(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分と、(B)飽和脂肪酸と、(C)不飽和脂肪酸と、(D)少なくとも2個以上のカルボキシル基および/またはその無水物を有するカルボキシル基変性ジエン重合体とを含有する樹脂組成物であって、
前記(B)飽和脂肪酸と前記(C)不飽和脂肪酸と前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の合計含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して100質量部〜200質量部であり、
前記樹脂組成物の中和度が80モル%超であることを特徴とするゴルフボール用樹脂組成物。
前記(B)飽和脂肪酸が、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸およびモンタン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
前記(C)不飽和脂肪酸が、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸およびアラキドン酸よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
(D)前記カルボキシル基変性ジエン重合体は、ジエン重合体にジカルボン酸および/またはその無水物が付加されたものである請求項1〜5のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
(D)前記カルボキシル基変性ジエン重合体は、ジエン重合体1分子当たりのジカルボン酸および/またはその無水物の平均付加数が、2〜6個である請求項6に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
前記ジカルボン酸および/またはその無水物は、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸よりなる群から選択される少なくとも1種、および/または、その無水物である請求項6または7に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
(D)前記カルボキシル基変性ジエン重合体の含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して、1質量部〜30質量部である請求項1〜8のいずれか一項に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
前記(E)両性界面活性剤が、ベタイン型両性界面活性剤、アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩型両性界面活性剤、アルキルアミンオキシド型両性界面活性剤、β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤およびホスホベタイン型両性界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項10に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
前記(E)両性界面活性剤の含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して、1質量部〜20質量部である請求項10または11に記載のゴルフボール用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分と、(B)飽和脂肪酸と、(C)不飽和脂肪酸と、(D)少なくとも2個以上のカルボキシル基および/またはその無水物を有するカルボキシル基変性ジエン重合体とを含有するゴルフボール用樹脂組成物であって、前記(B)飽和脂肪酸と(C)不飽和脂肪酸と(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の合計含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して100質量部〜200質量部であり、前記樹脂組成物中の中和度が80モル%超であることを特徴とする。
【0016】
[(A)樹脂成分]
前記(a−1)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。また、前記(a−2)成分としては、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体中のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
【0017】
前記(a−3)成分は、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体であって、そのカルボキシル基が中和されていない非イオン性のものである。前記(a−4)成分としては、オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸と、α,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部を金属イオンで中和したアイオノマー樹脂を挙げることができる。
【0018】
なお、本発明において、「(a−1)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体」を単に「二元共重合体」と称し、「(a−2)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体」を単に「三元共重合体」と称し、「(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
【0019】
前記オレフィンとしては、炭素数が2〜8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β−不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
【0020】
前記(a−1)二元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸との二元共重合体が好ましく、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン−(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記(a−3)三元共重合体としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体が好ましい。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0021】
前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、9質量%以上が特に好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。
【0022】
前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、5g/10min以上が好ましく、より好ましくは10g/10min以上、さらに好ましくは15g/10min以上であり、1700g/10min以下が好ましく、より好ましくは1500g/10min以下、さらに好ましくは1300g/10min以下である。前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が5g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、構成部材の成形が容易になる。また、前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が1700g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0023】
前記(a−1)二元共重合体の具体例を商品名で例示すると、例えば、三井・デュポン・ポリケミカル社から商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルN1560」、「ニュクレルN2060」、「ニュクレルN1108C」、「ニュクレルN0908C」、「ニュクレルN1050H」、「ニュクレルN2050H」、「ニュクレルN1110H」、「ニュクレルN0200H」)」で市販されているエチレン−メタクリル酸共重合体、ダウケミカル社から商品名「プリマコール(PRIMACOR)(登録商標)5980I」で市販されているエチレン−アクリル酸共重合体などを挙げることができる。
【0024】
前記(a−3)三元共重合体の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAN4318」、「ニュクレルAN4319」)」、デュポン社から市販されている商品名「ニュクレル(NUCREL)(登録商標)(例えば、「ニュクレルAE」)」、ダウケミカル社から市販されている商品名「プリマコール(PRIMACOR)(登録商標)(例えば、「PRIMACOR AT310」、「PRIMACOR AT320」)」などを挙げることができる。前記(a−1)二元共重合体または(a−3)三元共重合体は、単独または2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0025】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、4質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましく、9質量%以上が特に好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が特に好ましい。炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、4質量%以上であれば、得られる構成部材を所望の硬度にしやすくなるからである。また、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率が、30質量%以下であれば、得られる構成部材の硬度が高くなり過ぎず、得られるゴルフボールの耐久性と打球感が良好になるからである。
【0026】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上がより好ましく、25モル%以上がさらに好ましく、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になる。一方、中和度が90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
【0027】
二元系アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0028】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0029】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)など」が挙げられる。
