特許第6540263号(P6540263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540263
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20190628BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20190628BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190628BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20190628BHJP
   B60C 1/00 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
   C08L9/00
   C08K3/36
   C08K3/22
   C08K5/548
   !B60C1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-123485(P2015-123485)
(22)【出願日】2015年6月19日
(65)【公開番号】特開2017-8169(P2017-8169A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(72)【発明者】
【氏名】三原 諭
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−316802(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104448420(CN,A)
【文献】 特開2011−026189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L7/00−21/02
C08K3/00−13/08
B60C1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20〜150質量部、酸化アンチモン化合物を1〜50質量部含み、さらに硫黄含有シランカップリング剤を、前記シリカと前記酸化アンチモン化合物との合計量に対する比率で3〜20質量%含み、
前記酸化アンチモン化合物が、平均粒子径が20〜60nmの微粒子である、ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤにはラベリング(表示方法)制度が施行され、ウェット性(湿潤路面での制駆動性)と低転がり抵抗性とをより高いレベルで両立させることが求められている。
従来、タイヤのトレッド部を構成するゴム材料へ配合するフィラーをカーボンブラックからシリカへ変更することで、低転がり抵抗性やウェット性が改善することが知られている。しかし、シリカ配合ゴムの強強靭性はゴム内部の補強構造に違いによりカーボンブラック配合ゴムに比べて悪化する傾向があった。
【0003】
一方、タイヤ用ゴム組成物に関連する従来法として、例えば特許文献1に記載のものが提案されている。
特許文献1には、共役ジエン化合物由来部分の含有量が40mol%以上である共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(A)と、共役ジエン系重合体(B)と、エチレン−プロピレン−ジエンゴムを含有する非共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(C)とを含むことを特徴とするゴム組成物が記載されており、共役ジエン化合物−非共役オレフィン共重合体(A)は、三塩化アンチモン、五塩化アンチモンを含む特定の化合物を重合触媒組成物として用いて、共役ジエン化合物と非共役オレフィンとを重合させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/117715号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ウェット性に優れ、同時に転がり抵抗が低く、その上、強靭性も優れるタイヤを得ることができるゴム組成物は、従来、提案されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、ウェット性に優れ、同時に転がり抵抗が低く、その上、強靭性も優れるタイヤを得ることができるゴム組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するための鋭意検討を重ね、特定の比率でジエン系ゴム、シリカ、酸化アンチモン化合物、硫黄含有シランカップリング剤を含むゴム組成物が、上記の目的を達成することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
なお、特許文献1に記載のゴム組成物では、その製造過程において、触媒として、三塩化アンチモンまたは五塩化アンチモンを用い得ることが記載されているが、製造して最終的に得られるゴム組成物に、その製造過程において用いた触媒としての三塩化アンチモンまたは五塩化アンチモンは含まれない。
【0009】
本発明は以下の(1)〜(2)である。
(1)ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20〜150質量部、酸化アンチモン化合物を1〜50質量部含み、さらに硫黄含有シランカップリング剤を、前記シリカと前記酸化アンチモン化合物との合計量に対する比率で3〜20質量%含む、ゴム組成物。
(2)前記酸化アンチモン化合物が、平均粒子径が20〜60nmの微粒子であることを特徴とする、上記(1)に記載のゴム組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェット性に優れ、同時に転がり抵抗が低く、その上、強靭性も優れるタイヤを得ることができるゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、ジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを20〜150質量部、酸化アンチモン化合物を1〜50質量部含み、さらに硫黄含有シランカップリング剤を、前記シリカと前記酸化アンチモン化合物との合計量に対する比率で3〜20質量%含む、ゴム組成物である。
このようなゴム組成物を、以下では「本発明の組成物」ともいう。
【0012】
<ジエン系ゴム>
本発明の組成物が含有するジエン系ゴムは、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン−イソプレンゴム、イソプレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
これらのうち、ウェット性能と転がり抵抗性能とのバランスが取れるという理由から、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)を用いるのが好ましく、これらを併用するのがより好ましい。
【0014】
ジエン系ゴムとしてスチレン・ブタジエンゴム(SBR)およびブタジエンゴム(BR)を併用する場合には、ジエン系ゴム中、SBRが50〜90質量%であることが好ましく、60〜85質量%であることがより好ましい。この範囲内であると、加硫後のゴム組成物の一般的物性がより良好なものとなる。
【0015】
