特許第6539802号(P6539802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6539802-冷却システム及び分離方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6539802
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】冷却システム及び分離方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/14 20120101AFI20190625BHJP
   B01D 5/00 20060101ALI20190625BHJP
   B01D 53/72 20060101ALI20190625BHJP
   F28D 7/00 20060101ALI20190625BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   D04H3/14
   B01D5/00 Z
   B01D53/72
   F28D7/00 Z
   F28D9/00
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-520670(P2019-520670)
(86)(22)【出願日】2018年12月21日
(86)【国際出願番号】JP2018047369
【審査請求日】2019年4月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】三原 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】服部 高尚
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−134977(JP,A)
【文献】 特開平04−065565(JP,A)
【文献】 中国実用新案第206646195(CN,U)
【文献】 特開2005−068434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01B1/02−1/08
B01D1/00−8/00
53/34−53/85
53/92
53/96
B29B7/00−11/14
13/00−15/06
B29C31/00−31/10
37/00−37/04
47/00−47/96
71/00−71/02
D04H1/00−18/04
F28D1/00−13/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子を溶融混練し、溶融混練した高分子を紡糸成形して不織布を製造する製造部と、
前記高分子を溶融混練する際に生じる、有機化合物を含むガスを排出する排出部と、
前記排出部から排出された前記ガスを冷却する第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の下流に配置され、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを冷却する第2の熱交換器と、
前記第2の熱交換器から排出された前記ガスをシステム外へ排気する排気部と、
を備える冷却システム。
【請求項2】
前記第1の熱交換器がフィンチューブ式熱交換器である請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記第2の熱交換器が直交流型熱交換器である請求項1又は請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記第1の熱交換器の下流側及び前記第2の熱交換器の上流側を接続し、かつ前記第2の熱交換器の下流側及び前記排気部を接続する経路と、
前記経路における前記第2の熱交換器の上流側及び下流側を接続するバイパス経路と、
前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器に供給するか否かを切り替え可能な切り替え部と、
を更に備える請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記有機化合物は、2,4−ジメチル−ヘプテン、2,6−ジメチルノナン、プロピレン4量体、プロピレン5量体、これらの異性体、ジアセチルベンゼン及びジ−tert−ブチルフェノールから選択される少なくとも1種を含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記第1の熱交換器にて前記排出部から排出された前記ガスを30℃超50℃以下に冷却するように制御する制御部を備える請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2の熱交換器にて前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを20℃〜30℃に冷却するように制御する請求項6に記載の冷却システム。
