(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、複数の単電池を密に並べることによってコンパクトなサイズにされた蓄電装置が求められている。しかし、特許文献1に記載された蓄電装置のように単電池それぞれにキャップが装着されている場合、複数の単電池を密に並べると、キャップ間の隙間が狭くなる。その結果、キャップ間の隙間を通過する気流の流量が減少し、単電池の冷却性が低下する。
【0005】
そこで、本発明は、キャップが装着されている複数の単電池を並べた状態で備える蓄電装置を、単電池それぞれの冷却性の低下を抑制しつつ、複数の単電池を密に並べてコンパクトなサイズにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、
第1の方向に並べられた複数の単電池と、
複数の単電池それぞれにおける第1の方向と直交する第2の方向の一方側を覆うキャップと、を有し、
キャップが、隣接し合う単電池間の隙間それぞれに連通する複数の流路を備えている、蓄電装置が提供される。
【0007】
このような本発明の第1の態様によれば、キャップが装着されている複数の単電池を並べた状態で備える蓄電装置を、単電池それぞれの冷却性の低下を抑制しつつ、複数の単電池を密に並べてコンパクトなサイズにすることができる。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、
キャップが、それぞれが単電池における第2の方向の一方側を覆う複数のキャップであって、
複数のキャップそれぞれが、流路を構成する凹部を備える、第1の態様の蓄電装置が提供される。
【0009】
このような本発明の第2の態様によれば、複数の流路を複数のキャップそれぞれを貫通する貫通穴で構成する場合に比べて、キャップの剛性の低下を抑制することができる。その剛性の低下を抑制するためにその貫通穴が形成されたキャップの部分を肉厚に構成することが考えられるが、それによりキャップが大型化し、その結果として単電池を密に並べることが困難になる。
【0010】
本発明の第3の態様によれば、
複数のキャップそれぞれが、第1の方向の一方側に形成されて隣接し合う単電池間の隙間に連通する第1の凹部と、第1の方向の他方側に形成され、当該キャップの底部に連通し、且つ、隣接する他のキャップの第1の凹部と部分的に対向することによって流路を構成する第2の凹部とを備える、第2の態様の蓄電装置が提供される。
【0011】
このような本発明の第3の態様によれば、キャップの第1の方向の一方側のみまたは他方側のみに、隣接し合う単電池の隙間からキャップの底部まで延在する凹部を形成する場合に比べて、キャップの剛性の低下を抑制することができる。その剛性の低下を抑制するためにその凹部が形成されたキャップの部分を肉厚に構成することが考えられるが、それによりキャップが大型化し、その結果として単電池を密に並べることが困難になる。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、
複数のキャップが同一の形状を備える、第2または第3の態様の蓄電装置が提供される。
【0013】
このような第4の態様によれば、複数のキャップが異なる場合に比べて、蓄電装置の製造が容易になる。
【0014】
本発明の第5の態様によれば、
流路内に前記キャップによって覆われた単電池の部分の一部が露出するように、キャップが構成されている、第1から第4の態様のいずれか一の蓄電装置が提供される。
【0015】
このような本発明の第5の態様によれば、流路を通過する気流により、キャップによって覆われた単電池の部分が冷却される。
【0016】
本発明の第6の態様によれば、
第1の方向に並ぶ複数の単電池をキャップを介して保持するベース部を備え、
ベース部が複数の流路それぞれに対して対向する複数の開口を備える、第1から第5の態様のいずれか一の蓄電装置が提供される。
【0017】
このような第6の態様によれば、開口を介してキャップ間にピンポイントに気流が供給される。
【0018】
本発明の第7の態様によれば、
複数の単電池が複数列で第1の方向に並び、
隣接し合う一方の列の複数の単電池の隙間それぞれに連通する複数の流路に対して対向する複数の開口と、他方の列の複数の単電池の隙間それぞれに連通する複数の流路に対して対向する複数の開口が、第1の方向位置が異なるようにベース部に形成されている、第6の態様の蓄電装置が提供される。
【0019】
このような第7の態様によれば、隣接し合う一方の列複数の単電池の隙間それぞれに連通する複数の流路に対して対向する複数の開口と他方の列の複数の単電池の隙間それぞれに連通する複数の流路に対して対向する複数の開口とが第1の方向位置が同一になるようにベース部に設けられる場合に比べて、ベース部の変形および破損が抑制される。
【0020】
