特許第6539810号(P6539810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6539810改良された固着力を有する建築用パネルおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6539810
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】改良された固着力を有する建築用パネルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20190628BHJP
   E04C 2/26 20060101ALI20190628BHJP
   C04B 14/42 20060101ALI20190628BHJP
   C04B 16/02 20060101ALI20190628BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20190628BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20190628BHJP
   C04B 24/28 20060101ALI20190628BHJP
   B32B 13/02 20060101ALI20190628BHJP
   B32B 13/04 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   C04B28/14ZAB
   E04C2/26 Q
   C04B14/42 Z
   C04B16/02 Z
   C04B24/38 Z
   C04B24/26 B
   C04B24/26 C
   C04B24/26 E
   C04B24/26 F
   C04B24/26 G
   C04B24/28 A
   C04B24/28 Z
   C04B24/38 D
   B32B13/02
   B32B13/04
【請求項の数】25
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-514475(P2016-514475)
(86)(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公表番号】特表2016-527164(P2016-527164A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】GB2014051536
(87)【国際公開番号】WO2014188168
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年3月13日
(31)【優先権主張番号】1309058.4
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】514151409
【氏名又は名称】セン・ゴバン プラコ エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホッチン,グレン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン,アダム
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−524626(JP,A)
【文献】 特開2009−299460(JP,A)
【文献】 特開平08−066985(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0299413(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101367658(CN,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02125733(FR,A1)
【文献】 特開平03−083611(JP,A)
【文献】 特開2012−011384(JP,A)
【文献】 特表2000−512977(JP,A)
【文献】 特開2003−211130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
E04C 2/00− 2/54
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスターボードを備えたパネルであって、前記プラスターボードがその一方の面に接着剤で接着された裏当て薄板を有しており、前記プラスターボードが石膏母材を含んでおり、当該石膏母材が石膏に対して少なくとも1重量%の量である埋め込まれた繊維を有しており、
前記薄板は少なくとも1mmの厚さを有しており、且つ前記薄板は、PVC、HDPE、ナイロン、ポリカーボネート、ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド、ポリプロピレン、およびアセタールを含む群から選択される材料を実質的に含むことを特徴とするパネル。
【請求項2】
前記石膏母材がデンプン添加剤をさらに含んでおり、前記デンプン添加剤は前記石膏に対して少なくとも1重量%の量で存在することを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記デンプン添加剤は、前記プラスターボードの前記石膏母材において、前記石膏に対して少なくとも2重量%の量で存在することを特徴とする請求項2に記載のパネル。
【請求項4】
