特許第6539812号(P6539812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6539812
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】レンズの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 11/00 20060101AFI20190628BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G01M11/00 L
   G02B3/00 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-135101(P2018-135101)
(22)【出願日】2018年7月18日
【審査請求日】2018年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597073645
【氏名又は名称】ナルックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】丸子 高志
【審査官】 横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503629(JP,A)
【文献】 特開平10−096679(JP,A)
【文献】 特開昭49−130761(JP,A)
【文献】 特開平09−072823(JP,A)
【文献】 特開2008−135745(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0123054(US,A1)
【文献】 特開2008−076223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00−11/08
G01N 21/84−21/958
G02B 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学シミュレーションによって、検査対象レンズによる歪曲を補正する補正レンズを設計するステップと、
該光学シミュレーションによって、該検査対象レンズと該補正レンズとの組合せを通して得た補正用画像を求めるステップと、
該補正用画像使用して歪曲の補正プログラムを調整するステップと、
該検査対象レンズと該補正レンズとの組合せを通して縞パターンの検査用画像を採取するステップと、
調整された該補正プログラムを使用して該検査用画像の歪曲を補正するステップと、
該縞パターンを空間的なキャリア信号として、フーリエ縞解析法によって位相変化の情報を取り出し、該位相変化の情報を使用して該検査対象レンズの欠陥箇所を検出するステップと、を含むレンズの検査方法。
【請求項2】
該縞パターンの周期を、検出対象の想定される欠陥の最小の大きさよりも小さくなるように定めた請求項1に記載のレンズの検査法方法。
【請求項3】
該縞パターンの周期が、該画像において少なくとも2以上の画素に対応するように定めた請求項1または2に記載のレンズの検査法方法。
【請求項4】
該検査対象レンズが円筒状レンズであり、該円筒の部分の長手方向と該縞パターンの縞の長手方向とが垂直となるような状態で該縞パターンの画像を採取する請求項1から3のいずれかに記載のレンズの検査法方法。
【請求項5】
該検査対象レンズがその表面上において線状に延びた部分であって、該線に垂直な断面の形状がほぼ一定であり、周囲の部分と比較して空間周波数の高い部分を備え、該線の長手方向と該縞パターンの縞の長手方向とが垂直となるような状態で該縞パターンの画像を採取する請求項1から3のいずれかに記載のレンズの検査法方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置によって取得した画像を使用するレンズの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置によって取得した画像を使用するレンズの検査方法が開発されている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
