(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
結着樹脂、着色剤、及び融解温度が90℃以上120℃以下である離型剤を含み、前記結着樹脂を含む海部と、前記離型剤を含む島部と、を持つ海島構造を有し、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が0.05以上0.30以下であり、
下記式(1)で示される前記離型剤を含む島部の偏在度Bの分布の最頻値が0.80以上0.98以下であり、前記偏在度Bの分布の歪度が−1.00以上−0.50以下であり、且つ、
下記の工程a、工程b、工程c、及び工程dを経て得られる、又は、下記の工程A、工程B、及び工程Cを経て得られるトナー粒子を有する、静電荷像現像用トナー。
式(1): 偏在度B=2d/D
(式(1)中、Dはトナーの断面観察におけるトナーの円相当径(μm)を示す。dは、トナーの断面観察におけるトナーの重心から離型剤を含む島部の重心までの距離(μm)を示す。)
工程a:前記結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、及び前記着色剤の粒子が分散された着色剤粒子分散液を混合し、得られた混合分散液中で各粒子を凝集させ、第1凝集粒子を形成する工程、
工程b:前記第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、前記結着樹脂となる第2樹脂粒子及び前記離型剤の粒子が分散された混合分散液を、該混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、前記第1凝集粒子分散液に順次添加して、前記第1凝集粒子の表面に更に前記第2樹脂粒子及び前記離型剤粒子を凝集して、第2凝集粒子を形成する工程
工程c:前記第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を得た後、該第2凝集粒子分散液と、前記結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液と、を更に混合し、前記第2凝集粒子の表面に更に前記第3樹脂粒子を付着するように凝集して、第3凝集粒子を形成する工程
工程d:前記第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して加熱をし、前記第3凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程
工程A:前記結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液、及び前記着色剤の粒子が分散された着色剤粒子分散液を混合し、得られた混合分散液中で、各粒子を凝集させる工程
工程B:前記各粒子の凝集過程で、前記混合分散液に対して、添加速度を次第に速めつつ又は離型剤粒子の濃度を高めながら、前記離型剤の粒子が分散された離型剤粒子分散液を添加し、更に各粒子の凝集を進行させて、凝集粒子を形成する工程
工程C:前記凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0020】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と称する)は、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含み、結着樹脂を含む海部と離型剤を含む島部とを持つ海島構造を有し、且つ、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が0.05以上0.30以下である。
そして、この海島構造において、式(1)で示される離型剤を含む島部の偏在度Bの分布の最頻値は0.75以上1.00以下であり、偏在度Bの分布の歪度は−1.30以上−0.50以下である。
式(1): 偏在度B=2d/D
(式(1)中、Dはトナーの断面観察におけるトナーの円相当径(μm)を示す。dは、トナーの断面観察におけるトナーの重心から離型剤を含む島部の重心までの距離(μm)を示す。)
【0021】
本実施形態に係るトナーは、上記構成により、高速定着時における記録媒体である薄紙の剥離不良を抑制しつつ、画像形成装置内での粉じんの発生量を低減させうる。
その理由は定かではないが、以下に示す理由によると推測される。
【0022】
電子写真法による画像形成には、離型剤を含有するトナーを用いることが知られている。
このようなトナーによれば、定着時に離型剤が染み出すことで、離型剤による離型性が発現し、記録媒体の剥離性が向上する。
離型剤を含有するトナーにおいて、トナーの内部(重心に近い領域)に多くの離型剤が配置されている場合、定着温度が高温になってしまったときの、トナーが過剰に加熱されて定着部材に付着する現象(以下、「ホットオフセット」と称する)は抑制されるものの、高速定着時(例えば、プロセススピード300mm/s以上)では離型性の発現が不十分となり、特に、記録媒体として薄紙(例えば、坪量が50g/m
2以上100g/m
2以下であり、厚みが60μm以上100μm以下であるもの)を用いると、剥離不良が生じることがある。
一方、離型性をより向上させる目的で、定着時により離型剤が染み出し易くするため、トナーの表層部に離型剤を偏在させることが知られている。
しかしながら、トナー表面に露出した離型剤は、定着時の加熱により一部が昇華し、その後、画像形成装置内で冷却されることで固化することで、粉じんとなることがある。この粉じんは、画像形成装置内の汚染へと繋がる。
以上のことから、高速定着時における薄紙の剥離不良を抑制しつつ、画像形成装置内での粉じんの発生量を低減させうるトナーが求められる。
【0023】
ここで、本実施形態における離型剤を含む島部(以下、「離型剤ドメイン」とも称する)の偏在度Bは、トナーの重心から、離型剤ドメインの重心がどれだけ離れているかを示す指標である。この偏在度Bは、値が大きい程、離型剤ドメインがトナー表面近くに存在することを示し、値が小さい程、離型剤ドメインがトナー重心近くに存在することを示す。そして、偏在度Bの分布の最頻値は、トナーの径方向において、離型剤ドメインの存在が最も多い部位を示している。一方、偏在度Bの分布の歪度は、分布の左右対称性を示している。具体的には、偏在度Bの分布の歪度は、最頻値からの分布の裾引きの程度を示している。つまり、偏在度Bの分布の歪度は、離型剤ドメインが、トナーの径方向において、最も多い部位からどの程度の分布で存在しているかを示している。
【0024】
即ち、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値が0.80以上0.98以下の範囲内であるとは、トナーの表層部に離型剤ドメインが最も多く存在していることを示している(
図4参照)。そして、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度が−1.00以上−0.50以下の範囲内にあるとは、離型剤ドメインが、トナー表層部から内部に向かって、勾配を持って分布していることを示している(
図4参照)。
【0025】
このように、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値及び歪度が上記範囲を満たすトナーは、離型剤ドメインの多くが表層部に存在しつつ、徐々に少なくなるといった勾配をもってトナーの表層部から内部に向けて分布しているトナーである。
離型剤ドメインの分布に上記のような勾配を持つトナーでは、トナーの表層部に近い部分に存在する離型剤は定着時の圧力により優先的に染み出し、また、トナーのより内部に存在する離型剤はホットオフセットの抑制に寄与し、また、表層部のものよりも露出し難く、粉じんとはなり難い、といった性質を有する。
【0026】
本実施形態に係るトナーは、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が0.05以上0.30以下である。
つまり、上記のようなトナーはナトリウム量が調整されたものであることになる。トナー中のナトリウム量を調整することで、トナー中のナトリウムと結着樹脂との間の相互作用(具体的には、ナトリウムと結着樹脂が有するナトリウムと相互作用を形成する官能基(例えば、カルボキシル基、スルホニル基等)との間の相互作用)の形成量が制御される。トナー中のナトリウムと結着樹脂との間の相互作用の形成量を調整することで、離型剤の染み出し易さを制御できる。
