36の長さLは、サンプルキャビティの長手方向軸Xに平行でかつそれと整列した寸法に関して記載されており、各ゾーン34、35、36の幅Wは、長手方向軸線Xに垂直な寸法に関して記載されており、各ゾーン34、35、36の深さDは、長手方向軸Xに垂直でかつ幅寸法に垂直な寸法に関して記載されている。より詳細には、各ゾーン34、35、36の深さは、分析平面APに沿った点から各ゾーン34、35、36の下端部又は境界まで測定される。というのは、サンプルチャンバ3のサンプルキャビティは、一方の端部ではゾーン34、35、36によって、他方の端部では分析平面にあるカバープレート32によって境界をなしている。
【0079】
長さL、幅W及び深さDの寸法は、
図4、
図6及び
図11に最も明確に示されている。本明細書で説明する断面積寸法は、幅W寸法に深さD寸法を乗じたものに相当する(
図11参照)。
【0080】
分析ゾーン35は、8〜12mm、好ましくは10mmの幅W
Aを有する。分析ゾーン35の先端部から後端部(通気ゾーン36の先端部に相当する分析ゾーンの終端部)までの長さL
Aは25〜35mm、好ましくは30mmである。分析ゾーン35の深さD
Aは、分析平面APに沿った点から閉鎖底端部35b及び境界35c(すなわち、凹部の基部)まで延在する。分析ゾーン35の深さD
Aは1.5mm超かつ3mm未満であり、好ましくは2mmである。分析ゾーン35の深さD
Aが1.5mm以下の場合には、得られる凝固鋼サンプルSは必要に応じて均質ではない。すなわち、分析ゾーン35の1.5mm〜3mmの深さD
Aは、本発明の重要な側面である。
【0081】
一実施形態では、分析ゾーン35の幅W
Aは、分配ゾーン34を覆う部分に相当する距離にわたって浸漬端部16の近くから対向する端部18に向かって徐々に増加する。最大幅W
Aに達すると、分析ゾーン35の幅W
Aは長手方向軸Xに沿ってわずかに漸減し、それによって、分析ゾーン35の断面積(すなわち、
図10に示すように長手方向軸Xに対して垂直な平面に沿って得られる分析ゾーン35の断面積)は、分配ゾーン34が終端し、通気ゾーン36に向けて僅かに先細になるところで最大となる。より詳細には、分析ゾーン35の幅を画定する壁(すなわち、第1面40に対して垂直に延在する壁)は、分析ゾーン35の幅が分配ゾーン34の端部でより大きくなりかつ長手方向軸Xの方向に通気ゾーン36に向かって減少するように、長手方向軸Xの方向にわずかに先細になっている。このように、分析ゾーン35は、凝固金属サンプルSの薄い断面に過度の応力を与えることなく、凝固する高温金属の収縮に適応することができる。
【0082】
流入導管7の断面積、すなわち
図11に示すように長手方向軸Xに垂直な平面に沿って得られた流入導管7の断面積は、分析ゾーン35及び分配ゾーン34の断面積に依存する。好ましくは、流入導管7の断面積は、分析ゾーン35の断面積の0.5〜2倍である。より詳細には、分析ゾーン35に対する流入導管7の比は0.5より大きくかつ2未満である。好ましくは、流入導管7の断面積は、分配ゾーン34の最大断面積の0.20〜0.70倍であり、それによって、任意の脱酸素剤の取り込みを含めて金属混合に必要な入口速度を低下させる。より好ましくは、流入導管7の断面積は、分配ゾーン34の最大断面積の0.55倍である。流入導管7の断面積が小さすぎる(すなわち、分析ゾーン35の断面積の0.5倍未満及び/又は分配ゾーン34の最大断面積の0.20倍未満)場合には、脱酸素剤の最適な混合及び乱流の減少を達成するのに十分な流入溶融金属の減速がなく、充填が不十分である。流入導管7の断面積が大きすぎる(すなわち、分析ゾーン35の断面積の2倍超及び/又は分配ゾーン34の最大断面積の0.70倍超)場合には、分配ゾーン34は、充填されるときに、より多くのハウジング30質量によって除去されなければならない溶融金属サンプルに顕熱を加えるため、経済的解決からさらに遠ざかってしまう。
【0083】
分配ゾーン34は、先に説明したように、分析ゾーン35の下にあるため、分析ゾーン35の全長L
Aに影響を及ぼさない。分配ゾーン34の容積部は、分析ゾーン35、より具体的には境界35cによってその上端部で境界が定められるのみならず、その対向する側壁34a、34b及びその底部表面34cによって境界が定められる(
図11参照)。側壁34a、34bは、分析平面APに対して略垂直である。分配ゾーン34の幅W
D(すなわち、側壁34a、34bにわたる距離)も、好ましくは分析ゾーン35の幅W
Aを超えず、好ましくは流入導管7の内径以上である。好ましくは、分配ゾーン34の幅W
Dは、流入導管7の内径に等しい。分配ゾーン34の底部表面34cの第1部分(すなわち、分析ゾーン35に対向する表面)は、長手方向軸Xに平行な水平面内に延在する。底部表面34cの第2部分は角度が付けられており、より具体的には角度αで上方に延在し、分析ゾーン35の閉鎖底端部35bと40°〜90°、好ましくは60°の角度αで交差している。分配ゾーン35はこの交差点で終端する。このように、流入管路7からガスカプラ2に向かって溶融金属の流れ方向に分配ゾーン34の深さが減少する。
