(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記課題を解決するためになされた本発明は、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aと、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる繊維Bとを含み、繊維Aの数平均繊維長が6〜50mm、繊維Bの数平均繊維長が1〜10mmであり、繊維Bの数平均繊維長が繊維Aの数平均繊維長未満である不連続繊維マットに、マトリックス樹脂を含浸、固化したスタンパブル基材である。上記繊維構成にすることにより、繊維同士および繊維と繊維束が接する交絡点数を減少させることができる。
【0015】
本発明において、不連続繊維マットを構成する繊維Aは、単繊維が100本以上束になった繊維束として構成されている。繊維Aがこの繊維束形態を有すると、繊維の交絡点数を減少させることができるため、流動性を向上させることができる。繊維束を構成する単繊維数が100本未満になると、後述する繊維Bとの差異が見出しにくくなり、単繊維レベルに高分散した不連続繊維マットに対する見かけの繊維数減少効果が少なく、スタンピング成形時の流動性が低下する場合がある。繊維Aの単繊維数の上限は、繊維Aを構成する強化繊維束に含まれる単糸数に依存するが、後述するように48,000本程度である。より好ましくは24,000本、更に好ましくは12,000本である。
【0016】
また、繊維Bは、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる形態を有することにより、スタンパブル基材やスタンピング成形品における機械特性を向上させることができる。
【0017】
さらに、繊維Aの数平均繊維長を6〜50mm、繊維Bの数平均繊維長を1〜10mmとすることにより、繊維B同士、または繊維Aと繊維Bとの交絡部位を減少させ、成形流動時の負荷抵抗を下げることができる。さらに、不連続繊維マット内に繊維Bと繊維Aとが混在することにより、スタンパブル基材の繊維体積含有率を高くすることができ、優れた機械特性を発揮することができる。
【0018】
繊維Aの数平均繊維長が50mmよりも長いと、不連続繊維マットに占める繊維束の束数が少なくなり、スタンピング成形品の異方性が大きくなる傾向になる。一方、数平均繊維長が6mm未満では応力伝達が悪くなり機械特性が低下する場合がある。
【0019】
また、繊維Bの数平均繊維長が10mmを超えると、単繊維間又は繊維束間での交絡部位が多くなり、スタンピング成形時の流動性低下を生じる場合がある。また1mmよりも短いとクッラクが進展しやすくなるため、スタンパブル基材やスタンピング成形品の機械特性を低下させる場合がある。
【0020】
ここで、繊維Bの数平均繊維長を、繊維Aの数平均繊維長未満とすることにより、スタンパブル基材としての機械特性を保持したまま、流動性を向上させることができる。これは、不連続繊維マットを構成する繊維束の数平均繊維長が、マトリックス樹脂を含浸させたスタンパブル基材をスタンピング成形する際の流動性と機械特性に影響するからである。すなわち、スタンパブル基材に繊維Bを存在させると、繊維Bを構成する単繊維間または繊維束間に形成される交絡部位が増加するため、成形時における流動時の負荷抵抗の因子となる。そこで、繊維Bの数平均繊維長を繊維Aの数平均繊維長未満とすることで、単繊維間または繊維束間に存在する交絡部位を減少させることができ、その結果、成形流動時の負荷抵抗を下げることができる。同時に繊維Aを一定量含有させることにより、成形流動性が優れ、成形性を良くする効果が得られる。また、繊維Bの繊維長を短くした細い繊維束を含有させることにより、成形物の引張り強度と強化繊維の強度の比である成形品の強度発現率に優れ、良好な機械特性を保持することができる。ここで、繊維間に形成される交絡部位とは、基材厚み方向を視点としたとき2本以上の繊維が0°<θ<180°の範囲の角度を持って接触し交差した部位のことである。
【0021】
ここで、本発明に用いる繊維A、繊維Bは、スタンピング成形品が発現する機械特性を満足できる強化繊維であることが好ましく、具体的には炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維などが使用できる。この中でも、特に炭素繊維がスタンパブル基材やスタンピング成形品において強度、剛性など機械特性の観点から好ましい。
【0022】
本発明に使用できる炭素繊維としては、特に限定されないが、高強度、高弾性率炭素繊維が使用でき、これらは1種または2種以上を併用してもよい。中でも、PAN系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が挙げられる。得られるスタンピング成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。
【0023】
炭素繊維の密度は、1.65〜1.95g/cm
3のものが好ましく、さらには1.7〜1.85g/cm
