(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開状態において、複数の前記メインバルブ制御通路のうち前記一部以外の前記メインバルブ制御通路は前記メインバルブ室と連通し、前記一部の前記メインバルブ制御通路と前記メインバルブ室との間は、弾性体で封止されることを特徴とする請求項4に記載の打込機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1回の打ち込み動作の終了時には、メインバルブを開状態から閉状態とする動作(ピストン上室への圧縮空気の供給を停止させる動作)が行われた後に、ピストンは上死点側に移動し、その後で次回の打ち込み動作を行うことができる。ここで、特に連続打ち動作の場合において、メインバルブを開状態から閉状態とする動作のタイミングが速すぎた場合には、ピストンが下死点側に移動する前、すなわち、1回の打ち込み動作が完全に終了する前に、ピストン上室への圧縮空気導入が停止する場合があり、この場合には、打ち込み動作が適正に行われない場合があった。
【0008】
また、ねじ打機においては、打ち込み動作の直後にエアモータを駆動してねじを回転させる締め込み動作が行われる。これに対して、上記のようにピストンが下死点側に移動する前にメインバルブが閉状態とされた場合には、締め込み動作の開始タイミングが不適正となり、締め込み動作が適正に行われないという問題があった。
【0009】
一方で、特に短い時間間隔で連続打ち動作を行わせるためには、打ち込み動作の開始(メインバルブを閉状態から開状態とする動作)は、迅速に行うことが要求された。このため、メインバルブの開閉動作において、メインバルブを閉状態から開状態とする動作の速度と、メインバルブを開状態から閉状態とする動作の速度とを同等とせず、前者のみを高くすることが要求された。これに対して、特許文献1に記載の技術においては、メインバルブを閉状態から開状態とする動作の速度、メインバルブを開状態から閉状態とする動作の速度は、共に同等に速くなるため、短い間隔で打ち込み動作を行った場合には、打ち込み動作が適正に行われない場合があった。
【0010】
すなわち、圧縮空気で駆動される打込機において、短い間隔で打ち込み動作を繰り返し行う際に、打ち込み動作を安定して適正に行わせることは困難であった。
【0011】
本発明は、かかる問題点を鑑みてなされたものであり、上記の問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の打込機は、ハウジング内に設けられ、圧縮空気が内部に溜められた蓄圧室と、前記ハウジング内において上下方向に移動可能に設けられたピストンと、前記ハウジング内において、前記ピストンによって画成されて前記ピストンの上側に形成された空間であるピストン上室と、前記蓄圧室から前記ピストン上室へ圧縮空気を供給させる開状態と、前記蓄圧室から前記ピストン上室への圧縮空気の流れを遮断する閉状態とが設定され、前記開状態、前記閉状態の切替が、隣接して設けられたメインバルブ室内の空気の圧力に応じて制御されるメインバルブと、前記蓄圧室から前記メインバルブ室に圧縮空気を流入させる動作と、前記メインバルブ室中の圧縮空気を流出させる動作とを切り替えて行うトリガバルブと、を具備し、前記ピストン上室に圧縮空気が導入されることによる前記ピストンの下側への移動によって止具部材の打ち込み動作を行う打込機であって、
前記メインバルブ室における圧縮空気の流入及び流出の経路となるメインバルブ制御通路が複数設けられ、前記メインバルブを前記閉状態から前記開状態とする際に、複数の前記メインバルブ制御通路の全てを介して前記メインバルブ室に対する圧縮空気の流出又は流入が行われ、前記メインバルブを前記開状態から前記閉状態とする際に、複数の前記メインバルブ制御通路のうちの一部の前記メインバルブ制御通路を介した前記メインバルブ室に対する圧縮空気の流入又は流出が抑制される構成とされたことを特徴とする。
本発明の打込機において、前記一部の前記メインバルブ制御通路は、前記メインバルブが前記開状態とされた際に前記メインバルブによって閉塞される構成とされたことを特徴とする。