【0084】
通気ゾーン36の深さD
Vは約0.1〜1mmの範囲であり、通気ゾーン36の長さL
Vは約5mmであり、通気ゾーン36の幅W
Vは分析ゾーン35の幅W
A以下であることが好ましい。通気ゾーン36の深さD
Vは、サンプルチャンバ3の浸漬端部16により近い端部で最大となる。すなわち、通気ゾーン36の深さD
Vは、浸漬方向Iから接続容積部38に向かって僅かに減少する。より詳細には、通気ゾーン36の深さD
Vを、分析ゾーン35の後端部から通気ゾーン36の終わりまで1mmから0.2mmに徐々に減少させることが好ましい。
【0085】
分配ゾーンの端部からガスカプラ2までのサンプルキャビティの幅は増加せず、又は流入導管7からガスカプラ2に向かう溶鋼の流れ方向においてサンプルキャビティの深さ寸法は増加しないため、凝固中に収縮する金属は流入導管7に向かって自由に移動できるようになる。
【0086】
分析ゾーン35の断面積(すなわち、分析ゾーン35の幅W
Aに分析ゾーン35の深さD
Aを乗じたもの)は、通気ゾーン36の断面積(すなわち、通気ゾーン36の幅W
Vに通気ゾーン36の深さD
Vを乗じたもの)の2.5〜10倍である。したがって、通気ゾーン36の最大断面積は2〜8mm
2である。
【0087】
図8〜
図9Aは、後述するように、ハウジング60及びカバープレート62の構成の所定の差異を除いて、サンプルチャンバ3と本質的に同一の別のサンプルチャンバを示す。ハウジング60は、接続容積部68、通気ゾーン66、分析ゾーン65及び分配ゾーン64を備え、これらのものは、ハウジング30の接続容積部38、通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34とそれぞれ同じである。また、ハウジング60には、一方の端部に、サンプルチャンバ3のガスポート33と同様のガスポート63と、サンプルチャンバ3の流入導管7と同様の流入導管67とが設けられている。また、ハウジング60は、分析面でありかつ第1平面AF内に延びる第1側又は第1面70と、対向する第2面72とを有する。ハウジング30とは異なり、ハウジング60は、隆起リッジ(すなわち、ハウジング30の隆起リッジ39)を含まない。
図9〜9Aを参照すると、カバープレート62は、サンプルチャンバの組立構成においてハウジング60に面するように構成された第1面74を有する。カバープレート62の第1面74には、サンプルチャンバの組立構成においてハウジング60とカバープレート62との間に配置されるようにガスケット61が設けられている。カバープレート62は、サンプルチャンバ3のカバープレート32とは異なり、その第1面74から延びる隆起中央部69をさらに備える。隆起中央部69は、0.2mm〜0.5mmの間、好ましくは0.3mmの高さを有する。ガスケット61は、隆起中央部69を包囲する又は取り囲む。
【0088】
サンプルチャンバの組立構成では、カバープレート62の隆起中央部分69はハウジング60と面一になり、ガスケット61がハウジング60の第1面70にシールされる。したがって、カバープレート62は、ハウジング60の材料からくりぬかれたサンプリングチャンバの開放容積部を閉じて、接続容積68、通気ゾーン66、分析ゾーン65及び分配ゾーン64を形成する。この実施形態では、分析平面は分析面の平面AFに等しい。
【0089】
図10を参照すると、ストリップ71の形の脱酸素剤をさらに含むサンプルチャンバ3、3’の別の実施形態が示されている。
図6に示されたサンプルチャンバ3を説明するために利用される様々な符号を
図10においても繰り返すが、これらは
図6に関して既に説明したのと同じ構成要素を特定するため、
図10の説明では繰り返さない。脱酸素剤は、好ましくはアルミニウムであるが、その代わりにジルコニウム、チタン又は当該技術分野で知られている他の脱酸素剤であってもよい。脱酸素剤ストリップ71の幅及び厚さは、それぞれ約2mm及び0.1mmである。脱酸素剤ストリップ71は、流入導管7の第2端部22にわたる屈曲部73によって浸漬方向Iとは反対側の第2端部22で流入導管7に固定され、これにより、パージガスの力に抵抗して金属脱酸素剤ストリップ71を溶融浴に注入される。金属脱酸剤ストリップ71の長さは、好ましくは、測定ヘッド5によって囲まれる入口導管7の長さと同じ長さである。流入導管7内に位置する金属脱酸素剤ストリップ71の部分72は、壁流入導管7に対して垂直にその幅を配置するために、好ましくは少なくとも90°ねじられる。
【0090】
