特許第6540400号(P6540400)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540400
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】作業機械の機能制限装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/90 20060101AFI20190628BHJP
【FI】
   B66C23/90 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-177539(P2015-177539)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-52607(P2017-52607A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平手 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】日下部 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】下村 耕一
(72)【発明者】
【氏名】石原 英明
(72)【発明者】
【氏名】笹井 慎太郎
【審査官】 羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−001421(JP,A)
【文献】 特開2004−284729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00−15/06
B66C 19/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械の動作の一部のみを制限する機能制限を実行する機能制限コントローラを備え、
前記機能制限コントローラは、
前記作業機械の状態が過負荷状態であると判断したときに、前記作業機械の動作を自動的に制限する過負荷防止部と、
前記過負荷状態であることとは異なる所定条件が予め設定され、前記過負荷防止部に指令を出力する指令部と、
を備え、
前記作業機械は、前記作業機械の動作の駆動源であるエンジンを備え、
前記機能制限コントローラは、前記所定条件が満たされたときに、前記指令部が前記過負荷防止部に前記過負荷状態であると判断させることにより、前記機能制限を実行し、
前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行しているとき、吊荷を巻き上げる動作を制限
前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行させる指令である開始指令の入力に応じて前記機能制限の実行を開始し、
前記機能制限コントローラは、前記機能制限の解除中かつ前記エンジンの駆動中に前記開始指令が入力されたとき、前記開始指令が入力されてから初めて前記エンジンが停止する時まで前記機能制限の解除を継続し、次回の前記エンジンの始動時に前記機能制限の実行を開始する、
作業機械の機能制限装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の機能制限装置であって、
前記機能制限コントローラは、前記作業機械の動作を制限する処理に関するソフトウェアを実行することにより、前記機能制限を実行する、
作業機械の機能制限装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の作業機械の機能制限装置であって、
前記作業機械は、前記吊荷を吊るブームを備え、
前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行しているとき、前記ブームの起伏動作を制限する、
作業機械の機能制限装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の機能制限装置であって、
前記作業機械は、前記作業機械を走行させる下部本体を備え、
前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行しているとき、前記下部本体の走行動作を制限する、
作業機械の機能制限装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業機械の機能制限装置であって、
前記作業機械は、
下部本体と、
前記下部本体に対して旋回可能である上部旋回体と、
を備え、
前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行しているとき、前記下部本体に対する前記上部旋回体の旋回動作を制限する、
作業機械の機能制限装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の作業機械の機能制限装置であって、
前記作業機械は、前記作業機械を走行させる下部走行体を備え、
前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行しているとき、前記下部走行体の動作である走行動作が可能な状態とする、