本発明の第8の態様によれば、
第1の方向に並ぶ複数の単電池を複数のキャップを介して保持するベース部を備え、
複数のキャップそれぞれがベース部と係合するための係合部を備え、
ベース部がキャップそれぞれの係合部と係合する複数の係合部を備え、
キャップの係合部とベース部の係合部が、隣接し合う一方のキャップの第1の凹部と他方のキャップの第2の凹部とが部分的に対向して流路を構成するように、互いに係合するように構成されている、第3の態様の蓄電装置が提供される。
【0021】
このような第8の態様によれば、隣接し合う一方のキャップの第1の凹部と他方のキャップの第2の凹部とが確実に部分的に対向し、それにより隣接し合うキャップの間に気流の流路が確実に形成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、キャップが装着されている複数の単電池を並べた状態で備える蓄電装置を、単電池それぞれの冷却性の低下を抑制しつつ、複数の単電池を密に並べてコンパクトなサイズにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態に係る蓄電装置について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1および
図2は、本発明の一実施の形態に係る蓄電装置の斜視図である。
図3は、蓄電装置の分解図である。なお、発明を理解しやすくするために、互いに直交し合うX軸、Y軸、およびZ軸からなるX−Y−Z座標系が定義されている。X軸方向は蓄電装置における幅方向を示し、Y軸方向は奥行き方向を示し、Z軸方向は高さ方向を示している。また、本明細書において、「上側」および「下側」は、図面において「上側」および「下側」を示すものであって、「下側」要素の上方に「上側」要素が必ず存在する状態で本発明に係る蓄電装置が使用されることに限定するものではない。
【0026】
図1〜
図3に示すように、蓄電装置10は、略直方体形状であって、その内部に電池モジュール12を有する。蓄電装置10は、例えば、回生エネルギを電気として蓄えるために、複数基並べて鉄道車両の下部に搭載される。
【0027】
図3に示すように、電池モジュール12は、複数の単電池14から構成されている。本実施の形態の場合、12個の単電池14が二列で奥行き方向(Y軸方向)に並ぶことにより、電池モジュール12が構成されている。
【0028】
図4は、電池モジュール12の分解図である。
図4に示すように、単電池14それぞれは、概ね直方体形状であって、外部端子としての正極端子14aおよび負極端子14bを、高さ方向(Z軸方向)の一方側の端面(上側端面)14cに備える。また、幅方向(X軸方向)、奥行き方向(Y軸方向)、および高さ方向(Z軸方向)のサイズにおいて、幅方向のサイズが最も大きく、奥行き方向のサイズが最も小さい。
【0029】
図4および
図5に示すように、電池モジュール12において、複数の単電池14は、電気的に直列に接続され、直列回路を構成する。具体的には、複数の単電池14の正極端子14aおよび負極端子14bそれぞれは、銅材料などで作製された金属プレート16を介して隣接する他の単電池14の正極端子14aおよび負極端子14bに電気的に接続されている。電池モジュール12の直列回路において末端それぞれに位置する一方の単電池14(14A)の負極端子14bと他方の単電池14(14B)の正極端子14aには、蓄電装置10の外部の装置(例えば他の蓄電装置10)と電気的に接続するための取り出し端子18が取り付けられている。
【0030】
図3〜
図7に示すように、単電池14それぞれの正極端子14aおよび負極端子14bは、第1のキャップ20によって覆われて保護されている。具体的には、第1のキャップ20は、樹脂材料から作製され、単電池14それぞれに2つずつ設けられている。一方の第1のキャップ20は、正極端子14a側の単電池14の角部を覆うように該角部に装着されている。他方の第1のキャップ20は、負極端子14b側の単電池14の角部を覆うように該角部に装着されている。なお、単電池14それぞれに装着される2つの第1のキャップ20は別体であるが、一体であってもよい。
【0031】
図3〜
図7に示すように、個々の単電池14には、正極端子14aおよび負極端子14bが設けられた高さ方向(Z軸方向)の一方側の端部(上側端部)とは反対側の単電池14の他方側の端部(下側端部)に、第2のキャップ22がそれぞれ装着されている。
【0032】
第2のキャップ22は、第1のキャップ20と同様に樹脂材料から作製されている。しかし、第2のキャップ22は、第1のキャップ20と異なり、単電池14の下側端部を幅方向(X軸方向)および奥行き方向(Y軸方向)全体にわたって覆う。なお、この第2のキャップ22のさらなる詳細については後述する。
【0033】
図1〜
