(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リンク機構が、前記ピストンに連結された第一部材と、前記第一部材と前記前端部との間を接続する第二部材と、前記シリンダーチューブと前記前端部との間を接続する第三部材とを有する
ことを特徴とする、請求項3〜5の何れか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のカーテンエアバッグの前端部に取り付けられるテザーは、張力を担う部材であって、圧縮方向の荷重を負担することができない。そのため、カーテンエアバッグの前端部に車両前方へ向かう荷重が作用した場合、前端部がフロントピラーの位置まで押し込まれるまでの間は、その荷重を支えることができない。つまり、カーテンエアバッグの前端部とフロントピラーとの距離が長いほど、乗員頭部の可動ストロークが長くなってしまう。したがって、乗員保護性能のさらなる向上のためには改良の余地がある。
【0006】
本件の目的の一つは、上記のような課題に鑑みて創案されたものであり、乗員保護性能を向上させることができるカーテンエアバッグ装置を提供することである。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用効果であって、従来の技術では得られない作用効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するカーテンエアバッグ装置は、車室内の側面に沿って展開されるエアバッグ(メインチャンバー)と、前記エアバッグの前端部とフロントピラーとの間で前記フロントピラーに沿って介装されたリンク機構とを備える。また、車両の衝突に際し、前記リンク機構を駆動するアクチュエータを備える。前記アクチュエータは、前記車両の前突時に前記前端部を車室内方向へ移動させ、前記車両の側突時に前記前端部を車両前方へ移動させる。
【0008】
(2)前記アクチュエータが、前記車両の側突時に前記車両の前突時よりも前記前端部を車両前方へ移動させることが好ましい。
(3)前記アクチュエータが、シリンダーチューブの内側にピストンを内挿してなる圧力シリンダーであることが好ましい。また、前記前突時に前記圧力シリンダーを伸張方向に作動させ、前記側突時に前記圧力シリンダーを縮小方向に作動させる制御装置を備えることが好ましい。
【0009】
(4)前記圧力シリンダーが、前記シリンダーチューブの内側を前記ピストンで区画してなる二つの圧力室を有することが好ましい。この場合、前記ピストンを駆動する流体の供給先を、前記二つの圧力室の何れか一方に切り換える切換弁を設けることが好ましい。
(5)前記圧力シリンダーが、前記フロントピラーの基端部に固定されることが好ましい。
【0010】
(6)前記リンク機構が、前記ピストンに連結された第一部材と、前記第一部材と前記前端部との間を接続する第二部材と、前記シリンダーチューブと前記前端部との間を接続する第三部材とを有することが好ましい。
(7)前記第三部材の一端が、前記シリンダーチューブの内部で摺動自在に支持されることが好ましい。
(8)前記第二部材が、前記エアバッグの下端部近傍に接続されることが好ましい。
(9)前記リンク機構からの押圧力を受けて前記エアバッグに折り目を形成する折り目部材を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示のカーテンエアバッグ装置によれば、前突時にエアバッグの前端部を車室内方向に移動させることで、乗員保護性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのカーテンエアバッグ装置について説明する。なお、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.構成]
図1に、カーテンエアバッグ1が適用された車両の車室内10を示す。このカーテンエアバッグ1は、左右の窓面13を覆うように展開されるエアバッグ装置である。展開前のカーテンエアバッグ1は、左右のフロントピラー9やその上端部に連結される車室側面上方のルーフサイドレールの表面を被覆するトリムの内側に折り畳まれて収納される。また、車両に衝突等の何らかの衝撃力が作用すると、インフレーターで発生したガスが、折り畳まれて収納されているカーテンエアバッグ1の内部に供給され、膨張したカーテンエアバッグ1がトリム外部の下方へと展開される。なお、車室内10には、カーテンエアバッグ1のほか、乗員の前方に展開されるフロントエアバッグ11や、運転席及び助手席の側方に展開されるサイドエアバッグ12なども設けられる。
【0015】