【0030】
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
【0031】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
【0032】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0033】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性は、140MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、550MPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性が低すぎると、ゴルフボールのスピン量が増加して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
【0034】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、例えば、薄い層の成形が可能となる。また、前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0035】
前記(a−2)二元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、より好ましくは55以上、さらに好ましくは60以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは73以下、さらに好ましくは70以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で50以上であれば、得られる構成部材が高硬度となる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で75以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0036】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0037】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは25モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは70モル%以下である。中和度が15モル%以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物を用いて得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0038】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0039】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポン・ポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。さらにデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)、HPF1000(Mg)、HPF2000(Mg)など)」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは11MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは97MPa以下、さらに好ましくは95MPa以下である。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性が低すぎると、ゴルフボールのスピン量が増加して飛距離が低下する傾向があり、曲げ剛性が高すぎると、ゴルフボールの耐久性が低下する場合がある。
【0041】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、20g/10min以下が好ましく、より好ましくは15g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性が良好となり、薄い層の成形が容易になる。また、前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が20g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0042】
前記(a−4)三元系アイオノマー樹脂のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。前記スラブ硬度が、ショアD硬度で20以上であれば、得られる構成部材が柔らなく成り過ぎず、ゴルフボールの反発性が良好になる。また、前記スラブ硬度が、ショアD硬度で70以下であれば、得られる構成部材が硬くなりすぎず、ゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0043】
前記(A)樹脂成分としては、(a−1)二元共重合体、(a−2)二元系アイオノマー樹脂、(a−3)三元共重合体、または(a−4)三元系アイオノマー樹脂を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
[(B)飽和脂肪酸]
前記(B)飽和脂肪酸は、炭化水素部分に不飽和結合を有さない脂肪族モノカルボン酸である。(B)飽和脂肪酸は、基材樹脂である(A)樹脂成分のポリオレフィン鎖部位と構造が類似するため、ポリオレフィン鎖部位との親和性が高い。そのため、(B)飽和脂肪酸は、主に(A)樹脂成分のマトリックス中に分散し、樹脂の曲げ剛性を向上するものと考えられる。飽和脂肪酸は、直鎖飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸のいずれであってもよいが、基材樹脂である(A)樹脂成分のポリオレフィン鎖部位との親和性を高くするために、直鎖飽和脂肪酸が好ましい。
【0045】
前記(B)飽和脂肪酸は、特に限定されないが、炭素数が4以上の飽和脂肪酸であることが好ましく、12以上がより好ましく、16以上がさらに好ましく、炭素数が30以下の飽和脂肪酸であることが好ましく、28以下がより好ましく、26以下がさらに好ましい。
【0046】
前記(B)飽和脂肪酸の具体例(IUPAC名)としては、ブタン酸(C4)、ペンタン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ウンデカン酸(C11)、ドデカン酸(C12)、トリデカン酸(C13)、テトラデカン酸(C14)、ペンタデカン酸(C15)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、イコサン酸(C20)、ヘンイコサン酸(C21)、ドコサン酸(C22)、トリコサン酸(C23)、テトラコサン酸(C24)、ペンタコサン酸(C25)、ヘキサコサン酸(C26)、ヘプタコサン酸(C27)、オクタコサン酸(C28)、ノナコサン酸(C29)、トリアコンタン酸(C30)などを挙げることができる。
【0047】
前記(B)飽和脂肪酸の具体例(慣用名)としては、例えば、酪酸(C4)、吉草酸(C5)、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、マルガリン酸(C17)、ステアリン酸(C18)、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、リグノセリン酸(C24)、セロチン酸(C26)、モンタン酸(C28)、メリシン酸(C30)などを挙げることができる。
【0048】
前記(B)飽和脂肪酸は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記(B)飽和脂肪酸として好ましいのは、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、または、モンタン酸である。
【0049】
前記(B)飽和脂肪酸の含有量は(A)樹脂成分100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、100質量部以下がさらに好ましい。(B)成分の含有量が10質量部以上であれば、樹脂組成物の曲げ剛性が向上し、流動性および柔軟性が良好となる。(B)成分の含有量が200質量部以下であれば、低分子量成分の増加にともなうゴルフボールの耐久性の低下を抑制できる。
【0050】
前記(B)飽和脂肪酸は、中和塩であってもよい。飽和脂肪酸塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0051】
[(C)不飽和脂肪酸]
前記(C)不飽和脂肪酸は、炭化水素鎖に不飽和結合を少なくとも一つ有する脂肪族モノカルボン酸である。(C)不飽和脂肪酸は、炭化水素鎖部位の不飽和結合で、分子鎖が屈曲し、例えば、「V」字状に折れ曲がった形をとる。そのため、(A)樹脂成分のポリオレフィン鎖部位との親和性が(B)飽和脂肪酸よりも小さい。(C)不飽和脂肪酸は、主に(A)樹脂成分のイオン会合体に取り込まれ、樹脂の反発弾性を向上するものと考えられる。前記不飽和結合としては、炭素炭素二重結合および炭素炭素三重結合が挙げられるが、分子鎖が屈曲しやすいという観点から、炭素炭素二重結合が好ましい。また、炭素炭素二重結合としては、シス−二重結合と、トランス二重結合が挙げられ、シス−二重結合がより好ましい。
【0052】
前記(C)不飽和脂肪酸としては、直鎖不飽和脂肪酸が好ましい。前記直鎖不飽和脂肪酸の炭素数は4以上が好ましく、より好ましくは12以上、さらに好ましくは16以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは28以下、さらに好ましくは26以下である。
【0053】
前記(C)不飽和脂肪酸が有する炭素炭素二重結合の数は、1つ以上であり、6つ以下が好ましく、5つ以下がより好ましく、4つ以下がさらに好ましい。前記(C)不飽和脂肪酸が炭素数12以上の直鎖不飽和脂肪酸の場合、不飽和脂肪酸末端に位置する炭素から数えて3つ目以降の炭素に最初の炭素炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸であることが好ましく、5つ目以降がより好ましく、6つ目以降がさらに好ましい。
【0054】
前記(C)不飽和脂肪酸の具体例(IUPAC名)としては、ブテン酸(C4)、ペンテン酸(C5)、ヘキセン酸(C6)、ヘプテン酸(C7)、オクテン酸(C8)、ノネン酸(C9)、デセン酸(C10)、ウンデセン酸(C11)、ドデセン酸(C12)、トリデセン酸(C13)、テトラデセン酸(C14)、ペンタデセン酸(C15)、ヘキサデセン酸(C16)、ヘプタデセン酸(C17)、オクタデセン酸(C18)、ノナデセン酸(C19)、イコセン酸(C20)、ヘンイコセン酸(C21)、ドコセン酸(C22)、トリコセン酸(C23)、テトラコセン酸(C24)、ペンタコセン酸(C25)、ヘキサコセン酸(C26)、ヘプタコセン酸(C27)、オクタコセン酸(C28)、ノナコセン酸(C29)、トリアコンテン酸(C30)などを挙げることができる。