3のものがより好ましい。密度が大き過ぎると、得られる炭素繊維強化プラスチックの軽量性能に劣り、小さ過ぎると、得られる炭素繊維強化プラスチックの機械特性が低くなるおそれがある。
【0024】
また、炭素繊維は生産性の観点から、単繊維が収束した繊維束の状態であることが好ましく、繊維束中の単糸数が多いものが好ましい。炭素繊維束とした場合の単糸数には、1,000〜100,000本の範囲内で使用することができ、とりわけ1,000〜48,000本の範囲内で使用することが好ましい。以下、不連続繊維マットを構成する繊維A、繊維Bを総称して「不連続繊維集合体」ということがある。
【0025】
また、本発明において、不連続繊維マットに含まれる全炭素繊維に対して、繊維Aの重量割合は30〜90重量%であることが好ましい。スタンパブル基材やスタンピング成形品において繊維Aは流動性、繊維Bは機械特性に寄与する要素であり、不連続繊維マットにおけるこれらの重量割合を特定の範囲内とすることにより、成形流動性と機械特性の特性バランスを取ることができる。繊維全量に対する繊維Aの重量割合は、好ましくは35〜70重量%、より好ましくは40〜60重量%、さらに好ましくは45〜50重量%である。繊維Aの割合が30重量%未満では、繊維Bを構成する単繊維間又は繊維束間での絡み合いが強くなり、成形時の流動性が低下するおそれがある。また90重量%を超えると、不連続繊維マット中の繊維同士の拘束力が弱まり、スタンピング成形品中に繊維の偏りが生じやすくスタンピング成形品の機械特性が低下するおそれがある。
【0026】
また、本発明において、不連続繊維マットを構成する不連続繊維集合体は、分散された単繊維から、48,000本までの単繊維が束になった繊維束に含まれる単繊維本数に分布を持つ繊維束を複数有することが好ましい。1つの繊維束内の単繊維数が48,000本を超えると繊維束の開繊が悪くなり、物性のばらつきが大きくなるおそれがある。繊維Aを構成する各繊維束の単繊維数は、100〜48,000本が好ましく、100〜24,000本がより好ましく、500〜1,000本が更に好ましい。単繊維数の分布(ばらつき)は特に制限されるものではなく、特定の単繊維数を中心にピークを集めたり、逆にピークができないように平準な分布とすることもできる。
【0027】
また、本発明において、不連続繊維マットを構成する不連続繊維集合体に、熱可塑性樹脂繊維が含有されることが好ましい。
【0028】
後述するように、不連続繊維マットは、開繊手段により開繊・配向させて得られるものである。炭素繊維等の不連続繊維のみから構成される不連続繊維マットの場合のうち、特に炭素繊維は剛直で脆いため、カーディングやエアレイド等の開繊工程において絡まりにくく折れやすい。そのため、炭素繊維を開繊工程に直接適用させると、切れやすいため繊維長が短くなったり、炭素繊維が不連続繊維マットから脱落しやすかったりする場合がある。そこで、柔軟で折れにくく、絡みやすい熱可塑性樹脂繊維を含ませることにより、等方性が高い不連続繊維マットを形成することができる。
【0029】
本発明において、不連続繊維マットを構成する不連続繊維集合体の中に熱可塑性樹脂繊維を含ませる場合には、熱可塑性樹脂繊維を含ませた後における不連続繊維集合体の含有率を20〜95重量%とすることが好ましい。より好ましくは50〜95重量%、さらに好ましくは70〜95重量%である。一定量の熱可塑性樹脂繊維を添加することにより、等方性の高い不連続繊維マットを得ることができる。熱可塑性樹脂繊維の添加量が多くなると、高い機械特性を得ることが困難になりやすい。
【0030】
また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、不連続繊維集合体に含まれる繊維束の形態保持や、不連続繊維集合体を構成する単繊維の脱落が防止できる範囲であれば特に限定はなく、10〜100mmであることが好ましい。
【0031】
なお、熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、不連続繊維集合体を構成する単繊維および/または繊維束の繊維長に応じて相対的に決定することも可能である。例えば、不連続繊維集合体を配向させる目的で不連続繊維集合体を延伸する際には、繊維長の長い単繊維および/または繊維束により大きな張力がかかる。このため、不連続繊維集合体に張力をかけて不連続繊維集合体の長さ方向に配向させたい場合は、不連続繊維集合体を構成する単繊維および/または繊維束の繊維長を、熱可塑性樹脂繊維の繊維長よりも長くし、逆の場合には、不連続繊維集合体を構成する単繊維および/または繊維束の繊維長を、熱可塑性樹脂繊維の繊維長よりも短くすることができる。
【0032】
また、不連続繊維集合体との絡み合いの効果を高める目的で、熱可塑性樹脂繊維に捲縮を付与することが好ましい。捲縮の程度は、本発明の目的が達成できる範囲であれば特に限定はなく、一般的には捲縮数5〜25山/25mm程度、捲縮率3〜30%程度の熱可塑性樹脂繊維を用いることができる。
【0033】