前記繊維は、前記プラスターボードの前記石膏母材において、前記石膏に対して少なくとも2重量%の量で存在することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパネル。
【請求項5】
前記繊維は、ガラス繊維、木質繊維、木材を原料とする繊維、およびそれらの混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のパネル。
【請求項6】
前記繊維は再生セルロース繊維であり、さらに、前記繊維の長さの平均値は0.1mmから0.5mmの範囲であり、および/または前記繊維の直径の平均値は20μmより小さいことを特徴とする請求項5に記載のパネル。
【請求項7】
前記繊維は、凝集した繊維の形態で前記ボード内に存在することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のパネル。
【請求項8】
前記粒子の最大寸法は0.5−3mmの範囲であり、および/または前記粒子内の繊維の長さの平均値は1−15mmの範囲であり、および/または前記粒子内の繊維の直径の平均値は1−50μmの範囲であることを特徴とする請求項7に記載のパネル。
【請求項9】
前記繊維はガラス繊維であり、さらに、前記繊維の長さの平均値は10−50mmの範囲であり、および/または前記繊維の直径の平均値は5−50μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載のパネル。
【請求項10】
前記繊維はガラス繊維であり、さらに、前記繊維の長さの平均値は10−50mmの範囲であり、および/または前記繊維の直径の平均値は20−80μmの範囲であることを特徴とする請求項5に記載のパネル。
【請求項11】
前記デンプンは非移行性デンプンであることを特徴とする請求項2から10のいずれかに記載のパネル。
【請求項12】
前記デンプンは、デキストリン、未ゼラチン化デンプン、置換デンプン、及び60℃よりも低い温度で60cpsよりも低いブルックフィールド粘度を有し、且つ70℃で10,000cpsよりも高いブルックフィールド粘度を有するデンプンからなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載のパネル。
【請求項13】
前記デンプンは置換デンプンであり、前記置換基の群はエーテル置換基またはエステル置換基であることを特徴とする請求項11または12に記載のパネル。
【請求項14】
石膏母材を含むプラスターボードであって、前記石膏母材が石膏に対して少なくとも1重量%の量が埋め込まれた繊維を有しており、前記石膏母材は高分子添加剤をさらに含み、前記高分子添加剤は前記石膏に対して少なくとも1重量%の量で存在し、
前記プラスターボードがその一方の面に接着剤で接着された裏当て薄板を有しており、
前記薄板は少なくとも1mmの厚さを有しており、且つ前記薄板は、PVC、HDPE、ナイロン、ポリカーボネート、ポリオキシベンジルメチレングリコールアンハイドライド、ポリプロピレン、およびアセタールを含む群から選択される材料を実質的に含むことを特徴とするプラスターボード。
【請求項15】
前記繊維は前記石膏に対して少なくとも3重量%の量で存在し、前記高分子添加剤は前記石膏に対して少なくとも3重量%の量で存在することを特徴とする請求項14に記載のプラスターボード。
【請求項16】
前記高分子添加剤は、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル系エチレン共重合体、ポリスチレンスルホン酸を架橋したポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステルラテックス、アクリル共重合体ラテックス、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、カチオンデンプン、エチラートデンプン、デキストリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される、請求項14または15に記載のプラスターボード。
【請求項17】
前記高分子添加剤はデンプンであることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載のプラスターボード。
【請求項18】
前記デンプンは移行性デンプンであることを特徴とする請求項17に記載のプラスターボード。
【請求項19】
前記デンプンは酸−菲薄化デンプンであることを特徴とする請求項17に記載のプラスターボード。
【請求項20】
前記デンプンは天然デンプンであることを特徴とする請求項17から19のいずれかに記載のプラスターボード。
【請求項21】
前記繊維はガラス繊維であることを特徴とする請求項14から20のいずれかに記載のプラスターボード。
【請求項22】
前記繊維は長さ4−10mmであることを特徴とする請求項21に記載のプラスターボード。
【請求項23】
前記繊維の直径は5−50μmの範囲であることを特徴とする請求項21または22に記載のプラスターボード。
【請求項24】
デンプンを石膏スラリーに追加するステップを備えており、デンプンの粒子サイズは40μmよりも小さいことを特徴とする、請求項17から20のいずれかに記載のプラスターボードを製造する方法。
【請求項25】