しかし、従来の画像を使用するレンズの検査方法によって、脈理(密度や成分のゆらぎなどによる屈折率の異常)などの欠陥を検出することは困難であり、脈理などの欠陥を実用上、十分な精度で検出することのできる画像を使用するレンズの検査方法は開発されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-55561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、脈理などの欠陥を実用上、十分な精度で検出することのできる画像を使用するレンズの検査方法に対するニーズがある。本発明の課題は、脈理などの欠陥を実用上、十分な精度で検出することのできる画像を使用するレンズの検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるレンズの検査方法は、検査対象レンズを通して縞パターンの画像を採取するステップと、該画像の歪曲を補正するステップと、該縞パターンを空間的なキャリア信号として、フーリエ縞解析法によって位相変化の情報を取り出し、該位相変化の情報を使用して該検査対象レンズの欠陥箇所を検出するステップと、を含む。
【0007】
本発明によれば、フーリエ縞解析法によって取り出した位相変化の情報を使用して該検査対象レンズの欠陥箇所を検出するので、脈理などの欠陥を実用上、十分な精度で検出することができる。
【0008】
本発明に第1の実施形態によるレンズの検査方法においては、縞パターンの画像を採取するステップにおいて、検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して画像を採取する。
【0009】
本実施形態によれば、補正レンズによって歪曲がある程度補正されるので、画像における歪曲の補正が容易になり、フーリエ縞解析法を適用する際に有利である。
【0010】
本発明に第2の実施形態によるレンズの検査方法においては、該縞パターンの周期を、検出対象の想定される欠陥の最小の大きさよりも小さくなるように定めている。
【0011】
本実施形態によれば、欠陥に対して縞パターンの周期を適切に定めることにより、確実に欠陥を検出することが可能となる。
【0012】
本発明に第3の実施形態によるレンズの検査方法においては、該縞パターンの周期が、該画像において少なくとも2以上の画素に対応するように定めている。
【0013】
本実施形態によれば、縞パターンの周期に対応する画素数を適切に定めることにより、確実に欠陥を検出することが可能となる。縞パターンの周期に対応する画素数が2未満であると縞パターンのコントラストが著しく低下する。縞パターンの周期に対応する画素数は、3乃至10に定めるのがより好ましい。縞パターンの周期に対応する画素数が3以上であるとコントラストがより向上する。縞パターンの周期に対応する画素数が10を超えるとカメラの解像度が過剰となりコストが過大となる。
【0014】
本発明に第4の実施形態によるレンズの検査方法においては、該検査対象レンズが円筒状レンズであり、該円筒の部分の長手方向と該縞パターンの縞の長手方向とが垂直となるような状態で該縞パターンの画像を採取する。
【0015】
本実施形態においては、検査対象の円筒状レンズの円筒の部分の長手方向と縞パターンの縞の長手方向とが垂直となるような状態で縞パターンの画像を採取するので、円筒状レンズによる縞パターンの縞の歪曲が生じにくい。したがって、画像における歪曲の補正が容易になり、フーリエ縞解析法を適用する際に有利である。
【0016】
本発明に第5の実施形態によるレンズの検査方法においては、該検査対象レンズがその表面上において線状に延びた部分であって、該線に垂直な断面の形状がほぼ一定であり、周囲の部分と比較して空間周波数の高い部分を備え、該線の長手方向と該縞パターンの縞の長手方向とが垂直となるような状態で該縞パターンの画像を採取する。
【0017】
本実施形態においては、表面上において線状に延びた部分であって、該線に垂直な断面の形状がほぼ一定であり、周囲の部分と比較して空間周波数の高い部分を備えたレンズを検査する際に、該線の長手方向と該縞パターンの縞の長手方向とが垂直となるような状態で該縞パターンの画像を採取するので、該部分による縞パターンの縞の歪曲が生じにくい。したがって、画像における歪曲の補正が容易になり、フーリエ縞解析法を適用する際に有利である。レンズの表面上において線状に延びた部分であって、該線に垂直な断面の形状がほぼ一定であり、周囲の部分と比較して空間周波数の高い部分は、一例として、車両用灯具のレンズの出射面において水平方向に延在するシリンドリカル状の凸条部又は凹条部であり、鉛直方向に複数並んで配置されるフルートカットである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のレンズの欠陥の検査方法を実施するために使用される撮像光学系を示す図である。
図2】本発明のレンズの欠陥の検査方法を説明するための流れ図である。
図3】画像の補正前の位置及び補正後の位置を求める方法を説明するための流れ図である。
図4】検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して撮像した正方格子の画像を示す図である。