このような熱可塑性樹脂繊維の材料としては特に制限は無く、炭素繊維複合材料の機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン6,6樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレー樹脂ト、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の樹脂を紡糸して得られた繊維を用いることができる。
【0034】
さらに、熱可塑性樹脂繊維の材料は、マトリックス樹脂との組み合わせにより適宜選択して用いることが好ましい。特に、マトリックス樹脂と同じ樹脂、あるいはマトリックス樹脂と相溶性のある樹脂、マトリックス樹脂と接着性の高い樹脂を用いてなる熱可塑性樹脂繊維は、炭素繊維強化プラスチックの機械特性を低下させないので好ましい。例示すると熱可塑性樹脂繊維がポリアミド繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維及びフェノキシ樹脂繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
【0035】
本発明で用いるマトリックス樹脂は特に制限は無く、炭素繊維強化プラスチックの機械特性を大きく低下させない範囲で適宜選択することができる。例示するなら、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン6,6樹脂、ナイロン6,10樹脂、ナイロン12樹脂等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等の樹脂を用いることができる。このうち、熱可塑性マトリックス樹脂がポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂及びフェノキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0036】
また、本発明に係るスタンパブル基材の製造方法は、少なくとも、繊維長が6〜50mmの不連続繊維束を開繊手段により開繊、配向させて不連続繊維マット前駆体を得る工程、前記不連続繊維マット前駆体を5〜100MPaの圧力で圧搾して、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aと、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊
維を破断させた繊維Bとを含み、前記繊維Aの数平均繊維長が6〜50mm、前記繊維Bの数平均繊維長が1〜10mmであり、前記繊維Bの数平均繊維長が前記繊維Aの数平均繊維長未満となる不連続繊維マットを形成する圧搾工程、前記不連続繊維マットにマトリックス樹脂を含浸、固化する含浸固化工程を有するスタンパブル基材の製造方法を特徴とする。
【0037】
最初に、複数の連続繊維からなる連続繊維束を6〜50mmの長さに切断して不連続繊維束とし、後述する開繊手段により開繊・配向させて不連続繊維マット前駆体を得る。このとき、不連続繊維マット前駆体には、様々な単繊維数から構成される複数の不連続繊維束や、単繊維レベルにまで分散された単繊維が存在する。この不連続繊維マット前駆体に一定の圧力を付与し、圧搾すると、分散した単繊維や、一定本数未満の単繊維からなる不連続繊維束を構成する単繊維が優先的に破断させられ、数平均繊維長が1〜10mmの繊維Bを生成することができる。一方、一定本数以上の単繊維で構成される不連続繊維束は、圧搾によっても破断しにくく、数平均繊維長が6〜50mmの繊維Aを生成することができる。このように、圧搾によって、繊維Aの数平均繊維長が6〜50mm、繊維Bの数平均繊維長が1〜10mmであり、前記繊維Bの数平均繊維長が前記繊維Aの数平均繊維長未満となる不連続繊維マットとなる。その後、不連続繊維マットにマトリックス樹脂を含浸、固化することにより、スタンパブル基材を得ることができる。
【0038】
不連続繊維マット前駆体を圧搾する際の圧力は、5〜100MPaとすることが重要である。5MPa未満では単繊維の破断が少なく、繊維Bの数平均繊維長を1〜10mmとするのが困難となり、得られる不連続繊維マットの流動性改善効果も少なくなる。逆に、100MPaを超えると、繊維Aとして残すべき単繊維の破断を招き、繊維Aの数平均繊維長が短くなり、得られる不連続繊維マットの機械特性の低下を招くおそれがある。
【0039】
不連続繊維マット前駆体を圧搾して製造する方法としては、不連続繊維マット前駆体を二枚の金属板で挟んでプレス機で圧力を加えることができる。連続して製造するには、一対の金属ベルトあるいは金属ロールで挟むことが好ましい。また、金属板やロールに凹凸を付与することによって、分散された単繊維や一定本数未満の単繊維の束を部分的に切断した不連続繊維マットを得ることも可能である。
【0040】
