(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル(A1)を含む二重結合を有するモノマー(A)を重合反応させてポリマー(B)を得る第1工程、次いで、アルコール(C)を含有する溶剤中で、二つ以上のビニルエーテル基を有する多官能ビニルエーテル(D)およびラジカル重合開始剤を混合し、ラジカル重合反応により多官能ビニルエーテル(D)と未反応のモノマー(A)を反応させる第2工程を順次行う樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
【0017】
<第1工程>
第1工程は二重結合を有するモノマー(A)を重合反応させてポリマー(B)を得る工程であり、特に制限はなく、公知のラジカル重合反応によってポリマー(B)を得ることができる。反応は無溶剤でも構わないが、粘着剤に用いる場合はハンドリングの観点から後述する溶剤を使用することが好ましい。反応は、熱重合のようにラジカル重合開始剤(以下、「重合開始剤」と略記することがある)を用いなくても構わないが、分子量制御の観点から後述するラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。その他、連鎖移動剤等の公知の添加剤を用いてもよい。
【0018】
<二重結合を有するモノマー(A)>
二重結合を有するモノマー(A)(以下、「モノマー(A)」と略記することがある)は、少なくとも(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル(A1)を含むが、ラジカル重合反応できるものであれば特に制限はなく、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル(A1)以外のモノマーを含んでもよい。モノマー(A)の代表的なものとしては、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニルエーテル基、ビニル基等のエチレン性不飽和二重結合を少なくとも一つ有するモノマーが挙げられる。モノマー(A)は、同一分子内にエチレン性不飽和二重結合を複数有していても良い。また、後述する架橋剤を用いて粘着剤の形態で使用する場合には、架橋剤と反応し得る水酸基やカルボキシル基等の反応性官能基を有するモノマーを一部使用することが好ましい。
【0019】
<(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル(A1)>
本発明では、モノマー(A)として(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル(A1)が含まれる。尚、本明細書中では、アクリル酸とメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸、アクリレートとメタクリレートを総称して(メタ)アクリレート、アクリロイルとメタアクリロイルを総称して(メタ)アクリロイルと、それぞれ略記することがある。また、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステル(A1)を「モノマー(A1)」と略記することがある。
【0020】
分子内に二重結合を一つ有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、水酸基またはカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0022】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0023】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2−カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−カルボキシブチル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシオクチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシデシルフタレート等が挙げられる。
【0024】
また、上記以外の分子内に二重結合を一つ有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸とエチレンオキサイド等の多価アルコールとが一部エステル交換反応した(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられ、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペントキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートや、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアリールオキシポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0025】
