特許第6539746号(P6539746)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6539746
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】装飾部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 7/00 20060101AFI20190625BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20190625BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   C25D7/00 P
   C25D5/10
   C25D5/12
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-544478(P2017-544478)
(86)(22)【出願日】2016年10月3日
(86)【国際出願番号】JP2016079233
(87)【国際公開番号】WO2017061358
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2018年2月27日
(31)【優先権主張番号】特願2015-199355(P2015-199355)
(32)【優先日】2015年10月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000120386
【氏名又は名称】株式会社JCU
(74)【代理人】
【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 功徳
(72)【発明者】
【氏名】井土 尚泰
(72)【発明者】
【氏名】吉田 順治
(72)【発明者】
【氏名】近内 亮太
(72)【発明者】
【氏名】横山 景
(72)【発明者】
【氏名】河合 貴久
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−134689(JP,A)
【文献】 特開2007−023344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/00
C25D 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
基材上に形成された表面粗さRaが0.1〜0.8μmである第1Cuめっき層と、
第1Cuめっき層上に形成された、膜厚が1〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層とを含み、
第2Cuめっき層の表面粗さに基づく半光沢梨地のサテン調外観を示すことを特徴とする装飾部品。
【請求項2】
第2Cuめっき層上に形成された、前記サテン調外観の色調を調整するための銀白色金属めっき層を含む請求項1記載の装飾部品。
【請求項3】
銀白色金属めっき層は、Sn又はSn合金めっき層である請求項2記載の装飾部品。
【請求項4】
銀白色金属めっき層は、Crめっき層である請求項2記載の装飾部品。
【請求項5】
基材上に電解無光沢Cuめっきを行うことにより、表面粗さRaが0.1〜0.8μmである第1Cuめっき層を形成する第1ステップと、
第1Cuめっき層上に電解光沢Cuめっきを行うことにより、膜厚が1〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層を形成する第2ステップとを含む装飾部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サテンめっき膜を備えた装飾部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サテンめっきは、光沢めっきと無光沢めっきとの中間である半光沢梨地のサテン調外観を有するめっきを意味し、光沢に近い浅い梨地から、無光沢に近い深い梨地まで、幅がある。
【0003】
サテンめっきでは、サテン調外観を得るために、サテンNiめっき層を形成することが多い。また、サテンNiめっき層は、基材に追従する延性に乏しいので、その下に延性のあるCuめっき層を形成することが多い。さらに、サテンNiめっき層は、徐々に酸化して変色するので、その上にCrめっき層を形成することが多い。そのため、従来のサテンめっきは、Cu/半光沢Ni(SBN)/サテンNi/ジュールNi(DN)/Cr、のような5層構成が必要であった。
【0004】