本発明の打込機は、前記ピストンを内部で摺動させ前記ピストンの上に前記ピストン上室が形成されるように設けられたシリンダが、前記蓄圧室と隣接して設けられ、前記メインバルブは、前記開状態においては前記シリンダの上部と前記メインバルブとが離間することによって前記蓄圧室から前記ピストン上室へ圧縮空気を供給し、前記閉状態においては前記シリンダの上部と前記メインバルブとが当接するように、前記シリンダの上部に設けられ、前記メインバルブ室は、前記ハウジング内において前記メインバルブの上方に形成され、前記メインバルブ室内の圧力が高い場合に前記閉状態、前記メインバルブ室の圧力が低い場合に前記開状態とされることを特徴とする。
本発明の打込機において、複数の前記メインバルブ制御通路は、前記メインバルブ室に対して上下方向における異なる箇所で接続され、前記一部の前記メインバルブ制御通路は、複数の前記メインバルブ制御通路のうち、前記メインバルブ室の下方で接続された前記メインバルブ制御通路であることを特徴とする。
本発明の打込機は、前記開状態において、複数の前記メインバルブ制御通路のうち前記一部以外の前記メインバルブ制御通路は前記メインバルブ室と連通し、前記一部の前記メインバルブ制御通路と前記メインバルブ室との間は、弾性体で封止されることを特徴とする。
本発明の打込機において、前記弾性体は前記メインバルブに装着されたOリングであることを特徴とする。
本発明の打込機は、ハウジング内に設けられ、圧縮空気が内部に溜められた蓄圧室と、前記ハウジング内において上下方向に移動可能に設けられたピストンと、前記ハウジング内において、前記ピストンによって画成されて前記ピストンの上側に形成された空間であるピストン上室と、前記蓄圧室から前記ピストン上室へ圧縮空気を供給させる開状態と、前記蓄圧室から前記ピストン上室への圧縮空気の流れを遮断する閉状態とが設定され、前記開状態、前記閉状態の切替が、隣接して設けられたメインバルブ室内の空気の圧力に応じて制御されるメインバルブと、前記蓄圧室から前記メインバルブ室に圧縮空気を流入させる動作と、前記メインバルブ室中の圧縮空気を流出させる動作とを切り替えて行うトリガバルブと、を具備し、前記ピストン上室に圧縮空気が導入されることによる前記ピストンの下側への移動によって止具部材の打ち込み動作を行う打込機であって、前記メインバルブを前記閉状態から前記開状態とする際の前記メインバルブ室に対する圧縮空気の流出又は流入の通路の流路面積が、前記メインバルブを前記開状態から前記閉状態とする際の前記メインバルブ室に対する圧縮空気の流入又は流出の通路の流路面積よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のように構成したので、短い間隔で打ち込み動作を繰り返し行う際に、打ち込み動作を安定して適正に行わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態となる打込機の構成について説明する。
図1は、打込機1の全体の構成を示す断面図である。この打込機1によって、止具部材は下側に載置された板材等(被締結部材)に打ち込まれ、
図1は、止具部材が打ち込まれる軸方向に沿った断面図を示している。ここでは、この打ち込み方向は上下方向としている。図中に示された上下方向、前後方向は、通常の作業時における作業者から見た方向に対応する。
【0016】
この打込機1においては、打ち込み方向(上下方向)を中心軸とした略円筒形状のハウジング10内に、止具部材に対して下側に向かって打込力を印加して打ち込み動作を行うための機構が設けられている。この動作の動力源として、外部から供給された圧縮空気が用いられる。また、この動作を行わせるための圧縮空気の流れを制御するバルブの動作も、この圧縮空気を利用して行われる。
【0017】
ハウジング10の後方には、後方に向かって延伸し、作業者が把持するハンドル60が固定されている。ハンドル60の後端(
図1における右端)には、圧縮空気を外部から供給するためのエアホース(図示せず)を装着するためのエアプラグ61が固定されている。エアプラグ61を介して供給された圧縮空気は、ハンドル60からハウジング10にかけて設けられた蓄圧室62に溜められ、各種の動作に使用されるためにハウジング10内の各部に流される。エアプラグ61と蓄圧室62との間の空気経路に減圧弁を設け、エアホースから供給される圧縮空気の圧力を調整することもできる。また、ハウジング10内における動作に用いられた後の圧縮空気を外部に排出することが必要となり、このための通路となる排気通路(図示せず)もハンドル60内において蓄圧室62と分離されて設けられている。排気通路を通った圧縮空気は、ハンドル60の端部に設けられた排気口から外部に排出される。