分子内に二重結合を二つ以上有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0026】
<モノマー(A1)以外の二重結合を有するモノマー(A)>
モノマー(A1)以外の分子内に二重結合を一つ有するモノマー(A)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アミド、カルボン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル等が挙げられる。
【0027】
(メタ)アクリル酸アミドとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
カルボン酸ビニルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0029】
ビニルエーテルとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0030】
モノマー(A1)以外の二重結合を二つ以上有するモノマー(A)としては、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類等が挙げられる。また、後述する多官能ビニルエーテル(D)も用いることができる。
【0031】
上記モノマー(A)は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、モノマー(A)は、その一部または全部が、金属水酸化物やアミン等の塩基性化合物で中和されていてもよい。
【0032】
上記の二重結合を二つ以上有するモノマー(A)は、アルコール(C)を含む溶剤中で重合反応を実施した場合に、重合反応時のアルコール(C)への連鎖移動によるポリマー(B)の分子量低下を抑制する目的として好適に使用される。
【0033】
<ポリマー(B)>
ポリマー(B)は、モノマー(A)を重合反応させて得られる。後述する架橋剤を用いて粘着剤の形態で使用する場合には、架橋剤と反応し得る水酸基やカルボキシル基等の反応性官能基を有するモノマーを一部使用して得られるポリマー、すなわち水酸基やカルボキシル基等の反応性官能基を有するポリマー(B)であることが好ましい。
【0034】
ポリマー(B)の分子量は、例えば粘着剤の形態で使用する場合には、粘着力や保持力等の諸物性に大きく影響を及ぼす他、塗工時の粘度にも影響を及ぼす重要なパラメータである。用いる基材や用途あるいは塗工方法等にもよるが、ポリマー(B)の分子量は重量平均分子量で50,000〜1,000,000が好ましく、200,000〜800,000がより好ましい。意図する粘着力や保持力等の粘着物性、あるいは適切な塗工粘度を得るためには、第1工程で得たポリマー(B)の所望の分子量が第2工程後も維持されることが好ましい。第2工程の実施前後での分子量変化率は140%以下であることが好ましく、110%以下であることがより好ましい。
【0035】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイルやt−ブチルパーベンゾエート、クメンヒドロパーオキシドやジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネートやジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエートやt−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシドやジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドなどの有機過酸化物が挙げられる。
【0036】
アゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)や2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)やジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)や2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系化合物が挙げられる。
【0037】
上記重合開始剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用する溶剤の沸点にもよるが、重合温度は60〜90℃の範囲が好ましく、重合時間は5〜12時間が好ましい。重合開始剤の使用量は、これら重合温度や重合時間、使用するモノマーの量や組成等に応じて設定すればよい。有機過酸化物は強い水素引き抜き能を有するものがあるが、開始剤効率がアゾ系化合物に比べ優れているために好適に用いられる。
【0038】
<溶剤>
