【課題を解決するための手段】
【0010】
下地ボードが石膏プラスターボードの場合、少なくとも繊維性添加剤を含むプラスターボードを選択することにより、この問題は軽減される可能性がある。
【0011】
それゆえ、第1の態様では、本発明はプラスターボードを備えるパネルを提供してもよく、プラスターボードはその一方の表面に取り付けられる裏当て薄板(backing lamina)を有し、プラスターボードは繊維が埋め込まれた石膏母材(gypsum matrix)を含み、繊維は石膏(gypsum、二水石膏)に対して少なくとも1重量%の量である。
【0012】
好適には、薄板はポリマー系の薄板であり、典型的にはPVC、HDPE、ナイロン、ポリカーボネート、ベークライト(登録商標)、ポリプロピレン、アセタール、および繊維ガラスを含む群から選択される材料を実質的に含む。
【0013】
典型的には、薄板は少なくとも1mmの厚さを有する。一般に、薄板は、例えばアクリル系接着剤のようなポリマー系の接着剤を使用して、プラスターボードに接着される。
【0014】
好適には、石膏母材はさらに、石膏に対して少なくとも1重量%、好適には2重量%、さらに好適には2.5重量%の量のデンプン添加剤を含む。
【0015】
典型的には、繊維は、石膏に対して少なくとも2重量%存在し、好適には2.5重量%の量存在する。
【0016】
一般に、繊維は、ガラス繊維、木質繊維、木材を原料とする繊維、およびそれらの混合物を含む群から選択される。しかしながら、ある実施形態では、繊維は合成ポリマー繊維であってもよい。
【0017】
例えば、繊維はリヨセルのような、溶解木材パルプから製造された再生セルロース繊維であってもよい。この場合、典型的には、繊維は、1つまたはそれ以上の以下の特性を有する。
・ 長さの平均値は0.1mmよりも大きく、好適には0.2mmよりも大きい。
・ 長さの平均値は0.5mmよりも小さく、好適には0.4mmよりも小さい。
・ 直径の平均値は20μmよりも小さく、好適には15μmよりも小さい。
【0018】
ある実施形態では、繊維は例えば、紙製粒子、および/または木質粒子(例えば鋸屑(おがくず)微粒子)のような凝集した繊維の形態でプラスターボード内に存在してもよい。一般に、これらの粒子は形状が不規則である。典型的には、粒子は、1つまたはそれ以上の以下の特性を有する。
・ 最大寸法は好適には0.5mmよりも大きく、好適には1mmよりも大きく、さらに好適には1.5mmよりも大きい。
・ 最大寸法は、3mmよりも小さく、好適には2.5mmよりも小さい。
・ 粒子内の繊維の長さの平均値は、1mmよりも大きい。
・ 粒子内の繊維の長さの平均値は、15mmよりも小さい。
・ 粒子内の繊維の直径の平均値は、1μmよりも大きく、好適には5μmよりも大きい。
・ 粒子内の繊維の直径の平均値は、50μmよりも小さく、好適には30μmよりも小さい。
【0019】
繊維は粒子の境界線内に収容されるように、回旋状の経路をたどっている。
【0020】
繊維がガラス繊維の場合、繊維は、1つまたはそれ以上の以下の特性のを有していてもよい。
・ 長さの平均値は10mmよりも大きく、好適には15mmよりも大きい。
・ 長さの平均値は50mmよりも大きく、好適には30mmよりも大きい。
・ 直径の平均値は20μmよりも大きく、好適には30μmよりも大きい。
・ 直径の平均値は80μmよりも小さく、好適には70μmよりも小さい。
【0021】
好適には、デンプンは非移行性デンプン、すなわち、プラスターボードの中心部にとどまり、ボード表面に移行しないデンプン化合物を含む。このようなデンプンは、典型的にはプラスターボードの表面へと移行してプラスターボード中心部と紙の外装(paper facing)の結合を向上させる目的に役立っている移行性デンプンと、区別される。しかしながら、プラスターボードは、このような移行性デンプンを追加的に含むことも可能である。
【0022】
非移行性デンプンは当技術分野で知られているように、様々な異なる方法で提供されることができる。例えば、参照によりここに組み込まれる米国特許第7708847号に記載されるように、デンプンはデキストリンを含むことができる。