【0018】
ハウジング10においては、中心軸が上下方向とされた円筒形状の内面をもつシリンダ11が設けられ、その中に、ピストン12が上死点と下死点の間で上下方向に摺動可能に設けられる。ピストン12の下面側には、上下方向に延伸するドライバブレード13が固定され、ピストン12が下側に移動する際に、ドライバブレード13の下端によって止具部材(図示せず)が大きな衝撃力で下側に向かって打ち込まれる。
図1においては、ピストン12は上死点に位置している。一方、シリンダ11の下側には、打ち込み動作の際にピストン12を下死点側で係止し、その衝撃エネルギーを吸収するバンパ14が設けられている。
【0019】
打ち込み動作に際しては、ドライバブレード13の下端側の部分は、ハウジング10から下側に向かって突出するノーズ15の内部を移動する。一方、ノーズ15には、内部に多くの止具部材を溜めることのできるマガジン70が固定され、打ち込み動作が行われるに際しては、マガジン70から止具部材が1本ずつノーズ15の内部に装填される。止具部材がノーズ15の内部に装填された状態で上側からドライバブレード13が下側に移動することによって、止め具部材は、ノーズ15の下端の射出口(図示せず)から下側に打ち込まれる。また、ノーズ15の下端側には、ノーズ15に沿って上下方向に移動可能なプッシュレバー16が装着されている。プッシュレバー16は、バネ(図示せず)によって下側に付勢され、外力が加わらない状態では、射出口よりも下側に突出する。
【0020】
打ち込み動作は、ピストン12が上死点(
図1の状態)から圧縮空気によって下側に駆動されることによって行われる。この動作について説明する。この動作は、ハンドル60のハウジング10との連結部分付近の下側に設けられたトリガ(トリガレバー)63を作業者が上側に引き、かつプッシュレバー16が上側に移動することによって開始する。ここで、プッシュレバー16は、作業者がノーズ15の下端側を止具部材を打ち込むべき被締結部材に当接させることによって、ノーズ15に沿って上側に移動する。このため、作業者がノーズ15の下端側を被締結部材に当接させた状態でトリガ63を上側に引くことによって、打ち込み動作を行わせることができる。あるいは、作業者がトリガ63を引いた状態で、ノーズ15の下端側を被締結部材に当接させることによって、打ち込み動作を行わせることができる。後者の場合には、作業者がトリガ63を引いたままの状態で、ノーズ15の下端側を被締結部材に当接させることによって止具部材を打ち込む動作を繰り返す連続打ち動作を行わせることができる。
【0021】
この動作を行わせるために、トリガ63の上部には、上記のようなトリガ63とプッシュレバー16の動きによって動作するトリガバルブ20が設けられている。また、ハウジング10内において、シリンダ11の上部には、トリガバルブ20によってその開閉動作が制御されるメインバルブ30が設けられる。メインバルブ30が開状態(
図1においてメインバルブ30が上側に移動した状態)においては、シリンダ11の周囲の蓄圧室62からシリンダ11の上部を介して圧縮空気がシリンダ11内におけるピストン12の上側の空間であるピストン上室11Aに導入される。ピストン12の周囲にはOリング12Aが装着されているため、シリンダ11内におけるピストン12の下側の空間であるピストン下室11Bとピストン上室11Aとの間の気密性は確保されている。一方、メインバルブ30の閉状態(メインバルブ30が下側に移動した状態)においては、メインバルブ30はピストン上室11Aと蓄圧室62との間を封止する。このようなメインバルブ30の動作は、ハウジング10内においてメインバルブ30の上側に設けられたメインバルブ室10A中の圧力、すなわち、メインバルブ室10Aに圧縮空気が導入されているか否かによって定まる。トリガバルブ20がオンの状態とされた場合にはメインバルブ室10Aは大気と連通し、その内部の圧縮空気は排出される。一方、トリガバルブ20がオフの状態では、メインバルブ室10Aは蓄圧室62と連通し、メインバルブ室10Aに圧縮空気が供給される。このような圧縮空気の流れは、メインバルブ室10Aとトリガバルブ20とを連通させるメインバルブ制御通路21を介して行われる。後述するように、メインバルブ制御通路21は、メインバルブ室10A側で第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの2つに分岐されている。