OESを使用する分析に適した本発明の溶融金属サンプル、好ましくは溶鋼サンプルを溶融金属浴から回収することは、以下の手順によって達成される。プローブ10を、単純なプッシュオン、プルオフ式コネクタ23を用いてプローブホルダに空気圧結合する。コネクタ23を、カプラ2によってサンプリングチャンバ3に直接取り付け、又は所定の距離で空気圧ラインによって接続する。ガス回路の閉鎖により、不活性パージガスのわずかな過圧が得られる。プローブホルダを機械的利点のために使用して、プローブ10を溶融金属浴に浸漬し、金属表面の下の所定の距離に所定の時間にわたって維持する。この浸漬中に、金属表面上に浮遊するスラグを通過させつつ破壊に耐えるように設計された測定ヘッド5の保護キャップ9が溶け、それによって流入導管7のより小さな保護キャップ8が露出する。その後、第1保護キャップ4が溶融すると、不活性ガスの過圧が解放され、不活性パージガスがプローブホルダからガスコネクタ23(存在する場合)及びカプラ2を通って接続容積部38、通気ゾーン36、分析ゾーン35、分析ゾーン35の下にある分配ゾーン34及び流入導管の内部容積部7aに流れる。ガスコネクタ23(存在する場合)及びカプラ2は、接着剤26によって実質的に気密にハウジング30に接着され、流入導管7は接着剤27によって実質的に気密にハウジング30に接着される。より詳細には、流入導管7の第2端部22は、ハウジング30内に完全に収容され、その中で接着剤27によって実質的に気密に接着される。
【0091】
このパージガスは、最初にサンプリングチャンバ3内の潜在的に酸化性の周囲雰囲気を除去し、数秒間にわたって流れ続け、これにより、第2保護キャップ9の残り及び測定ヘッド5に付着した、引き下ろされたスラグを洗い流すことが可能になる。その後、空気圧バルブをパージから排出に瞬間的に切り替え、それによって、パージガスの方向を逆にして、特にサンプルチャンバ3内の過剰の圧力を上記の逆方向経路によって排気しサンプルチャンバ3から出すことによって過圧を除去する。これにより、溶融金属浴(図示せず)からの溶融金属が流入導管7内に流入してこれを充填し、流入導管7の容積部7aからサンプルチャンバ3の分配ゾーン34に流出する。その後、溶融金属は、分配ゾーン34を覆う分析ゾーン35に供給され、分析ゾーン35を満たす。溶融金属の一部は、サンプルチャンバ3の第2端部でカプラ2に向かって流れ続け、それによって狭い通気ゾーン36を少なくとも部分的に又は完全に充填する。ここで、プローブホルダは、充填されたサンプルチャンバを溶融金属浴から除去する反対方向に移動する。当業者であれば、空気圧支援サンプリングを実施するのに必要なプローブホルダと空気圧バルブとスイッチの基本的な説明は当該技術分野で知られているものであり、本発明の一部ではないことが分かるであろう。
【0092】
回収された溶鋼の小さなサイズは、測定プローブが製鋼容器から取り出されたときであっても、ハウジング30及びカバープレート32によって冷却される。溶融サンプルからの熱抽出率は1750℃程度の高温から100℃又は室温まで1分以内に溶融金属を冷却するところ、これは、従来のサンプリングで必要とされる全ての外部冷却を本質的に排除し、高温の金属表面を酸素含有雰囲気に曝露したときに通常生じる表面酸化の可能性なしに直ちに離型するのを可能にする。
【0093】
通気ゾーン36の僅かなテーパは、溶融金属がガスカプラ2に達する前に溶融金属の冷却を促進し、凝固金属サンプルが分析ゾーン35に向かって収縮できることを確保する。より詳細には、通気ゾーン36を満たす溶融金属は、接続容積部38に達する前に完全に通気ゾーン36内で固化する。
【0094】
サンプルチャンバ3に集められた溶融金属の急速な冷却は、大部分が、サンプルチャンバ3の質量(すなわち、カバープレート32の質量にハウジング30の質量を加えたもの)と塊に転化する収集された溶融金属の容積との関係のため達成される。溶融密度が約7g/cm
3の溶鋼の場合には、サンプルチャンバ3内に集められた溶鋼の質量(そこに集められた容積に基づいて計算される)に対するサンプルチャンバ3の質量の比は、酸化物を含まない分析表面ASを確保するために、好ましくは9〜12の範囲、より好ましくは10である。
【0095】
したがって、分析ゾーン35、通気ゾーン36及び分配ゾーン34の内部空隙は特定の寸法基準を満たさなければならないが、サンプルチャンバ3の全体的な寸法(カバープレート2及びハウジング30からなる)もサンプルチャンバ3内に集められた溶融金属の質量に対するサンプルチャンバ3の質量の所望の質量比を達成するために一定の基準を満たさなければならない。当業者であれば、ハウジング30又はカバープレート32の全体的な幅、深さ及び/又は長さを必要に応じて調節して、サンプルキャビティを生じさせるのに必要な内部空隙を変更することなくハウジング30の質量を増加又は減少させることができることが分かるであろう。
【0096】
