(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
なお、本明細書では運転席を設ける作業車両の前進方向を前側、後退方向を後側といい、前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左側、右側ということにする。
【0016】
図1は、本実施例のトラクタの左側面図であり、
図2は
図1のトラクタの平面図であり、
図3は
図1の作業車両の作業機を装着していない場合の背面図である。
トラクタは、機体1の前後部に前輪2、2と後輪3、3を備え、機体1の前部に搭載したエンジンEの回転動力をミッションケース4内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2、2と後輪3、3に伝えるように構成している。
【0017】
機体1の中央に配置されるハンドルポスト5にはステアリングハンドル6が支持され、その後方には運転席7が設けられている。ステアリングハンドル6の下方には、機体1の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー8が設けられている。また、ハンドルポスト5を挟んで前後進レバー8の反対側のステップフロア12のコーナー部には、クラッチを調節するクラッチペダル9が設けられ、ステップフロア12の右コーナー部には左右の後輪3、3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル10L、10Rが設けられている。
【0018】
また、主変速レバー14は運転席7の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー16はその後方にあり、さらに運転席7の右側にPTO変速レバー17を設けている。さらにその右側には作業機22(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー18などが配置されている。また安全フレーム19が運転席7の後に立設されている。
【0019】
図4(A)は本発明の運転席の構造を示す斜視図であり、
図4(B)は車両の右側面から見た側面図であり、
図4(C)は運転席が正常な位置にある状態と、運転席を前方支持部を中心に上下方向に回動した状態の側面図である。
【0020】
図4(B)と
図4(C)に示すように、運転席7は油圧機器23の上方に配置され、該運転席7の前部を中心に上下方向に回転自在に軸支する運転席支持部25と、運転席7の後部を載置する載置面26aを有する運転席受け部26をそれぞれ機体に設けている。
【0021】
そして
図5の平面図に示すように運転席受け部26は運転席7の後部を載置する載置面26aと該載置面26aを油圧機器23上に支持する脚部26bを備え、載置面26aを外した位置に切欠部26cが形成されており、該切欠部26cの下方には油圧機器23の調整具23aが位置している。
【0022】
また、
図4(A)に示すように、運転席7の前部下方には運転席支持部25に連結させるための連結部材27を運転席7と一体的に設け、該連結部材27は運転席7の横幅に取り付けられ、該運転席7とほぼ同じ長さの板材からなり、連結部材27の両端部を90度折り曲げた折曲片27a、27aを形成し、それぞれの折曲片27aに複数の孔27bを設けている。該複数の孔27bは走行車両の機体1の前後方向に、例えば3か所設けられており、左右一対の折曲片27a、27aのそれぞれの孔27b、27bに挿入できる長さの回転軸用のロッド28を差し込み、ピン28aで固定することで運転席7を機体に支持させることができる。その際に、前後3列のいずれか一対の孔27bを用いて運転席
7を機体1に支持させることで運転席7の着座位置を調整することができるので、例えば運転者の体格に応じて、又は異なる作業車両の機体サイズに応じて適切な位置に運転席7を移動調整でき、作業車両の操縦性が従来より良くなる。
【0023】
また、運転席7の後方下部には運転席受け部26の載置面26a上に載置される筒状の緩衝材31を取り付けている。該運転席受け部26の載置面26a上に載置される筒状の緩衝材31の下端部は前記載置面26a上に載置されるだけで、載置面26aに固定されないので、載置位置のずれを吸収できる。
【0024】
上記構成からなる運転席7の支持構造により、折曲片27aの孔27bに支持される回転軸用のロッド28を中心として運転席7を前後方向に回転させることができるので、油圧機器23の調整具23aを操作したい場合には運転席7を
図4(C)の点線で示すように前方向に回転させることで容易に行うことができる。
【0025】
