(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステッピングモータと、 前記ステッピングモータの回転位置を検出するセンサと、 前記ステッピングモータが一定の回転位置で停止したときの位相を基準位相として記憶する記憶部と、 前記ステッピングモータの回転を停止させる際に、前記センサからの検出信号に基づいて、所定の回転位置を目標位置として前記ステッピングモータを停止させた後、当該所定の回転位置に対応する前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させるモータ制御部とを備えたことを特徴とするモータ駆動機構。
前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させたときの位相が、前記基準位相と一致するか否かを判定する位相判定処理部をさらに備え、 前記モータ制御部は、前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させたときの位相が、前記基準位相とは異なると判定された場合にのみ、前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させることを特徴とする請求項1に記載のモータ駆動機構。
前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させたときの位相と前記基準位相との位相差を閾値と比較する位相差比較処理部をさらに備え、 前記モータ制御部は、前記位相差が前記閾値以下である場合にのみ、前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載のモータ駆動機構。
ステッピングモータの回転位置を検出するセンサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させるモータ停止ステップと、 前記ステッピングモータが停止したときの位相を基準位相として記憶部に記憶させる基準位相記憶ステップとを含み、 前記モータ停止ステップでは、前記基準位相記憶ステップよりも後に前記ステッピングモータの回転を停止させる際に、前記センサからの検出信号に基づいて、所定の回転位置を目標位置として前記ステッピングモータを停止させた後、当該所定の回転位置に対応する前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させることを特徴とするモータ駆動方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9A及び
図9Bは、ステッピングモータの回転制御を行う際の態様について説明するためのタイムチャートである。ステッピングモータは、例えば一定周期で出力されるクロック信号がパルス信号として入力されることにより、パルス数に応じた位相で回転する。この例では、1−2相励磁方式のステッピングモータが用いられることにより、8パルスで位相が1回転するような構成となっている。ステッピングモータが回転する間に、位相が「0」から「7」までインクリメントされ、2回転目以降の位相は再び「0」から繰り返しインクリメントされる。
【0007】
例えば、装置の初回使用時において、センサによる検出信号に基づいてステッピングモータの回転を停止させたときの位相が、
図9Aのように「5」であったとする。この場合、その後に装置の電源がオフ状態とされ、再び装置の電源がオン状態とされた場合には、位相「5」に対応する回転位置を基準としてステッピングモータの回転制御が行われる。そして、センサの検出精度が高ければ、その後にステッピングモータの回転を停止させたときの位相も「5」となる。
【0008】
しかしながら、センサの検出精度が低い場合や、経年変化などによってセンサの検出精度が低下した場合、あるいは、装置内の機構部に振動が生じている場合などには、ステッピングモータの停止位置の再現性が損なわれる場合がある。このような場合には、例えば
図9Bに示すように、センサによる検出信号に基づいてステッピングモータの回転を停止させたときの位相がずれてしまうおそれがある。
【0009】
図9Bの例では、センサによる検出信号に基づいてステッピングモータの回転を停止させたときの位相が、「5」から「3」に2位相分だけずれている。この場合、その後に装置の電源がオフ状態とされ、再び装置の電源がオン状態とされた場合には、位相「3」に対応する回転位置を基準としてステッピングモータの回転制御が行われるため、2位相分のずれが生じた状態のままステッピングモータが回転することとなる。
【0010】
このようなステッピングモータの位相のずれは、正確な動作が要求される装置においては致命的となる場合がある。例えば、上述のような分注装置において、位相がずれた状態のままステッピングモータが回転した場合には、試料容器内に挿入されるプローブの先端位置がずれることにより、試料の吸入量に誤差が生じ、試料を精度よく分注することができなくなるおそれがある。
【0011】
