(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540336
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20190628BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20190628BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/74
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-152203(P2015-152203)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-32201(P2017-32201A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】島村 豊
(72)【発明者】
【氏名】瀬能 樹
(72)【発明者】
【氏名】菊池 将司
【審査官】
河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−126243(JP,A)
【文献】
特開平02−050038(JP,A)
【文献】
特開2014−173780(JP,A)
【文献】
特開2012−021735(JP,A)
【文献】
特開2004−150679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/79
F24F 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口より室内空気を吸込み室内熱交換器で調和された調和空気を前面下部にある吹出口より吹き出す送風ファンと、前記吹出口に設けられ前記吹出口から吹き出される前記調和空気の風向を上下に偏向する上下風向板とを有する本体ユニットと、
前記本体ユニットの側部に取付けられ一側面側にある補助吸込口より室内空気を吸込み吸込んだ室内空気を前面側にある補助吹出口より吹き出す補助送風ファンを有し前記補助吹出口より吹き出す室内空気の風向を上下左右方向に偏向可能なファンユニットと、
前記本体ユニットと前記ファンユニットを制御する制御部とを備えた空気調和機において、
前記空気調和機は、暖房運転を開始する前に前記上下風向板の向きが前記吹出口から吹き出される調和空気の吹出方向が水平方向または上方向になるようにした暖機運転を行い、
前記空気調和機は暖機運転中に前記ファンユニットの向きを前記補助吹出口から吹き出される室内空気の吹出方向が水平方向または上方向になるようにして、前記補助送風ファンを回転させることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記室内熱交換器の温度が所定の温度以上になった時、
前記空気調和機は前記補助送風ファンを回転させることを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機として、本体ユニットと本体ユニットの両側部に取付けられた1対のファンユニットを備えたものがある。本体ユニットの内部には、室内熱交換器と、送風ファンが配置されている。この送風ファンが回転することで、室内空気が本体ユニット内に吸込まれ、吸込まれた空気は室内熱交換器で冷媒と熱交換されて調和空気となって室内へ吹き出される。ファンユニットの内部には、補助送風ファンが配置されている。この補助送風ファンが回転することで、室内空気がファンユニット内に吸込まれ、吸込まれた室内空気を吹き出す。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
特許文献1に記載されている空気調和機は、暖房運転を開始する前に暖機運転を行う。この暖機運転は、本体ユニット内の室内熱交換器が冷えている状態で暖房運転を開始した時に冷風が吹き出されて、室内に居るユーザーに不快感を与えることを防ぐための運転である。暖機運転では、室内熱交換器に高温の冷媒を流して、室内熱交換器を暖める。室内熱交換器が設定温度に達するまで、本体ユニットの風向板は水平方向に向けられ、送風ファンは最小回転数で回転している。また、ファンユニットの補助送風ファンは停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−173780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、暖機運転では、室内熱交換器で暖められた暖気が低い風速で水平方向に吹き出されるため、暖房運転を開始するまでに天井付近に暖気が溜まる。この天井付近に溜まった暖気を、暖房運転を開始するまで有効利用できていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、暖房運転を開始する前に、天井付近に溜まった暖気を有効に利用して室内に居るユーザーの快適性を向上させることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明の空気調和機は、吸込口より室内空気を吸込み調和された調和空気を前面下部にある吹出口より吹き出す送風ファンと、吹出口に設けられ吹出口から吹き出される調和空気の風向を上下に偏向する上下風向板とを有する本体ユニットと、本体ユニットの側部に取付けられ一側面側にある補助吸込口より室内空気を吸込み吸込んだ室内空気を前面側にある補助吹出口より吹き出す補助送風ファンを有し補助吹出口より吹き出す室内空気の風向を上下左右方向に偏向可能なファンユニットと、本体ユニットと前記ファンユニットを制御する制御部とを備えた空気調和機において、暖房運転を開始する前に上下風向板の向きが吹出口から吹き出される調和空気の吹出方向が水平方向または上方向になるようにした暖機運転を行い、空気調和機は暖機運転中にファンユニットの向きを補助吹出口から吹き出される室内空気の吹出方向が水平方向または上方向になるようにして、補助送風ファンを回転させる。