また、本発明に係るスタンパブル基材の別の製造方法は、予め、繊維長の異なる複数種類の不連続繊維束を混合し、開繊手段により開繊・配向させて、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aと、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる繊維Bとを含む不連続炭素繊維マットを作成することも重要である。また、あらかじめ、繊維長の異なる複数種類の不連続繊維束をそれぞれ予備開繊させ、混合した後、開繊手段により開繊・配向させて、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aと、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる繊維Bとを含む不連続炭素繊維マットを作成することも好ましい。このように作成された不連続繊維マットに、マトリックス樹脂を含浸、固化してスタンパブル基材を得ることもできる。
【0041】
これは、予め、繊維長の異なる2種類以上の不連続繊維束をそれぞれ準備しておき、それを一定の割合で混合するものである。この混合物をカーディング法またはエアレイド法等の開繊手段により開繊・配向させて、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aと、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる繊維Bとを含む不連続繊維マットを作成する方法である。この方法によれば、プレス等による加圧手段が不要になり、設備的にも簡素に行える。また、繊維長とともに繊維束数も異なる2種以上の不連続繊維束をそれぞれ一定の重量割合で混合しても構わない。
【0042】
また、不連続繊維マットを製造するさらに別の方法としては、一度不連続繊維マット化した繊維(繊維Aもしくは繊維B用)に、連続繊維束から切り出した(いわゆるバージン)の不連続繊維束(繊維B用もしくは繊維A用)を、所定量の割合でばらまくことで不連続繊維マットを得る方法や、チョップドされた不連続繊維束を溶液に分散させた後、シート状に製造する湿式法が挙げられる。
【0043】
さらには、繊維長の異なる2種類以上の不連続繊維束をそれぞれ準備しておき、数平均繊維長が1〜10mmの繊維長をもつ繊維束のみを予め予備開繊させておき、マット化する際に予備開繊させた繊維束と6〜50mmの繊維長を持つもう一方の繊維束を混合し、さらに開繊させることで、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる繊維Bの数平均繊維長が、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aの数平均繊維長未満となる不連続繊維マットを得ることができる。この方法により、繊維Bの繊維長を任意にコントロールすることができる。
【0044】
例えば、2種の異なる繊維長の不連続繊維束を用いて不連続繊維マットを製造する場合、数平均繊維長が1〜10mm以下かつ繊維Aの数平均繊維長未満に短くチョップドされた不連続繊維束を予め予備開繊しておき、後に繊維Aと予備開繊した繊維Aよりも短い繊維を、それぞれ繊維Aの重合割合が30〜90重量%、予備開繊した短い繊維Aよりも短い繊維を10〜70重量%の割合で混合し、開繊手段により開繊・配向させることができる。この方法によれば、不連続繊維マットは、100本以上の単繊維が束になった繊維束として構成される繊維Aと、100本未満の単繊維が束になった繊維束および分散された単繊維からなる繊維Bとを含められる。また、前記繊維Aの数平均繊維長が6〜50mm、前記繊維Bの数平均繊維長が1〜10mmであり、前記繊維Bの数平均繊維長が前記繊維Aの数平均繊維長未満とすることができる。さらに、不連続繊維マット全繊維に対して、繊維Aの重量割合が30から90重量%、繊維Bの重量割合が10〜70重量%となる不連続繊維マットを製造することができる。
【0045】
さらに得られた前記不連続繊維マットを5〜100MPaの圧力で圧搾することにより、繊維長をより正確にコントロールすることができる。
【0046】
また、本発明に係るスタンパブル基材の製造方法において、開繊手段が、カーディング法またはエアレイド法であることが好ましい。得られる不連続炭素繊維マットの均一性の観点からは、カーディング法によって得ることが好ましく、炭素繊維の折れや曲がりを防ぐ観点からは、エアレイド法によって得ることが好ましい。
【0047】
不連続繊維マットを得る方法の一つであるカーディング法について以下に説明する。本製法に限定されるものではない。本発明でいうカーディングとは、不連続な繊維の集合体をくし状のもので概略同一方向に力を加えることにより、不連続な繊維の方向を揃えることや、繊維を開繊する操作のことをいう。一般的には針状の突起を表面に多数備えたロール及び/またはのこぎりの刃状の突起を有するメタリックワイヤを巻きつけたロールを有するカーディング装置を用いて行う。
【0048】
このようなカーディングを実施するにあたっては、炭素繊維が折れるのを防ぐ目的で炭素繊維がカーディング装置の中に存在する時間(滞留時間)を短くすることが好ましい。具体的にはカーディング装置のシリンダーロールに巻かれたワイヤ上に存在する炭素繊維をできるだけ短時間でドッファーロールに移行させることか好ましい。従って、かかる移行を促進するためにシリンダーロールの回転数は、例えば150min