このような問題が生じるのを防止するために、例えばロータリーエンコーダなどを用いて絶対座標を測定するような構成とすることも考えられる。しかしながら、このような場合には、ステッピングモータの停止位置の再現性を向上することはできるものの、ロータリーエンコーダなどを用いた機構は高価であるため、製造コストが高くなるという問題がある。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、安価な構成でステッピングモータの停止位置の再現性を向上することができるモータ駆動機構及びモータ駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るモータ駆動機構は、ステッピングモータと、センサと、記憶部と、モータ制御部とを備える。前記センサは、前記ステッピングモータの回転位置を検出する。前記記憶部は、前記ステッピングモータが一定の回転位置で停止したときの位相を基準位相として記憶する。前記モータ制御部は、前記ステッピングモータの回転を停止させる際に、前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させた後、前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させる。
【0014】
このような構成によれば、センサからの検出信号に基づいてステッピングモータが停止した後、基準位相までステッピングモータが回転して停止するため、ステッピングモータの停止位置が常に一定となる。また、ロータリーエンコーダなどの高価なセンサを用いなくても、ステッピングモータの基準位相を記憶しておくことにより、その基準位相に基づいてステッピングモータを正確に停止させることができる。したがって、センサの検出精度が低い場合や、経年変化などによってセンサの検出精度が低下した場合、あるいは、装置内の機構部に振動が生じている場合などであっても、安価な構成でステッピングモータの停止位置の再現性を向上することができる。
【0015】
前記モータ駆動機構は、前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させたときの位相が、前記基準位相と一致するか否かを判定する位相判定処理部をさらに備えていてもよい。この場合、前記モータ制御部は、前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させたときの位相が、前記基準位相とは異なると判定された場合にのみ、前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させてもよい。
【0016】
このような構成によれば、センサからの検出信号に基づいてステッピングモータが停止したときに、ステッピングモータの位相が基準位置とは異なる場合にのみ、基準位相までステッピングモータが回転して停止する。したがって、センサからの検出信号に基づいてステッピングモータが停止したときの位相が基準位相と同一である場合には、その後にステッピングモータを回転させるための動作が行われないため、無駄な動作を最小限に抑えることができる。
【0017】
前記モータ駆動機構は、前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させたときの位相と前記基準位相との位相差を閾値と比較する位相差比較処理部をさらに備えていてもよい。この場合、前記モータ制御部は、前記位相差が前記閾値以下である場合にのみ、前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させてもよい。
【0018】
このような構成によれば、センサからの検出信号に基づいてステッピングモータが停止したときの位相と基準位相との位相差が閾値より大きい場合には、その後にステッピングモータを回転させるための動作が行われない。上記位相差が閾値より大きい場合には、センサ又はステッピングモータなどの部材が故障している可能性があるため、その後のステッピングモータの動作に制限を加えることにより、異常な動作によって悪影響が生じるのを防止することができる。
【0019】
前記モータ駆動機構は、前記位相差が前記閾値より大きい場合に異常を報知する異常報知処理部をさらに備えていてもよい。
【0020】
このような構成によれば、センサからの検出信号に基づいてステッピングモータが停止したときの位相と基準位相との位相差が閾値より大きい場合に、異常を報知することができる。これにより、センサ又はステッピングモータなどの部材が故障している可能性が高いことを作業者に報知することができるため、異常な動作によって悪影響が生じるのを効果的に防止することができる。
【0021】