140から180℃の範囲の温度で前記プラスターボードを乾燥することを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載のプラスターボードを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造に使用するパネル、およびその製造に関する。特に、本発明は、例えば流し台、テレビ、またはラジエータといった物品を付けることが可能な仕切り板(パーティション)を提供するためのパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばプラスターボード(例えば石膏プラスターボード)、ポリスチレンボード、および繊維ボードといった軽量パネルは、一般的に、建物内の仕切り板を提供するために使用されている。この利用の利点は、それらが軽量で、素早く据え付けられるという事実を含む。
【0003】
しかし、ある場合において、このような軽量パネルは、固定物(例えば、パネルへの取り付けが必要な、流し台、テレビ、ラジエータ、消火器、棚、およびその他)を指示するために十分な強度がないという不利な点を有する可能性がある。このような場合、固定物の重量は、固定手段(例えば、ネジ)がパネルから外れ、固定物がパネルから落ちる原因となりかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
典型的には、この問題はパネルの固定強度を向上させるために合板シートを提供することによってことで処理されてきた。この場合、合板シートは、固定物が配置される側と反対側にパネルを支持して提供される。合板シートは、パネルに固定物を固定するために用いられる1つまたはそれ以上の固定手段(例えばネジ)を保持するための増加された強度を提供することができる。典型的には、合板シートは、仕切り板の枠組みの内に配置され、次いでプラスターボード(plasterboard、石膏ボード)が合板に固定され、その結果、プラスターボードは仕切り板の枠組みの外側に置かれる。
【0005】
代わりに、金属支持手段が提供されてもよい。この手段は、固定板、溝型材(channel)、ひも(strap)、または金属留め具を含んでいてもよい。合板シートの場合と同様に、金属支持手段は、一般に固定物が固定される側とは反対側にパネルを支持して配置され、固定物をパネルに取り付けるために使用される、例えば固定用ネジなどの固定手段を受容および固定するように動作する。
【0006】
これらの配置の両方が、現場でパネルと追加の支持部品とを互いに対して固定することが必要とされるという不利な点を有する。さらに、金属支持手段が使用される場合、固定物をパネルに固定するために必要な固定手段一式を支持するために、複数の支持手段が必要となる場合がある。それゆえ、据え付け工程には時間がかかり、高価となる可能性がある。
【0007】
さらに、金属支持手段または合板シートの追加は、仕切り板の重量および厚さを増加させ、および/またはその結果、壁面空間の空洞が減少する。一般に、合板そのものは現場で寸法に合わせて切断されなければならず、据え付けに時間を要し、さらに、埃や潜在的に有害な要素を放出させる可能性がある。
【0008】
したがって、固定手段を保持し、固定物を支持することが可能で、および据え付け工程に時間がかからない、改良されたパネルが必要とされている。
【0009】
一方の表面に固定された、ポリマー系の薄板(polymer−based)を有する下地ボード(substrate board)を備えるパネルを提供することにより、固定手段を保持するパネルの性能の向上が達成できることは、すでに発見されている。しかし、このようなパネルは、ネジの過剰な締め付けの影響を受けやすい場合があり、瞬時最大締め付けトルク(peak tightening torque)のあと、わずかな追加のネジの回転を加えただけでも、ネジ孔の内面のつぶれを生じさせ、結果として、ネジはもはやパネルに保持されなくなってしまう。その結果、信頼性高く再生可能な方法で、パネルにネジによる固定物を挿入することが困難となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
下地ボードが石膏プラスターボードの場合、少なくとも繊維性添加剤を含むプラスターボードを選択することにより、この問題は軽減される可能性がある。
【0011】
それゆえ、第1の態様では、本発明はプラスターボードを備えるパネルを提供してもよく、プラスターボードはその一方の表面に取り付けられる裏当て薄板(backing lamina)を有し、プラスターボードは繊維が埋め込まれた石膏母材(gypsum matrix)を含み、繊維は石膏(gypsum、二水石膏)に対して少なくとも1重量%の量である。
【0012】
好適には、薄板はポリマー系の薄板であり、典型的にはPVC、HDPE、ナイロン、ポリカーボネート、ベークライト(登録商標)、ポリプロピレン、アセタール、および繊維ガラスを含む群から選択される材料を実質的に含む。
【0013】
典型的には、薄板は少なくとも1mmの厚さを有する。一般に、薄板は、例えばアクリル系接着剤のようなポリマー系の接着剤を使用して、プラスターボードに接着される。
【0014】
好適には、石膏母材はさらに、石膏に対して少なくとも1重量%、好適には2重量%、さらに好適には2.5重量%の量のデンプン添加剤を含む。
【0015】
典型的には、繊維は、石膏に対して少なくとも2重量%存在し、好適には2.5重量%の量存在する。
【0016】
一般に、繊維は、ガラス繊維、木質繊維、木材を原料とする繊維、およびそれらの混合物を含む群から選択される。しかしながら、ある実施形態では、繊維は合成ポリマー繊維であってもよい。
【0017】
例えば、繊維はリヨセルのような、溶解木材パルプから製造された再生セルロース繊維であってもよい。この場合、典型的には、繊維は、1つまたはそれ以上の以下の特性を有する。
・ 長さの平均値は0.1mmよりも大きく、好適には0.2mmよりも大きい。
