(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0011】
図1〜
図2に示すように、本発明の一実施形態の積層剥離容器1は、容器本体3と、弁部材4を備える。容器本体3は、内容物を収容する収容部7と、収容部7から内容物を吐出する口部9を備える。
【0012】
図2に示すように、 容器本体3は、収容部7及び口部9において、外層11と内層13を備えており、外層11によって外殻12が構成され、内層13によって内袋14が構成される。内容物の減少に伴って内層13が外層11から剥離することによって、内袋14が外殻12から剥離して収縮する。
【0013】
口部9には、係合部9dが設けられている。本実施形態では、口部9には、
図3に示すような打栓式のキャップ23が装着されていることが想定されており、係合部9dは、キャップ23の係合部23cに係合されるリング状の突起である。但し、別の実施形態では、口部9には、雌ねじを有するキャップやポンプなどを装着してもよく、その場合、係合部9dは、雄ねじ部で構成される。
【0014】
また、口部9には、係合部9dよりも収容部7側に、口部9の内側に向かってくびれたくびれ部9cが設けられている。くびれ部9cの上壁9eは、口部9の中心軸Cに対して略垂直方向に延びており、上壁9eの外側端から上壁9eに対して45度〜135度の角度で延びる立設壁9fが設けられている。上壁9eに対する立設壁9fの角度は、60度〜120度が好ましく、75〜105度がさらに好ましい。本実施形態では、立設壁9fは、上壁9eに対して略垂直に延びている。上壁9eでの内層13eと立設壁9fでの内層13fの間には隙間が設けられており、内層13eと内層13fが一体化されていない。別の表現では、上壁9eでの外層11eと立設壁9fでの外層11fによって内層13が挟持されていない。
【0015】
また、立設壁9fの上側端から口部9の内側に向かって(中心軸Cの方向に向かって)延びる対向壁9gが設けられている。上壁9eに対する対向壁9gの角度は、特に限定されないが、例えば、−10〜80度であり、本実施形態では、約30度である。上壁9eでの内層13eと対向壁9gでの内層13gの間には隙間が設けられており、内層13eと内層13gが一体化されていない。別の表現では、上壁9eでの外層11eと対向壁9gでの外層11gによって内層13が挟持されていない。
【0016】
以上のように、本実施形態では、口部9において内層13が外層11によって拘束されていないので、内層13が外層11からスムーズに剥離する。
【0017】
次に、
図3を用いて、口部9にキャップ23を装着する方法について説明する。装着するキャップ23は、本体部23aと、本体部23aに設けられた吐出口23bと、本体部23aから円筒状に延びる外周部23fの略先端に設けられた係合部23cと、外周部23fの内側において本体部23aから円筒状に延びるインナーリング23dと、インナーリング23dの内側に設けられ且つ吐出口23bに連通する流通路23gと、流通路23gに設けられた逆止弁23eを備える。キャップ23が口部9に装着された状態で、収容部7内の内容物は、流通路23gを通って吐出口23bから吐出される。一方、逆止弁23eが吐出口23bからの外気の流入を遮断するので、容器本体3の内袋14内には外気は侵入せず、内容物の劣化が抑制される。なお、ここで示したキャップ23の構造は一例であって、例えば別の構成の逆止弁を有するキャップ23を採用してもよい。
【0018】
キャップ23を装着する際には、まず、キャップ23を装着する際の衝撃によって、収容部7が変形することを抑制するために、
図3(a)に示すように、くびれ部9cの上壁9eの下面に支持具10を当接させ、その状態で、
図3(b)〜(c)に示すように、キャップ23の係合部23cを口部9の係合部9dに係合させる。
図3(b)の状態から係合部23cが係合部9dを乗り越える際には、キャップ23の外周部23fが拡径するように撓むと共に口部9が縮径するように撓むので、口部9が撓みやすい方がキャップ23の装着が容易であるところ、本実施形態の口部9には、特開平11−292112号公報に開示されているようなサポートリングが設けられておらず、くびれ部9cの上壁9eの下面に支持具10を当接させて口部9を支持しているので、口部9が撓みやすく、キャップ23の装着が容易である。また、口部9が撓みやすいので、内袋14が容器出口の近くまで撓みやすく、内容物を最後まで使い切りやすい。
