特許第6540023号(P6540023)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540023
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ファン
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20190628BHJP
   F04D 29/58 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   F04D29/28 N
   F04D29/58 M
   F04D29/28 K
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-265967(P2014-265967)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-125405(P2016-125405A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】日本電産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】玉岡 健人
【審査官】 田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0103011(US,A1)
【文献】 特開2011−153625(JP,A)
【文献】 特開昭64−053098(JP,A)
【文献】 特開2011−007080(JP,A)
【文献】 特開2013−032769(JP,A)
【文献】 特開2004−052735(JP,A)
【文献】 特開平10−205494(JP,A)
【文献】 実開昭58−114899(JP,U)
【文献】 実開平06−043295(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸を中心とするトルクを発生させるモータと、
前記トルクにより回転し、遠心方向に送風するインペラと、
前記インペラよりも下側において、前記中心軸に対して垂直に広がり、前記モータを支持する金属製のベース部と、
前記ベース部と熱的に接触する発熱源と、
を有し、
前記インペラは、
前記モータの回転部に直接または間接的に固定される羽根支持部および前記羽根支持部の径方向外側に位置する複数の羽根を含む樹脂部と、
前記複数の羽根の下側に配置された平板部をもつ金属プレートと、
を有し、
前記金属プレートの一部分が、前記樹脂部を構成する樹脂に覆われ、
前記金属プレートは、前記平板部の径方向内側の端部から、径方向内側かつ軸方向上側へ延びる傾斜部をさらに有し、
前記傾斜部が、前記羽根支持部を構成する樹脂により、径方向および軸方向に挟み込まれているとともに、
前記平板部の下面と、前記ベース部の上面とが、空隙を介して軸方向に対向し、
前記空隙の軸方向の寸法が、少なくとも一部の領域において、200μm以下である、ファン。
【請求項2】
請求項1に記載のファンにおいて、
前記空隙の軸方向の寸法が、全ての領域において、200μm以下である、ファン。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のファンにおいて、
前記金属プレートは、前記中心軸の周囲において環状に繋がっている、ファン。
【請求項4】
請求項1に記載のファンにおいて、
前記金属プレートは、周方向に配列された複数の前記傾斜部を有する、ファン。
【請求項5】
請求項4に記載のファンにおいて、
前記平板部は、複数の前記傾斜部の間において、径方向外側へ凹む切り欠きを有する、ファン。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記発熱源は、前記ベース部の下側に位置し、
前記発熱源の少なくとも一部分と、前記金属プレートの前記平板部の少なくとも一部分とが、軸方向に重なり、熱的に接触する、ファン。
【請求項7】
請求項6に記載のファンにおいて、
前記発熱源の中央と、前記金属プレートの前記平板部とが、軸方向に重なり、熱的に接触する、ファン。
【請求項8】
請求項1から請求項までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記羽根の径方向外側の端部と、前記金属プレートの径方向外側の端縁とが、略同一の径方向位置に配置される、ファン。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記樹脂部は、前記平板部の下面よりも径方向内側において、前記ベース部の上面に対向する下面を有する、ファン。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記平板部の軸方向の厚みは、前記羽根の径方向の厚みよりも小さい、ファン。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記金属プレートの材料は、アルミニウムまたはアルミニウム合金である、ファン。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記モータは、