作業機械の機能制限装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械の機能制限装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、従来の作業機械が記載されている。同文献の段落[0056]〜[0057]には、例えば、エンジンキースイッチのスタート信号をカットする、または、アイドリングのみ可能にするなどの制御により、作業機械の動作を不可能とする(ロックする)ことが記載されている。作業機械の動作を不可能とすることの目的は、例えば盗難防止などである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/075562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業機械の動作が完全に不可能になると、作業機械の周囲(作業環境)に悪影響が生じるおそれがある(詳細は下記)。また、作業機械の動作を制限する装置が、容易に実現(開発、製造など)可能であることが望まれる。
【0005】
そこで本発明は、作業機械を動作させることが可能な状態を確保しつつ、作業機械による作業を制限でき、容易に実現できる、作業機械の機能制限装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の作業機械の機能制限装置は、作業機械の動作の一部のみを制限する機能制限を実行する機能制限コントローラを備える。前記機能制限コントローラは、過負荷防止部と、指令部と、を備える。前記過負荷防止部は、前記作業機械の状態が過負荷状態であると判断したときに、前記作業機械の動作を自動的に制限する。前記指令部には、前記過負荷状態であることとは異なる所定条件が予め設定される。前記指令部は、前記過負荷防止部に指令を出力する。前記機能制限コントローラは、前記所定条件が満たされたときに、前記指令部が前記過負荷防止部に前記過負荷状態であると判断させることにより、前記機能制限を実行する。前記機能制限コントローラは、前記機能制限を実行しているとき、吊荷を巻き上げる動作を制限する。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、作業機械を動作させることが可能な状態を確保しつつ、作業機械による作業を制限できる。さらに、上記構成の機能制限装置は、容易に実現できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】作業機械1の全体図である。
図2図1に示す作業機械1に設けられる機能制限装置40を示すブロック図である。
図3図2に示す過負荷コントローラ50を示すブロック図である。
図4図2に示す機能制限装置40の作動のフローチャートである。
図5図4に示す停止処理S10を示すフローチャートである。
図6図2に示す機能制限装置40が遠隔操作される場合の説明図である。
図7図2に示す機能制限装置40を操作する者などの説明図である。
図8】機能制限装置40の変形例1を示す説明図である。
図9】機能制限装置40の変形例2を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図7を参照して本発明の実施形態の機能制限装置40(図2参照)を備える作業機械1(図1参照)について説明する。
【0010】
作業機械1は、図1に示すように、ワイヤロープにより吊られた吊荷Lを移動させる作業(吊り作業、荷役作業)を行う機械である。作業機械1は、クレーンであり、移動式クレーンである。作業機械1は、下部走行体11(下部本体)と、上部旋回体20と、ブーム31と、機能制限装置40(図2参照)と、を備える。作業機械1は、ジブ33を備えてもよい。
【0011】
下部走行体11(下部本体)は、作業機械1を走行させる部分であり、クローラを有するクローラ式であり、ホイール(車輪)を有するホイール式でもよい。
【0012】
上部旋回体20は、下部走行体11に対して旋回可能に、下部走行体11に取り付けられる。上部旋回体20は、エンジン21と、ドラム23と、を備える。
【0013】
エンジン21は、作業機械1の動作(下記)の駆動源である。エンジン21は、油圧ポンプの駆動源である。エンジン21は、例えば発電機などの駆動源でもよい。エンジン21は、上部旋回体20を構成するフレーム(旋回フレーム)に搭載される(ドラム23も同様)。
【0014】
ドラム23は、ワイヤロープの巻込み、および巻出しを行い、モータ(油圧モータ)により回転駆動する。ドラム23には、主巻ドラム23aと、補巻ドラム23bと、サードドラム23cと、ブームドラム23dと、がある(各ドラムの機能は下記)。ジブ33が設けられない場合は、サードドラム23cは設けられなくてもよい。
【0015】
ブーム31(アタッチメント、起伏部材)は、上部旋回体20に対して起伏可能に、上部旋回体20に取り付けられる。ブーム31は、ワイヤロープを介して吊荷Lを吊る。
【0016】
ジブ33(アタッチメント、起伏部材)は、ブーム31に対して起伏可能(回転可能)に、ブーム31の先端部に取り付けられる。ジブ33は、ワイヤロープを介して吊荷Lを吊る。
【0017】
機能制限装置40(図2参照)は、作業機械1の機能(本体機能、動作)を制限(制御)する装置である。図2に示すように、機能制限装置40は、上部旋回体20に搭載される。機能制限装置40は、機械コントローラ41(機能制限コントローラ40c、指令部)と、通信コントローラ43と、キースイッチ45と、制御モニタ47と、を備える。さらに、機能制限装置40は、過負荷コントローラ50(機能制限コントローラ40c、過負荷防止部)と、外部メモリ60(図3参照)と、を備える。機能制限装置40の各構成要素は、互いに電気的に接続され、例えば図2に示すように接続される。機械コントローラ41と過負荷コントローラ50とで、機能制限コントローラ40cが構成される。
【0018】