特許文献1には、つや消しCuめっきを製造するために、第一Cu層をポリエーテル化合物を含んでいる第一電解液から析出させる工程と、第二Cu層をアルキルスルホン酸誘導体と芳香族スルホン酸誘導体を含んでいる第二電解液から析出させる工程とを、この順で含む方法の発明が開示されている。その詳細な説明によると、第一電解液から析出させたCuはつや消しが強く(比較例1)、第二電解液から析出させたCuは光沢を有し(比較例2)、第二電解液から析出させたCuの上に第一電解液からCuを析出させると、つや消しが過度であり(比較例3)、第一電解液から析出させたCuの上に芳香族スルホン酸誘導体を含まない第二電解液からCuを析出させると、不均一なつや消し又は黒変箇所のあるつや消しとなるが(比較例4,5)、同発明を実施した例では均一なつや消しとなる(例6,7)としている。また、比較的つや消しの程度が高い外観は比較的薄い第二Cu層で達成でき、比較的つや消しの程度の低い外観は比較的厚い第二Cu層で達成できるとしている。
【0005】
この方法によれば、サテンNiめっき層を用いず、延性のあるCuめっき層を用いてつや消し被覆を得るので、少ない層数でサテン調外観を得られる可能性がある。しかしながら、この方法では、第一電解液及び第二電解液の各組成の開示はあるが、第一電解液から析出させる第一Cu層の膜厚及び表面粗さについて具体的な開示がなく、また、第二電解液から析出させる第二Cu層の膜厚及び表面粗さについても具体的な開示がない。このため、サテン調外観を確実に且つ安定的に得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2015−510038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、サテンNiめっき層を用いず、延性のあるCuめっき層を用いて、サテン調外観を、少ない層数で、しかも確実に且つ安定的に得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発明者らの鋭意研究の結果、装飾部品において、Cuめっき層の表面凹凸をその上のCuめっき層で適度に埋めることによりサテン調外観が得られることを見出したことに基づく発明である。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の装飾部品は、基材と、基材上に形成された表面粗さ(算術平均粗さ)Raが0.1〜0.8μmである第1Cuめっき層と、第1Cuめっき層上に形成された、膜厚が1〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層とを含み、第2Cuめっき層の表面粗さに基づく半光沢梨地のサテン調外観を示すことを特徴とする。
この構成によれば、表面粗さRaが0.1〜0.8μmである第1Cuめっき層の上に形成される膜厚1〜6.1μmの第2Cuめっき層が、第1Cuめっき層の表面凹凸を適度に減少させ、もって表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層がよく制御されて形成されるので、サテン調外観を少ない層数で安定的に得ることができる。
【0010】
さらに、第2Cuめっき層上に形成された、前記サテン調外観の色調を調整するための銀白色金属めっき層を含むことが好ましい。この構成によれば、サテン調外観の色調を簡単且つ正確に調整することができる。
【0011】
銀白色金属めっき層は、Sn又はSn合金めっき層であることが好ましい。この構成によれば、表面硬度等を向上できる。
【0012】
銀白色金属めっき層は、Crめっき層であることが好ましい。この構成によれば、表面硬度等を向上できる。
【0013】
また、本発明の装飾部品の製造方法は、基材上に電解無光沢Cuめっきを行うことにより、表面粗さRaが0.1〜0.8μmである第1Cuめっき層を形成する第1ステップと、第1Cuめっき層上に電解光沢Cuめっきを行うことにより、膜厚が1〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層を形成する第2ステップとを含むことを特徴とする。
この構成によれば、表面粗さRaが0.1〜0.8μmである第1Cuめっき層の上に形成される膜厚1〜6.1μmの第2Cuめっき層が、第1Cuめっき層の表面凹凸を適度に減少させ、もって表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層がよく制御されて形成されるので、サテン調外観を、少ない層数で安定的に得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、サテンNiめっき層を用いず、延性のあるCuめっき層を用いて、サテン調外観を少ない層数で安定的に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例の装飾部品の断面図である。
図2】実施例の装飾部品の製造方法を説明する図である。
図3】実施例における第1Cuめっき層のめっき時間−膜厚の関係を示すグラフ図である。
図4】実施例における第1Cuめっき層の膜厚−表面粗さの関係を示すグラフ図である。
図5】実施例における第2Cuめっき層の膜厚−表面粗さ低減率の関係を示すグラフ図である。
図6】実施例における第2Cuめっき層の膜厚−表面粗さ・光沢度の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.基材