特に、流入導管7の第2端部22とガスカプラ2の両方がサンプルハウジング内に完全に収容されるように両者の外径を考慮すると、ハウジング30の1以上の寸法は、サンプルチャンバ3の質量(カバープレート32がサンプルチャンバ3の質量の10〜20%を占める場合)が金属サンプルSの質量の9〜12倍、好ましくは10倍となるための質量比要件を満たすように容易に調節できる。
【0097】
好ましくは、溶融金属は、分析ゾーン35において、カバープレート32に接して、特にカバープレート32の第1表面44に接して固化し、それにより、サンプルSの分析の間に発光分光器のステージ上で表を下にして配置されるように構成される表面であるサンプルSの分析表面ASを形成する。分析表面ASは、カバープレート32の第1面44がリッジ39(すなわち、分析平面AP)によって形成された表面と直接接触する平面内に延在する。例えば、
図1〜
図7Aの実施形態では、分析表面ASは、ハウジング30のリッジ39と同一の平面、すなわち分析平面APに延在する。より具体的には、凝固金属サンプルSの分析表面ASと周囲の金属リッジ39との両方は分析平面APを延長して、OESの開口部を閉じるのを助ける。本明細書で詳細に説明する
図8〜8Aの実施形態では、分析表面ASは、カバープレート62の隆起中央部69がハウジング60の第1面70に対して密着する平面に延在する。
【0098】
このようにサンプル3チャンバ内で溶融金属が固化すると、凝固金属サンプルSがハウジング30から分離不可能に形成される。測定ヘッド5は容易に破砕され、サンプリングチャンバ3をキャリア管1から前方の浸漬方向Iに取り外すことができる。2つの部分のサンプルチャンバ3を保持するクリップ4は取り外される。従来のサンプリング装置とは異なり、サンプルSはサンプルハウジング30に付着したままである。したがって、本明細書においてOESに供給される金属クーポンをいう場合に、用語「サンプル」とは、回収された凝固サンプルとサンプルハウジング30との不可分の組み合わせをいう。
【0099】
次いで、サンプルSは、従来の手段によってOESに供給され、表面準備なしにOESによって直接分析される。サンプルSの急速な冷却は、離型工程中に通常遭遇する表面酸化を回避する。これにより、機械的研削の必要性がなくなり、サンプルSの迅速な分析が容易になり、これらの結果を待って化学的性質を金属プロセスに報告することが容易になる。流入導管7及びガスポート33(並びにガスカプラ2)は、これらの構成要素が型割線に沿って位置する従来技術のクラムシェル型で通常遭遇するように両側に跨ぐのではなく、分析平面から離間して、特に分析平面の下の(並びに分析面40の下の)ハウジング30内に配置されているため、酸化物のない表面を得るために流入導管7及びガスカプラ2をハウジング30から取り外す必要がなく、これにより、準備なしで(すなわち、準備なしの分析)OES上に直接配置できる凝固金属サンプルの作製が可能になる。すなわち、流入導管7及びガスポート33/ガスカプラ2は、流入導管7及びガスポート33/ガスカプラ2が分析平面APと干渉しないように分析平面APと交差する。
【0100】
サンプルSとハウジング30との分離が不可能であることにより、分析平面に沿った凝固金属のいずれかの側でハウジング30が延長され(すなわち、リッジ39により)、従来技術に対して複数の改善が得られる。従来技術のサンプルは、OESの分析開口部を完全に覆うため、許容可能な金属サンプルに必要とされるよりも多くの材料を有するサンプルサイズを有する。OESの間に、スパークはOESサンプルステージのエッジ材料にまで急に上昇しなければならないため、この開口部は前述のようにむしろ意図的に大きい。分析中に不活性ガスがスパークチャンバにパージされるため、分析されるサンプルSと分光器ステージとの間の漏れは許容できない。
【0101】
本発明は、サンプルSとハウジング30との不可分性を利用して、分析開口部を覆うためのハウジング30の表面の一部も与える。延長軸に対して垂直に延びるサンプラハウジング30は、分析ゾーンがOESスパークの燃焼領域よりもわずかに大きいことを可能にする。このサンプラハウジング30による分析平面APの延長のため、サンプラハウジング30の分析ゾーン35を満たす溶融金属の容積を極めて小さくすることができる。この減少した容積は熱入力の減少につながり、その結果、分配ゾーン34、分析ゾーン35及び通気ゾーン36を充填する溶融金属の熱が従来技術の装置よりも実質的に低くなるため、急速に冷却されて非分離金属サンプルを達成することができる。
【0102】
図7〜
図7Aを参照すると、分解されたサンプルチャンバ3が示されている。より詳細には、
図7〜7Aは、分離不可能に収容された凝固金属サンプルSを収容するハウジング30を示し、カバープレート32はハウジング30から分解されているため示されていない。