【0055】
前記(C)不飽和脂肪酸の具体例(慣用名)としては、例えば、ミリストレイン酸(C14、モノ不飽和脂肪酸、n−5)、パルミトレイン酸(C16、モノ不飽和脂肪酸、n−7)、ステアリドン酸(C18、テトラ不飽和脂肪酸、n−3)、バクセン酸(C18、モノ不飽和脂肪酸、n−7)、オレイン酸(C18、モノ不飽和脂肪酸、n−9)、エライジン酸(C18、モノ不飽和脂肪酸、n−9)、リノール酸(C18、ジ不飽和脂肪酸、n−6)、α−リノレン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸、n−3)、γ−リノレン酸(C18、トリ不飽和脂肪酸、n−6)、ガドレイン酸(C20、モノ不飽和脂肪酸、n−11)、エイコセン酸(C20、モノ不飽和脂肪酸、n−11)、エイコサジエン酸(C20、ジ不飽和脂肪酸、n−6)、アラキドン酸(C20、テトラ不飽和脂肪酸、n−6)、エイコサペンタエン酸(C20、ペンタ不飽和脂肪酸、n−3)、エルカ酸(C22、モノ不飽和脂肪酸、n−9)、ドコサヘキサエン酸(C22、ヘキサ不飽和脂肪酸、n−3)、ネルボン酸(C24、モノ不飽和脂肪酸、n−9)などを挙げることができる。なお、化合物名の後の括弧内に記載したn−5などは、不飽和脂肪酸末端に位置する炭素から数えて最初の炭素炭素二重結合を有する炭素の位置を示している。
【0056】
前記(C)不飽和脂肪酸は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記(C)不飽和脂肪酸として好ましいのは、パルミトレイン酸(C16、シス−9−モノ不飽和脂肪酸、n−7)、オレイン酸(C18、シス−9−モノ不飽和脂肪酸、n−9)、リノール酸(C18、シス−9−シス−12−ジ不飽和脂肪酸、n−6)、または、アラキドン酸(C20、5,8,11,14−テトラ不飽和脂肪酸、n−6)である。
【0057】
前記(C)不飽和脂肪酸は(A)樹脂成分100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、70質量部以上がさらに好ましく、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましい。(C)成分の含有量が30質量部以上であれば、樹脂組成物の反発弾性が向上し、流動性、および柔軟性が良好となる。(C)成分の含有量が200質量部以下であれば、低分子量成分の増加にともなうゴルフボールの耐久性の低下を抑制できる。
【0058】
前記(C)不飽和脂肪酸は、中和塩であってもよい。不飽和脂肪酸塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0059】
[(D)少なくとも2個以上のカルボキシル基および/またはその無水物を有するカルボキシル基変性ジエン重合体(単に、「カルボキシル基変性ジエン重合体」と称する場合がある)]
前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体は、ジエン重合体を主骨格とし、カルボキシル基を少なくとも2個以上有するものであれば特に限定されない。少なくとも2個以上のカルボキシル基が無水物を形成していてもよい。前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体は、重合鎖に複数の二重結合を有し、(C)不飽和脂肪酸と類似の構造であるため、(C)不飽和脂肪酸と同様の効果により(A)樹脂成分の反発弾性を向上させる。さらに、前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体は、カルボキシル基を複数有しているので、隣り合ったイオン会合体と結合し、(A)樹脂成分の破断応力および破断ひずみが大きくなり、伸びに強い樹脂となる。
【0060】
(D)前記カルボキシル基変性ジエン重合体は、ジエン重合体にジカルボン酸および/またはその無水物が付加されたものであることが好ましい。前記ジエン重合体を構成するジエン単量体としては、炭素炭素二重結合を2つ有する炭化水素やその誘導体(例えば、水素原子がハロゲンなどで置換されたもの)を挙げることができる。前記ジエン単量体の炭素数は、特に限定されないが、4以上が好ましく、10以下が好ましく、より好ましくは9以下、さらに好ましくは8以下、さらに好ましくは7以下、特に好ましくは6以下である。前記ジエン単量体は、共役ジエン、非共役ジエンのいずれであってもよい。また、直鎖構造、分岐構造のいずれであってもよい。
【0061】
前記共役ジエンの具体例としては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、2,4−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、2,4−オクタジエン、3,5−オクタジエン、1,3−ノナンジエン、2,4−ノナンジエン、3,5−ノナンジエン、1,3−デカジエン、2,4−デカジエン、3,5−デカジエン、4,6−デカジエンなどの直鎖型ジエン;これらの直鎖型ジエンの少なくとも1つの水素原子がアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、へプチル、オクチル、ノナチル、フェニルアルキルなど)で置換された分岐ジエン;これらのジエンの直鎖および/または分岐鎖における少なくとも1つの水素原子がアルキル基以外の置換基(例えば、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、フェニルなど)で置換されたジエン誘導体;などを挙げることができる。
【0062】
前記非共役ジエンの具体例としては、1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,4−ノナンジエン、1,5−ノナンジエン、1,6−ノナンジエン、1,7−ノナンジエン、1,8−ノナンジエン、1,4−デカジエン、1,5−デカジエン、1,6−デカジエン、1,7−デカジエン、1,8−デカジエン、1,9−デカジエンなどの直鎖型ジエン;これらの直鎖型ジエンの少なくとも1つの水素原子がアルキル基(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、へキシル、へプチル、オクチル、ノナチル、フェニルアルキルなど)で置換された分岐型ジエン;これらのジエンの直鎖および/または分岐鎖における少なくとも1つの水素原子がアルキル基以外の置換基(例えば、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、フェニルなど)で置換されたジエン誘導体;などを挙げることができる。
【0063】
これらのジエン単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、樹脂組成物の反発弾性がより向上する点から、好ましくは共役ジエンであり、より好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)、クロロプレン(2−クロロ−1,3−ブタジエン)、1,3−ペンタジエンであり、さらに好ましくは1,3−ブタジエンである。
【0064】
前記ジエン重合体は、前記ジエン単量体のほか、当該ジエン単量体と共重合可能なほかの単量体を含有してもよい。前記ほかの単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、スチレン、メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ブチルスチレンなどが挙げられる。これらのほかの単量体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記ほかの単量体の含有量は、ジエン重合体を構成する単量体の総量に対して、15モル%以下が好ましく、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下、最も好ましくは0%である。
【0065】
前記ジエン重合体の具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、ブチルゴム(イソブチレン−イソプレン共重合体)、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴムなどが挙げられる。前記ジエン重合体は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
ジエン重合体に付加するジカルボン酸は、無水物であってもよい。無水ジカルボン酸は、構造上で接近している2つのカルボキシル基が分子内脱水縮合反応により生成した環状の化合物である。
【0067】
ジエン重合体に付加するジカルボン酸の炭素数は、特に限定されないが、有効な変性ジエン重合体を提供しやすい点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、10以下が好ましく、9以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。また、前記ジカルボン酸は、飽和ジカルボン酸、または、不飽和ジカルボン酸のいずれであってもよい。
【0068】
前記飽和ジカルボン酸の具体例(IUPAC名)としては、エタン二酸(C2)、プロパン二酸(C3)、ブタン二酸(C4)、ペンタン二酸(C5)、ヘキサン二酸(C6)、ヘプタン二酸(C7)、オクタン二酸(C8)、ノナン二酸(C9)、デカン二酸(C10)などを挙げることができる。無水物としては、前記飽和ジカルボン酸の無水物を挙げることができる。
【0069】
前記飽和ジカルボン酸の具体例(慣用名)としては、シュウ酸(C2)、マロン酸(C3)、コハク酸(C4)、グルタル酸(C5)、アジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、セバシン酸(C10)などの飽和脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。無水物としては、前記飽和ジカルボン酸の無水物を挙げることができる。
【0070】
前記不飽和ジカルボン酸の具体例(IUPAC名)としては、ブテン二酸(C4)、ペンテン二酸(C5)、ヘキセン二酸(C6)、ヘプテン二酸(C7)、オクテン二酸(C8)、ノネン二酸(C9)、デセン二酸(C10)などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;ベンゼン二酸(C8)、トルエン二酸(C9)、エチルベンゼン二酸(C10)などの芳香族ジカルボン酸;などを挙げることができる。無水物としては、前記不飽和ジカルボン酸の無水物を挙げることができる。
【0071】
前記不飽和ジカルボン酸の具体例(慣用名)としては、フマル酸(C4)、マレイン酸(C4)、イタコン酸(C5)、フタル酸(C8)、イソフタル酸(C8)、テレフタル酸(C8)などを挙げることができる。無水物としては、前記不飽和ジカルボン酸の無水物を挙げることができる。
【0072】
