(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540060
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】タンクの注入筒取付構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20190628BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20190628BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20190628BHJP
F16J 15/08 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
B60K15/04 E
F02M37/00 301M
F16J12/00 D
F16J15/08 L
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-20295(P2015-20295)
(22)【出願日】2015年2月4日
(65)【公開番号】特開2016-141338(P2016-141338A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2018年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】熊田 哲也
【審査官】
葛原 怜士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−029208(JP,A)
【文献】
特開2007−261329(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0175165(US,A1)
【文献】
特開2009−058126(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103213635(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/03,15/04
B62J 35/00
F02M 37/00
F16J 12/00
F16J 15/06−15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のタンク本体に、金属製の注入筒が装着され、前記タンク本体と前記注入筒との間がシールされるタンクの注入筒取付構造であって、
前記タンク本体には、前記注入筒を挿入させるための支持筒が、前記タンク本体と一体に形成され、
前記注入筒には、前記支持筒に挿入されたとき前記支持筒の上部周面の座面に着座されるフランジが形成され、
前記タンク本体及び前記注入筒間をシールするシールパッキンが、前記フランジ及び前記座面間をシールする円環状シール部と、前記円環状シール部と一体に形成され前記注入筒の外周に嵌合する筒状シール部と、前記筒状シール部の外周に形成され前記支持筒の内周面に先端が当接するスカート状に形成されたスカート状シール部とを備え、
前記支持筒には、前記スカート状シール部が挿入されたときその先端を径方向内方に案内する傾斜部が形成された
ことを特徴とするタンクの注入筒取付構造。
【請求項2】
前記スカート状シール部は、前記筒状シール部に軸方向に複数離間して形成された請求項1に記載のタンクの注入筒取付構造。
【請求項3】
前記円環状シール部には、前記座面に圧着されると共に前記フランジに圧着されるこぶ状シール部が環状に形成された請求項1又は2に記載のタンクの注入筒取付構造。
【請求項4】
前記筒状シール部には、前記注入筒に圧着される凸部が環状に形成された請求項1から3のいずれかに記載のタンクの注入筒取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のタンク本体に金属製の注入筒を装着すると共にその間をシールするためのタンクの注入筒取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にタンクには、燃料等の内容物を収容するタンク本体と、タンク本体内に一体に設けられタンク本体内に内容物を注入するための注入筒とを備えるものがある。また、タンク本体と注入筒とは同じ材質にされるのが一般的であり、例えばタンク本体及び注入筒の双方が金属製である場合、タンク本体と注入筒とは、溶接等により一体に接続される。また、例えばタンク本体及び注入筒の双方が樹脂製である場合、タンク本体と注入筒とは一体に成型される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−176754号公報
【特許文献2】実開平07−25311号公報
