(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における典型的な実施形態について、図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の概略構成図について説明する。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、一例として、レーザ照射光学系10、エイミング光学系20、照明光学系30、観察光学系40、および制御部60を備える。
【0010】
<レーザ照射光学系>
本実施形態のレーザ照射光学系10は、レーザ光源11、エネルギー調整部13、ビームスプリッタ17、光検出器18、安全シャッタ19、シフト調整部50、ダイクロイックミラー22、エキスパンダレンズ23、ダイクロイックミラー24、および対物レンズ25を備える。
【0011】
レーザ光源11は、患者眼Eの組織を治療するための治療用のレーザ光(以降では治療レーザー光と称する)を出射する。一例として、本実施形態のレーザ光源11では、ネオジウムをドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶(Nd:YAG)がレーザロッドとして使用される。また、図示しない波長変換素子は、レーザ光源11によって出射された赤外レーザ光(波長:1064nm)を、可視レーザ光(波長:532nm)に変換することができる。
【0012】
エネルギー調整部13は、患者眼Eの組織に照射される治療レーザ光のエネルギー量を調整する。本実施形態のエネルギー調整部13は、1/2波長板14および偏光板16を備える。1/2波長板14は、治療レーザ光の光軸を中心として、モータ15によって回転する。偏光板16は、ブリュースタ角で配置されている。1/2波長板14と偏光板16の組合せによって、治療レーザ光のエネルギー量が調整される。
【0013】
ビームスプリッタ17は、治療レーザ光の一部を光検出器18へ向けて反射させる。光検出器18は、ビームスプリッタ17によって反射された治療レーザ光を受光することで、治療レーザ光のエネルギー量を検出する。安全シャッタ19は、シャッタ駆動部28(例えばソレノイド)によって、治療レーザ光の光軸上と光軸外との間を移動する。安全シャッタ19は、治療レーザ光の光軸上に配置されることで、患者眼Eへの治療レーザ光の照射を遮断する。
【0014】
エキスパンダレンズ23は、ダイクロイックミラー22によって合波された光(治療レーザ光、および後述するエイミング光)の光束を拡大する。エキスパンダレンズ23によって拡大された光は、ダイクロイックミラー24によって反射され、対物レンズ25を透過する。本実施形態では、対物レンズ25を透過した治療レーザ光は、患者眼Eに装着されたコンタクトレンズ26を介して患者眼Eの組織に照射される。ダイクロイックミラー24は、患者眼Eによって反射された治療レーザ光の反射光が術者の眼に入射し難くなるように、反射光の波長の光をほぼ反射させる。なお、レーザ照射光学系10には、組織に照射される治療レーザ光のスポットサイズを調整するための構成等が設けられていてもよい。
【0015】
<エイミング光学系>
本実施形態のエイミング光学系20は、治療対象の部位に照準を合わせるために用いられる。詳細には、本実施形態のエイミング光学系20は、照準を合わせるためのエイミング光を治療対象の部位に照射するためのエイミング手段として用いられる。本実施形態のエイミング光学系20は、エイミング光源12、コリメータレンズ21、アパーチャ27、ダイクロイックミラー22、エキスパンダレンズ23、ダイクロイックミラー24、および対物レンズ25を備える。なお、本実施形態のエイミング光学系20は、ダイクロイックミラー22から先の光路(眼科用レーザ治療装置1を構成する部材でいえば、ダイクロイックミラー22から対物レンズ25までの光路)を、前述したレーザ照射光学系10と共用する。
【0016】
エイミング光源12は、治療用のレーザ光が照射される位置(つまり、治療スポットの位置)を術者に誘導させるためにエイミング光を出射する。本実施形態では、波長が635nm(赤色)の可視レーザ光を出射する光源が、エイミング光源12として用いられる。しかし、エイミング光の波長等を適宜変更できるのは言うまでも無い。例えば、エイミング光源12に、LED、SLD等の光源を用いてもよい。
【0017】
コリメータレンズ21は、エイミング光源12によって出射されたエイミング光を平行光束とする。本実施形態のアパーチャ27は、コリメータレンズ21で平行光束とされたエイミング光の光束を、2つの光束に分離する。詳細には、本実施形態のアパーチャ27には2つの開口が形成されている。2つの開口を、エイミング光学系20の光軸を挟んで対称に配置させている。ダイクロイックミラー22は、治療レーザ光とエイミング光を合波する。本実施形態のダイクロイックミラー22は、治療レーザ光を反射し、且つエイミング光を透過させることで、治療レーザ光とエイミング光を合波する。なお、眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光とエイミング光を合波せずに、別々の光路から患者眼Eに照射してもよい。
【0018】