ジエン重合体に付加するジカルボン酸および/またはその無水物は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。これらの中でも、樹脂組成物の破断ひずみ、破断応力の両方がより向上する点から、ジカルボン酸としては、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸が好ましく、マレイン酸がさらに好ましい。また、ジカルボン酸の無水物としては、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物、または、アジピン酸無水物が好ましく、マレイン酸無水物がさらに好ましい。
【0073】
前記ジカルボン酸は、中和されたジカルボン酸塩であってもよい。ジカルボン酸塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの2価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0074】
(D)前記カルボキシル基変性ジエン重合体は、ジエン重合体1分子当たりのジカルボン酸および/またはその無水物の平均付加数が、2個以上が好ましく、より好ましくは3個以上であり、6個以下が好ましく、より好ましくは5個以下である。平均付加数が前記範囲内であれば、樹脂組成物の破断ひずみ、破断応力の両方がより向上し、ゴルフボールの耐久性がより向上する。
【0075】
前記ジカルボン酸および/またはその無水物が、ジエン重合体に付加する位置は、特に限定されず、例えば、主鎖の片末端、主鎖の両末端、側鎖が挙げられる。ジカルボン酸および/またはその無水物が、ジエン重合体に複数付加する場合、前記付加位置が混在していてもよい。また、前記ジカルボン酸および/またはその無水物は、ジエン重合体の主鎖末端および/または側鎖に直接結合することが好ましい。
【0076】
前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の具体例としては、例えば、マレイン酸変性ポリブタジエン、マレイン酸変性ポリイソプレン、マレイン酸変性ポリクロロプレン、マレイン酸変性ブチルゴム、マレイン酸変性スチレンブタジエンゴムなどを挙げることができる。本発明では、(D)カルボキシル基変性ジエン重合体として、マレイン酸変性ポリブタジエンを使用することが好ましい。マレイン酸変性ポリブタジエンの構造としては、例えば、ポリブタジエンに無水マレイン酸が付加されて生成する下記のような構造が例示できる。
【化1】
「式中、m、nはそれぞれ1,4−結合による繰り返し単位の数を表す。」
【0077】
前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の数平均分子量は、特に限定されないが、2,000以上が好ましく、より好ましく2,500以上、さらに好ましくは3,000以上であり、5,000以下が好ましく、より好ましくは4,500以下、さらに好ましくは4,000以下である。数平均分子量が前記範囲内であれば、樹脂組成物の破断ひずみ、破断応力の両方はより向上する。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフラン、カラムとして有機溶媒系GPC用カラム(例えば、昭和電工社製「Shodex(登録商標) KFシリーズ」など)を用いて測定すればよい。
【0078】
前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の酸価は、25mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは35mgKOH/g以上、さらに好ましくは45mgKOH/g以上、特に好ましくは60mgKOH/g以上であり、652mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは283mgKOH/g以下、さらに好ましくは221mgKOH/g以下である。
【0079】
前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の具体例としては、エボニック社製のPOLYVEST(登録商標)MAシリーズ(POLYVEST MA75(酸価:70〜90mgKOH/g、数平均分子量:約3,000)、POLYVEST EP MA120(酸価:約130mgKOH/g、数平均分子量:約3,200)など)、クレイバレー社製のRicon(登録商標)MAシリーズ(Ricon 130MA8(酸価:46mgKOH/g、数平均分子量:約2,700、平均付加数:2個)、Ricon 130MA13(酸価:74mgKOH/g、数平均分子量:約2,900、平均付加数:4個)、Ricon 130MA20(酸価:120mgKOH/g、数平均分子量:約3,100、平均付加数:6個)、Ricon 131MA5(酸価:29mgKOH/g、数平均分子量:約4,700、平均付加数:2個)、Ricon 131MA10(酸価:57mgKOH/g、数平均分子量:約5000、平均付加数:5個)など)などが挙げられる。
【0080】
前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の含有量は、特に限定されないが、(A)樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。(D)成分の含有量が1質量部以上であれば、樹脂組成物の破断ひずみ、破断応力の両方が向上し、ゴルフボールの耐久性が良好となり、(D)成分の含有量が30質量部以下であれば、流動性が高く、成形性の良い材料が得られる。
【0081】
前記ゴルフボール用樹脂組成物中における前記(B)飽和脂肪酸と(C)不飽和脂肪酸と(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の合計含有量は、(A)樹脂成分100質量部に対して、100質量部〜200質量部である。前記合計含有量は、(A)樹脂成分100質量部に対して、105質量部以上が好ましく、より好ましくは110質量部以上であり、190質量部以下が好ましく、より好ましくは180質量部以下、さらに好ましくは160質量部以下である。前記合計含有量が100質量部以上であれば、反発弾性と曲げ剛性の両方が向上し、流動性、柔軟性に優れる材料が得られる。また、前記合計含有量が200質量部以下であれば、低分子量成分の増加にともなうゴルフボールの耐久性の低下を抑制できる。
【0082】
前記ゴルフボール用樹脂組成物中における前記(B)飽和脂肪酸と、(C)不飽和脂肪酸と(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の和との質量比率[(B)/{(C)+(D)}]は、10/90以上が好ましく、より好ましくは15/85以上、さらに好ましくは20/80以上であり、90/10以下が好ましく、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下である。10/90以上であれば樹脂組成物の反発弾性と曲げ剛性の両方が向上し、流動性、柔軟性に優れる材料が得られ、90/10以下であれば柔軟性に優れる樹脂組成物となる。
【0083】
[(E)両性界面活性剤]
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、さらに(E)両性界面活性剤を含有してもよい。(E)両性界面活性剤は、アイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれて、イオン会合体を微分散化してエチレン鎖の結晶化を阻害したり、イオン会合体による主鎖の拘束を弱めたりすると考えられる。これらの作用により、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、分子鎖の運動性が高くなり、柔軟性を維持したまま反発性が高くなる。
【0084】
前記(E)両性界面活性剤は、分子内にカチオン性部位とアニオン性部位とを含有し、水にとけて表面張力を低下させる作用を有するものであれば特に限定されない。両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型、アミドベタイン型、イミダゾリウムベタイン型、アルキルスルホベタイン型、アミドスルホベタイン型などのベタイン型両性界面活性剤;アミドアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルアミノ脂肪酸塩;アルキルアミンオキシド;β−アラニン型両性界面活性剤、グリシン型両性界面活性剤;スルホベタイン型両性界面活性剤;ホスホベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。(E)両性界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0085】
前記(E)両性界面活性剤の具体例としては、ジメチルラウリルベタイン、オレイルベタイン、ジメチルオレイルベタイン、ジメチルステアリルベタイン、ステアリルジヒドロキシメチルベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジヒドロキシメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ミリスチルジヒドロキシメチルベタイン、ベヘニルジヒドロキシメチルベタイン、パルミチルジヒドロキシエチルベタイン、オレイルジヒドロキシメチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドアルキルベタイン、2−アルキル−N−カルボキシアルキルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドアルキルヒドロキシスルホベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドジアルキルヒドロキシアルキルスルホベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸塩、N−アルキル−β−イミノジプロピオン酸塩、アルキルジアミノアルキルグリシン、アルキルポリアミノアルキルグリシン、アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム、N,N−ジメチルオクチルアミンオキサイド、N,N−ジメチルラウリルアミンオキサイド、N,N−ジメチルステアリルアミンオキサイドなどを挙げることができる。
【0086】
前記(E)両性界面活性剤の含有量は、(A)樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましく、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下がさらに好ましい。(E)両性界面活性剤の含有量が上記範囲内であれば、界面活性剤分子がアイオノマー樹脂のイオン会合体に取り込まれやすくなり、アイオノマー樹脂の分子鎖の運動性が高くなり、柔軟性を維持したまま反発性が高くなるからである。
【0087】
[(F)金属化合物]