前記ベース部に固定される静止部と、
前記インペラとともに回転する回転部と、
を有し、
前記静止部側に設けられた静止軸受面と、前記回転部側に設けられた回転軸受面とが、潤滑オイルを介して互いに対向し、
前記静止軸受面または前記回転軸受面は、前記潤滑オイルに動圧を誘起する動圧溝を有する、ファン。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記樹脂部は、前記金属プレートよりも径方向内側に、軸方向に貫通する貫通孔を有する、ファン。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載のファンにおいて、
前記インペラの径方向外側において、周方向に延びる側壁部をさらに有し、
前記インペラにより生じる気流は、前記側壁部の周方向の両端部の間に開口する排出口から、遠心方向へ排出され、
前記側壁部は、前記インペラと前記排出口との間に突出する案内突起を有する、ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心式のファンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ等の電子機器の内部には、電子部品を冷却する遠心式の冷却ファンが搭載されている。冷却ファンは、インペラを回転させて、遠心方向に気流を発生させる。そして、当該気流により、電子機器内の電子部品を冷却する。また、インペラにより生じる気流を利用して、冷却ファン自身の駆動回路を冷却する場合もある。従来の冷却ファンについては、例えば、米国特許出願公開第2011/0103011号明細書に記載されている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/0103011号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、電子機器の高機能化に伴い、冷却性能の優れた送風ファンが求められている。米国特許出願公開第2011/0103011号明細書には、heat transfer structure 2105とheat conducting structure 2110とを有するheat exchanger 2100が記載されている。当該heat exchanger 2100では、熱源であるCPU 2120が、heat conducting structure 2110内に配置されている。そして、CPU 2120の熱を、金属製のheat transfer structure 2105を介して外部へ放出している。
【0004】
米国特許出願公開第2011/0103011号明細書の構造において、放熱効率を高めるためには、heat transfer structure 2105の回転数を上げて、風量を増加させる必要がある。しかしながら、米国特許出願公開第2011/0103011号明細書では、heat transfer structure 2105の全体が金属製となっている。このため、当該構造では、heat transfer structure 2105の重量が重いため、回転数を上げて、気流を増加させることが困難である。
【0005】
本発明の目的は、回転体を軽量化し、かつ、熱源から生じる熱を効率よく外部へ放出できるファンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、ファンであって、上下に延びる中心軸を中心とするトルクを発生させるモータと、前記トルクにより回転し、遠心方向に送風するインペラと、前記インペラよりも下側において、前記中心軸に対して垂直に広がり、前記モータを支持する金属製のベース部と、前記ベース部と熱的に接触する発熱源と、を有し、前記インペラは、前記モータの回転部に直接または間接的に固定される羽根支持部および前記羽根支持部の径方向外側に位置する複数の羽根を含む樹脂部と、前記複数の羽根の下側に配置された平板部をもつ金属プレートと、を有し、前記金属プレートの一部分が、前記樹脂部を構成する樹脂に覆われ、前記平板部の下面と、前記ベース部の上面とが、空隙を介して軸方向に対向し、前記空隙の軸方向の寸法が、少なくとも一部の領域において、200μm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、インペラの一部分を樹脂製とすることでインペラを軽量化し、かつ、発熱源から生じる熱を効率よく外部へ放出できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ファンの上面図である。