【請求項8】
前記排出部から排出された前記ガスを前記第1の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第1の排出経路を更に備える請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項9】
前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第2の排出経路を更に備える請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の冷却システム。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の冷却システムを用いて前記有機化合物を含むガスから前記有機化合物を分離する分離方法。
【請求項11】
前記有機化合物は、2,4−ジメチル−ヘプテン、2,6−ジメチルノナン、プロピレン4量体、プロピレン5量体、これらの異性体、ジアセチルベンゼン及びジ−tert−ブチルフェノールから選択される少なくとも1種を含む請求項10に記載の分離方法。
【請求項12】
前記第2の熱交換器が直交流型熱交換器であり、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより、前記ガス中に含まれる前記有機化合物の少なくとも1種を前記第2の熱交換器のガス流路に付着させて前記ガスから分離する請求項10又は請求項11に記載の分離方法。
【請求項13】
前記冷却システムは、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第2の排出経路を更に備え、
前記第2の熱交換器における前記ガスの冷却を止めた後に、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器に供給し、前記第2の熱交換器のガス流路に付着した前記有機化合物を融解させ、融解した前記有機化合物を前記第2の排出経路から排出する請求項12に記載の分離方法。
【請求項14】
前記冷却システムは、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第2の排出経路を更に備え、
前記第1の熱交換器における前記ガスの冷却及び前記第2の熱交換器における前記ガスの冷却を止めた後に、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器に供給し、前記第2の熱交換器のガス流路に付着した前記有機化合物を融解させ、融解した前記有機化合物を前記第2の排出経路から排出する請求項12に記載の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却システム及び分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不織布は通気性及び柔軟性に優れることから各種用途に幅広く用いられている。不織布の代表的な用としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン等の吸収性物品、衛生マスク、医療用ガーゼ、湿布材の基布等が挙げられる。
【0003】
不織布の製造方法としては、例えば、プロピレン系重合体等の高分子を含む樹脂組成物を押出機内で溶融混練し、溶融混練した樹脂組成物を紡糸して不織布を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−96414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
不織布原料である高分子を溶融混練する際、不織布原料の一部が分解したり、溶融混練時に添加する添加剤が分解、揮発等したりして有機化合物を含むガスが発生する場合がある。環境への対策として、この有機化合物を含むガスから有機化合物を分離除去した後、システム外へガスを排気する必要がある。例えば、有機化合物を分離除去する方法として、不織布製造の際に発生した有機化合物を含むガスを熱交換器に供給し、熱交換器にてこのガスを冷却することにより、有機化合物を固化又は液化させて分離除去する方法が挙げられる。
【0006】