図3に示すように、蓄電装置10は、複数の単電池14(電池モジュール12)を保持するベース部24と、ベース部24に保持された複数の単電池14を覆うカバー部26とを有する。本実施の形態の場合、複数の単電池14(電池モジュール12)は、ベース部24とカバー部26とに挟持されている。このベース部24とカバー部26は、その幅方向(X軸方向)の両端がサイド部28、30に固定されることによって該サイド部28、30に支持されている。
【0034】
カバー部26は、例えば金属薄板を板金プレス加工することによって形成された部材であって、単電池14それぞれに装着された状態の第1のキャップ20を保持する。具体的には、第1のキャップ20それぞれには、高さ方向(Z軸方向)に突出する円柱状の係合部20aが設けられている。一方、カバー部26には、複数の第1のキャップ20それぞれの係合部20aが挿通可能な複数の係合穴26aが形成されている。
【0035】
ベース部24は、例えば金属薄板を板金プレス加工することによって形成された部材であって、単電池14それぞれに装着された状態の第2のキャップ22を保持する。具体的には、
図2、
図6〜
図9に示すように、特に
図9に示すように、単電池14の高さ方向(Z軸方向)の下側端部(正極端子14aおよび負極端子14bが設けられている上側端部とは反対側の端部)に対向する第2のキャップ22の底部22aに、高さ方向に突出する円柱状の2つの係合部22bが設けられている。一方、
図2、
図10〜
図11に示すように、ベース部24は、複数の単電池14を保持する電池保持部24aに、複数の第2のキャップ22それぞれの係合部22bが挿通可能な複数の係合穴24bを備える。
【0036】
第1のキャップ20それぞれの係合部20aがカバー部26の係合穴26aに挿通され、且つ、第2のキャップ22それぞれの係合部22bがベース部24の係合穴24bに挿通される。それにより、第1のキャップ20および第2のキャップ22が装着された状態の単電池14は、カバー部26とベース部24とによって挟持される。
【0037】
なお、複数の単電池14を第2のキャップ22を介して保持するベース部24は、蓄電装置10の基台として機能し、蓄電装置10全体の剛性に大きく関与する。したがって、ベース部24は、その変形を抑制するように構成されている。
【0038】
具体的には、
図3、
図10、および
図11に示すように、ベース部24は、複数の単電池14を保持する電池保持部24aの周縁から反単電池側(単電池14が存在しない側)に突出する枠状の第2のリブ24cと、第2のリブ24cに囲まれた電池保持部24aの部分から反単電池側に突出する第1のリブ24dとを備える。例えば、第2のリブ24cは、金属薄板の周縁を折り曲げて起こすことによって形成される。また例えば、第1のリブ24dは、切り起こしによって形成される。
【0039】
枠状の第2のリブ24cとその内側に設けられた第1のリブ24dとにより、電池保持部24a上の複数の単電池14の重量によるベース部24のたわみ変形が抑制されるとともに、ベース部24を軽量化することができる(リブ24c、24dがない場合に比べて)。
【0040】
第1のリブ24dおよび第2のリブ24cを設けることなくベース部24を構成する場合、そのベース部24は、複数の単電池14の重量によって変形しない厚みを備える金属板で作成する必要がある。しかし、その場合、ベース部24の重量が増加し、結果として蓄電装置10の重量が増加する。重量が増加した蓄電装置10は、車両などの移動体に搭載するのには適さない。
【0041】
一方、第1のリブ24dおよび第2のリブ24cを設けることにより、ベース部24を軽量な金属薄板で作成し、複数の単電池14の重量に対して十分な剛性(たわみ剛性および曲げ剛性)を確保することができる。また、
図2に示すように、複数の貫通穴(係合穴24bおよび後述する通風口(開口)24e)が形成されているベース部24の剛性を向上させることができる。それにより、車両などの移動体への搭載に適した、剛性が高く且つ軽量な蓄電装置10を実現することができる。
【0042】
なお、
図11に示すように、第1のリブ24dは、大きくたわみやすい第2のリブ24cに囲まれたベース部24の部分の中央に設けられるのが好ましい。また、ベース部24が一方向に長い場合、第1のリブ24dはベース部24の長手方向に延在するのが好ましい。本実施の形態の場合、第1のリブ24dは、幅方向(X軸方向)に延在している。
【0043】
また、蓄電装置10が平面上に載置されて使用される場合、枠状の第2のリブ24cとその内側に設けられた第1のリブ24dは、電池保持部24aからの突出高さが等しいのが好ましい。これにより、ベース部24の電池保持部24a上の複数の単電池14の重量を第2のリブ24cだけでなく、第1のリブ24dでも支えることができる。その結果、ベース部24の変形をより抑制することができる。