図2図2は、ファンの縦断面図である。
図3図3は、スリーブの縦断面図である。
図4図4は、インペラの上面図である。
図5図5は、金属プレートの上面図である。
図6図6は、ファンの部分縦断面図である。
図7図7は、変形例に係るファンの部分縦断面図である。
図8図8は、変形例に係るファンの縦断面図である。
図9図9は、変形例に係るファンの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本願では、ファンを駆動させるモータの中心軸と平行な方向を「軸方向」、モータの中心軸に直交する方向を「径方向」、モータの中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、以下の実施形態では、軸方向を上下方向とし、ベース部に対してインペラ側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この上下方向の定義により、本発明に係るファンの使用時の向きを限定する意図はない。
【0010】
<1.ファンの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るファン1の上面図である。図2は、当該ファン1の縦断面図である。このファン1は、モータ20の動力でインペラ30を回転させることにより、気流を発生させる送風機である。ファン1は、例えば、コンピュータ等の電子機器の内部に搭載されて、電子部品を冷却するために用いられる。ただし、本発明のファン1は、電子機器以外の装置に搭載されるものであってもよい。例えば、本発明のファンは、家電製品、医療機器、輸送機器等に搭載されるものであってもよい。
【0011】
図1および図2に示すように、本実施形態のファン1は、ベース部10、モータ20、およびインペラ30を有する。
【0012】
ベース部10は、モータ20を支持する金属製の板状部材である。ベース部10は、インペラ30よりも下側に位置する。また、ベース部10は、中心軸9に対して垂直に広がる。ベース部10は、取り付け対象となる機器の枠体に、例えば、ねじ止めにより固定される。ベース部10の材料には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。ただし、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外の材料で、ベース部10が形成されていてもよい。
【0013】
ベース部10の上面側の周縁部には、側壁部11が設けられている。側壁部11は、インペラ30の径方向外側に位置し、インペラ30の周囲において、周方向に延びる。側壁部11の周方向の両端部の間には、気体の排出口111が設けられる。また、側壁部11は、インペラ30と排出口111との間に突出する案内突起112を有する。なお、本実施形態のファン1は、取り付け対象となる機器の筐体90の内側面に沿って配置される。ファン1の駆動時には、筐体90に設けられた開口91を介して、筐体90内のファン1へ気体が取り込まれる。
【0014】
モータ20は、インペラ30を回転させるための動力源である。モータ20は、静止部40と回転部50とを有する。静止部40は、ベース部10に対して固定される。回転部50は、静止部40に対して回転可能に支持される。図2に示すように、本実施形態の静止部40は、スリーブ41、スリーブホルダ42、およびステータ43を有する。本実施形態の回転部50は、シャフト51およびマグネット52を有する。
【0015】
シャフト51は、中心軸9に沿って配置される。スリーブ41は、シャフト51の周囲を取り囲む円筒状の部材である。スリーブ41は、カップ状のスリーブホルダ42の内部に収容される。スリーブ41およびスリーブホルダ42と、シャフト51との間には、潤滑オイルが満たされる。図3は、スリーブ41の縦断面図である。図3に示すように、スリーブ41の内周面には、複数の動圧溝411が設けられる。シャフト51が回転すると、動圧溝411によって潤滑オイルに動圧が誘起される。これにより、シャフト51の支持力が高まる。
【0016】
すなわち、本実施形態のモータ20は、静止部40側に設けられた静止軸受面であるスリーブ41の内周面と、回転部50側に設けられた回転軸受面であるシャフト51の外周面と、その間に介在する潤滑オイルとで構成される流体動圧軸受を有する。動圧溝411は、図3のようにスリーブ41の内周面に設けられていてもよく、シャフト51の外周面に設けられていてもよい。
【0017】