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、さらに(F)金属化合物を含有してもよい。(F)金属化合物は、ゴルフボール用樹脂組成物の未中和のカルボキシル基を中和するために必要に応じて添加される。前記(F)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。これらの(F)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
[ゴルフボール用樹脂組成物]
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、前記樹脂組成物の中和度が80モル%超である。前記中和度は、85モル%以上が好ましく、より好ましくは90モル%以上であり、160モル%以下が好ましく、より好ましくは150モル%以下、さらに好ましくは140モル%以下である。前記中和度が80モル%超であれば、イオン会合体の量が多くなり、ゴルフボール用樹脂組成物の反発性がより向上し、160モル%以下であれば、ゴルフボール用樹脂組成物の流動性がより良好となる。なお、前記ゴルフボール用樹脂組成物の中和度は、下記式で定義される。
【0089】
【化2】
[式中、Σ(陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数)は、(A)成分の陽イオン成分のモル数と陽イオン成分の価数との積、(B)成分の陽イオン成分のモル数と陽イオン成分の価数との積、(C)成分の陽イオン成分のモル数と陽イオン成分の価数との積、および、(D)成分の陽イオン成分のモル数と陽イオン成分の価数との積の合計である。なお、ゴルフボール用樹脂組成物が(E)成分および/または(F)成分を含有する場合、これらの成分が有する陽イオン形成基又は陽イオン成分のモル数と陽イオン形成基又は陽イオン成分の価数との積が加算される。
Σ(陰イオン成分のモル数×陰イオン成分の価数)は、(A)成分のカルボキシル基のモル数、(B)成分のカルボキシル基のモル数、(C)成分のカルボキシル基のモル数、および(D)成分のカルボキシル基のモル数の合計である。なお、ゴルフボール用樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分が、有する陰イオン形成基のモル数と陰イオン形成基の価数との積が加算される。]
【0090】
なお、前記式において、陽イオン成分、陽イオン形成基、金属成分、カルボキシル基及び陰イオン形成基には、イオン化していない前駆体を含めるものとする。陽イオン成分量、陽イオン形成基量、陰イオン形成基量は、例えば、中和滴定により求めることができる。
【0091】
例えば、ゴルフボール用樹脂組成物が、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分を含有する場合、Σ(陽イオン成分のモル数×陽イオン成分の価数)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が有する陽イオン成分のモル数とその陽イオン成分の価数との積、および、(E)成分および(F)成分が有する陽イオン形成基又は陽イオン成分のモル数とその陽イオン形成基又はその陽イオン成分の価数との積の合計であり、Σ(陰イオン成分のモル数×陰イオン成分の価数)は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分が有するカルボキシル基の総モル数、および(E)成分が有する陰イオンのモル数とその陰イオンの価数との積の合計である。
【0092】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、基材樹脂が(A)樹脂成分のみからなることが好ましいが、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の基材樹脂として他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有しても良い。前記その他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂を含有する場合、全ての基材樹脂の含有量に対して(A)樹脂成分の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0093】
前記他の熱可塑性エラストマーの具体例としては、例えばアルケマ(株)から商品名「ペバックス(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(例えば、「エラストランXNY85A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(例えば、「ラバロンT3221C」)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマー等が挙げられる。
【0094】
前記ゴルフボール用樹脂組成物は、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料などの顔料成分、重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、ゴルフボールの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0095】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、得られるゴルフボール構成部材に隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるゴルフボールの耐久性が低下する場合があるからである。
【0096】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、(A)樹脂成分、(B)飽和脂肪酸、(C)不飽和脂肪酸および(D)カルボキシル基変性ジエン重合体および必要に応じて(E)両性界面活性剤、(F)金属化合物並びにその他の添加剤などを、溶融混合することにより得られる。溶融混合は、ニーダー、押出機(一軸押出機、二軸押出機、二軸一軸押出機など)を使用することができる。
【0097】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)は、0.01g/10min以上が好ましく、0.05g/10min以上がより好ましく、0.1g/10min以上がさらに好ましく、1.0g/10min以上が特に好ましく、3.0g/10min以上が最も好ましい。また、本発明のゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重)は、100g/10min以下が好ましく、80g/10min以下がより好ましく、50g/10min以下がさらに好ましい。ゴルフボール用樹脂組成物のメルトフローレイトが、上記範囲内であれば、ゴルフボール構成部材への成形性が良好である。
【0098】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、25以上がより好ましく、30以上がさらに好ましく、80以下が好ましく、77以下がより好ましく、75以下がさらに好ましい。ショアD硬度で20以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。一方、ショアD硬度で80以下のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、打球感に優れるゴルフボールが得られる。ここで、ゴルフボール用樹脂組成物の硬度とは、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度であり、後述する測定方法により測定する。
【0099】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の曲げ剛性は、70MPa(714kgf/cm
2)以上が好ましく、90MPa(918kgf/cm
2)以上がより好ましく、100MPa(1020kgf/cm
2)以上がさらに好ましく、500MPa(5100kgf/cm
2)以下が好ましく、400MPa(4080kgf/cm
2)以下がより好ましく、300MPa(3060kgf/cm
2)以下がさらに好ましい。曲げ剛性が70MPa(714kgf/cm
2)以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。また、曲げ剛性が500MPa(5100kgf/cm
2)以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。
【0100】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の反発弾性は、40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上が最も好ましい。反発弾性が、40%以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、反発性(飛距離)に優れるゴルフボールが得られる。
【0101】
前記曲げ剛性および反発弾性は、ゴルフボール用樹脂組成物をシート状に成形して測定した曲げ剛性および反発弾性であり、後述する測定方法により測定する。
【0102】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の破断応力は、6MPa以上が好ましく、8MPa以上がより好ましく、9MPa以上がさらに好ましく、10MPa以上が特に好ましく、50MPa以下が好ましく、40MPa以下がより好ましく、30MPa以下がさらに好ましく、25MPa以下が特に好ましい。破断応力が6MPa以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、得られるゴルフボールの耐久性が向上する。また、破断応力が50MPa以下であれば、得られるゴルフボールが適度に柔らかくなって、打球感が良好となる。破断応力とは、試験片破壊時の引張応力であり、試験片破壊時の荷重と試験片の初めの断面積から算出できる。
【0103】
本発明のゴルフボール用樹脂組成物の破断ひずみは、60%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましく、100%以上が特に好ましく、600%以下が好ましく、550%以下がより好ましく、500%以下がさらに好ましく、450%以下が特に好ましい。破断ひずみが60%以上のゴルフボール用樹脂組成物を用いることにより、得られるゴルフボールの耐久性が向上する。また、破断ひずみが600%以下であれば、得られるゴルフボールが柔らかくなりすぎず、打球感が良好であり、反発性(飛距離)に優れる。破断ひずみとは、試験片が破壊した時の引張ひずみであり、標線間距離の増加量を初めの標線間距離で除した値を100倍することで求められる。
【0104】
[ゴルフボール]