トナー中のナトリウムと結着樹脂との間の相互作用の形成量が多すぎると、離型剤がトナーの表層部にあっても染み出し難くなり、特に、高速定着時における薄紙の剥離不良が生じてしまうことがある。また、かかる相互作用の形成量が少ないと、離型剤がトナー表面に露出し易くなり、粉じんの発生量が増大することがある。
そこで、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値及び歪度が前記範囲を満たすトナーにおいて、更に、ナトリウム量を上記のような範囲とすることで、離型剤の染み出し易さがより細かく調整されることになり、高速定着時における薄紙の剥離不良を抑制しつつ、画像形成装置内での粉じんの発生量を低減させうると推測される。
【0027】
なお、従来、溶剤中に溶解した結着樹脂と離型剤との親疎水性差を利用し、離型剤の位置を表面付近に配置するトナー(特開2004−145243等)、結着樹脂の極性に近い部位と離型剤の極性に近い部位を併せ持つ偏在制御樹脂を用いた混練粉砕製法により、離型剤の位置を表面付近に配置するトナー(特開2011−158758等)などが知られている。しかし、いずれものトナーも、材料の物性によってトナー内での離型剤の位置を制御しているものであり、トナーの離型剤ドメインの分布に勾配を持たせられない。
また、表面に、内部より少量且つ低融点のワックスを配置したトナー(特開2013−228690号公報)も知られているが、このトナーでは、高速定着時における薄紙の剥離不良の抑制は不十分である。
【0028】
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について説明する。
【0029】
本実施形態に係るトナーは、前記したように、結着樹脂を含む海部と離型剤を含む島部とを持つ海島構造を有する。つまり、トナーは、結着樹脂の連続相中に離型剤が島状に存在する海島構造を有する。
なお、離型剤ドメインは、剥離不良抑制の点から、トナーの中央部(重心部)には存在しないことがよい。
【0030】
海島構造を有するトナーにおいて、離型剤ドメイン(離型剤を含む島部)の偏在度Bの分布の最頻値は、0.80以上1.00以下であり、粉じんの発生量低減及び離型性発現による剥離不良抑制の点から、0.83以上0.97以下が好ましく、0.85以上0.95以下がより好ましい。
特に、トナーの熱保管性の点から、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値は0.98以下が好ましい。
【0031】
離型剤ドメイン(離型剤を含む島部)の偏在度Bの分布の歪度は、−1.00以上−0.50以下であり、ホットオフセットの抑制の点から、−0.97以上−0.60以下が好ましく、−0.95以上−0.65以下がより好ましい。
【0032】
ここで、トナーの海島構造の確認方法について説明する。
トナーの海島構造は、例えば、トナー(トナー粒子)の断面を透過型電子顕微鏡により観察する方法、トナー粒子の断面に四酸化ルテニウムによる染色を行い、走査型電子顕微鏡により観察する方法によって確認する。トナーの断面における離型剤ドメインがより鮮明に観察できる点で、走査型電子顕微鏡により観察する方法が好ましい。走査型電子顕微鏡としては、当業者の間でよく知られた機種であればよく、例えば、日立ハイテク社製SU8020、日本電子社製JSM−7500F等が挙げられる。
具体的な、観察方法は、次の通りである。まず、測定対象となるトナー(トナー粒子)をエポキシ樹脂に包埋した後、エポキシ樹脂を硬化する。ダイヤモンド刃を備えたミクロトームによって、この硬化物を薄片化し、トナーの断面が露出した観察試料を得る。薄片の観察試料に対し、四酸化ルテニウムにより染色を施し、走査型電子顕微鏡によりトナーの断面を観察する。この観察方法によって、トナーの断面には、染色度の違いにより、結着樹脂の連続相中に対し、輝度差(コントラスト)がある離型剤が島状に存在する海島構造が観察される。
【0033】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの測定方法について説明する。
離型剤ドメインの偏在度Bの測定は、次の通り行う。まず、海島構造の確認方法を利用し、トナー(トナー粒子)1個の断面が視野に入る倍率で画像を記録する。記録された画像について、画像解析ソフト(三谷商事社製WinROOF)を用いて、0.010000μm/pixel条件で画像解析を行う。この画像解析により、包埋に用いたエポキシ樹脂とトナーの結着樹脂との輝度差(コントラスト)により、トナーの断面の形状を抽出する。抽出されたトナーの断面の形状に基づいて、投影面積を求める。そして、この投影面積から、円相当径を求める。円相当径は、式:2√(投影面積/π)により算出する。求めた円相当径を、トナーの断面観察におけるトナーの円相当径Dとする。
一方、抽出されたトナーの断面の形状に基づいて、重心位置を求める。続けて、結着樹脂と離型剤の輝度差(コントラスト)により、離型剤ドメインの形状を抽出し、離型剤ドメインの重心位置を求める。この各重心位置は、具体的には、抽出されたトナー、又は、離型剤ドメインの領域に対し、領域内の画素数をn、各画素のxy座標をx
i、y
i(i=1,2,…,n)とし、重心のx座標は各x
i座標値の合計をnで割った値、重心のy座標は各y
i座標値の合計をnで割った値として求める。そして、トナーの断面の重心位置と離型剤ドメインの重心位置との距離を求める。求めた距離を、トナーの断面観察におけるトナーの重心から離型剤を含む島部の重心までの距離dとする。
最後に、各円相当径D及び距離dから、式(1):偏在度B=2d/Dにより、離型剤ドメインの偏在度Bを求める。そして、一個のトナー(トナー粒子)の断面に存在する複数の離型剤ドメインについて、各々、上記同様の操作を行って、離型剤ドメインの偏在度Bを求める。
【0034】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値の算出方法について説明する。
まず、既述の離型剤ドメインの偏在度Bの測定をトナー(トナー粒子)200個について行う。得られた各離型剤ドメインの偏在度Bのデータを、0から0.01刻みのデータ区間で統計解析処理を行い、偏在度Bの分布を求める。得られた分布の最頻値、すなわち、離型剤ドメインの偏在度Bの分布で最も多く現れるデータ区間(例えば、
図4では、個数頻度が最も大きな値を示すデータ区間)の値を求める。そして、このデータ区間の値を、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値とする。
【0035】
次に、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度の算出方法について説明する。
まず、既述通り、離型剤ドメインの偏在度Bの分布を求める。求めた下記式に基づいて、偏在度Bの分布の歪度を求める。なお、下記式において、歪度をSk、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ数をn、各離型剤ドメインの偏在度Bのデータの値をx
i(i=1,2,…,n)、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ全体の平均値をx(上方にバーを付したx)、離型剤ドメインの偏在度Bのデータ全体の標準偏差をsとする。
【0037】
なお、本実施形態に係るトナーにおいて、離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性を満たす方法については、トナーの製造方法で説明する。
【0038】
本実施形態に係るトナーは、蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度が0.05以上0.30以下であり、粉じんの発生量低減及び離型性発現による剥離不良抑制の点から、好ましくは0.07以上0.27以下であり、より好ましくは0.10以上0.25以下である。
ナトリウムのNet強度は、以下のようにして測定される。
まず、測定前処理として、トナー0.12gを加圧成型器で6t、1分間の加圧条件下で圧縮成型する。そして、圧縮成型された試料を、(株)島津製作所の蛍光X線(XRF−1500)を使用し、管電圧40KV、管電流70mAの測定条件で、全元素分析によりナトリウムのNet強度の測定を行う。