ステータ43は、ステータコア431と複数のコイル432とを有する。ステータコア431は、スリーブホルダ42の外周面に固定される。また、ステータコア431は、径方向外側へ向けて突出した複数のティース433を有する。ステータコア431には、例えば、磁性体である積層鋼板が用いられる。コイル432は、各ティース433に巻かれた導線により構成される。なお、ステータコア431は、ベース10に対して、直接または他の部材を介して固定されてもよい。
【0018】
インペラ30は、シャフト51とともに回転して、遠心方向に気流を発生させる回転体である。図4は、インペラ30の上面図である。図1図2、および図4に示すように、本実施形態のインペラ30は、樹脂部31と金属プレート32とを有する。樹脂部31は、羽根支持部311と、複数の羽根312とを含む。羽根支持部311は、シャフト51の上端部の周囲から、径方向外側へ広がる。羽根支持部311の内周部は、シャフト51に対して直接固定されていてもよく、他の部材を介して間接的に固定されていてもよい。複数の羽根312は、羽根支持部311の径方向外側に位置し、周方向に等間隔に配列される。各羽根312は、径方向および周方向に対して斜めに広がる。なお、複数の羽根312は、必ずしも周方向に等間隔に配列されていなくてもよい。すなわち、複数の羽根312は、周方向に不均一な間隔で配列されてもよい。
【0019】
金属プレート32は、複数の羽根312の下側に配置された円環状の金属部材である。本実施形態の金属プレート32は、平らな金属板をプレス加工することによって、作製される。金属プレート32の材料には、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。ただし、アルミニウムまたはアルミニウム合金以外の金属で、金属プレート32を形成してもよい。
【0020】
図5は、金属プレート32の上面図である。図2および図5に示すように、本実施形態の金属プレート32は、平板部321と、複数の傾斜部322とを有する。平板部321は、円環状かつ中心軸9に対して略垂直に広がる。複数の傾斜部322は、それぞれ、平板部321の径方向内側の端部から、径方向内側かつ軸方向上側へ、斜めに延びる。複数の傾斜部322は、周方向に略等間隔に配列される。また、図5に示すように、平板部321は、複数の傾斜部322の間において、径方向外側へ凹む切り欠き323を有する。このため、金属プレート32の作製時には、平板部321の変形を抑制しながら、傾斜部322を立ち上げることができる。
【0021】
このように、本実施形態のインペラ30は、その少なくとも一部分が、樹脂製となっている。このため、インペラ30の全体が金属製である場合と比べて、インペラ30が軽量化される。特に、金属プレート32の厚みを抑えれば、インペラ30をより軽量化できる。例えば、金属プレート32の平板部321の軸方向の厚みを、羽根312の径方向の厚みよりも、小さくするとよい。また、金属プレート32の材料に、アルミニウムまたはアルミニウム合金等の軽金属を用いれば、インペラ30をさらに軽量化できる。
【0022】
インペラ30を作製するときには、樹脂成型用の金型内に、予め金属プレート32を配置した状態で、金型内に溶融樹脂を流し込む。そして、流し込まれた溶融樹脂を固化させることにより、樹脂部31を成型する。すなわち、インサート成型を行う。このとき、金属プレート32の一部分は、樹脂部31を構成する樹脂に覆われる。これにより、金属プレート32に対して樹脂部31が固定される。特に、本実施形態では、金属プレート32の複数の傾斜部322が、それぞれ、羽根支持部311を構成する樹脂によって、径方向および軸方向に挟み込まれる。これにより、樹脂部31と金属プレート32とが、互いに分離することが抑制される。また、各傾斜部322は、傾斜部322の間に位置する樹脂によって、周方向にも挟み込まれる。このため、切り欠き323に流れ込んだ樹脂によって、樹脂部31と金属プレート32とが周方向に回転することが抑制される。これにより、樹脂部31と金属プレート32との相対回転が防止される。
【0023】
また、本実施形態の樹脂部31は、金属プレート32の平板部321の径方向内側に、環状の下面313を有する。樹脂部31の当該下面313と、平板部321の下面とは、略同等の高さで径方向に隣接する。また、樹脂部31の当該下面313は、ベース部10の上面と、僅かな空隙を介して軸方向に対向する。このような環状の下面313を設ければ、当該下面313が無い場合よりも、羽根支持部311を厚くすることができる。したがって、羽根支持部311の強度を高めることができる。
【0024】
また、羽根支持部311には、磁性体のヨーク53を介して、円環状のマグネット52が固定される。ヨーク53は、マグネット52の径方向外側に配置される。マグネット52の内周面には、N極とS極とが周方向に交互に着磁される。ただし、円環状のマグネット52に代えて、複数のマグネットを用いてもよい。複数のマグネットを用いる場合には、N極とS極とが交互に配置されるように、複数のマグネットを周方向に配列すればよい。