本発明に係るモータ駆動方法は、モータ停止ステップと、基準位相記憶ステップとを含む。前記モータ停止ステップでは、ステッピングモータの回転位置を検出するセンサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させる。前記基準位相記憶ステップでは、前記ステッピングモータが停止したときの位相を基準位相として記憶部に記憶させる。前記モータ停止ステップでは、前記基準位相記憶ステップよりも後に前記ステッピングモータの回転を停止させる際に、前記センサからの検出信号に基づいて前記ステッピングモータを停止させた後、前記基準位相まで前記ステッピングモータを回転させて停止させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、センサの検出精度が低い場合や、経年変化などによってセンサの検出精度が低下した場合、あるいは、装置内の機構部に振動が生じている場合などであっても、安価な構成でステッピングモータの停止位置の再現性を向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るモータ駆動装置が備えられた分注装置1の構成例を示す概略平面図である。この分注装置1は、例えば血液などの各種試料を分析するための分析装置に備えられ、試料が収容された複数の試料容器2内から試料を吸引して分注することができる。
【0025】
試料容器2は、試料設置部3にセットされる。試料設置部3には、複数の試料容器2を保持することができる。当該試料設置部3に保持されている試料容器2から、プローブ8を用いて試料が吸引される。プローブ8は、鉛直方向(
図1における紙面前後方向)に延びるようにプローブ保持機構81により保持されている。
【0026】
図2A及び
図2Bは、試料容器2から試料を吸引する際の動作について説明するための概略断面図である。試料容器2から試料を吸引する試料吸引動作時には、試料容器2内に開口部21からプローブ8が挿入され、プローブ8が試料容器2内の試料中に浸漬された状態でポンプ(図示せず)を駆動させることにより、試料容器2内の試料が吸引される。
【0027】
プローブ保持機構81には、水平方向に延びるプローブアーム811が備えられており、当該プローブアーム811の一端部にプローブ8が保持されている。プローブアーム811は、その他端部に取り付けられた回転軸812を中心に回転可能に保持されている。したがって、回転軸812を中心にプローブアーム811を回転させれば、プローブ8を円弧状の軌道813に沿って水平方向に移動させることができる(
図1参照)。また、プローブアーム811は、回転軸812に沿って鉛直方向にも移動させることができる。
【0028】
プローブ8を試料容器2内に挿入する際には、プローブアーム811を回転させることにより、プローブ8を試料容器2の上方に水平移動させた後(
図2A参照)、プローブアーム811を鉛直下方に移動させることにより、プローブ8を先端から試料容器2内に挿入させる(
図2B参照)。このようなプローブ8の移動は、モータなどを含むプローブ駆動機構(図示せず)を駆動させることにより行われる。
【0029】
試料の分注動作を行う際には、上記のようにして試料容器2内にプローブを挿入させ、当該プローブ8で試料を吸引することにより試料吸引動作を行った後、プローブアーム811を鉛直上方に移動させることにより、試料容器2内からプローブ8を退避させる。そして、プローブアーム811を回転させることにより、軌道813上の分注口814の上方にプローブ8を水平移動させ、再びプローブアーム811を鉛直下方に移動させる。これにより、分注口814にプローブ8が挿入され、この状態で予め吸引されている試料を吐出することにより、分注口814に試料を分注することができる。
【0030】
分注口814に分注される試料には、試薬が混合される場合がある。本実施形態では、試薬が収容された複数の試薬容器4が試薬設置部5にセットされる。試薬容器4内の試薬は、プローブ7によって吸引される。プローブ7は、鉛直方向(
図1における紙面前後方向)に延びるようにプローブ保持機構71により保持されている。
【0031】
試薬を吸引するためのプローブ7及びプローブ保持機構71は、上述した試料を吸引するためのプローブ8及びプローブ保持機構81と同様の構成を有しており、水平方向に延びるプローブアーム711が備えられている。プローブアーム711は、その一端部にプローブ7が保持されており、他端部に取り付けられた回転軸712を中心に回転可能に保持されている。したがって、回転軸712を中心にプローブアーム711を回転させれば、プローブ7を円弧状の軌道713に沿って水平方向に移動させることができる。また、プローブアーム711は、回転軸712に沿って鉛直方向にも移動させることができる。
【0032】
試薬を吸引するためのプローブ7、及び、試料を吸引するためのプローブ8は、それぞれ異なる軌道713,813に沿って水平方向に移動するが、これらの軌道713,813は平面視で一部交差している。この軌道713,813が交差する部分に分注口814が配置されることにより、分注口814に試料だけでなく試薬も分注することができるようになっている。分注口814に試薬を分注する際のプローブ7の動作は、
図2A及び
図2Bを用いて説明した分注口814に試料を分注する際のプローブ8の動作と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0033】
図3は、プローブ保持機構81の構成例を示す概略側面図である。プローブ保持機構81には、上述のプローブアーム811及び回転軸812の他に、例えば回転モータ820、回転板821、回転センサ822、昇降モータ830、昇降板831及び昇降センサ832などが備えられている。
【0034】