しかしながら、熱交換器を用いてガス中の有機化合物を固化又は液化させて分離除去する場合、冷却により固化した有機化合物が熱交換器の内部、例えばフィンに付着し、熱交換器が詰まってしまうおそれがある。熱交換温度が下がりすぎることによる熱交換器の詰まりを抑制するため、熱交換器への冷却水等の冷媒の量を減らして熱交換器を運転する必要がある。これにより、熱交換器にて有機化合物が十分に分離除去されず、有機化合物が十分に除去されていないガスがシステム外に排気されるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、熱交換器の詰まりが抑制され、かつ不織布を製造する製造部から排出されたガス中の有機化合物を効率よく分離除去できる冷却システム、及びこれを用いた分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 高分子を溶融混練し、溶融混練した高分子を紡糸成形して不織布を製造する製造部と、前記高分子を溶融混練する際に生じる、有機化合物を含むガスを排出する排出部と、前記排出部から排出された前記ガスを冷却する第1の熱交換器と、前記第1の熱交換器の下流に配置され、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを冷却する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器から排出された前記ガスをシステム外へ排気する排気部と、を備える冷却システム。
<2> 前記第1の熱交換器がフィンチューブ式熱交換器である<1>に記載の冷却システム。
<3> 前記第2の熱交換器が直交流型熱交換器である<1>又は<2>に記載の冷却システム。
<4> 前記第1の熱交換器の下流側及び前記第2の熱交換器の上流側を接続し、かつ前記第2の熱交換器の下流側及び前記排気部を接続する経路と、前記経路における前記第2の熱交換器の上流側及び下流側を接続するバイパス経路と、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器に供給するか否かを切り替え可能な切り替え部と、を更に備える<1>〜<3>のいずれか1つに記載の冷却システム。
<5> 前記有機化合物は、2,4−ジメチル−ヘプテン、2,6−ジメチルノナン、プロピレン4量体、プロピレン5量体、これらの異性体、ジアセチルベンゼン及びジ−tert−ブチルフェノールから選択される少なくとも1種を含む<1>〜<4>のいずれか1つに記載の冷却システム。
<6> 前記第1の熱交換器にて前記排出部から排出された前記ガスを30℃超50℃以下に冷却するように制御する制御部を備える<1>〜<5>のいずれか1つに記載の冷却システム。
<7> 前記制御部は、前記第2の熱交換器にて前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを20℃〜30℃に冷却するように制御する<6>に記載の冷却システム。
<8> 前記排出部から排出された前記ガスを前記第1の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第1の排出経路を更に備える<1>〜<7>のいずれか1つに記載の冷却システム。
<9> 前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第2の排出経路を更に備える<1>〜<8>のいずれか1つに記載の冷却システム。
【0009】
<10> <1>〜<9>のいずれか1つに記載の冷却システムを用いて前記有機化合物を含むガスから前記有機化合物を分離する分離方法。
<11> 前記有機化合物は、2,4−ジメチル−ヘプテン、2,6−ジメチルノナン、プロピレン4量体、プロピレン5量体、これらの異性体、ジアセチルベンゼン及びジ−tert−ブチルフェノールから選択される少なくとも1種を含む<10>に記載の分離方法。
<12> 前記第2の熱交換器が直交流型熱交換器であり、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより、前記ガス中に含まれる前記有機化合物の少なくとも1種を前記第2の熱交換器のガス流路に付着させて前記ガスから分離する<10>又は<11>に記載の分離方法。
<13> 前記冷却システムは、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第2の排出経路を更に備え、前記第2の熱交換器における前記ガスの冷却を止めた後に、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器に供給し、前記第2の熱交換器のガス流路に付着した前記有機化合物を融解させ、融解した前記有機化合物を前記第2の排出経路から排出する<12>に記載の分離方法。