図5図2のステップS1030において縞パターンを空間的なキャリア信号として実施されるフーリエ縞解析を説明するための流れ図である。
図6】式(4)を模式的に表した図である。
図7】シリンドリカルレンズと補正レンズとを組み合わせたものの光軸を含む断面を示す図である。
図8】シリンドリカルレンズと補正レンズとを組み合わせたものの光軸を含む断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明のレンズの欠陥の検査方法を実施するために使用される撮像光学系100を示す図である。撮像光学系100は、照明装置101と、表面に縞パターンが形成された板103と、補正レンズ(ヌルレンズ)105と、検査対象レンズ107と、撮像装置109と、を含む。補正レンズ105は検査対象レンズ107による画像の歪曲を補正する目的で使用される。補正レンズ105、検査対象レンズ107、及び撮像装置109は、これらの中心が板103の縞パターンが形成された表面に垂直な直線上に位置するように配置される。上記の直線を光軸と呼称し、図1において一点鎖線で示す。撮像光学系100は、板103の縞パターンの光軸に垂直な方向の画像を、補正レンズ105と検査対象レンズ107との組合せを通して採取するように構成されている。なお、補正レンズ105及び検査対象レンズ107は逆向きに、すなわち検査対象レンズ107の凸の面が撮像装置109に向くように配置してもよい。
【0020】
表面に縞パターンが形成された板103は、ロンキー・ルーリングであってもよい。ロンキー・ルーリングは、無色透明のフロートガラス基板上全面に平行線のパターンが施されたもので、平行線の線幅と線の間の空間の幅とは等しい。一例として、ロンキー・ルーリングの縞パターンは、1インチに100組の線と線の間の空間との組合せである。この場合、1インチは、2.54ミリメータであるので、線幅と線の間の空間の幅の和、すなわち縞の周期は25.4マイクロメータであり、線幅と線の間の空間の幅とはともに12.7マイクロメータである。
【0021】
補正レンズ105の形状は、検査対象レンズ107による画像の歪曲を補正するように定める。補正レンズ105の形状の定め方については後で説明する。
【0022】
ここで、撮像装置109の仕様の決め方について説明する。まず、撮像装置109の視野を決める。視野は板103の大きさよりも少し大きめとする。つぎに、撮像装置109の視野の大きさと撮像装置109のセンサのサイズから撮像装置109のレンズの倍率を決める。この倍率及びセンサの画素数から、センサの1画素に対応する検査対称の部分のサイズが求まる。一般的に、検査対象の欠陥の最小サイズが約10画素以上となるような画素数のセンサを選択する。
【0023】
実際に使用した撮像装置109の画素数は500万画素である。セルサイズ(画素サイズ)は、3.45μm×3.45μmであり、レンズの倍率は1である。ロンキー・ルーリングの線幅は約3.7画素に相当し、ロンキー・ルーリングの周期は約7.4画素に相当する。この場合に、10画素は約35マイクロメータに相当する。
【0024】
一般的に、縞の周期、すなわちロンキー・ルーリングの周期は、検査対象の欠陥の最小サイズよりも小さくするように定める。また、縞の周期が少なくとも2以上の画素に対応するように画素数を定める。縞パターンの周期に対応する画素数が2未満であると縞パターンのコントラストが著しく低下する。縞パターンの周期に対応する画素数は、3乃至10に定めるのがより好ましい。縞パターンの周期に対応する画素数が3以上であるとコントラストがより向上する。縞パターンの周期に対応する画素数が10を超えるとカメラの解像度が過剰となりコストが過大となる。
【0025】
図2は、本発明のレンズの欠陥の検査方法を説明するための流れ図である。
【0026】
図2のステップS1010において、検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して縞パターンの画像を採取する。補正レンズによって画像の歪曲を完全に補正することはできないので、検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して撮像した画像はなお歪曲している。なお、検査対象レンズの屈折力が小さな場合には、補正レンズを使用せずに検査レンズのみを通して縞パターンの画像を採取してもよい。
【0027】
図2のステップS1020において、画像の歪曲を補正する。一般に、画像の歪曲を補正する補正プログラムを利用することができる(たとえば、OpenCVライブラリなど)。このような補正プログラムは、画像において、補正前の位置にある輝度情報を補正後の位置に移動して画像を再構成する。すなわち、画像の補正前の位置及び補正後の位置を入力として補正プログラムに与えれば、画像の歪曲を補正することができる。