【0039】
以下、本実施形態に係るトナーの構成成分について説明する。
本実施形態に係るトナーは、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含む。より具体的には、本実施形態に係るトナーは、結着樹脂、着色剤、及び離型剤を含み、前記した離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性を満たす海島構造を有するトナー粒子のみから構成されていてもよいし、かかるトナー粒子の他、トナー粒子の表面に付着する外添剤を更に有していてもよい。
【0040】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
結着樹脂としては、ナトリウムと相互作用(イオン結合及び配位結合)を形成し易いといった点から、カルボキシル基、スルホニル基等を有するものが好ましく、特に、カルボキシル基を有するものが好ましい。
カルボキシル基を有する結着樹脂としては、トナーに好適であって、合成の過程にてカルボキシル基が導入され易い、スチレンアクリル樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0042】
ここで、スチレンアクリル樹脂は、スチレン系単量体と(メタ)アクリル系単量体とを少なくとも共重合した共重合体である。スチレン系単量体として、例えば、4−カルボキシスチレンを用いる、また、(メタ)アクリル系単量体として、メタ(アクリル酸)や、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル等の(メタ)アクリル酸カルボキシ置換アルキルエステルを用いることで、カルボキシル基を有するスチレンアクリル樹脂が得られる。
【0043】
続いて、結着樹脂として好適な、ポリエステル樹脂について説明する。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0044】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。このように、多価カルボン酸を用いていることで、得られた縮重合体の末端にカルボキシル基が残存するポリエステル樹脂が得られる。また、3価以上の多価カルボン酸を用い、カルボキシル基が残存するように合成することで、主鎖にカルボキシル基を有するポリエステル樹脂が得られる。
なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0045】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0048】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0049】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0050】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下が更に好ましい。
【0051】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0053】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0054】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0055】
これらの中でも、離型剤としては、炭化水素系ワックス(炭化水素を骨格として有するワックス)が好ましい。炭化水素系ワックスは、離型剤ドメインを形成し易く、また、定着時に速やかにトナー(トナー粒子)表面に染み出し易いため、好適である。
【0056】
離型剤の融解温度は、粉じんの発生量低減及び剥離不良抑制の点から、90℃以上120℃以下であり、90℃以上115℃以下が好ましく、90℃以上110℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0057】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0058】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0059】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂を含む海部と離型剤を含む島部とを持つ海島構造を有する芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0060】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0061】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0062】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0063】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0064】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0065】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0066】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0067】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0068】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0069】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0070】
特に、上述した離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性を満たすトナー(トナー粒子)を得る点から、トナー粒子は、次に示す凝集合一法により製造することがよい。
以下、本実施形態におけるトナー粒子の製造方法の一例について説明するが、この方法に限定されるものではない。
【0071】
具体的には、各分散液を準備する工程(分散液準備工程)と、
結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、及び着色剤の粒子(以下「着色剤粒子」とも称する)が分散された着色剤粒子分散液を混合し、得られた混合分散液中で各粒子を凝集させ、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、結着樹脂となる第2樹脂粒子及び離型剤の粒子(以下「離型剤粒子」とも称する)が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加して、第1凝集粒子の表面に更に第2樹脂粒子及び離型剤粒子を凝集して、第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を得た後、第2凝集粒子分散液と、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液と、を更に混合し、第2凝集粒子の表面に更に第3樹脂粒子を付着するように凝集して、第3凝集粒子を形成する工程(第3凝集粒子形成工程)と、
第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して加熱をし、第3凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、
形成されたトナー粒子を洗浄する工程(洗浄工程)と、
を経て、トナー粒子を製造することが好ましい。
【0072】
なお、トナー粒子の製造方法は、上記に限られない。例えば、樹脂粒子分散液、及び着色剤粒子分散液を混合し、得られた混合分散液中で、各粒子を凝集させる。次に、その凝集過程で、混合分散液に対して、添加速度を次第に速めつつ又は離型剤粒子の濃度を高めながら、離型剤粒子分散液を添加し、更に各粒子の凝集を進行させて、凝集粒子を形成する。そして、その凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成してもよい。