−1以上といった高い回転数で回転させることが好ましい。また、同様の理由で、ドッファーロールの表面速度は例えば、10m/分以上といった速い速度が好ましい。
【0049】
炭素繊維束をカーディングする工程は特に制限がなく一般的なものを用いることが出来る。例えば、
図1に示すように、カーディング装置1は、シリンダーロール2と、その外周面に近接して上流側に設けられたテイクインロール3と、テイクインロール3とは反対側の下流側においてシリンダーロール2の外周面に近接して設けられたドッファーロール4と、テイクインロール3とドッファーロール4との間においてシリンダーロール2の外周面に近接して設けられた複数のワーカーロール5と、ワーカーロール5に近接して設けられたストリッパーロール6と、テイクインロール3と近接して設けられたフィードロール7及びベルトコンベアー8とから主として構成されている。
【0050】
ベルトコンベアー8に不連続な炭素繊維束9が供給され、炭素繊維束9はフィードロールの外周面、次いでテイクインロール3の外周面を介してシリンダーロール2の外周面上に導入される。この段階までで炭素繊維束は解され、綿状の炭素繊維束の集合体となっている。シリンダーロール2の外周面上に導入された綿状の炭素繊維束の集合体は一部、ワーカーロール5の外周面上に巻き付くが、この炭素繊維はストリッパーロール6によって剥ぎ取られ再びシリンダーロール2の外周面上に戻される。フィードロール7、テイクイロール3、シリンダーロール2、ワーカーロール5、ストリッパーロール6のそれぞれのロールの外周面上には多数の針、突起が立った状態で存在しており、上記工程で炭素繊維束が針の作用により所定の束まで開繊され、ある程度配向される。かかる過程を経て所定の炭素繊維束まで開繊され、炭素繊維集合体の1形態であるシート状のウェブ10としてドッファーロール4の外周面上に移動する。
【0051】
また、不連続繊維マットを得る方法の一つであるエアレイドに関しても、特に制限がなく一般的なものを用いることができる。このエアレイドは、カットした炭素繊維束単体もしくはカットした炭素繊維束と熱可塑性樹脂繊維を管内に導入し、圧縮空気を吹き付け、繊維束を開繊させる方法やピンシリンダー等によって物理的に繊維束を開繊させる方法などによって開繊、拡散、定着させた不連続繊維マットを得る工程である。一般的なエアレイド法としては、本州製紙法、クロイヤー法、ダンウェブ法、J&J法、KC法、スコット法などが挙げられる。具体的には、カットした炭素繊維束単体、またはカットした炭素繊維束と熱可塑性樹脂繊維もしくは熱可塑性樹脂粒子を管内に導入し、圧縮空気を吹き付けることにより繊維束を開繊させ、拡散、定着させた不連続繊維マットを得る工程や、
図2に示すように、エアレイド装置11は、互いに逆回転する円筒状でかつ細孔を持つドラム12と各ドラム12内に設置されたピンシリンダー13を有し、多量の空気と共に炭素繊維束単体もしくは炭素繊維束と熱可塑性樹脂繊維もしくは熱可塑性樹脂粒子がドラム12に風送され、ドラム12内のピンシリンダー13によって開繊され、細孔より排出されて、その下を走行するワイヤ14上に落下する。ここで風送に用いた空気はワイヤ14下に設置されたサクションボックス15に吸引され、開繊された炭素繊維束単体もしくは開繊された炭素繊維束と熱可塑性樹脂繊維もしくは熱可塑性樹脂粒子のみワイヤ14上に残り、不連続繊維マットを得る工程である。
【0052】
また、本発明にいて、上記カーディングやエアレイド等の開繊手段によって不連続な繊維束が開繊・配向された状態で繊維同士の絡み合いや摩擦により形態を保持させた不連続繊維マット前駆体や不連続繊維マットは、薄いシート状のウェブとしても取り扱うことができ、ウェブを積層して必要に応じて絡合や接着させて得られる不織布等を例示することができる。
【0053】
本発明において、不連続繊維マットにマトリックス樹脂を含浸する方法は特に限定するものではなく、熱可塑性樹脂繊維を含有する繊維集合体を作製し、繊維集合体に含まれる熱可塑性樹脂繊維をそのままマトリックス樹脂として使用してもかまわないし、熱可塑性樹脂繊維を含まない繊維集合体を原料として用い、スタンパブル基材を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸してもかまわない。
【0054】
また、熱可塑性樹脂繊維を含有する繊維集合体を原料として用いる場合であっても、スタンパブル基材を製造する任意の段階でマトリックス樹脂を含浸することもできる。このような場合、熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂とマトリックス樹脂は同一の樹脂であってもかまわないし、異なる樹脂であってもかまわない。熱可塑性樹脂繊維を構成する樹脂とマトリックス樹脂が異なる場合は、両者は相溶性を有するか、あるいは、親和性が高い方が好ましい。
【0055】