・ 長さの平均値は0.5mmよりも小さく、好適には0.4mmよりも小さい。
・ 直径の平均値は20μmよりも小さく、好適には15μmよりも小さい。
【0018】
ある実施形態では、繊維は例えば、紙製粒子、および/または木質粒子(例えば鋸屑(おがくず)微粒子)のような凝集した繊維の形態でプラスターボード内に存在してもよい。一般に、これらの粒子は形状が不規則である。典型的には、粒子は、1つまたはそれ以上の以下の特性を有する。
・ 最大寸法は好適には0.5mmよりも大きく、好適には1mmよりも大きく、さらに好適には1.5mmよりも大きい。
・ 最大寸法は、3mmよりも小さく、好適には2.5mmよりも小さい。
・ 粒子内の繊維の長さの平均値は、1mmよりも大きい。
・ 粒子内の繊維の長さの平均値は、15mmよりも小さい。
・ 粒子内の繊維の直径の平均値は、1μmよりも大きく、好適には5μmよりも大きい。
・ 粒子内の繊維の直径の平均値は、50μmよりも小さく、好適には30μmよりも小さい。
【0019】
繊維は粒子の境界線内に収容されるように、回旋状の経路をたどっている。
【0020】
繊維がガラス繊維の場合、繊維は、1つまたはそれ以上の以下の特性のを有していてもよい。
・ 長さの平均値は10mmよりも大きく、好適には15mmよりも大きい。
・ 長さの平均値は50mmよりも大きく、好適には30mmよりも大きい。
・ 直径の平均値は20μmよりも大きく、好適には30μmよりも大きい。
・ 直径の平均値は80μmよりも小さく、好適には70μmよりも小さい。
【0021】
好適には、デンプンは非移行性デンプン、すなわち、プラスターボードの中心部にとどまり、ボード表面に移行しないデンプン化合物を含む。このようなデンプンは、典型的にはプラスターボードの表面へと移行してプラスターボード中心部と紙の外装(paper facing)の結合を向上させる目的に役立っている移行性デンプンと、区別される。しかしながら、プラスターボードは、このような移行性デンプンを追加的に含むことも可能である。
【0022】
非移行性デンプンは当技術分野で知られているように、様々な異なる方法で提供されることができる。例えば、参照によりここに組み込まれる米国特許第7708847号に記載されるように、デンプンはデキストリンを含むことができる。
【0023】
別の場合には、デンプンは未ゼラチン化デンプン(pre−gelatinised starch)であってもよい。
【0024】
ある実施形態では、60℃よりも低い温度で低粘度(例えば、60cpsよりも低いブルックフィールド粘度)であり、70℃で非常に高い粘度(例えば、10,000cpsよりも高いブルックフィールド粘度)であるデンプンを選んでもよい。このようなデンプンは、例えば、参照によりここに組み込まれる米国特許第8252110号に記載されている。これらのデンプンは、極めて高い温度依存性のレオロジー(流動学)を有しており、低温状態では、結晶間の空間のなかに浸透するために、デンプンが中心部で分散する可能性があると考えられている。温度が60℃を超えるとすぐに、デンプン粘度は極めて高いレベルまで上昇し、デンプンが中心部に残り、中心部/外装の境界面に移行しないことを確実なものとする。
【0025】
ある実施形態では、参照によりここに組み込まれる米国特許第7048794号に記載されるように、デンプンは置換デンプンである。置換デンプンは、1つまたはそれ以上の水酸官能基を置換するように化学的に反応した、デンプン誘導体である。典型的には、この工程は、デンプンポリマー骨格に沿ってエーテル結合またはエステル結合を追加する、デンプンまたは加工デンプンのエーテル化またはエステル化を含む。この工程は、酸化、酸−菲薄化(acid−thinning)、架橋、および未ゼラチン化といった、デンプンに対して典型的に行われる、その他の加工とは区別される。ただし、このような工程は、1つまたはそれ以上の種類の官能性(functionality)の置換前または後で、デンプンに対して適用することができる。
【0026】
置換デンプンは、例えば石膏のような、プラスターボードの無機相に効果的な結合剤として作用し、それにより、プラスターボードの中心部強度が高まると考えられている。好適には、デンプンは冷水では不溶性だが、プラスターボードの形成、凝固(set)または乾燥の最中の、より高い加工温度で溶解する。このことは、デンプンの過度な移行を制限し、その結果、デンプンは石膏結晶の結合剤の役割をもたらすように、プラスターボード中心部に維持される。
【0027】
置換デンプンはヒドロキシエチル化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、および/またはアセチル化デンプンを含んでもよい。好適には、デンプンはヒドロキシエチル化デンプンである。
【0028】
デンプンは、例えば、ジャガイモ、タピオカ、またはトウモロコシ由来であってもよい。好ましくは、デンプンはトウモロコシに由来する。
【0029】
第2の態様では、本発明は、石膏母材を含むプラスターボードを提供することができる。この石膏母材は、そこに埋め込まれた繊維を有し、繊維は石膏に対して少なくとも1重量%の量で存在し、石膏母材は高分子(ポリマー)添加剤をさらに含み、この高分子添加剤は石膏に対して少なくとも1重量%の量で存在する。
【0030】
好適には、繊維は石膏に対して少なくとも3重量%、より好適には、少なくとも4重量%、最も好適には少なくとも4.5重量%の量で存在する。好適には、高分子添加剤は石膏に対して少なくとも3重量%、より好適には少なくとも4重量%、最も好適には少なくとも4.5重量%の量で存在する。これらの、比較的高いレベルの繊維および高分子添加剤は、裏当て薄板を必要としない、固定手段を維持するに十分な性能をプラスターボードに提供することができると考えられる。