【0073】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0074】
−各分散液準備工程−
まず、凝集合一法で使用する各分散液と準備する。具体的には、結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、結着樹脂となる第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液、及び離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
なお、各分散液準備工程において、第1樹脂粒子、第2樹脂粒子、及び第3樹脂粒子を「樹脂粒子」と称して説明する。
【0075】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0076】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0079】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下が更に好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0080】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0081】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0082】
−第1凝集粒子形成工程−
次に、第1樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、を混合する。
そして、この混合分散液中で、第1樹脂粒子と着色剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径を持つ、第1樹脂粒子と着色剤粒子とを含む第1凝集粒子を形成する。
【0083】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度に近い温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0084】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体若しくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0085】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、第1樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0086】
−第2凝集粒子形成工程−
次に、第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、結着樹脂となる第2樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0087】
そして、第1凝集粒子、第2樹脂粒子、及び離型剤粒子が分散された分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子を凝集する。具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第2樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された混合分散液を添加し、この分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
【0088】
この工程を経て、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子が付着した凝集粒子を形成する。つまり、第1凝集粒子の表面に、第2樹脂粒子及び離型剤粒子の凝集物が付着した第2凝集粒子を形成する。このとき、第2樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加しているため、第1凝集粒子の表面には、粒子径方向外側に向かって、離型剤粒子の濃度(存在率)が次第に大きくなって、第2樹脂粒子及び離型剤粒子の凝集物が付着する。
【0089】
ここで、混合分散液の添加方法としては、パワーフィード添加法を利用することがよい。このパワーフィード添加法を利用することで、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、混合分散液を第1凝集粒子分散液に添加しうる。
【0090】
以下、図を参照しつつ、パワーフィード添加法を利用した混合分散液の添加方法について説明する。
【0091】
図3には、パワーフィード添加法に用いる装置を示している。なお、
図3中、装置の駆動前(即ち、第1送液ポンプ341及び第2送液ポンプ342の駆動前)には、311は、第1凝集粒子分散液を示し、312は、第2樹脂粒子分散液を示し、313は、離型剤粒子分散液を示す。
【0092】
図3に示す装置は、装置の駆動前の段階で、第1凝集粒子が分散されて第1凝集粒子分散液を収容している第1収容槽321と、第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を収容している第2収容槽322と、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を収容している第3収容槽323と、を有している。
【0093】
第1収容槽321と第2収容槽322とは、第1送液管331で連結されている。第1送液管331の経路途中には、第1送液ポンプ341が介在している。第1送液ポンプ341の駆動により、第2収容槽322に収容された分散液は、第1送液管331を通じて、第1収容槽321へ送液される。
第1収容槽321には、第1撹拌装置351が配置されている。第1撹拌装置351の駆動により、第2収容槽322から送液された分散液は、第1収容槽321に収容された分散液と共に、第1収容槽321において撹拌及び混合される。
【0094】
第2収容槽322と第3収容槽323とは、第2送液管332で連結されている。第2送液管332の経路途中には、第2送液ポンプ342が介在している。第2送液ポンプ342の駆動により、第3収容槽323に収容された分散液は、第2送液管332を通じて、第2収容槽322へ送液される。
第2収容槽322には、第2撹拌装置352が配置されている。第2撹拌装置352の駆動により、第3収容槽323から送液された分散液は、第2収容槽322に収容された分散液と共に、第2収容槽322において撹拌及び混合される。
【0095】
続いて、
図3に示す装置の動作について説明する。
図3に示す装置では、まず、第1収容槽321において、第1凝集粒子形成工程を実施して、第1凝集粒子分散液を作製する。これにより、第1収容槽321に第1凝集粒子分散液を収容することとなる。
なお、別の槽で、第1凝集粒子形成工程を実施して、第1凝集粒子分散液を作製した後、第1凝集粒子分散液を第1収容槽321に収容してもよい。
そして、第2収容槽322に離型剤粒子分散液を、第3収容槽323に第2樹脂粒子分散液を、それぞれ収容する。
【0096】
この状態で、第1送液ポンプ341及び第2送液ポンプ342を駆動する。
この駆動により、第2収容槽322に収容された分散液は、第1収容槽321へ送液される。そして、第1撹拌装置351の駆動により、第1収容槽321中の各分散液は撹拌及び混合される。
一方、第3収容槽323に収容された離型剤粒子分散液は、第2収容槽322へ送液される。そして、第2撹拌装置352の駆動により、第2収容槽322中の各分散液は撹拌及び混合される。
【0097】
このとき、第2収容槽322には、離型剤粒子分散液が順次送液され、第2収容槽322中の離型剤粒子の濃度が次第に高まってゆく。このため、第2収容槽322には、第2樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された混合分散液が収容されることになり、この混合分散液が第1収容槽321へと送液されて、第1凝集粒子分散液と混合されていく。
以上のように、この混合分散液の送液は、混合分散液中の離型剤粒子分散液の濃度が高まりつつ、しかも連続的に行われる。
【0098】