以上のようにして、エイミング光源12を発したエイミング光は、アパーチャ27で2つの光束に分離した後、対物レンズ25の先のフォーカス位置に集光する。エイミング光のフォーカス位置(フォーカス面)では、アパーチャ27で分離した光束が1つに重なる。一方、エイミング光のフォーカス位置に対する前後位置(デフォーカス面)では、エイミング光が分離したままの状態(光束)となる。したがって、術者は、エイミング光の分離状態から、エイミング光の照準状態(遠近方向)を容易に判断できる。
【0019】
<シフト手段>
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、シフト手段を備えている。詳細には、シフト手段は、エイミング光源12を発したエイミング光のフォーカス位置に対して、レーザ光源11を発した治療レーザ光のフォーカス位置を変位(シフト)させる。本実施形態のシフト手段は、エイミング光のフォーカス位置に対して、レーザ光源11を発した治療レーザ光のフォーカス位置を、遠方または近方のいずれかに変位可能である。以降の説明では、エイミング光のフォーカス位置に対する治療レーザ光のフォーカス位置を、フォーカスシフト位置と呼ぶことがある。なお、フォーカスシフト位置を数値として示す際に、エイミング光のフォーカス位置よりも近方(対物レンズ25に近づく方向)をマイナス符号、エイミング光のフォーカス位置よりも遠方(対物レンズ25から遠ざかる方向)をプラス符号で示す場合がある。なお、換言するなら、前述した遠方(近方)とは、治療レーザ光の光路に沿う方向の上流側(下流側)または手前側(奥側)である。
【0020】
本実施形態では、シフト手段としてシフト調整部50を用いている。シフト調整部50は、凹レンズ51、および凸レンズ53を備える。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、フォーカスシフト位置のシフトを駆動する駆動手段を備えている。本実施形態では、駆動手段として、モータ55を用いている。モータ55として、例えば、ステッピングモータを用いてもよい。本実施形態では、凸レンズ53にモータ55が接続されている。また、モータ55は制御部60に接続されている。これによって、制御部60はフォーカスシフト位置を調節可能である。つまり、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、フォーカスシフト位置を調節する調節手段を備えている。本実施形態では、制御部60は、凸レンズ53を光軸方向に移動させる。本実施形態の調節手段は、フォーカスシフト位置を−500μm〜+500μmの範囲で調節可能である。
【0021】
<照明光学系>
本実施形態の照明光学系30は、治療対象の組織を含む観察部位を照明する。本実施形態の照明光学系30は、ランプ31、レンズ32、絞り33、レンズ群34、およびプリズム35を備える。例えば、ランプ31に白色発光素子等を用いてもよい。なお、照明光学系30が、観察部位にスリット光を照明するためのスリット板等を備えていてもよい。
【0022】
<観察光学系>
本実施形態の観察光学系40は、術者が患者眼Eの観察部位を観察するために用いられる。本実施形態の観察光学系40は、顕微鏡41に組み込まれており、変倍光学系42、術者保護フィルタ43、結像レンズ44、正立プリズム群45、視野絞り46、および接眼レンズ47を備える。ダイクロイックミラー24および対物レンズ25は、レーザ照射光学系10と観察光学系40によって共用され、且つ、顕微鏡41内の左右の観察光路(術者の左目用の光路と右目用の光路)によって共用される。その他の構成(変倍光学系42等)は、左右の観察光路の各々に設けられている。変倍光学系42は、観察倍率を変更するために用いられる。例えば、屈折力の異なる複数のレンズが組み合わされた回転ドラム等を変倍光学系42に用いることができる。術者保護フィルタ43は、治療レーザ光の波長を減衰する特性を有する。術者保護フィルタ43は、患者眼E等で反射した治療レーザ光が術者の眼に到達することを抑制する。
【0023】
<制御部>
制御部60は、眼科用レーザ治療装置1の動作を制御する制御手段の一例である。本実施形態の制御部60は、CPU61(プロセッサ)、ROM62、RAM63、および不揮発性メモリ65等を備える。CPU61は、眼科用レーザ治療装置1における各部の制御を司る。ROM62には、各種プログラム、初期値等が記憶されている。RAM63は、各種情報を一時的に記憶する。不揮発性メモリ65は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、制御部60に着脱可能に装着されるUSBメモリ、制御部60に内蔵されたフラッシュROM等を、不揮発性メモリ65として使用することができる。本実施形態では、不揮発性メモリ65を、治療レーザ光の照射に関するパラメータを記憶する記憶手段として用いている。記憶手段として、RAM63、ROM62、または他の状態保持媒体(例えばディップSW等)を用いてもよい。なお、前述したパラメータについては、後ほど詳細に説明する。
【0024】
本実施形態の制御部60には、レーザ光源11、モータ15、光検出器18、シャッタ駆動部28、モータ55、エイミング光源12、ランプ31、表示部66、トリガスイッチ67、およびブザー68等が接続されている。表示部66は各種画像を表示する。本実施形態の制御部60は、表示部66の表示を制御する表示制御手段としての機能を有する。本実施形態の表示部66はタッチパネル機能を有し、表示手段と入力手段を兼ねる。術者等は、表示部66の表面を操作することで、各種指示を入力することができる。トリガスイッチ67は、治療レーザ光の照射実行指示を入力するために術者によって操作される。