【0019】
また、口部9aには、インナーリング23dの外面が当接する当接部9aが設けられており、インナーリング23dの外面が口部9の当接部9aに当接することによって内容物の漏れ出しが防がれる。本実施形態では、口部9の先端には拡径部9bが設けられており、拡径部9bでの内径は、当接部9aでの内径よりも大きくなっているため、インナーリング23dの外面は、拡径部9bには接触しないようになっている。口部9に拡径部9bがない場合は、口部9の内径が製造時のバラツキによってわずかでも小さくなった場合にはインナーリング23dが外層11と内層13の間に入り込んでしまうという不具合が生じる場合があったが、口部9に拡径部9bがある場合は、口部9の内径が若干ばらついてもそのような不具合が生じない。
【0020】
また、口部9に拡径部9bを設けた場合であっても、インナーリング23dと当接部9aとの摩擦によって内層13が外層11から剥離してしまう恐れがある。しかし、本実施形態では、当接部9aよりも収容部7に近い位置にくびれ部9cが設けられており、くびれ部9cが内層13のズレ落ちを抑制するので、内袋14が外殻12内に脱落してしまうことが抑制される。このようにくびれ部9cは、内層13のズレ落ち抑制の機能を有すると共に、キャップ23の装着時に支持具10による口部9の支持箇所としての機能を有する。
【0021】
ここで、
図4〜
図5を用いて、口部9及びキャップ23の別構成例を示す。
図4の構成は、当接部9aの位置が異なる点が
図3の構成との主な相違点である。
図3の構成では、当接部9aが係合部9dよりも容器出口に近い位置にあるのに対して、
図4の構成では、当接部9aは、係合部9dよりも容器出口から離れていて、係合部9dとくびれ部9cの間に設けられている。何れの構成でも実施可能であるが、
図3の構成の場合の方が、容器本体3内の容積を有効利用できることに加えて、内層11が容器出口に近い位置にまで剥離可能であるので内容物を最後まで吐出させやすい点で有利である。
【0022】
図5の構成は、対向壁9gが上壁9eに対して略平行になっており、上壁9e、立設壁9f、及び対向壁9gによって略「コ」の字形状(横向きU字形状)が形成される点が
図3の構成との主な相違点である。このような構成において、内層13e,13f,13gの間に隙間が設けられていて、これらが一体化されていないので、
図3の構成と同様の作用効果が得られる。なお、
図5の構成の場合、上壁9eと対向壁9gの間の距離が短いと、内層13eと内層13gが接触して一体化されやすいので、上壁9eの下面と対向壁9gの上面の間の距離は、上壁9eの肉厚(外層11eと内層13eの合計の厚さ)の2.5倍以上であることが好ましい。この場合、内層13eと内層13gの間に上壁9eの肉厚の約半分の厚さの隙間が形成される。
【0023】
収容部7は、
図1〜
図2に示すように、略円筒状であり、筒状の筒状部7bと、筒状部7bの一部が凹まされて形成されたパネル部7cを有する。容器本体3は、筒状(例:円筒状)の積層パリソンをブロー成形することによって形成されるので、容器本体3の各部の肉厚は、ブロー比が大きい部位ほど(中心軸Cからの距離が大きい部位ほど)小さくなる。パネル部7cは、筒状部7bよりも中心軸Cに近いので、筒状部7bよりも肉厚が大きくなる。このため、パネル部7cの剛性が筒状部7bよりも高く、パネル部7cが高剛性部となり、筒状部7bが低剛性部となる。
【0024】
収容部7内の内容物は、収容部7を圧縮して変形させることによって吐出させるが、筒状部7bとパネル部7cをつまんで収容部7を圧縮すると、剛性の低い筒状部7bが優先的に変形するので、筒状部7bの変形量がパネル部7cよりも大きくなる。そして、内層13は変形量が大きい部位において外層11から剥離されやすいために、筒状部7bにおいて内層13の剥離が優先的に進行しやすい。本実施形態では、外殻12には、収容部7において、外殻12と内袋14の間の中間空間21と、容器本体3の外部空間Sを連通する外気導入孔15が設けられており、外気導入孔15が筒状部(低剛性部)7b側に設けられているので、内層13が剥離する際に外殻12と内袋14の間の中間空間21に外気がスムーズに導入され、内層13が外層11からスムーズに剥離する。このため、収容部7を圧縮した際に内袋14がスムーズに収縮すると共に、圧縮力が除かれると外殻12がスムーズに元の形状に復元する。