このように、パワーフィード添加法を利用することにより、第1凝集粒子分散液に、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第2樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された混合分散液を添加することができる。
そして、パワーフィード添加法において、第2収容槽322及び第3収容槽323に収容された各分散液の送液開始及び終了時期並びに送液速度を調整することにより、トナーの離型剤ドメインの分布特性が調整される。また、パワーフィード添加法において、第2収容槽322及び第3収容槽323に収容された各分散液の送液中に、送液速度を調整することによっても、トナーの離型剤ドメインの分布特性が調整される。
【0099】
具体的には、例えば、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値は、第3収容槽323から第2収容槽322へと離型剤粒子分散液が送液し終わる時期によって調整される。より具体的には、例えば、第2収容槽322から第1収容槽321への送液が終わる前に、第3収容槽323から第2収容槽322への離型剤粒子分散液の送液が終わると、その時点以上には、第2収容槽322の混合分散液中の離型剤粒子の濃度が上昇しない。これにより、第3収容槽323から第2収容槽322への離型剤粒子分散液の送液が終わる時期を早めることで、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値は、小さくなる。
【0100】
また、例えば、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度は、第2収容槽322及び第3収容槽323から各分散液の送液を開始する時期及び第2収容槽322から第1収容槽321に分散液を送液する送液速度によって調整される。より具体的には、例えば、第3収容槽323からの離型剤粒子分散液の送液開始時期を、第2収容槽322からの分散液の送液開始時期よりも早め、第2収容槽322からの分散液の送液速度を低下すると、形成される凝集粒子において、粒子のより内側から外側まで離型剤粒子が配置された状態となる。これにより、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の歪度は、大きくなる。
【0101】
なお、以上説明したパワーフィード添加法は、上記手法に限定されるわけではない。例えば、1)別途、第2樹脂粒子分散液を収容した収容槽と、第2樹脂粒子及び離型剤粒子分散液が分散された混合分散液を収容槽とを設け、送液速度を変えつつ各収容槽から各分散液を第1収容槽321へ送液する方法、別途、離型剤粒子分散液を収容した収容槽と、第2樹脂粒子及び離型剤粒子分散液が分散された混合分散液を収容した収容槽とを設け、送液速度を変えつつ各収容槽から各分散液を第1収容槽321へ送液する方法など、種々の方法を採用してもよい。
【0102】
以上により、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
【0103】
−第3凝集粒子形成工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を得た後、第2凝集粒子分散液と、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液と、を更に混合する。
なお、第3樹脂粒子は第1又は第2樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0104】
そして、第2凝集粒子、及び第3樹脂粒子が分散された分散液中で、第2凝集粒子の表面に第3樹脂粒子を凝集する。具体的には、例えば、第2凝集粒子形成工程において、第2凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第2凝集粒子分散液に、第3樹脂粒子分散液を添加し、この分散液に対して、第3樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
【0105】
そして、分散液のpHを、例えば7.0以上9.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性に影響を及ぼすことから、多め又は濃度が高めのpH調整剤を用い、凝集の進行の停止を素早く行うことが好ましい。
ここで、pH調整剤としては、水酸化ナトリウム水溶液が好適に用いられる。
【0106】
−融合・合一工程−
次に、第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して、例えば、第1、第2及び第3樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1、第2及び第3樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第3凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0107】
−洗浄工程−
続いて、融合・合一工程を経て形成されたトナー粒子を洗浄する。
この洗浄工程にて、過剰に含まれるナトリウムを低減させうる。具体的には、第2凝集粒子形成工程にてpH調整剤(水酸化ナトリウム水溶液)により導入されたナトリウムを、この洗浄工程にて、トナー粒子から洗浄することで除去する。
【0108】
トナー粒子の洗浄は、以下のようにして行えばよい。
即ち、例えば、融合合一工程により得られたトナー粒子分散液を濾過し、濾過で得られた固形分を30℃のイオン交換水に分散して洗浄した後に再び濾過する、といった工程を5回繰り返す。
また、必要に応じて、固形分をイオン交換水に分散した後に、0.3Nの硝酸水溶液を加えて酸洗浄を行ってもよい。
【0109】
トナー粒子の製造方法においては、洗浄工程終了後であって、分散液中に分散したトナー粒子については、必要に応じて、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得てもよい。
また、固液分離工程は、特に制限はないが、例えば、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を採用してもよい。
乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を採用してもよい。
【0110】
以上の工程を経ることで、トナー粒子が得られる。
そして、以上の工程により、得られるトナー粒子(トナー)において、離型剤ドメインの偏在度Bの分布特性が上記範囲となる。
【0111】
なお、上記のトナー粒子の製造方法では、洗浄工程によりトナー(トナー粒子)中のナトリウム量を調整(低減)したが、前記第3凝集粒子形成工程にて用いた、凝集の進行を停止させるためのpH調整剤の種類等を変更させて、ナトリウム量を調整してもよい。
即ち、第3凝集粒子形成工程にて、凝集の進行を停止させるために、ナトリウムを含まないpH調整剤を用いる、又は、水酸化ナトリウム水溶液とナトリウムを含まないpH調整剤とを併用して、目的とするトナー中のナトリウム量を制御してもよい。
