(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記印刷インキは、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、及び酸化チタンのいずれか、或いはこれらの混合物を顔料として含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の化粧シート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(化粧板10)
本実施形態の化粧板10は、
図1に示すように、着色熱可塑性樹脂層1の一方の面側に、絵柄印刷層2、透明接着剤層3、及び2層以上の透明熱可塑性樹脂層4がこの順に積層されて化粧シート20が形成され、着色熱可塑性樹脂層1の他方の面側に、プライマー層5を介して基材6を貼り合わせて構成される。本実施形態の化粧板10は、特に、玄関ドア、屋根、外壁、ルーバー等の外装用途に好適なものである。
【0010】
(着色熱可塑性樹脂層1)
着色熱可塑性樹脂層1は、熱可塑性樹脂からなるシート状の層である。熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、既知の熱可塑性樹脂を使用できる。例えば、ホモポリプロピレン系樹脂、ランダムポリプロピレン系樹脂等のポリプロピレン系樹脂、またはポリエチレン樹脂が好ましい。また、着色熱可塑性樹脂層1の熱可塑性樹脂には、ヒンダートフェノール系酸化防止剤、紫外線吸収剤及びヒンダートアミン系光安定剤等を添加してもよい。
【0011】
また、着色熱可塑性樹脂層1を構成する樹脂は、酸化チタンを顔料として含んでいる。これにより、着色熱可塑性樹脂層1は、赤外光が絵柄印刷層2を透過すると、透過した赤外光を反射する。また、熱可塑性樹脂100質量部に対し、酸化チタンを23質量部以上50質量部以下の範囲内で含む。これにより、絵柄印刷層2が透過した赤外光をより適切に反射でき、また着色熱可塑性樹脂層1をより適切に形成(成膜)できる。
なお、本実施形態では、顔料である酸化チタンを着色熱可塑性樹脂層1の樹脂内に含ませる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、着色熱可塑性樹脂層1の絵柄印刷層2側の面に酸化チタンを顔料とする塗料を塗工する構成としてもよい。
【0012】
(絵柄印刷層2)
絵柄印刷層2は、意匠性を付与するための絵柄の印刷により形成された層である。絵柄としては、例えば、木目、石目、抽象柄等、化粧シート20を用いる箇所に適した絵柄を選択できる。また、印刷インキは、例えば、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、及び酸化チタンのいずれか、或いはこれらの混合物を顔料として含んでいる。これにより、印刷インキは、赤外光の透過率が40%以上となっている。それゆえ、絵柄印刷層2が赤外光を透過し、透過した赤外光を着色熱可塑性樹脂層1が反射するため、赤外光の熱による蓄熱作用が低減される。
【0013】
ここで、印刷インキの透過率の測定方法としては
、厚み25μmの2軸延伸PETフィルム(東レ株式会社製ルミラーS50)に対し、重量1g/m2となるよう顔料を分散したインキで印刷し、株式会社島津製作所製分光光度計UV3600によって波長782nm以上2500nm以下の領域を2nm毎に測定点数860点の透過率を測定し、各波長の透過率(%T)の合計値を測定点数で除算した除算結果を、赤外光の透過率とする方法
を用いる。即ち、式「赤外光の透過率=赤外線各波長(782nm以上2500nm以下)の測定透過率(%T)合計値÷測定点数(860)」で算出する。
また、絵柄印刷層2の厚みは5μm以上10μm以下が好ましい。さらに、絵柄印刷層2を構成する樹脂内における酸化チタンの比率は、50%以下とすることが好ましい。
【0014】
(透明接着剤層3)
透明接着剤層3は、ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤からなる透明なシート状の層である。ポリエステル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤としては、例えば、ポリエステルポリオール系等と、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートまたはこれらの混合物とからなる2液ウレタン樹脂系接着剤を使用できる。
また、透明接着剤層3を構成するウレタン系接着剤には、化粧シート20の用途に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の添加剤を添加してもよい。
【0015】
(透明熱可塑性樹脂層4)
透明熱可塑性樹脂層4は、最外層4bとその内側の内側層4aとからなる。内側層4aは、2層以上あってもよい。ただし、加工性及び不燃性を考慮すれば、透明熱可塑性樹脂層4の総厚みが20〜80μmが好ましい。特に、耐候性を考慮すれば、30〜60μmが好適である。
(内側層4a)