【0008】
また、室内熱交換器の温度が所定の温度以上になった時、空気調和機は補助送風ファンを回転させる。
【発明の効果】
【0009】
以上のような空気調和機によれば、暖房運転を開始する前に天井付近に室内空気を送風して、天井付近に溜まった暖気を対流させて室内に居るユーザーの快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施例の室内機の外観を概略的に示す斜視図である。
【
図2】室内機の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】送風ファンの構成を概略的に示す室内機の垂直断面図である。
【
図5】本実施例の暖機運転時と暖房運転時の室内機の垂直断面図である。
【
図6】本実施例の暖機運転の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る空気調和機の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1と
図2と
図4に示すように、本実施例の室内機10は、直方体形状の本体ユニット20および1対のファンユニット30を備える。本体ユニット20の前面にはアウターパネル23が配置される。本体ユニット20の天面側と前面側には室内空気を取り込むための吸込口21が設けられる。前面側の吸込口21と対向する位置には前面パネル24が設けられ、この前面パネル24はアウターパネル23に覆われている。
図4に示すように、本体ユニット20の内部には、室内熱交換器25と、送風ファン27が配置される。送風ファン27が回転することで、吸込口21より室内空気は本体ユニット20内に吸込まれる。吸込まれた室内空気は室内熱交換器25で冷媒と熱交換され、調和空気が生成される。生成された調和空気は、本体ユニット20の前面下部にある吹出口22に設けられた上下風向板29a、29bで風向を偏向され、吹出口22より室内へ吹き出される。
【0013】
ファンユニット30について、
図1と
図2と
図3を基に説明する。ファンユニット30は、
図1に示すように、本体ユニット20の両側部にあるサイドファンカバー35内に収まるように配置される。ファンユニット30は、本体ユニット20に対して水平軸線41回りで回転可能となるように、サイドファンカバー35に軸支されている。
図2に示すように、ファンユニット30には一側面側に水平軸線41方向の外側から室内空気を吸込む補助吸込口31が配置され、この補助吸込口31から吸込まれた室内空気を室内空間に吹き出す補助吹出口32がファンユニット30の前面側に配置される。また、ファンユニット30は、室内空気を吸込み、吸込んだ室内空気を吹き出すための補助送風ファン33を備えている。補助送風ファン33はファンユニット30の内部に配置される。補助送風ファン33にはモータ34が接続され、このモータ34によって回転される。
【0014】
図3に示すように、本体ユニット20の内部には電装品ユニット26が配置されている。電装品ユニット26には、送風ファン27および補助送風ファン33を制御する制御部53と、吸込口21から吸込まれた室内空気の温度を測定する室内温度センサ51、室内空気の湿度を測定する湿度センサ52が搭載されている。また、
図2に示すように、電装品ユニット26の取付位置は、本体ユニット20の前面側に、電装品ユニット26の少なくとも一部が、室内熱交換器25に対向するように配置され、前面パネル24に覆われる。この電装品ユニット26は記憶部54を備える。この記憶部54には、第一設定温度と、第二設定温度と、第三設定温度が記憶されている。第一設定温度は、ユーザーが設定した室内の目標温度である。第二設定温度は、室内にいるユーザーに寒さを感じさせることなく天井付近に吹き出される調和空気を対流させるか否かの判断をするための室内熱交換器25の温度で、例えば、第一設定温度と同じ温度になった時の室内熱交換器25の温度である。第三設定温度は、室内にいるユーザーに寒さを感じさせないために、暖房運転を開始するか否かの判断をするための室内熱交換器25の温度で、第一設定温度に対応して自動的に設定される温度である。例えば、制御部53が第三設定温度を第一設定温度よりも5℃高い温度に設定する。なお、室内熱交換器25の温度は、
図3に示すように、室内熱交換器25の一側部に備えられた温度センサ55を用いて測定する。
【0015】
電装品ユニット26の取付位置が本体ユニット20の前面側に取付けられることにより、電装品ユニット26は、送風ファン27によって吸込口21から吸込まれた空気が流通する位置に配置されることができる。例えば、
図4に示すように、電装品ユニット26は吸込口21と室内熱交換器25の間に配置される。また、電装品ユニット26に搭載された室内温度センサ51および湿度センサ52は送風ファン27によって吸込口21から吸込まれた空気がそれらの周囲を流通することによって、室内の温度および湿度を測定することが出来る。
【0016】
次に、本体ユニット20およびファンユニット30の暖機運転時、暖房運転時の動作について説明する。
【0017】
暖機運転時は、室内熱交換器25に図示しない室外機内にある圧縮機で圧縮された高温高圧の冷媒が流入される。このとき、