【特許文献3】特開平09−286367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注入筒に強度を持たせたいとき、金属製にする場合がある。かつ、タンク本体を複雑形状にするとき、注入筒とは異なった材質である樹脂製にする場合がある。そこで、タンク本体を樹脂製とし、注入筒を金属製とする場合、タンク本体と注入筒との間をシールする必要がある。
図5及び
図6に示すように、本発明者は、開発初期段階において注入筒30にフランジ31を形成し、フランジ31とタンク本体32とを締結すると共にこれらの間にOリングからなるシールパッキン33を介在させたタンク34(未公開)を発案・試作した。かかるタンク34では、締結面35に一定のシール性があることが確認できたが、
図7に示すように、フランジ31を着座させるタンク本体32の座面36がシールパッキン33の反発力によりタンク本体32内に倒れ、シール性が弱くなるため、シール性に改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、樹脂製のタンク本体に金属製の注入筒を十分なシール性で装着できるタンクの注入筒取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、樹脂製のタンク本体に金属製の注入筒を装着すると共にその間をシールするためのタンクの注入筒取付構造であって、前記タンク本体に、前記注入筒を挿入する支持筒をタンク本体と一体に形成し、前記注入筒に、前記支持筒に挿入したとき支持筒の上部周面の座面に着座するフランジを形成し、前記タンク本体及び前記注入筒間をシールするシールパッキンが、前記フランジ及び前記座面間をシールする円環状シール部と、前記円環状シール部と一体に形成され前記注入筒の外周に嵌合する筒状シール部と、前記筒状シール部の外周に形成され前記支持筒の内周面に先端が当接するスカート状に形成されたスカート状シール部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、樹脂製のタンク本体に金属製の注入筒を十分なシール性で装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るタンクの注入筒取付構造の断面説明図である。
【
図3】タンク本体、シールパッキン及び注入筒を分解した説明図である。
【
図6】開発途上のタンクに用いたシールパッキンの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0010】
図1に示すように、タンク1は、タンク本体2と、注入筒3と、キャップ4と、シールパッキン5とを備える。
【0011】
タンク本体2は、樹脂成形されている。また、タンク本体2には、注入筒3を挿入するための支持筒6が一体に形成されると共に、後述する注入筒3のフランジ7が着座する座面8が形成されている。
【0012】
支持筒6は、タンク本体2の上部からタンク1内に延びて形成されており、注入筒3より大径に形成されている。また、支持筒6には、後述するスカート状シール部21が挿入されたときその先端を径方向内方に案内する傾斜部9が形成されている。
【0013】
図1及び
図2に示すように、座面8は、支持筒6の上部周面、すなわち、支持筒6の基端より外周のタンク本体2に環状に形成されている。座面8の外周部には、ナット10が周方向に所定間隔を隔てて複数埋め込まれており、注入筒3のフランジ7をボルト締結できるようになっている。また、座面8の内周部には、後述するシールパッキン5の円環状シール部11を受けるための凹部12が環状に形成されている。凹部12の深さは、円環状シール部11の厚さより浅く形成されている。また、凹部12は径方向の寸法が円環状シール部11より大きく形成されており、円環状シール部11の変形を許容できるようになっている。
【0014】
注入筒3は金属からなり、軸方向の中間位置にフランジ7が形成されている。
【0015】
図2及び
図3に示すように、シールパッキン5は、ゴム等からなり、フランジ7及び座面8間をシールする円環状シール部11と、円環状シール部11と一体に形成され注入筒3の外周に嵌合する筒状シール部20と、筒状シール部20の外周に形成され支持筒6の内周面に先端が当接するスカート状に形成されたスカート状シール部21とを備える。
【0016】
円環状シール部11は、外径が支持筒6より十分大きな円環状に形成されると共に扁平に形成されており、座面8上に載るように形成されている。また、円環状シール部11には、座面8に圧着されると共にフランジ7に圧着されるこぶ状シール部22が形成されている。こぶ状シール部22は、円環状シール部11と同軸の円環状に形成されると共に円環状シール部11の軸方向の寸法より大径の断面円形に形成されており、円環状シール部11の表裏両面から軸方向に突起されている。また、こぶ状シール部22は、径方向に離間して複数形成されている。
【0017】