図7〜7Aに示す形態の凝固金属サンプルSを収容するハウジング30は、OESによる直接分析に使用できる。分析表面ASは、分配ゾーン34を満たす金属の上に位置する分析ゾーン35内に形成されたサンプルSの部分55の表面を備える。分析ゾーン部分55から延びかつ分析ゾーン部分55と連続するサンプルSの残りの部分56は、通気ゾーン36及び場合によっては最後の手段としての接続容積部38に流入してその内部で凝固した金属から構成される。しかしながら、本明細書でより詳細に説明するように、サンプルキャビティの全セグメントの所望の長さ対深さ(L/D)比が確実に満たされることを確保するために、溶鋼は接続容積部38に流入しないことが好ましい。したがって、サンプルSの残りの部分56は、後のOES分析に影響を及ぼさない凹凸構造58などの凹凸を含むことができる。分析表面ASは分析平面AP内にあり、分析平面APを壊す可能性のある部品又は外来付着材料は存在しない。
【0103】
上記のように、サンプルチャンバ3の様々なゾーン34、35、36は、サンプルチャンバ3内に形成された凝固金属サンプルSの様々な部分に相当する。そのため、通気ゾーン36、分析ゾーン35及び分配ゾーン34の寸法は、そこに形成される凝固金属サンプルSの様々な部分の寸法に相当する。例えば、ゾーン36、35、34のそれぞれの深さは、凝固金属サンプルSの対応する部分の厚さに相当する。特に、各ゾーン34、35、36の長さL対深さD比(L/D)(すなわち、サンプルSの様々なセグメントの対応する比)は、本発明の重要なパラメータである。特に、分配ゾーン34、分析ゾーン35及び通気ゾーン36は、好ましくは、浸漬端部16の近くから対向する端部18の近くまで延びる複数の連続セグメントとして構成される。各セグメントは、所定の長さ対深さ(L/D)比を有する。セグメントのL/D比は、第1開口部20からの距離が増加するにつれて連続的に増加する。すなわち、一つのセグメントのL/D比は、浸漬端部16から対向する端部18に向かう方向における等しい長さの隣接する先行セグメントのL/D比よりも大きい。これは、得られるサンプルSの厚さが、あるセグメントから次のセグメントまでこの同じ方向に(すなわち、流れ方向に)減少することを意味する。
【0104】
サンプルチャンバ3の様々なゾーン34、35、36の基本的な幾何学形状の全てを上記のようにかつ設計パラメータの経済的な選択を使用して算出するときに、L/D比の臨界パラメータを満たすことができるところ、これは、上記ゾーン又はセグメントのいずれかの各断面において、サンプルチャンバハウジング30が、流入導管7から始まってガスカプラ2まで延びる長手方向軸Xに沿った方向におけるサンプルキャビティの深さDの寸法及び同じ方向におけるサンプルSの厚さ寸法の変化(特に増加)なしに金属サンプルSの凝固を容易にすることが知られている。
【0105】
凝固及び室温までの冷却中におけるサンプルSの亀裂形成を回避するために、本明細書で詳細に説明するように、サンプルキャビティの全長(分析ゾーン35の長さL
Aに通気ゾーン36の長さL
Vを加えたもの)に沿ったサンプルキャビティの全セグメントのL/D比の合計を対応するセグメントの深さDで割ったもの(即ち、比L/D)は25より大きくなければならない。すなわち、サンプルキャビティの個々のセグメントのそれぞれのL/D比の合計は25よりも大きくなければならない。個々のセグメントのL/D比は、サンプルキャビティの全長Lが考慮される限り、等間隔のセグメント又はまとめられたグループとして選択できる。セグメント34において、セグメントの厚さが変化する場合、すなわちセグメント内でキャビティの深さが変化する場合には、Dは、セグメントの浸漬端部からの方向の最大深さにセグメントの浸漬端部の反対側の端部での最大深さを足した合計を2で割ったものとして得られる。この計算は、長さにわたって深さの変化を示す全てのセグメントについて使用できる。好ましくは、各セグメントのL/D比は、浸漬端部及び流入導管7からガスカプラ2に向かう方向(すなわち、サンプルキャビティの深さ及びそれに対応してサンプルSの厚さが減少する方向)に増加する。
【0106】
L/D比をよく説明するために、
図12は、分配ゾーン34、分析ゾーン35及び通気ゾーン36を含むサンプルキャビティの複数のセグメントを示す。総L/D比を計算するために、サンプルキャビティを(したがってサンプルSも)以下のようにセグメント化できるが、別の方法でセグメント化してもよい。
【0107】
サンプルキャビティの分配ゾーンの第1セグメントS1は、分析ゾーン35の第1部分と、その下にある分配ゾーン34の第1部分とを備える。第1セグメントS1は、分析ゾーン35の第1端部80及び流入導管7に近接する分配ゾーン34から第1中間点84まで延びる長さL
S1を有する。第1中間点84は、分配ゾーン34の底部表面34cが通気ゾーン36に向かって上方に角度を生じ始める直前のハウジング30内の点に相当する。一般に、第1セグメントS1の長さL