【0025】
本実施形態のブザー68は、術者に眼科用レーザ治療装置1の状態を報知するための報知手段である(術者への報知については後述する)。本実施形態の制御部60は、報知手段を制御する報知制御手段としての機能を有する。なお、本実施形態では、報知手段としてブザー68を用いるが、報知手法はブザー68に限らない。例えば、報知手段としてLEDを用いてもよい。また、報知手段として、表示部66にメッセージを表示させてもよい。
【0026】
<調節可能範囲>
本実施形態の制御部60は、治療レーザ光の照射エネルギー量を0.3mJ〜10.0mJの範囲で調節可能である。また、フォーカスシフト位置を−500μm〜+500μmの範囲で調節可能である。また、バースト数を1〜3回の範囲で調節可能である。また、バースト数とは、治療レーザ光の照射を繰り返す回数である。本実施形態の制御部60は、トリガスイッチ67が押されたことを検出すると、バースト数として設定された回数分だけ、治療レーザ光を繰り返して照射する。
【0027】
<治療モード>
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、眼科用レーザ治療装置1の動作モードとして、複数の治療モードを有している。本実施形態では、複数の治療モードとして、症例の種類に対応した治療モードが含まれる。詳細には、複数の治療モードとして、症例の種類が異なる複数の治療モードが含まれる。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、5つの治療モードを備えている。詳細には、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、標準モード(第1治療モード)、後発白内障モード(第2治療モード)、虹彩切開術モード(第3治療モード)、レーザ線維柱帯切開術モード(第4治療モード)、およびレーザ硝子体切除術モード(第5治療モード)を備えている。なお、眼科用レーザ治療装置1が、他の治療モードを備えてもよい。
【0028】
各治療モードについて説明する(
図3,
図5も合わせて参照されたし)。本実施形態の標準モードとは、術者が、治療レーザ光の照射に関するパラメータ(照射条件)を、警告の報知または制限を受けることなく幅広く設定(調節)できる動作モードである。本実施形態の後発白内障モードとは、後発白内障の治療に用いると好適な治療モードである。例えば、後発白内障モードは、患者眼Eの嚢内に眼内レンズを設置した後に発生した嚢の濁りに対して、治療レーザ光を照射する際に用いると好適である。本実施形態の虹彩切開術モードとは、治療として、虹彩を切開する際に用いると好適な治療モードである。例えば、虹彩切開術モードは、緑内障によって上昇した眼圧を下げる治療として、虹彩に対して治療レーザ光を照射する際に用いると好適である。
【0029】
本実施形態のレーザ線維柱帯切開術モードとは、治療として、線維柱帯を切開する際に用いると好適な治療モードである。例えば、レーザ線維柱帯切開術モードは、緑内障の進行を抑制する治療としてシュレム管に房水を流すために、目詰まりしている線維柱帯に対して治療レーザ光を照射する際に用いると好適である。なお、線維柱帯切開術をトラベクロトミーと呼ぶこともある。レーザ硝子体切除術モードとは、治療として硝子体の切除に用いると好適な治療モードである。例えば、レーザ硝子体切除術モードは、硝子体が網膜を牽引している状態に対して、牽引箇所の硝子体を切除する治療に用いると好適である。
【0030】
<表示手段と入力手段>
次いで、
図2〜4を用いて、本実施形態の表示部66が表示する表示内容を説明する。前述したように、本実施形態の表示部66はタッチパネル機能を有しており、表示手段と入力手段を兼ねる。本実施形態の表示部66には、眼科用レーザ治療装置1の動作モードに対応した、複数種類の画面が表示される。本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、治療画面100(
図2参照)、選択画面200(
図3参照)、および編集画面300(
図4参照)を表示部66に表示させることができる。
<治療画面>
【0031】
図2を用いて、本実施形態の治療画面100を説明する。なお、
図2は、一例として、後発白内障モードの治療画面100を示している。治療画面100の照射エネルギー量欄には、一対の調節ボタン117(117a,117b)が設けられている。また、照射エネルギー量欄には、照射エネルギー量値116が表示される。照射エネルギー量欄は、術者が治療レーザ光の照射エネルギー量を調節するために用いられる。術者が調節ボタン117を押すと、照射エネルギー量値116に表示されている値が変更される。また、術者がトリガスイッチ67を押すと、照射エネルギー量値116の表示値に対応したエネルギー量(1パルス)の治療レーザ光が、患者眼Eに照射される。
【0032】
治療画面100のフォーカスシフト位置欄には、一対の調節ボタン122(122a,122b)が設けられている。また、フォーカスシフト位置欄には、シフト位置値121aおよびイメージ121bが表示される。フォーカスシフト位置欄は、術者が、フォーカスシフト位置を調節するために用いられる。本実施形態では、術者が調節ボタン122を押すと、シフト位置値121a、およびイメージ121bの表示が変更される。なお、イメージ121bは、フォーカスシフト位置のシフト方向を示している。また、シフト位置値121aは、フォーカスシフト位置のシフト量を示している。なお、術者が調節ボタンを押すと、フォーカスシフト位置は、直ちに変更される(制御部60がシフト調整部を直ちに駆動する)。