【0044】
さらにまた、第1のリブ24dおよび第2のリブ24cは、ベース部234の変形を抑制するだけでなく、放熱フィンの役割もする。すなわち、単電池14からベース部24に伝達された熱を外部に放出する役割をする。それにより、ベース部24は、放熱性に優れたヒートシンクとして機能し、単電池14を冷却することができる。
【0045】
加えて、第1のリブ24dがベース部24の電池保持部24aから反単電池側(単電池14が存在しない側)に突出しているため、複数の単電池14の電池保持部24a上での配置自由度が高い(第1のリブ24dが単電池側に突出する場合に比べて)。また、そのために、電池保持部24a上に配置できる単電池14の個数またはそのサイズが増加する。したがって、蓄電装置10のエネルギ密度が増加する。
【0046】
さらに、第1および第2のキャップ20、22が装着された状態の単電池14をベース部24に取り付けるときに、その単電池14が倒れないように第2のキャップ22は構成されている。
【0047】
具体的には、単電池14が傾いても第2のキャップ22の係合部22bがベース部24の係合穴24bから抜け出ないように、第2のキャップ22の係合部22bは十分な高さ(高さ方向(Z軸方向)のサイズ))を備える。これにより、第2のキャップ22が装着された状態の単電池14をベース部24上に取り付けるときに、その単電池14が既にベース部24に取り付け済みの単電池14に接触しても、その既に取り付け済みの単電池14が倒れることがなくなる。その結果、蓄電装置10の組み立て性が向上する。
【0048】
さらにまた、
図1に示すように、サイド部30には、蓄電装置10の状態を監視する監視モジュール32が取り付けられている。監視モジュール32は、例えば電池モジュール12の単電池14のいずれかに取り付けられたセンサ(図示せず)を介して、単電池14の温度および電圧を監視するように構成されている。
【0049】
加えて、
図3に示すように、サイド部28、30は、ベース部24およびカバー部26を支持するとともに、複数の断熱板(スペーサ)34を支持する。
【0050】
具体的には、断熱板34は、幅方向(X軸方向)の両端がサイド部28、30によって支持され、奥行き方向(Y軸方向)に隣接し合う単電池14間の隙間に配置される。この断熱板34により、隣接する単電池14からの放熱を原因とする単電池14の温度上昇が抑制される。
【0051】
単電池14の温度に関連して、
図1および
図3に示すように、単電池14を冷却するための気流が通過する幅方向(X軸方向)に長いスロット状の複数の通風口(開口)26bがカバー部26に形成されている。
【0052】
また、
図2および
図3に示すように、同様に、ベース部24にも、幅方向(X軸方向)に長いスロット状の複数の通風口24eが形成されている。
【0053】
図12は、蓄電装置10の概略的な断面図である。
図12に示すように、カバー部26の通風口26bは、奥行き方向(Y軸方向)に隣接し合う単電池14の間の隙間に対向するようにカバー部26に形成されている。
【0054】
一方、ベース部24の通風口24eは、奥行き方向(Y軸方向)に隣接し合う単電池14に装着された第2のキャップ22の間の隙間に対向するベース部24の位置に形成されている。したがって、カバー部26の通風口26bとベース部24の通風口24eは、高さ方向(Z軸方向)に対向する。
【0055】
カバー部26の通風口26bとベース部24の通風口24eとにより、奥行き方向(Y軸方向)に隣接し合う単電池14の間の隙間に、ベース部24の通風口24eからカバー部26の通風口26bに向かう気流F(破線)を発生させることが可能になる。
【0056】
例えば、蓄電装置10が鉄道車両の下部に取り付けられる場合、走行風がベース部24の通風口24eを介して流入し、単電池14間の隙間を通過し、そしてカバー部26の通風口26bを介して流出する。この場合、走行風をベース部24の通風口24eに導くダクトなどのガイド手段(図示せず)が蓄電装置10に設けられる。
【0057】
このようなカバー部26の通風口26bとベース部24の通風口24eとにより、蓄電装置10内の単電池14それぞれを気流Fによって冷却することができる。また、複数の単電池14の間の複数の隙間、すなわち複数の第2のキャップ22の間の複数の隙間に対向する位置に、ピンポイントに通風口24eをベース部24に形成することにより、ベース部24の剛性の低下を抑制することができる。すなわち、ベース部24に形成される開口部を最小限におさえ、それによりベース部24の剛性の低下が抑制される(剛性が十分に確保される)。
【0058】
