特許第6540211号(P6540211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6540211光学用ポリエステルフィルム及びそれを用いた偏光板、透明導電性フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540211
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】光学用ポリエステルフィルム及びそれを用いた偏光板、透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20190628BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B27/36
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-97153(P2015-97153)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-232699(P2015-232699A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2018年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2014-102162(P2014-102162)
(32)【優先日】2014年5月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅佑美
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 功
(72)【発明者】
【氏名】高田 育
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−235231(JP,A)
【文献】 特開2014−73598(JP,A)
【文献】 特開2014−66942(JP,A)
【文献】 特開平10−76620(JP,A)
【文献】 特開平2−219832(JP,A)
【文献】 特開2011−118190(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/104116(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B27/36
B32B 7/023
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが50nm以上1500nm以下であり、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとすると方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度が50%以上200%以下、かつ、方向X、方向Yにおける引裂伝播抵抗が10N/mm以上25N/mm以下である、光学用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
ポリエステルA層と、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する少なくとも2層以上の積層フィルムであって、ポリエステルB層のジカルボン酸成分の60モル%以上82モル%未満がテレフタル酸成分、18モル%以上40モル%未満がその他のジカルボン酸成分である、請求項1に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記その他のジカルボン酸成分がイソフタル酸成分である、請求2に記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記光学用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最表面に、ハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、及び帯電防止性からなる群より選択される1種以上の機能を示す表面層が積層されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
偏光子保護用である、請求項1から4のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の面の偏光子保護フィルムが請求項5に記載の光学用ポリエステルフィルムである偏光板。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルムを有する透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途(偏光子保護、透明導電性フィルムなど)に特に適して用いられるポリエステルフィルムに関するものであり、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、斜め方向から見た際の干渉色を抑制でき、かつ偏光板などの光学部材製造時の取り扱いに優れたポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、機械的性質、電気的性質、寸法安定性、透明性、耐薬品性などに優れた性質を有することから、磁気記録材料、包装材料などの多くの用途において基材フィルムとして広く使用されている。特に近年、フラットパネルディスプレイやタッチパネル分野において、偏光子保護フィルムや透明導電フィルムなど各種光学用フィルムの需要が高まっており、その中でも、偏光子保護フィルム用途では、低コスト化を目的として従来のTAC(トリアセチルセルロース)フィルムから二軸配向ポリエステルフィルムへの置き換えが検討されている。二軸配向ポリエステルフィルムは、延伸時のポリマーの配向に起因して、液晶ディスプレイとして組み立てた際に干渉色が生じてしまうことから、干渉色を抑制するために分子配向を特定の範囲とする検討(例えば、特許文献1)、面内リタデーション、面配向度などを特定の範囲とする検討(例えば、特許文献2)などが行われている。
【0003】
特許文献1、2とも、正面からディスプレイを目視した際の干渉色は抑制されるものの、厚み方向のリタデーションが高いため、斜め方向から目視した場合の干渉色抑制が不十分であった。
【0004】
また、斜め方向からディスプレイを目視した際の干渉色を抑制するため、ポリマー組成や製造条件を調整することによりフィルムの二軸配向を低減させる方法が考えられるが、そのような検討を行う場合、フィルムが脆くなり、加工性が不十分となる場合があった。
【0005】
タッチパネルなどで用いられる透明導電性フィルムや飛散防止フィルムにおいても、大画面化や構成の簡素化により、タッチパネルなどに組み立てた際の干渉色抑制の要求が強まってきているが、従来のフィルム(例えば、特許文献1、2)では特性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−181870号公報
【特許文献2】特開2013−210598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では上記の欠点を解消し、二軸延伸ポリエステルフィルムでありながら、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、斜め方向から見た際の干渉色を抑制でき、かつ偏光板製造時の取り扱いに優れたポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明は、以下の構成を有する。
(1) 光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であり、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとすると方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度が50%以上200%以下、かつ、方向X、方向Yにおける引裂伝播抵抗が10N/mm以上25N/mm以下である、光学用ポリエステルフィルム。