【0025】
外気導入孔15は、筒状部(低剛性部)7bの任意の位置に設けることができるが、パネル部7cに対向する位置に設けることが好ましい。筒状部7bとパネル部7cをつまんで収容部7を圧縮したときに、パネル部7cに対向する位置において筒状部7bが最も大きく変形するからである。
【0026】
また、本実施形態では、外気導入孔15には、中間空間21と外部空間Sの間の空気の出入りを調節する弁部材4が設けられている。弁部材4は、収容部7に設けられた弁部材取付凹部7aに装着される。弁部材4は、収容部7を圧縮したときには閉じて中間空間21から外部空間Sへ向かう空気の流れを遮断することによって中間空間21内の圧力を高めて、外殻12に加えられた圧力が内袋14に伝わりやすくする機能を有する。このため、内袋14内の収容物が少なくなったときでも、内容物を容易に吐出できる。一方、弁部材4は、収容部7に加えた圧縮力が除かれたときには開いて外部空間Sから中間空間21へ向かう空気を通過させる機能を有する。このため、中間空間21内に外気が導入されて外殻12がスムーズに元の形状に復帰する。弁部材4が無くても外殻12を大きく変形させることによって、外殻12を通じて内袋14を直接圧縮することも可能であるので、弁部材4は、必須の構成ではない。
【0027】
上記のように、弁部材4は、外気導入孔15を開閉可能な機能を有するものであればよく、その構成例としては、弁部材4自体に貫通孔と開閉可能な弁を設けて、この弁の働きによって貫通孔を開閉することによって、外気導入孔15を開閉するように構成されているものや、外気導入孔15の縁と弁部材4の間の隙間を弁部材4の移動によって開閉することによって、弁部材4が外気導入孔15を開閉するように構成されているものが挙げられる。前者の弁部材4は、外気導入孔15のサイズに多少のばらつきがある場合でも弁部材4が問題なく機能するので、特に目薬容器などの小型の容器に好適に適用される。
【0028】
ここで、
図2及び
図7を用いて、弁部材4の一例について説明する。弁部材4は、外部空間Sと中間空間21を連通させるように設けられた空洞部5gを有する筒体5と、空洞部5g内に移動可能に収容された移動体6とを備える。筒体5及び移動体6は、射出成形などによって形成され、後述するストッパー部5hを乗り越えるように、移動体6を空洞部5g内に押し込むことによって、移動体6を空洞部5g内に配置させることができる。本実施形態では、空洞部5gは、略円柱形状であり、移動体6は、略球形であるが、本実施形態と同様の機能を実現できる形状であれば、別の形状であってもよい。空洞部5gの横断面(
図6(d)の断面)での直径は、移動体6の対応する断面での直径よりもわずかに大きくなっており、移動体6が
図6(c)の矢印B方向に自由に移動可能な形状となっている。空洞部5gの横断面の直径/移動体6の対応する断面での直径で規定される比の値は、1.01〜1.2が好ましく、1.05〜1.15が好ましい。この値が小さすぎると移動体6のスムーズな移動が妨げられ、この値が大きすぎると空洞部5gを囲む面5jと移動体6との間の隙間が大きくなりすぎて、容器本体3を圧縮したときに移動体6に加わる力が不十分になりやすいからである。
【0029】
筒体5は、外気導入孔15内に配置される軸部5aと、軸部5aの外部空間S側に設けられ且つ筒体5が中間空間21に入り込むことを防ぐ係止部5bと、軸部5aの中間空間21側に設けられ且つ筒体5が容器本体3の外側から引き抜かれることを防ぐ膨径部5cを有する。軸部5aは、中間空間21側に向かって先細り形状になっている。つまり、軸部5aの外周面がテーパー面になっている。そして、軸部5aの外周面が外気導入孔15の縁に密着することによって筒体5が容器本体3に装着される。このような構成によって、外気導入孔15の縁と筒体5の間の隙間を低減することができ、その結果、容器本体3を圧縮したときに中間空間21内の空気が外気導入孔15の縁と筒体5の間の隙間から流出することを抑制することができる。なお、筒体5は、軸部5aの外周面が外気導入孔15の縁に密着することによって、容器本体3に装着されるので、膨径部5cは必ずしも必須ではない。