例えば、油圧機器23が作業車両の後方に連結した作業機22の昇降用の油圧シリンダ(図示せず)への送油を行う装置である場合に、該調整具23aを調整して油圧シリンダへの送油速度を変更することを容易に行うことができる。
【0026】
また、
図5に作業車両の運転席支持部の平面図に示すように、前記調整具23aが運転席7の下方にあるために、調整具23aを操作する場合に運転席7をロッド28を中心として前方向に回転させる必要があるので、調整具23aを操作する場合には運転席7を回転させて、例えば運転席7の裏面に調整具23aの操作方法などを記載したメモを貼り付けておくことで、確実に、間違いなく調整具23aを操作することができる。
【0027】
また、複数の高さの緩衝材31を用意しておけば、適宜の高さの緩衝材31を用いて運転席7の回動軸用ロッド28の高さ位置を運転席受け部26の載置面26aより高い位置に設けることで、運転席7が後方に向かって沈み込む構成となり、運転者の座り心地が従来以上に良くなり、長時間の作業車両の運転を容易に行うことができる。
【0028】
図6の斜視図に示すように、運転席7の両側にあるフェンダ30の内側部分には後輪3からの泥などのはね除けのために、従来金属製のカバーを取り付けていた。しかしこの金属製カバー部分は後輪3からの泥はね等のために、さびなどで破損し易いので、取り替えコストが嵩む欠点があった。そこで、該カバー部分を樹脂製のものに代えることで、コストを低減することが可能になった。
【0029】
樹脂製カバー32は、金属製のフェンダ30との接合部分に取り付け孔32aを多数設け、これに対応する金属製のフェンダ30にも取り付け孔30aを設けることで、容易に取り付け、取り外しが行える。また、樹脂製カバー32は金属製のフェンダ30の内側に取り付けるので、外からトランスミッションなどが見えないので、外観上違和感無く用いることができる。
【0030】
図7には安全(ロプス)フレーム19の斜視図(
図7(A))と機体背面から見たロプスフレーム19(
図7(B))を示す。小型作業車両では
図7に示すように運転席7の後部にロプスフレーム19を設けるが、該ロプスフレーム19の下部には橋渡しプレート34が設けられている。この橋渡しプレート34を用いてシートベルト35を取り付けることができる。
【0031】
シートベルト35の一端を橋渡しプレート34に固定し、他端を橋渡しプレート34に着脱自在に仮り止めして取り付ける。
図7(B)には一対のシートベルト35を橋渡しプレート34に取り付けた場合を図示する。操縦者がシートベルト35を装着する場合には仮り止めしたシートベルト35の一端を橋渡しプレート34から外して、より遠い位置にある仮り止め位置の橋渡しプレート34に取り付ける。
【0032】
このようにシートベルト35は開放した空間を利用して着脱することができるので、その装着、脱着が容易に行える利点がある。
図1に示す走行車体1の運転席7の後部に配置した安全フレーム19は、その回転基部19aを中心に後方に回動自在に立設し、また走行車体1の後部に反射鏡36を立設し、安全フレーム19を最も低い位置に倒しても、反射鏡36と安全フレーム19とが干渉しないようにストッパ(留め具)Sを安全フレーム19の回転基部19aに設けた。
【0033】
図8(A)には安全フレーム19の回転基部19aの拡大斜視図、
図8(B)には安全フレーム19の回転基部19aと該回転基部19aを支持する走行車体1の両フェンダ30の内側に有る作業機支持用の支持フレーム38の側面図を示す。また、
図9(A)には立設された状態で留め具Sにより安全フレーム19が支持された一部縦断面図を示し、
図9(B)には、安全フレーム19が回動可能な状態の一部縦断面図を示す。
【0034】
図8(B)に示すように、安全フレーム19の基部は両フェンダ30の内側の走行車体1に設けた作業機支持用の支持フレーム38の頂部に設けた断面コ字状の安全フレーム支持板39に取り付けられている。安全フレーム19の基部は安全フレーム支持板39に挟み込まれて、安全フレーム19と安全フレーム支持板39は一体的な構成である。
【0035】
また、安全フレーム支持板39のコの字状部分の両側面の外側に接するように安全フレーム19が立設位置から後方への傾斜位置に回動する際に必要なストッパ(留め具)Sを配置している。該ストッパSは走行車体1に一体的に取り付けられ、安全フレーム支持板39のコの字状部分の側壁部分の外側には一対の側板40、41が支持フレーム38の頂部に取り付けられている。また、側板40には3つの孔40a、40b、40cが設けられ、側板41には1つの孔41aが設けられている。
【0036】