本発明のゴルフボールは、(A)(a−1)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、(a−2)オレフィンと、炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂、(a−3)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体、および(a−4)オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂成分と、(B)飽和脂肪酸と、(C)不飽和脂肪酸と、(D)少なくとも2以上のカルボキシル基および/またはその無水物を有するカルボキシル基変性ジエン重合体とを含有し、前記(B)飽和脂肪酸と前記(C)不飽和脂肪酸と前記(D)カルボキシル基変性ジエン重合体の合計含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して100質量部〜200質量部であり、前記樹脂組成物の中和度が80モル%超であるゴルフボール用樹脂組成物から形成されている構成部材を有することを特徴とする。
【0105】
本発明のゴルフボールは、例えば、コアと前記コアを被覆するように配設された単層の中間層と、前記中間層を被覆するように配設されたカバーとを有するスリーピースゴルフボール;または、コアと前記コアを被覆するように配設された一以上の中間層と、前記中間層を被覆するように配設されたカバーを有するマルチピースゴルフボール(前記スリーピースゴルフボールを含む)を構成するいずれかの構成部材が前記ゴルフボール用樹脂組成物から成形されているゴルフボールを挙げることができる。これらの中でも、中間層が、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から成形されているゴルフボールが好ましい。
【0106】
以下、本発明のゴルフボールを、コアと前記コアを被覆するように配設された一以上の中間層と、前記中間層を被覆するように配設されたカバーとを有するゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む)であって、前記中間層の少なくとも一つが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されている好ましい態様に基づいて、詳述するが、本発明は、斯かる態様に限定されない。
【0107】
前記好ましい態様において、本発明のゴルフボールのコアの構造としては、単層コア、多層コアのいずれであってもよい。
【0108】
前記コアの形状としては、球状が一般的であるが、球状コアの表面を分割するように突条が設けられていても良い。前記コアには、従来公知のゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を採用することができ、例えば、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤を含むゴム組成物を加熱プレスして成形することができる。
【0109】
前記基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらの中でも、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。
【0110】
前記架橋開始剤は、基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。前記架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.3質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上であって、5質量部以下が好ましく、より好ましくは3質量部以下である。0.3質量部未満では、コアが柔らかくなりすぎて、反発性が低下する傾向があり、5質量部を超えると、適切な硬さにするために、共架橋剤の使用量を減少する必要があり、反発性が不足気味になる。
【0111】
前記共架橋剤は、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有すると考えられている。前記共架橋剤としては、例えば、炭素数が3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸またはその金属塩を使用することができ、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸またはこれらの金属塩を挙げることができる。前記金属塩を構成する金属としては、例えば、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムなどを挙げることができ、反発性が高くなるということから、亜鉛を使用することが好ましい。
【0112】
前記共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、55質量部以下が好ましく、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは48質量部以下である。共架橋剤の使用量が10質量部未満では、適当な硬さとするために架橋開始剤の量を増加しなければならず、反発性が低下する傾向がある。一方、共架橋剤の使用量が55質量部を超えると、コアが硬くなりすぎて、打球感が低下するおそれがある。
【0113】
コア用ゴム組成物に含有される充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。前記充填剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、30質量部以下が好ましく、より好ましくは20質量部以下である。充填剤の配合量が0.5質量部未満では、重量調整が難しくなり、30質量部を超えるとゴム成分の重量分率が小さくなり反発性が低下する傾向があるからである。
【0114】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、架橋開始剤、共架橋剤および充填剤に加えて、さらに、有機硫黄化合物、老化防止剤、しゃく解剤などを適宜配合することができる。
【0115】
前記有機硫黄化合物としては、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類よりなる群から選択される少なくとも一種の化合物であることが好ましい。これらの中でも、有機硫黄化合物として、チオナフトール類を好適に使用することができる。前記チオナフトール類としては、例えば、2−チオナフトール、1−チオナフトール、2−クロロ−1−チオナフトール、2−ブロモ−1−チオナフトール、2−フルオロ−1−チオナフトール、2−シアノ−1−チオナフトール、2−アセチル−1−チオナフトール、1−クロロ−2−チオナフトール、1−ブロモ−2−チオナフトール、1−フルオロ−2−チオナフトール、1−シアノ−2−チオナフトール、1−アセチル−2−チオナフトール、または、これらの金属塩を挙げることができる。これらのチオナフトール類はゴム加硫体の加硫状態に何らかの影響を与えて、反発性を高めることができる。これらの中でも、特に高反発性のゴルフボールが得られるという点から、1−チオナフトール、2−チオナフトール、または、これらの亜鉛塩を用いることが好ましい。前記有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。
【0116】
老化防止剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0117】
前記コアは、前述のコア用ゴム組成物を混合、混練し、金型内で成形することにより得ることができる。この際の条件は、特に限定されないが、通常は130℃〜200℃、圧力2.9MPa〜11.8MPaで10分間〜60分間で行われる。例えば、前記ゴム組成物を130℃〜200℃で10分間〜60分間加熱するか、あるいは、130℃〜150℃で20分間〜40分間加熱した後、160℃〜180℃で5分間〜15分間の2段階で加熱することが好ましい。
【0118】
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは35.0mm以上、さらに好ましくは35.2mm以上であり、41.2mm以下が好ましく、より好ましくは41.0mm以下、さらに好ましくは40.8mm以下である。前記コアの直径が34.8mm以上であれば、中間層またはカバー層の厚みが厚くなり過ぎず、その結果、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が41.2mm以下であれば、中間層またはカバー層が薄くなり過ぎず、中間層またはカバー層の機能がより発揮される。
【0119】
前記球状コアは、直径34.8mm〜41.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にコアが縮む量)が、1.90mm以上が好ましく、より好ましくは2.00mm以上、さらに好ましくは2.10mm以上であり、4.00mm以下が好ましく、より好ましくは3.90mm以下、さらに好ましくは3.80mm以下である。前記圧縮変形量が1.90mm以上であれば打球感がより良好となり、4.00mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0120】
前記コアの中心硬度は、ショアD硬度で30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上であり、さらに好ましくは35以上である。コアの中心硬度がショアD硬度で30未満であると、軟らかくなりすぎて反発性が低下する場合がある。また、コアの中心硬度は、ショアD硬度で70以下であることが好ましく、より好ましくは65以下であり、さらに好ましくは60以下である。前記中心硬度がショアD硬度で70を超えると、硬くなり過ぎて、打球感が低下する傾向があるからである。本発明において、コアの中心硬度とは、コアを2等分に切断して、その切断面の中心点についてスプリング式硬度計ショアD型で測定した硬度を意味する。
【0121】
前記コアの表面硬度は、ショアD硬度で45以上が好ましく、より好ましくは50以上、さらに好ましくは55以上であり、85以下が好ましく、より好ましくは80以下、さらに好ましくは78以下である。前記コアの表面硬度を、ショアD硬度で45以上とすることにより、コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記コアの表面硬度をショアD硬度で85以下とすることにより、コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0122】
中間層を形成する方法としては、例えば、コアを本発明のゴルフボール用樹脂組成物(以下、単に「中間層用組成物」という場合がある)で被覆して中間層を成形する。中間層を成形する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ゴルフボール用樹脂組成物を予め半球殻状のハーフシェルに成形し、それを2枚用いてコアを包み、130℃〜170℃で1分間〜5分間加圧成形するか、またはゴルフボール用樹脂組成物を直接コア上に射出成形してコアを包み込む方法などが用いられる。本発明のゴルフボールの中間層は、射出成形法により成形されることが好ましい。射出成形法を採用することにより、中間層をより容易に生産することができるからである。
