(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、ファンを駆動させるモータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、以下の実施形態では、軸方向を上下方向とし、ベース部に対してインペラ側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るファンの使用時の向きを限定する意図はない。
【0010】
<1.ファンの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るファン1の上面図である。
図2は、当該ファン1の縦断面図である。このファン1は、モータ20の動力でインペラ30を回転させることにより、気流を発生させる送風機である。ファン1は、例えば、コンピュータ等の電子機器の内部に搭載されて、電子部品を冷却するために用いられる。ただし、本発明のファン1は、電子機器以外の装置に搭載されるものであってもよい。例えば、本発明のファンは、家電製品、医療機器、輸送機器等に搭載されるものであってもよい。
【0011】
図1および
図2に示すように、本実施形態のファン1は、ベース部10、モータ20、およびインペラ30を有する。
【0012】
ベース部10は、モータ20を支持する金属製の板状部材である。ベース部10は、インペラ30よりも下側に位置する。また、ベース部10は、中心軸9に対して垂直に広がる。ベース部10は、取り付け対象となる機器の枠体に、例えば、ねじ止めにより固定される。ベース部10の材料には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。ただし、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外の材料で、ベース部10が形成されていてもよい。
【0013】
ベース部10の上面側の周縁部には、側壁部11が設けられている。側壁部11は、インペラ30の径方向外側に位置し、インペラ30の周囲において、周方向に延びる。側壁部11の周方向の両端部の間には、気体の排出口111が設けられる。また、側壁部11は、インペラ30と排出口111との間に突出する案内突起112を有する。なお、本実施形態のファン1は、取り付け対象となる機器の筐体90の内側面に沿って配置される。ファン1の駆動時には、筐体90に設けられた開口91を介して、筐体90内のファン1へ気体が取り込まれる。
【0014】
モータ20は、インペラ30を回転させるための動力源である。モータ20は、静止部40と回転部50とを有する。静止部40は、ベース部10に対して固定される。回転部50は、静止部40に対して回転可能に支持される。
図2に示すように、本実施形態の静止部40は、スリーブ41、スリーブホルダ42、およびステータ43を有する。本実施形態の回転部50は、シャフト51およびマグネット52を有する。
【0015】
シャフト51は、中心軸9に沿って配置される。スリーブ41は、シャフト51の周囲を取り囲む円筒状の部材である。スリーブ41は、カップ状のスリーブホルダ42の内部に収容される。スリーブ41およびスリーブホルダ42と、シャフト51との間には、潤滑オイルが満たされる。
図3は、スリーブ41の縦断面図である。
図3に示すように、スリーブ41の内周面には、複数の動圧溝411が設けられる。シャフト51が回転すると、動圧溝411によって潤滑オイルに動圧が誘起される。これにより、シャフト51の支持力が高まる。
【0016】
すなわち、本実施形態のモータ20は、静止部40側に設けられた静止軸受面であるスリーブ41の内周面と、回転部50側に設けられた回転軸受面であるシャフト51の外周面と、その間に介在する潤滑オイルとで構成される流体動圧軸受を有する。動圧溝411は、
図3のようにスリーブ41の内周面に設けられていてもよく、シャフト51の外周面に設けられていてもよい。
【0017】
ステータ43は、ステータコア431と複数のコイル432とを有する。ステータコア431は、スリーブホルダ42の外周面に固定される。また、ステータコア431は、径方向外側へ向けて突出した複数のティース433を有する。ステータコア431には、例えば、磁性体である積層鋼板が用いられる。コイル432は、各ティース433に巻かれた導線により構成される。なお、ステータコア431は、ベース10に対して、直接または他の部材を介して固定されてもよい。
【0018】
インペラ30は、シャフト51とともに回転して、遠心方向に気流を発生させる回転体である。