側板40の孔40aと側板41の孔41a及び安全フレーム支持板39の孔39aにはロッド42aが差し込み可能になっている。ロッド42aを側板40の孔40aと安全フレーム支持板39の孔39a及び側面41の孔41aに順次挿入する構成である。このときロッド42aには、まず座金42bを挿入して、次いで孔40a、孔39a、孔39a及び41aに順次挿入し、ロッド42aの先端にボルト42cを取り付ける。こうしてロッド42aを中心として安全フレーム19と安全フレーム支持板39は回動自在となる。
【0037】
また、安全フレーム支持板39の孔39aより前側にある2つの孔39bと側板40の孔40aより前側にある孔40bにJ字状のストッパーピン43の長手部分を差し込む。このとき、2つの孔39bの間にあるストッパーピン43の外周にはスプリング43cを取り付けている。
【0038】
ストッパーピン43の長手部分の表面に巻き付けられたスプリング43cの両端は一対の座金43b、43bに支持され、さらに一方の座金43bはストッパーピン43の中央部に止めピン43dで固定支持されており、他方の座金43bは安全フレーム支持板39の側面の内側面で支持されている。一対の座金43b,43bの外側にはJ字状のストッパーピン43の付勢力に対抗するようにそれぞれ止めピン43d,43dを差し込んでいるので、スプリング43cの伸張力によりストッパーピン43は常に側板40側方向に付勢される。
【0039】
J字状のストッパーピン43の長い部分は安全フレーム支持板39の両側面の一対の孔39bと側板40の孔40bを貫通し、安全フレーム19は立設された状態で支持される。
【0040】
また、J字状のストッパーピン43の短い部分の先端にはゴムなどの弾性体キャップ43eを被せておくことで、側板41とストッパーピン43の損傷防止と滑り止め効果を図ることができる。
【0041】
従って安全フレーム19を直立させて取り付けた場合には
図8(A)の矢印ロで示す方向から見た矢視図である
図9(A)に示すように安全フレーム支持板39の底面部に取り付けたボルト46で調整したり、ゴムなどの弾性体47を安全フレーム支持板39の下面に差し込んでおくことでガタの発生を防ぐことができる。
【0042】
また安全フレーム19を回動させる場合には、
図9(B)に示すようにストッパーピン43を側板40の孔40bから引き抜いた状態で回動させる。ロッド42aを回動軸としてストッパーピン43は安全フレーム支持板39と共に回動し、ストッパーピン43の長い部分の先端が、やがて側板40の孔40cに到達すると、スプリング43cによって孔40cを貫通する。すると、安全フレーム19は最大限傾けた位置で支持される。
【0043】
図10の走行車両の側面図に示すように、前記ストッパ(留め具)Sが安全フレーム19の傾斜を止めるまで安全フレーム19を最大限傾けた場合に、作業機22が最上げ位置にあっても、安全フレーム19と作業機22が干渉しないように、ストッパSにより安全フレーム19の傾斜位置を調整し、さらに作業機22の最上げ位置の調整をする。こうして安全フレーム19が最大傾斜位置に傾いても、作業機22との衝突で損傷するおそれはない。
【0044】
また、走行車体1の中央にステアリングハンドル6を配置しているが、安全フレーム19を最大限傾けた場合において、安全フレーム19の高さがステアリングハンドル6の高さより低くなるように調整することで、天井の低い納屋であっても車両を格納することができる。
【0045】
図10の走行車両の側面図に示すように走行車両のリヤフレーム44(
図3)に2点リンク方式用の2点ブラケット51を共着させてコストダウンを図っている。
また、
図3から分かるように、小型トラクタの場合に全てをコンパクトにするために、後輪3のトレッドを通常のトラクタより小さくし、さらにリヤフレーム44の下半分が後輪3をかわすようにリヤフレーム44をアーチ形状に構成し、リヤフレーム44の上半分同士の間隔でフェンダ30の取り付け幅を確保できるようにした。
【0046】
走行車体1の後部の左右にフェンダ30を配置しているが、
図11のフェンダ部分の平面図と
図12のフェンダにあるレバーガイド部分の拡大平面図に示すように、作業機22の昇降位置を任意に操作できるポジションレバー18を左右にフェンダ30のいずれか一方に設けられたレバーガイド48から外方に突出させ、また走行車体1の後部に反射鏡36を配置し、作業機22の上端の高さが、反射鏡36の下端の高さよりも上方にならないポジションレバー18の操作位置をレバーガイド48の近傍に表示している。
【0047】
作業機22を装着した状態で作業車両が路上を走行する際には、反射鏡36を後方から視認できないと危険であるが、路上走行時に適したポジションレバー18の操作位置をレバーガイド48の近傍に表示することで、運転者が容易に適切に作業機の上昇位置に操作することができる。
【0048】
また、