内側層4aは、アクリル系樹脂からなる透明なシート状の層である。アクリル系樹脂としては、特に限定されず、既知のアクリル系樹脂を用いることができる。例えば、メチルメタクリレート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(Tgは−20℃程度)を使用することができる。また、内側層4aの厚みは、耐候性を考慮すれば、透明熱可塑性樹脂層4の総厚の85%以上90%以下が好ましい。さらに、アクリル系樹脂には、公知の紫外線吸収剤、光安定剤を添加してもよい。
【0016】
(最外層4b)
最外層4bは、熱可塑性樹脂からなる透明なシート状の層である。最外層4bを構成する熱可塑性樹脂の透湿度は、内側層4aを構成するアクリル系樹脂の当湿度より低くした。これにより、最外層4bに含まれる水分を低減でき、その水分によって内側層4aのアクリル系樹脂が劣化することを防止でき、内側層4aのアクリル系樹脂の劣化を長期にわたり抑制できる。劣化としては、例えば、チョーキング白化、クラック白化がある。
熱可塑性樹脂としては、各種耐性を考慮すれば、フッ素樹脂を使用できる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレンペルフルオロアルコキシビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニルフロライド(PVF)が好ましい。特に、折り曲げ白化性、内側層4aとの密着性を考慮すれば、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDFのTgは−39℃)がより好ましい。また、最外層4bの厚みは、耐候性を考慮すれば、透明熱可塑性樹脂層4の総厚の5%以上15%以下が好ましい。
【0017】
(プライマー層5)
プライマー層5は、プライマー剤からなるシート状の層である。プライマー剤としては、特に限定されず、既知のプライマー剤を用いることができる。例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系等の各種のプライマー剤を使用することができる。また、プライマー層5を構成するプライマー剤には、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の粉末を添加してもよい。これにより、プライマー層5の表面を粗面化でき、化粧シート20の巻取保存時のブロッキングを防止でき、投錨効果によりラミネート用接着剤との接着性を向上できる。
【0018】
(基材6)
基材6は、金属系または木質系からなる板状の部材である。金属系としては、例えば、アルミ、鋼、ステンレス、複合パネルを使用することができる。複合パネルとしては、例えば、芯材となる樹脂層と、樹脂層の両面それぞれに貼り付けられた金属板(アルミニウム、ガルバリウム、ステンレス等)とを備えたものがある。また、木質系としては、MDF(medium density fiberboard)、合板、パーチクルボードを使用することができる。
【0019】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る発明は、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態に係る化粧シート20は、着色熱可塑性樹脂層1の一方の面側に、印刷により形成された絵柄印刷層2、及び2層以上の透明熱可塑性樹脂層4がこの順に積層されて構成される。そして、透明熱可塑性樹脂層4は、最外層以外の層である内側層4aがアクリル系樹脂からなり、最外層4bを構成する熱可塑性樹脂の透湿度がアクリル系樹脂の透湿度より低く、着色熱可塑性樹脂層1は、酸化チタンを顔料とし、絵柄印刷層2は、赤外光の透過率が40%以上であるインキを印刷インキとする。
【0020】
このような構成によれば、透明熱可塑性樹脂層4の内側層4aがアクリル系樹脂からなるため、耐候性に優れたものとすることができる。また、絵柄印刷層2が赤外光を透過し、透過した赤外光を着色熱可塑性樹脂層1が反射するため、赤外光の熱の蓄熱作用を低減でき、赤外光(太陽光)があたる表面と裏面との温度差を低減でき、太陽光による反りの発生を抑制できる。これにより、本実施形態に係る化粧シート20は、耐候性に優れるとともに、太陽光による反りの発生を抑制可能な化粧シート20を提供できる。
また、透明熱可塑性樹脂層4の最外層4bに含まれる水分を低減でき、その水分によって内側層4aのアクリル系樹脂が劣化することを防止できる。これにより、内側層4aのアクリル系樹脂の劣化を長期にわたり抑制できる。
【0021】
(2)本実施形態に係る化粧シート20では、最外層4bを構成する熱可塑性樹脂は、フッ素樹脂である。
このような構成によれば、耐候性、耐汚染性、加工性、及び不燃性を有する。
(3)本実施形態に係る化粧シート20では、フッ素樹脂は、ポリフッ化ビニリデン樹脂である。
このような構成によれば、ポリフッ化ビニリデン樹脂を使用することで、折り曲げ白化性、内側層4aとの密着性をより良好なものとすることができる。
【0022】
(4)本実施形態に係る化粧シート20では、絵柄印刷層2の印刷インキは、イソインドリノン、ジスアゾ、ポリアゾ、ジケトピロロピロール、キイナクリドン、フタロシアニン、及び酸化チタンのいずれか、或いはこれらの混合物を顔料として含む。