溶剤は、ポリマー(B)を溶解しハンドリング性に優れる液体状態で扱う目的で用いる。溶剤は、後述するアルコール(C)を含んでもよく、ポリマー(B)を溶解できる溶剤であり、ラジカル重合反応を著しく阻害するものでなければ特に制限はない。アルコール(C)以外の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、ソルベントナフサ、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノルマルヘプタン、イソオクタン、ノルマルデカン等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸セロソルブ、酢酸アミル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロピルエーテル、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ブチルカルビトール等のエーテル系溶剤や、N-メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、高分子量のポリマー(B)に対する溶解性が良く、低粘度で沸点が低いと、粘着シート製造時の乾燥が容易になるため好ましい。そのような溶剤としては、分子量200以下、かつ沸点150℃以下であるものが好ましい態様として挙げられ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチルが好ましい。
【0039】
<第2工程>
第2工程は、第1工程に次いで、アルコール(C)を含有する溶剤中で、多官能ビニルエーテル(D)を混合し、ラジカル重合反応によって未反応のモノマー(A)量を低減する工程である。多官能ビニルエーテル(D)は、ラジカル重合開始剤から生成したラジカルを起点に樹脂組成物中に残存した未反応のモノマー(A)と共に重合反応に供される。
【0040】
ラジカル重合反応は、重合開始剤を用いて行い、重合開始剤としては第1工程で例示
したものが挙げられる。第1工程と第2工程で使用される重合開始剤はそれぞれが同じであっても良いし、異なっていてもよい。また重合開始剤は、第1工程で消費されなかった未開裂の重合開始剤を用いても良いし、第2工程で添加しても良い。
【0041】
樹脂の製造段階において未反応のモノマーが樹脂組成物中に一部残留すると、例えば粘着剤の形態として用いた場合、モノマー由来の臭気等による粘着シート製造環境や、使用環境の悪化が問題となる場合がある。また、そのような未反応のモノマーを含む樹脂組成物を用いて製造された粘着シートを人体等に貼付して使用するような場合、未反応のモノマーが皮膚刺激の原因ともなり得る。従って、このような用途への使用においては、できるだけ樹脂組成物中の未反応のモノマー量を低減することが要求されている。第2工程後に残留する未反応のモノマー(A)量は、使用するモノマー(A)の種類、分子量、沸点等にもよるが、樹脂組成物100質量部中に0.2質量部以下が好ましく、0.1質量部以下がより好ましく、0.05質量部以下がさらに好ましい。
【0042】
<アルコール(C)>
アルコール(C)としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の脂肪族アルコールの他、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールモノエーテル等が挙げられる。
なかでも、分子量200以下、かつ沸点150℃以下であるものが好ましい態様として挙げられ、特にメタノール、エタノール、イソプロパノールが、第二工程で分子量増大することなく未反応モノマー量を低減できるため好ましい。
【0043】
第2工程に用いるアルコール(C)の使用量は、ポリマー(B)100質量部に対して10〜200質量部が好ましく、50〜100質量部がより好ましい。また、これらのアルコール(C)は1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
<多官能ビニルエーテル(D)>
多官能ビニルエーテル(D)としては、分子内に二つ以上のビニルエーテル基を有する化合物であれば特に制限なく、(メタ)アクリロイル基等のその他の二重結合性官能基や、水酸基またはカルボキシル基等の反応性官能基等を有してもよい。なお、本明細書中では「CH
2=CH−O−」で表される基を「ビニルエーテル基」と記載する。
【0045】
多官能ビニルエーテル(D)としては、例えば、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,5−ペンタンジオールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリシクロデカンジメタノールジビニルエーテル、水素化ビスフェノールAジビニルエーテル等のアルカンジオールジビニルエーテル類、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル等のアルキレングリコールジビニルエーテル類、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルのエチレンオキシド付加体(エチレンオキシド付加モル数に制限はないが、1〜30モル付加体が好ましい。例えば、日本カーバイド社製、TMPEOTVE−30、エチレンオキシド付加モル数3)等のトリビニルエーテル類等が挙げられる。
【0046】
多官能ビニルエーテル(D)の官能基数は、分子内にビニルエーテル基を二〜六つ有するものが好ましく、二〜三つがより好ましい。なかでも、トリメチロールプロパントリビニルエーテルのエチレンオキシド3モル付加体は、分子量が低く分子運動性に優れるために反応性が良好である一方、粘着シートにした際の被着体へのブリードが抑制されやすい点から特に好適に用いられる。