【0030】
空洞部5gを囲む面5jには、移動体6が中間空間21側から外部空間S側に向かって移動するときに移動体6を係止するストッパー部5hが設けられている。ストッパー部5hは、環状の突起で構成されており、移動体6がストッパー部5hに当接すると空洞部5gを通じた空気の流通が遮断されるようになっている。
【0031】
また、筒体5の先端は、平坦面5dとなっており、平坦面5dには、空洞部5gに連通する開口部5eが設けられている。開口部5eは、平坦面5dの中央に設けられた略円形の中央開口部5e1と、中央開口部5e1から放射状に広がる複数のスリット部5e2を有する。このような構成によれば、移動体6が空洞部5gの底部に当接している状態でも空気の流れが妨げられない。
【0032】
弁部材4は、
図6(f)に示すように、膨径部5c側から外気導入孔15内に挿入され、係止部5bが外殻12の外面に当接する位置まで押し込まれると、軸部5aの外周面が外気導入孔15の縁に密着した状態で、外殻12に保持される。中間空間21に空気が入っている状態で外殻12を圧縮すると、中間空間21内の空気が開口部5eを通じて空洞部5g内に入り、移動体6を押し上げてストッパー部5hに当接させる。移動体6がストッパー部5hに当接すると、空洞部5gを通じた空気の流れが遮断される。
【0033】
この状態で外殻12をさらに圧縮すると、中間空間21内の圧力が高まり、その結果、内袋14が圧縮されて、内袋14内の内容物が吐出される。また、外殻12への圧縮力を解除すると、外殻12が自身の弾性によって復元しようとする。外殻12の復元に伴って中間空間21内が減圧されることによって、
図6(g)に示すように、移動体6に対して容器内側方向の力FIが加わる。これによって、移動体6が空洞部5gの底に向かって移動して、
図6(f)に示す状態となり、移動体6と面5jの隙間及び開口部5eを通って中間空間21内に外気が導入される。
【0034】
弁部材4は、膨径部5cが外気導入孔15を押し広げながら、膨径部5cを中間空間21内に挿入することによって容器本体3に装着することができる。そのため、膨径部5cの先端は、先細り形状になっていることが好ましい。このような弁部材4は、容器本体3の外側から膨径部5cを中間空間21内に押し込むだけで装着可能なので、生産性に優れている。なお、筒体5の先端に平坦面5dが設けられているので、弁部材4を中間空間21内に押し込んだときに、弁部材4の先端が内袋14に衝突しても内袋14が傷つきにくくなっている。
【0035】
弁部材4が装着された状態で弁部材4及び外気導入孔15の周囲を覆って中間空間21内への外気の導入を防ぐ被覆部材を設けるように構成してもよい。このような構成によれば、製造工程において工場内の有臭ガスが中間空間21内に侵入することを防ぐことができる。例えば、内容物を内袋14内に充填した後に、清浄な雰囲気下で被覆部材を取り付けることができる。また、このような構成によれば、容器を高温の蒸気で滅菌する場合において、外気導入孔15から蒸気が中間空間21に侵入し、中間空間21内に水分が残留してしまうことを防止できる。弁部材4及び外気導入孔15が被覆部材で覆われた状態では中間空間21に外気が導入されず、外殻12を圧縮した後に元の形状に復元されないので、ユーザーは、被覆部材を外した状態で使用することが想定される。
【0036】
具体的な構成例としては、
図7(a)〜(b)に示すように、弁部材4及び外気導入孔15の周囲に粘着されるシール部材8を設ける例が挙げられる。
図7(a)の例では、弁部材取付凹部7aを囲むように設けた環状凸部7d上にシール部材8を貼り付けている。
図7(b)の例では、弁部材取付凹部7a内に弁部材4及び外気導入孔15を囲むように設けた環状凸部7d上にシール部材8を貼り付けている。
図7(b)の例では、シール部材8が外殻12の表面から突出することを避けることができる。
【0037】
図1〜
図2に示すように、収容部7の底面29には、中央凹領域29aと、その周囲に設けられる周縁領域29bが設けられ、中央凹領域29aには、
