【実施例】
【0029】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜7を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は各実施例に限定されるものではない。
【0030】
【表1】
【0031】
図1及び表1に示すように、実施例1〜7の装飾部品は、基材1と、基材上に形成された表面粗さRaが0.25μm又は0.67μmである第1Cuめっき層2と、第1Cuめっき層2上に形成された、膜厚が1.0〜6.1μmであり、表面粗さRaが第1Cuめっき層2の表面粗さRaの16〜84%である第2Cuめっき層3と、第2Cuめっき層3上に形成された銀白色金属めっき層としてのSn−Co合金めっき層4とからなる。
装飾部品は、第2Cuめっき層3の表面粗さに基づくサテン調外観を示し、Sn−Co合金めっき層4はサテン調外観の色調を調整するためのものである。従って、本実施例のサテンめっき膜5は、第1Cuめっき層2\第2Cuめっき層3\Sn−Co合金めっき層4の3層構成である。なお、Sn−Co合金めっき層4上には、必要に応じて透明又は半透明の保護層6を形成してもよい。
【0032】
比較例1は、実施例1〜6に対し、第2Cuめっき層3を含まない。
比較例2は、実施例1〜6に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が0.35μmである。
比較例3は、実施例1〜6に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が7.0μmである。
比較例4は、実施例1〜6に対し、第1Cuめっき層2を含まない。
比較例5は、実施例7に対し、第2Cuめっき層3を含まない。
比較例6は、実施例7に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が0.35μmである。
比較例7は、実施例7に対し、第2Cuめっき層3の膜厚が0.7μmである。
【0033】
実施例1〜7及び比較例2,3,6,7の装飾部品は、次の方法で作製された。
<1>基材とその処理
ABS製の板状の基材を、次の順で処理した。各処理はいずれも公知の方法により行うことができる。
・界面活性剤含有浴に浸漬して基材表面を脱脂した。
・Cr酸/硫酸溶液に浸漬して基材表面をエッチングした。
・Pd/Sn混合コロイド触媒等に代表される触媒を付与して基材表面を活性化した。
・無電解Niめっき又は無電解Cuめっきを行って基材表面に導電性を付与した。
【0034】
<2>第1Cuめっき層の形成
図2の左側に示すように、上記処理後の基材1を、公知のCuめっき浴に添加剤としてJCU社製「CuSOFT」のみを適宜配合してなるめっき浴11に浸漬し、陰極電流密度4A/dm
2のめっき条件で電解無光沢Cuめっきを行った。めっき時間を50秒〜60分の範囲内で段階的に変えて、形成された第1Cuめっき層の膜厚と表面粗さRaを測定したところ、
図3に示すめっき時間と膜厚の関係(近似曲線も示す)、及び、
図4に示す膜厚とRaの関係が得られた。
そして、めっき時間20分で得られる膜厚8μm、表面粗さRa0.25μmである第1Cuめっき層を、実施例1〜6及び比較例2,3における第1Cuめっき層2とした。
また、めっき時間25分で得られる膜厚10μm、表面粗さRa0.67μmである第1Cuめっき層を、実施例7及び比較例6,7における第1Cuめっき層2とした。
【0035】
<3>第2Cuめっき層の形成
図2の右側に示すように、上記膜厚8μmの第1Cuめっき層2が形成された基材1を、公知のCuめっき浴に添加剤として公知のレベリング剤、成長抑制剤、成長促進剤及びこげ防止剤とJCU社製の試薬「EP30−A,B,C」をそれぞれ適宜配合してなるめっき浴12に浸漬し、陰極電流密度3A/dm
2の条件で電解光沢Cuめっきを行った。めっき時間を1分、3分、7.5分、10分、12.5分、15分、17.5分、20分と段階的に変えて、形成された第2Cuめっき層の膜厚、表面粗さRa及び光沢度を測定したところ、表1に示す結果となった。
【0036】
表1には、第1Cuめっき層2の表面粗さRaに対する第2Cuめっき層3の表面粗さRaの低減率ΔRaも示す。
図5に、第2Cuめっき層3の膜厚とΔRaの関係を近似曲線とともに示す。
図6に、第2Cuめっき層3の膜厚とその表面粗さRa及び光沢度との関係を併せて示す。
【0037】
そして、表1のとおり、目視観察で外観がサテン調であった、第2Cuめっき層3の膜厚1.0〜6.1μmで、表面粗さRaが第1Cuめっき層2の表面粗さRaの16〜84%であった6例が実施例1〜6である。外観が無光沢であった、第2Cuめっき層3の膜厚0.35μmの例は比較例2である。外観が略光沢であった、第2Cuめっき層3の膜厚7.0μmの例は比較例3である。
また、膜厚10μmの第1Cuめっき層2が形成された例については、目視観察で外観がサテン調であった、第2Cuめっき層3の膜厚1.0μmで、表面粗さRaが第1Cuめっき層2の表面粗さRaの24%であった例が実施例7である。外観が無光沢であった、第2Cuめっき層3の膜厚0.35〜0.7μmの例は比較例6,7である。
【0038】
<4>Sn−Co合金めっき層の形成
上記第2Cuめっき層3が形成された基材1を、JCU社製のSn−Co薬を使用した市販のピロリン酸浴からなるめっき浴(図示略)に浸漬し、陰極電流密度0.5A/dm
2のめっき条件で電解Sn−Co合金めっきを行った。めっき時間3分で膜厚0.3μmのSn−Co合金めっき層4が形成された。
【0039】
このSn−Co合金めっき層4により、第2Cuめっき層3の表面粗さRa及び光沢度はほとんど変わることなく、第2Cuめっき層3による実施例1〜7のサテン調外観の色調がCr色調となった。
【0040】
<5>透明又は半透明の保護層の形成
上記Sn−Co合金めっき層4上に、例えばアクリル系樹脂の電着塗装により膜厚10μmの透明又は半透明の保護層6を形成することができる。この透明又は半透明の保護層6は、実施例1〜7のサテン調外観に影響を与えないものである。
【0041】
次に、比較例1の装飾部品は、基材1上に実施例1〜6と同様の第1Cuめっき層2を形成して、第2Cuめっき層3を形成することなく、第1Cuめっき層2上に各実施例と同様のSn−Co合金めっき層4を形成して作製された。外観は無光沢であった。
また、比較例4の装飾部品は、基材1上に、第1Cuめっき層2を形成することなく、膜厚10.0μmの第2Cuめっき層3を形成して、第2Cuめっき層3上に各実施例と同様のSn−Co合金めっき層4を形成して作製された。外観は光沢であった。
また、比較例5の装飾部品は、基材1上に実施例7と同様の第1Cuめっき層2を形成して、第2Cuめっき層3を形成することなく、第1Cuめっき層2上に各実施例と同様のSn−Co合金めっき層4を形成して作製された。外観は無光沢であった。
【0042】
以上のとおり、実施例1〜7の装飾部品は、従来のサテンNiめっき層を用いず、延性のある第1Cuめっき層2及び第2Cuめっき層3を用いて、サテン調外観を少ない層数で安定的に得ることができた。
【0043】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。
(1)基材1は、樹脂製の基材に限定されず、例えば金属(真鍮等)製の基材を用いることもできる。
(2)第1Cuめっき層として、上述のとおり各実施例では表面粗さRa0.25μm又は0.67μmのものを採用したが、表面粗さRa0.1〜0.8μmのものを採用することができる。その場合も、膜厚が1〜6.1μmで表面粗さRaが第1Cuめっき層の表面粗さRaの15〜80%である第2Cuめっき層を形成することにより、サテン調外観を安定的に得ることができる。