(2) ポリエステルA層と、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する少なくとも2層以上の積層フィルムであって、ポリエステルB層のジカルボン酸成分の60モル%以上82モル%未満がテレフタル酸成分、18モル%以上40モル%未満がその他のジカルボン酸成分である、(1)に記載の光学用ポリエステルフィルム。
(3) 前記その他のジカルボン酸成分がイソフタル酸成分である、(1)または(2)に記載の光学用ポリエステルフィルム。
(4) 前記光学用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の最表面に、ハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、及び帯電防止性からなる群より選択される1種以上の機能を示す表面層が積層されていることを特徴とする、(1)から(3)のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
(5) 偏光子保護用である、(1)から(4)のいずれかに記載の光学用ポリエステルフィルム。
(6) 偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の面の偏光子保護フィルムが(5)に記載の偏光子保護用ポリエステルフィルムである偏光板。
(7) (1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステルフィルムを有する透明導電性フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、偏光板の製造工程での取扱性を低下することなく、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、斜め方向から見た際でも干渉色を抑制できる高品位な表示を可能とする効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを測定する際の概要図である。aは試料ステージを示し、光束入射方向に対して直行している。bはaに対して50°傾斜した試料ステージである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の光学用ポリエステルフィルムについて詳細に説明する。
【0012】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが1500nm以下であることが重要である。光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを1500nm以下とすることで、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、斜め方向から見た際の干渉色を抑制することができる。
【0013】
ここで、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度とは、王子計測機器(株)製「KOBRA」シリーズなどの位相差測定装置において定義される角度を指しており、具体的には、光束がフィルムに垂直に入射する状態の測定試料のステージの角度を0°とした場合に、ステージを傾斜回転させた角度を指す。
【0014】
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションは、斜め方向から見た際の干渉色をより抑制できる観点から、好ましくは1000nm以下であり、より好ましくは400nm以下、特に好ましくは300nm以下である。また、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションは、斜め方向の干渉色を抑制する観点からは低いほど好ましいが、耐脆性の観点からは、50nm以上が好ましい。
【0015】
光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを1500nm以下とする具体的な方法としては、本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルのジカルボン酸成分を2種類以上とし、ポリエステルフィルムの二軸配向を低下させる方法、延伸倍率を低く設定したり、延伸温度を上げたりするなど、製造条件を調整してポリエステルフィルムの二軸配向を低下させる方法、フィルム厚みを低減させる方法、融点の異なるポリエステル層を少なくとも2層以上有する積層構成の場合に融点の低い層の厚み割合を大きくする方法などが挙げられる。
【0016】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとすると方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度が50%以上200%以下であることが重要である。方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度を50%以上とすることで、たとえば、偏光子保護用途における偏光板製造時(例えば、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシート(偏光子)と本発明のポリエステルフィルムを貼り合わせる工程など)、あるいは透明導電性フィルム用途における透明導電層の積層(スパッタリング加工、コーティングなど)において、工程内での張力がかかり変形が生じた場合も、フィルム破断を抑制する効果が得られる。また、方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度を200%以下とすることで、たとえば、偏光子保護用途における偏光板製造時、透明導電性フィルム用途における透明導電層の積層(スパッタリング加工、コーティングなど)において、工程内での張力がかかってもフィルムの弾性変形となって形状が元に戻るため、貼合せ時の変形により光学的な歪みが生じることによる干渉色発生を抑制する効果が得られる。
【0017】
ここで、フィルムの破断伸度とは、引張試験機を用いて、試験前のチャック間距離(L0)と、試験片が破断したときのチャック間距離(L)を測定し、(L−L0)/L0×100の計算式で求めた値である。本発明における破断伸度の測定条件は、JIS K−7127−1999に準拠して10mm幅、150mm長さの試験片を作製し、初期のチャック間隔(試験前の測定部分長さ)を50mm、引張速度300mm/分とする。また、10回の測定を行い、これらの平均値をフィルムの破断伸度として採用する。
【0018】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、たとえば、偏光子保護用途における偏光板製造時、透明導電性フィルム用途における透明導電層の積層(スパッタリング加工、コーティングなど)でのフィルム破断抑制と干渉色の抑制を両立できる観点から、方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度は、70%以上170%以下が好ましく、100%以上150%以下がより好ましい。
【0019】
方向X、方向Yにおけるフィルムの破断伸度を50%以上200%以下とするための具体的な方法としては、本発明のポリエステルフィルムの製造時の熱固定温度を、最も融点の低いポリエステル層の融点以下に設定し、配向した結晶を溶融させずに残存させる方法などが挙げられる。さらに、熱固定温度を段階的に高くしていく方法も非常に有効である。この場合、熱固定温度1段目の温度を最も融点の低いポリエステル層の融点−80℃〜融点−30℃(最も融点の低いポリエステル層の結晶性が低く、通常の示差走査熱量計測定では融点の測定が困難な場合は、例えば120℃〜170℃)とし、熱固定2段目の温度を最も融点の低いポリエステル層の融点以下(最も融点の低いポリエステル層の結晶性が低く、通常の示差走査熱量計測定では融点の測定が困難な場合は、例えば200℃以下)に設定することが好ましい。このように2段階に熱固定を行うことにより、配向した結晶をより溶融しにくくでき、破断伸度を50%以上200%以下に制御しやすくなる。