【0028】
図3は、画像の補正前の位置及び補正後の位置を求める方法を説明するための流れ図である。
【0029】
図3のステップS2010において、検査対象レンズによる歪曲をできるだけ補正する補正レンズを設計する。補正レンズを設計する際には、一例として、一辺が所定の長さの正方格子のチャートを、検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して撮像した画像を、光線追跡法による光学シミュレーションによって求め、該画像における正方格子の歪曲の状態を観察しながら画像の歪曲をできるだけ小さくするように補正レンズの形状を修正しながら設計する。
【0030】
図3のステップS2020において、一例として、一辺が所定の長さの正方格子のチャートを、検査対象レンズと上記のように設計された補正レンズとの組合せを通して撮像した画像を、光学シミュレーションによって求める。
【0031】
図4は、検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して撮像した正方格子の画像を示す図である。図4の点線は、検査対象レンズと補正レンズとの組合せを通して撮像した正方格子の歪曲した画像を示す。図4の実線は、正方格子の歪曲を補正した形状を示す。
【0032】
図3のステップS2030において、図4において点線で示される歪曲した正方格子の格子点、及び図4において実線で示される正方格子の格子点を、それぞれ画像の補正前の位置、及び補正後の位置とする。上述のように、このようにして求めた画像の補正前の位置及び補正後の位置を入力として補正プログラムに与えることによって、画像の歪曲を補正することができる。
【0033】
図2のステップS1030において、縞パターンを空間的なキャリア信号として、フーリエ縞解析法によって位相変化の情報を取り出し、該位相変化の情報を使用して該検査対象レンズの欠陥箇所を検出する。
【0034】
図5は、図2のステップS1030において縞パターンを空間的なキャリア信号として実施されるフーリエ縞解析法を説明するための流れ図である。実際には、2次元の画像処理を実施するが、図5においては、簡単のために、1次元の画像処理として説明する。
【0035】
なお、フーリエ縞解析法の詳細は、Mitsuo Takeda et al., “Fourier-transform method of fringe-pattern analysis for computer-based topography and interferometry”, J. Opt. Soc. Am./Vol. 72, No. 1/January 1982に記載されている。また、国立大学法人電気通信大学のサイト(https://www.uec.ac.jp/research/information/column/09.html)にフーリエ縞解析法の解説が記載されている。以下の、図5のステップS3010−S3030の説明は、上記のサイトの説明の一部を引用して行う。
【0036】
図5のステップS3010において、採取した画像の光の強度分布g(x)をフーリエ変換してG(f)を得る。
【0037】
ここで、g(x)は以下の式で表現される。
【数1】
ここで、a(x)は、バックグラウンドの強度分布を表し、b(x)は、縞の明暗変化の振幅を表す。fは縞の空間周波数である。φ(X)は検査対象レンズの形状や屈折率などの物理量に関する情報を持つ位相である。検査対象レンズの形状や屈折率などの物理量が周囲と比較して変化した場合には位相φ(X)が変化する。
【数2】
であるから、式(1)は以下のように書き換えることができる。
【数3】
ここで、
【数4】
【数5】
とおけば、以下の式(3)が得られる。
【数6】
ここで、検査対象レンズの形状や屈折率などの物理量に関する情報は、c(x)及びc*(x)に含まれる。
【0038】
g(x)のフーリエ変換は、
【数7】
であるから、式(3)をフーリエ変換して以下の式(4)が得られる。
【数8】
【数9】
【数10】
式(4)の第1項は、式(3)の第1項a(x)のフーリエ・スペクトルであり、式(4)の第2項及び第3項は、式(2)のc(x)及びc*(x)のフーリエ・スペクトルをfずらしたものを表している。
【0039】
図6は、式(4)を模式的に表した図である。
【0040】
図5のステップS3020において、G(f)の、空間キャリア周波数f近傍の成分であるC(f−f)を求める。
【0041】
図5のステップS3030において、C(f−f)を原点に移動させてC(f)を求め、C(f)をフーリエ逆変換してc(x)を得る。ここで、C(f−f)を原点に移動させる作業は、空間キャリア周波数を取り除くことに相当する。