回転モータ820は、プローブアーム811を水平方向に回転させるためのモータであり、回転軸812を回転させることにより、当該回転軸812に取り付けられているプローブアーム811を回転させる。回転板821は、回転軸812に固定されている。したがって、回転モータ820の駆動により回転軸812が回転した場合には、回転板821も回転軸812とともに回転するようになっている。
【0035】
図4は、回転板821の構成例を示す平面図である。回転板821は、例えば円板状の回転体であり、その外周面には複数の切欠き823が形成されている。各切欠き823は、回転軸812が挿通される挿通孔826を中心とする同一の軌道上に位置している。回転センサ822は、例えばフォトインタラプタにより構成されており、発光部824及び受光部825を備えている。回転センサ822の発光部824からの光は、回転板821の各切欠き823の軌道上に照射されるようになっている。
【0036】
したがって、回転板821のいずれかの切欠き823が発光部824からの光の光軸上に位置しているときには、その光が切欠き823を介して受光部825により受光される。一方、いずれの切欠き823も発光部824からの光の光軸上に位置していないときには、その光が回転板821によって遮られるため、受光部825により光が検出されない。
【0037】
このような構成により、回転センサ822は、回転モータ820の回転位置、より具体的には回転モータ820により回転される対象物(例えば回転軸812)の回転位置を検出することができる。ただし、回転センサ822は、フォトインタラプタのような透過型センサに限らず、例えば発光部から光を照射し、対象物からの反射光が入射するか否かに基づいて対象物の回転位置を検出するような反射型センサなどのように、他のセンサにより構成されていてもよい。
【0038】
図1に示すような例においては、例えばプローブ8が分注対象となる試料容器2上に位置する状態、分注口814上に位置する状態など、プローブ8の各停止位置に対応付けて回転板821に各切欠き823が形成されている。これにより、回転センサ822からの検出信号に基づいて回転モータ820を停止させれば、水平方向の各停止位置にプローブ8を停止させることができる。
【0039】
昇降モータ830は、プローブアーム811を鉛直方向に昇降させるためのモータであり、回転軸833を介してプローブアーム811に連結されている。この昇降モータ830を駆動させた場合には、回転軸833が昇降モータ830に対して相対的に回転することにより、回転軸833が鉛直方向に上下動するようになっている。昇降板831は、回転軸833に固定されている。したがって、昇降モータ830の駆動により回転軸833が鉛直方向に上下動した場合には、昇降板831も回転軸833とともに上下動するようになっている。
【0040】
昇降板831の鉛直方向の位置は、昇降センサ832により検出される。
図1に示すような例においては、例えばプローブ8を試料に浸漬させる位置や、試料から退避させる位置など、鉛直方向におけるプローブ8の各停止位置を昇降センサ832により検出し、その検出信号に基づいて昇降モータ830を停止させることにより、鉛直方向の各停止位置にプローブ8を停止させることができる。昇降センサ832は、例えば透過型センサ又は反射型センサなどにより構成することができるが、これらのセンサに限られるものではない。
【0041】
上述の回転モータ820及び昇降モータ830は、例えばステッピングモータにより構成されており、一定周期で出力されるクロック信号がパルス信号として入力されることにより、パルス数に応じた位相で回転する。本実施形態では、回転モータ820及び昇降モータ830が、8パルスで位相が1回転する1−2相励磁方式のステッピングモータにより構成されている。
【0042】
ただし、回転モータ820及び昇降モータ830は、1−2相励磁方式のステッピングモータに限らず、他のステッピングモータにより構成されていてもよい。例えば、2相ステッピングモータや5相ステッピングモータなどの異なる種類のステッピングモータであってもよいし、2相励磁方式やマイクロステップ方式などの異なる励磁方式のステッピングモータであってもよい。また、クロック型に限らず、例えばフェーズ型などの他の種類の制御命令方式を用いたモータドライバを使用してもよい。
【0043】
図5は、分注装置1の電気的構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る分注装置1には、例えばCPU(Central Processing Unit)などにより構成される制御部9が備えられている。また、分注装置1には、モータ820,830を回転させる際のパルス数をカウントするためのカウンタ10の他、例えばRAM(Random Access Memory)又はハードディスクなどにより構成される記憶部20や、液晶表示器などにより構成される表示部30が備えられている。
【0044】
制御部9は、CPUがプログラムを実行することにより、モータ制御部91、位相判定処理部92、位相差比較処理部93及び異常報知処理部94などとして機能する。モータ制御部91は、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830の動作を制御する。すなわち、モータ制御部91は、回転モータ820及び昇降モータ830に対して、それぞれパルス信号を入力することにより個別に回転させるとともに、回転センサ822及び昇降センサ832からの検出信号に基づいて個別に回転を停止させる。