【0112】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0113】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0114】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0115】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0116】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0117】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0118】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0119】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0120】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0121】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0122】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0123】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0124】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0125】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0126】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0127】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0128】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0129】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0130】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0131】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0132】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0133】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0134】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0135】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性を更に向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
特に、本実施形態に係るトナーは、前記したように、高速定着時における薄紙の剥離不良が抑制しうるため、記録紙Pとして薄紙(坪量50g/m
2以上100g/m
2以下であり、厚みが60μm以上100μm以下)を用いてもよい。
【0136】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0137】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0138】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0139】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0140】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0141】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0142】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0143】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」とは、特に断りがない限り、「質量部」を意味する。
【0144】
<樹脂粒子分散液の調製>
〔樹脂粒子分散液(1)の調製〕
・テレフタル酸 :30モル部
・フマル酸 :70モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物 :5モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物 :95モル部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、及び精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間を要して温度を210℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。こうして、重量平均分子量18,500、酸価14mgKOH/g、ガラス転移温度59℃のポリエステル樹脂(1)を合成した。
【0145】
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2−ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂(1)100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間攪拌した。
次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を室温(20℃乃至25℃)に戻し、攪拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2−ブタノールを1,000ppm以下まで低減させ、体積平均粒径200nmの樹脂粒子が分散した樹脂粒子分散液を得た。該樹脂粒子分散液にイオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、樹脂粒子分散液(1)とした。
【0146】
<着色剤粒子分散液の調製>
〔着色剤粒子分散液(1)の調製〕
・シアン顔料 C.I.Pigment Blue 15:3 :70部
(銅フタロシアニン DIC社製、商品名:FASTOGEN BLUE LA5380)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) :5部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を混合し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて10分間分散した。分散液中の固形分量が20質量%となるようイオン交換水を加え、体積平均粒径190nmの着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液(1)を得た。
【0147】
<離型剤粒子分散液の調製>
〔離型剤粒子分散液(1)の調製〕
・フィッシャートロプシュワックス :100部
(日本精鑞社製、FNP−0090、融解温度:90℃)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) :1部
・イオン交換水 :350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径205nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(1)(固形分量20質量%)を得た。
【0148】
〔離型剤粒子分散液(2)の調製〕
・ポリエチレンワックス :100部
(ベイカーペトロライト社製、ポリワックス725、融解温度:104℃)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) :1部
・イオン交換水 :350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径207nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(2)(固形分量20質量%)を得た。
【0149】
〔離型剤粒子分散液(3)の調製〕
・フィッシャートロプシュワックス :100部
(日本精鑞社製、HNP−51、融解温度:78℃)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) :1部
・イオン交換水 :350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径201nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(3)(固形分量20質量%)を得た。
【0150】
〔離型剤粒子分散液(4)の調製〕
・パラフィンワックス :100部
(三井化学社製、ハイワックス200P、融解温度:122℃)
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK) :1部