【0020】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとした際の、方向X、方向Yにおける引裂伝播抵抗が10N/mm以上25N/mm以下であることが重要である。方向X、方向Yにおける引裂伝播抵抗を10N/mm以上とすることで、たとえば、偏光子保護用途における偏光板製造時(例えば、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシート(偏光子)と本発明のポリエステルフィルムを貼り合わせる工程など)、もしくは透明導電層の積層(スパッタリング加工、コーティングなど)工程において、ポリエステルフィルム、偏光板、あるいは透明導電性フィルムがわずかにねじれた際のエッジ部分でのクラック発生を抑制できる効果が得られる。また、方向X、方向Yにおける引裂伝播抵抗を25N/mm以下とすることで、二軸配向を抑制して干渉色発生を抑制する効果が得られる。
【0021】
ここで、引裂伝播抵抗とは、エレメンドルフ引裂試験機を用いてJIS K−7128−2−1998に沿って、切れ込みを入れた試験片を引き裂いたときに求められる引き裂き強さの値である。本発明における引裂伝播抵抗の測定条件は、例えば方向Xについて測定したい場合、方向X、方向Yにそれぞれ63mm×76mmの試験片を切り出し、76mmの辺の中央部位置に、端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り43mmの長さを引き裂いて求めたものとする。また、10回の測定を行い、これらの平均値をフィルムの引裂伝播抵抗として採用する。
【0022】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、たとえば、偏光子保護用途における偏光板製造時、もしくは透明導電層の積層工程時のクラック抑制と干渉色抑制を両立できる観点から、方向X、方向Yにおける引裂伝播抵抗が11N/mm以上20N/mm以下であることが好ましく、13N/mm以上20N/mm以下であることがより好ましい。
【0023】
方向X、方向Yにおけるフィルムの引裂伝播抵抗を10N/mm以上25N/mm以下とするための具体的な方法としては、本発明のポリエステルフィルムの製造時の熱固定温度を、最も融点の低いポリエステル層の融点以下に設定し、配向した結晶を溶融させずに残存させる方法、融点の異なる積層構成とし、各層の積層厚み比を特定の範囲にすることで引裂時の抵抗を増加させる方法などが挙げられる。さらに、融点の異なる積層構成とする場合、各層に用いられるポリエステルの固有粘度に差をつけることも好ましい。各層のポリエステルの固有粘度に差をつけることにより、積層界面での引裂抵抗が大きくなり、フィルムとしての引裂伝播抵抗を高めることが可能となる。引裂伝播抵抗を高めるための各層の固有粘度の差は、0.3より大きければ好ましい。
【0024】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、斜め方向から見た際の干渉色の抑制、偏光板や透明導電性フィルム製造時の破断、エッジ部分のクラック抑制の両立の観点から、ポリエステルA層と、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を有する少なくとも2層以上の構成であることが好ましい。積層構成とすることで、例えば、ポリエステルA層に偏光板製造時の破断、エッジ部分のクラック抑制機能を付与し、ポリエステルB層に干渉色の抑制機能を付与するなど、機能分離が可能となる。
【0025】
少なくとも2層以上あれば層数、層構成は特に限定されないが、フィルムのカールを抑制し、偏光子に貼り合わせる際の反り低減と干渉色抑制を両立する観点からは、A層/B層/A層、A層/B層/A層/B層/A層、といったように、フィルムが厚み方向に対して対称であり、かつ両表層がポリエステルA層である構成が好ましい。偏光子に貼り合わせる際の反り低減がより重要な用途においては、積層する層数が3〜9層であると好ましく、5〜7層が特に好ましい。積層する層数が3層未満であると、偏光子に貼り合わせる際の反り低減が不十分な場合があり、積層する総数が9層を超えると、製膜時の積層性が低くなり、フローマーク等が発生し、フィルムの品位が低下する場合がある。
【0026】
ポリエステルB層の融点をポリエステルA層より低くするための方法としては、ポリエステルB層の融点を下げる方法が挙げられ、具体的な方法としては、ポリエステルB層を構成するジオール由来の構造単位であるジオール成分、およびB層を構成するジカルボン酸由来の構造単位であるジカルボン酸成分のうちそれぞれ最も多い成分に対し、それ以外の成分を増やしていく方法が挙げられる。
【0027】
例えば、B層を構成するジオール由来の構造単位としてエチレングリコール由来の構造単位を最も多く含み、ジカルボン酸由来の構造単位としてテレフタル酸を最も多く含む場合、エチレングリコール以外のジオール成分の割合、およびテレフタル酸以外のジカルボン酸成分の割合を増やしていくことで、ポリエステルB層の融点を下げることができる。
【0028】
ここで、エチレングリコール以外のジオール成分としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、イソソルベート、スピログリコールなどを挙げることができる。中でも、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルベート、スピログリコールが好ましく用いられる。これらのジオール成分はエチレングリコール以外に1種類のみでもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0029】
中でも、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを低減させ、斜め方向から見た際の干渉色を抑制する観点からは、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0030】
また、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、および、各種芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸とのエステル誘導体などが挙げられる。
【0031】
中でも、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを低減させ、斜め方向から見た際の干渉色を抑制する観点からは、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。
【0032】
本発明の光学用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルB層は、ジカルボン酸成分の60モル%以上82モル%未満がテレフタル酸成分、18モル%以上40モル%未満がその他のジカルボン酸成分であることが好ましい。ジカルボン酸成分の82モル%以上がテレフタル成分、18モル%未満がその他のジカルボン酸成分であると、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションが高くなり、斜め方向から見た際の干渉色が発生する場合がある。また、ジカルボン酸成分の60モル%未満がテレフタル成分、40モル%以上がその他のジカルボン酸成分であると、ポリエステルの結晶性が低下して製造時の厚みムラが大きくなったり、偏光板や透明導電性フィルム製造時の破断、エッジ部分のクラックが発生しやすくなったりする場合がある。斜め方向から見た際の干渉色抑制と加工時の取扱い性の両立の観点からは、ポリエステルB層が、ジカルボン酸成分の70モル%以上80モル%未満がテレフタル酸成分、20モル%以上30モル%未満がその他のジカルボン酸成分であることが好ましい。