【0025】
コイル432に駆動電流を供給すると、ステータコア431の複数のティース433に磁束が生じる。そして、ティース433とマグネット52との間の磁束の作用によって、中心軸9を中心とするトルクが発生する。これにより、モータ20の回転部50およびインペラ30が回転する。インペラ30が回転すると、図1中の白抜き矢印のように、筐体90に設けられた開口91を介して、筐体90内に空気が取り込まれる。そして、取り込まれた空気が、排出口111を通って遠心方向へ排出される。
【0026】
<2.熱源からの放熱経路について>
図2に示すように、ベース部10の下側には、回路基板60が配置される。回路基板60に搭載される電気回路は、モータ20のコイル432に駆動電流を供給するための回路であってもよく、ファン1が搭載される電子機器の機能を実現するため回路であってもよい。本実施形態の回路基板60は、CPU等の電子部品である発熱源61を有する。回路基板60の動作時には、CPUにおいて、他の部位よりも多くの熱が発生する。すなわち、本実施形態では、このCPUが、動作時の主な発熱源61となる。
【0027】
図6は、ファン1の部分縦断面図である。図6に示すように、発熱源61の上面と、ベース部10の下面との間には、熱伝導率の高いサーマルグリース62が介在する。これにより、発熱源61とベース部10とが、熱的に接触する。また、図6に示すように、金属プレート32の平板部321の下面と、ベース部10の上面とは、僅かな空隙70を介して軸方向に対向する。
【0028】
発熱源61において生じた熱は、まず、発熱源61からサーマルグリース62を介してベース部10に伝導する。続いて、当該熱が、図3中の細い破線矢印のように、ベース部10の上面からの輻射によって、金属プレート32に伝わる。また、図3中の太い破線矢印のように、インペラ30が発生させる気流は、金属プレート32の平板部321の上面に沿って、径方向外側へ流れる。当該気流が、金属プレート32から熱を吸収する。これにより、発熱源61から生じる熱が、空気中に効率よく放出される。
【0029】
本実施形態では、ベース部10の上面と金属プレート32の下面との間に介在する空隙70の軸方向の寸法dを、少なくとも一部の領域において、200μm以下とする。このように、ベース部10の上面と金属プレート32の下面とを接近させれば、ベース部10から金属プレート32へ、効率よく熱を輻射させることができる。したがって、発熱源61から生じる熱を、効率よく外部へ放出できる。
【0030】
より輻射効率を高めるためには、空隙70の軸方向の寸法dを、少なくとも一部の領域において150μm以下とすることが好ましい。また、空隙70の軸方向の寸法dを、少なくとも一部の領域において100μm以下とすれば、さらに好ましい。また、ベース部10の上面と金属プレート32の下面との間に介在する空隙70の軸方向の寸法dを、全ての領域において、上記の寸法以下とすれば、ベース部10から金属プレート32への輻射効率を、より一層向上させることができる。
【0031】
ベース部10および金属プレート32の材料には、アルミニウムまたはアルミニウム合金を用いることが好ましい。熱伝導率の高いアルミニウムまたはアルミニウム合金を用いれば、発熱源61から生じた熱を、効率よく伝導および輻射させることができる。したがって、放熱効率をより高めることができる。
【0032】
また、本実施形態の金属プレート32は、中心軸9の周囲において環状に繋がっている。このため、ベース部10に蓄積された熱を、全周に亘って空気中に放出できる。これにより、放熱効率をさらに高めることができる。
【0033】
また、図6に示すように、本実施形態では、発熱源61の少なくとも一部分と、金属プレート32の平板部321の少なくとも一部分とが、軸方向に重なる。発熱源61と金属プレート32とを、このような位置関係で配置すれば、発熱源61からベース部10を介して金属プレート32に伝わる熱量の割合を増加させることができる。したがって、発熱源61から生じる熱を、より効率よく外部へ放出できる。
【0034】
特に、本実施形態では、発熱源61の中央と、金属プレート32の平板部とが、軸方向に重なる。発熱源61と金属プレート32とを、このような位置関係で配置すれば、発熱源61からベース部10を介して金属プレート32に伝わる熱量の割合を、さらに増加させることができる。したがって、発熱源61から生じる熱を、さらに効率よく外部へ放出できる。
【0035】
また、図4および図6に示すように、本実施形態では、羽根312の径方向外側の端部と、金属プレート32の径方向外側の端縁とが、略同一の径方向位置に配置される。このため、羽根312により生じる気流を、金属プレート32の上面全体に沿って流すことができる。これにより、金属プレート32に蓄積された熱を、より効率よく空気中へ放出させることができる。
【0036】
