【実施例】
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこの実施例によって限定されるものではない。
【0049】
以下に示すように、アボカド処理溶液を調製した。
【0050】
(調製例1〜10)
下記の表1に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対しα−リポ酸およびコエンザイムQ10を添加してアボカド処理溶液を調製した(調製例2〜10)。なお、コントロールとして処理溶液無添加区(すなわち、アボカド未処理区)を設けたが、便宜上これを「調製例1」と称することとした。
【0051】
【表1】
【0052】
(調製例11〜15)
L−アスコルビン酸ナトリウム、α−リポ酸、コエンザイムQ10および食品素材(イソマルツロース、デキストリン)を順に60重量%、0.8重量%、0.4重量%および38.8重量%となるような割合で粉末混合し、製剤を得た。
【0053】
次いで、下記の表2に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対し製剤を溶解して、アボカド処理溶液を得た(調製例11〜15)。
【0054】
(調製例16〜20)
下記の表2に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対しL−アスコルビン酸ナトリウムを添加してアボカド処理溶液を調製した(調製例16〜20)。調製例16〜20において、L−アスコルビン酸ナトリウムは、これを含有する製剤としてではなく、その物質自体を水溶液に添加した。表2は、対比のために、調製例16〜20のL−アスコルビン酸ナトリウムの水溶液濃度を調製例11〜15の製剤中に含まれるL−アスコルビン酸ナトリウムの水溶液濃度と共に示す。
【0055】
【表2】
【0056】
(実施例1:アボカド浸漬処理)
アボカドの皮を剥き、種を取り除き、処理溶液試験区ごとに均一な大きさとなるようにカットした。カットしたアボカド果実(以下、「アボカドカット果実」ともいう)をアボカド処理溶液中に、果実と溶液とが重量比にて1:1となるように20℃にて10分間浸漬した後、液切りを行った。次いで、液切り後の果実をポリスチレン製容器に入れ、冷蔵庫内に10℃にて保管した。保管の開始時点、24時間後、および96時間後に果実の外観を目視観察した。24時間後および96時間後の外観評価を目視にて行い、評価基準は下記の通りとした。目視は、被験者10名により行い、判定結果は、以下の評価基準で採点し、平均点として得た。
【0057】
(外観評価基準)
1 褐変なし(開始時と変化が無く、良好)
2 僅かに変色あり(開始時と比較するとやや変色は見られるが、効果は高い)
3 筋の部分が褐変
4 全体がやや褐変(無添加と同等程度の変色度合い)
5 全体が著しく褐変(無添加より悪い)
したがって、評価点数が低いほど、褐変の程度が低い。
【0058】
調製例1〜20の外観評価の結果を、以下の表3(調製例1〜6)、表4(調製例7〜10)、表5(調製例11〜15)および表6(調製例16〜20)に示す。また、これらの表には、用いたアボカド処理溶液の各成分または製剤の水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)および水溶液pHを併せて示す。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
開始時点、24時間後、および96時間後の4片のカットされたアボカド果実(「アボカドカット果実」)の外観を示す写真を
図1(調製例1〜6)、
図2(調製例7〜10)、
図3(調製例11〜15)および
図4(調製例16〜20)に示す。
図1〜
図4には、各調製例の組成および水溶液濃度(単位は「%(w/w)」)もまた併せて示す。
【0064】
アボカド果実は、アボカド処理溶液無添加の場合、24時間後に筋の部分が褐変し、そして96時間後には筋だけでなく、一部褐変部分が広がっていた(調製例1)。
【0065】
α−リポ酸単品を含むアボカド処理溶液では、水溶液濃度0.05%以上で果実の褐変の抑制が見られたが、果実は全体的にやや黄色みを帯びていた(調製例2、5および8)。これに対し、α−リポ酸およびコエンザイムQ10を含むアボカド処理溶液では、褐変抑制効果が向上し、鮮やかで明るい色調となった(調製例7および10)。この併用の場合では、24時間であれば、水溶液濃度が共に0.02%の場合でも変色防止効果が得られた(調製例4)。
【0066】
コエンザイムQ10単品を含むアボカド処理溶液においては、褐変抑制は得られなかった(調製例3、6および9)。
【0067】
α−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムを併用して含む製剤については、水溶液濃度が5%〜10%で96時間の褐変抑制効果が得られた(調製例12〜15)。24時間であれば、3%においても褐変抑制効果は得られた(調製例11)。