図1に示すように反射鏡36の上端の高さをフェンダ30の上面よりも高い位置に配置することで、路上走行時に作業機22を少しでも高い位置に上昇させることができる。
【0049】
本実施例の作業車両は
図13〜
図19の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、左方、右方、上方、下方、または、前側、後側、左側、右側、上側、下側とする。
【0050】
図13〜
図19において、油圧機器23には、油圧を制御して、作業機22を昇降するための昇降アーム50と連動して動く第1回動軸101が設けられている。昇降アーム50と第1回動軸101は油圧機器23内部でリンク機構により接続されており、常に連動して回動する構成になっている。
第1回動軸101には、第1のアーム102の一端が支持されている。第1のアーム102は、第1回動軸101の径方向に延びた後、右方(−Y方向)に延びるL字状に形成されている。第1のアーム102の右部102aには、昇降レバー18の下端部18aが接触可能に構成されている。昇降レバー18は、該レバー18の回転中心18bを中心として回転可能に支持されている。なお、第1のアーム102の右部102aと、フレームFLとの間は、弾性部材の一例としての引張バネSP0(
図16)が設けられている。引張バネSP0は、第1のアーム102を上方(
図16の矢印A方向)に引っ張る力を作用させる。
【0051】
前記第1回動軸101の外端には、第1回動体の一例としての下方に伸びる第1のプレート106が支持されている。第1のプレート106は、アーム102と一体的に回転可能に支持されている。
第1のプレート106の下端には、第1リンクアームの一例としての前下方に延びる第2のプレート107の一端が連結されている。第1のプレート106と第2のプレート107とは、回転自由な状態で連結されている。
第2のプレート107の前端には、第2回動体の一例としての第2のアーム108の下端が支持されている。第2のプレート107と第2のアーム108とは回転自由な状態で連結されている。第2のアーム108は回転軸108aを中心として、回転可能に支持されている。
【0052】
第2のアーム108の上端には、第2リンクアームの一例としてのブラケット109の後端が支持されている。ブラケット109は、前方に延びる板状体からなり、途中で左方に段差状に折り曲げられた形状に形成されている。
ブラケット109の前端には、第三回動体の一例としての第3のアーム111の上端が回転可能に支持されている。第3のアーム111は、下方に延びる板状体である。
第3のアーム111の下端は、左右方向に延びる軸112に回転可能に支持されている。
なお、軸112は、ダンパー固定ブラケット113に支持されている。なお、ダンパー固定ブラケット113は、ミッションケース4に固定されている。
【0053】
図20は実施例1のオン・オフ部材の要部説明図である。
図18に示すように、軸112には、第3アーム111の右方(−Y方向)且つ同軸に、後述するオン・オフ部材116が支持されている。オン・オフ部材116は、円筒状の筒体117を有する。筒体117は、軸112に回転可能に支持されている。
図20において、筒体117には、左方(+Y方向)に突出する部分円筒状の爪部118(
図18参照)が形成されている。筒体117には、第3のプレート119が支持されている。第3のプレート119は、斜め前下方に延びる下部119aと、下部119aの上端から軸112に沿って右方(−Y方向)に延びる上部119bと、上部119bの右端から上方に折り曲げられた形状のバネ取付部119cとを有する。バネ取付部119cには、前後一対のバネ装着孔119d,119eが形成されている。
前記筒体117、筒体爪部118、第3のプレート119により、実施例1のオン・オフ部材116が構成されている。
前記第3のアーム111およびオン・オフ部材116により、実施例1の第3回動体が構成されている。
【0054】
第3のプレート119の下部119aの下端部には、レバー連結部材121が支持されている。レバー連結部材121は、板状の部材がL字状に折り曲げられた形状に形成されており、前端部(+X方向端部)には、オン・オフレバー122の下端が支持されている。オン・オフレバー122は、上方に延びる棒状に形成されている。オン・オフレバー122は、座席7の下方に配置されており、作業者が座席7を回動させた場合に操作可能に構成されている。オン・オフレバー122を左右方向(Y軸方向)に移動させることで、レバー連結部材121およびオン・オフ部材116が、軸112に沿って軸方向に移動可能に構成されている。したがって、オン・オフ部材116が左方(+Y方向)に移動した場合に、筒体爪部118が第3のアーム111に接触可能となり、オン・オフ部材116が右方(軸方向外側)に移動した場合に、筒体爪部118が第3のアーム111から軸方向に離間する。