【0033】
治療画面100のバースト数欄には、調節ボタン119が設けられている。また、バースト数欄には、バースト回数値118が表示される。バースト数欄は、術者が治療用レーザ光のバースト数を調節するために用いられる。本実施形態では、術者が調節ボタン119を押すと、バースト回数値118に表示されている値が変更される。また、術者がトリガスイッチ67を押すと、バースト回数値118の表示値に対応した回数の治療レーザ光(パルス)が、患者眼Eへ断続的に照射される。
【0034】
治療画面100の動作モード表示欄には、現在の動作モードを示す動作モード表示123が表示される。本実施形態では、動作モード表示123として、現在の治療モードの名称が文字で表示される。なお、動作モード表示123として、治療モードの種類に対応したアイコンを表示してもよい。
【0035】
本実施形態のメニューボタン欄には、メニューボタン126が設けられている。術者がメニューボタン126を押すと、表示部66の表示は、選択画面200に切り換わる。
【0036】
<選択画面>
図3を用いて、本実施形態の選択画面200を説明する。選択画面200には、治療モード名、および治療レーザ光の照射に関するパラメータが表示される。また、選択画面200には、複数の選択ボタン210(210a〜210d)、および複数の編集ボタン211(211a〜211d)が表示される。治療モード名として、症例に対応した文字が表示される。なお、治療レーザ光の照射に関するパラメータとは、照射エネルギー量に関するパラメータ、フォーカスシフト位置に関するパラメータ、およびバースト数に関するパラメータである。
【0037】
選択画面200には、照射エネルギー量に関するパラメータとして、照射エネルギー量の初期値EA、照射エネルギー量の調節に用いる下限値EB、および照射エネルギー量の調節に用いる上限値ECが表示される。また、選択画面200には、フォーカスシフト位置に関するパラメータとして、フォーカスシフト位置の初期値SA、フォーカスシフト位置の調節範囲の近方における閾値である近方値SB、およびフォーカスシフト位置の調節範囲の遠方における閾値である遠方値SCが表示される。また、選択画面200には、バースト数に関するパラメータとして、バースト数の初期値BA、バースト数の調節に用いる上限値BCが表示される。なお、前述した各種パラメータは、治療モード毎に設けられている。なお、本実施形態では、バースト数の調節に用いる下限値(図示なき下限値BB)は1回に固定さえている。
【0038】
選択ボタン210は、術者が各治療モードを選択するために設けられている。術者が選択ボタン210を押すと、制御部60は、表示部66の表示を治療画面100(
図2参照)に変更し、且つ、選択された治療モードに対応した治療レーザ光の照射に関するパラメータを自動的に設定する。編集ボタン211は、術者が各治療モードのパラメータを編集するために設けられている。術者が編集ボタン211を押すと、表示部66の表示は編集画面300(
図4参照)に変更される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の選択画面200は、複数の治療モードからいずれかを選択する指示を受け付ける選択受付手段となる。なお、選択受付手段の態様はこれに限らない。眼科用レーザ治療装置1が、複数の治療モードからいずれかを選択する指示を受け付ければよい。例えば、治療モードの選択を、眼科用レーザ治療装置1に接続された情報処理端末が行ってもよい。この場合、情報処理端末からの信号(治療モードに関する信号)を受信する制御部60が選択受付手段となる。また、例えば、表示部66が制御手段(CPU、ROM、RAM等)を有して、表示部66の制御手段が、選択画面200で選択された治療モードを制御部60に送信してもよい。この場合、選択画面200は選択受付手段である。また、制御部60は、前述した情報処理端末と同様に、表示部66からの信号(治療モードに関する信号)を受信する選択受付手段の役割を成す。なお、操作ボタン、マウス、キーボード、ジョイスティック等が選択受付手段として用いられてもよい。
【0040】
<編集画面>
図4を用いて本実施形態の編集画面300を説明する。なお、
図4は、一例として、選択画面200で術者が編集ボタン211b(後発白内障モードに対応)を押した場合を示している。編集画面300には、治療モード名N2、照射エネルギー量に関するパラメータ(初期値EA,下限値EB,上限値EC)、フォーカスシフト位置に関するパラメータ(初期値SA,近方値SB,遠方値SC)、およびバースト数に関するパラメータ(初期値BA,上限値BC)が表示される。また、編集画面300には、複数の変更ボタン310(310a〜310d)が表示される。
【0041】
つまり、眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射に関するパラメータの値を記憶する不揮発性メモリ65を備えており、不揮発性メモリ65には、複数の治療モードの各々に対応した複数の前記レーザ光の照射に関するパラメータが記憶される。ここで、編集画面300を用いて、複数の治療レーザ光の照射に関するパラメータの値を編集できる。このようにして、術者は、眼科用レーザ治療装置1を好適に動作させるための各種条件を、容易に変更できる。また、眼科用レーザ治療装置1の動作条件が画面に表示されることで、術者は、眼科用レーザ治療装置1の動作条件を容易に把握できる。