なお、ベース部24の通風口24eの一部は、第1のリブ24dを切り起こしによって形成するときに生じる貫通穴で構成されている。これにより、ベース部24において、通風口24eと第1のリブ24dを同時に作成することができる。また、第1のリブ24dが、その対応する通風口24e内に気流Fを導くガイドとして機能する。その結果、通風口24eに対向する単電池14の間の隙間に多くの気流Fが流入し、それらの単電池14が効率よく冷却される。
【0059】
また、蓄電装置10(すなわちベース部24)を裏側から見た
図13に示すように、ベース部24に形成された複数の通風口24eは、ベース部24の長手方向(すなわち幅方向(X軸方向))に互いに対向しないように該ベース部24に形成されている。言い換えると、複数の通風口24eは、それぞれの奥行き方向(Y軸方向)の位置が異なる。
【0060】
具体的に説明すると、
図3に示すように、複数の単電池14は、二列で奥行き方向(Y軸方向)に並んでいる。したがって、その単電池14の間の隙間に気流Fを発生させるためのベース部24の通風口24eも二列で奥行き方向に並んでいる。
【0061】
このとき、一方の列(図中左側の列)の通風口24eと他方の列(図中右側の列)の通風口24eとが幅方向(X軸方向)に並ぶと、その間のベース部24の部分に応力が集中し、その部分でベース部24が変形するまたは破損する可能性がある。
【0062】
このような応力集中を緩和するために、
図13に示すように、一方の列の通風口24eと他方の列の通風口24eとが幅方向(X軸方向)に対向しないように、複数の通風口24eはベース部24に形成されている。具体的には、
図13に示すように、隣接し合う第2のキャップ22の間の隙間に対して通風口24eの奥行き方向(Y軸方向)の中心がずれ、且つ、一方の列の通風口24eと他方の列の通風口24eとが互いに逆方向にずれている。
【0063】
さらに、ベース部24の通風口24eは、
図2に示すように、その長手方向(X軸方向)が単電池14の長手方向(X軸方向)と平行になるようにベース部24に形成されている。すなわち、奥行き方向(Y軸方向)に隣接し合う単電池14間の隙間の長手方向と、通風口24eの長手方向が平行である。これにより、通風口24eを通過した気流Fの多くが、奥行き方向に隣接し合う単電池14の間の隙間の流入し、単電池14が効率よく冷却される(通風口24eの長手方向が奥行き方向に対向し合う単電池14間の隙間の長手方向に対してねじれの位置関係にある場合に比べて)。
【0064】
コンパクトな蓄電装置10を実現するためには、複数の単電池14は、可能な限り密に並べるのが好ましい。ただし、複数の単電池14を密に並べると、それらに装着された第2のキャップ22の間の隙間が狭くなる。その結果、単電池14の間の隙間を通過する気流Fの流量が減少し、単電池14の冷却性が低下する。
【0065】
その対処として、
図8に示すように、第2のキャップ22それぞれには、第1の凹部22cと第2の凹部22dとが形成されている。
【0066】
なお、本明細書で言う第2のキャップ22の「凹部」は、第2のキャップ22の外側表面から窪んだ部分を言い、外側表面から内側表面に至る貫通部も含まれる。
【0067】
図8に示すように、第1および第2の凹部22c、22dは、奥行き方向(Y軸方向)に対向し合う側壁部22e、22fそれぞれに形成されている。また、第1の凹部22cは切り込み状であって、第2の凹部22dは貫通穴状である。
【0068】
具体的には、奥行き方向(Y軸方向)に隣接し合う第2のキャップ22の断面図である
図14に示すように、第1の凹部22cは、第2のキャップ22の開口端22gから高さ方向(Z軸方向)の概ね中央部まで延在するように開口端22gから側壁部22eを切り込んで形成されている。すなわち、第1の凹部22cは、隣接し合う単電池14間の隙間に連通している。
【0069】
一方、第2の凹部22dは、第2のキャップ22の底部22aから高さ方向(Z軸方向)の概ね中央部まで延在するように側壁部22fを貫通して形成されている。言い換えると、第2の凹部22dは、
図8に示すように、第2のキャップ22の開口端22gから底部22aまで切り込み、その切り込みと開口端22gとに挟まれた2つの角部を幅方向(X軸方向)に延在する橋渡し部22jで連結することによって形成される貫通穴状である。すなわち、第2の凹部22dは、キャップ22の底部22aに連通している。
【0070】
したがって、第1の凹部22cの一部と第2の凹部22dの一部とが、第2のキャップ22の高さ方向(Z軸方向)の概ね中央位置で奥行き方向(Y軸方向)に対向している。
【0071】
図12および
図14に示すように、このような第1および第2の凹部22c、22dを備える複数の第2のキャップ22を奥行き方向(Y軸方向)に並べると、隣接し合う第2のキャップ22の一方の第1の凹部22cと他方の第2の凹部22dとが部分的に対向する。本実施の形態の場合、具体的には、第2のキャップ22の高さ方向(Z軸方向)の概ね中央位置で、一方の第2のキャップ22の第1の凹部22cと他方の第2のキャップ22の第2の凹部22dとが対向する。