【0055】
図15〜
図17に示すように前記軸112には、オン・オフ部材116の同軸且右方(軸方向外側)に、ダンパアームの一例としての第4のアーム123が支持されている。第4のアーム123は、軸112に回転可能に支持される筒部126を有する。筒部126には、部分円弧状の切り欠き126aが形成されている。切り欠き126aの内側には、軸112に支持されたストッパ112aが位置する。したがって、切り欠き126aは、予め設定された第4のアーム123の可動範囲に応じた角度分切り欠かれて形成されている。
【0056】
図16に示すように、筒部126には、斜め前上方(+X、+Z方向)に延びるアーム本体127が支持されている。アーム本体127の前部には、前後方向に延びる長孔127aが形成されている。また、アーム本体127の前端(+X方向)には、バネ装着孔127bが形成されている。
オン・オフ部材116(
図18参照)の前側(+X側)のバネ装着孔119dと、アーム本体127のバネ装着孔127bとの間には、弾性部材の一例としての第1のバネSP2が装着されている。また、オン・オフ部材116の後側のバネ装着孔119eと、フレームプレート128との間には、弾性部材の一例としての第2のバネSP1が装着されている。2つのバネSP1,SP2の弾性力の釣り合いにより、オン・オフ部材116の軸112に対する回転位置が、オン・オフ部材116にトルクがかからなくなった時に予め設定された位置に保持されると共に、作業機22を下げた状態から上昇させた時に第4のアーム123が元の位置に戻るように構成されている。
【0057】
また、
図16、
図17に示すようにアーム本体127の後部(−X側部分)上面には、ボルト支持プレート129が支持されている。ボルト支持プレート129には、当接部の一例としての調整ボルト131が支持されている。調整ボルト131は、締めたり緩めたりすることで、調整ボルト131の頂部の高さを調整することが可能である。なお、調整ボルト131は、第3プレート119の上部119bの下面に接触可能な位置に配置されている。
前記筒部126、アーム本体127、ボルト支持プレート129、調整ボルト131により、実施例1の第4のアーム123(
図17参照)が構成されている。
【0058】
第4のアーム123の前上方には、調整ブラケット132が配置されている。調整ブラケット132は、回転中心132aを中心として回転可能に支持されている。調整ブラケット132は、上方に延びる板状の調整レバー部133と、下方に延びる板状の連結部134とを有する。調整レバー部133は、オン・オフレバー122と同様に、作業者が手動で操作することが可能に構成されている。調整レバー部133を操作することで、調整ブラケット132の回転位置を調整可能に構成されている。なお、調整ブラケット132は、摩擦により、調整された回転位置に保持されるように構成されている。これにより、第4のアーム123において、回動支点からのダンパ137に対する作用点までの距離を変更することができるため、ダンパ作用時の第4のアーム123の回転速度を変更することができる。
【0059】
連結部134には、上下方向に延びる長孔134aが形成されている。調整ブラケット132の長孔134aには、長孔134aと、アーム本体127の長孔127aとを貫通するピン136が支持されている。ピン136の左端(内端)の下方には、緩和部材の一例としてのダンパ137が配置されている。ダンパ137は、ダンパ固定ブラケット113に固定支持されている。ダンパ137のシリンダロッド137aの上端は、ピン136に連結されている。
前記符号106〜137を付した各部材により、実施例1の機械式デセラ機構が構成されている。
【0060】
前記構成の機械式デセラ機構では、昇降レバー18の上端を作業者が操作して、後方に引くと油圧機器23内部のバルブが操作されて昇降シリンダ(図示せず)が作動し、昇降アーム50が回動すると、昇降アーム50に連動して第1回動軸101が、
図13の矢印Ya方向に回転する。このとき、機械式デセラ機構では、第1のプレート106〜オン・オフ部材116が矢印Ya方向に回転または移動する。昇降レバー18は下端部18aが第1のアーム102の右部102aと接触するため、昇降レバー18の位置は昇降アーム50の位置と連動する構成となっている。
昇降レバー18の上端が前方に押されると昇降アーム50が矢印Yaとは反対方向(−Ya方向、
図13における時計回り方向)に回転し、作業機22が下降を開始する。これに伴って、第1回動軸101が回転する。このとき、第1のアーム102が−Ya方向に回転すると、第1のプレート106がアーム102と一体的に回転し、第2のプレート107が左上方に移動し、第2のアーム108が