【0033】
すなわち、本発明におけるポリエステルB層は、ジカルボン酸成分の70モル%以上80モル%未満がテレフタル酸成分、20モル%以上30モル%未満がテレフタル酸以外のジカルボン酸成分としてイソフタル酸および/または、2,6−ナフタレンジカルボン酸を20モル%以上30モル%未満含んでいることが特に好ましい態様である。
【0034】
また、偏光板や透明導電性フィルムの製造工程における工程安定化や、使用環境における耐久性を付与するため、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、少なくとも一方の面にハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、紫外線遮蔽性、及び帯電防止性からなる群より選択される1種以上の機能を示す表面層を有することが好ましい。
【0035】
前記表面層の厚みは、その機能により異なるが、好ましくは10nmから30μmの範囲であり、50nmから20μmがより好ましい。これよりも薄いと効果が不十分になり、厚くなると光学性能などに悪影響を及ぼす可能性がある。
【0036】
ここでハードコート性とは、表面の硬度を高めることにより傷がつきにくくする機能である。その機能としては、JIS K−5600−5−4−1999に記載の引っかき硬度(鉛筆法)による評価にて、好ましくはHB以上で、より好ましくは2H以上であるか、#0000のスチールウールで200g/cmの条件で行う耐擦傷性試験において、傷がつかない状態を示す。
【0037】
ここで、自己修復性とは、弾性回復などより傷を修復することにより傷がつきにくくする機能であり、その機能としては、500gの荷重をかけた真鍮ブラシで表面を擦過した際、好ましくは3分以内で、より好ましくは1分以内である。
【0038】
防眩性とは、表面での光散乱により外光の映り込みを抑制することで、視認性を向上させる機能である。その機能としては、JIS K−7136−2000に記載の、ヘイズの求め方に基づく評価にて、2〜50%であえることが好ましく、より好ましくは2〜40%、特に好ましくは2〜30%である。
反射防止性、低反射性とは、光の干渉効果により表面での反射率を低減することで、視認性を向上させる機能である。その機能としては反射率分光測定により、好ましくは反射率が2%以下、特に好ましくは1%以下である。
【0039】
帯電防止性とは、表面からの剥離や表面への擦過により発生した摩擦電気を、漏洩させることにより除去する機能である。その機能の目安としては、JIS K−6911−2006に記載の表面抵抗率が、好ましくは1011Ω/□以下であり、より好ましくは10Ω/□以下である。帯電防止性の付与は、公知の帯電防止剤を含有した層である他、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子を含有した層からなるものであってもよい。以下、ハードコート性と防眩性の付与について、より詳しく述べる。
【0040】
前記ハードコート性を付与する表面層(以下、ハードコート層とする)に用いられる材料は、公知のハードコート層に用いられる材料を用いることができ、特に限定されないが、乾燥、熱、化学反応、もしくは電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する樹脂化合物を用いることができる。このような、硬化性樹脂としては、メラミン系、アクリル系、シリコン系、ポリビニルアルコール系の硬化性樹脂が挙げられるが、高い表面硬度もしくは光学設計を得る点で電子線又は紫外線により硬化するアクリル系硬化性樹脂が好ましい。
【0041】
電子線又は紫外線により硬化するアクリル樹脂とは、アクリレート系の官能基を有するものであり、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を含有するものが使用できる。
電子線又は紫外線硬化型樹脂の場合には、前述の樹脂中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチラウムモノサルファイド、チオキサントン類や、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。上記光重合開始剤の添加量は、電子線紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましい。
【0042】
上記塗膜の硬化方法としては特に限定されないが、紫外線照射によって行うことが好ましい。紫外線によって硬化を行う場合、190〜380nmの波長域の紫外線を使用することが好ましい。紫外線による硬化は、例えば、メタルハライドランプ灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯等によって行うことができる。電子線源の具体例としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が挙げられる。
【0043】
また、シロキサン系熱硬化性樹脂もハードコート層の樹脂として有用であり、酸または塩基触媒下においてオルガノシラン化合物を単独または2種以上混合して加水分解及び縮合反応させて製造することができる。
【0044】
上記ハードコート層の膜厚は、0.5μm〜20μmが好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜15μmがさらに好ましい。
【0045】
前記防眩性を付与する表面層(以下、防眩層とする)に使用される樹脂としては、前述の電子線又は紫外線硬化型樹脂と同様のものも使用することができる。前記記載の樹脂から1種類もしくは2種類以上を混合して使用することができる。また、可塑性や表面硬度などの物性を調整するために、電子線又は紫外線で硬化しない樹脂を混合することもできる。電子線または紫外線で硬化しない樹脂には、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリアミドなどが挙げられる。
【0046】
防眩層に使用する粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、アルミナ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子、あるいはポリメチルメタクリレート粒子、アクリル−スチレン共重合体粒子、架橋アクリル粒子、メラミン粒子、架橋メラミン粒子、ポリカーボネート粒子、ポリ塩化ビニル粒子、ベンゾグアナミン粒子、架橋ベンゾグアナミン粒子、ポリスチレン粒子、架橋ポリスチレン粒子などの樹脂粒子が好ましく挙げられる。形状としては、表面突起形状が揃う真球状粒子が好適に用いられるが、タルク、ベントナイトなどの層状無機化合物などの不定形のものも使用できる。また、異なる2種以上の粒子を併用して用いてもよい。素材種が2種類以上でも、粒径が2種類以上でも、その制限は無い。
【0047】
防眩層で使用する粒子の粒径は、0.5〜10μmであり、0.5〜5μmがより好ましく、0.5〜3μmがさらに好ましく、0.5〜1.5μmがより一層好ましい。また、前記粒子の含有量は、樹脂に対して1〜50重量%であり、2〜30重量%がさらに好ましい。ここで、本発明における平均粒径とは、D=ΣDi /N(Di :粒子の円相当径、N:粒子の個数)で表される数平均径Dのことを指す。
【0048】
上記防眩層の膜厚は、0.5μm〜20μmが好ましく、1μm〜20μmがさらに好ましく、1μm〜10μmがさらに好ましい。
【0049】
本発明に用いられる防眩層としては、特開平6−18706号公報、特開平10−20103号公報、特開2009−227735号公報、特開2009−86361号公報、特開2009−80256号公報、特開2011−81217号公報、特開2010−204479号公報、特開2010−181898号公報、特開2011−197329号公報、特開2011−197330号公報、特開2011−215393号公報などに記載の防眩層も好適に使用できる。
【0050】