【0068】
アスコルビン酸ナトリウム単品を含むアボカド処理溶液では、あまり優れた褐変抑制は得られなかった(調製例16〜20)。
【0069】
調製例1〜20の結果より、以下が観察された。α−リポ酸とコエンザイムQ10との併用により、コエンザイムQ10単独ではむしろ褐変を促進するにもかかわらず、α−リポ酸単独よりも優れた変色防止効果が得られ、かつアボカドの果実そのものの色を明るく鮮やかなものとすることができる。さらに、アスコルビン酸ナトリウムもまた単独で褐変を促進する傾向にあるにもかかわらず、α−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムの併用により、一層優れた変色防止効果が得られ得る。
【0070】
(調製例21〜37:種々のα−リポ酸:コエンザイムQ10比率の水溶液の調製)
下記の表7に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対しα−リポ酸およびコエンザイムQ10を添加してアボカド処理溶液を調製した(調製例22〜37)。なお、コントロールとして処理溶液無添加区(すなわち、アボカド未処理区)を設けたが、便宜上これを「調製例21」と称することとした。
【0071】
【表7】
【0072】
(調製例38〜63:α−リポ酸:コエンザイムQ10:L−アスコルビン酸ナトリウムの比率を変化させた場合の水溶液の調製)
下記の表8に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対しα−リポ酸、コエンザイムQ10およびL−アスコルビン酸ナトリウムを添加してアボカド処理溶液を調製した(調製例39〜63)。なお、コントロールとして処理溶液無添加区(すなわち、アボカド未処理区)を設けたが、便宜上これを「調製例38」と称することとした。
【0073】
【表8】
【0074】
(実施例2:α−リポ酸とコエンザイムQ10との併用によるアボカド浸漬処理)
上記のような調製例21〜37のアボカド処理溶液の試験区を設けたこと以外は、実施例1と同様にアボカド果実(アボカドカット果実)を浸漬処理し、評価した。結果を下記の表9〜表10および
図5〜
図8に示す。
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
アボカド果実は、アボカド処理溶液無添加の場合、24時間後に筋の部分が褐変し、そして96時間後には筋だけでなく、一部褐変部分が広がっていた(調製例21)。
【0078】
本実施例においては、水溶液濃度0.01%〜0.1%でα−リポ酸単品を含むアボカド処理溶液で、果実の褐変の抑制は見られなかった(調製例22〜25)。水溶液濃度0.01%〜0.1%でコエンザイムQ10単品を含むアボカド処理溶液でも、果実の褐変の抑制は見られなかった(調製例26〜29)。
【0079】
α−リポ酸およびコエンザイムQ10を含むアボカド処理溶液では、特にα−リポ酸の水溶液濃度0.05%の場合にコエンザイムQ10の水溶液濃度を0.01%〜0.1%とした場合に24時間、α−リポ酸の水溶液濃度0.1%の場合にコエンザイムQ10の水溶液濃度を0.01%〜0.1%とした場合に24時間〜96時間にわたり、果実の褐変の抑制が観察された(調製例30〜37)。
【0080】
(実施例3:α−リポ酸とコエンザイムQ10とL−アスコルビン酸ナトリウムとの併用によるアボカド浸漬処理)
上記のような調製例38〜63のアボカド処理溶液の試験区を設けたこと以外は、実施例1と同様にアボカド果実(アボカドカット果実)を浸漬処理し、評価した。結果を下記の表11〜表13および
図9〜
図14に示す。
【0081】
【表11】
【0082】
【表12】
【0083】
【表13】
【0084】
アボカド果実は、アボカド処理溶液無添加の場合、24時間後に筋の部分が褐変し、そして96時間後には筋だけでなく、一部褐変部分が広がっていた(調製例38)。
【0085】
L−アスコルビン酸ナトリウム単品を含むアボカド処理溶液では、褐変の抑制は見られなかった(調製例39)。L−アスコルビン酸ナトリウムとα−リポ酸との併用では、α−リポ酸の濃度の向上と共に果実の褐変抑制が見られた(調製例40〜43)。L−アスコルビン酸ナトリウムとコエンザイムQ10との併用では、24時間では果実の褐変の抑制が見られたようであったが、より長期になると褐変が生じた(調製例44〜47)。調製例40〜47においては、果実の褐変抑制が見られたものの、抑制の度合いが十分とはいえず、また果実色自体がやや黄みをおびるものであった。
【0086】