【0047】
第2工程で用いる多官能ビニルエーテル(D)の使用量としては、第1工程で残存した未反応のモノマー(A)量によって決定すればよい。未反応のモノマー(A)量が少量であるほど、多官能ビニルエーテル(D)量も少量の使用でよく、ポリマー(B)の高分子量化の恐れがより小さくなる点で好ましい。従って、第2工程は、第1工程におけるモノマー(A)の転化率が90質量%以上となった後に行うことが好ましく、95質量%以上となった後に行うことがより好ましく、98質量%以上となった後に行うことがさらに好ましい。反応時間は特に制限はなく、反応温度やラジカル重合開始剤の消費量等によって調整すればよいが、1〜18時間が好ましく、2〜8時間がより好ましい。反応温度に特に制限はないが、粘度、反応性、および用いるアルコール(C)の沸点の観点等から、20〜150℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。
【0048】
<粘着剤>
次に、本発明の粘着剤について説明する。本発明の粘着剤とは、本発明の樹脂組成物と下記で説明する架橋剤とを含有するものを意味する。
【0049】
<架橋剤>
本発明の粘着剤で使用される架橋剤について説明する。架橋剤は、ポリマー(B)中の水酸基やカルボキシル基等の反応性官能基と架橋反応し、高弾性、かつ高い密着性を示す粘着剤を得る目的で用いられる。
【0050】
架橋剤は、粘着剤中のポリマー(B)中の水酸基やカルボキシル基等の反応性官能基と架橋反応し、かつアルコール(C)と反応しても架橋構造の形成に悪影響がない架橋剤が好ましく、金属キレート化合物およびオキサゾリン化合物が好ましい。第2工程後にアルコール(C)を除去した上でイソシアネート化合物やエポキシ化合物等からなる架橋剤を用いて粘着剤あるいは粘着シートを製造してもよい。
【0051】
(金属キレート化合物)
金属キレート化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロム、ジルコニウムなどの多価金属に2,4−ペンタンジオンやアセト酢酸エチル、アセチルアセトン等が配位した化合物が挙げられる。これら金属キレート化合物は、アルコールと容易に反応するが、交換反応であるため架橋形成への影響は小さい。また、金属キレート化合物を架橋剤として使用する場合、ポリマー(B)中の反応性官能基との反応性をより遅延し、塗液中での保存安定性を向上するため、配位性化合物を併用してもよい。上記配位性化合物としては、アセチルアセトン、ジメチルグリオキシム、オキシン、ジチゾン、エチレンジアミン四酢酸(別名:EDTA)のようなポリアミノオキシ酸、クエン酸のようなオキシカルボン酸、縮合リン酸等が挙げられる。その中でも、アセチルアセトンはアルコールに可溶であり、揮発性を有し除去することが容易であるため、好ましい。
【0052】
(オキサゾリン化合物)
オキサゾリン化合物としては、分子内にオキサゾリン基を二つ以上有する化合物が好適に用いられ、例えば、2’−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エテンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エテンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−プロペンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)等を挙げることができる。または、2−イソプロペニル−2−オキサゾリンや、2−イソプロペニル−4,4−ジメチル−2−オキサゾリンなどのビニル系モノマーと、これらのビニル系モノマーと共重合し得る他のモノマーとの共重合体でもよい。これらオキサゾリン基含有共重合体としては、例えば、(株)日本触媒のエポクロスシリーズ等が挙げられる。その中でも、WS−500,700はアルコール溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0053】
これら架橋剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明に使用する架橋剤の使用量は、架橋剤中に含有される官能基のモル数と、ポリマー(B)中の架橋剤と反応し得る反応性官能基のモル数との比が、ラベルやシール等の用途の場合は0.05〜0.6となる量を使用することが好ましい。又、表面保護フィルム等の用途の場合は、0.8〜1.5となる量を使用することが好ましい。
【0055】
<添加剤>
本発明の粘着剤には、架橋剤の他に、一般的に粘着剤に使用される粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤、レベリング剤、各種薬剤、充填剤、顔料、染料等の各種添加剤を必要に応じて加えてもよい。これら添加剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いてもよく、添加剤の使用量は、特に限定されるものではない。
【0056】