【0045】
モータ制御部91からモータ820,830に入力されるパルス信号の数(パルス数)は、カウンタ10によりカウントされる。カウンタ10は、各モータ820,830に対応付けて設けられている。各モータ820,830が回転する間に、各モータ820,830に対応するカウンタ10は、例えば「0」から「7」までインクリメントされ、2回転目以降の位相は再び「0」から繰り返しインクリメントされる。
【0046】
本実施形態のように、8パルスで位相が1回転するような1−2相励磁方式のステッピングモータからなるモータ820,830においては、カウンタ10によるカウント値がモータ820,830の位相に対応している。したがって、カウンタ10のカウント値に基づいてモータ820,830の位相を判別することができる。ただし、カウンタ10を用いてモータ820,830の位相を判別するような構成に限らず、例えばモータ制御部91から出力されるパルス数を制御部9が把握している場合には、そのパルス数に基づいてモータ820,830の位相を判別してもよい。
【0047】
モータ820,830の位相は、例えば分注装置1の初回使用時などのように、一定の取得タイミングでモータ820,830が停止したときのカウンタ10のカウント値に基づいて取得され、その位相が基準位相として記憶部20に記憶される。記憶部20は不揮発性メモリにより構成されており、分注装置1の電源をオフ状態とした場合であっても、基準位相は記憶部20に記憶された状態のまま維持される。
【0048】
上記基準位相は、センサ822,832の検出信号に基づいて一定の回転位置でモータ820,830が停止したときの位相であり、その後の分注装置1の動作時にモータ820,830を停止させる際の基準となる位相である。そのため、上記取得タイミングは、センサ822,832の検出精度が低下するよりも前、すなわち、センサ822,832の検出信号に基づくモータ820,830の停止位置の精度が高い期間中であることが好ましい。
【0049】
位相判定処理部92は、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときの位相が、基準位相と一致するか否かを判定する。例えば分注装置1の2回目以降の使用時(分注動作時)には、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときに、カウンタ10のカウント値に基づいてモータ820,830の位相が取得され、その位相が記憶部20に記憶されている基準位相と一致するか否かが判定される。
【0050】
このとき、センサ822,832の検出精度の低下や、分注装置1内の機構部の振動といった誤差要因がなければ、カウンタ10のカウント値に基づいて取得されたモータ820,830の位相は基準位相と一致する。しかし、上記のような誤差要因がある場合には、取得された位相が基準位相とは一致しない場合がある。このように、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときの位相が、基準位相とは異なると位相判定処理部92により判定された場合には、モータ制御部91は、基準位相までモータ820,830を回転させて停止させる。
【0051】
すなわち、回転センサ822からの検出信号に基づいて回転モータ820を停止させたときの位相が、当該回転モータ820の基準位相として記憶部20に記憶されている位相と異なる場合には、当該基準位相まで回転モータ820が回転して停止する。一方、昇降センサ832からの検出信号に基づいて昇降モータ830を停止させたときの位相が、当該昇降モータ830の基準位相として記憶部20に記憶されている位相と異なる場合には、当該基準位相まで昇降モータ830が回転して停止する。これらの処理は、回転モータ820又は昇降モータ830のいずれか一方についてのみ行われてもよいし、両方について行われてもよい。
【0052】
このように、本実施形態では、モータ820,830の回転が停止する際に、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830が停止した後、基準位相までモータ820,830が回転して停止するため、モータ820,830の停止位置が常に一定となる。また、ロータリーエンコーダなどの高価なセンサを用いなくても、モータ820,830の基準位相を記憶しておくことにより、その基準位相に基づいてモータ820,830を正確に停止させることができる。したがって、センサ822,832の検出精度が低い場合や、経年変化などによってセンサ822,832の検出精度が低下した場合、あるいは、分注装置1内の機構部に振動が生じている場合などであっても、安価な構成でモータ820,830の停止位置の再現性を向上することができる。
【0053】