【0072】
図14に示すように、一方の第2のキャップ22の第1の凹部22cと他方の第2のキャップ22の第2の凹部22dとが対向することにより、これらの第2のキャップ22の間に高さ方向(Z軸方向)に延在する気流F(破線)の流路が構成される。すなわち、隣接し合う単電池14間の隙間に連通し、且つ、第2のキャップ22の底部22aに連通する気流Fの流路が形成される。気流Fは、他方の第2のキャップ22の第2の凹部22d内を通過した後、一方の第2のキャップ22の第1の凹部22c内を通過する。
【0073】
このように第1の凹部22cと第2の凹部22dとが対向して第2のキャップ22間に気流Fの流路を形成することにより、単電池14の間の隙間を流れる気流Fの流量が増加する(これらの凹部が存在しない場合に比べて)。したがって、単電池14を密に並べて第2のキャップ22間の隙間が狭くなっても、第1の凹部22cと第2の凹部22dとによって十分量の気流Fが単電池14の間の隙間を流れることができる。その結果、単電池14それぞれの冷却性の低下を抑制しつつ、複数の単電池14を密に並べてコンパクトなサイズの蓄電装置10を実現することができる。
【0074】
なお、第2のキャップ22の側壁部22e、22fの一方のみに、気流Fが流れる流路として、単電池14の隙間と第2のキャップ22の底部22aとに連通する凹部を形成することが考えられる。しかし、そのような凹部が形成された第2のキャップ22の側壁部の剛性が低下する可能性がある。その結果、蓄電装置10が車両に搭載される場合、走行中の車両の振動によって第2のキャップ22が破損する可能性がある。その剛性の低下を抑制するためにその凹部が形成された側壁部を肉厚に構成することが考えられるが、それにより第2のキャップ22が大型化し、その結果として単電池14を密に並べることが困難になる。
【0075】
また、単電池14の隙間と第2のキャップ22の底部とを連通する気流Fの流路を、凹部ではなく貫通穴で構成することが考えられる。しかし、そのような貫通穴を形成された第2のキャップ22の側壁部の剛性が低下する可能性がある。その剛性の低下を抑制するためにその貫通穴が形成された側壁部を肉厚に構成することが考えられるが、それにより第2のキャップ22が大型化し、その結果として単電池14を密に並べることが困難になる。また、貫通穴の場合、凹部に比べて第2のキャップ22の加工コストが上がる。
【0076】
また、第1および第2の凹部22c、22dが貫通穴状であるため、その凹部22c、22dによって構成される気流Fの流路内に、第2のキャップ22によって覆われた単電池14の部分の一部が露出する。その結果、第2のキャップ22によって覆われた単電池14の部分が冷却される。
【0077】
したがって、本実施の形態のように、隣接し合う第2のキャップ22それぞれに形成された凹部22c、22dを対向させることにより、第2のキャップ22の剛性を維持しつつ第2のキャップ22間に気流Fの流路を形成することができる。
【0078】
上述したように、第2のキャップ22の間に気流Fの流路を形成するためには、第1の凹部22cと第2の凹部22dとが奥行き方向(Y軸方向)に対向する正常な姿勢で、複数の第2のキャップ22をベース部24に取り付ける必要がある。
【0079】
複数の第2のキャップ22をその奥行き方向(Y軸方向)の向きを間違えることなく正常な姿勢でベース部24に取り付けるために、
図9に示すように、第2のキャップ22それぞれは、その底部22aに高さ方向(Z軸方向)に突出する突起部22hが設けられている。
【0080】
具体的には、
図3に示すように、第2のキャップ22がベース部24に取り付けられるとき、第2のキャップ22の2つの係合部22bがベース部24の2つの係合穴24bに挿通される。この2つの係合穴24bは幅方向(X軸方向)に並んでいるため、第2のキャップ22は奥行き方向(Y軸方向)の向きを間違えてベース部24に取り付けられる可能性がある。
【0081】
この奥行き方向(Y軸方向)の向きの間違いを防止するために第2のキャップ22の底部22aに設けられている突起部22hは、第2のキャップ22が正しい奥行き方向の向きでベース部24に取り付けられたときには通風口24eを通過することができる。一方、第2のキャップ22が間違った奥行き方向の向きの場合、突起部22hはベース部24の電池保持部24aに当たり、それにより第2のキャップ22の係合部22bがベース部24の係合穴24bに係合できない。
【0082】
このような突起部22hを第2のキャップ22に設けることにより、第1の凹部22cと第2の凹部22dとが確実に対向した状態で複数の第2のキャップ22をベース部24に取り付けることができる。その結果、気流Fの流路が、第2のキャップ22の間に、対向し合う第1の凹部22cと第2の凹部22dとによって確実に形成される。