【0022】
打ち込み動作は、トリガバルブ20がオフの状態からオンの状態となることによって開始される。打ち込み動作時にピストン12が下降するに際しては、ピストン下室11B中の空気は、シリンダ11の下側においてシリンダ11の周囲に形成された戻り空気室10Bに流れ、ピストン12が下死点に移動することによって止具部材が打ち込まれる。その後、トリガ63が下側に戻される、あるいはプッシュレバー16が下側に移動することによってトリガバルブ20がオフとされることによりメインバルブ30が閉状態とされ、ピストン上室11Aへの圧縮空気の供給が停止する。その後、戻り空気室10Bに溜められた圧縮空気がピストン下室11Bに流れ、かつピストン上室11A中の圧縮空気が排出されることによって、ピストン12が再び上死点側に移動する。その後、再度トリガバルブ20がオンとされた場合に、再び打ち込み動作が行われる。
【0023】
上記の構成は、特許文献1に記載された打込機と同様である。ただし、この打込機1は、トリガバルブ20によるメインバルブ30の開閉状態の制御に特徴を有する。以下に、この点について説明する。
【0024】
図2、3は、この打込機1におけるメインバルブ30に関わる構造を、メインバルブ30が閉状態(
図2(a)、閉状態から開状態への移行時(
図2(b))、開状態(
図3(c))、開状態から閉状態への移行時(
図3(d))において示す断面図である。
図2(a)においては、
図1におけるメインバルブ30周辺が拡大して示されている。ここで、
図1に示されるように、トリガバルブ20とメインバルブ室10Aとを連通させるメインバルブ制御通路21は、メインバルブ室10A側で、第1メインバルブ制御通路21Aと、第2メインバルブ制御通路21Bに分岐されている。
図2、3においては、分岐後の第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bが示されている。
【0025】
図2(a)に示されるように、メインバルブ30は、シリンダ11に対応した略円筒形状とされシリンダ11の上方に設けられたメインバルブ本体31を具備し、シリンダ11の周囲(
図2(a)における左右両側)には、蓄圧室62が設けられている。メインバルブ本体31の下端には、シリンダ11の上端を封止可能なように装着され、弾性変形が可能なメインバルブラバー32が装着されている。
図2(a)においては、メインバルブ30が下側に位置しメインバルブラバー32がシリンダ11の上端を封止しているため、ピストン上室11Aと蓄圧室62とは連通されない。なお、
図2(a)等においては、シリンダ11の中心軸Xに沿った断面が示されており、ピストン20、メインバルブ30は、中心軸Xの周りで対称な形状とされている。
【0026】
メインバルブ30は、
図2(a)の状態においてハウジング10の上側の一部であるメインバルブ室画成部101とメインバルブ本体31との間でメインバルブ室10Aが形成されるように、ハウジング10内に装着される。メインバルブ室10Aの容積は、メインバルブ30の上下方向における位置によって変動する。第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bは、メインバルブ室10A(メインバルブ室画成部101)における異なる高さの箇所に接続されており、第1メインバルブ制御通路21Aは、上側に位置する第1メインバルブ制御通路接続部101A、第2メインバルブ制御通路21Bは、下側に位置する第2メインバルブ制御通路接続部101Bで、メインバルブ室画成部101と接続されている。第1メインバルブ制御通路接続部101Aは、メインバルブ室10Aにおける最上部近くに設けられる。
【0027】
また、メインバルブ本体31の内周側にはOリング33Aが、その外周側にはOリング33B(上側)、33C(下側)が装着され、これらによってメインバルブ本体31とメインバルブ室画成部101との間は封止される。Oリング33A、33B、33Cは、弾性体で構成され、いずれもメインバルブ本体31を中心軸Xの周りで巻回している。このため、メインバルブ室10Aに連通した第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21B以外の部分を介してメインバルブ室10Aの圧縮空気が流れることは抑制され、メインバルブ室10A中の圧縮空気(圧力)は、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bを用いて制御される。