前記表面層には、上記記載のもの以外に、必要に応じて、発明の効果を失わない範囲でその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、限定されるわけではないが、例えば、無機または有機顔料、重合体、重合開始剤、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤、界面活性剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、触媒、赤外線吸収剤、難燃剤、消泡剤、導電性微粒子、導電性樹脂などを添加することができる。
【0051】
本発明の光学用フィルムは、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した際に高品位な表示が可能となることから、各種光学用途に好適に用いることが可能であり、光学用途の中でも、特に、偏光子保護用途、透明導電性フィルム用途、ガラスの飛散防止フィルム用途などに好適に用いることができる。
【0052】
本発明の偏光板は、偏光子の両面に偏光子保護フィルムを有してなる偏光板であって、少なくとも一方の面の偏光子保護フィルムが前記偏光子保護ポリエステルフィルムであることが好ましい。他方の偏光子保護フィルムは、本発明の偏光子保護ポリエステルフィルムであっても良いし、トリアセチルセルロースフィルムやアクリルフィルム、ノルボルネン系フィルムに代表されるような複屈折が無いフィルムを用いることも好ましい。
【0053】
偏光子としては、例えばポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性材料を含むものが挙げられる。偏光子保護フィルムは偏光子と直接または接着剤層を介して張り合わされるが、接着性向上の点からは接着剤を介して張り合わすことが好ましい。本発明のポリエステルフィルムを接着させるのに好ましい偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素や二色性材料を染色・吸着させ、ホウ酸水溶液中で一軸延伸し、延伸状態を保ったまま洗浄・乾燥を行うことにより得られる偏光子が挙げられる。一軸延伸の延伸倍率は、通常4〜8倍程度である。ポリビニルアルコール系フィルムとしてはポリビニルアルコールが好適であり、「クラレビニロン」((株)クラレ製)、「トーセロビニロン」(東セロ(株)製)、「日合ビニロン」(日本合成化学(株)製)などの市販品を利用することができる。二色性材料としてはヨウ素、ジスアゾ化合物、ポリメチン染料などが挙げられる。
本発明の透明導電性フィルムは、本発明の光学用ポリエステルフィルム上に、直接、または易接着層を介して透明導電層を積層したフィルムである。透明導電層は、透明な導電性の膜を形成できれば特に限定されず、例えば、酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、CNT、銀、銅などの薄膜が挙げられる。これらの化合物は、適切な生成条件を選択することにより、透明性と導電性を両立できる。
【0054】
透明導電層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法、導電性材料を含んだ塗液をコーティングする方法などが知られており、材料の種類および必要な膜厚に応じて適宜の方法を選択して使用することができる。例えば、スパッタリング法の場合は、化合物ターゲットを使用した通常のスパッタ、金属ターゲットを使用した反応性スパッタ等が使用される。この際、酸素、窒素、水蒸気などの反応性ガスを導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を併用したりすることもできる。
【0055】
次に、本発明の光学用ポリエステルフィルムの好ましい製造方法を以下に説明する。本発明はかかる例に限定して解釈されるものではない。
【0056】
はじめに、ポリエステル原料をベント式二軸押出機に供給して溶融押出する。ポリエステルA層と、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を積層させる場合は、ポリエステルA層に用いるポリエステルAと、ポリエステルB層に用いるポリエステルBをそれぞれ別々のベント式二軸押出機に供給し溶融押出する。この際、フィルム引裂伝播抵抗を高めるため、ポリエステルA層とポリエステルB層との固有粘度の差は、0.3より大きいことが好ましい。以下、ポリエステルA層と、ポリエステルA層より融点の低いポリエステルB層を積層した構成として説明する。この際、押出機内を流通窒素雰囲気下で、酸素濃度を0.7体積%以下とし、樹脂温度は265℃〜295℃に制御することが好ましい。ついで、フィルターやギヤポンプを通じて、異物の除去、押出量の均整化を各々行い、ポリエステルA層とポリエステルB層を合流させた後、Tダイより冷却ドラム上にシート状に吐出する。その際、高電圧を掛けた電極を使用して静電気で冷却ドラムと樹脂を密着させる静電印加法、キャスティングドラムと押出したポリマーシート間に水膜を設けるキャスト法、キャスティングドラム温度をポリエステル樹脂のガラス転移点〜(ガラス転移点−20℃)にして押出したポリマーを粘着させる方法、もしくは、これらの方法を複数組み合わせた方法により、シート状ポリマーをキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸フィルムを得る。これらのキャスト法の中でも、ポリエステルを使用する場合は、生産性や平面性の観点から、静電印加する方法が好ましく使用される。
【0057】
本発明の光学用ポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性の観点から二軸配向フィルムとすることが好ましい。二軸配向フィルムは、未延伸フィルムを長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する、あるいは、幅方向に延伸した後、長手方向に延伸する逐次二軸延伸方法により、または、フィルムの長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方法などにより延伸を行うことで得ることができる。
【0058】
かかる延伸方法における延伸倍率としては、長手方向に、好ましくは、2.8倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは3倍以上3.3倍以下が採用される。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。また長手方向の延伸温度は、95℃以上130℃以下が好ましく、延伸前に85℃で1秒以上予熱することが好ましい。また、幅方向の延伸倍率としては、好ましくは2.8倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは、3倍以上3.5倍以下で、長手方向の延伸倍率にそろえることが好ましい。幅方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。
【0059】
さらに、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。この熱処理は、二軸延伸後の配向結晶を成長させて熱寸法性を向上させることが目的であるため、最も融点の高いポリエステル層(本構成の場合、ポリエステルA層)の融点以下の範囲内で、なるべく高い熱処理温度に設定する場合が一般的である。