【0123】
中間層用組成物をコア上に射出成形して中間層を成形する場合、中間層成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形による中間層の成形は、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、加熱溶融された中間層用組成物を注入して、冷却することにより中間層を成形することができる。
【0124】
圧縮成形法により中間層を成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。中間層用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いて中間層を成形する方法としては、例えば、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形して中間層に成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、中間層用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、+70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みを有する中間層を成形できる。
【0125】
なお、成形温度とは、型締めから型開きの間に、下型の凹部の表面が到達する最高温度を意味する。また中間層用組成物の流動開始温度は、島津製作所の「フローテスター CFT−500」を用いて、ペレット状の中間層用組成物を、プランジャ−面積:1cm
2、DIE LENGTH:1mm、DIE DIA:1mm、荷重:588.399N、開始温度:30℃、昇温速度:3℃/分の条件で測定することができる。
【0126】
前記中間層の厚みは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上である。中間層の厚みが0.5mm以上であれば、中間層の成形がより容易となり、また得られるゴルフボールの耐久性がより向上する。前記中間層の厚みは、15mm以下が好ましく、より好ましくは14mm以下、さらに好ましくは13mm以下である。中間層の厚みが15mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。
【0127】
前記好ましい態様において、本発明のゴルフボールが、少なくとも二以上の中間層を有する場合、中間層のうちの少なくとも一つが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていればよく、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のゴルフボール用樹脂組成物以外の中間層用組成物から形成される中間層を有していてもよい。この場合には、最外側の中間層が、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成された中間層とすることが好ましい。また、中間層のすべてが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物から形成されていることも好ましい態様である。
【0128】
前記ゴルフボール用樹脂組成物以外の中間層用組成物としては、例えば、前述のコア用ゴム組成物や、前記アイオノマー樹脂のほか、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、BASFジャパン社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。さらに、硫酸バリウム、タングステン等の重量調整剤、老化防止剤、顔料などが配合されていてもよい。
【0129】
前記好ましい態様において、本発明のゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン社から商品名「エラストラン(登録商標)(例えば、「エラストランXNY97A」)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)(例えば、「ペバックス2533」)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)(例えば、「ハイトレル3548」、「ハイトレル4047」)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱化学(株)から商品名「ラバロン(登録商標)」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。また、(A)成分であるオレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体、および/または、オレフィンと炭素数3〜8個のα,β−不飽和カルボン酸とα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体を用いることもできる。これらの樹脂成分は単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0130】
前記好ましい態様において、ゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中の熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0131】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0132】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下、より好ましくは8質量部以下であることが望ましい。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0133】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で70以下が好ましく、より好ましくは68以下、さらに好ましくは65以下である。カバー用組成物のスラブ硬度を70以下とすることによって、ショートアイアンなどのアプローチショット時のスピン速度が高くなる。その結果、アプローチショット時のコントロ−ル性に優れるゴルフボールが得られる。また、アプローチショット時のスピン速度を十分確保するためには、前記カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上である。
【0134】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、中間層を複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、中間層を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物を中間層上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0135】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、中間層を成形した球体を2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、−20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0136】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、ホールドピンを突き出し、中間層を被覆した球体を投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、例えば、9MPa〜15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃〜250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒〜5秒で注入し、10秒〜60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0137】
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0138】
前記カバーの厚みは、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.6mm以下、さらに好ましくは1.2mm以下、特に好ましくは1.0mm以下である。カバーの厚みが2.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.1mm以上が好ましく、より好ましくは0.2mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。カバーの厚みが0.1mm未満では、カバーの成形が困難になるおそれがあり、また、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合もある。
【0139】
カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0140】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、本発明のゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0141】
本発明のゴルフボールは、直径40mm〜45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.5mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0142】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆する中間層3と、前記中間層3を被覆するカバー4とを有する。このカバー4の表面には、多数のディンプル41が形成されている。このゴルフボールの表面のうち、ディンプル41以外の部分は、ランド42である。そして、前記中間層3が前記ゴルフボール用樹脂組成物から形成されている。
【0143】
以上、本発明のゴルフボール用樹脂組成物を中間層に用いる態様について説明したが、本発明のゴルフボール用樹脂組成物は、カバー用組成物として用いることもできる。
【実施例】
【0144】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0145】
[測定条件]
(1)圧縮変形量(mm)
コアまたはゴルフボールに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアまたはゴルフボールが縮む量)を測定した。
【0146】
(2)コア硬度(ショアD硬度)
コアの表面部において測定した硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心において測定した硬度をコア中心硬度とした。硬度は、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0147】