図13における時計回り方向に回転する。そして、ブラケット109が前方に移動し、第3のアーム111が
図13における時計回り方向に回転する。第3のアーム111が回転すると、オン・オフ部材116の爪部118に第3のアーム111が接触して、オン・オフ部材116が、
図13における時計回り方向に回転する。オン・オフ部材116が所定の角度以上に回転すると、第3のプレート119の上部119bが調整ボルト131に当接し、下方に押して第4のアーム123が
図13における時計回り方向に回転する。第4のアーム123が回転すると、ピン136が長孔127a,134aの交点に沿って下方に移動する。ピン136が下方に移動すると、シリンダロッド137aが下方に押される。
【0061】
したがって、作業機22を下降させるように昇降レバー18が操作された場合、第3のプレート119の上部119bが調整ボルト131に当接する前の状態では、各部材106〜123が、円滑に移動し、作業機22が速やかに下降する。作業機22が下降して、第3のプレート119の上部119bが調整ボルト131に当接すると、ダンパ137が効いて、各部材106〜123の回転速度や移動速度が抑えられる。したがって、作業機22の下降速度が低下する。したがって、作業機22が圃場面に対して高い位置にある状態からは速やかに下降し始め、作業機22が圃場面に接触する前に下降速度が遅くなり、作業機22の接地速度が遅くなる(デセラ機能)。作業機22が圃場面に対して速やかに下降すると、圃場を耕す回転する刃を有する場合には、刃の回転力が車体1を前方に進行させる力となり、車体1が急加速する現象(ダッシング)が発生する恐れがあるが、実施例では、デセラ機能により、ダッシングが低減される。
【0062】
また、従来の構成では、デセラ機能は、油圧シリンダを電気的に制御して、油圧シリンダに対する油路の径を狭くして、作業機22の接地速度を遅くしていた。しかしながら、この従来技術では、油路の切替のために、作業機22の位置を感知するセンサや切り替えバルブが必要となり、高価である問題があった。
これに対して、本実施例では、機械的な構成でデセラ機能を実現している。したがって、従来の構成に比べて、低コストな構成で、デセラ機能を実現可能である。また、既存のデセラ機能を有しない走行車両に、機械式デセラ機構を取り付けることも可能であり、デセラ機能を追加することも可能である。
【0063】
また、本実施例では、オン・オフレバー122が、右方に操作されると、爪部118が第3のアーム111に対して軸方向に離間する。この状態では、作業機22を下降させるように昇降レバー18が操作された場合に、第3のアーム111が回転しても、オン・オフ部材116に回転が伝達されない。したがって、オン・オフ部材116以降の第4のアーム123やダンパ137が作動せず、デセラ機能が機能しない。よって、オン・オフレバー122を操作することで、作業者が、デセラ機能のオン、オフを設定することが可能である。
【0064】
さらに、本実施例では、調整ブラケット132を、
図13における時計回り方向に回転させると、長孔127a,134aの交点が後方に移動する。よって、第4のアーム123において、回動支点からのダンパ137に対する作用点までの距離が短くなるため、ダンパ作用時のダンパ137を下方に押す力が強くなり、ダンパ作用時の下降速度が速くなる。一方、調整ブラケット132を、
図13における反時計回り方向に回転させると、長孔127a,134aの交点が前方に移動する。よって、第4のアーム123において、回動支点からのダンパ137に対する作用点までの距離が長くなるため、ダンパ作用時のダンパ137を下方に押す力が弱くなり、ダンパ作用時の下降速度が遅くなる。したがって、調整ブラケット132を調整することで、デセラ機能の効きを調整することが可能である。
【0065】
さらに、本実施例では、調整ボルト131を上下に調整することで、第3のプレート119が当接する位置を変更することができる。調整ボルト131を下げると、第3のプレート119が当接する位置が下がるため、デセラ機能の効き始めが遅くなる。一方、調整ボルト131を上げると、第3のプレート119が当接する位置が上がるため、デセラ機能の効き始めが早くなる。
【0066】
また、本実施例では、軸112にはストッパ112aが支持されており、第4のアーム123の回転が予め設定された範囲を超えるとストッパ112aで停止される。よって、第4のアーム123が過剰に回転して、ダンパ137に過剰な負荷がかかることが防止される。したがって、ダンパ137が破損、故障することが防止され、ダンパ137が保護される。