図4は、インペラ30の上面図である。
図1、
図2、および
図4に示すように、本実施形態のインペラ30は、樹脂部31と金属プレート32とを有する。樹脂部31は、羽根支持部311と、複数の羽根312とを含む。羽根支持部311は、シャフト51の上端部の周囲から、径方向外側へ広がる。羽根支持部311の内周部は、シャフト51に対して直接固定されていてもよく、他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。複数の羽根312は、羽根支持部311の径方向外側に位置し、周方向に等間隔に配列される。各羽根312は、径方向および周方向に対して斜めに広がる。なお、複数の羽根312は、必ずしも周方向に等間隔に配列されていなくてもよい。すなわち、複数の羽根312は、周方向に不均一な間隔で配列されてもよい。
【0019】
金属プレート32は、複数の羽根312の下側に配置された円環状の金属部材である。本実施形態の金属プレート32は、平らな金属板をプレス加工することによって、作製される。金属プレート32の材料には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。ただし、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属で、金属プレート32を形成してもよい。
【0020】
図5は、金属プレート32の上面図である。
図2および
図5に示すように、本実施形態の金属プレート32は、平板部321と、複数の傾斜部322とを有する。平板部321は、円環状かつ中心軸9に対して略垂直に広がる。複数の傾斜部322は、それぞれ、平板部321の径方向内側の端部から、径方向内側かつ軸方向上側へ、斜めに延びる。複数の傾斜部322は、周方向に略等間隔に配列される。また、
図5に示すように、平板部321は、複数の傾斜部322の間において、径方向外側へ凹む切り欠き323を有する。このため、金属プレート32の作製時には、平板部321の変形を抑制しながら、傾斜部322を立ち上げることができる。
【0021】
このように、本実施形態のインペラ30は、その少なくとも一部分が、樹脂製となっている。このため、インペラ30の全体が金属製である場合と比べて、インペラ30が軽量化される。特に、金属プレート32の厚みを抑えれば、インペラ30をより軽量化できる。例えば、金属プレート32の平板部321の軸方向の厚みを、羽根312の径方向の厚みよりも、小さくするとよい。また、金属プレート32の材料に、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の軽金属を用いれば、インペラ30をさらに軽量化できる。
【0022】
インペラ30を作製するときには、樹脂成型用の金型内に、予め金属プレート32を配置した状態で、金型内に溶融樹脂を流し込む。そして、流し込まれた溶融樹脂を固化させることにより、樹脂部31を成型する。すなわち、インサート成型を行う。このとき、金属プレート32の一部分は、樹脂部31を構成する樹脂に覆われる。これにより、金属プレート32に対して樹脂部31が固定される。特に、本実施形態では、金属プレート32の複数の傾斜部322が、それぞれ、羽根支持部311を構成する樹脂によって、径方向および軸方向に挟み込まれる。これにより、樹脂部31と金属プレート32とが、互いに分離することが抑制される。また、各傾斜部322は、傾斜部322の間に位置する樹脂によって、周方向にも挟み込まれる。このため、切り欠き323に流れ込んだ樹脂によって、樹脂部31と金属プレート32とが周方向に回転することが抑制される。これにより、樹脂部31と金属プレート32との相対回転が防止される。
【0023】
また、本実施形態の樹脂部31は、金属プレート32の平板部321の径方向内側に、環状の下面313を有する。樹脂部31の当該下面313と、平板部321の下面とは、略同等の高さで径方向に隣接する。また、樹脂部31の当該下面313は、ベース部10の上面と、僅かな空隙を介して軸方向に対向する。このような環状の下面313を設ければ、当該下面313が無い場合よりも、羽根支持部311を厚くすることができる。したがって、羽根支持部311の強度を高めることができる。
【0024】
また、羽根支持部311には、磁性体のヨーク53を介して、円環状のマグネット52が固定される。ヨーク53は、マグネット52の径方向外側に配置される。マグネット52の内周面には、N極とS極とが周方向に交互に着磁される。ただし、円環状のマグネット52に代えて、複数のマグネットを用いてもよい。複数のマグネットを用いる場合には、N極とS極とが交互に配置されるように、複数のマグネットを周方向に配列すればよい。