機械コントローラ41(機能制限コントローラ40c、指令部)(作業機械制御コントローラ)は、作業機械1の動作を制御する。機械コントローラ41は、信号(データなど)の入出力、および演算などを行う(他のコントローラも同様)。機械コントローラ41は、機械I/O(Input / Output)(入出力装置)を介して、信号の入出力を行う。機械コントローラ41と過負荷コントローラ50との間(回路における間)にも、機械I/Oが設けられる。機械コントローラ41は、過負荷コントローラ50に指令を出力する。機械コントローラ41には、所定条件が予め設定される。この所定条件は、下記の「機能制限」を行うか否かを判定するための条件であり、下記の「過負荷状態」であることとは異なる条件である。
【0019】
通信コントローラ43は、作業機械1と、作業機械1外部と、の間での通信を行うための装置である。通信コントローラ43は、遠隔操作による「機能制限」の設定(下記)を行うための装置である。通信コントローラ43は、既存の作業機械1に設けられていたものであり、例えば作業機械1の稼働管理などに用いられるものである。なお、通信コントローラ43は、遠隔操作による「機能制限」の設定(下記)専用のものでもよい。通信コントローラ43は、アンテナ44を介して通信を行う。アンテナ44は、例えば携帯通信アンテナ(携帯電話網を介した通信を行うためのアンテナ)などである。
【0020】
キースイッチ45は、エンジン21のオン(駆動している状態)とオフ(駆動していない状態)とを切り換えるためのスイッチであり、作業機械1のオペレータにより操作される。
【0021】
制御モニタ47は、作業機械1の動作の状態などを表示する画面であり、オペレータが各種操作を行うための操作画面である。制御モニタ47(手動設定装置)は、手動操作による「機能制限」の設定(下記)に用いられる。
【0022】
過負荷コントローラ50(機能制限コントローラ40c、過負荷防止部)(過負荷防止機能、過負荷防止装置、安全制御装置、過負荷制御コントローラ)は、作業機械1が過負荷状態になったときに、作業機械1の動作を自動的に制限する。上記「過負荷状態」は、作業機械1の状態に関する検出値(ブーム31の角度、吊荷Lの質量など)、または検出値から算出された値が、過負荷コントローラ50に予め定められた値(許容値)を超えた状態である。図3に示すように、過負荷コントローラ50は、CPU51(Central Processing Unit)と、外部メモリコントローラ52と、内部記憶装置53と、外部コントローラポート54と、を備える。過負荷コントローラ50の各構成要素は、互いに電気的に接続され、例えば図3に示すように接続される。
【0023】
CPU51は、演算(処理、判断)を行う装置である。
外部メモリコントローラ52は、過負荷コントローラ50と、外部メモリ60と、の間でのデータの入出力を行うための装置である。
【0024】
内部記憶装置53は、過負荷コントローラ50内に設けられる記憶装置である。内部記憶装置53は、不揮発性記憶装置と揮発性記憶装置とを備える。不揮発性記憶装置は、例えばフラッシュROM53a(Flash Read-Only Memory)などである。揮発性記憶装置は、例えばSDRAM53b(Synchronous Dynamic Random Access Memory)などである。内部記憶装置53(例えばフラッシュROM53a)には、「機能制限」(下記)に関するプログラムが保存される。
【0025】
外部コントローラポート54は、過負荷コントローラ50に、過負荷コントローラ50外部の機器を接続するためのポートである。外部コントローラポート54は、データの入出力を行うI/Oコントローラ55(入出力コントローラ)を備える。外部コントローラポート54は、アナログ信号の入出力、およびデジタル信号の入出力を行う。
【0026】
外部メモリ60は、過負荷コントローラ50外部の記憶装置(外部記憶装置)である。外部メモリ60(機能制限項目記憶装置)には、機能制限項目(下記)を変えるための設定値が保存される。外部メモリ60は、過負荷コントローラ50に接続され、過負荷コントローラ50に対して着脱される。外部メモリ60は、例えばフラッシュメモリなどであり、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリなどである。
【0027】
(機能制限)
図2に示す機能制限コントローラ40cによる「機能制限」は、次のように行われる(以下、機能制限コントローラ40cについては図2を参照)。「機能制限」は、作業機械1の動作の一部のみを制限する。「機能制限」は、機械コントローラ41および過負荷コントローラ50により実行される(制御される)。「機能制限」は、図1に示すエンジン21を駆動させた状態で行われる。「機能制限」が行われる項目(機能制限項目)(動作の種類、制限の度合い、制限の種類)は、予め設定され、具体的には外部メモリ60に設定(保存)される。機能制限項目の詳細は次の通りである。
【0028】
(機能制限項目:動作の種類)
作業機械1の動作の種類には、巻上動作と、巻下動作と、ブーム起伏動作と、ジブ起伏動作と、走行動作と、旋回動作と、がある。機能制限コントローラ40cは、これらの動作の種類のうち、少なくとも一部の種類の動作を制限する。
巻上動作は、作業機械1が吊荷Lを巻き上げる動作である。巻下動作は、作業機械1が吊荷Lを巻き下げる動作である。巻上動作および巻下動作は、主巻ドラム23aおよび補巻ドラム23bの少なくともいずれかの駆動(巻上駆動、および、巻下駆動)により行われる。なお、ジブ33が設けられない場合、サードドラム23cの駆動により、巻上動作および巻下動作が行われてもよい。
ブーム起伏動作は、上部旋回体20に対するブーム31の起伏動作であり、ブームドラム23dの駆動により行われる。ブーム31は、ブームドラム23dの巻上駆動(巻取側への駆動)により起こされ、ブームドラム23dの巻下駆動(巻出側への駆動)により伏せられる。