S1は、流入導管7の直径、より具体的にはその内径以下である。しかし、他の直径を選択することができ、より好ましくは、第1セグメントS1の長さL
S1は流入導管7の半径に等しい。第1セグメントS1の深さは、第1セグメントS1が形成された分析ゾーン35及び分配ゾーン34の対応する部分の深さの合計である。第1セグメントS1に対応する分配ゾーン34の深さは、境界35cから水平に向けられた底部表面34cまで測定され、流入導管7の計算された直径プラス1mmに等しい。
【0108】
サンプルキャビティの分配ゾーンの第2セグメントS2は、分析ゾーン35の第2部分とその下の分配ゾーン34の第2部分とを備える。第2セグメントS2は、第1セグメントS1から、より具体的には第1中間点84から、底部表面34cが分析ゾーン35の底端部35bと交差するハウジング30内の点に相当する第2中間点86まで延びる長さL
S2を有する。交差角度は一般的に知られている(例えば、角度は好ましくは60°である)ため、第2セグメントS2の長さL
S2を計算することができる。第2セグメントS2の深さは、上記のように、浸漬端部方向における最大深さと分析ゾーン35及び分配ゾーン34の対応する部分の浸漬端部の反対側の端部の最大深さとを2で割ったものによって定義される。
【0109】
サンプルキャビティの第3セグメントS3は、分析ゾーン35の残部を備え、第2中間点86から分析ゾーン35の終り及びハウジング30の通気ゾーン36の開始に相当する第3中間点88まで延びる長さL
S3を有する。第3セグメントS3の長さL
S3は、分析ゾーン35の全長が分かっているので、一般に容易に計算できる。第3セグメントS3は、分析ゾーン35の対応する部分の深さに等しい深さを有する。
【0110】
サンプルキャビティの第4セグメントS4は、通気ゾーン36を備える。通気ゾーン36の深さは、機械加工を容易にするために選択されるが、このパラメータの範囲内で等しく有効な他の深さも選択できる。
【0111】
本発明に係る高均質性で亀裂のないサンプルに溶鋼を凝固させるサンプルハウジング30を作製するために、次の実施例は本発明に係る例示的な構成を提供するが、他の多くの構成が本発明の範囲内で可能であると解される。
【実施例】
【0112】
例1
アルミニウムのサンプルハウジング30を
図1〜6に従って機械加工する。分析ゾーン35は、分配ゾーン34の上に2mmの均一な深さD
Aを有する。例1について、分析ゾーン35の表面積を、OES分析に望ましい分析スポットの数から決定する。これ以上の表面積を与えることができるが、ただし、2〜4個の分析スポットが一般的であり、4個の分析スポットが好ましい。典型的なOES分析スポットは6〜8mmであり、スポットを重ね合わせないことが望ましいため、分析ゾーン35の長さL
Aを、3個の分析スポットを収容するように25mmに選択する。当業者であればより多くのスポットを選択することができるため、選択されるスポットの数は本発明を変更しないと解されると共に、サンプルS、すなわちサンプルチャンバ3の全ての構成要素の長さを増加させることは、分光器のサイズに関する実際的な考慮によってのみ制限されると解されるであろう。また、サンプルチャンバ3のサイズが大きくなると材料コストが上昇し、それによって経済的な解決策が得られなくなる。より少ない分析スポットも選択することができるが、通常は2個のスポットが最小である。
【0113】
分析ゾーン35の幅W
Aは、同様に10mmとなるように選択され、最大断面積(すなわち、深さ×幅)が浸漬方向Iに向かうように断面がわずかにテーパになっている。したがって、浸漬方向Iに、特に入口導管7に近接して配置される分析ゾーン35の最大断面積は、20mm
2(すなわち、深さ2mm×幅10mm)である。流入導管7の断面積は分析ゾーン35の断面積の0.5〜2倍であるため、この例の流入導管7の断面積は10〜40mm
2の間とすることができる。流入導管7は石英管である。したがって、流入導管7の内径は3.5〜7.1mmである。この例では、流入導管7の内径は4mm(すなわち、12.6mm
2の断面積)である。流入導管7の断面積は分配ゾーン34の最大断面積の0.20〜0.70倍であるため、分配ゾーン34の断面積は約18〜63mm
2であることができる。分配ゾーン34の底部表面34cの第2部分は、分析ゾーン35の底端部35bと60°の角度で交差する。
【0114】
通気ゾーン36の断面積は、最大面積で2mm
2である。分析ゾーン35の幅は10mmであるので、通気ゾーン36の平均深さD
Vは0.2mmである。
【0115】