【0083】
なお、第2のキャップ22をその奥行き方向(Y軸方向)の向きが正しい状態でベース部24に係合させるための手段は、第2のキャップ22に形成された突起部22hに限らない。例えば、第2のキャップ22の係合部22bとベース部24の係合穴24bの形状を、第2のキャップ22の奥行き方向(Y軸方向)の向きが第1の凹部22cと第2の凹部22dとが対向できる正しい向きの場合にのみ係合できる形状、例えば三角形状にしてもよい。
【0084】
さらに、
図3に示すように、単電池14の間の隙間を通過して該単電池14を冷却する気流Fの出口であるカバー部26の通風口26bの開口面積を、気流Fの入口であるベース部24の通風口24eの開口面積に比べて小さくしてもよい。
【0085】
カバー部26の通風口26bの開口面積は、通風口26bを介して単電池14の外部端子(正極端子14aおよび負極端子14b)にユーザが触れることができないサイズ、すなわちユーザの指が通過できないサイズに決定されている。このようなカバー部26の通風口26bの開口面積に比べて、ベース部24の通風口24eの開口面積が大きくされる。
【0086】
これにより、ベース部24の通風口24eを介して該ベース部24とカバー部26との間に大量の気流Fが流入する。また、出口であるカバー部26の通風口26bが入口であるベース部24の通風口24eに比べて小さいために、ベース部24の通風口24eを通過した気流Fの一部がすぐにカバー部26の通風口26bを介して外部に出ずに、単電池14の周りに流れる。例えば、幅方向(X軸方向)に隣接し合う単電池14の間の隙間を気流が流れる。その結果、カバー部26の通風口26bの開口面積がベース部24の通風口24eの開口面積に比べて大きいまたは等しい場合に比べて、複数の単電池14がより冷却される。
【0087】
本実施の形態によれば、第2のキャップ22に形成された第1の凹部22cと第2の凹部22dとにより、単電池14それぞれの冷却性の低下を抑制しつつ、複数の単電池14を密に並べて蓄電装置10をコンパクトなサイズにすることができる。
【0088】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されない。
【0089】
例えば、上述の実施の形態の場合、
図8に示すように、第2のキャップ22に形成された第1の凹部22cおよび第2の凹部22dは、側壁部22eおよび22fを外側表面から内側表面に向かって貫通する形態である。本発明はこの形態に限らない。
【0090】
例えば、
図15は、別の実施の形態に係る蓄電装置における、隣接し合う第2のキャップ122の断面図を示している。
【0091】
図15に示すように、第2のキャップ122の第1の凹部122cおよび第2の凹部122dは、上述の実施の形態の第2のキャップ22の第1凹部22cおよび第2の凹部22dとは異なり(例えば
図8参照)、側壁部122e、122fを外側表面から内側表面に向かって貫通していない。このように非貫通の第1の凹部122cおよび第2の凹部122dでも、対向することによって第2のキャップ122の間に気流Fが通過する流路を形成することができる。また、第1の凹部122cおよび第2の凹部122dが非貫通であるため、貫通する場合に比べて、第2のキャップ122の剛性が向上する。
【0092】
また、上述の実施の形態の場合、
図14に示すように、第1の凹部22cは第2のキャップ22の開口端22gから高さ方向(Z軸方向)の概ね中央部まで延在し、第2の凹部22dは底部22aから高さ方向の概ね中央部まで延在しているが、本発明はこれに限らない。例えば、第1の凹部22cおよび第2の凹部22dの両方が、第2のキャップ22の開口端22gから底部22aまで延在する同一の形態であってもよい。
【0093】
すなわち、隣接し合う第2のキャップ22の一方の第1の凹部22cと他方の第2の凹部22dとが少なくとも部分的に対向することにより、隣接し合う単電池14の間の隙間に連通し、且つ、第2のキャップ22の底部22aに連通する気流Fの流路が少なくとも一つ形成されるのであれば、第2のキャップ22に形成される第1の凹部22cおよび第2の凹部22dの形状およびその数は問わない。したがって、本発明に係る一実施の形態の蓄電装置における気流Fの流路は、広義には、複数の第2のキャップ22それぞれに形成された凹部によって構成される。
【0094】
ただし、第2のキャップ22の剛性の確保を考慮すると、好ましくは、上述の実施の形態のように、第1の凹部22cが第2のキャップ22の開口端22gから高さ方向(Z軸方向)の概ね中央部まで延在し、第2の凹部22dが底部22aから高さ方向の概ね中央部まで延在し、そして、第1の凹部22cの一部と第2の凹部22dの一部が第2のキャップ22の高さ方向の概ね中央位置で対向する。