<14> 前記冷却システムは、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器にて冷却することにより前記ガスから分離された成分を排出する第2の排出経路を更に備え、前記第1の熱交換器における前記ガスの冷却及び前記第2の熱交換器における前記ガスの冷却を止めた後に、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを前記第2の熱交換器に供給し、前記第2の熱交換器のガス流路に付着した前記有機化合物を融解させ、融解した前記有機化合物を前記第2の排出経路から排出する<12>に記載の分離方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、熱交換器の詰まりが抑制され、かつ不織布を製造する製造部から排出されたガス中の有機化合物を効率よく分離除去できる冷却システム、及びこれを用いた分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る冷却システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本開示において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値または下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値または下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
[冷却システム]
本開示の冷却システムは、高分子を溶融混練し、溶融混練した高分子を紡糸成形して不織布を製造する製造部と、前記高分子を溶融混練する際に生じる、有機化合物を含むガスを排出する排出部と、前記排出部から排出された前記ガスを冷却する第1の熱交換器と、前記第1の熱交換器の下流に配置され、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを冷却する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器から排出された前記ガスをシステム外へ排気する排気部と、を備える。
【0014】
不織布原料である高分子を溶融混練する際、不織布原料の一部が分解したり、溶融混練時に添加する添加剤が分解、揮発等したりして有機化合物を含むガスが発生する場合がある。環境への対策として、この有機化合物を含むガスから有機化合物を分離除去した後、システム外へガスを排気する必要がある。例えば、有機化合物を分離除去する方法として、不織布製造の際に発生した有機化合物を含むガスを熱交換器に供給し、熱交換器にてこのガスを冷却することにより、有機化合物を固化又は液化させて分離除去する方法が挙げられる。
【0015】
しかしながら、熱交換器を用いてガス中の有機化合物を固化又は液化させて分離除去する場合、冷却により固化した有機化合物が熱交換器の内部、例えばフィンに付着し、熱交換器が詰まってしまうおそれがある。熱交換温度が下がりすぎることによる熱交換器の詰まりを抑制するため、熱交換器への冷却水等の冷媒の量を減らして熱交換器を運転する必要がある。これにより、熱交換器にて有機化合物が十分に分離除去されず、有機化合物が十分に除去されていないガスがシステム外に排気されるという問題がある。
【0016】
一方、本開示の冷却システムでは、高分子を溶融混練する際に生じる、有機化合物を含むガスを、第1の熱交換器及び第2の熱交換器の順に供給し、第2の熱交換器から排出されたガスをシステム外へ排気する。本開示の冷却システムでは、少なくとも2つの熱交換器を用いて有機化合物を分離除去するため、冷却により固化した有機化合物によるフィンの詰まりを抑制しつつ、有機化合物が十分に分離除去されたガスをシステム外に排出することができる。
【0017】
以下、本開示の冷却システムの一例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る冷却システムを示す概略構成図である。
【0018】
図1に示すように、冷却システム100は、高分子を溶融混練し、溶融混練した高分子を紡糸成形して不織布を製造する製造部1と、高分子を溶融混練する際に生じる、有機化合物を含むガスを冷却する第1の熱交換器2と、第1の熱交換器2から排出されたガスを冷却する第2の熱交換器3と、を備える。
【0019】
製造部1としては、高分子を溶融混練し、溶融混練した高分子を紡糸成形して不織布を製造する構成であればよく、例えば、スパンボンド法により不織布を製造するスパンボンド不織布製造装置、メルトブロー法により不織布を製造するメルトブロー不織布製造装置等が挙げられる。
【0020】
スパンボンド不織布製造装置としては、スパンボンド不織布を形成可能な公知の製造装置が挙げられる。スパンボンド不織布製造装置としては、例えば、樹脂組成物を溶融混練する押出機と、溶融混練した樹脂組成物を、吐出する複数の紡糸ノズルを備える紡出部と、樹脂組成物が紡糸されてなる長繊維を冷却する冷却部と、冷却された長繊維を延伸する延伸部と、延伸された長繊維を堆積させて不織ウェブを形成する移動捕集部と、不織ウェブを加熱加圧処理する交絡部と、を備える構成であってもよい。
【0021】