<シリカ>
本発明の組成物が含有するシリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
【0016】
前記シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明においては、前記シリカの含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して20〜150質量部であり、得られるタイヤの耐摩耗性が良好となり、転がり抵抗性能のバランスが良好となるため、50〜140質量部であることがより好ましく、70〜130質量部であることがさらに好ましい。
【0018】
<酸化アンチモン化合物>
本発明の組成物が含有する酸化アンチモン化合物は特に限定されず、平均粒子径が20〜60nmの微粒子であることが好ましく、25〜50nmの微粒子であることがより好ましい。
【0019】
平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、酸化アンチモン化合物を倍率5000倍で写真撮影し、得られた写真から任意に500個を選び、ノギスを用いて各々の投影面積円相当径を測定して積算粒度分布(体積基準)を求め、それより平均粒子径(メジアン径)を算出して求める値とする。
【0020】
酸化アンチモン化合物として、酸化アンチモンスズ、酸化アンチモン亜鉛、酸化アンチモンチタンが挙げられる。
また、酸化アンチモン化合物は、酸化アンチモンを含むものとする。
本発明の組成物が含む酸化アンチモン化合物は、酸化アンチモン−スズ系または酸化アンチモン−インジウム系であることが好ましい。スズまたはインジウム系化合物を配合することでゴムに導電性を付与することができるため、シリカ配合ゴムの帯電防止が可能となる。
【0021】
本発明においては、前記酸化アンチモン化合物の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して酸化アンチモン化合物を1〜50質量部であり、5〜45質量部であることがより好ましく、10〜40質量部であることがさらに好ましい。酸化アンチモン化合物の配合量が1質量部未満の場合、タイヤの低転がり性、ウェット性能およびゴムの強靭性が改善されず、50質量部より多くなるとゴムの強靭性が低下する。
【0022】
<硫黄含有シランカップリング剤>
本発明の組成物に含有する硫黄含有シランカップリング剤は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意の硫黄を含有するシランカップリング剤を用いることができる。
【0023】
前記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、トリメトキシシリルプロピル−メルカプトベンゾチアゾールテトラスルフィド、トリエトキシシリルプロピル−メタクリレート−モノスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイル−テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]テトラスルフィド、ビス−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]ジスルフィド、3−メルカプトプロピル−トリメトキシシラン、3−メルカプトプロピル−トリエトキシシラン等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
本発明においては、前記硫黄含有シランカップリング剤の含有量は、前記シリカと前記酸化アンチモン化合物との合計量に対する比率(硫黄含有シランカップリング剤の含有量/(シリカの含有量+酸化アンチモン化合物の含有量)×100)として3〜20質量%であり、5〜15質量%であることが好ましく、7〜10質量%であることがより好ましい。前記硫黄含有シランカップリング剤の配合量が前記シリカと前記酸化アンチモン化合物との合計量に対する比率が3質量%未満の場合、タイヤの転がり抵抗性やウェット性能、および強靭性が改善されずゴムの加工性も悪化する。一方、前記シリカと前記酸化アンチモン化合物との合計量に対する比率が20質量%より高くなると、強靭性が低下する。
【0025】
<その他の成分>
本発明の組成物には、上記の成分の他に、シリカ以外のフィラー(例えば、カーボンブラック等)、加硫または架橋剤、加硫または架橋促進剤、酸化亜鉛、軟化剤(オイル)、老化防止剤、可塑剤等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられている各種のその他添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0026】
例えば、シリカ以外のフィラー(例えば、カーボンブラック)の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して4〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部であることがより好ましい。
加硫剤または架橋剤の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.3〜3.0質量部であることが好ましく、0.5〜2.5質量部であることがより好ましい。
加硫促進剤または架橋促進剤の含有量は、一次促進剤単独もしくは二次とのブレンドで前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.5〜4.0質量部であることが好ましく、1.0〜2.5質量部であることがより好ましい。
酸化亜鉛の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.2〜10.0質量部であることが好ましく、0.4〜5.0質量部であることがより好ましい。
軟化剤(オイル)の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して10〜60質量部であることが好ましく、15〜45質量部であることがより好ましい。
老化防止剤の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜5.0質量部であることが好ましく、0.2〜4.0質量部であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂のような可塑剤の含有量は、前記ジエン系ゴム100質量部に対して0〜30質量部であることが好ましく、0〜20質量部であることがより好ましい。
【0027】
[製造方法]
本発明のゴム組成物は、上記の各成分を混合・混錬することによって製造することができる。
上記の成分のうち、加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤以外の成分を混合および混練してマスターバッチを作成し、このマスターバッチに加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤を混合し、オープンロール等を用いて混練してゴム組成物を製造することが好ましい。このように、加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤以外の成分からなるマスターバッチを作成し、そのマスターバッチに加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤を混合・混練すると、加硫(架橋)剤および加硫(架橋)促進剤を混合してからの混練時間を短くすることができ、不均一な加硫(架橋)が生じることによる加硫(架橋)ゴム組成物の物性低下を防止することができるうえ、加硫(架橋)の制御が容易となる。