スタンパブル基材を製造するに際し、不連続繊維マットへの、マトリックス樹脂の含浸を、含浸プレス機を用いて実施することができる。プレス機としてはマトリックス樹脂の含浸に必要な温度、圧力を実現できるものであれば特に制限はなく、上下する平面状のプラテンを有する通常のプレス機や、1対のエンドレススチールベルトが走行する機構を有するいわゆるダブルベルトプレス機を用いることができる。かかる含浸工程においてはマトリックス樹脂を、フィルム、不織布又は織物等のシート状とした後、不連続繊維マットと積層し、その状態で上記プレス機等を用いてマトリックス樹脂を溶融・含浸することができる。
【0056】
また、マトリックス樹脂を用いて不連続な繊維を作製し、繊維集合体を作製する工程で無機繊維と混合することにより、マトリックス樹脂と無機繊維を含む繊維集合体を作製し、この繊維集合体をプレス機等を用いて加熱・加圧する方法も採用することができる。
【0057】
さらに、生成されたスタンパブル基材を用いて一定形状にスタンピング成形することにより、所望の形状のスタンピング成形品を得ることができる。
【0058】
ここで、スタンピング成形とは、予め基材を予熱し、コールドプレスすることにより目的とする形状に成形する手法である。
【実施例】
【0059】
次に、本発明の実施例、比較例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。先ず、実施例、比較例で用いた特性、測定方法について説明する。
【0060】
(1)繊維A及び繊維Bの数平均繊維長の測定方法
不連続炭素繊維シートから100mm×100mmのサンプルを切り出し、その後、サンプルを550℃に加熱した電気炉の中で1時間程度加熱してマトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却した後に残った不連続炭素繊維シートからマット、繊維束形態を崩さないように、ピンセットで不連続炭素繊維シートを約1g抽出した。
【0061】
抽出した全ての炭素繊維束(単糸も含む)についてデジタル顕微鏡を用いて断面観察を行い、繊維束を形成する炭素繊維単糸の本数Nnを数えることで繊維Aと繊維Bに振り分けた。
【0062】
振り分けたすべての繊維Aと繊維Bについて、個々の炭素繊維束の長さLnを測定した。繊維Aと繊維Bのそれぞれの個数Nnに対して、(数式1)により、数平均繊維長Lnを求めた。
【0063】
【数1】
【0064】
(2)流動性試験(スタンピング成形)
図3に示す装置を用いて、以下の手順で流動性試験を行った。
1)スタンパブル基材を寸法100mm×100mm×2mmとなるように切り出し、2枚重ねて炭素繊維複合材料21とした。
2)ヒーター22で炭素繊維複合材料21を所定の温度で予熱した。
3)所定温度に昇温したプレス盤23に配置し、所定圧力・所定時間加圧した。
4)得られた成形品24の表面積(mm
2)と、プレス前の炭素繊維複合材料21の表面積A1(mm
2)を測定し、A2/A1×100を流動率(%)とした。
【0065】
マトリックス樹脂別の評価条件を、以下の通り設定した。
A)マトリックス樹脂がナイロン(Ny)の場合:
ナイロンをマトリックス樹脂とした炭素繊維複合材料21の場合、ヒーター22で基材中心温度(二枚重ねた間の温度)が260℃となるように予熱後、150℃に昇温したプレス盤23に配し、10MPaで30秒間加圧した。
B)マトリックス樹脂がポリプロピレン(PP)の場合:
ポリプロピレンをマトリックス樹脂とした炭素繊維複合材料21の場合、ヒーター22で基材中心温度を220℃となるように予熱後、120℃に昇温したプレス盤23に配し、10MPaで30秒間加圧した。
C)マトリックス樹脂がポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)の場合:
ポリフェニレンスルフィド樹脂をマトリックス樹脂とした炭素繊維複合材料21の場合、ヒーター22で基材中心温度を320℃となるように予熱後、150℃に昇温したプレス盤23に配し、10MPaで30秒間加圧した。
【0066】
(3)Vf(スタンパブル基材中の炭素繊維の含有率)
スタンパブル基材から約2gのサンプルを切り出し、その質量を測定した。その後、サンプルを500℃に加熱した電気炉の中で1時間加熱してマトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばした。室温まで冷却してから、残った炭素繊維の質量を測定した。炭素繊維の質量に対する、マトリックス樹脂等の有機物を焼き飛ばす前のサンプルの質量に対する比率を測定し、炭素繊維の含有率(%)を算出した。
【0067】
(4)本発明の実施例、比較例で用いた炭素繊維について説明する。
炭素繊維1:繊維径7μm、引張弾性率230GPaでフィラメント数が12000本の連続した炭素繊維束に対し、水系サイジング剤を炭素繊維束に1.0重量%付着させ炭素繊維1を得た。
炭素繊維2:フィラメント数を3000本とした以外は炭素繊維1と同様とした。
炭素繊維3:フィラメント数を48000本とした以外は炭素繊維1と同様とした。
【0068】
(5)不連続繊維マットの製法
次に不連続繊維マットについて説明する。