【0042】
<パラメータ>
前述したように、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、治療レーザ光の照射に関するパラメータを不揮発性メモリ65に記憶する。本実施形態では、5つの治療モード毎のパラメータを、不揮発性メモリ65に記憶している。制御部60は、治療モードに対応したパラメータの情報を不揮発性メモリ65から読み出して、治療レーザ光の照射をはじめとする、眼科用レーザ治療装置1の各種制御に用いる。なお、術者は編集画面300を操作することで、不揮発性メモリ65に記憶されているパラメータを書き換え可能である。
【0043】
次いで、前述したパラメータが、眼科用レーザ治療装置1の制御に用いられる一例を説明する。初期値EAは、治療画面100の照射エネルギー量値116に対応する。下限値EBと上限値ECは、治療画面100では表示されない。しかし、治療画面100で術者が照射エネルギー値を調節する際に作用する場合がある。詳細には、下限値EBと上限値ECは、術者が、照射エネルギー量を下限値EB(上限値EC)よりも小さい値(大きい値)に変更しようとした際に、制御部60が術者へ報知するために用いられる。つまり、下限値EBから上限値ECまでの間が、術者による照射エネルギー量の調節が可能な調節範囲となる。
【0044】
初期値SAは、治療画面100のシフト位置値121aおよびイメージ121bに対応する。近方値SBと遠方値SCは、治療画面100では表示されない。しかし、治療画面100で術者がフォーカスシフト位置を調節する際に作用する場合がある。詳細には、近方値SBと遠方値SCは、術者が、フォーカスシフト位置を近方値SB(遠方値SC)よりも近方(遠方)に変更しようとした際に、制御部60が術者へ報知するために用いられる。つまり、近方値SBから遠方値SCまでの間が、術者によるフォーカスシフト位置の調節が可能な調節範囲となる。
【0045】
初期値BAは、治療画面100のバースト回数値118に対応する。下限値BBと上限値BCは、治療画面100では表示されない。しかし、治療画面100で術者がバースト数を調節する際に作用する場合がある。詳細には、下限値BBと上限値BCは、術者が、バースト数を上限値BCよりも大きい回数に変更しようとした際に、制御部60が術者へ報知するために用いられる。つまり、上限値BCまでの自然数が、術者によるバースト数の調節が可能な調節範囲となる。
【0046】
図3および
図5を用いて、本実施形態の各治療モードのパラメータの特徴を説明する。なお、本実施形態では、報知なく調節できる範囲を調節範囲として説明する。後発白内障モードが選択されると、制御部60は、フォーカスシフト位置の調節範囲(近方値SB〜遠方値SC)は、エイミング光のフォーカス位置よりも遠方の範囲内に設定される。換言するなら、本実施形態では、硝子体よりも近方の部位を治療する治療モード(一例として、後発白内障モード)が選択された場合は、制御手段は、フォーカスシフト位置をエイミング光のフォーカス位置よりも遠方に設定する。これによって、例えば、後発白内障手術において、濁った水晶体後嚢よりも手前側に位置する眼内レンズが、誤って治療レーザ光によって損傷することが、適切に抑制される。
【0047】
また、虹彩切開術モード、レーザ線維柱帯切開術モード、またはレーザ硝子体切除術モードのいずれかが選択されると、制御部60は、後発白内障モードが選択された場合に設定されるフォーカスシフト位置の調節範囲(近方値SB〜遠方値SC)よりも近方にフォーカスシフト位置の調節範囲(近方値SB〜遠方値SC)を設ける。また、本実施形態では、水晶体後嚢よりも遠方の部位を治療する治療モード(一例として、レーザ硝子体切除術モード)が選択された場合は、制御手段60は、フォーカスシフト位置をエイミング光のフォーカス位置よりも近方に設定する。これによって、例えば、レーザ硝子体切除術において、患者眼の網膜を、治療レーザ光によって誤って損傷することが、適切に抑制される。なお、水晶体後嚢よりも遠方の部位を治療する治療モードとして、患者眼の硝子体の混濁部に治療レーザ光を照射する飛蚊症治療モードを設けてもよい。飛蚊症治療モードにおいても、制御手段60は、フォーカスシフト位置をエイミング光のフォーカス位置よりも近方に設定するため、患者眼の網膜を、治療レーザ光によって誤って損傷することが、適切に抑制される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、例えば、術者が誤設定に気付かず、意図せぬ位置(遠近方向)に治療レーザ光を集光させてしまう事象を抑制できる。これによって、患者の生体の負担を低減できる。また、患部に治療レーザ光を効率よく照射できる。したがって、例えば、術者は患部の治療を速やかに行える。
【0049】
また、後発白内障モードが選択されると、制御部60は、治療レーザ光のフォーカスシフト位置(初期値SA)を、エイミング光のフォーカス位置と同位置、またはエイミング光のフォーカス位置よりも遠方に位置させる。これによって、例えば、治療レーザ光が眼内レンズに与える影響を抑制できる。後発白内障治療モードから、虹彩切開術モード、レーザ線維柱帯切開術モード、またはレーザ硝子体切除術モードのいずれかに変更された場合には、治療レーザ光のフォーカスシフト位置(初期値SA)を、後発白内障モードにおいて設定されていたフォーカスシフト位置(初期値SA)よりも近方に位置させる。これによって、例えば、術者が誤設定に気付かず、意図せぬ位置(遠近方向)に治療レーザ光を集光させてしまう事象を抑制できる。これによって、患者の生体の負担を低減でき、また、患部に治療レーザ光を効率よく照射できる。したがって、例えば、術者は患部の治療を速やかに行える。