・イオン交換水 :350部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(4)(固形分量20質量%)を得た。
【0151】
<実施例1>
〔トナー粒子の調製〕
丸型ステンレス製フラスコと容器AとをチューブポンプAで接続し、チューブポンプAの駆動により容器Aに収容した収容液をフラスコへ送液し、容器Aと容器BとをチューブポンプBで接続し、チューブポンプBの駆動により容器Bに収容した収容液を容器Aへ送液する装置(
図3参照)を準備した。そして、この装置を用いて、以下の操作を実施した。
【0152】
・樹脂粒子分散液(1) :500部
・着色剤粒子分散液(1) :40部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower) :2部
上記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液30部を添加した。続いて、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で1℃/30分のペースで温度を上げながら、凝集粒子の粒径を成長させた。
一方、ポリエステル製ボトルの容器Aに樹脂粒子分散液(1)を150部入れ、同じく容器Bに離型剤粒子分散液(1)を25部入れた。次に、チューブポンプAの送液速度を0.72部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.14部/1分に設定し、凝集粒子形成中の丸型ステンレス製フラスコ内の温度が38.0℃に到達した時点からチューブポンプA及びBを駆動させ、各分散液の送液を開始した。これにより、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、樹脂粒子及び離型剤粒子が分散された混合分散液を容器Aから凝集粒子形成中の丸型ステンレス製フラスコへ送液した。
そして、フラスコへの各分散液の送液が完了し、フラスコ内の温度が48℃になった時点から30分保持し、第2凝集粒子を形成させた。
【0153】
その後、樹脂粒子分散液(1)50部を緩やかに追加して1時間保持し、第3凝集粒子を形成させた。その後、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを7.5に調整した後、攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。その後、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、濾過を行った。そして、「濾過で得られた固形分を30℃のイオン交換水に分散して洗浄した後に再び濾過する」といった工程を5回繰り返して、固形分を洗浄し、その後乾燥させることにより、体積平均粒径6.0μmのトナー粒子(1)を得た。
【0154】
〔トナーの調製〕
トナー粒子(1)100部と、ジメチルシリコーンオイル処理シリカ粒子(日本アエロジル社製RY200)0.7部と、をヘンシェルミキサーを用いて混合し、トナー(1)を得た。
【0155】
〔現像剤の調製〕
・フェライト粒子(体積平均粒径50μm) :100部
・トルエン :14部
・スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比15/85) :3部
・カーボンブラック :0.2部
フェライト粒子を除く上記成分をサンドミルにて分散して分散液を調製し、この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリアを得た。
そして、上記キャリア100部に対して、トナー(1)を8部混合し、現像剤(1)を得た。
【0156】
<実施例2>
トナー粒子(1)の作製において、第3凝集粒子を形成させた後に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.0に調整した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(2)を得た。
得られたトナー粒子(2)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(2)を用いて、実施例1と同様にトナー(2)及び現像剤(2)を得た。
【0157】
<実施例3>
トナー粒子(1)の作製において、「濾過で得られた固形分を30℃のイオン交換水に分散して洗浄した後に再び濾過する」といった工程を5回繰り返し、続いて、固形分をイオン交換水に分散した後に0.3Nの硝酸水溶液を加えて酸洗浄を1回した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(3)を得た。
得られたトナー粒子(3)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(3)を用いて、実施例1と同様にトナー(3)及び現像剤(3)を得た。
【0158】
<実施例4>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.65部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.12部/1分に設定し、フラスコ内の温度が35.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(4)を得た。
得られたトナー粒子(4)は体積平均粒子5.9μmであった。そして、トナー粒子(4)を用いて、実施例1と同様にトナー(4)及び現像剤(4)を得た。
【0159】
<実施例5>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.82部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.16部/1分に設定し、フラスコ内の温度が37.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(5)を得た。
得られたトナー粒子(5)は体積平均粒子6.2μmであった。そして、トナー粒子(5)を用いて、実施例1と同様にトナー(5)及び現像剤(5)を得た。
【0160】
<実施例6>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.62部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.12部/1分に設定し、フラスコ内の温度が39.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(6)を得た。
得られたトナー粒子(6)は体積平均粒子6.1μmであった。そして、トナー粒子(6)を用いて、実施例1と同様にトナー(6)及び現像剤(6)を得た。
【0161】
<実施例7>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.82部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.16部/1分に設定し、フラスコ内の温度が41.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(7)を得た。
得られたトナー粒子(7)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(7)を用いて、実施例1と同様にトナー(7)及び現像剤(7)を得た。
【0162】
<実施例8>
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)の代わりに離型剤粒子分散液(2)を使用した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(8)を得た。
得られたトナー粒子(8)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(8)を用いて、実施例1と同様にトナー(8)及び現像剤(8)を得た。
【0163】
<実施例9>
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)の代わりに離型剤粒子分散液(3)を使用した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(9)を得た。