炭素繊維1を繊維長10mmにカットし、カットした炭素繊維1とナイロン6短繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%)を質量比で80:20の割合で混合して繊維集合体を生成し、その繊維集合体をカーディング装置に投入した。出てきたウェブをクロスラップし、炭素繊維とナイロン6繊維とからなる目付100g/cm
2のシート状の炭素繊維シートを形成した。得られた炭素繊維シートをプレス機に設置し、20MPaの圧力で5秒間加圧し不連続繊維マット1を得た。
【0069】
得られた不連続繊維マット1を500℃で1時間焼き飛ばし、残った炭素繊維シートから1gサンプリングして繊維Aと繊維Bの重量割合と繊維長の測定結果を(表1)に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1において、列は作成した不連続繊維マットNoを示す。
【0072】
行は上段から、炭素繊維種とそのフィラメント数(本)、その次の欄は、繊維集合体における炭素繊維(CF(Carbon Fiber))と熱可塑樹脂繊維の含有量をそれぞれ示す。炭素繊維の欄では炭素繊維をカットした一定の繊維長(CFチョップド長(mm))の炭素繊維の含有重量%を示す。本実施例又は比較例では数平均繊維長が5mm、10mm、20mm、50mm又は100mmのサンプルを作成し例示した。熱可塑樹脂繊維はナイロン短繊維、PP(ポリプロピレン)短繊維、PPS(ポリフェニレンスルフィド)短繊維のサンプルを例示した。
【0073】
その次の欄は、不連続繊維マットの作成工法(マット化工法)を示す。カードはカーディング法を表している。
【0074】
その次の欄は、不連続繊維マットを圧搾するプレス加圧の圧力(MPa)を示す。
【0075】
その次の欄は、不連続繊維マット中に存在する炭素繊維中の繊維Aと繊維Bの重量割合(重量%)とそれら繊維の数平均繊維長(mm)を示す。
【0076】
不連続繊維マット2〜4は炭素繊維1の繊維長を、表1のCFチョップド長(mm)の欄に示す長さにカットした以外は不連続繊維マット1と同様とした。
【0077】
不連続繊維マット5は不連続繊維マット2のプレス加圧なしとした以外は同様とした。
【0078】
不連続繊維マット6は炭素繊維1を繊維長5mmと20mmに切断し、1:1にブレンドした後、ナイロン6短繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%)を質量比で80:20の割合で混合して繊維集合体を生成し、その繊維集合体をカーディング装置に投入した。出てきたウェブをクロスラップし、炭素繊維とナイロン6繊維とからなる目付100g/cm
2のシート状の炭素繊維シートを形成した。得られた炭素繊維シートをプレス機に設置し、20MPaの圧力で5秒加圧し不連続繊維マット6を得た。得られた不連続繊維マット6を500℃で1時間焼き飛ばし、残った炭素繊維シートから1gサンプリングして繊維Aと繊維Bの重量割合と繊維長の測定結果を表1に示す。
【0079】
不連続繊維マット7は繊維長5mmと20mmに切断し、3:7でブレンドした以外は不連続繊維マット6と同様とした。
【0080】
不連続繊維マット8は炭素繊維1を20mmに切断しナイロン6短繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%)を質量比で80:20の割合で混合して繊維集合体を生成し、その繊維集合体を、エアレイド装置に投入し、炭素繊維とナイロン6繊維とからなる目付100g/cm
2のシート状の炭素繊維シートを形成した。得られた不連続繊維マット8を500℃で1時間焼き飛ばし、残った炭素繊維シートから1gサンプリングして繊維Aと繊維Bの重量割合と繊維長の測定結果を表1に示す。
【0081】
不連続繊維マット9、10はフィラメント数が異なる炭素繊維2および3を使用した以外は不連続繊維マット2と同様とした。
【0082】
不連続繊維マット11は炭素繊維1を5mmに切断し、水槽に入れ攪拌により単糸まで分散させた後、金網で抄き150℃の乾燥機で乾燥させて目付100g/cm
2のシート状の炭素繊維シートを形成した。得られた不連続繊維マット1を500℃で1時間焼き飛ばし、残った炭素繊維シートから1gサンプリングして計測した結果、繊維Aは計測されず、繊維Bのみであった。測定結果を表1に示す。
【0083】
不連続繊維マット12はポリプロピレン短繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%)を使用した以外は不連続繊維マット2と同様とした。繊維Aおよび繊維Bの測定結果は表1に示す。
【0084】
不連続繊維マット13はポリプロピレン短繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%)を使用した以外は不連続繊維マット5と同様とした。繊維Aおよび繊維Bの測定結果は表1に示す。
【0085】
不連続繊維マット14はPPS繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%))を使用した以外は不連続繊維マット2と同様とした。繊維Aおよび繊維Bの測定結果は表1に示す。