【0031】
裏当て薄板を省略することで、原材料コストの削減と製造の容易さにより、比較的低コストで、適切な固定強度を有するパネルを提供することが可能となるだろう。さらに、プラスターボードから薄板を分離する必要性が回避できることから、パネルは容易にリサイクルできるであろう。
【0032】
典型的には、高分子添加剤は、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル系エチレン共重合体、ポリスチレンスルホン酸を架橋したポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステルラテックス、アクリル共重合体ラテックス、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、カチオンデンプン、エチラートデンプン、デキストリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0033】
一般に、高分子添加剤はデンプンである。
【0034】
好適には、デンプンは石膏に対して少なくとも3重量%の水準で存在し、デンプンは移行性デンプンである。驚いたことに、これらの比較的高いデンプン含有量において、移行性デンプンでさえ、プラスターボードの固定強度を強化できるように十分な量で、プラスターボードの中心部に保持されることが見いだされている。同時に、移行性デンプンは、プラスターボードの中心部と紙製の外装(使用される場合)の結合を改善する効果があり、結果として、プラスターボードに複数のデンプンの種類を含む必要がなくなる。
【0035】
デンプンが石膏に対して少なくとも3重量%の水準で存在する場合、一般に、デンプンは未ゼラチン化デンプンよりも、天然デンプン(native starch)である方が好ましい。この、比較的高いデンプンのレベルでは、未ゼラチン化デンプンは、石膏スラリーに過度な粘度を与えると考えられている。
【0036】
典型的には、デンプンは例えば麦、種々のトウモロコシ(corn、maize)、または米から生成されることができる。石膏に対して3重量%またはそれ以上のデンプンの水準では、ジャガイモデンプンは好ましくない。なぜなら、その比較的大きな粒子サイズは、石膏スラリー内の水の分配に有害な影響を有すると考えられているからである。
【0037】
好適には、繊維はガラス繊維である。
【0038】
好適には、繊維が石膏に対して少なくとも3重量%の量で存在する場合、繊維の長さは10mmよりも小さく、より好適には8mmよりも小さい。それよりも長い繊維は、比較的大量に石膏スラリー内で加工することが困難になると考えられている。典型的には、繊維長さは4mmよりも大きい。
【0039】
典型的には、繊維直径は5から50μmの範囲であり、好適には10から30μm、より好適には10から20μmである。
【0040】
ある実施形態では、繊維は、例えば木材由来の天然高分子繊維などの有機繊維、または合成高分子繊維であってもよい。
【0041】
ある実施形態では、プラスターボードはシリコーン油、またはワックスおよび/または殺生物剤を含んでいてもよい。
【0042】
一般に、プラスターボードは紙製の外装を有する。しかしながら、ある場合には、プラスターボードは表面において部分的に、または完全に埋め込まれたマット(mat)を有してもよく、例えば、事前にコーティングされることが可能なガラス繊維マットを有してもよい。追加的に、または代替的にに、プラスターボードは1つまたはそれ以上の表面上に、(例えばポリエステルのような)熱可塑性物質コーティング、または高分子フィルムを有してもよい。
【0043】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様に従ったプラスターボードの製造方法を提供する。この方法はデンプンを石膏スラリーに追加するステップを備えており、デンプンの粒子サイズが40μmよりも小さいことを特徴とする。
【0044】
好適には、デンプンの粒子サイズは30μmよりも小さい。デンプンの大きな粒子サイズは、結果として、スラリー内の不均一な水の分配をもたらし、全体として、より多くの水が必要になると考えられる。
【0045】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様に従ったプラスターボードの製造方法を提供し、石膏スラリーにデンプンおよび繊維を追加するステップと、スラリーをプラスターボードに成形するステップと、140から180℃の範囲の温度でプラスターボードを乾燥するステップを含む。
【0046】
本発明の第3または第4の態様の方法で製造されたプラスターボードは、本発明の第2の態様に従ったプラスターボードの、1つまたはそれ以上の任意の特徴を有することができる。
【0047】
本発明は以下の図面を参照して、例示としてここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1図1は回転角度に対するトルクの概略的なグラフである。
図2図2は、実施例1と、比較例1および比較例2の、回転角度に対するトルクの概略的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
実施例1−3
石膏プラスターボードは以下に記載する組成から調製された。PVCの2mmシートは、Aquagrip29860接着剤を使用して、各プラスターボードの片面に接着された。
【0050】
実施例1