筒状シール部20は、円環状シール部11より径方向内方に形成されると共に円環状シール部11の一端から他端方向に延びて形成されている。また、筒状シール部20は、円環状シール部11と同軸上に形成されている。筒状シール部20は、注入筒3の外周に嵌合されたとき、周方向に若干伸びて注入筒3の外周面に密着されるように内径が注入筒3の外径よりやや小さく形成されている。また、筒状シール部20には、注入筒3に嵌合されて伸びた筒状シール部20の復元力を受けて注入筒3に圧着される凸部24が形成されている。凸部24は、筒状シール部20の内周面から径方向内方に突出する断面円弧状に形成されると共に、筒状シール部20と同軸の円環状に形成されている。また、凸部24は、筒状シール部20の軸方向に複数離間して形成されている。またさらに、凸部24は、後述するスカート状シール部21の基端と背中合わせとなるように配置されており、スカート状シール部21を背後(径方向内方)から支持するようになっている。筒状シール部20は、外径が支持筒6の内径よりも小さく形成されており、支持筒6内に挿入されたとき筒状シール部と支持筒6との間には空間Sが形成されるようになっている。
【0018】
図3及び
図4に示すように、スカート状シール部21は、スカート状、すなわち、筒状シール部20と同軸の環状に形成されると共に筒状シール部20から径方向外方に延出され、かつ、先端が筒状シール部20の他端方向(円環状シール部11から軸方向に離間する方向)に傾斜された形状に形成されている。また、スカート状シール部21は、支持筒6内に挿入されたとき先端部のみが支持筒6の内周面と当接するように形成されており、タンク本体2内の圧力が気圧より高くなったとき、その圧力で支持筒6の内周面に圧着し易いようになっている。また、スカート状シール部21は、断面リップ状、すなわち、基端側から先端に向かうにつれて徐々に厚さが薄くなる形状に形成されており、先端が支持筒6の形状に倣って変形して支持筒6に密着し易いようになっている。また、スカート状シール部21は、筒状シール部20の軸方向に複数離間して形成されている。
【0020】
タンク本体2に注入筒3をシールパッキン5を介して装着する場合、まず、タンク本体2の支持筒6内にシールパッキン5を挿入して取り付ける。支持筒6内に挿入されたシールパッキン5は、円環状シール部11がタンク本体2の座面8の凹部12内に収容され、スカート状シール部21の先端が支持筒6の内周面に当接される。このとき、特にシールパッキン5の挿入先端側に位置するスカート状シール部21は、支持筒6の傾斜部9に当接することで先端が傾斜部9に案内され、挿入先端側に屈曲しつつ縮径される。これにより、シールパッキン5は自身の復元力で傾斜部9に圧着される。
【0021】
この後、シールパッキン5内に注入筒3を挿入する。このとき、シールパッキン5の筒状シール部20は、内径が注入筒3の外径よりやや小さく形成されているため、周方向に延び、注入筒3の外周面に全周に亘って圧着される。またこのとき、凸部24は、断面円弧状に形成されているため、筒状シール部20内に挿入される注入筒3に引っ掛かることはなく、注入筒3は円滑に筒状シール部20内に挿入される。凸部24は、注入筒3が挿入されたとき、拡径されて注入筒3に筒状シール部20の他の部分より強い力で圧着されると共に、スカート状シール部21を支持筒6に押し付け、スカート状シール部21がより強い力で支持筒6に圧着される。
【0022】
この後、タンク本体2の座面8に注入筒3のフランジ7をボルト25及びナット10で締結する。このとき、座面8は支持筒6に支持されるため、タンク本体2内に倒れることはなく、円環状シール部11が座面8とフランジ7とに挟まれて座面8及びフランジ7に圧着される。また、こぶ状シール部22は断面円形に形成されるため、ボルト25及びナット10の締結力が径方向等に逃げることはなく、より強い力で座面8及びフランジ7に圧着される。
【0023】
このように、タンク本体2に、注入筒3を挿入する支持筒6をタンク本体2と一体に形成し、注入筒3に、支持筒6に挿入したとき支持筒6の上部周面の座面8に着座するフランジ7を形成し、シールパッキン5が、フランジ7及び座面8間をシールする円環状シール部11と、円環状シール部11と一体に形成され注入筒3の外周に嵌合する筒状シール部20と、筒状シール部20の外周に形成され支持筒6の内周面に先端が当接するスカート状に形成されたスカート状シール部21とを備えるものとしたため、座面8の形状を維持しつつ座面8とフランジ7との間を円環状シール部11で良好にシールでき、注入筒3の外周面と支持筒6の内周面との間を筒状シール部20とスカート状シール部21とで良好にシールでき、樹脂製のタンク本体2に金属製の注入筒3を十分なシール性かつ簡易な構造で装着できる。
【符号の説明】
【0024】
1 タンク
2 タンク本体
3 注入筒
5 シールパッキン
6 支持筒
7 フランジ
8 座面
11 円環状シール部
20 筒状シール部
21 スカート状シール部