【0050】
<使用方法>
次いで、
図6〜
図8を用いて、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の使用方法の一例を説明する。術者は、眼科用レーザ治療装置1の電源を投入する。電源が投入されると、制御部60は初期化を実行する(ステップS101参照)。例えば、初期化の処理として、安全シャッタ19の動作確認等が実行されてもよい。制御部60は続けて、眼科用レーザ治療装置1の動作モードを標準モードに設定(ステップS102参照)する。
【0051】
制御部60は続けて、各種パラメータを標準モード用として設定する(ステップS103参照)。なお、各種パラメータには、治療レーザ光に関するパラメータ、フォーカスシフト位置に関するパラメータ、およびバースト数に関するパラメータが含まれる。より詳細には、各種パラメータには、初期値EA、下限値EB、上限値EC、初期値SA、近方値SB、遠方値SC、初期値BA、下限値BB、および上限値BCが含まれる(各値については
図3等参照)。なお、制御部60は、各種パラメータを設定する際に、フォーカスシフト位置を駆動する。制御部60は続けて、患者眼Eにエイミング光を照射する。また、本実施形態の各種パラメータには、照射エネルギー量が含まれる。本実施形態では、ステップS103またはステップS107で各種パラメータが設定される際に、制御部60は、1/2波長板14の角度を調節する。詳細には、制御部60は、設定する各種パラメータの値に基づいてエネルギー調整部13のモータ15を駆動して、1/2波長板14の角度を照射設定に対応する角度に調節する。つまり、本実施形態では、トリガスイッチ67が押されて制御部60が治療レーザ光の照射制御を開始する前(ステップS108より前)に、1/2波長板14の角度は調節されている。
【0052】
制御部60は続けて、表示部66に治療画面100を表示する。なお、治療画面100には、標準モード用として設定されるパラメータの初期値(初期値EA,初期値SA,初期値BA)が表示されている。なお、前述したステップS102において、制御部60が他の治療モードに設定してもよい。もしくは、制御部60が、術者に治療モードを選択させる制御を行ってもよい。
【0053】
術者は、患者眼Eの治療目的に応じて、治療モードの変更、もしくは各種パラメータの調節を行う(ステップS104,S106,S106参照)。術者は、患者眼Eの患部にエイミング光を照準した後に、トリガスイッチ67を押す。トリガスイッチ67が押されると、制御部60は、設定されている各種パラメータの値で、患者眼Eに治療レーザ光を照射する(ステップS109参照)。詳細には、制御部60は、表示部66に表示されている、照射エネルギー量値116、シフト位置値121a、イメージ121b、およびバースト回数値118に対応した条件で治療レーザ光の照射を制御する。
【0054】
ここで、術者が治療画面100でメニューボタン126を押すと、制御部60は、表示部66に選択画面200を表示する(ステップS104参照)。術者は、選択画面200(
図3参照)で、患者眼Eの症例に対応した治療モードを選択する。術者が治療モードを選択すると、制御部60は、選択された症例(治療モード)に対応した治療レーザ光の照射に関するパラメータを設定した後、表示部66に治療画面100を表示する(
図7のS201〜S204参照)。より詳しくは、治療レーザ光の照射に関するパラメータとして、初期値EA、下限値EB、上限値EC、初期値SA、近方値SB、遠方値SC、初期値BA、下限値BB、および上限値BCを設定する(各値については
図3等参照)。換言すると、制御部60は、シフトに関するパラメータを含む、治療レーザ光の照射に関するパラメータの値を、選択画面200により選択された治療モードに応じて設定する(
図3,
図7参照)。また、制御部60は、選択画面200で選択された治療モードに応じて、治療レーザ光の照射に関するパラメータに含まれる照射エネルギー量に関する値(初期値EA,下限値EB,上限値EC)を変更する。
【0055】
ここで、シフトに関するパラメータには、フォーカスシフト位置の調節範囲が含まれており、制御部60は、選択画面200で選択された治療モードに応じて、フォーカスシフト位置の調節範囲を設定する。また、制御部60は、選択画面200で選択された治療モードに応じて、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値(本実施例では初期値SA)を設定する。なお、本実施形態では、制御部60は、治療レーザ光の照射に関するパラメータを設定する際に、モータ55を駆動してフォーカスシフト位置を変更する。つまり、制御部60は、治療モードに応じて設定された、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値(本実施例では初期値SA)に応じて、モータ55を駆動する。
【0056】