したがって、例1のハウジング30を使用して作製されたサンプルSの分析部分は、長さ25mm及び厚さ2mm(すなわち、分析ゾーン35の寸法に相当する)を有する。まず、分配ゾーン34についてL/D比を計算する。分配ゾーン34は、分析ゾーン35の境界35cから分配ゾーン34の水平底部表面34cまでの第1深さを有し、これは、計算された流入導管7の内径(すなわち4mm)に1mmを加えたものに等しい。この深さは、流入導管7の第2端部22から、流入導管7の内径(すなわち4mm)に等しい距離にわたって続く。第1セグメントS1のL/D
1は、4mmである第1セグメントS1の長さL
S1を、2mmの深さ+1mm+4mmの流入導管の内径である第1セグメントS1の全深さで割ったものであり、これは4/7又は0.57に等しい。
【0116】
ここで、分配ゾーンの底部は傾斜しており、好ましくは分析ゾーンの底部と交差するまで60度で傾斜している。分配ゾーン34の底部表面34cと分析ゾーンの底端部35との間の交差角度は60°であることが知られているため、第2セグメントS2の傾斜部分は、分析ゾーンの底部と、点84の後に2.9mmの距離で交差する。したがって、第2セグメントS2のL/D
2は、2.9mmである第2セグメントの長さL
S2を、7に等しい86に沿った最大深さ+2に等しい86に沿った最大深さを両方とも2で割ったもの又はS2の深さについては9/2としたものである第2セグメントS2の全深さで割ったものであり、セグメントS2のL/Dは2.9/4.5又は0.64に等しい。
【0117】
第3セグメントS3は、分析ゾーン35の深さ(すなわち2mm)のみに等しい深さと、分析ゾーン35の長手方向表面の元の算出された25mmについて残りの長さに相当する長さL
S3とを有する(すなわち25mm−6.9mm=18.1mm)。したがって、第3セグメントS3のL/D
3は9.05である。
【0118】
このサンプルハウジング30を設計するように計算する第4セグメントS4は、通気ゾーン36に相当する。第4セグメントS4の長さ(すなわち通気ゾーン36の長さ)は知られておらず、全セグメントのL/Dの合計が25よりも大きいという規則に準拠することによって決定される。例えば、通気ゾーンの長さが2mmであり、深さが0.2mmである場合には、これはL/D
4値が10になるため、サンプルSのセグメントの全てのL/D比の合計(すなわち、0.57+0.64+9.05+10)は20.3となる。この合計が25よりも大きくないときには、通気ゾーン36の長さ2mmはこの例では許容できないことは明らかである。むしろ、総L/D>25を達成するためには、最低でも通気ゾーン36には3mmの長さが必要である。この例では、通気ゾーン36の長さを、5mmに選択し、すなわち、全ての経済的可能性のほぼ中間値である合計(L/D)=35.3(すなわち、25<合計(L/D)<50)に選択した。
【0119】
このように、各セグメントの長さは測定可能な限り小さく、依然として必要な出力を提供できることが示される。設計者にとって、これよりも小さいセグメントは、個々のセグメントのL/Dが流入導管7からガスカプラ2までの方向に値が減少できないという基準に適合することが望ましい。
【0120】
必要な質量比が9〜12の間であることを考慮すると、この例のサンプルチャンバ3は、6gの鋼サンプルの回収及び冷却について、約56gの質量のハウジング30及び約9.4gの質量を有するカバープレートを有する(すなわち、10.9の質量比)。
【0121】
例1は、本発明の特に好ましい実施形態を示す。
【0122】
例2
アルミニウムのサンプルハウジング30を
図1〜6に従って機械加工する。分析ゾーン35は、分配ゾーン34の上に2mmの均一な深さD
Aを有する。分析ゾーン35の長さL
Aを、4つの分析スポットを収容するように32mmに選択する。
【0123】
分析ゾーン35の幅W
Aは、同様に10mmとなるように選択され、最大断面積(すなわち、深さ×幅)が浸漬方向Iに向かうように断面がわずかにテーパになっている。したがって、浸漬方向Iに、特に入口導管7に近接して配置される分析ゾーン35の最大断面積は、20mm
2(すなわち、深さ2mm×幅10mm)である。流入導管7の断面積は分析ゾーン35の断面積の0.5〜2倍であるため、流入導管7の断面積は10〜40mm
2の間とすることができる。流入導管7は石英管である。したがって、流入導管7の内径は3.5〜7.1mmである。この例では、流入導管7の内径は5mm(すなわち、19.6mm
2の断面積)である。流入導管7の断面積は分配ゾーン34の最大断面積の0.20〜0.70倍であるため、分配ゾーン34の断面積は約28〜98mm
2であることができる。分配ゾーン34の底部表面34cの第2部分は、分析ゾーン35の底端部35bと60°の角度で交差する。
【0124】
通気ゾーン36の断面積は、最大面積で1mm
2である。分析ゾーン35の幅は10mmであるので、通気ゾーン36の平均深さD
Vは0.2mmである。
【0125】