ジブ起伏動作は、ブーム31に対するジブ33の起伏動作(回転動作)であり、サードドラム23cの駆動により行われる。ジブ33は、サードドラム23cの巻上駆動により起こされ、サードドラム23cの巻下駆動により伏せられる。
走行動作は、下部走行体11の動作であり、下部走行体11が作業機械1を走行させる動作であり、下部走行体11が備える走行モータ(図示なし)の駆動により行われる。
旋回動作は、下部走行体11に対する上部旋回体20の旋回の動作であり、上部旋回体20が備える旋回モータ(図示なし)の駆動により行われる。
【0029】
(機能制限項目:制限の度合い、制限の種類)
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、「機能制限」を実行していないときの動作に比べて、動作を制限する。具体的には例えば、機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、「機能制限」を実行していないときの巻上動作に比べて、巻上動作を制限する。制限の度合いには、停止(完全な制限)と、一部制限(一部のみ制限)と、がある。制限の種類には、可動範囲の制限と、可動速度の制限と、可動出力の制限と、がある。
【0030】
(機能制限項目の考え方)
機能制限コントローラ40cは、作業機械1の動作の一部のみを制限し、さらに詳しくは、作業機械1が行い得る動作のうち一部のみを制限する。機能制限コントローラ40cは、作業機械1を完全にはロックさせず、「全種類の動作について停止させる」という制限は行わない。機能制限コントローラ40cは、作業機械1が必要最小限だけ動作できるように、「機能制限」を実行する。機能制限コントローラ40cは、作業機械1が実質的に作業不可能となる程度に「機能制限」を実行することが好ましい。機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行するとき、安全を確保する方向への動作を停止させない(一部制限はしてもよい)。安全を確保する方向への動作は、例えば作業機械1にかかる負荷が減る方向への動作などであり、具体的には例えば巻下動作などである。機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行するとき、安全を確保しにくい方向への動作を停止させることが好ましい。安全を確保しにくい方向への動作は、例えば作業機械1にかかる負荷が増える方向への動作などであり、具体的には例えば巻上動作などである(具体例の詳細は後述)。
【0031】
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行するとき、巻上動作を制限する。さらに詳しくは、作業機械1が行う主な作業は、吊荷Lの吊り作業であり、巻上動作を用いた作業である。そこで、機能制限コントローラ40cは、巻上動作を停止させることで吊り作業を不可能とする、または、巻上動作を一部制限することで吊り作業を実質的に不可能とする。その結果、作業機械1の稼働を実質的に不可能とする。
【0032】
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を行うとき、走行動作を停止させない。走行動作を停止させないことにより、「機能制限」によって作業機械1が移動できなくなるという問題を防げる(立ち往生しない)。
【0033】
(機能制限項目の具体例1)
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を行うとき、例えば下記の制限を行う。ここでは、作業機械1がジブ33を備えない場合(通常のクレーンの場合)について説明する。機能制限コントローラ40cは、巻上動作を停止させ、さらに詳しくは、主巻ドラム23aおよび補巻ドラム23bの巻上駆動を停止させる。機能制限コントローラ40cは、巻下動作を制限せず(制限を解除し)、さらに詳しくは、主巻ドラム23aおよび補巻ドラム23bの巻下駆動を可動とする。機能制限コントローラ40cは、ブーム起伏動作を停止させ、さらに詳しくは、ブームドラム23dの巻上駆動および巻下駆動を停止させる。機能制限コントローラ40cは、走行動作を制限しない。機能制限コントローラ40cは、旋回動作を制限しない。
【0034】
(機能制限項目の具体例2)
機能制限項目は、作業機械1の特徴に合わせて設定される。具体的には、作業機械1のアタッチメント(ブーム31、ジブ33)の状態によって、「機能制限」で制限すべき機能制限項目が異なる場合がある。そこで、機能制限項目は、アタッチメントの状態に応じて設定される。例えば、作業機械1がジブ33を備えず、サードドラム23cが設けられない場合がある。この場合、機能制限コントローラ40cは、サードドラム23cの駆動を制御対象としない。また例えば、作業機械1がジブ33を備えず、サードドラム23cが吊荷Lの巻上および巻下(巻上動作および巻下動作)に用いられる場合がある。この場合、機能制限コントローラ40cは、サードドラム23cの巻上駆動を制限し、巻下駆動を制限しないことが考えられる。一方、作業機械1がジブ33を備える場合(タワークレーン、ラッフィングクレーンの場合)、サードドラム23cは、ジブ起伏動作に用いられる。この場合、サードドラム23cが巻下駆動すると、ジブ33が伏せられ、作業半径が大きくなり、作業機械1の負荷が増える。また、サードドラム23cが巻上駆動すると、ジブ33が起こされ、ジブ33が起き過ぎるおそれがある。そこで、作業機械1がジブ33を備える場合、機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行するとき、ジブ起伏動作を制限し(例えば停止させ)、具体的には、サードドラム23cの巻上駆動および巻下駆動を制限する。