メルトブロー不織布製造装置としては、メルトブロー不織布を形成可能な公知の製造装置が挙げられる。メルトブロー不織布製造装置としては、例えば、樹脂組成物を溶融混練する押出機と、溶融混練した樹脂組成物を高温のガスとともに吐出する複数の紡糸ノズルを備える紡出部と、樹脂組成物が紡糸されてなる繊維を堆積させる移動捕集部と、を備える構成であってもよい。
【0022】
有機化合物としては、高分子を溶融混練する際に生じる化合物であれば特に限定されず、例えば、不織布原料の一部が分解して発生する有機化合物、溶融混練時に添加する添加剤が分解、揮発等した有機化合物などが挙げられる。
【0023】
有機化合物としては、不織布原料のプロピレン系重合体等の高分子の一部が分解して発生する多量体であってもよく、例えば、2,4−ジメチル−ヘプテン、2,6−ジメチルノナン、プロピレン4量体、プロピレン5量体、これらの異性体等が挙げられる。
【0024】
また、有機化合物としては、前述の化合物の他、ジアセチルベンゼン、ジ−tert−ブチルフェノール、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、エルカ酸アミド等の脂肪酸アミド、ジヒドロキシジイソプロピルベンゼン、C1114、これらの異性体、これらの変性物などが挙げられる。
有機化合物としては、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0025】
製造部1から排出される有機化合物を含むガスは、高分子を溶融混練する際以外に生じる有機化合物を更に含んでいてもよい。
【0026】
製造部1にて発生した有機化合物を含むガスは、排出部を通じて流通経路4に排出され、流通経路4を通じて第1の熱交換器2に供給される。製造部1にて発生した有機化合物を含むガスの温度は、特に限定されず、例えば、50℃〜100℃であってもよく、60℃〜80℃であってもよく、70℃〜80℃であってもよい。
【0027】
第1の熱交換器2は、流通経路4を通じて供給された有機化合物を含むガスを冷却し、ガス中の有機化合物の少なくとも一部を分離除去する機器である。
【0028】
第1の熱交換器2には、冷却水供給経路21を通じて冷却水が供給され、冷却水と有機化合物を含むガスとの熱交換により、前述のガスは冷却される。冷却水供給経路21には開閉弁13、14が設けられている。なお、有機化合物を含むガスを冷却する冷媒は水に限定されず、任意の冷媒が挙げられる。
【0029】
第1の熱交換器2は、冷却水供給経路21を流通する冷却水の流量を調節することにより、有機化合物を含むガスの冷却を調節してもよい。第1の熱交換器2は、例えば、有機化合物を含むガスを30℃超50℃以下に冷却してもよい。このとき、冷却システム100は、有機化合物を含むガスの冷却を調節する制御部を備えていてもよく、例えば、制御部が有機化合物を含むガスを30℃超50℃以下に冷却するように第1の熱交換器2に供給される冷却水の流量等を制御してもよい。
【0030】
また、第1の熱交換器2は、例えば、有機化合物を含むガスを30℃超40℃以下に冷却してもよく、制御部が有機化合物を含むガスを30℃超40℃以下に冷却するように第1の熱交換器2に供給される冷却水の流量等を制御してもよい。
【0031】
第1の熱交換器2は、公知の熱交換器であれば特に限定されず、例えば、フィンチューブ式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、二重管式熱交換器、並流型熱交換器、向流型熱交換器、直交流型熱交換器等が挙げられる。第1の熱交換器2は、有機化合物を含むガスの処理可能な流量が高い点から、フィンチューブ式熱交換器であることが好ましい。フィンチューブ式熱交換器は、放熱面積を増やすため、外周にフィン(帯状の金属板)をらせん状に巻きつけて加工した放熱管を備え、放熱管内にガスを冷却する冷媒が供給され、放熱管の外面側に供給されたガスを冷却する熱交換器である。
【0032】
冷却システム100は、有機化合物を含むガスを第1の熱交換器2にて冷却することにより前述のガスから分離された成分を排出する第1の排出経路23を備えている。第1の排出経路23は、開閉弁17を備えており、開閉弁17を開くことにより、有機化合物を含むガスから分離された成分を排出できる。
【0033】
例えば、第1の排出経路23から有機化合物を含むガス中に含まれ得るジアセチルベンゼン、C1114、ジ−tert−ブチルフェノール等を好適に排出できる。
【0034】
第1の熱交換器2にて冷却されたガスは、流通経路6に排出される。流通経路6は、第1の熱交換器2の下流側及び第2の熱交換器3の上流側を接続する経路である。流通経路6に設けられたポンプ5を駆動し、三方弁11(切り替え部)の流通経路6の上流側及び下流側を開き、かつ第2の熱交換器3の上流側及び下流側を接続する経路であるバイパス経路7側を閉めることにより、第1の熱交換器2にて冷却されたガスは流通経路6を通じて第2の熱交換器3に供給される。