基材は、特に限定されず、目的に応じて公知の材料を適宜選択することができる。基材として、例えば、樹脂、金属、ガラス、セラミック等を挙げることができる。樹脂製の基材は、剛性、加工容易性、耐熱性、めっき容易性等の機能性、使用目的等を考慮して適宜選択することができる。樹脂としては、例えばアクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、PC/ABSアロイ(PC/ABSブレンド樹脂)、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリアクリル樹脂(ポリメタクリル樹脂)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等を挙げることができる。また、樹脂製の基材は、公知の成型方法、例えば射出成形法、押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法等を用いて成形することができる。基材に用いられる金属としては、例えば鉄、ステンレス、Al、Al合金、Ti、Ti合金等を挙げることができる。これらの基材は、1種類を選択して用いてもよく、又は複数種類を組み合わせて用いてもよい。基材の形状は、装飾部品の使用目的等に応じ適宜設計することができる。
【0017】
基材の材料が非導電性材料である場合、表面に導電性付与処理がされる。導電性付与処理としては、無電解めっき、スパッタリング等を例示できる。
【0018】
2.第1Cuめっき層
第1Cuめっき層の表面粗さRaが0.1〜0.8μmであると、その表面凹凸を第2Cuめっき層により減少させる際の制御をしやすいので、サテン調外観が安定的に得られる。第1Cuめっき層の表面粗さRaが0.1μm未満だと、第2Cuめっき層をサテン調にするためにその膜厚を薄く制御する困難さが生じる。第1Cuめっき層の表面粗さRaが0.8μmを超えると、第2Cuめっき層をサテン調にするためにその膜厚を厚く制御する困難さが生じる。
第1Cuめっき層の膜厚は、特に限定されず、上記表面粗さRaとなるような膜厚であればよい。
【0019】
第1Cuめっき層は、電解無光沢Cuめっきを行うことにより形成することが好ましい。目的の表面粗さRaが0.1〜0.8μmを得やすいからである。そのめっき浴のCu源としては、特に限定されないが、硫酸Cu、シアン化Cu、ピロリン酸Cu、ホウフッ化Cu等を例示できる。そのめっき浴は、めっき表面の平滑化に寄与する添加剤(レベリング剤、成長抑制剤、成長促進剤、こげ防止剤等)を添加しないか又は添加量が(第2Cuめっき層の無電解光沢Cuめっきに対し)相対的に少ないことが好ましい。
【0020】
3.第2Cuめっき層
第2Cuめっき層の膜厚が1〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%であると、第2Cuめっき層によるサテン調外観が安定的に得られる。第2Cuめっき層の膜厚が1μm未満であり、同Ra比率が80%を超えると、第2Cuめっき層をサテン調にするためにその膜厚を薄く制御する困難さが生じる。第2Cuめっき層の膜厚が6.1μmを超え、同Ra比率が15%未満であると、第2Cuめっき層をサテン調にするためにその膜厚を厚く制御する困難さが生じる。第2Cuめっき層の膜厚は、より好ましくは2〜5μmである。
【0021】
第2Cuめっき層は、電解光沢Cuめっきを行うことにより形成することが好ましい。第1Cuめっき層の表面凹凸を減少させやすいからである。そのめっき浴のCu源としては、特に限定されないが、硫酸Cu、シアン化Cu、ピロリン酸Cu、ホウフッ化Cu等を例示できる。そのめっき浴は、めっき表面の平滑化に寄与する添加剤(レベリング剤、成長抑制剤、成長促進剤、こげ防止剤等)を、配合量、比率等を適宜調整し添加することが好ましく、添加量は(第2Cuめっき層の無電解光沢Cuめっきに対し)相対的に多いことが好ましい。
【0022】
4.銀白色金属めっき層
上述の通り、銀白色金属めっき層は、Sn又はSn合金めっき層、あるいはCrめっき層であることが好ましい。Sn合金めっき層の形成に適用されるSn合金としては、例えば、Sn−Co合金、Sn−Ni合金、Sn−Pb合金、Sn−Ni−Cu合金、Sn−Cu−Zn合金、Sn−Fe合金、Sn−Fe−Zn合金等が挙げられる。これらのSn合金は、1種類を選択して用いてもよく、又は複数種類を組み合わせて用いてもよい。Sn又はSn合金めっき処理は、公知の電気めっき法により行うことができる。Crめっき処理も、公知の電気めっき法により行うことができる。
【0023】
銀白色金属めっき層の膜厚は、前記サテン調外観の色調を調整しうるものであればよく、特に限定されない。
【0024】
5.透明又は半透明の保護層