【0025】
コイル432に駆動電流を供給すると、ステータコア431の複数のティース433に磁束が生じる。そして、ティース433とマグネット52との間の磁束の作用によって、中心軸9を中心とするトルクが発生する。これにより、モータ20の回転部50およびインペラ30が回転する。インペラ30が回転すると、
図1中の白抜き矢印のように、筐体90に設けられた開口91を介して、筐体90内に空気が取り込まれる。そして、取り込まれた空気が、排出口111を通って遠心方向へ排出される。
【0026】
<2.熱源からの放熱経路について>
図2に示すように、ベース部10の下側には、回路基板60が配置される。回路基板60に搭載される電気回路は、モータ20のコイル432に駆動電流を供給するための回路であってもよく、ファン1が搭載される電子機器の機能を実現するため回路であってもよい。本実施形態の回路基板60は、CPU等の電子部品である発熱源61を有する。回路基板60の動作時には、CPUにおいて、他の部位よりも多くの熱が発生する。すなわち、本実施形態では、このCPUが、動作時の主な発熱源61となる。
【0027】
図6は、ファン1の部分縦断面図である。
図6に示すように、発熱源61の上面と、ベース部10の下面との間には、熱伝導率の高いサーマルグリース62が介在する。これにより、発熱源61とベース部10とが、熱的に接触する。また、
図6に示すように、金属プレート32の平板部321の下面と、ベース部10の上面とは、僅かな空隙70を介して軸方向に対向する。
【0028】
発熱源61において生じた熱は、まず、発熱源61からサーマルグリース62を介してベース部10に伝導する。続いて、当該熱が、
図3中の細い破線矢印のように、ベース部10の上面からの輻射によって、金属プレート32に伝わる。また、
図3中の太い破線矢印のように、インペラ30が発生させる気流は、金属プレート32の平板部321の上面に沿って、径方向外側へ流れる。当該気流が、金属プレート32から熱を吸収する。これにより、発熱源61から生じる熱が、空気中に効率よく放出される。
【0029】
本実施形態では、ベース部10の上面と金属プレート32の下面との間に介在する空隙70の軸方向の寸法dを、少なくとも一部の領域において、200μm以下とする。このように、ベース部10の上面と金属プレート32の下面とを接近させれば、ベース部10から金属プレート32へ、効率よく熱を輻射させることができる。したがって、発熱源61から生じる熱を、効率よく外部へ放出できる。
【0030】
より輻射効率を高めるためには、空隙70の軸方向の寸法dを、少なくとも一部の領域において150μm以下とすることが好ましい。また、空隙70の軸方向の寸法dを、少なくとも一部の領域において100μm以下とすれば、さらに好ましい。また、ベース部10の上面と金属プレート32の下面との間に介在する空隙70の軸方向の寸法dを、全ての領域において、上記の寸法以下とすれば、ベース部10から金属プレート32への輻射効率を、より一層向上させることができる。
【0031】
ベース部10および金属プレート32の材料には、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることが好ましい。熱伝導率の高いアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いれば、発熱源61から生じた熱を、効率よく伝導および輻射させることができる。したがって、放熱効率をより高めることができる。
【0032】
また、本実施形態の金属プレート32は、中心軸9の周囲において環状に繋がっている。このため、ベース部10に蓄積された熱を、全周に亘って空気中に放出できる。これにより、放熱効率をさらに高めることができる。
【0033】
また、
図6に示すように、本実施形態では、発熱源61の少なくとも一部分と、金属プレート32の平板部321の少なくとも一部分とが、軸方向に重なる。発熱源61と金属プレート32とを、このような位置関係で配置すれば、発熱源61からベース部10を介して金属プレート32に伝わる熱量の割合を増加させることができる。したがって、発熱源61から生じる熱を、より効率よく外部へ放出できる。
【0034】