【0028】
また、メインバルブ室10Aにおいては、メインバルブ本体31を巻回する形態とされたバネであるメインバルブスプリング34が設けられている。メインバルブスプリング34の上端はメインバルブ室10A内における上側のメインバルブ室画成部101内面で係止され、メインバルブスプリング34の下端はメインバルブ室10A内における下側のメインバルブ本体31で係止される。このため、メインバルブ30(メインバルブ本体31)は、メインバルブスプリング34によって下側、すなわち、メインバルブ30が閉状態とされる側に付勢される。
【0029】
一方、メインバルブ室10Aに圧縮空気が導入された状態では、メインバルブ30は、メインバルブ室10A内の圧縮空気から下側に向かう圧力を受ける。また、メインバルブ30は、メインバルブラバー32を介して蓄圧室62内の圧縮空気によって上側に向かう圧力も受ける。また、前記のメインバルブスプリング34がメインバルブ30に付与する下向きの弾性力は、メインバルブ30がメインバルブラバー32を介して蓄圧室62内の圧縮空気によって受ける上向きの圧力よりも小さくなるように設定される。
【0030】
図2(a)の状態では、メインバルブ本体31における外周上側に装着されたOリング33Bは、メインバルブ室10Aに対する圧縮空気の下側の入口である第2メインバルブ制御通路接続部101Bよりも更に下側に位置する。このため、第1メインバルブ制御通路接続部101A、第2メインバルブ制御通路接続部101Bは共にメインバルブ室10Aと連通する。このため、トリガバルブ20から、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方を介してメインバルブ室10A中に圧縮空気を供給することができる。これによって、メインバルブ室10A内の高圧を維持することができる。また、メインバルブ30は、メインバルブ室10A中に圧縮空気が導入された
図2(a)の状態では、下側、すなわち、閉状態とされる側に付勢されるため、メインバルブ室10A内の圧力が維持される限り閉状態が保たれ、ピストン12は上死点から移動しない。
【0031】
これに対して、
図2(b)は、トリガバルブ20がオンとされた直後の状態を示す。この場合には、メインバルブ制御通路21(第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21B)がトリガバルブ20によって、大気と連通するように切り替えられる。このため、メインバルブ室10A内の圧縮空気は第1メインバルブ制御通路21A及び第2メインバルブ制御通路21Bを介して排出され、メインバルブ室10A内の圧力が低下する。ここで、メインバルブスプリング34の弾性力は、メインバルブ30がメインバルブラバー32を介して蓄圧室62内の圧縮空気によって受ける上向きの圧力よりも小さいために、メインバルブ30は上昇する。これにより、メインバルブラバー32とシリンダ11の上端部との間に隙間が形成され、この隙間を介して、蓄圧室62からピストン上室11Aに圧縮空気が導入され、その圧力によってピストン12が下降する。これによって、打ち込み動作が開始される。
図2(b)の状態では、メインバルブ30が上昇を開始した直後の状態が示されている。
【0032】
図3(c)は、メインバルブ30が更に上昇をして最上部に位置した状態(全開状態)を示している。この場合には、メインバルブ室10A内における上側のメインバルブ室画成部101内面にメインバルブ本体31の上端部が係止されるため、メインバルブ30はその最上部に位置する。このため、
図3(c)においては、メインバルブ30が全開とされた状態が示されており、この状態で、ピストン上室11A中には大流量で圧縮空気が導入される。
【0033】
この状態においては、メインバルブ30が
図2(b)の状態よりも更に上側に上昇しているため、上側のOリング33Bは、メインバルブ室10Aに対する圧縮空気の下側の出口である第2メインバルブ制御通路接続部101Bよりも上側に移動する。このため、この状態では下側の第2メインバルブ制御通路接続部101Bはメインバルブ本体31によって閉塞されている。打ち込み動作が終了する(ピストン12が下死点に移動する)まで、このようにメインバルブ30が全開となった状態は維持される。
【0034】