【0042】
図5のステップS3040において、位置xにおけるc(x)が所定値よりも大きいか否か判断する。検査対象レンズの形状や屈折率などの物理量が周囲と比較して変化した場合には位相φ(X)が変化するので、c(x)が大きくなると考えられる。したがって、位置xにおけるc(x)が所定値よりも大きいか否か判断することによって、位置xにおいて欠陥が存在するか否か判断することができる。上記の所定値は、複数の欠陥のないレンズのc(x)の平均値を求め、その値に所定の係数、たとえば、1.2または1.5などを乗ずることによって求める。位置xにおけるc(x)が所定値よりも大きければ、ステップS3050に進む。位置xにおけるc(x)が所定値以下であれば、ステップS3060に進む。
【0043】
図5のステップS3050において、位置xにおいて欠陥が存在すると判断する。
【0044】
図5のステップS3060において、位置xにおいて欠陥が存在しないと判断する。
【0045】
図5のステップS3070において、全てのxについての処理が終了したか否か判断する。全てのxについての処理が終了していれば全体の処理を終了する。全てのxについての処理が終了していなければ、他のxについての処理を実施するようにステップS3040に戻る。
【0046】
実際には、2次元の光の強度分布g(x、y)に対して、図5の流れ図に示した処理を実施する。2次元の光の強度分布g(x、y)の2次元離散フーリエ変換の式は以下のとおりである。
【数11】
ここでu及びvは、それぞれx及びyに対応する周波数空間を表す。
【0047】
また、C(u,v)の2次元離散フーリエ逆変換の式は以下のとおりである。
【数12】
【0048】
上述のように縞パターンを空間的なキャリア信号として実施されるフーリエ縞解析法によれば、検査対象レンズの形状や屈折率などの物理量の変化をc(x,y)の大きさの変化として検出することができる。
【0049】
上述のように、縞パターンの空間周波数、すなわち縞の周期は、検出したい最小の欠陥のサイズ以下である必要がある。たとえば、上述のように、縞の周期が25.4マイクロメータであれば、検出し得る欠陥のサイズは25.4マイクロメータよりも大きい。
【0050】
ここで、縞パターンの縞の方向とレンズの向きとの関係について検討する。上述のように補正レンズ、及び図3のステップS2010の処理によって画像の歪曲は補正される。しかし、画像の歪曲を完全に補正することはできない。フーリエ縞解析法においては、採取された画像の縞のパターンができるだけ歪曲されていないことが望ましい。
【0051】
図7は、シリンドリカルレンズ107Aと補正レンズ105Aとを組み合わせたものの光軸を含む断面を示す図である。図7において、縞パターンの縞がシリンドリカルレンズ107Aの長手方向と平行となるように配置されている。補正レンズ105A及びシリンドリカルレンズ107Aを通して採取した画像の歪曲を完全に補正することはできないので、画像における縞パターンは歪曲する。
【0052】
図8は、シリンドリカルレンズ107Aと補正レンズ105Aとを組み合わせたものの光軸を含む断面を示す図である。図8において、縞パターンの縞がシリンドリカルレンズ107Aの長手方向と垂直となるように配置されている。画像における縞パターンは長手方向に伸縮するが歪曲はしない。
【0053】
したがって、検査対象レンズがシリンドリカルレンズである場合には、縞パターンの縞がシリンドリカルレンズの長手方向と垂直となるように配置するのが望ましい。
【0054】
また、車両用灯具のレンズでは、カットオフライン近傍に照射される光の一部を拡散させるように、レンズの出射面にフルートカットと呼ばれる部分を設けることがある。フルートカットは、水平方向に延在するシリンドリカル状の凸条部又は凹条部であり、鉛直方向に複数並んで配置される。フルートカットはシリンドリカル状であるので、検査対象レンズがこのようなフルートカットを備えたレンズである場合には、検査対象レンズがシリンドリカルレンズである場合と同じ理由により縞パターンの縞がフルートカットの延伸方向と垂直となるように配置するのが望ましい。
【要約】
【課題】脈理などの欠陥を実用上、十分な精度で検出することのできる画像を使用するレンズの検査方法を提供する。
【解決手段】レンズの検査方法は、検査対象レンズを通して縞パターンの画像を採取するステップと、該画像の歪曲を補正するステップと、該縞パターンを空間的なキャリア信号として、フーリエ縞解析法によって位相変化の情報を取り出し、該位相変化の情報を使用して該検査対象レンズの欠陥箇所を検出するステップと、を含む。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8