図2に示すように、底面29から突出する底シール部27が設けられる。底シール部27の形成方法は、以下の通りである。
【0038】
まず、
図1(b)に示すように、外層11と内層13を備える筒状の積層パリソンをブロー成形する際の前記積層パリソンのシール部27aを、中央凹領域29aに、周縁領域29bによって規定される面P(
図2に図示)を超えて突出するように、薄膜形状になるように形成する(シール部形成工程)。シール部27aは、ブロー成形の際に積層パリソン27aを分割金型で挟んで圧縮することによって形成することができる。シール部27aは、その最大厚さが前記積層パリソンの肉厚の1/3以下(好ましくは1/4又は1/5以下)になるように形成することが好ましい。シール部27aの厚さは、例えば0.1〜0.4mm、好ましくは0.2〜0.3mmである。一例では、肉厚が1.5mmの円筒状の積層パリソンがシール部27aにおいて0.25mmにまで圧縮される。シール部27aは、その全体の厚さが均一になるように形成することが好ましい。
【0039】
次に、
図2に示すように、シール部27aが中央凹領域29a内に収容されるようにシール部27aを折り曲げ加工して底シール部27を形成する。シール部27aは極薄の薄膜形状であるので、折り曲げて中央凹領域29a内に収めることが容易である。また、シール部27aに対して折り曲げ加工の代わりに溶融加工を施してもよい。シール部27aは極薄の薄膜形状であるので、容易に溶融されて中央凹領域29a内に収められる。
【0040】
シール部27aに対して折り曲げ加工又は溶融加工を行って底シール部27を形成することによって容器本体3の底面29での耐衝撃性を向上させることができる。また、底シール部27が面Pから突出しないようになっているので、積層剥離容器1を立てた時に、底シール部27が面Pからはみ出して積層剥離容器1の自立性が阻害されることが防止される。
【0041】
また、
図1(b)に示すように、底面29の凹領域は、シール部27aの長手方向において底面29全体を横切るように設けられる。つまり、中央凹領域29aと周縁凹領域29cがつながっている。このような構成によって、シール部27aを折り曲げやすくなっている。
【0042】
次に、容器本体3の層構成についてさらに詳細に説明する。容器本体3は、外層11と内層13を備える。外層11は、復元性が高くなるように、内層13よりも肉厚に形成される。
【0043】
外層11は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。尚、容器の直径が30mm以下になる場合は、外層11に低密度ポリエチレンを含むように構成するのが好ましい。この構成によれば、内容液を吐出させるためのスクイズが容易になる。例えば、外層11は低密度ポリエチレンの単層で構成することができる。また、外層11は、低密度ポリエチレンと、成形時のバリを使用したリサイクル材との多層で構成することもできる。
【0044】
図8に示すように、本実施形態では、内層13は、内容物に接触する最内層13aと、最内層13aに対して摺動可能な被覆層13bを備える。酸素バリア性が高いEVOH樹脂などからなる被覆層13bが最内層13aに接着されて一体となっている構成が採用されることが一般的であるが、EVOH樹脂は剛性が高いので、その分だけ、被覆層13bと最内層13aが一体となった内層13が変形しにくく、内袋14がスムーズに収縮しない場合があった。一方、本実施形態では、最内層13aが被覆層13bに接着されておらず、最内層13aが被覆層13bに対して摺動可能となっている。このため、被覆層13bの剛性が高い場合であっても、最内層13aは比較的自由に変形可能であるので、内袋14がスムーズに収縮する。また、最内層13aと被覆層13bが分離されているので、外気導入孔15を形成する際に、被覆層13bを誤って傷付けてしまった場合でも、最内層13aに傷がつかなければ問題が生じない。
【0045】
最内層13aと被覆層13bが接着されていない場合、外気導入孔15は、外層11及び被覆層13bを貫通するように形成してもよい。この場合、最内層13aと被覆層13bの間の空間にまで外気が導入される。
【0046】