【0035】
一方、ポンプ5を駆動し、三方弁11の流通経路6の下流側を閉め、かつ流通経路6の上流側及びバイパス経路7側を開くことにより、第1の熱交換器2にて冷却されたガスはバイパス経路7に供給される。三方弁11の開閉を調節することにより、第1の熱交換器2から排出されたガスを第2の熱交換器3に供給するか否かを切り替えることができる。
【0036】
第2の熱交換器3は、流通経路6を通じて供給されたガスを冷却し、ガス中の有機化合物を分離除去する機器である。
【0037】
第2の熱交換器3には、冷却水供給経路22を通じて冷却水が供給され、冷却水とガスとの熱交換により、ガスは冷却される。冷却水供給経路22には開閉弁15、16が設けられている。なお、ガスを冷却する冷媒は水に限定されず、任意の冷媒が挙げられる。なお、冷却水供給経路22は、第2の熱交換器3の下流側にて冷却水供給経路21と接続し、第2の熱交換器3から排出された冷却水が冷却水供給経路21を通じて第1の熱交換器2に供給される構成であってもよい。
【0038】
第2の熱交換器3は、冷却水供給経路22を流通する冷却水の流量を調節することにより、ガスの冷却を調節してもよい。第2の熱交換器3は、例えば、ガスを20℃〜30℃に冷却してもよい。このとき、冷却システム100は、ガスの冷却を調節する制御部を備えていてもよく、制御部がガスを20℃〜30℃以下に冷却するように第2の熱交換器3に供給される冷却水の流量等を制御してもよい。
【0039】
また、第2の熱交換器3は、例えば、ガスを20℃〜25℃に冷却してもよく、制御部がガスを20℃〜25℃に冷却するように第2の熱交換器3に供給される冷却水の流量等を制御してもよい。
【0040】
第2の熱交換器3は、公知の熱交換器であれば特に限定されず、例えば、フィンチューブ式熱交換器、プレートフィン式熱交換器、二重管式熱交換器、並流型熱交換器、向流型熱交換器、直交流型熱交換器等が挙げられる。第2の熱交換器3は、第1の熱交換器2での詰まりを好適に抑制し、かつ、ガス中の有機化合物を好適に分離除去する点から、直交流型熱交換器が好ましい。直交流型熱交換器としては、例えば、複数の放熱管を一方向に備え、これら放熱管内にガスを冷却する冷媒が供給され、放熱管の軸の方向と直交する方向から放熱管の外面側に供給されたガスを冷却する熱交換器である。直交流型熱交換器における放熱管は、螺旋状の流路になっていてもよい。
【0041】
冷却システム100は、第1の熱交換器2から排出されたガスを第2の熱交換器3にて冷却することにより前述のガスから分離された成分を排出する第2の排出経路24を備えている。第2の排出経路24は、開閉弁18を備えており、開閉弁18を開くことにより、前述のガスから分離された成分を排出できる。
【0042】
例えば、第2の排出経路24からジアセチルベンゼン、C1114、ジ−tert−ブチルフェノール等を好適に排出できる。
【0043】
第2の熱交換器3にて冷却されたガスは、流通経路8に排出される。三方弁12の流通経路8の上流側及び下流側を開き、かつバイパス経路7側を閉めることにより、第2の熱交換器3にて冷却されたガスは流通経路8を通じて排気部から排気される。
【0044】
一方、第1の熱交換器2から排出されたガスが第2の熱交換器3に供給されなかった場合、三方弁12の流通経路8の上流側を閉め、かつバイパス経路7側及び流通経路8の下流側を開くことにより、バイパス経路7に供給されたガスは、流通経路8を通じて排気部から排気される。
【0045】
[分離方法]
本開示の分離方法は、前述の本開示の冷却システムを用いて有機化合物を含むガスから有機化合物を分離する方法である。本開示の分離方法の一例として、前述の冷却システム100を用いた方法について以下に説明する。
【0046】
本開示の分離方法では、第1の熱交換器2から排出されたガスを第2の熱交換器3にて冷却することにより、ガス中に含まれる有機化合物の少なくとも1種を第2の熱交換器3のガス流路に付着させてガスから分離することが好ましい。このとき、第2の熱交換器3の詰まりを抑制しつつ、多くの有機化合物にガス流路に付着させてガスから分離する点から、第2の熱交換器3は直交流型熱交換器であることが好ましい。
【0047】
また、本開示の分離方法では、第2の熱交換器3のガス流路に付着した有機化合物を融解させる処理を行ってもよい。
【0048】
例えば、開閉弁15を閉じて第2の熱交換器3への冷却水の供給を停止して第2の熱交換器3におけるガスの冷却を止めた後に、第1の熱交換器2から排出されたガスを第2の熱交換器3に供給してもよい。これにより、第2の熱交換器3のガス流路に付着した有機化合物を融解させ、融解した有機化合物を第2の排出経路24から排出することができる。
【0049】