また、上述の通り、本実施形態のモータ20には、流体動圧軸受が用いられている。流体動圧軸受を用いれば、他方式の軸受を用いる場合よりも、インペラ30の上下動を抑制できる。したがって、ベース部10と金属プレート32の平板部321との接触を防止しながら、ベース部10の上面と平板部321の下面とを、接近させることができる。これにより、ベース部10から平板部321へ伝わる輻射熱を増加させることができる。その結果、発熱源61から生じる熱を、より効率よく外部へ放出できる。
【0037】
また、本実施形態では、インペラ30の大部分が樹脂成型で作製されるが、輻射熱を受ける面には、樹脂ではなく金属が用いられる。このようにすれば、樹脂成型時に熱収縮の影響などで樹脂部31の一部が変形する場合であっても、輻射熱を受ける面は、平坦な状態に維持できる。したがって、ベース部10からの輻射熱を、安定して受けることができる。
【0038】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0039】
図7は、一変形例に係るファン1Aの部分縦断面図である。図7のインペラ30Aも、上記の実施形態と同じく、樹脂部31Aと金属プレート32Aとを有する。ただし、図7の例では、樹脂部31Aの羽根支持部311Aが、金属プレート32Aまで延びていない。したがって、図7の樹脂部31Aは、金属プレート32Aの径方向内側、かつ、羽根支持部311Aの径方向外側に、軸方向に貫通する貫通孔314Aを有する。
【0040】
図7のファン1Aを回転させると、羽根312Aによりインペラ30Aの上部空間から吸い込んだ空気の一部が、貫通孔314Aを通って、ベース部10Aの上面に当たる。このため、ベース部10Aに蓄積された熱の一部は、金属プレート32Aへ輻射することなく、空気中に放出される。すなわち、図7のファン1Aは、ベース部10Aから金属プレート32Aを介して空気中へ放熱する第1の放熱経路と、ベース部10Aから直接空気中へ放熱する第2の放熱経路と、を有する。このように、複数の放熱経路で熱を放出することで、放熱効率がより高まる場合がある。
【0041】
図8は、他の変形例に係るファン1Bの縦断面図である。図8のファン1Bは、カバー12Bを有する。カバー12Bは、インペラ30Bよりも上側において、中心軸9Bに対して垂直に広がる。そして、ベース部10B、側壁部11B、およびカバー12Bにより、インペラ30Bを収容するハウジングが形成される。カバー12Bの中央には、気体の取込口121Bが形成される。インペラ30Bを回転させると、カバー12Bの上部空間から取込口121Bを通ってハウジングの内部に、空気が取り込まれる。そして、インペラ30Bにより加速された空気が、排出口111Bを通って遠心方向へ排出される。
【0042】
図9は、他の変形例に係るファン1Cの縦断面図である。図9の例では、ベース部材10Cから離れた位置に、発熱源である発熱源61Cが配置されている。そして、ベース部材10Cの下面と発熱源61Cとが、ヒートパイプ63Cにより接続されている。これにより、ベース部材10Cと発熱源である発熱源61Cとが、熱的に接触している。発熱源61Cにおいて生じた熱は、ヒートパイプ63Cを介してベース部材10Cに伝わる。そして、ベース部材10Cから金属プレート32Cに輻射熱が伝わり、当該熱が空気中に放出される。このように、発熱源は、必ずしもベース部材の下面に配置されていなくてもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、CPUを発熱源としていたが、本発明における発熱源は、CPUに限られない。例えば、本発明における発熱源は、スイッチング素子や抵抗などの通電により発熱する他の電子部品であってもよい。
【0044】
また、ファンの細部の構成および形状は、本願の各図に示された構成および形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、遠心式のファンに利用できる。
【符号の説明】
【0046】
1,1A,1B,1C ファン
9,9B 中心軸
10,10A,10B,10C ベース部
11 側壁部
12B カバー
20 モータ
30,30A,30B インペラ
31,31A 樹脂部
32,32A,32C 金属プレート
40,40A 静止部
41 スリーブ
42 スリーブホルダ
43 ステータ
50 回転部
51 シャフト
52 マグネット
53 ヨーク
60 回路基板
61,61C 発熱源
62 サーマルグリース
63C ヒートパイプ
70 空隙
90 筐体
91 開口
111,111B 排出口
112 案内突起
121B 取込口
311,311A 羽根支持部
312,312A 羽根
313 下面
314A 貫通孔
321 平板部
322 傾斜部
411 動圧溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9