α−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムを併用した場合、α−リポ酸の水溶液濃度0.01%〜0.1%のいずれの場合でも、コエンザイムQ10の水溶液濃度が0.01%〜0.1%であり、L−アスコルビン酸ナトリウムの水溶液濃度を3%とした場合に、24時間後および96時間後の両方ともに、よりよい果実褐変抑制が観察された(調製例48〜63)。特にα−リポ酸の水溶液濃度を0.05%以上とした場合に、α−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムの併用での褐変の抑制が顕著に優れていた(調製例56〜63)。
【0087】
実施例2および3における調製例21〜63の結果からも、α−リポ酸とコエンザイムQ10との併用によるアボカド果実の変色防止効果の向上、およびα−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムの併用による一層優れた変色防止効果が観察された。
【0088】
(調製例64〜68:α−リポ酸:コエンザイムQ10が2:1比率にて濃度を変更した水溶液の調製)
下記の表14に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対しα−リポ酸およびコエンザイムQ10を添加してアボカド処理溶液を調製した(調製例65〜68)。なお、コントロールとして処理溶液無添加区(すなわち、アボカド未処理区)を設けたが、便宜上これを「調製例64」と称することとした。
【0089】
【表14】
【0090】
(調製例69〜76:α−リポ酸とコエンザイムQ10とL−アスコルビン酸ナトリウムとを含む製剤および当該製剤の水溶液の調製)
L−アスコルビン酸ナトリウム、α−リポ酸、コエンザイムQ10および食品素材(イソマルツロース)を下記の表15に示す配合(表中の単位は「重量%」)となるように粉末混合し、製剤A〜Dを得た。
【0091】
【表15】
【0092】
次いで、下記の表16に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対し製剤を溶解して、アボカド処理溶液を得た(調製例69〜76)。
【0093】
【表16】
【0094】
(調製例77〜97:α−リポ酸とコエンザイムQ10とL−アスコルビン酸ナトリウムとを0.01〜1.0:0.005〜0.5:2〜20の比率で含む水溶液の調製)
下記の表17に示す水溶液濃度(表中の単位は「%(w/w)」)となるように、水道水に対しα−リポ酸、コエンザイムQ10およびL−アスコルビン酸ナトリウムを添加してアボカド処理溶液を調製した(調製例78〜97)。なお、コントロールとして処理溶液無添加区(すなわち、アボカド未処理区)を設けたが、便宜上これを「調製例77」と称することとした。
【0095】
【表17】
【0096】
(実施例4:調製例64〜76によるアボカド浸漬処理)
上記のような調製例64〜76のアボカド処理溶液の試験区を設けたこと以外は、実施例1と同様にアボカド果実(アボカドカット果実)を浸漬処理し、評価した。結果を下記の表18〜表19および
図15〜
図17に示す。
【0097】
【表18】
【0098】
【表19】
【0099】
(実施例5:調製例77〜97によるアボカド浸漬処理)
上記のような調製例77〜97のアボカド処理溶液の試験区を設けたこと以外は、実施例1と同様にアボカド果実(アボカドカット果実)を浸漬処理し、評価した。結果を下記の表20〜表22および
図18〜
図22に示す。
【0100】
【表20】
【0101】
【表21】
【0102】
【表22】
【0103】
実施例4および5において、処理溶液無添加区(アボカド未処理区)の調製例64および77以外では、少なくとも24時間後には果実の褐変は抑制されていた。特に、調製例68、70〜72、74〜76、81、85、88、89および92〜97においては、96時間後であっても、褐変の抑制が顕著に優れていた。
【0104】
これらの実施例においても、α−リポ酸とコエンザイムQ10との併用によるアボカド果実の変色防止効果の向上、およびα−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムの併用による一層優れた変色防止効果が観察された。α−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムの併用は、これらの各成分を別々に添加して水溶液を調製した場合および混合して製剤化した場合のいずれも、効果が発揮された。
【0105】
上記の通り、実施例1〜5において、α−リポ酸とコエンザイムQ10との併用、またはα−リポ酸、コエンザイムQ10およびアスコルビン酸ナトリウムの併用により、変色防止されたアボカドカット果実を得ることができた。変色防止されたアボカドカット果実は、各成分を別々に添加して水溶液を調製した場合および混合して製剤化した場合の両場合において得られた。