また、開閉弁13を閉じて第1の熱交換器2への冷却水の供給を停止し、かつ開閉弁15を閉じて第2の熱交換器3への冷却水の供給を停止して第1の熱交換器2におけるガスの冷却及び第2の熱交換器3におけるガスの冷却を止めた後に、第1の熱交換器2から排出されたガスを第2の熱交換器3に供給してもよい。これにより、第2の熱交換器3のガス流路に付着した有機化合物を融解させ、融解した有機化合物を第2の排出経路24から排出することができ、更に、第2の熱交換器3におけるガスの冷却のみを止めた場合と比較して、ガス流路に付着した融点のより高い有機化合物を融解させてガス流路から除去することができる。
【0050】
また、開閉弁15を閉じて第2の熱交換器3への冷却水の供給を停止して第2の熱交換器3におけるガスの冷却を止めた場合、第2の熱交換器3に供給されるガス中の有機化合物がほとんど除去されずに第2の熱交換器3から排出されるおそれがある。この場合、冷却システム100は、排気部からシステム外に排気されるガスを回収する構成、流通経路8に別経路を更に設け、その別経路に第2の熱交換器3から排出されたガスが供給され、そのガスが回収又は処理される構成等を備えていてもよい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
[実施例1]
図1に示す冷却システムを用いて、不織布原料であるプロピレン系重合体を溶融混練した際に発生した、有機化合物を含むガスから有機化合物を以下の熱交換器を用い、かつ以下の条件にて分離した。
(第1の熱交換器及び第2の熱交換器)
第1の熱交換器:フィンチューブ式熱交換器
第2の熱交換器:多管直交型熱交換器(前田鉄工所製、チューブ:タビレントチューブ(スパイラル状)、伝熱面積:6.44m、熱交換量:6.41kW)
(ガスの供給及び冷却水の温度条件)
有機化合物を含むガスの温度:70℃
冷却システムでのガス流量:25m/分(1時間供給)
第1の熱交換器に供給した冷却水の温度:16℃
第2の熱交換器に供給した冷却水の温度:8℃
【0053】
ガスの供給及び冷却水の温度条件を上記の条件で有機化合物を含むガスから有機化合物を分離したところ、第1の熱交換器及び第2の熱交換器から排出されたガスの温度、並びに、第1の熱交換器及び第2の熱交換器から排出された冷却水の温度は以下の通りであった。
(ガス及び冷却水の温度)
第1の熱交換器から排出されたガスの温度:35℃
第2の熱交換器から排出されたガスの温度:25℃
第1の熱交換器から排出された冷却水の温度:22℃
第1の熱交換器から排出された冷却水の温度:10℃
【0054】
次に、第1の熱交換器のガス流路にて凝縮されて回収された液体の有機化合物、第2の熱交換器のガス流路に付着した固体の有機化合物、及び、第2の熱交換器のガス流路にて凝縮されて回収された液体の有機化合物の成分を、ガスクロマトグラフ質量分析装置(アジレント・テクノロジー社製、商品名GC−MS HP−6973)を用いて分析した。各ピークから推定した成分、及びそのピーク面積百分率を以下の表1及び表2に示す。表1は、第1の熱交換器にて分離された有機化合物の分析結果であり、表2は、第2の熱交換器にて分離された有機化合物の分析結果である。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
表1及び表2に示すように、本実施例の冷却システムを用いることにより、有機化合物を含むガスから有機化合物を分離することができた。
【0058】
[比較例1]
熱交換器として第2の熱交換器を有さず、第1の熱交換器のみを有する以外は実施例1の冷却システムと同様のシステムを用いた。
【0059】
実施例1及び比較例1の冷却システムを用いて、前述の条件で有機化合物を含むガスから有機化合物を分離し、システム外に排出されたガスの一部を回収し、排出されたガスに含まれ得るジアセチルベンゼンを、捕集管(シリカゲル)及び捕集管(TENAX)に捕集させてその量を比較した。
結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示すように、実施例1では、捕集管の種類に関係なく、排出されたガスに含まれ得るジアセチルベンゼンの量が比較例1よりも低減しており、冷却システムによりジアセチルベンゼンを好適に除去することができた。
【符号の説明】
【0062】
1…製造部、2…第1の熱交換器、3…第2の熱交換器、4、6、8…流通経路、5…ポンプ、7…バイパス経路、11、12…三方弁(切り替え部)、13〜18…開閉弁、21、22…冷却水流通経路、23…第1の排出経路、24…第2の排出経路
【要約】
高分子を溶融混練し、溶融混練した高分子を紡糸成形して不織布を製造する製造部と、前記高分子を溶融混練する際に生じる、有機化合物を含むガスを排出する排出部と、前記排出部から排出された前記ガスを冷却する第1の熱交換器と、前記第1の熱交換器の下流に配置され、前記第1の熱交換器から排出された前記ガスを冷却する第2の熱交換器と、前記第2の熱交換器から排出された前記ガスをシステム外へ排気する排気部と、を備える冷却システム。
図1