このカーテンエアバッグ1には、メインチャンバー2,リンク機構3,圧力シリンダー7が設けられる。メインチャンバー2(主室,エアバッグ)は、車室内10の左右側面に沿って展開される面状の袋体である。メインチャンバー2の前端部15の位置は、フロントピラー9の近傍とされる。
図1に示すカーテンエアバッグ1では、前端部15の上部がフロントピラー9と重なり、前端部15の下部がドアミラー基端部の三角パネル16の近傍に位置するように、メインチャンバー2の形状が設定されている。
【0016】
メインチャンバー2の内部には、前端部15よりも車両後方において、表裏の基布を接続する複数のテザー8(折り目部材)が設けられる。これらのテザー8は、メインチャンバー2が展開されたときの幅に制限を加えるための紐状部材であり、メインチャンバー2の前端部15を車室内10に向かって折れ曲がりやすくするように機能する。テザー8による接続位置は、上下方向に伸びた直線をなすように配置される。これにより、展開したメインチャンバー2の表面には、縦方向の折り目が形成される。なお、テザー8を用いて折り目を形成する代わりに、表裏の基布を縫合してライン状のシーム(縫い目)を設けてもよい。
【0017】
リンク機構3は、メインチャンバー2が展開したときに、メインチャンバー2の前端部15の位置を制御するための機構である。また、圧力シリンダー7(アクチュエータ)は、リンク機構3を駆動する駆動装置である。これらは、
図2に示すように、メインチャンバー2の前端部15とフロントピラー9との間で、フロントピラー9に沿って介装される。
【0018】
圧力シリンダー7は、フロントピラー9の下方の基端部に対し、ユニバーサルジョイント14を介して連結される。メインチャンバー2が展開された状態における、圧力シリンダー7の向きは、ほぼ車両前後方向に沿った向き(例えば、フロントピラー9に沿った向き)に設定される。また、リンク機構3の前端部は、圧力シリンダー7の内部に挿入されるとともに、圧力シリンダー7の延在方向(圧力シリンダー7の伸縮方向)に沿って移動可能とされる。リンク機構3の後端部は、メインチャンバー2の前端部15における下端部近傍に接続される。
【0019】
図3に示すように、圧力シリンダー7は、シリンダーチューブ31の内側にピストン32を内挿したシリンダー構造を持つ。シリンダーチューブ31の内部空間は、ピストン32を挟んで、ヘッド室33とロッド室34とに区画される。ヘッド室33側が加圧され、あるいはロッド室34側が減圧されると、ピストン32がロッド室34の方向へと移動して圧力シリンダー7が伸張する。一方、ロッド室34側が加圧され、あるいはヘッド室33側が減圧されると、ピストン32がヘッド室33の方向へと移動して圧力シリンダー7が縮小する。
【0020】
リンク機構3には、第一部材4,第二部材5,第三部材6が設けられる。これらのリンク部材4〜6は、プラスチックや合成樹脂を棒状に成形したものであり、ヒンジを介して互いに回動可能に連結される。リンク機構3は、
図2に示すように、カーテンエアバッグ1の展開時に窓面13に向かって凸となる三角形状のリンク構造を形成しうる形状に形成される。一方、カーテンエアバッグ1の収納時には、フロントピラー9のトリム内側に収納される。
図4は、リンク機構3の収納状態を例示する図である。各リンク部材4〜6は、フロントピラー9の延在方向に沿って配置された状態で、フロントピラー9のトリム内側に収納される。
【0021】
第一部材4は、圧力シリンダー7のロッドとして機能するリンク部材である。
図3に示すように、第一部材4の前端21は、圧力シリンダー7のピストン32に固定される。これにより、第一部材4の後端22は、圧力シリンダー7が伸張したときに圧力シリンダー7の長手方向に沿って車両後方へ移動し、圧力シリンダー7が縮小したときに圧力シリンダー7の長手方向に沿って車両前方へ移動する。第一部材4がシリンダーチューブ31を貫通する部分には、ゴム製や樹脂製のパッキンが嵌め込まれており、第一部材4の周囲の隙間が弾性的に閉塞されている。なお、本実施形態の圧力シリンダー7は、第一部材4を繰り返し往復移動させるものではなく、カーテンエアバッグ1が展開する際に車両前方又は後方の一方向に一度だけ作動する。したがって、ヘッド室33,ロッド室34は、ある程度閉鎖された状態になっていればよく、密閉されていなくてもよい。
【0022】
第二部材5は、第一部材4の運動方向を変更してメインチャンバー2の前端部15に伝えるためのリンク部材である。第二部材5の前端23は、第一部材4の後端22に対し、蝶番,回動ジョイント,リビングヒンジなどのピンジョイント28を介して回動可能に連結される。また、第二部材5の後端24は、メインチャンバー2の前端部15に対し、基端ジョイント29を介して回動可能に連結される。基端ジョイント29としては、例えばユニバーサルジョイントが使用される。