したがって、例2のハウジング30を使用して作製されたサンプルSの分析部分は、長さ32mm及び厚さ2mm(すなわち、分析ゾーン35の寸法に相当する)を有する。まず、分配ゾーン34についてL/D比を計算する。分配ゾーン34は、分析ゾーン35の境界35cから分配ゾーン34の水平底部表面34cまでの第1深さを有し、これは計算された流入導管7の内径(すなわち5mm)に1mmを加えたものに等しい。この深さは、流入導管7の第2端部22から、流入導管7の内径(すなわち5mm)に等しい距離にわたって続く。第1セグメントS1のL/D
1は、5mmである第1セグメントS1の長さL
S1を、2mmの深さ+1mm+5mmの流入導管の内径である第1セグメントS1の全深さで割ったものであり、これは5/8又は0.625に等しい。
【0126】
ここで、分配ゾーンの底部は傾斜しており、好ましくは分析ゾーンの底部と交差するまで60度で傾斜している。分配ゾーン34の底部表面34cと分析ゾーンの底端部35との間の交差角度は60°であることが知られているため、第2セグメントS2の傾斜部分は、分析ゾーンの底部と、点84の後に3.5mmの距離で交差する。したがって、第2セグメントS2のL/D
2は、3.5mmである第2セグメントの長さL
S2を、8mmである84での最大深さ+2mmである86での最小の全深さ(両方を2で割ったものは5mmに等しい)で割ったものである。S2のL/Dは3.5/5又は0.7に等しい。
【0127】
第3セグメントS3は、分析ゾーン35の深さ(すなわち2mm)のみに等しい深さと、分析ゾーン35の長手方向表面の元の算出された32mmについて残りの長さに相当する長さL
S3とを有する(すなわち32mm−8.5mm=23.5mm)。したがって、第3セグメントS3のL/D
3は11.75である。
【0128】
このサンプルハウジング30を設計するように計算する第4セグメントS4は、通気ゾーン36に相当する。第4セグメントS4の長さ(すなわち通気ゾーン36の長さ)は知られておらず、全セグメントのL/Dの合計が25よりも大きいという規則に準拠することによって決定される。例えば、通気ゾーンの長さが2mmであり、深さが0.2mmである場合には、これはL/D
4値が10になるため、サンプルSのセグメントの全てのL/D比の合計(すなわち、0.625+0.7+11.75+10)は23.07となる。この合計が25よりも大きくないときには、通気ゾーン36の長さ2mmはこの例では許容できないことは明らかである。この例では、通気ゾーン36の長さを5mmに選択し、すなわち、全ての経済的可能性の範囲の上限である合計(L/D)=48(すなわち、25<合計(L/D)<50)に選択した。
【0129】
このように、各セグメントの長さは測定可能な限り小さく、依然として必要な出力を提供できることが示される。設計者にとって、これよりも小さいセグメントは、個々のセグメントL/Dが流入導管7からガスカプラ2までの方向に値が減少できないという基準に適合することが望ましい。
【0130】
したがって、当業者であれば、上記例から、金属サンプルSの全ての寸法をハウジング30の寸法に基づいて計算することができることができることを理解することができる。
【0131】
プローブ10、特にサンプルチャンバ3は、従来技術の通常の従来のサンプリング装置が使用される全てのサンプリング用途に使用できるであろう。本発明の利点は、非常に速く、かつ、時間とプロセスの場所で容易に利用できる金属化学的性質によって回避できた材料との点で金属の過処理及び/又は熱の過処理により高い追加費用が生じる場合のある製鋼プロセスに照らせば最もよく理解できる。
【0132】
本発明は、以下の要件を満たす鋼の凝固サンプルを提供することによって、従来技術の欠点に対する解決策を提供する:
・光学的発光分光計で分析される金属サンプル、
・ガス多孔性及びスラグ捕捉のない固体金属サンプル、
・表面からOESのアノードまでの距離を固定する流体流れラインのない平坦な回収時分析表面、
・酸化のないサンプル表面、
・金属及び非金属分離の領域を排除するために分析平面に対して垂直な最大厚さの均一金属サンプル、
・約10mm×30mmにわたり、それにより少なくとも2個、好ましくは4個のスパークを得るのに十分な表面積を与えるサンプル分析表面、
・サンプル分析表面の平面がサンプルハウジング30(すなわちリッジ39)によって両方の表面方向に中断することなく0.1mm未満のばらつきで延長されるように、サンプリングされた金属が冷却されるサンプルハウジングと同一平面にあるサンプル表面。
【0133】
当業者であれば、本発明の広い概念から逸脱することなく、上記実施形態に変更を加えることができることが理解されるであろう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって規定される本発明の精神及び範囲内の変更をカバーすることが意図されるものとする。