【0035】
(機能制限の実行、解除のタイミング)
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」の実行を、安全が確保されやすいタイミングで開始する。機能制限コントローラ40cは、作業機械1での作業中に「機能制限」が突然実行されないようにする。さらに詳しくは、「機能制限」の実行の開始は次のように行われる。機能制限コントローラ40cは、開始指令の入力に応じて「機能制限」の実行を開始する。開始指令は、「機能制限」を実行させる指令である。
【0036】
「機能制限」の解除中かつエンジン21の駆動中に、機能制限コントローラ40cに開始指令が入力された場合の、機能制限コントローラ40cの作動は次の通りである。この場合、機能制限コントローラ40cは、開始指令が入力されてから初めてエンジン21が停止する時(キースイッチ45(図2参照)がオフにされる時)までは、「機能制限」の解除を継続する(実行を開始しない)。エンジン21の停止時には、「機能制限」の実行の開始の、いわば予約がされた状態となる。そして、機能制限コントローラ40cは、次回のエンジン21の始動時に「機能制限」の実行を開始する。「次回のエンジン21の始動時」は、機能制限コントローラ40cに開始指令が入力されてから初めてエンジン21が停止した後、初めてエンジン21が始動した時(キースイッチ45(図2参照)がオンにされた時)である。上記「エンジン21の始動時」は、エンジン21の始動と厳密な同時でなくてもよく、ほぼ同時でもよく、例えばエンジン21の始動の数秒後などでもよい。上記「エンジン21の始動時」は、作業機械1による作業が可能になる時以前であればよい。上記「次回のエンジン21の始動時」に「機能制限」の実行を開始させるために、機械コントローラ41に予め設定される所定条件には、上記「次回のエンジン21の始動時」であることが含まれる。
【0037】
エンジン21の停止中に機能制限コントローラ40cに開始指令が入力された場合、機能制限コントローラ40cは、次回のエンジン21の始動時に「機能制限」の実行を開始する。
【0038】
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を解除させる指令である解除指令の入力に応じて「機能制限」の解除を開始する。「機能制限」の実行中かつエンジン21の駆動中に機能制限コントローラ40cに解除指令が入力されたとき、機能制限コントローラ40cは、次回のエンジン21の始動時に「機能制限」の解除を開始する(詳細は「機能制限」の実行の開始と同様)。エンジン21の停止中に機能制限コントローラ40cに解除指令が入力されたとき、機能制限コントローラ40cは、次回のエンジン21の始動時に「機能制限」の解除を開始する。
【0039】
(制御フロー)
機能制限コントローラ40cは、作業機械1の動作を制限する処理に関するソフトウェア(コンピュータプログラム)を実行することにより、「機能制限」を実行する。ソフトウェアの内容は次の通りである。以下の、各処理(判断、演算など)は、過負荷コントローラ50(図3参照)により行われ、特にCPU51(図3参照)により行われる。図4に示すように、まず、機能制限コントローラ40cは、一連の制御フロー(S1、S2、S3)を行う。
【0040】
一連の制御フロー(S1、S2、S3)では、作業機械1の状態が過負荷状態か否か(「過負荷停止」であるか否か)の判定が行われる。一連の制御フロー(S1、S2、S3)として、既存の作業機械で用いられていたものと同じ制御フローを使用できる。作業機械1のアタッチメントの状態に応じて、クレーン処理S1(通常のクレーンの場合)と、タワー処理S2(タワークレーンの場合)と、ラッフィング処理S3(ラッフィングクレーンの場合)と、のいずれかが行われる。次に、停止処理S10が行われる。停止処理S10は、既存の作業機械のフロー(一連の制御フロー)に対して、新たに追加されたフローである。
【0041】
停止処理S10は、次のように行われる。図5に示すように、一連の制御フロー(S1、S2、S3)(図4参照)での判定処理の結果(「過負荷停止」であるか否か)が引き渡される(S11)。次に、「過負荷停止」であるか否かが判定される(S21)。「過負荷停止」である場合(S21でYES)、「過負荷停止判定」の判定結果がリターンされる(メインフローに引き渡される)(S22)。「過負荷停止」でない場合(S22でNO)、「機能制限」を実行するか否か(「機能制限」中か否か)が判定される(S31)。具体的には、機械コントローラ41に予め設定された所定条件が満たされたか否かが判定される。「機能制限」中の場合(所定条件が満たされた場合)(S31でYES)、「疑似過負荷停止判定」の判定結果がリターンされる(S32)。この疑似過負荷停止判定は、「機能制限」による制限の対象となる動作の種類(例えば巻下動作)についてなされ、制限の対象でない動作の種類についてはなされない。「機能制限」中でない場合(S31でNO)、「通常処理判定」の判定結果がリターンされる(S33)。
【0042】
次に、図4に示すように、停止処理S10の判定結果に基づいて、作業機械1の動作が制御される(S40)。図5に示す停止処理S10で「過負荷停止判定」(S22)の場合、図2に示す過負荷コントローラ50は、機械コントローラ41に停止制御信号を出力する。そして、機械コントローラ41は、過負荷状態と判断された動作を制限する。この「過負荷停止判定」(S22)の場合の動作の制限は、既存の過負荷防止装置による動作の制限と同様である。このように、機能制限項目以外の動作の制限は、既存の過負荷防止装置の機能によりカバーされる。さらに詳しくは、過負荷状態の動作(危険領域の作業など)については、正しく「過負荷停止判定」が行われ、正しく自動的に制限される(例えば自動停止する)。よって、既存の過負荷防止装置に対し、「機能制限」を追加しても、作業機械1への悪影響は発生せず、作業機械1の安全が担保される。