図3(d)は、ピストン12が下死点に移動した後に、再びトリガバルブ20がオフとされた直後の状態を示す。この場合には、メインバルブ室10Aに圧縮空気を供給するために、メインバルブ制御通路21に圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方に分岐されて供給されるが、この状態では、前記の通り、下側の第2メインバルブ制御通路接続部101Bは閉塞されているため、第2メインバルブ制御通路21Bは、メインバルブ室10Aに圧縮空気を供給する経路としては機能しない。このため、メインバルブ室10A内へは、第1メインバルブ制御通路21A、上側に位置する第1メインバルブ制御通路接続部101Aを介してのみ圧縮空気が供給される。
【0035】
これにより、メインバルブ室10A内の圧力が高まるためにメインバルブ30は下降し、最終的には、
図2(a)と同様にメインバルブ30が全閉の状態となり、ピストン上室10Aへの圧縮空気の供給は停止される。前記の通り、この状態では、メインバルブ30が下側に移動したために、下側の第2メインバルブ制御通路接続部101Bとメインバルブ室10Aとは再び連通し、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方から圧縮空気がメインバルブ室10Aに供給される。
【0036】
その後、
図1における戻り空気室10Bに溜められた圧縮空気がピストン下室11Bに流れ、かつピストン上室11A中の圧縮空気が排出されることによってピストン12が再び上死点側に移動した
図2(a)の状態となる。なお、戻り空気室10Bからピストン下室11B、及びピストン上室11Aから大気への圧縮空気を流す構成については、例えば特許文献1に記載されたものと同様であり、本発明とは本質的に無関係であるため、説明を省略する。
【0037】
上記の動作において、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際(
図2(a)から
図2(b)の状態に移行する際)には、メインバルブ室10A中の圧縮空気を排出する経路として、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方が用いられた。これによって、メインバルブ室10A中の圧縮空気が流出する速度(例えば毎秒あたりの空気の流出量)を高めることができる。すなわち、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際の応答速度を高めることができる。
【0038】
一方、メインバルブ30を開状態から閉状態とする際(
図3(c)から
図3(d)の状態に移行する際)には、メインバルブ室10A中に圧縮空気を供給する経路として、第1メインバルブ制御通路21Aのみが用いられ、第2メインバルブ制御通路21Bは用いられない。このため、メインバルブ室10A中への圧縮空気の流入速度(例えば毎秒あたりの空気の流入量)は、第1メインバルブ制御通路21Aによって定まる値に制限され、少なくとも、メインバルブ室10A中に圧縮空気を供給する経路として第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方が用いられる場合の流入速度と比べて低下する。すなわち、メインバルブ30を開状態から閉状態とする際の応答速度を制限することができる。
【0039】
ここで、メインバルブ室10A中に圧縮空気を供給する経路として第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方が用いられる場合の圧縮空気の流入速度は、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの断面積等で定まり、メインバルブ室10A中の圧縮空気を排出する経路として第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの両方が用いられた場合の圧縮空気の流出速度と同等である。このため、上記の構成においては、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際のメインバルブ室10Aに対する圧縮空気の流出速度は、メインバルブ30を開状態から閉状態とする際のメインバルブ室10Aに対する圧縮空気の流入速度よりも大きくなる。
【0040】