特に、本実施形態では、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830が停止したときに、モータ820,830の位相が基準位置とは異なる場合にのみ、基準位相までモータ820,830が回転して停止する。したがって、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830が停止したときの位相が基準位相と同一である場合には、その後にモータ820,830を回転させるための動作が行われないため、無駄な動作を最小限に抑えることができる。
【0054】
位相差比較処理部93は、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときの位相と基準位相との位相差を閾値と比較する。このような比較は、回転モータ820を停止させたときの位相と当該回転モータ820に対応する基準位相との位相差、及び、昇降モータ830を停止させたときの位相と当該昇降モータ830に対応する基準位相との位相差について、それぞれ別々に行われる。この場合、各位相差と比較される閾値は、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0055】
本実施形態では、モータ制御部91が位相判定処理部92による判定結果に基づいてモータ820,830を回転させる際に、位相差比較処理部93による比較結果に応じて異なる処理を行うようになっている。具体的には、各位相差が閾値以下である場合にのみ、モータ制御部91は、基準位相までモータ820,830を回転させて停止させるようになっている。
【0056】
すなわち、回転センサ822からの検出信号に基づいて回転モータ820が停止したときの位相と基準位相との位相差が閾値より大きい場合、又は、昇降センサ832からの検出信号に基づいて昇降モータ830が停止したときの位相と基準位相との位相差が閾値より大きい場合には、その後に回転モータ820及び昇降モータ830を回転させるための動作が行われない。上記位相差が閾値より大きい場合には、センサ822,832又はモータ820,830などの部材が故障している可能性があるため、その後のモータ820,830の動作に制限を加えることにより、異常な動作によって悪影響が生じるのを防止することができる。
【0057】
異常報知処理部94は、上記位相差が閾値より大きい場合に異常を報知するための処理を行う。具体的には、回転センサ822からの検出信号に基づいて回転モータ820が停止したときの位相と基準位相との位相差が閾値より大きい場合、又は、昇降センサ832からの検出信号に基づいて昇降モータ830が停止したときの位相と基準位相との位相差が閾値より大きい場合に、異常である旨が表示部30に表示される。
【0058】
これにより、センサ822,832又はモータ820,830などの部材が故障している可能性が高いことを作業者に報知することができるため、異常な動作によって悪影響が生じるのを効果的に防止することができる。ただし、異常報知処理部94は、表示部30に対する表示によって異常を報知するような構成に限らず、例えば音声などの他の態様で異常を報知するような構成であってもよい。
【0059】
図6A及び
図6Bは、回転モータ820又は昇降モータ830の回転制御を行う際の態様について説明するためのタイムチャートである。例えば、分注装置1の初回使用時において、センサ822,832による検出信号に基づいてモータ820,830の回転を停止させたときの位相が、
図6Aのように「5」であったとする。この場合、基準位相として「5」が記憶部20に記憶される。
【0060】
センサ822,832の検出精度が高ければ、その後にモータ820,830の回転を停止させたときの位相も「5」となる。しかしながら、センサ822,832の検出精度が低い場合や、経年変化などによってセンサ822,832の検出精度が低下した場合、あるいは、分注装置1内の機構部に振動が生じている場合などには、モータ820,830の停止位置の再現性が損なわれる場合がある。このような場合には、例えば
図6Bに示すように、センサ822,832による検出信号に基づいてモータ820,830の回転を停止させたときの位相がずれてしまう。
【0061】
図6Bの例では、センサ822,832による検出信号に基づいてステッピングモータの回転を停止させたときの位相が、「5」から「3」に2位相分だけずれている。このように、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときの位相「3」が、基準位相「5」とは異なる場合には、基準位相「5」までモータ820,830が回転して停止する。
【0062】
この例では、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときの位相と基準位相との位相差が、許容範囲である閾値「2」以下である場合にのみ、基準位相までモータ820,830が回転して停止するようになっている。
図6Bの例では、上記位相差が「2」であり、閾値以下であるため、基準位相までモータ820,830が回転して停止することとなる。一方、例えばセンサ822,832による検出信号に基づいてステッピングモータの回転を停止させたときの位相が「6」や「7」などである場合には、上記位相差が閾値よりも大きくなるため、上記のような回転制御は行われず、異常が報知されることとなる。ただし、上記閾値は、「2」に限られるものではない。