【0023】
別の場合には、デンプンは未ゼラチン化デンプン(pre−gelatinised starch)であってもよい。
【0024】
ある実施形態では、60℃よりも低い温度で低粘度(例えば、60cpsよりも低いブルックフィールド粘度)であり、70℃で非常に高い粘度(例えば、10,000cpsよりも高いブルックフィールド粘度)であるデンプンを選んでもよい。このようなデンプンは、例えば、参照によりここに組み込まれる米国特許第8252110号に記載されている。これらのデンプンは、極めて高い温度依存性のレオロジー(流動学)を有しており、低温状態では、結晶間の空間のなかに浸透するために、デンプンが中心部で分散する可能性があると考えられている。温度が60℃を超えるとすぐに、デンプン粘度は極めて高いレベルまで上昇し、デンプンが中心部に残り、中心部/外装の境界面に移行しないことを確実なものとする。
【0025】
ある実施形態では、参照によりここに組み込まれる米国特許第7048794号に記載されるように、デンプンは置換デンプンである。置換デンプンは、1つまたはそれ以上の水酸官能基を置換するように化学的に反応した、デンプン誘導体である。典型的には、この工程は、デンプンポリマー骨格に沿ってエーテル結合またはエステル結合を追加する、デンプンまたは加工デンプンのエーテル化またはエステル化を含む。この工程は、酸化、酸−菲薄化(acid−thinning)、架橋、および未ゼラチン化といった、デンプンに対して典型的に行われる、その他の加工とは区別される。ただし、このような工程は、1つまたはそれ以上の種類の官能性(functionality)の置換前または後で、デンプンに対して適用することができる。
【0026】
置換デンプンは、例えば石膏のような、プラスターボードの無機相に効果的な結合剤として作用し、それにより、プラスターボードの中心部強度が高まると考えられている。好適には、デンプンは冷水では不溶性だが、プラスターボードの形成、凝固(set)または乾燥の最中の、より高い加工温度で溶解する。このことは、デンプンの過度な移行を制限し、その結果、デンプンは石膏結晶の結合剤の役割をもたらすように、プラスターボード中心部に維持される。
【0027】
置換デンプンはヒドロキシエチル化デンプン、ヒドロキシプロピル化デンプン、および/またはアセチル化デンプンを含んでもよい。好適には、デンプンはヒドロキシエチル化デンプンである。
【0028】
デンプンは、例えば、ジャガイモ、タピオカ、またはトウモロコシ由来であってもよい。好ましくは、デンプンはトウモロコシに由来する。
【0029】
第2の態様では、本発明は、石膏母材を含むプラスターボードを提供することができる。この石膏母材は、そこに埋め込まれた繊維を有し、繊維は石膏に対して少なくとも1重量%の量で存在し、石膏母材は高分子(ポリマー)添加剤をさらに含み、この高分子添加剤は石膏に対して少なくとも1重量%の量で存在する。
【0030】
好適には、繊維は石膏に対して少なくとも3重量%、より好適には、少なくとも4重量%、最も好適には少なくとも4.5重量%の量で存在する。好適には、高分子添加剤は石膏に対して少なくとも3重量%、より好適には少なくとも4重量%、最も好適には少なくとも4.5重量%の量で存在する。これらの、比較的高いレベルの繊維および高分子添加剤は、裏当て薄板を必要としない、固定手段を維持するに十分な性能をプラスターボードに提供することができると考えられる。
【0031】
裏当て薄板を省略することで、原材料コストの削減と製造の容易さにより、比較的低コストで、適切な固定強度を有するパネルを提供することが可能となるだろう。さらに、プラスターボードから薄板を分離する必要性が回避できることから、パネルは容易にリサイクルできるであろう。
【0032】