【0023】
ピンジョイント28は、第一部材4と第二部材5との相対回転を許容しつつ、これらを連結するジョイント部材である。ピンジョイント28で許容される相対回転の回転軸は一軸であり、その延在方向は上下方向とされる。これにより、第二部材5は、第一部材4に対して水平面内で回動するように移動する。第二部材5は、圧力シリンダー7の伸張時にメインチャンバー2の前端部15を車室内方向に移動させるように機能する。
【0024】
第三部材6は、第二部材5の後端24の位置を制御するためのリンク部材である。第三部材6の後端26は、メインチャンバー2の前端部15に対し、基端ジョイント29を介して連結される。一方、第三部材6の前端25には、抜け防止用のボール30が固定され、このボール30が圧力シリンダー7のロッド室34内において摺動自在に収容される。第三部材6がシリンダーチューブ31を貫通する部分には、ゴム製のパッキンが嵌め込まれ、第三部材6の周囲の隙間が弾性的に閉塞されている。
【0025】
圧力シリンダー7の伸張時には、ロッド室34が狭められた状態となり、シリンダーチューブ31内の車両後端部近傍にボール30が配置される。一方、圧力シリンダー7の縮小時には、ロッド室34が広げられた状態となり、ボール30がシリンダーチューブ31内で車両前後方向に移動可能となる。このとき、第三部材6の後端26が第一部材4,第二部材5によって車両前方に牽引されるため、第三部材6の全体が車両前方へと移動することになる。
【0026】
ここで、各リンク部材4〜6の長さをL
1,L
2,L
3とおく。第三部材6の長さL
3は、第一部材4の長さL
1と第二部材5の長さL
2との和よりも短い寸法となるように設定される(L
3<L
1+L
2)。これにより、圧力シリンダー7の伸張時に第二部材5が第三部材6の方向に引き寄せられることになり、第二部材5の後端24が第三部材6の後端26とともに車室内方向へと移動する。
【0027】
圧力シリンダー7の伸縮状態は、制御装置40で制御される。ここで、圧力シリンダー7の伸縮状態を制御するための流体圧回路及び制御構成を、
図5に例示する。制御装置40は、車載ネットワークに接続された電子制御装置であり、CPU,MPUなどのプロセッサ装置41やROM,RAMなどのメモリ装置42を集積した電子デバイスである。制御装置40は、車両の前突時に圧力シリンダー7を伸張方向に作動させる機能と、側突時に圧力シリンダー7を縮小方向に作動させる機能とを有する。これらの機能を実現するためのプログラムは、メモリ装置42に記録され、プロセッサ装置41で実行される。
【0028】
車両の衝突形態は、車両の各所に設けられた加速度センサの検出信号に基づいて判定される。本実施形態の制御装置40には、車両前端部における加速度を検出する前突センサ43と、車両側面における加速度を検出する側突センサ44とが接続される。制御装置40は、これらのセンサ43,44での検出結果に基づき、前突や側突の有無を判断する。具体的な衝突形態の判断手法には、公知の手法を採用可能である。なお、センサ43,44以外の加速度センサの検出信号に基づいて衝突形態を判定してもよい。
【0029】
図5を用いて、圧力シリンダー7を駆動するための流体圧回路について説明する。この流体圧回路上には、圧力源36で発生した圧力をヘッド室33に供給するための圧力シリンダー7の前端部へ通じる第一通路37と、ロッド室34に供給するための圧力シリンダー7の後端部へ通じる第二通路38とが設けられる。また、第一通路37と第二通路38との分岐箇所には、圧力流体の流路を変更するための切換弁35が設けられる。この切換弁35は、圧力の供給先を二つの圧力室(ヘッド室33,ロッド室34)の何れか一方に切り換える機能を持つ。なお、収納時におけるピストン32は、ヘッド室33とロッド室34を分けるように配置されている。また、ピストン32の位置は、圧力を供給する第一通路37,第二通路38と干渉しない位置に設定されている。
【0030】
圧力源36は、例えば液圧ポンプやエアコンプレッサー,インフレーターなどである。本実施形態では、メインチャンバー2を展開するためのインフレーターが、圧力源36として利用される。制御装置40は、車両の前突時に切換弁35の第一通路37側を開放することで、ヘッド室33に圧力を供給させる。一方、車両の側突時には、第二通路38側を開放することで、ロッド室34に圧力を供給させる。これにより、車両の前突時には圧力シリンダー7が伸張し、側突時には圧力シリンダー7が縮小する。
【0031】
[2.展開状態]
カーテンエアバッグ1の展開状態を