【0086】
不連続繊維マット15はPPS繊維(短繊維繊度1.7dtex、カット長51mm、捲縮数12山/25mm、捲縮率15%))を使用した以外は不連続繊維マット5と同様とした。繊維Aおよび繊維Bの測定結果は表1に示す。
【0087】
(実施例1)
不連続繊維マット1の巻取り方向を0°とし、不連続繊維マット1を12枚、(0°/90°/0°/90°/0°/90°)sとなるように積層し、さらに積層した不連続繊維マット1中の炭素繊維とマトリックス樹脂の重量比が40:60となるようにナイロン樹脂メルトブロー不織布(「CM1001」、相対粘度(ηr)=2.3、東レ(株)製)を積層した後に、全体をステンレス板で挟み、240℃で90s間予熱後、2.0MPaの圧力をかけながら180s間、240℃にてホットプレスした。ついで、加圧状態で50℃まで冷却し、厚さ2mmのスタンパブルシートを得た。得られたスタンパブルシートの流動率(%)、流動性判断(○:実使用上問題ないレベル、×:実使用上問題があるレベル)、曲げ強度を(表2)に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
表2において、列は実施例又は比較例を示す。
【0090】
行は上段から、表1で示した不連続繊維マットのNo、その次の欄にはマトリックス樹脂、その次の欄にはスタンパブルシートの特性を示す。不連続繊維マットとマトリックス樹脂の配合重量割合(重量%)を示し、スタンパブルシート特性では流動率(%)、流動性判断、曲げ強度(MPa)を示す。
【0091】
得られたスタンパブルシートの表層の0°方向に対して、0°と90°方向の曲げ強度を測定したところ、0°と90°方向の曲げ強度の平均値は420MPaであった。得られた平板から100mm×100mmの寸法になるようにサンプルを切り出し、流動試験を行ったところ、流動率は450%と非常に高い流動性を示し、流動性判断は実使用上問題のないレベルである「○」と判断した。
【0092】
(実施例2,3および比較例1)
不連続繊維マット2〜4を使用した以外は実施例1と同様とした。
【0093】
得られたシートの曲げ強度および流動率を表2に示す。繊維長が長くなると流動率が低下する傾向にあり、比較例1は流動率が110%と殆ど流動しない結果であった。繊維Aを構成する繊維長が50mm以下で、且つ繊維Bを構成する繊維長が繊維Aより短い場合は流動率が200%を超え良好であった。
【0094】
(比較例2)
不連続繊維マット5を使用した以外は実施例2と同様とした。繊維Aを構成する繊維長が50mm以下でも、繊維Bの繊維長が10mm以上の場合流動率が大幅に低下し180%であった。このことから繊維(B)の繊維長が短いことがシートの流動性に大きく寄与していることがわかる。
【0095】
(実施例4,5)
不連続繊維マット6および7を使用した以外は実施例1と同様とした。繊維Bを構成する短い繊維は、あらかじめ短く切断したチョップド繊維を使用しても、プレス機で不連続繊維マットを圧搾するのと同等の効果が得られることがわかる。
【0096】
(比較例3)
不連続繊維マット8を使用した以外は実施例1と同様とした。比較例3は繊維Aおよび繊維Bを構成する繊維を全て5mmとした。繊維長が短く繊維の交絡が少ないため流動率は非常に良好であるが、繊維Aの繊維長が短いため曲げ強度への影響が大きく好ましくない。
【0097】
(実施例6,7)
不連続繊維マット9、10を使用した以外は実施例2と同様とした。チョップド繊維用の連続繊維のフィラメント数を3000本および48000本としたが、流動率、曲げ強度ともに実施例2とほぼ同等と良好な結果であった。
【0098】
(比較例4)
不連続繊維マット11を使用した以外は実施例1と同様とした。繊維長は5mmと短いが高度に繊維が分散しているため、曲げ強度は480MPaと非常に高いが、繊維の交絡が多く流動率は105%と殆ど流動しない結果であった。
【0099】
(実施例8)
不連続マット12および含浸させた熱可塑性マトリックス樹脂にポリプロピレンを使用した以外は実施例2と同様とした。熱可塑性マトリックス樹脂をPP(ポリプロピレン)としたが、曲げ強度も十分に発現し、流動率も良好な結果であった。
【0100】
(比較例5)
不連続繊維マット13を使用した以外は実施例8が繊維Aを構成する繊維長が50mm以下でも、繊維Bの繊維長が10mm以上の場合流動率が大幅に低下し160%であった。このことから繊維Bの繊維長が短いことがシートの流動性に寄与していることがわかる。
【0101】
(実施例9)
不連続マット14および含浸させた熱可塑性マトリックス樹脂にPPS(ポリフェニレンスルフィド)を使用した以外は実施例1と同様とした。樹脂をPPSとしたが、流動率、曲げ強度ともに良好な結果であった。
【0102】
(比較例6)
不連続繊維マット15を使用した以外は実施例9と同様とした。繊維Aを構成する繊維長が50mm以下でも、繊維Bの繊維長が10mm以上の場合流動率が大幅に低下し170%であった。このことから繊維Bの繊維長が短いことがシートの流動性に寄与していることがわかる。