図5(a)に示すように、吹出口22から吹き出される加熱されていない調和空気は上下風向板29a、29bで水平方向に風向が偏向され、送風ファン27が最小回転数で回転することで低い風速で吹き出される。また、補助送風ファン33は回転しない。これにより、室内に居るユーザーに調和空気を当てて寒さによる不快感を与えることを防止できる。また、ファンユニット30は、補助吹出口32を水平方向に向けている。これは、室内熱交換器25が徐々に暖められ、暖気が生成されて天井付近に溜まった時に、溜まった暖気を対流させるためである。室内熱交換器25の温度が第二設定温度に達した時、天井付近には暖気が溜まっているため、制御部53は、補助送風ファン33を天井付近に溜まった暖気を対流できる所定の回転数で回転させる。さらに、室内熱交換器25が暖められ、室内熱交換器25の温度が第三設定温度に達した時、制御部53はこの暖機運転を後述する暖房運転に切り替える。
【0018】
暖房運転時は、室内熱交換器25が空気に放熱する凝縮器として機能しており、
図5(b)に示すように、吹出口22から吹き出される調和空気である暖気は上下風向板29a、29bで風向が偏向され床面に向かって垂直下方に吹き出される。このとき補助吹出口32を垂直下方よりも前方に向くようにファンユニット30を回動し、補助送風ファン33を回転させることで補助吹出口32から吹き出される室内空気は、吹出口22から吹き出される暖気の吹出し方向(垂直下方)よりも前方に吹き出される。補助吹出口32から吹き出される室内空気の風向は吹出口22から吹き出される暖気の風向よりも若干上方に向けられているため、補助吹出口32より吹き出される室内空気で、吹出口22より吹き出される暖気を上から抑えることができ、暖気の上昇を防いで室内に居る人の足元を暖めることが出来る。冷房運転時と同様に、制御部53は、室内温度センサ51で測定した室内温度とユーザーが設定した第一設定温度との温度差に応じて、送風ファン27と補助送風ファン33の回転数を制御する。風量自動モードの場合、温度差が大きい場合は送風ファン27と補助送風ファン33の回転数を大きくなるように制御し、温度差が小さい場合は送風ファン27と補助送風ファン33の回転数を小さくなるように制御する。
【0019】
次に、本実施例の空気調和機が暖機運転中に天井付近に溜まった暖気を対流させる制御について、
図6に示す制御フローチャートを基に説明する。
【0020】
最初に、室内機10が図示しないリモコンから送信された暖房運転を開始する信号を図示しないリモコン受信部で受信する(S1)。
【0021】
次に、制御部53は、上述の暖機運転を開始するよう指示する(S2)。具体的には、制御部53は、上述したように、上下風向板29a、29bを水平にすることで吹出口22から水平方向に調和空気を吹き出し、そして、ファンユニット30を回動させることで補助吹出口32を水平方向に向ける。さらに、制御部53は、送風ファン27の回転数を予め決められている最小回転数に制御すると共に、補助送風ファン33は回転しないよう制御する。また、室内熱交換器25に図示しない室外機内にある圧縮機で圧縮された高温高圧の冷媒が流入されることで、室内熱交換器25は徐々に暖められる。これにより、暖められた室内熱交換器25によって、徐々に暖気が生成されて天井付近に溜まっていく。
【0022】
そして、制御部53は、室内熱交換器25に備えられた温度センサ55を用いて、室内熱交換器25の温度を計測する(S3)。制御部53は、計測した温度が第二設定温度以上であるか否かを判断する(S4)。計測した温度が第二設定温度未満であった場合(S4−No)、S3に戻る。計測した温度が第二設定温度以上であった場合(S4−Yes)制御部53は補助送風ファン33を所定の回転数で回転するよう制御する(S5)。補助送風ファン33が室内空気を天井付近に送風することで、天井付近に溜まった暖気を対流させて室内に居るユーザーの快適性を向上させることができる。
【0023】
そして、制御部53は、室内熱交換器25に備えられた温度センサ55を用いて、室内熱交換器25の温度を計測する(S6)。制御部53は、計測した温度が第三設定温度以上であるか否かを判断する(S7)。計測した温度が第三設定温度未満であった場合(S7−No)、S6に戻る。計測した温度が第三設定温度以上であった場合(S7−Yes)、制御部53は暖房運転を開始するよう指示する(S8)。
【0024】
以上のような空気調和機によれば、暖機運転によって天井付近に溜まった暖気を補助送風ファンで対流させることで、暖房運転を開始する前に、溜まった暖気を室内に居るユーザーに少しでも早く暖かさを感じてもらうことができる。なお、本実施例では、暖機運転中に上下風向板29a、29bおよびファンユニット30を水平方向に向けているが、本発明はこれに限定したものではなく、上下風向板29a、29bおよびファンユニット30を床面に向けなければ良く、例えば、天井などの上方に向けても良い。また、本実施例では、室内熱交換器25の温度が所定の温度、本実施例でいう第二設定温度以上になった時に補助送風ファン33を回転させているが、本発明はこれに限定したものではなく、室内温度センサ51で測定した本体ユニット20に吸込まれた空気の温度が天井付近に暖気が溜まっていると見なされる特定の温度以上になった時や、暖機運転を開始してから天井付近に暖気が溜まっていると見なされる所定時間を経過した時など適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 室内機
20 本体ユニット
21 吸込口
22 吹出口
25 室内熱交換器
26 電装品ユニット
27 送風ファン
28 モータ
30 ファンユニット
31 補助吸込口
32 補助吹出口
33 補助送風ファン
34 モータ
35 サイドファンカバー
53 制御部