粘着付与剤としては、テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン誘導体(ロジン、重合ロジン、水添ロジン、およびそれらのグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール類とのエステル化物、樹脂酸ダイマー等)など公知のものが使用できる。可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステルなど公知のものが使用できる。
【0057】
<粘着シート>
本発明の粘着剤を使用して、基材上に粘着剤を含んでなる層を具備してなる粘着シートを得ることができる。ここで、粘着剤および粘着シートについて一般的な説明をする。粘着シートの基本的積層構成は、フィルム状基材/粘着剤層/剥離性フィルムのような片面粘着シート、あるいは剥離性フィルム/粘着剤層/フィルム状基材/粘着剤層/剥離性フィルムのような両面粘着シートである。使用時に、剥離性フィルムが剥がされ、粘着剤層が被着体に貼付される。粘着剤は、貼着の際被着体に粘着剤層が触れるその瞬間に粘着剤層がタックを有すのみならず、粘着剤以外の接着剤とは異なり、貼着中も完全に固化することなく、タックと適度な固さを有しつつ、貼着状態を維持するための凝集力を有することが必要である。また、凝集力はポリマー(B)の分子量に大きく依存する。
【0058】
粘着力は、粘着シートの評価方法の一つであり、JISZ0237:2009に規定される方法などによって評価される。粘着力は粘着剤、基材、被着体、測定環境などによって異なってくるが、用途に合わせた所望の粘着力を得ることが必要である。ラベル用途等に用いる場合はステンレス(SUS)基材に対して10N/25mm以上であることが好ましく、12N/25mm以上であることがより好ましい。剥離時は基材/粘着剤間または被着体/粘着剤間で界面剥離が生じる場合や、基材、粘着剤、あるいは被着体で凝集破壊が生じる場合があり、用途等によるが、被着体/粘着剤間での界面剥離であることが好ましい。
【0059】
本明細書でいう「基材」とは、以下に示すフィルム状基材、紙、金属箔、蒸着箔、発泡体、不織布およびそれらが積層されたものを挙げることができる。例えば、ポリヒドロキシエテンフィルムやトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロペン、ポリエテン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系樹脂のフィルム、ポリエテンテレフタレートやポリブテンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルム、ポリカーボネート系樹脂のフィルム、ポリノルボルネン系樹脂のフィルム、ポリアリレート系樹脂のフィルム、プロペン酸系樹脂のフィルム、ポリフェニレンサルファイド樹脂のフィルム、ポリエテニルベンゼン樹脂のフィルム、ビニル系樹脂のフィルム、ポリアミド系樹脂のフィルム、ポリイミド系樹脂のフィルム、オキシラン系樹脂等のプラスチックフィルム、上質紙、クラフト紙、グラシン紙、アート紙、コート紙、感熱発色紙、防湿加工紙等の紙、銅、アルミニウム、ステンレス等の金属箔、前記金属箔とプラスチックフィルムとを積層した複合シート、アルミニウムやシリカ等を蒸着した蒸着箔、ポリウレタン製やポリエチレン製の平板状の発泡体、不織布等が挙げられる。その他、粘着シートの機能を確保できる素材であれば、いかなるものも用いることができる。基材の厚みとしては4〜5000μm程度が良好である。中でも取り扱い易さを考慮すると、12〜1000μm程度が特に良好である。基材の表面処理としては、特に何も処理されていなくても構わないが、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理、電子線照射、UV照射等の乾式処理や溶媒洗浄、易接着コーティング処理の湿式処理が施されている基材でも構わない。また、各種情報を印刷し易く処理されたコ−ト紙、サーマル紙等も好適である。また、基材には種々の酸化防止剤,UV吸収剤,光安定剤,熱安定剤,可塑剤,滑材等の添加剤が混入されていても構わない。剥離性フィルムとしては、セロハン、各種プラスチックフィルム、紙等のフィルム状基材の表面をシリコーン化合物で剥離処理したものが挙げられる。
【0060】
剥離性フィルム等に粘着剤を塗工する方法としては、特に制限は無く、例えば、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーター等種々の塗工方法が挙げられる。乾燥方法には特に制限はなく、熱風乾燥、赤外線や減圧法を利用したものが挙げられる。乾燥条件としては粘着剤の架橋形態、膜厚や選択した溶剤にもよるが、通常60〜180℃程度の熱風加熱でよい。また、粘着剤を塗工するに際し、溶剤を添加して、粘度を調整することもできるし、粘着剤を加熱して粘度を低下させることもできる。粘着剤層の厚さは、乾燥時膜厚で1μm〜100μmであることが好ましく、1μm〜50μmであることがより好ましい。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例