【0028】
[空気入りタイヤ]
本発明の組成物を用いて空気入りタイヤを得ることができる。空気入りタイヤは、例えば、本発明の組成物が含有するジエン系ゴム、加硫剤または架橋剤、加硫促進剤または架橋促進剤の種類およびその配合割合に応じた温度で加硫または架橋し、トレッド部やサイドウォール部等を形成することにより製造することができる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は実施例に限定されない。
【0030】
[ゴム組成物の製造]
<標準例、実施例1〜6、比較例1〜4>
第1表の標準例の欄、実施例の欄および比較例の欄に示すとおり、標準例、実施例1〜6および比較例1〜4に係るゴム組成物は、第1表に示す各成分を、第1表に示す配合量で配合して製造した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて5分間混合し、150±5℃に達したときに放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、ゴム組成物を得た。
【0031】
なお、第1表中、SBRは油展品の量(単位:質量部)を示しており、カッコ内の値はSBRに含まれるSBRの正味の量(単位:質量部)を示している。
【0032】
[評価用加硫ゴムシートの作製]
製造したゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、160℃で20分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
【0033】
[試験評価方法]
<強靭性>
上記のように作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度100℃、引張り速度500mm/分の条件で100%モジュラス(M100:100%変形時の応力)および破断強度(EB:破断時の応力)を測定した。そして、M1000.75×EBを算出し、これを強靭性の指標とした。
測定結果は、標準例の値を100とし、指数表示した。数値が大きいほど強靭性に優れることを意味する。
強靭性に優れると、破断強度が大きく、タイヤにしたときに耐摩耗性に優れ、さらに引張強度が優れる。
【0034】
<tanδ(60℃)>
上記のように作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6394:2007に準拠し、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。
測定結果は、標準例の値を100とし、指数表示した。tanδ(60℃)が小さいほど、タイヤにしたときに低転がり抵抗性に優れることを意味する。
【0035】
<ウェット性能(ウェットスキッド)>
ブリティッシュスタンダードポータブルスキッドテスター(スタンレイ・ロンドン社製)を用いて、湿潤路面(水温8℃)の条件下で、ASTM E−303−83の方法に準拠して測定した。この測定により、湿潤路面でのグリップ特性(駆動性能、制動性能および操縦性能)を評価できる。
測定結果は、標準例の値を100とし、指数表示した。数値が大きい程、低温ウェットスキッド性能が優れることを意味する。
【0036】
【表1】
【0037】
[表中の各成分の具体的な説明]
表に示される各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR:水酸基を有するスチレンブタジエンゴム(商品名E581、旭化成社製):油展品(スチレン含有量:73質量%)、Tg:−27℃、重量平均分子量:1,260,000
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol1220
・シリカ:沈降シリカ(Zeosil(R) 1165MP、ローディア社製)
・酸化アンチモンスズ1:Nanotechnology社製、Nano−D CEP、平均粒子径=30〜40nm
・酸化アンチモンスズ2:Nyacol Nano Technology社製 NYACOL SN902SD 平均粒子径=7μm
・硫黄含有シランカップリング剤:ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド(TESPT)、Evonik社製Si69
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・老化防止剤:フレキシス社製6PPD
・オイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤1:加硫促進剤CBS(ノクセラーCZ−G、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:サンセラーD−G、三新化学工業社製
【0038】
[試験結果の説明]
<実施例1〜5>
〈1〉強靭性は、標準例の100に対して、101〜111の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
〈2〉転がり抵抗の指標であるtanδ(60℃)は、標準例の100に対して、92〜116の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
〈3〉湿潤路面でのグリップ特性の指標であるウェット性能は、標準例の100に対して、103〜108の範囲内であり、顕著な改善が認められた。
【0039】
<実施例6>
実施例1〜5では、平均粒子径が30〜40nmである酸化アンチモンスズを用いたが、実施例6は、平均粒子径が7μmである酸化アンチモンスズ2を用いた。すなわち、実施例6の場合、実施例1〜5の場合よりも平均粒子径が大きい酸化アンチモンスズを用いた。
この場合、強靭性、tanδ(60℃)およびウェット性能は、標準例の100に対して、各々、100、99および101であり、改善が認められた。
【0040】
<比較例1>
酸化アンチモンスズを配合しなかった比較例である。
この場合、標準例と比較して強靭性が悪化した。
また、比較例1のシリカ配合量と、実施例2のシリカと酸化アンチモンスズとの合計配合量とは同一であるが、実施例2と比較して比較例1の場合、強靭性およびウェット性が劣る。
tanδについては実施例2に比べて劣る。
【0041】
<比較例2>
酸化アンチモンスズを配合しなかった比較例である。
この場合、標準例と比較して強靭性が悪化した。
また、比較例2のシリカ配合量と、実施例3のシリカと酸化アンチモンスズとの合計配合量とは同一であるが、実施例3と比較して比較例2の場合、強靭性およびウェット性が劣る。
tanδについては実施例3に比べて劣る。
【0042】
<比較例3>
酸化アンチモンスズの配合量が多い比較例である。
この場合、標準例と比較して強靭性が悪化した。
tanδについては標準例に比べて6%悪化した。
【0043】
<比較例4>
酸化アンチモンスズの配合量が少ない比較例である。
この場合、標準例と比較して強靭性およびウェット性は同程度であった。
tanδについては標準例と同等であった。