第2Cuめっき層上(銀白色金属めっき層を形成した場合には銀白色金属めっき層上)には、透明又は半透明の保護層を形成することが好ましい。透明又は半透明の保護層としては、例えば有機系保護層、無機系保護層、シリコン系樹脂保護層が挙げられる。透明又は半透明の保護層は、1種類を選択して用いてもよく、又は複数種類を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
有機系保護層により形成される樹脂として、例えばアクリル樹脂(メタクリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中で紫外線硬化型の多官能性アクリル樹脂が優れた耐食性、耐薬品性、耐擦傷性、延性、透明性、取扱い性等を有する観点から好ましい。有機系保護層及びシリコン系樹脂保護層の形成方法としては、例えば公知の電着塗装、スピンコート、コーター、スプレー、フロー、ディップ(浸漬)、静電塗装、紫外線硬化塗装法等が挙げられる。
【0026】
無機系保護層の形成に用いられる無機材料として、透明性又は半透明性の金属酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等が挙げられる。無機系保護層の形成方法としては、例えば公知のゾルゲル法、水熱合成法、物理蒸着法、CVD法、化学溶液析出法、電解析出法等が挙げられる。
【0027】
透明又は半透明の保護層の膜厚は、保護機能を発揮することができ、保護層を透かして第2Cuめっき層(銀白色金属めっき層を形成した場合には銀白色金属めっき層)を視認できる程度の厚みであれば、特に限定されない。
【0028】
6.装飾部品の用途
装飾部品の用途としては、特に限定されないが、車両用の内装部品又は外装部品、電気・電子部品、日用品等を例示できる。
【実施例】
【0029】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜7を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は各実施例に限定されるものではない。
【0030】
【表1】
【0031】
図1及び表1に示すように、実施例1〜7の装飾部品は、基材1と、基材上に形成された表面粗さRaが0.25μm又は0.67μmである第1Cuめっき層2と、第1Cuめっき層2上に形成された、膜厚が1.0〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層2の表面粗さRaの16〜84%である第2Cuめっき層3と、第2Cuめっき層3上に形成された銀白色金属めっき層としてのSn−Co合金めっき層4とからなる。
装飾部品は、第2Cuめっき層3の表面粗さに基づくサテン調外観を示し、Sn−Co合金めっき層4はサテン調外観の色調を調整するためのものである。従って、本実施例のサテンめっき膜5は、第1Cuめっき層2\第2Cuめっき層3\Sn−Co合金めっき層4の3層構成である。なお、Sn−Co合金めっき層4上には、必要に応じて透明又は半透明の保護層6を形成してもよい。
【0032】
比較例1は、実施例1〜6に対し、第2Cuめっき層3を含まない。
比較例2は、実施例1〜6に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が0.35μmである。
比較例3は、実施例1〜6に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が7.0μmである。
比較例4は、実施例1〜6に対し、第1Cuめっき層2を含まない。
比較例5は、実施例7に対し、第2Cuめっき層3を含まない。
比較例6は、実施例7に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が0.35μmである。
比較例7は、実施例7に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が0.7μmである。
【0033】
実施例1〜7及び比較例2,3,6,7の装飾部品は、次の方法で作製された。
<1>基材とその処理
ABS製の板状の基材を、次の順で処理した。各処理はいずれも公知の方法により行うことができる。
・界面活性剤含有浴に浸漬して基材表面を脱脂した。
・Cr酸/硫酸溶液に浸漬して基材表面をエッチングした。
・Pd/Sn混合コロイド触媒等に代表される触媒を付与して基材表面を活性化した。
・無電解Niめっき又は無電解Cuめっきを行って基材表面に導電性を付与した。
【0034】
<2>第1Cuめっき層の形成
図2の左側に示すように、上記処理後の基材1を、公知のCuめっき浴に添加剤としてJCU社製「CuSOFT」のみを適宜配合してなるめっき浴11に浸漬し、陰極電流密度4A/dmのめっき条件で電解無光沢Cuめっきを行った。めっき時間を50秒〜60分の範囲内で段階的に変えて、形成された第1Cuめっき層の膜厚と表面粗さRaを測定したところ、図3に示すめっき時間と膜厚の関係(近似曲線も示す)、及び、図4に示す膜厚とRaの関係が得られた。
そして、めっき時間20分で得られる膜厚8μm、表面粗さRa0.25μmである第1Cuめっき層を、実施例1〜6及び比較例2,3における第1Cuめっき層2とした。