ただし、本発明の光学用ポリエステルフィルムは、光束入射方向との直交面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーションを低くするため、2種類以上のジカルボン酸成分から構成して結晶性を低下させる場合があり、一般的な熱処理条件では配向結晶の成長が進行しないだけでなく、ポリエステルB層に融点付近以上の熱が加わり、配向結晶が融解して消失してしまう。そして、ポリエステルB層の配向結晶が融解した結果、破断伸度や引裂伝播抵抗が低下し、偏光板製造時の取扱い性が不十分になる場合がある。そのため、本発明の光学用ポリエステルフィルムを製造する際は、最も融点の低いポリエステル層(本構成の場合、ポリエステルB層)よりも低い温度で熱処理を行うことが好ましい。さらに、フィルムの破断強度を高めるため、熱処理温度として、1段目の温度を最も融点の低いポリエステル層の融点−80℃〜融点−30℃(最も融点の低いポリエステル層の結晶性が低く、通常の示差走査熱量計測定では融点の測定が困難な場合は、例えば120℃〜170℃)とし、2段目の温度を最も融点の低いポリエステル層の融点以下(最も融点の低いポリエステル層の結晶性が低く、通常の示差走査熱量計測定では融点の測定が困難な場合は、例えば200℃以下)に設定することが好ましい。また、熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは5秒以上60秒以下、より好ましくは10秒以上40秒以下、最も好ましくは15秒以上30秒以下で行うのがよい。
【0060】
さらに、偏光子や透明導電層との接着力を向上させるため、少なくとも片面にコロナ処理を行ったり、易接着層をコーティングさせたりすることもできる。コーティング層をフィルム製造工程内のインラインで設ける方法としては、少なくとも一軸延伸を行ったフィルム上にコーティング層組成物を水に分散させたものをメタリングリングバーやグラビアロールなどを用いて均一に塗布し、延伸を施しながら塗剤を乾燥させる方法が好ましく、その際、易接着層厚みとしては0.01μm以上1μm以下とすることが好ましい。また、易接着層中に各種添加剤、例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料、染料、有機または無機粒子、帯電防止剤、核剤などを添加してもよい。易接着層に好ましく用いられる樹脂としては、接着性、取扱い性の点からアクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。さらに、90〜200℃条件下でオフアニールすることも好ましく用いられる。
【0061】
本発明の光学用ポリエステルフィルムにおいて、ハードコート性、自己修復性、防眩性、反射防止性、低反射性、及び帯電防止性などの機能を付与するため、最表面に表面層を積層する場合には、前述の塗料組成物を塗布−乾燥−硬化することにより形成する製造方法を用いることが好ましい。
【0062】
塗布により表面層を製造する方法は特に限定されないが、塗料組成物をディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい。さらに、これらの塗布方式のうち、グラビアコート法または、ダイコート法が塗布方法としてより好ましい。
【0063】
次いで、塗布された液膜を乾燥することで完全に溶媒を除去するため、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。この中でも、精密に幅方向でも乾燥速度を均一にする必要から、対流伝熱、または輻射伝熱を使用した方式が好ましい。
【0064】
さらに、熱またはエネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。硬化工程において、熱で硬化する場合には、室温から200℃であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、100℃以上200℃以下がより好ましく、130℃以上200℃以下であることがさらに好ましい。
【0065】
また、活性エネルギー線により硬化する場合には汎用性の点から電子線(EB線)及び/又は紫外線(UV線)であることが好ましい。また紫外線により硬化する場合は、酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が不十分となる場合がある。また、紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000mW/cm、好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましく、紫外線の積算光量が100〜3,000mJ/cm、好ましく200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことがより好ましい。
ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計及び被照射物との光源距離によって変化する。しかし、搬送スピードによって照度は変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する照射速度に反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
【0066】
本発明の偏光子保護用ポリエステルフィルムは、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作成されたPVAシート(偏光子)と貼り合わされて偏光板として、好ましく用いられる。
【実施例】
【0067】
本発明における特性の測定方法、および効果の評価方法は次のとおりである。
【0068】
(1)ポリエステルの組成
ポリエステル樹脂およびフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H−NMRおよび13C−NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体を構成する成分を採取して評価した。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、組成を算出した。
【0069】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステル樹脂およびフィルムの極限粘度は、ポリエステルをオルトクロロフェノールに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の固有粘度を評価した。
【0070】
(3)フィルム厚み、層厚み
フィルムをエポキシ樹脂に包埋し、フィルム断面をミクロトームで切り出した。該断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製TEM H7100)で5000倍の倍率で観察し、フィルム厚みおよびポリエステル層の厚みを求めた。
【0071】
(4)融点
示差走査熱量計(セイコー電子工業製、RDC220)を用い、JIS K−7121−1987、JIS K−7122−1987に準拠して測定および、解析を行った。ポリエステルフィルムを5mg、サンプルに用い、25℃から20℃/分で300℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度を融点とした。なお、積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで、各層単体の融点を測定した。(3)の断面観察において積層構成が確認された場合は、各層をカッターで削り取ってそれぞれの層の融点を測定し融点の高い層をポリエステルA層、低い方の層をポリエステルB層とした。なお、融点が観測されない場合は、表に「ND」と表記している。
【0072】
(5)光束入射方向との直交面面に対して50°傾斜した角度に対するリタデーション(Re(50))
王子計測機器(株)製 位相差測定装置(KOBRA−21ADH)を用いて測定した。フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとして、30mm×50mm(方向X×方向Y)のサンプルを切り出し、位相差測定装置に設置した。光束の入射方向と直交する測定試料ステージ(図1a)角度を0°の面とした場合、この0°面と測定試料ステージが成す角度が50°となるように試料ステージ傾斜(図1b)させ、波長590nmのリタデーションを測定した。
【0073】
(6)破断伸度
フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとして、150mm×10mm(方向X×方向Y)の矩形に切り出してサンプルとした。引張試験機(オリエンテック製テンシロンUCT−100)を用いて、初期引張チャック間距離を50mm(L0)とし、引張速度を300mm/分として引張試験を行い、サンプルが破断した際のチャック間距離(L)を求めた。(L−L0)/L0×100の計算式で求めた値について、10回の測定の平均値を方向Xにおける破断伸度とした。150mm×10mm(方向Y×方向X)の矩形に切り出してサンプルを作製し、方向Yにおける破断伸度も同様に求めた。
【0074】
(7)引裂伝播抵抗
フィルム面内の任意の一方向を方向X、方向Xに直交する方向を方向Yとして、63mm×76mm(方向X×方向Y)の矩形に切り出してサンプルとした。軽荷重引裂試験機(東洋精機製)を用いて、JIS K−7128−2−1998に沿って測定した。サンプルの76mmの辺の中央部の位置に端から20mmの深さの切れ込みを入れ、残り43mmを引き裂いたときの指示値を読みとった。なお、測定は各方向に10回ずつ行い、その平均値を求めた。63mm×76mm(方向Y×方向X)の矩形に切り出してサンプルを作製し、方向Yにおける引裂伝播抵抗も同様に求めた。
【0075】
(8)視認性評価
PVA中にヨウ素を吸着・配向させて作成した偏光度99.9%の偏光子の一方の面に、10cm四方のフィルムを貼り合わせてテストピースとした。なお、貼り合わせには、85℃に設定したラミネーターロールを使用した。作成したテストピースとフィルムを貼り付けていない偏光板とをクロスニコルの配置にて重ね合わせLED光源(トライテック製A3−101)上においた場合の、テストピース平面の法線方向に対して50°の角度からの視認性を確認した。また、同様にして30cm四方のフィルムを貼り合せたテストピースも作製し、同様の評価を行った。
S:10cm四方、30cm四方のいずれの評価とも、干渉色はみられない。
A:10cm四方の評価においては、干渉色はみられない。30cm四方の評価において、干渉色がわずかに見られるが実用上は問題ない。
B:10cm四方、30cm四方の評価とも、わずかに干渉色が見られるが、許容できる程度である。
C: 10cm四方の評価においては、わずかに干渉色が見られるが、許容できる程度である。30cm四方のいずれの評価では干渉色が見られるため、大画面のディスプレイ用途には適さない。
D:10cm四方、30cm四方のいずれかの評価において、干渉色がはっきり見られるため、ディスプレイ用途には適さない。
S〜Cが合格レベルである。
【0076】
(9)取り扱い性評価(i)
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備し、下記条件で、3インチ、350mm長コアに巻返しを行い、搬送速度、張力を変増加しながら下記の基準で評価を行った。
A:速度10m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかった。
【0077】
B:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速度10m/分、搬送張力70N/mに変更すると破れが発生した。
C:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返すと破れが発生した。
(10)取り扱い性評価(ii)
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備した。フィルムをコアから1m両手で繰り出した後に、幅方向にフィルムを張った状態でフィルムをつかんでいる箇所を90°捻った。その後、フィルムをつかんでいる箇所を元の位置に戻し、今度は逆方向に90°捻った。これを1セットとして、計10セットの捻り評価を行った。その後、1mの長さを繰り出したフィルムの端部を目視で確認し、以下の基準で評価を行った。
A:フィルムの端部に白化、割れは見られない。
B:フィルムの端部に割れは見られないものの、わずかに白化が見られる。
C:フィルムの端部に割れが見られた。
D:フィルムが破断した。
【0078】
(11)鉛筆硬度
(8)で得られたテストピースについて、JIS K−5600−5−4−1999に記載の引っかき硬度(鉛筆法)による評価を行い、H以上を合格とした。(12)スチールウール耐擦傷性試験(耐スチールウール性)
(8)で得られたテストピースについて、ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなうことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.0000)
試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に巻いて、バンド固定。
移動距離(片道):13cm、
こすり速度:13cm/秒、
荷重:500g/cm
先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、こすり部分の傷を反射光で目視観察し、以下の基準で評価した。評価は上記テストを3回繰り返し、平均して5段階で評価した。
A :全く傷が見えない。
B :僅かに傷が見える。
C :一目見ただけで分かる傷がある。 (ポリエステルの製造)
製膜に供したポリエステル樹脂は以下のように準備した。
【0079】
(ポリエステルA)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65)。
【0080】
(ポリエステルB)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が88モル%、イソフタル酸成分が12モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0081】
(ポリエステルC)
グリコール成分としてエチレングリコール成分が67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールが33モル%である共重合ポリエステル樹脂(イーストマン・ケミカル社製 GN001)を、1,4−シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂として使用した(固有粘度0.75)。
【0082】
(ポリエステルD)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が83モル%、イソフタル酸成分が17モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0083】
(ポリエステルE)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が82モル%、イソフタル酸成分が18モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0084】
(ポリエステルF)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が80モル%、イソフタル酸成分が20モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0085】
(ポリエステルG)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸成分が75モル%、イソフタル酸成分が25モル%、グリコール成分としてエチレングリコール成分が100モル%であるイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.7)。
【0086】
(粒子マスター1)
ポリエステルA中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.65)。
【0087】
(粒子マスター2)
ポリエステルB中に数平均粒子径2.2μmの凝集シリカ粒子を粒子濃度2質量%で含有したポリエチレンテレフタレート粒子マスター(固有粘度0.7)。