図6(A),(B)に例示する。カーテンエアバッグ1のインフレーターが作動すると、インフレーター内で発生したガスがメインチャンバー2の内部に供給され、メインチャンバー2がカーテン状に展開される。このとき、制御装置40では、車両の衝突形態が前突であるか、それとも側突であるかが判断される。
【0032】
前突が発生した場合、圧力シリンダー7が伸張方向に作動し、第二部材5が第一部材4とともに車両後方側へと移動する。このとき、ボール30が圧力シリンダー7の後端部に当接する位置までピストン32が移動する。また、第二部材5の後端24は、基端ジョイント29を介して第三部材6の後端26と連結されているため、車室内10方向へと移動する。このとき、
図6(A)に示すように、基端ジョイント29が設けられたメインチャンバー2の前端部15が、車室内10に向かう方向へと押圧される。
【0033】
これにより、上面視で第一部材4と第二部材5のなす角が窓面13に向いた三角形状の平面トラスが形成され、メインチャンバー2の前端部15の位置が安定的に固定される。また、
図6(A)に示すように、テザー8が列設された箇所を折り目として、メインチャンバー2の前端部15が車室内10側へと折り曲げられ、メインチャンバー2の前端部15がフロントエアバッグ11に押し付けられる。したがって、フロントエアバッグ11よりも車両外側の隙間は、メインチャンバー2の前端部15によって閉塞される。これにより、衝突時の乗員の保護エリアが拡大し、乗員頭部をより適切に保護することができる。
【0034】
上記のトラス構造は、カーテンエアバッグ1の展開時に前端部15を車室内10へ押し込むだけでなく、前端部15を「裏支え」する機能を持つ。例えば、
図6(A)中に白抜き矢印で示すように、メインチャンバー2の前端部15に車両前方へ向かう荷重が作用すると、その荷重が第二部材5及び第三部材6の双方に分散される。また、分散した荷重は圧力シリンダー7に伝達されることから、フロントピラー9によって支持されることになる。したがって、メインチャンバー2の前端部15が押し込まれにくくなり、前端部15の可動ストロークが短縮される。
【0035】
一方、側突が発生した場合には、圧力シリンダー7が縮小方向に作動し、第二部材5が第一部材4とともに車両前方側へと移動する。このとき、ピストン32が圧力シリンダー7の前端部まで移動する。また、第三部材6の後端26も車両前方側へと引き込まれ、第三部材6自体が車両前方側へと移動する。これにより、
図6(B)に示すように、メインチャンバー2の前端部15が車両前方へと牽引された状態となり、メインチャンバー2の張力が増大する。
【0036】
[3.効果]
(1)上記のカーテンエアバッグ1には、リンク機構3と圧力シリンダー7とが設けられる。また、車両の前突時には圧力シリンダー7を伸長方向に駆動して、メインチャンバー2の前端部15を車室内10の方向に移動させている。これにより、乗員から見て車両外側に向かう斜め前方をカバー(被覆)することができ、乗員保護性能を向上させることができる。
【0037】
また、前端部15の裏側がリンク機構3を介してフロントピラー9に支持されることから、前端部15が押し込まれにくくなり、荷重に対する沈み込み量(押し込まれ量)が減少する。つまり、前端部15の可動ストロークを短縮することができ、乗員保護性能をさらに向上させることができる。さらに、前端部15を押し込むための機構をリンク機構3とすることで、フロントピラー9のトリム内側にコンパクトに収納することができ、実装性を向上させることができる。
【0038】
(2)車両の側突時には、メインチャンバー2の前端部15を車両前方に移動させることで、メインチャンバー2の張力(車両前後方向の張力)を増大させることができる。これにより、乗員から見て側面方向への荷重を受け止める力がより増大し、乗員保護性能を向上させることができる。
【0039】
(3)上記のカーテンエアバッグ1では、シリンダーチューブ31の内側にピストン32を内挿した構造の圧力シリンダー7が使用されている。これにより、カーテンエアバッグ1の展開時に作動するインフレーターを利用して(すなわち、インフレーター内で発生したガスを利用して)リンク機構3を作動させることができる。したがって、前端部15の位置を制御するための構成が簡素となり、実装性を向上させることができる。
【0040】
(4)上記のカーテンエアバッグ1では、圧力シリンダー7の伸縮状態が制御装置40で制御されている。制御装置40は、車両の衝突形態を判断するとともに、前突時に切換弁35の第一通路37側を開放し、側突時に切換弁35の第二通路38側を開放する制御を実施する。このような制御装置40を設けることで、メインチャンバー2の前端部15の位置を、衝突形態に応じて適切に変更することができる。
【0041】