【0095】
また例えば、上述の実施の形態の場合、複数の単電池14に装着されている複数の第2のキャップ22は相互に接触していないが、本発明はこれに限らない。第2のキャップ22が相互に接触しても、第1の凹部22cと第2の凹部22dとが対向することにより、第2のキャップ22の間に気流Fが通過するための流路を形成することができる。この場合、第2のキャップ22が相互に接触しない場合に比べて、複数の単電池14を密に並べることができ、それにより蓄電装置10をよりコンパクトなサイズにすることができる。
【0096】
さらに例えば、上述の実施の形態の場合、複数の単電池14に装着される複数の第2のキャップ22は同一の形状を備えるが、本発明はこれに限らない。複数の第2のキャップ22は、異なる形状を備えてもよい。
【0097】
例えば、2種類の第2のキャップが用意され、一方の種類の第2のキャップと他方の種類の第2のキャップが交互にベース部上に並べられる。一方の種類の第2のキャップの両方の側壁部それぞれには凹部が形成され、他方の種類の第2のキャップの両方の側壁部それぞれには凹部が形成される。一方の種類の第2のキャップの凹部と他方の種類の第2のキャップの凹部とが対向することにより、一方の種類の第2のキャップと他方の種類の第2のキャップとの間に、気流が通過する流路が形成される。
【0098】
加えて、上述の実施の形態の場合、例えば、複数の単電池14の下側端部を覆うために、複数の第2のキャップ22が使用されている。しかしながら、本発明の実施の形態は、これに限らない。
【0099】
図16は、さらに別の実施の形態に係る蓄電装置における第2のキャップの断面図である。
【0100】
図16に示す第2のキャップ222は、蓄電装置に対して1つだけ設けられ、複数の単電池14の下側端部を覆っている。すなわち、第2のキャップ222は、トレイ状であって、複数の単電池14の下側端部を収容して覆う複数の収容穴222jを備える。
【0101】
図16に示すように、第2のキャップ222は、複数の収容穴222jを画定する仕切り壁部222k(隣接し合う単電池14の下端部に挟まれる部分)に、気流Fの流路222mが形成されている。この流路222mそれぞれは、気流Fが流れ、一端が隣接し合う単電池14間の隙間(すなわち仕切り壁部222kの上部の空間)に連通し、且つ、他端が第2のキャップ222の底部222aに連通している。また、この流路222mは、隣接し合う収容孔222jを交互に通過するように仕切り壁部222kに形成されている。それにより、流路222mを流れる気流Fが、隣接し合う収容穴222jに交互に進入する、すなわち隣接し合う単電池14に交互に接触する。これにより、第2のキャップ222の収容穴222jに覆われている単電池14の下端部が気流Fによって冷却される。なお、仕切り壁部222kに形成される流路222mは、収容穴222jに連通することなく、隣接し合う単電池14間の隙間に連通してもよい。
【0102】
また、
図17は、さらに異なる実施の形態に係る蓄電装置における第2のキャップと断熱板(スペーサ)の断面図である。
【0103】
図17に示す複数の断熱板334は、隣接し合う単電池14間の隙間に配置されている。また、断熱板334には、隣接し合う一方の単電池14(例えば図中左側の単電池14)と断熱板334との間の空間と、他方の単電池14(図中右側の単電池14)と断熱板334との間の空間とを交互に通過する流路334aが形成されている。第2のキャップ22間を通過した気流Fは、断熱板334の流路334aを通過することにより、隣接し合う一方の単電池14と断熱板334との間の空間と、他方の単電池14と断熱板334との間の空間とを交互に通過する。これにより、断熱板334の奥行き方向(Y軸方向)の両側それぞれに確実に気流Fが流れ、その気流Fによって隣接し合う単電池14が略等しく冷却される。
【0104】
このように、第2のキャップの流路を通過する気流による単電池14の冷却は、様々な形態が可能である。本発明の実施の形態に係る蓄電装置における第2のキャップは、広義には、第1の方向に並べられた複数の単電池それぞれにおける第2の方向(第1の方向と直交する方向)の一方側を覆うキャップであって、隣接し合う単電池間の隙間それぞれに連通する複数の流路を備えているものである。
【0105】
最後に、上述の実施の形態の場合、隣接し合う単電池間の隙間に連通する気流の流路は、単電池の下側端部を覆う第2のキャップに設けられているが、本発明の実施の形態はこれに限らない。気流の流路は、単電池の上側端部を覆う第1のキャップに設けられてもよいし、第1および第2のキャップの両方に設けてもよい。すなわち、隣接し合う単電池の間の隙間に連通する気流の流路は、第1の方向に並べられた複数の単電池それぞれにおけ第2の方向(第1の方向と直交する方向)の一方側を覆うキャップに設けられる。