【0043】
図5に示す停止処理S10で「疑似過負荷停止判定」(S32)の場合、図2に示す機械コントローラ41は、過負荷コントローラ50に過負荷状態であると判断させる。このとき、過負荷コントローラ50は、作業機械1の状態が実際には過負荷状態でなくても、過負荷状態であると判断する(疑似過負荷状態であると判断する)。過負荷状態であると判断した過負荷コントローラ50は、機械コントローラ41に停止制御信号を出力する。そして、機械コントローラ41は、作業機械1の動作の一部(疑似過負荷状態であると判断された動作)を制限する。これにより「機能制限」が実行される。
停止処理S10で「通常処理判定」(S33)の場合、図2に示す作業機械1の動作を制限することなく、作業機械1を動作させる。
【0044】
(機能制限の設定)
「機能制限」の設定(実行と解除との切り替え、機能制限項目の変更など)は、作業機械外からの遠隔操作(リモート操作)、および、作業機械内での手動操作により行われる。
【0045】
(遠隔操作による機能制限の設定)
遠隔操作による「機能制限」の設定(遠隔設定)は、次のように行われる。作業機械1外部(例えば管理センター)から、サーバー(図7参照)を介して、作業機械1に、制御コマンド(例えば解除指令または開始指令など)が送信される。この送信には、通信網(通信ネットワーク、図7参照)が利用され、例えば無線通信網が利用され、例えば携帯電話網などが利用される。機能制限コントローラ40cは、制御コマンドを受信した後(例えば次回のエンジン21始動時に)、「機能制限」の実行を開始する。このように「機能制限」を実行させるために、機械コントローラ41に予め設定される所定条件には、「制御コマンドを受信した後」(かつ「次回のエンジン21始動時」)であることが含まれる。図6に示すように、この遠隔設定には、WEB機能(WEBからの「機能制限」の設定)が用いられる。WEB機能を用いた遠隔設定は、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータ(PC)上で動作するブラウザ画面で行われる。このWEB機能により、その時々の状況に応じ、「機能制限」の設定を容易に行える。
【0046】
(手動操作による機能制限の設定)
図2に示す作業機械1の作業環境の状態、作業機械1側の問題などにより、作業機械1側での(作業機械1内での)、「機能制限」の設定が必要とされる場面が想定される。例えば、作業機械1に通信が届かない場合、または、サービスマンなどが作業機械1で「機能制限」に関する操作を行いたい場合などがある。そのため、手動操作による「機能制限」の設定(手動設定)ができるように、機能制限装置40が構成される。手動設定は、「機能制限」を設定するための特別な操作によって行われる。このため、「機能制限」の実行権限を保有する担当者以外は、手動設定できない。このように「機能制限」を実行させるために、機械コントローラ41に予め設定される所定条件には、上記「特別な操作」が行われたことが含まれる。上記「特別な操作」は、様々に設定可能であり、例えば次の(a)〜(e)のように行われる。(a)外部メモリ60(図3参照)(「機能制限」の設定を行うための外部媒体)が、過負荷コントローラ50に挿入される。(b)次に、予め設定された操作(特別に設定された操作)が行われる。例えば、各種設定用・調整用スイッチ(例えばディップスイッチ)の状態が、予め設定された設定(「規定の設定」)に変更される。(c)次に、過負荷コントローラ50のスイッチ(コントロールスイッチなど)が長押し(例えば3秒以上)される。これにより、外部メモリ60から過負荷コントローラ50に、データが読み込まれる。そして、「機能制限」の設定が許可される。(d)外部メモリ60の設定に従って、機能制限項目が決定される。(e)過負荷コントローラ50のスイッチ(コントロールスイッチ)の操作により、「機能制限」の設定処理が決定される(例えば、「機能制限」の実行や解除が確定される)。
【0047】
(機能制限をする者)
図7に示すように、遠隔操作による「機能制限」の実行権限は、例えば、事業者、元請会社、現場監督者、クレーン所有者(リース会社など)、および債権者(銀行など)などに与えられる。これらの者は、メーカーの事務局(管理事務局、管理センター)に、「機能制限」の実行を申請する。申請を受けたメーカーは、通信網およびサーバーを介して、作業機械1(図2参照)の「機能制限」を設定する。遠隔操作による「機能制限」が実行される場合の具体例は次の通りである。例えば、債権者への支払い義務の滞りなどを理由に、債権者が「機能制限」の実行をメーカーの事務局に申請し、「機能制限」が実行される。また例えば、作業機械1のオペレータが、勝手に(例えば作業機械1の所有者の許可なく)作業機械1を動作させている場合、「機能制限」が実行される。また例えば、作業機械1による不安全行動に対し、当局からの行政指導により、「機能制限」が実行される。手動操作による「機能制限」の実行権限は、例えば、元請会社、現場監督者、クレーン所有者(リース会社など)などに与えられる。
【0048】
(変形例1)
図8に示すように、「機能制限」は、風速に応じて実行や解除されてもよい。例えば、悪天候で作業機械1が使用される場合、例えば風速10m/s以上の強風が吹いている場合には、作業機械1によるクレーン操作を禁止する必要がある。そこで、風速計171により断続的に10m/s以上の強風が感知された場合、機能制限コントローラ40cは「機能制限」を実行する。変形例1の機能制限装置40は、風速計171と、風速関連コントローラ175(機能制限コントローラ40c)と、を備える。