(3)スラブ硬度(ショアD硬度)
樹脂組成物を用いて、射出成形により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。
【0148】
(4)曲げ剛性(kgf/cm
2)
中間層用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形(170℃、10分間)により、厚み約2mm、幅20mm、長さ100mmのテストピースを作製した。このテストピースを、温度23±2℃、相対湿度50±5%で、14日間保存した。作製したテストピースについて、オルゼン形剛性度試験機(東洋精機製作所製)を用いて曲げ角度3°、6°、9°および12°における荷重目盛を測定し、横軸に曲げ角度(°)、縦軸に荷重目盛の読みをプロットし、その一次近似曲線の傾きを求めた。測定条件は、温度23±2℃、相対湿度50±5%、曲げ速度60°/min、支点間距離50mmとした。曲げ剛性は、前記傾きの値に8.7078を乗じ、試験片の厚み(cm)の三乗で除することで算出した。
【0149】
(5)反発弾性(%)
反発弾性試験は、JIS K6255(2013)に準じて行った。中間層用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形(170℃、10分間)により、厚み約2mmのシートを作製し、当該シートから直径28mmの円形状に打抜いたものを6枚重ねることにより、厚さ約12mm、直径28mmの円柱状試験片を作製した。この試験片を、温度23±2℃、相対湿度50±5%で、12時間保存した。作製した試験片について、リュプケ式反発弾性試験測定装置(株式会社上島製作所製)を用いて、反発弾性率を測定した。上記重ね合わせた試験片の平面部分を機械的固定法で支持し、測定条件は、温度23℃、相対湿度50%、打撃端直径12.50±0.05mm、打撃質量0.35±0.01kg、打撃速度1.4±0.01m/sとした。
【0150】
(6)引張試験
中間層用樹脂組成物を用いて、熱プレス成形(170℃、10分間)により、厚み約2mmのダンベル状(全長100mm、両端の幅15mm、平行部の長さ20mm、平行部の幅5mm、肩部の半径40mm、標線間距離20mm(JIS K 6251:2004の引張4号形ダンベル状試験片))の試験片を作製した。この試験片を、温度23±1℃、相対湿度50±5%で、12時間保存した。作製した試験片について引張圧縮試験機(島津製作所社製)を用いて引張試験を行い、破断応力(試験片破壊時の引張応力)および破断ひずみ(破断応力に対応する引張ひずみ)を測定した。測定条件は、温度23±1℃、相対湿度50±5%、引張速度500mm/minとした。
【0151】
(7)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および重量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値を各ゴルフボールの反発係数とした。
【0152】
(8)飛距離
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード40m/秒でゴルフボールを打撃し、飛距離(発射始点から静止地点までの距離)を測定し、下記基準で飛距離を評価した。なお、測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、各ゴルフボールの飛距離は、ゴルフボールNo.13の飛距離との差(飛距離の差=各ゴルフボールの飛距離−ゴルフボールゴルフボールNo.13の飛距離)を算出し、下記基準で評価した。
評価基準
優:飛距離の差が3.0ヤード以上である。
良:飛距離の差が0ヤード以上、3.0ヤード未満である。
劣:飛距離の差が0未満である。
【0153】
(9)耐久性
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(ダンロップスポーツ社製、XXIO S ロフト11°)を取り付け、ヘッドスピード45m/秒でゴルフボールを繰り返し打撃し、割れが生じるまでの打撃回数を測定した。なお、測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの該打撃回数とした。そして耐久性について、ゴルフボールNo.13の該打撃回数を100として、各ゴルフボールの該打撃回数を指数化した値で示した。
【0154】
(10)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
優:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
良:普通。
劣:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
【0155】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のコア用ゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で170℃、20分間加熱プレスすることにより球状コアを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.4gとなるように適量加えた。
【0156】
【表1】
【0157】
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」(シス含量:95質量%)
アクリル酸亜鉛:シグマ・アルドリッチ社製
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:東京化成工業社製
2−チオナフトール:東京化成工業社製
【0158】
(2)カバー用組成物および中間層用組成物の調製
表2〜表5に示した配合材料を用いて、二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状の中間層用組成物およびカバー用組成物をそれぞれ調製した。
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
【表4】
【0162】
【表5】
【0163】
表2〜5で用いた材料は下記の通りである。
二元共重合体1:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸の含有率:15質量%)
二元共重合体2:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸の含有率:20質量%)
二元共重合体3:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸の含有率:11質量%)
二元共重合体4:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸共重合体(メタクリル酸の含有率:9質量%)
三元共重合体1:三井・デュポン・ポリケミカル社製、エチレン−メタクリル酸−メタクリル酸ブチル共重合体(メタクリル酸の含有率:8質量%)
ベヘン酸:東京化成工業社製
オレイン酸:東京化成工業社製
カルボキシル基変性ジエン重合体1:エボニック社製無水マレイン酸変性ポリブタジエン、POLYVEST(登録商標)EP MA120(シス−1,4−結合の含有率:約75質量%、酸価:約130mgkOH/g、数平均分子量:約3,200)
カルボキシル基変性ジエン重合体2:エボニック社製無水マレイン酸変性ポリブタジエン、POLYVEST MA75(シス−1,4−結合の含有率:約75質量%、酸価:約70〜90mgkOH/g、数平均分子量:約3,000)
カルボキシル基変性ジエン重合体3:クレイバレー社製無水マレイン酸変性ポリブタジエン、Ricon(登録商標)130MA8(低ビニルタイプ、酸価:46mgkOH/g、数平均分子量:約2,700)
オレイルベタイン:ルーブリゾール社製の「Chembetaine OL」から水分と塩分を除去したもの
水酸化マグネシウム:和光純薬工業社製
水酸化ナトリウム:和光純薬工業社製
エラストラン:BASFジャパン社製の熱可塑性ポリウレタンエラストマー
酸化チタン:石原産業社製A220
【0164】
(3)中間層の作製
ゴルフボールNo.1〜15、21〜25、27〜33
球状コア上に前記中間層用組成物を射出成形することにより、コアを被覆する中間層(厚さ1mm)を形成した。中間層用組成物は、射出装置のシリンダー部分で200℃〜260℃に加熱され、15MPaの圧力で型締めした金型に射出され、30秒間冷却して型開きして中間層が形成された球体を取り出した。なお、ゴルフボールNo.16〜20、26では、中間層用組成物の流動性が低いため、射出成型法によって中間層を作製することができなかった。
【0165】
ゴルフボールNo.16〜20、26
ペレット化した前記中間層用組成物をハーフシェル成形用金型の下型の凹部ごとに1つずつ投入し、加圧してハーフシェルを成形した。前記球状コアを、得られた2枚のハーフシェルで同心円状に被覆して、圧縮成形により、厚さ1.0mmの中間層を成形した。圧縮成形は、成形温度170℃、成形時間15分の条件で行った。
【0166】
(4)カバーの作製およびゴルフボールの作製
カバー用組成物の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160〜230℃に加熱された。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.4gのゴルフボールを得た。
【0167】
表2〜4に示すように、ゴルフボールNo.1〜11の中間層用組成物は、(A)樹脂成分と、(B)飽和脂肪酸と、(C)不飽和脂肪酸と、(D)カルボキシル基変性ジエン重合体とを含有し、(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して100質量部〜200質量部、樹脂組成物の中和度が80モル%超である。これらの中間層用組成物は、いずれも反発性および柔軟性に優れている。また、これらのゴルフボールNo.1〜11は、いずれも反発性、飛距離性能、打球感および耐久性に優れている。
【0168】
ゴルフボールNo.12〜29の中間層用組成物は(D)カルボキル基変性ジエン重合体を含有していない。これらの中間層用組成物は、反発弾性もしくは破断ひずみ、またはその両方の値が小さい。よって、これらのゴルフボールNo.12〜29は、反発性または耐久性が劣る。
【0169】
ゴルフボールNo.30の中間層用組成物は(B)飽和脂肪酸を含有していないため、曲げ剛性の値が小さい。そのため、このゴルフボールNo.30は、反発係数が劣る。ゴルフボールNo.31および32の中間層用組成物は、(B)成分と(C)成分と(D)成分の合計含有量が、前記(A)樹脂成分100質量部に対して100質量部未満または200質量部超であり、曲げ剛性および破断ひずみの値が小さい。これらのゴルフボールNo.31および32は、反発性および耐久性が劣る。ゴルフボールNo.33は、中間層用組成物の中和度が80%以下のため、反発弾性および破断ひずみの値が小さい。このゴルフボールNo.33は反発性が劣る。