このため、上記の構成により、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際の応答速度を高めることによって打ち込み動作開始時の応答性を高めつつ、メインバルブ30を開状態から閉状態とするタイミングが速くなりすぎることによる弊害、例えば打ち込み動作が完了しないうちにメインバルブ30が閉状態とされることを抑制することができる。これによって、例えば連続打ち動作を安定して行わせることができる。
【0041】
また、上記の構成は、メインバルブ制御通路21をメインバルブ室10A側で第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの2つに分岐し、これらとメインバルブ室10Aとの接続部分である第1メインバルブ制御通路接続部101A、第2メインバルブ制御通路接続部101Bをメインバルブ30の移動方向(上下方向)に沿った異なる箇所に設けたことによって、実現される。このため、上記の機能をもつ打込機1を安価に製造することができる。
【0042】
上記の構成において、第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの内径(圧縮空気が流れる方向の断面積)は、同等である必要はない。各々の内径を調整することによって、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際のメインバルブ室10Aからの圧縮空気の流出速度と、メインバルブ30を開状態から閉状態とする際のメインバルブ室10Aへの圧縮空気の流入速度との比率を調整することができる。これにより、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際の応答速度と、メインバルブ30を開状態から閉状態とする際の応答速度の比率を調整することができる。例えば、第2メインバルブ制御通路21Bの内径を相対的に大きくすることにより、メインバルブ30を閉状態から開状態とする際の応答速度の、メインバルブ30を開状態から閉状態とする際の応答速度に対する比率を、より大きくすることができる。
【0043】
上記と同様の機能は、他の構造を具備するメインバルブによっても実現することができる。ここで、メインバルブを閉状態から開状態とする際の応答速度を速めるためには、例えば、メインバルブがメインバルブ室画成部101の内面を摺動する際の摺動抵抗を小さくすることが有効である。また、上記の動作を安定して行わせるためには、メインバルブ室10Aの気密性(密封性)を確保することが要求され、上記の例では、この気密性は弾性体であるOリング33A、33B、33Cを用いることによって確保された。この気密性を高めるために、他の構成を用いることができる。この気密性は、メインバルブが開状態の場合に第2メインバルブ制御通路接続部101Bが閉塞される際の第2メインバルブ制御通路21Bに対する気密性とも関連する。
【0044】
こうした点を考慮した、上記の打込機1の変形例の構造について説明する。
図4(a)は、第1の変形例の構造を示す、
図3(c)に対応した状態の断面図である。ここで用いられるメインバルブ40のメインバルブ本体41においては、前記の上側のOリング33Bが装着されていない。この場合においても、下側のOリング33Cと内側のOリング33Aは、
図2の構造と同様に設けられているため、メインバルブ室10Aの気密性は確保される。この場合、Oリング33Bが設けられないために、下側の第2メインバルブ制御通路接続部101Bとその上側のメインバルブ室10Aとの間は密封されず、第2メインバルブ制御通路21Bを介したメインバルブ室10Aへの圧縮空気の流れは完全には遮断されない。しかしながら、メインバルブ本体41の外周面とメインバルブ室画成部101の内面との間の隙間が小さければ、この隙間を流れる圧縮空気の流量は、上側の第1メインバルブ制御通路接続部101Aを介して流れる流量と比べて無視できる程度に小さくすることができる。このため、上記と同様の効果を奏する。
【0045】
この場合には、メインバルブ40がメインバルブ室画成部101の内面を摺動する際の抵抗となるOリングの数が
図2、3の構成と比べて少なくなるため、メインバルブ40の動作をより円滑に行うことができ、これを閉状態から開状態とする際の応答速度をより高めることができる。また、メインバルブ40の構成をより単純とすることができ、部品点数を少なくすることができるため、打込機をより安価とすることができる。
【0046】