最内層13aは、積層剥離容器1の内容物に接触する層であり、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィン、EVOH樹脂などからなる。最内層13aを構成する樹脂の引張弾性率は、50〜300MPaが好ましく、70〜200MPaが好ましい。引張弾性率がこのような範囲の場合に、最内層13aが特に柔軟であるからである。引張弾性率は、具体的には例えば、50、100、150、200、250、300Mpaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。尚、内容物が薬液の場合、薬液成分が最内層13aに吸着しにくくするために、最内層13aは、ポリプロピレン、又は、EVOH樹脂にすることが好ましい。この場合、内層をより柔軟にすることで、内層の収縮がスムーズに進み、かつ、ピンホール等の発生を防止できることから、最内層13aとして、ポリプロピレンを使用することが特に好ましい。また、柔軟性の観点から、最内層13aとして、プロピレンランダム共重合体が特に好ましい。プロピレンランダム共重合体は、プロピレンと別のモノマーとの間のランダム共重合体であり、プロピレン以外のモノマーの含有量が、50mol%よりも小さいものであり、5〜35mol%が好ましい。この含有量は、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。プロピレンと共重合されるモノマーとしては、エチレンが特に好ましい。プロピレンとエチレンのランダム共重合体の場合、エチレンの含有量は、5〜30mol%が好ましく、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30mol%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0047】
被覆層13bは、酸素バリア性などを付与する目的で設けられる層であり、EVOH樹脂からなることが好ましい。被覆層13bがEVOH樹脂からなる場合、外層11と内層13の間の剥離性が良好になる。
【0048】
EVOH樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂であり、エチレンと酢酸ビニル共重合物の加水分解により得られる。EVOH樹脂のエチレン含有量は、例えば25〜50mol%であり、酸素バリア性の観点から32mol%以下が好ましい。エチレン含有量の下限は、特に規定されないが、エチレン含有量が少ないほどEVOH樹脂の柔軟性が低下しやすいので25mol%以上が好ましい。また、EVOH樹脂は、酸素吸収剤を含有することが好ましい。酸素吸収剤をEVOH樹脂に含有させることにより、EVOH樹脂の酸素バリア性をさらに向上させることができる。
【0049】
EVOH樹脂の融点は、外層11を構成する樹脂の融点よりも高いことが好ましい。加熱式の穿孔装置を用いて外層11に外気導入孔15を形成する場合に、EVOH樹脂の融点を外層11を構成する樹脂の融点よりも高くすることによって、外層11に外気導入孔15を形成する際に、孔が内層13にまで到達することを防ぐことができる。この観点から、(EVOHの融点)−(外層11を構成する樹脂の融点)の差は大きい方がよく、15℃以上であることが好ましく、30℃以上であることが特に好ましい。この融点の差は、例えば5〜50℃であり、具体的には例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0050】
特許請求の範囲において内層の構成を限定していない場合には、内層13の構成は限定されず、その場合には、最内層13aと被覆層13bの間に接着層を設けてもよい。接着層は、被覆層13bと最内層13aとを接着する機能を有する層であり、例えば上述したポリオレフィンにカルボキシル基を導入した酸変性ポリオレフィン(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン)を添加したものや、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)である。接着層13の一例は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンと、酸変性ポリエチレンの混合物である。