に限定されない。また、下記実施例および比較例中、特に断りのない限り、「部」および「%」は、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0062】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。測定機器として、東ソー社製GPC(HPC−8020)を用いた。カラムは、東ソー社製Super HM−MおよびSuper HM−Lを直列に2本連結したものを用いた。カラムの保護のため、試料溶液の前処理としてDISMIC13HP045AN(アドバンテック東洋社製、親水性PTFE製メンブレンフィルター、孔径0.45マイクロメートル)を用いて不溶物の除去を行った。溶媒(溶離液)としてテトラヒドロフラン(THF)を使用して、40℃にて測定した。なお、重量平均分子量(Mw)は、いずれもポリスチレンを標準とした換算値とした。
【0063】
<ポリマー(B)を含む溶液中の不揮発分の測定>
ポリマー(B)を含む溶液1gを金属容器に秤量し、150℃オーブンにて20分間乾燥させた後に残分を秤量した。不揮発分は、乾燥前のポリマー(B)を含む溶液に対する乾燥後のポリマー(B)の割合として算出した。
【0064】
<未反応のモノマー量の測定>
樹脂組成物中の未反応のモノマー量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製GC17A)により、日本工業規格(JIS)K0114:2012の絶対検量線法に準拠して定量した。標準試料として、濃度既知の各モノマーのアセトン溶液を調製し、ガスクロマトグラフィーにより検量線を作製した。別途、合成した樹脂組成物をアセトンで希釈し、その希釈溶液をガスクロマトグラフィー測定し、未反応のモノマー量を定量した。
【0065】
<モノマー(A)の転化率の算出>
重合体(B)製造時におけるモノマー(A)の転化率は、重合反応前のモノマー(A)量に対する、第1工程時に重合のために消費されたモノマー(A)量として定めた。転化率は、全モノマー(A)量(W2)(部)と未反応のモノマー量(W1)(部)の差を全モノマー(A)量(W2)(部)で除した割合、すなわち次式(1)
[(W2)−(W1)]/(W2)×100(%) ・・・式(1)
により算出した。
【0066】
<樹脂組成物の製造>
<第1工程>
(合成例1)
反応槽、攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下槽、空気導入管を備えた重合反応装置を準備した。反応槽および滴下槽に、下記に示すモノマー(A)、溶剤、および重合開始剤からなる混合物をそれぞれ下記の比率で仕込んだ。反応槽内の空気を窒素ガスで置換した後、攪拌しながら窒素雰囲気下中、80℃まで昇温して重合反応を開始した。次に滴下槽内の混合物を1時間かけて反応槽へ滴下した。滴下終了後、さらに攪拌しながら6時間反応させた。反応終了後、25℃まで冷却し、ポリマー(B)を含む溶液を得た。得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)は330,000であった。ポリマー(B)を含む溶液中の不揮発分は50%であった。未反応のモノマー(A)の量は、ポリマー(B)を含む溶液100部に対し、0.40部であり、モノマー(A)の転化率は99.2%であった。
【0067】
[反応槽]
<モノマー(A)>
アクリル酸2−エチルヘキシル 20部
アクリル酸−ブチル 11部
アクリル酸 0.8部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.1部
<溶剤>
エタノール 50部
<ラジカル重合開始剤>
パーロイルL(日油社製) 0.02部
[滴下槽]
<モノマー(A)>
アクリル酸2−エチルヘキシル 74.0部
アクリル酸−ブチル 40.0部
アクリル酸 2.7部
アクリル酸2−ヒドロキシエチル 0.1部
エチレングリコールジメタクリレート 0.5部
<溶剤>
エタノール 100部
<ラジカル重合開始剤>
パーロイルL(日油社製) 0.05部
【0068】
(合成例2〜5)
表1の組成および反応時間にそれぞれ変更した以外は、合成例1と同様にポリマーを合成した。
【0069】
表1中の略号は以下のものとする。
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
BA:アクリル酸ブチル
AA:アクリル酸
2HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
EtOH:エタノール
EAc:酢酸エチル
パーロイルL:過酸化ジラウロイル(日油社製)
TMPEOTVE−30:トリメチロールプロパンエトキシレート(エチレンオキシド付加モル数1)トリビニルエーテル(日本カーバイド社製)
【0070】
<第2工程>
(実施例1)
合成例1で得られた未反応のモノマー(A)とポリマー(B)を含む溶液に、下記に示す多官能ビニルエーテル(D)とラジカル重合開始剤を、それぞれ下記の配合量で混合し、80℃にて3時間反応させて樹脂組成物を得た。第2工程後の樹脂組成物(不揮発分50%)中の未反応の多官能ビニルエーテル(D)量は0.00部、未反応のモノマー(A1)量は0.02部、これらの合計である未反応のモノマー(A)量は0.02部であった。