得られたトナー粒子(9)は体積平均粒子6.2μmであった。そして、トナー粒子(9)を用いて、実施例1と同様にトナー(9)及び現像剤(9)を得た。
【0164】
<実施例10>
トナー粒子(1)の作製において、離型剤粒子分散液(1)の代わりに離型剤粒子分散液(4)を使用した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(10)を得た。
得られたトナー粒子(10)は体積平均粒子5.9μmであった。そして、トナー粒子(10)を用いて、実施例1と同様にトナー(10)及び現像剤(10)を得た。
【0165】
<比較例1>
トナー粒子(1)の作製において、第3凝集粒子を形成させた後に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.0に調整した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C1)を得た。
得られたトナー粒子(C1)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(C1)を用いて、実施例1と同様にトナー(C1)及び現像剤(C1)を得た。
【0166】
<比較例2>
トナー粒子(1)の作製において、「濾過で得られた固形分を30℃のイオン交換水に分散して洗浄した後に再び濾過する」といった工程を5回繰り返して、続いて、固形分をイオン交換水に分散した後に0.3Nの硝酸水溶液を加えて酸洗浄を10回繰り返した以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C2)を得た。
得られたトナー粒子(C2)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(C2)を用いて、実施例1と同様にトナー(C2)及び現像剤(C2)を得た。
【0167】
<比較例3>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.88部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.18部/1分に設定し、フラスコ内の温度が42.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C3)を得た。
得られたトナー粒子(C3)は体積平均粒子5.9μmであった。そして、トナー粒子(C3)を用いて、実施例1と同様にトナー(C3)及び現像剤(C3)を得た。
【0168】
<比較例4>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.57部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が31.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C4)を得た。
得られたトナー粒子(C4)は体積平均粒子5.8μmであった。そして、トナー粒子(C4)を用いて、実施例1と同様にトナー(C4)及び現像剤(C4)を得た。
【0169】
<比較例5>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.84部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.17部/1分に設定し、フラスコ内の温度が42.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C5)を得た。
得られたトナー粒子(C5)は体積平均粒子6.1μmであった。そして、トナー粒子(C5)を用いて、実施例1と同様にトナー(C5)及び現像剤(C5)を得た。
【0170】
<比較例6>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.60部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が31.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C6)を得た。
得られたトナー粒子(C6)は体積平均粒子6.1μmであった。そして、トナー粒子(C6)を用いて、実施例1と同様にトナー(C6)及び現像剤(C6)を得た。
【0171】
<比較例7>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.57部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.11部/1分に設定し、フラスコ内の温度が34.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C7)を得た。
得られたトナー粒子(C7)は体積平均粒子5.9μmであった。そして、トナー粒子(C7)を用いて、実施例1と同様にトナー(C7)及び現像剤(C7)を得た。
【0172】
<比較例8>
トナー粒子(1)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.88部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.18部/1分に設定し、フラスコ内の温度が41.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、実施例1と同様にしてトナー粒子(C8)を得た。
得られたトナー粒子(C8)は体積平均粒子6.0μmであった。そして、トナー粒子(C8)を用いて、実施例1と同様にトナー(C8)及び現像剤(C8)を得た。
【0173】
<各種測定>
各例で得られた現像剤のトナーについて、離型剤ドメインの偏在度Bの分布の最頻値、及び歪度を既述の方法に従って測定した。
また、各例で得られた現像剤のトナーの蛍光X線分析により測定されるナトリウムのNet強度についても、既述の方法に従って測定した。
これらの結果を表1に示す。
【0174】
<評価>
各例で得られた現像剤を用いて、次の評価を行った。結果を表1に示す。
【0175】
〔粉じんの発生量の評価〕
以下の作業、及び画像形成は、温度25℃/湿度60%の環境下で行った。
富士ゼロックス社製700 Digital Color Press改造機(シアン用の現像機以外は作動しないように改造した装置)を用意し、現像剤を現像器に入れ、補給トナー(現像剤に含まれるトナーと同じトナー)をトナーカートリッジに入れた。
薄紙(富士ゼロックス社製SP紙(坪量:60g/m
2、紙厚:81μm)に対して、印字面積80%の画像を形成し、定着温度を180℃に、プロセススピードを320mm/秒に設定し、60分間連続出力した。
連続出力前に対する連続出力後の改造機の排気フィルターの重量増加分を粉じんの発生量とし、以下の基準にて評価した。
−粉じんの発生量の評価基準−
A :重量増加分が1.0mg未満
B :重量増加分が1.0mg以上2.5mg未満
C :重量増加分が2.5mg以上4.0mg未満
D :重量増加分が4.0mg以上
【0176】
〔剥離性の評価〕
以下の作業、及び画像形成は、温度25℃/湿度60%の環境下で行った。
富士ゼロックス社製700 Digital Color Press改造機(用紙の端部まで未定着画像を出力できるように改造した装置)を用意し、現像剤を現像器に入れ、補給トナー(現像剤に含まれるトナーと同じトナー)をトナーカートリッジに入れた。
薄紙(富士ゼロックス社製SP紙(坪量:60g/m
2、紙厚:81μm))に対して、先端余白のない全面ベタ画像を形成し、定着温度を180℃に、プロセススピードを320mm/秒に設定し、100枚連続出力した。
得られた100枚目の画像について用紙先端の状態を観察し、下記基準で評価した。
−剥離性の評価−
A :剥離不良は未発生、用紙先端の状態も良好。
B :剥離不良は未発生、用紙先端がわずかにカールしている。
C :剥離不良による画像先端部の荒れが発生。
D :剥離できず、用紙巻き付きが発生。
【0177】
【表1】
【0178】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、粉じんの発生量と剥離性との評価について共に良好な結果が得られたことがわかる。