(5)上記のカーテンエアバッグ1では、圧力シリンダー7がユニバーサルジョイント14を介してフロントピラー9に連結されている。これにより、圧力シリンダー7の向きを、収納時と展開時とで相違させることができる。例えば、展開時における圧力シリンダー7の向きを、ほぼ車両前後方向に沿った向きに設定することができる。これにより、リンク機構3の変形方向を適正化することができ、前端部15を適切な方向へと移動させることができる。
【0042】
(6)上記の圧力シリンダー7には、二つの圧力室(ヘッド室33,ロッド室34)が設けられ、ガスの供給先をこれらの一方に切り換えるための切換弁35が設けられる。これにより、切換弁35の作動状態を変更することで、容易にピストン32の移動方向を制御することができ、制御性を向上させることができる。
【0043】
(7)上記のカーテンエアバッグ1では、圧力シリンダー7がフロントピラー9の基端部に固定されるため、圧力シリンダー7の固定状態をより安定化することができ、乗員保護性能を向上させることができる。
また、圧力シリンダー7をフロントピラー9の上端部に固定した場合と比較して、フロントエアバッグ11に近い位置でリンク機構3を支えることができる。これにより、前端部15に比較的大きな荷重が作用した場合であっても、その荷重に対する沈み込み量を削減することができ、前端部15の可動ストロークをさらに短縮することができる。
【0044】
(8)上記のカーテンエアバッグ1には、
図2,
図3に示すように、三本のリンク部材4〜6を組み合わせたリンク機構3が設けられる。これにより、メインチャンバー2を効率的に押し引きすることができる。つまり、押圧ストロークや牽引ストロークを比較的大きく設定ことができ、乗員保護性能をさらに向上させることができる。また、
図6(A)に示すように、前突時に形成される三角形状のリンク構造は、荷重の分散性をより高めることができる。したがって、乗員保護性能をさらに向上させることができる。
【0045】
また、第三部材6の長さL
3が、第一部材4の長さL
1と第二部材5の長さL
2との和よりも短い寸法に設定されている。これにより、前突時には各リンク部材4〜6を三辺とした三角形状の平面トラスを形成することができ、メインチャンバー2の前端部15を安定的に固定することができる。また、荷重に対する耐性が高められることから、乗員保護性能をさらに向上させることができる。
【0046】
(9)
図6(A),(B)に示すように、第三部材6の前端25は、圧力シリンダー7のロッド室34内において摺動自在に収容される。これにより、側突時に第三部材6自体を車両前方へとスライド移動させることができる。したがって、第三部材6の前端25をシリンダーチューブ31に固定した場合と比較して、メインチャンバー2の張力をさらに増大させることができ、乗員保護性能をさらに向上させることができる。
【0047】
(10)上記のカーテンエアバッグ1では、リンク機構3がメインチャンバー2の下端部近傍に接続される。これにより、リンク機構3をメインチャンバー2の上端部近傍に接続した場合と比較して、フロントエアバッグ11に近い位置で前端部15を押圧することができ、乗員から見て車両外側の斜め前方に生じうる隙間を閉塞することができる。したがって、乗員保護性能をさらに向上させることができる。
【0048】
(11)上記のカーテンエアバッグ1には、メインチャンバー2の前端部15よりも車両後方側にテザー8が設けられる。これにより、前端部15を車室内10に向かって折れ曲がりやすくすることができ、乗員保護性能をさらに向上させることができる。なお、テザー8の代わりにシームを設けた場合においても同様であり、縦方向の折り目を形成することで乗員保護性能をさらに向上させることができる。
【0049】
[4.変形例]
上述の実施形態では、三本のリンク部材4〜6からなるリンク機構3を例示したが、リンクの数はこれに限定されない。例えば、第二部材5及び第三部材6を省略し、第一部材4のみでメインチャンバー2の前端部15を押圧(又は牽引)する構造としてもよい。この場合、圧力シリンダー7の向きは、
図3中に示す状態よりもやや右下方向に傾ければよい。少なくとも、車両の前突時にメインチャンバー2の前端部15を、側突時よりも車室内10方向に移動させることで、上述の実施形態と同様の効果を奏するものとなる。
【0050】
上述の実施形態では、リンク機構3を駆動する駆動装置の一例として、インフレーターのガス圧を利用した圧力シリンダー7を示したが、具体的な駆動装置の種類はこれに限定されない。例えば、油圧シリンダーや電動モーターなどを用いてリンク機構3を作動させるような構造を採用してもよい。また、ピストン32を押圧する圧力源36の代わりに、ピストン32を吸引する吸引装置を用いてもよい。