なお、術者が選択画面200で編集ボタン211を押すと、制御部60は、表示部66に編集画面300を表示する(ステップS204,S205参照)。編集画面300には、治療レーザ光の照射に関するパラメータが表示される。表示されるパラメータは、術者が選択画面200で押した編集ボタン211に対応している。術者は、必要に応じて変更ボタン310を押して、パラメータの値を変更する。パラメータの値が変更されると、制御部60は、表示部66に選択画面200を表示する。
【0057】
次いで、術者が、治療画面100で、照射エネルギー量値116、シフト位置値121aおよびイメージ121b、またはバースト回数値118を調節する場合について説明する。本実施例では2種類の調節範囲を有する。詳細には、照射エネルギー量、フォーカスシフト位置、バースト数の各々は、第1調節範囲と第2調節範囲を有する。本実施形態の第1調節範囲は、標準モードで調節可能な範囲に対応している。本実施形態の第2調節範囲は、標準モードで調節可能な範囲と同じ、もしくは、標準モードで調節可能な範囲よりも狭い。本実施形態では、第2調節範囲は、選択画面200に表示される値(下限値EB,上限値EC,近方値SB,遠方値SC,上限値BC)に対応する。
【0058】
一例として、術者が後発白内障モードを選択した後に、照射エネルギー量の調節を行う場合を説明する。術者が調節ボタンを操作して変更した照射エネルギー量が、前述した第2調節範囲の範囲外(下限値EB未満、または上限値ECを超える)となるときは、制御部60はブザー68を鳴らして術者に報知する(
図8のステップS302参照)。換言すると、制御部60は、シフト調整部50によってシフトされるフォーカスシフト位置が、治療モードに応じて設定された調節範囲(第2調節範囲)の範囲外となる場合には、ブザー68により報知する。続けて、制御部60は、表示部66に確認ダイアログを表示する(ステップS304)。確認ダイアログには、報知するメッセージ、ならびに、YESボタンおよびNOボタンが表示される。術者は、意図通りの変更であれば確認ダイアログでYESボタンを押す。YESボタンが押された場合、制御部60は、パラメータを変更する(ステップS306参照)。一方、調節可能範囲を超えた変更を諦めるのならば、術者は、確認ダイアログでNOボタンを押す。
【0059】
このようにして、例えば、術者が治療レーザ光に関するパラメータを、誤って設定してしまう事象を抑制できる。なお、第1調節範囲を超える際と、第2調節範囲を超える際とで、術者への報知手法が類似していてもよい。また、以上の説明では、照射エネルギー量を第2調節範囲の範囲外に調節可能であるが、第2調節範囲の範囲外への調節を不可能としてもよい。なお、以上では照射エネルギー量の調節について説明したが、本実施形態では、フォーカスシフト位置とバースト数についても同様の制御が行われる。
【0060】
<作用および効果>
本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、患者眼Eにエイミング光を照射するためのエイミング光学系20と、患者眼Eに治療用のレーザ光を照射するためのレーザ照射光学系10と、エイミング光のフォーカス位置に対するレーザ光のフォーカス位置であるフォーカスシフト位置を、遠方または近方にシフトするシフト調整部50(シフト手段)と、複数の治療モードからいずれかを選択する指示を受け付ける選択画面200(選択受付手段)と、眼科用レーザ治療装置1の動作を制御する制御部60(制御手段)とを備えている。ここで、制御部60は、シフトに関するパラメータ(一例として、本実施形態の、初期値SAと、近方値SBと、遠方値SCと、の少なくともいずれか)を含む,レーザ光の照射に関するパラメータの値(一例として、本実施形態の、初期値EAと、下限値EBと、上限値ECと、初期値SAと、近方値SBと、遠方値SCと、初期値BAと、下限値BBと、上限値BCと、の少なくともいずれか)を、選択受付手段により選択された治療モードに応じて設定している。これによって、例えば、術者は、眼科用レーザ治療装置1の操作が容易になる。また、術者がレーザ光の照射に関するパラメータを誤設定し難い。術者は、眼科用レーザ治療装置1を用いて、患部の治療を速やかに行える。
【0061】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1が有するシフトに関するパラメータには、フォーカスシフト位置の調節範囲が含まれている。制御手段は、選択受付手段により選択された治療モードに応じて、フォーカスシフト位置の調節範囲を設定している。これによって、例えば、術者は、フォーカスシフト位置を誤設定し難い。また、術者は、フォーカスシフト位置を速やかに設定できる。
【0062】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、術者に報知するためのブザー68(報知手段の一例)をさらに備えている。制御手段は、シフト手段によってシフトされるフォーカスシフト位置が、治療モードに応じて設定された調節範囲の範囲外となる場合には、報知手段により報知する。これによって、例えば、術者は、フォーカスシフト位置を、より誤設定し難くなる。眼科用レーザ治療装置1の取り扱いが不慣れな術者であっても、フォーカスシフト位置を速やかに調節できる。