このような構成によれば、着色熱可塑性樹脂層1、絵柄印刷層2を適切に形成できる。
(5)本実施形態に係る化粧シート20では、着色熱可塑性樹脂層1は、熱可塑性樹脂100質量部に対し、酸化チタンを23質量部以上50質量部以下の範囲内で含む。
このような構成によれば、絵柄印刷層2が透過した赤外光をより適切に反射でき、また着色熱可塑性樹脂層1を適切に形成(成膜)できる。
(6)本実施形態に係る化粧板10は、化粧シート20を基材6に貼りあわせてなる。
このような構成によれば、化粧シート20の赤外光による反りの発生を抑制できる。
【実施例】
【0023】
次に、本発明に基づく実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を3質量部、紫外線吸収剤を1質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を1質量部、酸化チタンを23質量部添加した混合物を使用して着色熱可塑性樹脂層1を設けた。着色熱可塑性樹脂層1の厚みは70μmとした。続いて、着色熱可塑性樹脂層1の表面にウレタン樹脂と塩化ビニル=酢酸ビニル共重合樹脂とを7:3で混合した混合物100質量部に対し、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを2:8で混合した硬化剤を3質量部、イソインドリノン、ポリアゾ、及びフタロシアニンからなる顔料を3質量部添加したインキを使用し、グラビア印刷により絵柄(木目柄)を印刷して、絵柄印刷層2を設けた。絵柄印刷層2の印刷インキの赤外光の透過率は40%とした。
【0024】
続いて、絵柄印刷層2上に、アクリル−ポリエステル−塩酢ビ系熱接着性樹脂(アクリル系樹脂:ポリエステル系樹脂:塩化酢酸ビニル=30:30:30)をグラビアコート法により塗工して透明接着剤層3を形成した。透明接着剤層3の塗布量(乾燥後の塗布量)は1.5g/m
2とした。
続いて、厚み5μm、透湿度5.0g/m
2・24時間(JIS−K−7129−1992に準ずる)のポリフッ化ビニリデン樹脂と、厚み45μm、透湿度200g/m
2・24時間(JIS−K−7129−1992に準ずる)のメチルメタアクリレート樹脂とを使用して溶融押出成形により最外層4bと内側層4aとからなる積層体を設けるとともに、上記形成した透明接着剤層3上に押し出して重ね合わせ、化粧シート20を設けた。
【0025】
(実施例2)
実施例2では、ポリプロピレン系樹脂に代えて、ポリエチレン樹脂を使用して着色熱可塑性樹脂層1を設けた。それ以外は、実施例1と同様の手順により、実施例2の化粧シート20を作製した。
(比較例)
比較例では、絵柄印刷層2に用いる顔料をカーボンブラックとした。それ以外は、実施例1と同様の手順により、比較例の化粧シート20を作製した。
【0026】
(評価判定)
以上の各実施例及び各比較例の化粧シート20について、次の評価を実施した。
(耐候性)
メタルハライドランプ方式の超促進耐候性試験機(ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用い、照度650W/m
2、ブラックパネル温度53℃として試験を実施した後、目視確認にて外観のクラックや剥離の有無を確認した。その際、外観にクラックや剥離がない場合を合格「○」、外観にクラックや剥離がある場合を不合格「×」とした。
【0027】
(遮熱性)
JISK5602に準拠し、塗膜の日照反射率を測定した。測定は、株式会社島津製作所製分光光度計UV3600を用いて行った。その際、塗膜の日射反射率が40%以上である場合を合格「〇」、40%以下である場合を不合格「×」とした。
(蓄熱性)
縦21cm、横29.7cm、厚みが0.5mmの無塗装鋼板に対し、接着剤を用いて片面のみ化粧シート20を貼り合わせた。そして、化粧シート20から真上に15cm離した位置にハロゲン球を設置し、ハロゲン球から化粧シート20に120分間連続して光を照射し、鋼板の表面及び裏面の温度を1分毎に記録して最大値を測定した。
【0028】
評価結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1から、透明熱可塑性樹脂層4の内側層4aがアクリル系樹脂から構成され、着色熱可塑性樹脂層1が酸化チタンを顔料とし、絵柄印刷層2が赤外光の透過率が40%以上であるインキを印刷インキとして、本発明の範囲を満足する実施例1、実施例2では、耐候性、遮熱性、蓄熱性ともに良好であることが分かった。すなわち、耐候性に優れるとともに、太陽光による反りの発生を抑制できることが分かった。
これに対し、比較例は、耐候性が合格「○」であるが、遮熱性が不合格「×」であり、蓄熱性が表す鋼板の温度が実施例1、実施例2よりも10℃程度高くなってしまった。
なお、実施例1において、透明熱可塑性樹脂層4の内側層4aがアクリル系樹脂から構成され、着色熱可塑性樹脂層1が酸化チタンを顔料とし、絵柄印刷層2が赤外光の透過率が40%以上であるインキを印刷インキとして、本発明の範囲で調整して実施してみたところ、実施例1、実施例2と同様な効果を得た。