【0049】
風速計171は、作業機械1の近傍での風速を測定し、例えば上部旋回体20またはアタッチメントなどに取り付けられる。風速関連コントローラ175は、風速計171と、過負荷コントローラ50と、に接続される。風速関連コントローラ175は、風速計171で測定された風速(例えば、測定された風速の所定時間内での平均値)が、許容値(風速許容値)を超えるか否かを判定する。風速許容値は、風速関連コントローラ175に予め設定され、例えば10m/sなどである。測定された風速が風速許容値を超える場合、機能制限コントローラ40cは「機能制限」を実行する。さらに詳しくは、この場合、風速関連コントローラ175は、過負荷コントローラ50に疑似過負荷状態と判定させる。この場合、例えば、「機能制限」の実行の開始は、次回のエンジン21始動時ではなく、測定された風速が風速許容値を超えた時(例えば直後)に行われる。機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行し、巻上動作を制限する(例えば停止させる)ことで、作業機械1による吊り作業を制限する。このように「機能制限」を実行させるために、機械コントローラ41に予め設定される所定条件には、測定された風速が風速許容値を超えたことが含まれる。測定された風速が風速許容値以下の場合、機能制限コントローラ40cは「機能制限」を実行しない。
【0050】
(変形例2)
図9に示すように、「機能制限」は、不適切操作(例えば不安全行動)に応じて実行されてもよく、例えば、不適切操作の実行回数などに応じて実行されてもよい。変形例2の機能制限装置40は、不適切操作カウンタ275(機能制限コントローラ40c)を備える。不適切操作カウンタ275は、過負荷コントローラ50に接続される。不適切操作カウンタ275は、不適切操作の実行回数をカウントする。不適切操作は、予め不適切操作カウンタ275などに設定され、例えば、過負荷処理、過負荷解除、過巻解除、などである。不適切操作カウンタ275には、不適切操作の実行回数の上限値が設定される。不適切操作カウンタ275にカウントされた不適切操作の実行回数が上限値を超えたとき、機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行する。さらに詳しくは、このとき、不適切操作カウンタ275は、過負荷コントローラ50に疑似過負荷状態であると判定させる。このように「機能制限」を実行させるために、機械コントローラ41に予め設定される所定条件には、不適切操作の実行回数が上限値を超えたことが含まれる。この機能により、作業機械1の使用者(オペレータなど)の安全操業意識を高めることができる。
【0051】
(効果1)
図2に示す作業機械1の機能制限装置40による効果は次の通りである。
[構成1−1]機能制限装置40は、作業機械1の動作の一部のみを制限する「機能制限」を実行する、機能制限コントローラ40cを備える。
[構成1−2]機能制限コントローラ40cは、過負荷コントローラ50と(過負荷防止部)と、機械コントローラ41(指令部)と、を備える。
[構成1−3]過負荷コントローラ50は、作業機械1の状態が過負荷状態であると判断したときに、作業機械1の動作を自動的に制限する。
[構成1−4]機械コントローラ41には、過負荷状態であることとは異なる所定条件が予め設定される。機械コントローラ41は、過負荷コントローラ50に指令を出力する。
[構成1−5]機能制限コントローラ40cは、上記の所定条件が満たされたときに、機械コントローラ41が過負荷コントローラ50に過負荷状態であると判断させることにより、「機能制限」を実行する。
[構成1−6]機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、吊荷Lを巻き上げる動作(巻上動作)を制限する。
【0052】
上記[構成1−1]のように、「機能制限」では、作業機械1の動作の一部のみが制限される。よって、「機能制限」が実行されていても、作業機械1を動作させることが可能な状態が確保される。例えば、「機能制限」が実行されていても、作業機械1は、必要最低限の動作が可能である。
上記[構成1−6]により、機能制限コントローラ40cは、巻上動作を制限する。よって、巻上動作を用いた、作業機械1の作業を制限できる。その結果、例えば、作業機械1による作業が実質的に不可能になる。
したがって、作業機械1を動作させることが可能な状態を確保しつつ、作業機械1による作業を制限できる。
【0053】
上記[構成1−3]の過負荷コントローラ50は、既存の作業機械が通常備えているもの(過負荷防止装置などの既存の装置)である。上記[構成1−4]および[構成1−5]により、機能制限コントローラ40cは、既存の装置を利用して「機能制限」を実行できる。よって、既存の装置を利用しない場合に比べ、機能制限装置40を容易に実現(開発、製造など)できる。なお、過負荷コントローラ50は、既存の装置をそのまま利用したものでなくてもよく、例えば、既存の装置に関する技術(既存の技術)を利用したものなどでもよい。この場合も、既存の技術を利用しない場合に比べ、機能制限装置40を容易に実現できる。
【0054】
(効果2)
[構成2]機能制限コントローラ40cは、作業機械1の動作を制限する処理に関するソフトウェアを実行することにより、「機能制限」を実行する。
上記[構成2]により、「機能制限」の開発や、内容の変更が容易である。
【0055】
(効果詳細)