図4(b)は、第2の変形例の構成を同様に示す断面図である。この場合に用いられるメインバルブ50のメインバルブ本体51の内側においては、
図2の構成と同様に、Oリング33Aが設けられている。ただし、メインバルブ本体51の外側においてはOリングは設けられておらず、代わりに、Oリングよりも上下方向の広がりの大きなゴムリング(弾性体)52が、メインバルブ本体51の外周に装着されている。この構造は、
図2の構造におけるOリング33BとOリング33Cを上下方向で連結させた構造と等価である。この場合には、
図2の構造よりも、ゴムリング52によって、メインバルブ室10Aの気密性、及びメインバルブ50が開状態の場合の第2メインバルブ制御通路21Bに対する気密性が高まる。また、部品点数が少なくなることについても、上記と同様である。
【0047】
その他、メインバルブが開状態(メインバルブが上側にある状態)とされた場合に、第2メインバルブ制御通路接続部101B(第2メインバルブ制御通路21B)のみがメインバルブ本体によって閉塞される構成であれば、他の構造のメインバルブを用いることができる。
【0048】
なお、上記の構成においては、メインバルブ30が下側に位置する場合に閉状態、上側に位置する場合に開状態とされたが、メインバルブの位置と閉状態、開状態との対応関係は、打込機の構成、例えばシリンダとメインバルブの構成に応じて適宜設定が可能である。この設定が上記の構成と異なる場合でも、上記と同様の構成が可能であることは明らかである。
【0049】
また、上記の例では、メインバルブ室10A内の圧力が高い場合にメインバルブ30が閉状態、メインバルブ室10A内の圧力が低い場合に開状態とされたが、メインバルブ室の圧力と閉状態、開状態の対応関係も、打込機の構成に応じて適宜設定が可能である。上記の例では、メインバルブを閉状態から開状態とする際のメインバルブ室からの圧縮空気の流出速度が、メインバルブを開状態から閉状態とする際のメインバルブ室への圧縮空気の流入速度よりも大きくされた。これに対し、上記とは逆にメインバルブ室内の圧力が低い場合に閉状態、高い場合に開状態と設定される場合には、メインバルブを閉状態から開状態とする際のメインバルブ室への圧縮空気の流入速度が、メインバルブを開状態から閉状態とする際のメインバルブ室からの圧縮空気の流出速度よりも大きくなる設定とすれば、同様の効果を奏する。この場合においても、メインバルブが開状態の際にメインバルブに閉塞される箇所にメインバルブ制御通路のうちの一つを接続すればよい。
【0050】
また、上記の例では、メインバルブ制御通路21は2つに分岐され、メインバルブ30が開状態とされる際に、メインバルブ室10Aに対するこのうちの一方の接続箇所(第2メインバルブ制御通路接続部101B)が閉塞される構成とされた。しかしながら、メインバルブ制御通路を3つ以上に分岐し、メインバルブが開状態とされる際に、このうちの一つの接続箇所が閉塞される構成としてもよい。あるいは、このうちの一つ以外の接続箇所が全て閉塞される構成としてもよい。この設定によって、上記の第1メインバルブ制御通路21A、第2メインバルブ制御通路21Bの内径を調整する場合と同様に、メインバルブを閉状態から開状態とする際の応答速度と、メインバルブを開状態から閉状態とする際の応答速度の比率を調整することができる。
【0051】
また、上記の構成においては、メインバルブ制御通路21を分岐し、分岐後の通路のうち圧縮空気の通路として使用されるものの数を、閉状態から開状態とする場合、開状態から閉状態とする場合とで切り替える構成とされた。この通路として使用されるものの数を変えることは、通路の流路断面積(圧縮空気が流れる方向に垂直な断面積)を変えることと等価である。このため、他の方法によって、閉状態から開状態とする場合におけるこの流路断面積が、開状態から閉状態とする場合におけるこの流路断面積よりも大きくなるような構成としても、同様の効果を奏する。
【0052】
また、上記の例は、止具部材の打ち込みを行う打込機であったが、同様に圧縮空気の流れを制御するメインバルブが用いられる限りにおいて、同様の構造をねじ打機に適用することもできる。この場合においても、メインバルブが開状態から閉状態となるタイミングが速すぎると、打ち込み動作の後に行われる締め込み動作のタイミングが最適なタイミングからずれるために、適正な締め込み動作が行われなくなるため、上記の構成によって、ねじ打機においても、安定してねじ打ち作業を行うことができる。