石膏プラスターボードはスタッコ(stucco、化粧漆喰)および排煙脱硫石膏(DSG)を含むスラリーから調製され、DSGはスタッコに対して31重量%の量で存在する。スラリーはさらに以下の内容物を含む。
・ スタッコおよびDSGの量に対して2.9重量%の量のエチラートデンプン(エチル化デンプン、デンプンは、Grain Processing Corporation社より、Coatmaster(登録商標) K57Fの商用名で入手可能である)。
・ スタッコおよびDSGの量に対して3.2重量%の量のガラス繊維。
【0051】
実施例2
石膏プラスターボードは、スタッコおよび排煙脱硫石膏(DSG)を含むスラリーから調製され、DSGはスタッコに対して31重量%の量で存在した。スラリーはさらに以下の内容物を含む。
・ スタッコおよびDSGの量に対して0.46重量%の量のガラス繊維。
・ 0.85重量%のコロフィルム 120(Collofilm 120)デンプン。
・ スタッコおよびDSGの量に対して2.9重量%の量のエチラートデンプン(デンプンは、Grain Processing Corporation社より、Coatmaster(登録商標) K57Fの商用名で入手可能である)。
・ スタッコおよびDSGの量に対して3.7重量%の量のセルロース繊維(セルロース繊維は、Lenzing社より、Tencel(登録商標) FCP10/300/Mの商用名で入手可能である。この繊維は、MORFI fibre analysis(繊維分析機)で計測して、長さの平均値が0.3mmであり、直径が10μmである。)
【0052】
実施例3
石膏プラスターボードはスタッコおよび排煙脱硫石膏(DSG)を含むスラリーから調製され、DSGはスタッコに対して31重量%の量で存在した。スラリーはさらに以下の内容物を含む。
・ スタッコおよびDSGの量に対して0.46重量%の量のガラス繊維。
・ 0.85重量%のコロフィルム 120デンプン。
・ スタッコおよびDSGの量に対して4.4重量%の量のエチラートデンプン(デンプンは、Grain Processing Corporation社より、Coatmaster(登録商標) K57Fの商用名で入手可能である)。
・ スタッコおよびDSGの量に対して5.5重量%の量のセルロース繊維(セルロース繊維は、Lenzing社より、Tencel(登録商標) FCP10/300/Mの商用名で入手可能である。この繊維は、MORFI fibre analysis(繊維分析機)で計測して、長さの平均値が0.3mmであり、直径が10μmである。)
【0053】
実施例4−12
石膏プラスターボードは以下に記載する組成から調製された。
【0054】
実施例4
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから製造された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量の酸加水分解トウモロコシデンプン(Tate & Lyle社)。
【0055】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は617Nであった。
【0056】
実施例5
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコ量に対して5重量%の量のエチラートデンプン(デンプンは、Grain Processing Corporation社より、Coatmaster(登録商標) K57Fの商用名で入手可能である)。
【0057】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は773Nであった。
【0058】
実施例6
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコ量に対して5重量%の量のデキストリン。
【0059】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は579Nであった。
【0060】
実施例7
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコ量に対して5重量%の量のトウモロコシデンプン(これは移行性デンプンである)。
【0061】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は569Nであった。
【0062】
実施例8
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量の酸加水分解トウモロコシデンプン(Tate & Lyle社)。
・ 20Kg/mの量のマイクロシリカ。
【0063】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は653Nであった。
【0064】
実施例9
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量のエチラートデンプン(デンプンは、Grain Processing Corporation社より、Coatmaster(登録商標) K57Fの商用名で入手可能である)。
・ 20Kg/mの量のマイクロシリカ。
【0065】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は706Nであった。
【0066】
実施例10
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して5重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量の酸加水分解トウモロコシデンプン(Tate & Lyle社)。