【0088】
(ハードコート層形成用塗料組成物)
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度40質量%のハードコート層形成用塗料組成物を得た。
トルエン 30質量部
多官能ウレタンアクリレート 25質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 KRM8655)
ペンタエリスリトールトリアクリレート混合物 25質量部
(日本化薬株式会社製 PET30)
多官能シリコーンアクリレート 1質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 EBECRYL1360)
光重合開始剤 3質量部
(チバスペシャリティーケミカルズ社製 イルガキュア184)
(防眩層形成用塗料組成物)
下記材料を混合し、メチルエチルケトンを用いて希釈し固形分濃度40質量%の防眩層形成用塗料組成物を得た。
トルエン 30質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50質量部
(日本化薬株式会社製 PET30)
シリカ分散物(数平均粒径1μm) 12質量部
多官能シリコーンアクリレート 1質量部
(ダイセルオルネクス株式会社製 EBECRYL1360)
光重合開始剤 3質量部
(チバスペシャリティーケミカルズ社製 イルガキュア184)
(実施例1)
組成を表の通りとして、原料をそれぞれ酸素濃度を0.2体積%とした別々のベント同方向二軸押出機に供給し、A層押出機シリンダー温度を280℃、B層押出機シリンダー温度を270℃で溶融し、フィードブロック内でA層/B層/A層の3層構成になるよう合流させ、合流後の短管温度を275℃、口金温度を280℃で、Tダイより25℃に温度制御した冷却ドラム上にシート状に吐出した。その際、直径0.1mmのワイヤー状電極を使用して静電印加し、冷却ドラムに密着させ未延伸シートを得た。次いで、長手方向への予熱温度85℃で1.5秒間予熱を行い、延伸温度115℃で長手方向に3.3倍延伸し、すぐに40℃に温度制御した金属ロールで冷却化した。次いでテンター式横延伸機にて予熱温度85℃で1.5秒予熱を行い、延伸前半温度115℃、延伸中盤温度135℃、延伸後半温度145℃で幅方向に3.3倍延伸し、そのままテンター内にて、1段目熱処理温度を180℃、2段目熱処理温度を220℃として熱処理を行い、2段目熱処理条件下で、幅方向に5%のリラックスを掛けながら熱処理を行い、フィルム厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0089】
(実施例2)
組成を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0090】
(実施例3)
B層押出機シリンダー温度を260℃とし、組成を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0091】
(実施例4)
組成を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0092】
(実施例5)
組成を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0093】
(実施例6)
組成を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
(実施例7)
熱処理温度を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0095】
(実施例8)
熱処理温度を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
(実施例9)
積層比を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0097】
(実施例10)
積層比を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0098】
(実施例11)
押出機Aのみの単膜構成とした以外は、実施例3と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0099】
(実施例12)
厚みを40μmとした以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0100】
(実施例13)
厚みを20μmとした以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0101】
(実施例14)
延伸倍率を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0102】
(実施例15)
延伸倍率を表の通りに変更した以外は、実施例3と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0103】
(比較例1)
組成を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0104】
(比較例2)
組成、延伸倍率を表の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして厚み30μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0105】
(比較例3)
延伸倍率を表の通りに変更した以外は、実施例6と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
【0106】
(実施例5−2)
実施例5で得られた二軸配向ポリエステルフィルムに、前述のハードコート層形成用塗布液を、乾燥後の厚みが5μmになるように流量を制御してスロットダイコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、ハードコート層が積層された光学用ポリエステルフィルムを得た。
【0107】
(実施例5−3)
実施例5で得られた二軸配向ポリエステルフィルム上に、前述の防眩層形成用塗布液をスロットダイコーターを用いて塗布し、100℃で1分間乾燥し、溶剤を除去した。次いで、防眩層を塗布したフィルムに高圧水銀灯を用いて300mJ/cmの紫外線を照射し、厚み5μmのハードコート層が積層された光学用ポリエステルフィルムを得た。
(実施例5−4、比較例1−2、比較例3−2)
前述の実施例5、比較例1の二軸配向ポリエステルフィルム上に、透明導電層としてITO膜を150℃雰囲気中でスパッタリング法にて30nmの厚みで形成し、透明導電性フィルムを作製した。その後、(8)視認性テストと同様の評価基準にて視認性を確認したところ、実施例5−4の透明導電性フィルムはA評価であったのに対し、比較例1−2の透明導電性フィルムはD評価、比較例3−2はA評価となった。
続いて、作製した透明導電性フィルムを、(10)取り扱い性評価(ii)と同様にして取り扱い性を確認したところ、実施例5−4の透明導電性フィルムはA評価であったのに対し、比較例1−2の透明導電性フィルムはA評価、比較例3−2の透明導電性フィルムはD評価であった。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明は、光学用途(偏光子保護、透明導電フィルムなど)に特に適して用いられるポリエステルフィルムに関するものであり、液晶ディスプレイなどの表示装置に搭載した場合に、斜め方向から見た際の干渉色を抑制でき、かつ偏光板、透明導電性フィルム製造時の取り扱いに優れることから、PVA中にヨウ素を含有させて配向させて作製されたPVAシート(偏光子)と貼り合わされて偏光板として、あるいは、透明導電層を積層した透明導電性フィルム、およびそれを用いたタッチパネル部材として好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0113】
1 光束照射装置
2 光束入射方向
3 受光機
図1