【0063】
図7は、分注装置1の初回使用時にプローブアーム811を動作させる際の制御部9による処理の一例を示したフローチャートである。プローブアーム811を動作させる際には、モータ制御部91がモータ820,830の回転を開始させるとともに(ステップS101)、カウンタ10によるパルス数のカウントが開始される(ステップS102)。そして、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830が停止される。
【0064】
すなわち、センサ822,832から制御部9に検出信号が入力されたときに(ステップS103でYes)、モータ制御部91がモータ820,830の回転を停止させるとともに(ステップS104:モータ停止ステップ)、カウンタ10によるパルス数のカウントが停止される(ステップS105)。そして、モータ820,830が停止したときの位相が基準位相として記憶部20に記憶される(ステップS106:基準位相記憶ステップ)。
【0065】
図8は、分注装置1の2回目以降の使用時にプローブアーム811を動作させる際の制御部9による処理の一例を示したフローチャートである。分注装置1の2回目以降の使用時にプローブアーム811を動作させる際には、まず、初回使用時と同様にモータ制御部91がモータ820,830の回転を開始させるとともに(ステップS201)、カウンタ10によるパルス数のカウントが開始される(ステップS202)。そして、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830が停止される。
【0066】
すなわち、上記基準位相記憶ステップ(
図7のステップS106)よりも後にモータ820,830を停止させる際にも、まずはセンサ822,832から制御部9に検出信号が入力されたときに(ステップS203でYes)、モータ制御部91がモータ820,830の回転を停止させるとともに(ステップS204:モータ停止ステップ)、カウンタ10によるパルス数のカウントが停止される(ステップS205)。
【0067】
その後、センサ822,832からの検出信号に基づいてモータ820,830を停止させたときの位相が確認され(ステップS206)、その位相が基準位相と一致するか否かが判定される(ステップS207:位相判定ステップ)。その結果、上記位相が基準位相と一致すると判定された場合には(ステップS207でYes)、位相のずれが生じていないため、そのまま処理が終了する。一方、上記位相が基準位相とは異なると判定された場合には(ステップS207でNo)、当該位相と基準位相との位相差が算出され(ステップS208)、算出された位相差が閾値と比較される(ステップS209:位相差比較ステップ)。
【0068】
上記位相差が閾値以下である場合には(ステップS209でYes)、モータ制御部91が基準位相まで上記位相差分だけモータ820,830を回転させて停止させる(ステップS210:モータ停止ステップ)。これに対して、上記位相差が閾値よりも大きい場合には(ステップS209でNo)、表示部30に対する表示などによって作業者に異常が報知される(ステップS211:異常報知ステップ)。
【0069】
以上の実施形態では、回転モータ820及び昇降モータ830がいずれもステッピングモータにより構成され、各モータ820,830の回転位置がセンサ822,832により検出されるような構成について説明した。しかし、このような構成に限らず、回転モータ820又は昇降モータ830のいずれか一方のみがステッピングモータにより構成され、そのモータ820,830の回転位置がセンサ822,832により検出されるような構成であってもよい。
【0070】
また、プローブ保持機構81は、
図3に示すような構成に限らず、例えばXYZステージなどのような他の機構を用いてプローブ8を水平方向又は鉛直方向に移動させる構成であってもよい。この場合、ステッピングモータを用いてプローブ8を移動させるような構成であれば、当該ステッピングモータの回転を停止させる際に、上述した回転制御が行われるような構成であればよい。
【0071】
さらに、試料を吸引するためのプローブ8を移動させるプローブ保持機構81に限らず、例えば試薬を吸引するためのプローブ7を移動させるプローブ保持機構71にステッピングモータが備えられ、当該ステッピングモータの回転を停止させる際に、上述した回転制御が行われるような構成であってもよい。この場合、プローブ保持機構71は、
図3に示すようなプローブ保持機構81と同様の機構であってもよいし、例えばXYZステージなどのような他の機構を用いてピアサ7を水平方向又は鉛直方向に移動させる構成であってもよい。
【0072】
ただし、プローブ7,8に限らず、分注装置1に備えられたピアサなどの他の部分の動作に用いられるステッピングモータの回転を停止させる際に、上述した回転制御が行われるような構成であってもよい。さらに、本発明は、分注装置1に限らず、例えば分光光度計などの各種分析装置に適用することができる他、コピー機などの事務機器や、カメラなどの光学機器といった各種機器に適用することができる。