上記[構成2]による効果の詳細は次の通りである。既存の作業機械に対して、ハードウェアの変更(改造、追加など)を行わなくても、ソフトウェア(プログラム)の変更を行うのみで、機能制限装置40を実現できる。よって、既存の作業機械に対してハードウェアおよびソフトウェアの両方の変更を行う必要がある場合に比べ、機能制限装置40を容易に実現できる。ハードウェアの変更が不要なので、ハードウェアの技術検証が不要である。その結果、機能制限装置40の開発コストおよび開発期間を抑制できる。
上記[構成2]により、既存の過負荷防止装置のプログラムなど(具体的には例えば一連の制御フロー(S1、S2、S3)など)に対し、「機能制限」に関するプログラム(具体的には例えば停止処理S10)を追加することで、機能制限装置40を実現できる。よって、既存の過負荷防止装置のプログラムなどを利用できない場合に比べ、機能制限装置40を容易に実現できる。
上記[構成2]により、ソフトウェアの変更を行うのみで、「機能制限」の内容(機能制限項目)を変更できる。よって、作業機械1の作業環境や使用目的などに応じた、機能制限項目の変更や設定が容易に行える。
【0056】
(効果3)
作業機械1は、吊荷Lを吊るブーム31を備える。
[構成3]機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、ブーム31の起伏動作(ブーム起伏動作)を制限する。
上記[構成3]により、ブーム起伏動作を用いた、作業機械1の作業を制限できる。
【0057】
(効果4)
作業機械1は、作業機械1を走行させる下部走行体11(下部本体)を備える。
[構成4]機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、下部走行体11の走行動作を制限する。
上記[構成4]により、走行動作を用いた、作業機械1の作業や移動を制限できる。
【0058】
(効果5)
作業機械1は、下部走行体11と、下部走行体11に対して旋回可能である上部旋回体20と、を備える。機能制限コントローラ40c(機械コントローラ41)は、下部走行体11に対する上部旋回体20の旋回の動作である旋回動作を制御する。
[構成5]機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、下部走行体11に対する上部旋回体20の旋回動作を制限する。
上記[構成5]により、旋回動作を用いた、作業機械1の作業を制限できる。
【0059】
(効果6)
作業機械1は、作業機械1の動作の駆動源であるエンジン21を備える。
機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行させる指令である開始指令の入力に応じて「機能制限」の実行を開始する。
[構成6]機能制限コントローラ40cは、「機能制限」の解除中かつエンジン21の駆動中に開始指令が入力されたとき、開始指令が入力されてから初めてエンジン21が停止する時まで「機能制限」の解除を継続する。そして、機能制限コントローラ40cは、次回のエンジン21の始動時に「機能制限」の実行を開始する。
【0060】
作業機械1の作業中に「機能制限」の実行が開始されると、不適切な状況(例えば安全が確保されないなど)が生じるおそれがある。そこで、機能制限装置40は、上記[構成6]を備える。よって、作業機械1の作業中ではないタイミングで、「機能制限」の実行を開始できる。
【0061】
(効果7)
作業機械1は、作業機械1を走行させる下部走行体11を備える。
[構成7]機能制限コントローラ40cは、「機能制限」を実行しているとき、下部走行体11の動作である走行動作が可能な状態とする。
上記[構成7]により、「機能制限」が実行されても、作業機械1を移動させることができる(作業機械1が立ち往生しない)。
【0062】
(その他の変形例)
上記実施形態およびその変形例は、さらに様々に変形できる。上記実施形態と変形例とを組み合わせてもよい。具体的には例えば、機能制限装置40は、遠隔操作または手動操作による「機能制限」の設定が可能であり、かつ、風速に応じた「機能制限」の設定が可能であってもよい。
上記実施形態などの構成要素の一部がなくてもよい。例えば、機能制限装置40は、通信コントローラ43を備えなくてもよく、遠隔操作による「機能制限」の設定が不可能でもよい。また例えば、機能制限装置40は、手動操作による「機能制限」の設定が不可能でもよい。
上記実施形態では、機能制限装置40は、既存の過負荷防止装置の機能を利用したものであった。しかし、機能制限装置40は、既存の過負荷防止装置の機能を利用しなくてもよく、例えば、「機能制限」の実行専用のコントローラ(機能制限コントローラ40c)が設けられてもよい。
機能制限コントローラ40cの構成は変形されてもよい。例えば、上記実施形態では、機械コントローラ41には、作業機械1の動作を制御する機能と、所定条件が満たされたときに過負荷コントローラ50に過負荷状態であると判断させる機能と、があった。しかし、これらの機能ごとにコントローラが設けられてもよい。
上記実施形態では、外部メモリ60により機能制限項目が変えられたが、通信コントローラ43を介した遠隔操作により機能制限項目が変えられてもよい。
「機能制限」の実行の開始(解除も同様)は、次回のエンジン21の始動時に行われなくてもよく、エンジン21の駆動中に行われてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 作業機械
11 下部走行体(下部本体)
20 上部旋回体
21 エンジン
31 ブーム
40 機能制限装置
40c 機能制限コントローラ
41 機械コントローラ(指令部)
50 過負荷コントローラ(過負荷防止部)
L 吊荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9