また、めっき時間25分で得られる膜厚10μm、表面粗さRa0.67μmである第1Cuめっき層を、実施例7及び比較例6,7における第1Cuめっき層2とした。
【0035】
<3>第2Cuめっき層の形成
図2の右側に示すように、上記膜厚8μmの第1Cuめっき層2が形成された基材1を、公知のCuめっき浴に添加剤として公知のレベリング剤、成長抑制剤、成長促進剤及びこげ防止剤とJCU社製の試薬「EP30−A,B,C」をそれぞれ適宜配合してなるめっき浴12に浸漬し、陰極電流密度3A/dmの条件で電解光沢Cuめっきを行った。めっき時間を1分、3分、7.5分、10分、12.5分、15分、17.5分、20分と段階的に変えて、形成された第2Cuめっき層の膜厚、表面粗さRa及び光沢度を測定したところ、表1に示す結果となった。
【0036】
表1には、第1Cuめっき層2の表面粗さRaに対する第2Cuめっき層3の表面粗さRaの低減率ΔRaも示す。図5に、第2Cuめっき層3の膜厚とΔRaの関係を近似曲線とともに示す。図6に、第2Cuめっき層3の膜厚とその表面粗さRa及び光沢度との関係を併せて示す。
【0037】
そして、表1のとおり、目視観察で外観がサテン調であった、第2Cuめっき層3の膜厚1.0〜6.1μmで、表面粗さRaが第1Cuめっき層2の表面粗さRaの16〜84%であった6例が実施例1〜6である。外観が無光沢であった、第2Cuめっき層3の膜厚0.35μmの例は比較例2である。外観が略光沢であった、第2Cuめっき層3の膜厚7.0μmの例は比較例3である。
また、膜厚10μmの第1Cuめっき層2が形成された例については、目視観察で外観がサテン調であった、第2Cuめっき層3の膜厚1.0μmで、表面粗さRaが第1Cuめっき層2の表面粗さRaの24%であった例が実施例7である。外観が無光沢であった、第2Cuめっき層3の膜厚0.35〜0.7μmの例は比較例6,7である。
【0038】
<4>Sn−Co合金めっき層の形成
上記第2Cuめっき層3が形成された基材1を、JCU社製のSn−Co薬を使用した市販のピロリン酸浴からなるめっき浴(図示略)に浸漬し、陰極電流密度0.5A/dmのめっき条件で電解Sn−Co合金めっきを行った。めっき時間3分で膜厚0.3μmのSn−Co合金めっき層4が形成された。
【0039】
このSn−Co合金めっき層4により、第2Cuめっき層3の表面粗さRa及び光沢度はほとんど変わることなく、第2Cuめっき層3による実施例1〜7のサテン調外観の色調がCr色調となった。
【0040】
<5>透明又は半透明の保護層の形成
上記Sn−Co合金めっき層4上に、例えばアクリル系樹脂の電着塗装により膜厚10μmの透明又は半透明の保護層6を形成することができる。この透明又は半透明の保護層6は、実施例1〜7のサテン調外観に影響を与えないものである。
【0041】
次に、比較例1の装飾部品は、基材1上に実施例1〜6と同様の第1Cuめっき層2を形成して、第2Cuめっき層3を形成することなく、第1Cuめっき層2上に各実施例と同様のSn−Co合金めっき層4を形成して作製された。外観は無光沢であった。
また、比較例4の装飾部品は、基材1上に、第1Cuめっき層2を形成することなく、膜厚10.0μmの第2Cuめっき層3を形成して、第2Cuめっき層3上に各実施例と同様のSn−Co合金めっき層4を形成して作製された。外観は光沢であった。
また、比較例5の装飾部品は、基材1上に実施例7と同様の第1Cuめっき層2を形成して、第2Cuめっき層3を形成することなく、第1Cuめっき層2上に各実施例と同様のSn−Co合金めっき層4を形成して作製された。外観は無光沢であった。
【0042】
以上のとおり、実施例1〜7の装飾部品は、従来のサテンNiめっき層を用いず、延性のある第1Cuめっき層2及び第2Cuめっき層3を用いて、サテン調外観を少ない層数で安定的に得ることができた。
【0043】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)基材1は、樹脂製の基材に限定されず、例えば金属(真鍮等)製の基材を用いることもできる。
(2)第1Cuめっき層として、上述のとおり各実施例では表面粗さRa0.25μm又は0.67μmのものを採用したが、表面粗さRa0.1〜0.8μmのものを採用することができる。その場合も、膜厚が1〜6.1μmで表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層を形成することにより、サテン調外観を安定的に得ることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 基材
2 第1Cuめっき層
3 第2Cuめっき層
4 Sn−Co合金めっき層
5 サテンめっき膜
6 透明又は半透明の保護層
11 めっき浴(第1Cuめっき層用)
12 めっき浴(第2Cuめっき層用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6