特に、本実施形態では、発熱源61の中央と、金属プレート32の平板部とが、軸方向に重なる。発熱源61と金属プレート32とを、このような位置関係で配置すれば、発熱源61からベース部10を介して金属プレート32に伝わる熱量の割合を、さらに増加させることができる。したがって、発熱源61から生じる熱を、さらに効率よく外部へ放出できる。
【0035】
また、
図4および
図6に示すように、本実施形態では、羽根312の径方向外側の端部と、金属プレート32の径方向外側の端縁とが、略同一の径方向位置に配置される。このため、羽根312により生じる気流を、金属プレート32の上面全体に沿って流すことができる。これにより、金属プレート32に蓄積された熱を、より効率よく空気中へ放出させることができる。
【0036】
また、上述の通り、本実施形態のモータ20には、流体動圧軸受が用いられている。流体動圧軸受を用いれば、他方式の軸受を用いる場合よりも、インペラ30の上下動を抑制できる。したがって、ベース部10と金属プレート32の平板部321との接触を防止しながら、ベース部10の上面と平板部321の下面とを、接近させることができる。これにより、ベース部10から平板部321へ伝わる輻射熱を増加させることができる。その結果、発熱源61から生じる熱を、より効率よく外部へ放出できる。
【0037】
また、本実施形態では、インペラ30の大部分が樹脂成型で作製されるが、輻射熱を受ける面には、樹脂ではなく金属が用いられる。このようにすれば、樹脂成型時に熱収縮の影響などで樹脂部31の一部が変形する場合であっても、輻射熱を受ける面は、平坦な状態に維持できる。したがって、ベース部10からの輻射熱を、安定して受けることができる。
【0038】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0039】
図7は、一変形例に係るファン1Aの部分縦断面図である。
図7のインペラ30Aも、上記の実施形態と同じく、樹脂部31Aと金属プレート32Aとを有する。ただし、
図7の例では、樹脂部31Aの羽根支持部311Aが、金属プレート32Aまで延びていない。したがって、
図7の樹脂部31Aは、金属プレート32Aの径方向内側、かつ、羽根支持部311Aの径方向外側に、軸方向に貫通する貫通孔314Aを有する。
【0040】
図7のファン1Aを回転させると、羽根312Aによりインペラ30Aの上部空間から吸い込んだ空気の一部が、貫通孔314Aを通って、ベース部10Aの上面に当たる。このため、ベース部10Aに蓄積された熱の一部は、金属プレート32Aへ輻射することなく、空気中に放出される。すなわち、
図7のファン1Aは、ベース部10Aから金属プレート32Aを介して空気中へ放熱する第1の放熱経路と、ベース部10Aから直接空気中へ放熱する第2の放熱経路と、を有する。このように、複数の放熱経路で熱を放出することで、放熱効率がより高まる場合がある。
【0041】
図8は、他の変形例に係るファン1Bの縦断面図である。
図8のファン1Bは、カバー12Bを有する。カバー12Bは、インペラ30Bよりも上側において、中心軸9Bに対して垂直に広がる。そして、ベース部10B、側壁部11B、およびカバー12Bにより、インペラ30Bを収容するハウジングが形成される。カバー12Bの中央には、気体の取込口121Bが形成される。インペラ30Bを回転させると、カバー12Bの上部空間から取込口121Bを通ってハウジングの内部に、空気が取り込まれる。そして、インペラ30Bにより加速された空気が、排出口111Bを通って遠心方向へ排出される。
【0042】
図9は、他の変形例に係るファン1Cの縦断面図である。
図9の例では、ベース部材10Cから離れた位置に、発熱源である発熱源61Cが配置されている。そして、ベース部材10Cの下面と発熱源61Cとが、ヒートパイプ63Cにより接続されている。これにより、ベース部材10Cと発熱源である発熱源61Cとが、熱的に接触している。発熱源61Cにおいて生じた熱は、ヒートパイプ63Cを介してベース部材10Cに伝わる。そして、ベース部材10Cから金属プレート32Cに輻射熱が伝わり、当該熱が空気中に放出される。このように、発熱源は、必ずしもベース部材の下面に配置されていなくてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、CPUを発熱源としていたが、本発明における発熱源は、CPUに限られない。例えば、本発明における発熱源は、スイッチング素子や抵抗などの通電により発熱する他の電子部品であってもよい。
【0044】
また、ファンの細部の構成および形状は、本願の各図に示された構成および形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。