【0063】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の制御手段は、選択受付手段で後発白内障治療モードが選択された場合には、フォーカスシフト位置の調節範囲を、エイミング光のフォーカス位置よりも遠方の範囲内に設定する。これによって、例えば、後発白内障治療モードで、フォーカスシフト位置を速やかに調節できる。また、術者は、フォーカスシフト位置を、より誤設定し難くなる。詳細には、後発白内障手術において、濁った水晶体後嚢よりも手前側に位置する眼内レンズが、誤って治療レーザ光によって損傷することが、適切に抑制される。
【0064】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の制御手段は、虹彩切開術、レーザ線維柱帯切開術、またはレーザ硝子体切除術のいずれかを実行する治療モードが選択受付手段で選択された場合には、フォーカスシフト位置の調節範囲を、後発白内障治療モードが選択された場合に設定された調節範囲よりも近方の範囲内に設定する。これによって、例えば、種類が異なる症例に対して、速やかにレーザ治療を行える。また、フォーカスシフト位置の誤設定がされ難い。
【0065】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1が用いるシフトに関するパラメータには、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値が含まれている。制御手段は、選択受付手段により選択された治療モードに応じて、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値を設定する。これによって、例えば、眼科用レーザ治療装置1の取り扱いに慣れていない術者でも、好適なフォーカスシフト位置に調節できる。また、フォーカスシフト位置を誤設定し難い。
【0066】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、シフト手段によるフォーカスシフト位置のシフトを駆動する駆動手段を備えている。制御手段は、治療モードに応じて設定された、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値に応じて、駆動手段を駆動する。これによって、例えば、術者は、フォーカスシフト位置を速やかに設定できる。例えば、治療の時間を短縮できる。
【0067】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の制御手段は、選択受付手段で後発白内障治療モードが選択された場合には、レーザ光のフォーカスシフト位置を、エイミング光のフォーカス位置と同位置、またはエイミング光のフォーカス位置よりも遠方に位置させるように、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値を設定する。これによって、例えば、フォーカスシフト位置の誤設定を、より好適に抑制できる。例えば、後発白内障治療の際に、眼内レンズに治療レーザ光を照射してしまう事象を、好適に抑制できる。
【0068】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1の制御手段は、選択受付手段で、後発白内障治療モードから、虹彩切開術、レーザ線維柱帯切開術、またはレーザ硝子体切除術のいずれかに選択が変更された場合には、レーザ光のフォーカスシフト位置が、後発白内障モードにおいて設定されていたフォーカスシフト位置よりも近方に位置するように、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値を変更する。これによって、症例に応じてフォーカスシフト位置を調節する際の操作時間を短縮できる。眼科用レーザ治療装置1を用いて、患者眼の患部を速やかに治療できる。
【0069】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1は、レーザ光の照射に関するパラメータの値を記憶する記憶手段を備えている。記憶手段には、複数の治療モードの各々に対応した複数の前記レーザ光の照射に関するパラメータを記憶させている。また、複数のレーザ光の照射に関するパラメータの値を編集するための編集手段を備えている。これによって、例えば、術者の好みのパラメータ設定で、眼科用レーザ治療装置1を使用できる。その上で、選択された治療モードに応じて、治療用のレーザ光の照射に関するパラメータが自動的に変更されるので、眼科用レーザ治療装置1をより好適に使用できる。
【0070】
また、本実施形態の眼科用レーザ治療装置1が用いるレーザ光の照射に関するパラメータには、レーザ光の照射エネルギー量が含まれている。制御手段は、選択受付手段で選択された治療モードに応じて、レーザ光の照射に関するパラメータに含まれる照射エネルギー量に関する値を変更する。これによって、治療モードを変更する際の操作の手間を低減できる。
【0071】
制御手段は、選択された治療モードに適したフォーカスシフト位置をユーザに推奨するための推奨値を表示部66に表示してもよい。この場合、制御手段は、治療モードに応じて設定された、フォーカスシフト位置を示すパラメータの値を、推奨値として表示させてもよい。これによって、例えば、眼科用レーザ治療装置1がモータ55を備えなくとも、術者は前述した推奨値を確認しながらフォーカスシフト位置を好適な位置へと、手動で位置合わせできる。
【0072】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びこれと均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。