典型的には、高分子添加剤は、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル系エチレン共重合体、ポリスチレンスルホン酸を架橋したポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリル酸エステルラテックス、アクリル共重合体ラテックス、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、カチオンデンプン、エチラートデンプン、デキストリン、およびそれらの混合物を含む群から選択される。
【0033】
一般に、高分子添加剤はデンプンである。
【0034】
好適には、デンプンは石膏に対して少なくとも3重量%の水準で存在し、デンプンは移行性デンプンである。驚いたことに、これらの比較的高いデンプン含有量において、移行性デンプンでさえ、プラスターボードの固定強度を強化できるように十分な量で、プラスターボードの中心部に保持されることが見いだされている。同時に、移行性デンプンは、プラスターボードの中心部と紙製の外装(使用される場合)の結合を改善する効果があり、結果として、プラスターボードに複数のデンプンの種類を含む必要がなくなる。
【0035】
デンプンが石膏に対して少なくとも3重量%の水準で存在する場合、一般に、デンプンは未ゼラチン化デンプンよりも、天然デンプン(native starch)である方が好ましい。この、比較的高いデンプンのレベルでは、未ゼラチン化デンプンは、石膏スラリーに過度な粘度を与えると考えられている。
【0036】
典型的には、デンプンは例えば麦、種々のトウモロコシ(corn、maize)、または米から生成されることができる。石膏に対して3重量%またはそれ以上のデンプンの水準では、ジャガイモデンプンは好ましくない。なぜなら、その比較的大きな粒子サイズは、石膏スラリー内の水の分配に有害な影響を有すると考えられているからである。
【0037】
好適には、繊維はガラス繊維である。
【0038】
好適には、繊維が石膏に対して少なくとも3重量%の量で存在する場合、繊維の長さは10mmよりも小さく、より好適には8mmよりも小さい。それよりも長い繊維は、比較的大量に石膏スラリー内で加工することが困難になると考えられている。典型的には、繊維長さは4mmよりも大きい。
【0039】
典型的には、繊維直径は5から50μmの範囲であり、好適には10から30μm、より好適には10から20μmである。
【0040】
ある実施形態では、繊維は、例えば木材由来の天然高分子繊維などの有機繊維、または合成高分子繊維であってもよい。
【0041】
ある実施形態では、プラスターボードはシリコーン油、またはワックスおよび/または殺生物剤を含んでいてもよい。
【0042】
一般に、プラスターボードは紙製の外装を有する。しかしながら、ある場合には、プラスターボードは表面において部分的に、または完全に埋め込まれたマット(mat)を有してもよく、例えば、事前にコーティングされることが可能なガラス繊維マットを有してもよい。追加的に、または代替的にに、プラスターボードは1つまたはそれ以上の表面上に、(例えばポリエステルのような)熱可塑性物質コーティング、または高分子フィルムを有してもよい。
【0043】
第3の態様では、本発明は、本発明の第2の態様に従ったプラスターボードの製造方法を提供する。この方法はデンプンを石膏スラリーに追加するステップを備えており、デンプンの粒子サイズが40μmよりも小さいことを特徴とする。
【0044】
好適には、デンプンの粒子サイズは30μmよりも小さい。デンプンの大きな粒子サイズは、結果として、スラリー内の不均一な水の分配をもたらし、全体として、より多くの水が必要になると考えられる。
【0045】
第4の態様では、本発明は、本発明の第2の態様に従ったプラスターボードの製造方法を提供し、石膏スラリーにデンプンおよび繊維を追加するステップと、スラリーをプラスターボードに成形するステップと、140から180℃の範囲の温度でプラスターボードを乾燥するステップを含む。
【0046】
本発明の第3または第4の態様の方法で製造されたプラスターボードは、本発明の第2の態様に従ったプラスターボードの、1つまたはそれ以上の任意の特徴を有することができる。
【0047】
本発明は以下の図面を参照して、例示としてここに記載される。