【0071】
<ポリマー(B)>
合成例1 99.3部
<多官能ビニルエーテル(D)>
トリメチロールプロパンエトキシレート(エチレンオキシド付加モル数1)トリビニルエーテル(日本カーバイド社製) 0.5部
<重合開始剤>
パーロイルL(日油社製) 0.2部
【0072】
(実施例2〜10、比較例1〜5)
表2の材料・組成(配合量)に変更した以外は、実施例1と同様にして、それぞれ樹脂組成物を得た。
【0073】
表2中の略号は以下の通りである。
TMPEOTVE−30:トリメチロールプロパンエトキシレート(エチレンオキシド付加モル数1)トリビニルエーテル(日本カーバイド社製)
TMPEOTVE−60:トリメチロールプロパンエトキシレート(エチレンオキシド付加モル数2)トリビニルエーテル(日本カーバイド社製)
DEGDVE:ジエチレングリコールジビニルエーテル
IPVE:イソプロピルビニルエーテル
ナイパーBW:ベンゾイルパーオキシド(日油社製)
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
WS−500:エポクロスWS−500(日本触媒社製オキサゾリン基含有共重合体、オキサゾリン化合物、不揮発分39%)
【0074】
<粘着剤の製造>
(実施例1〜10、比較例1〜5)
第2工程で得られた樹脂組成物100部に対し、架橋剤としてオキサゾリン化合物であるエポクロスWS−500(オキサゾリン基含有共重合体、日本触媒社製、不揮発分39%)2.05部をそれぞれ配合し、粘着剤の不揮発分が30質量%になるように酢酸エチルで希釈し、粘着剤を得た。
【0075】
<粘着シートの製造>
得られた粘着剤を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離フィルム[リンテック社製「SP−PET382050」、以下「剥離フィルム」という]の剥離層上に、コンマコーターにて乾燥後の厚みが25μmになるように速度2m/minで塗工した後、100℃で2分間乾燥させ、この粘着剤層の塗工面に厚さ50μmのポリエステルフィルム(東洋紡社製「E5100」)を張り合わせて、粘着シートを作成した。得られた粘着シートを、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、1週間エージングさせ、評価用として使用した。
【0076】
<評価>
実施例および比較例で得られた、樹脂組成物、粘着剤、および粘着シートについて、下記の方法で評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
<未反応のモノマー(A)量の評価方法>
第2工程後に測定した、樹脂組成物全体を100部とした際に含まれる未反応のモノマー(A)量を、下記◎、○、△、×の4段階で評価した。
◎:モノマー(A)量が0.05質量部以下。極めて良好。
○:モノマー(A)量が0.05質量部を超え、0.10質量部以下。良好。
△:モノマー(A)量が0.10質量部を超え、0.20質量部以下。使用可。
×:モノマー(A)量が0.20質量部を超える。不良。
【0078】
<第2工程前後のポリマー(B)の分子量変化の評価方法>
第2工程の反応前後でのポリマー(B)の分子量変化を、第2工程前の重量平均分子量(Mw1)に対する、第2工程後の重量平均分子量(Mw2)の割合(%)により評価した。すなわち、次式(2)
Mw2/Mw1×100(%) ・・・式(2)
により算出し、分子量変化を下記3段階により評価した。
○:95%以上、110%未満。良好。
△:110%以上、140%未満。使用可。
×:95%未満、または140%以上、あるいは前処理時のフィルター詰まり。不良。
なお、重量平均分子量は前述のGPCを用いた測定法により求めた。
【0079】
<粘着シートの粘着力の評価方法>
JISZ0237:2009に準じて、得られた粘着シートを25mm幅にカットし、剥離フィルムを剥がして露出した粘着剤層の面をステンレス(SUS)基材に貼着し、これを180度方向に引き剥がす時の抵抗力を測定した。測定は温度25℃、相対湿度50%の室内で行い、引っ張り速度300mm/minで測定した。粘着力の測定は、基材に貼着後、温度25℃、相対湿度50%の室内に24時間放置した後に測定を行った。粘着力は下記3段階により評価した。
○:12N/25mm以上。良好。
△:10N/25mm以上、12N/25mm未満。使用可。
×:10N/25mm未満、または粘着剤層の凝集破壊。不良。
【0080】
表2から明らかな通り、本発明の実施例において、所望の分子量を維持したまま未反応のモノマー(A)の量が著しく低減された樹脂組成物と粘着力が良好な粘着シートが得られることが明らかとなった。これに対して、比較例1、2および比較例4、5の樹脂組成物は第2工程での分子量変化に問題はなく、粘着シートとしての粘着力は良好であるものの、未反応のモノマー(A)量が多いという結果であった。また、比較例3は第2工程においてポリマー(B)の分子量の増大が著しく、増粘による塗工性不良のために粘着力が劣るという結果であった。
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】