・ スタッコに対して1重量%の量のシリコーン油。
【0067】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は541Nであった。
【0068】
実施例11
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して3重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して3重量%の量の酸加水分解トウモロコシデンプン(Tate & Lyle社)。
【0069】
実施例12
石膏プラスターボードは以下の内容物を含むスラリーから調製された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して4重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量のポリ酢酸ビニル。
【0070】
比較例1−2
石膏プラスターボードは以下に記載する組成で調製された。PVCの2mmシートはAquagrip29860接着剤を使用して、各プラスターボードの片面に接着された。
【0071】
比較例1
石膏プラスターボードはスタッコおよび排煙脱硫石膏(DSG)を含むスラリーから製造され、DSGはスタッコに対して31重量%の量で存在した。スラリーはさらに以下の内容物を含んだ。
・ スタッコおよびDSGに対して0.46重量%の量のガラス繊維。
・ 0.85重量%のコロフィルム 120デンプン。
【0072】
比較例2
石膏プラスターボードはスタッコおよび排煙脱硫石膏(DSG)を含むスラリーから調製され、DSGはスタッコに対して31重量%の量で存在した。スラリーはさらに以下の内容物を含んだ。
・ スタッコおよびDSGに対して0.46重量%の量のガラス繊維。
・ 0.85重量%のコロフィルム 120デンプン。
・ スタッコおよびDSGに対して2.9重量%の量のエチラートデンプン(デンプンは、Grain Processing Corporation社より、Coatmaster(登録商標) K57Fの商用名で入手可能である)。
【0073】
実施例13−14
石膏プラスターボードは以下に記載する組成で調製された。
【0074】
実施例13
石膏プラスターボードは以下の原料を含むスラリーから製造された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して2重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量の酸加水分解トウモロコシデンプン(Tate & Lyle社)。
【0075】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は458Nであった。
【0076】
実施例14
石膏プラスターボードは以下の原料を含むスラリーから製造された。
・ スタッコ。
・ スタッコに対して2重量%の量のガラス繊維、繊維長さは約6mm。
・ スタッコに対して5重量%の量の酸加水分解トウモロコシデンプン(Tate & Lyle社)。
・ スタッコに対して1重量%の量のシリコーン油。
【0077】
4つのサンプルで計測された、ネジ引き抜き強さの平均値は410Nであった。
【0078】
比較例5
比較例5は、硫酸カルシウム結合剤(British Gypsum社のRigidur board)によって結合された紙繊維を含む、石膏繊維ボードである。
【0079】
過度な締め付けに対する抵抗の定量化
実施例1−3のパネルと、比較例1および2のパネルと、の過度な締め付けに対する抵抗を定量化するために、各パネルに挿入されるネジの、回転角度に対するトルク(回転モーメント)のグラフが図示された。ネジは、50mmの長さと5mmの直径を有する10番の木ネジであった。このグラフの例は図1に示されている。
【0080】
曲線下部の領域は、回転角度ゼロ度(最大瞬時トルク(peak torque)に相当)と7.85ラジアンの間で計算された。この領域は、最大瞬時トルクが得られた後、ネジを締め付ける際の仕事量の表示を与えると考えられている。最大瞬時トルクが得られた後で行われた仕事の仕事量が大きければ大きいほど、ネジの過度な締め付け、およびネジ孔の内部表面の材料のつぶれのリスクが少なくなると考えられている。
【0081】
最大瞬時トルクは、各ボードで計測された。結果を表1に表記する。
【0082】
【表1】

【0083】
図2は、実施例1と比較例1および2のそれぞれに準じたパネルに挿入されたネジの、回転角度に対するトルクのグラフを示している。図2は、実施例1のパネルが比較例のパネルと比較して、(最大瞬時トルクが得られた後で)より高いトルクを保持することを示している。これは、パネルに形成されるネジ孔のつぶれに耐える、パネルの改良された性能を示すと考えられる。
【0084】
プラスターボードの耐衝撃性を定量化するために、直径50mm、重さ500gの鋼球を、垂直方向に6mのパイプで200mm×200mmのサンプルボードに落下させる。サンプルボードは排水ホッパーの周縁部で、水平方向に支持されている。一般に、排水ホッパーは筒状であり、長手方向軸がパイプのそれと合致するように配置される。排水ホッパーの内径は115mmであり、外径は122mmである。ホッパーの頂部とパイプの底部の間には少なくとも40mmの間隔(隙間)が存在する。
【0085】
サンプルボードに作られるくぼみの深さが計測され、結果は表2に表記される。
【0086】
【表2】



図1
図2