特許第6540479号(P6540479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6540479紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540479
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法
(51)【国際特許分類】
   D06P 5/20 20060101AFI20190628BHJP
   D06M 10/00 20060101ALI20190628BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20190628BHJP
   D06M 15/55 20060101ALI20190628BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20190628BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20190628BHJP
   D06P 7/00 20060101ALI20190628BHJP
【FI】
   D06P5/20 D
   D06M10/00 K
   D06M15/263
   D06M15/55
   D06M15/564
   D06P5/00 A
   D06P5/00 127
   D06P7/00
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-233082(P2015-233082)
(22)【出願日】2015年11月30日
(65)【公開番号】特開2016-204815(P2016-204815A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2015年12月10日
【審判番号】不服2018-4466(P2018-4466/J1)
【審判請求日】2018年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0055692
(32)【優先日】2015年4月21日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515332296
【氏名又は名称】ソフォス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ソン−ウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,キョン−ドン
(72)【発明者】
【氏名】ク,グァン−ヘ
【合議体】
【審判長】 佐々木 秀次
【審判官】 冨永 保
【審判官】 佐藤 健史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−152436(JP,A)
【文献】 特開昭57−11263(JP,A)
【文献】 特開2014−189935(JP,A)
【文献】 特開昭63−270864(JP,A)
【文献】 特開2011−213075(JP,A)
【文献】 特表2012−530632(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/004566(WO,A2)
【文献】 特開2005−179511(JP,A)
【文献】 特開2003−213534(JP,A)
【文献】 特開2009−167550(JP,A)
【文献】 特開平10−216529(JP,A)
【文献】 特開平4−106167(JP,A)
【文献】 特開昭58−65084(JP,A)
【文献】 特公昭49−17637(JP,B1)
【文献】 特公昭46−28684(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B,D06B,D06M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素、紫外線硬化型モノマー、紫外線硬化型オリゴマー、及び光開始剤を混合した紫外線硬化コーティング液を備えた後、
繊維糸を前記紫外線硬化コーティング液に含浸した後、
一定の圧力の圧着ローラを前記繊維糸の表面に2回以上通過させ、前記繊維糸の表面に薄膜コーティング層を形成させた後、
コーティングされた前記繊維糸を地表から垂直方向へ進行させながら、非活性ガス雰囲気で波長範囲260〜395nmの紫外線ランプとLEDによる紫外線照射によって、前記紫外線硬化コーティング液を硬化させることを特徴とし、
前記紫外線硬化コーティング液のうち、紫外線硬化型モノマーは、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−hydroxyethyl acrylate)、ヘキサンジオールジアクリレート(Hexanediol diacrylate)、エトキシエトキシエチルアクリレート(Etoxy Etoxy ethylacrylate)のうち、何れか一つ以上であることを特徴とし、
前記紫外線硬化コーティング液は、色素0.4〜1重量%、紫外線硬化型モノマー90〜98.5重量%、紫外線硬化型オリゴマー1〜8重量%、及び光開始剤0.1〜1重量%を混合した紫外線硬化コーティング液であり、
前記繊維糸は、衣類用の繊維と産業用の繊維とが混紡されており、
前記衣類用の繊維として、綿、羊毛、絹、麻、レーヨン(Rayon)、アセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリエチレンテレフタレート(PTT)、陽イオン染料加染ポリエチレンテレフタレート(Cation dyeable PET、CDP)、ナイロン(Nylon)、アクリル(Acrylic)、スパンデックス(Spandex)纎維のうち、何れか一つ以上を用い、
前記産業用の繊維として、ガラス繊維糸、ポリエチレン(Polyethylene、PE)纎維糸、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)纎維糸、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weigh Polyethylene、UHMWPE)纎維糸、アラミド繊維糸、炭素繊維糸、ポリイミド(Polyimide、PI)纎維糸、ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole、PBO)纎維糸、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole、PBI)纎維糸のうち、何れか一つ以上を用いることを特徴とする、
紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【請求項2】
前記紫外線硬化コーティング液のうち、紫外線硬化型オリゴマーは、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、不飽和ポリエステル系アクリレート、ビニル系アクリレート、ポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate)のうち、何れか一つ以上のオリゴマーであることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【請求項3】
前記紫外線硬化コーティング液のうち、光開始剤は、ベンゾフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル(2,4,6 −トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドのうち、何れか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【請求項4】
前記紫外線照射は、水銀ランプにFe、Ga、Mgのうち、何れか一つ以上の金属物質が添加されたメタルハライドランプと紫外線LEDによる照射であることを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【請求項5】
前記紫外線照射の際に、酸素禁止作用を防止することで硬化速度を向上させることができる、非活性ガスであるアルゴン、窒素、二酸化炭素のうち、何れか一つ以上を使用することを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【請求項6】
前記紫外線照射前後に赤外線乾燥工程を更に行うことを特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【請求項7】
前記繊維糸のコーティング液含浸から前記紫外線照射まで、地表から垂直方向へ進行させる工程を特徴とする、請求項1に記載の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の水や溶剤のような媒体を用いた湿式の染色方法において、媒体を使用しない色付与の方法であって、一般の衣類用繊維から色発現し難い産業用繊維に至るまで、素材とは関係なく、UV硬化方式を用いた染色方法に関し、エネルギーと水のような資源の消費を削減することができるエコ的な染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に石炭及び石油などの資源の枯渇と、産業化による地球温暖化による水不足、砂漠化、海水面の上昇などの環境変化に対する関心が高まっていることに従って、代替エネルギーの発掘、燃料効率の向上、水とエネルギーの使用に対する削減が国家政策に必須的に反映されており、自然環境に対する危害要素を減らすために努力している。このような国内外の環境規制強化政策にも拘わらず、全体の繊維産業のうち、エネルギー及び水の消費の約70%を染色及び加工の湿式工程において消費しているので、繊維産業の炭素排出権及び水不足に対する環境負担が増加しつつある実情である。
【0003】
繊維の色発現のための工程には、第一、繊維の製造時に原料内に顔料を添加する原着工程、第二、糸または織物形態において、染料による高温の染色工程、第三、顔料または染料が含まれている調剤のコーティング工程がある。原着による色付与の方法は、天然繊維を除いた再生、半合成、合成繊維のような溶解または溶融によって、固体の繊維が液体のような状態に変形させた後、色素の配合によって適用され得る方法である。しかし、天然繊維または耐熱性及び高性能の繊維では、状態の変化が非常に難しく、配合される色素が状態の変化のための過酷な条件によって変色する恐れがあり、色数が制限されるため特殊な場合のみに適用されており、高い単価によって使用が制限的である。
【0004】
さらに、高温による染色工程は、高分子からなる繊維の非結晶領域に染料が浸透して反応または吸着させることで色を発現させる最も一般的な工程である。この際、染料の以外に、均染剤、添加剤、酸、またはアルカリ調節剤などの化学薬品が添加され、染料が容易に浸透できるように高熱があれば色を発現することができる。また、繊維素材が一つの成分になっていれば非常に容易な方法になり得るが、他の成分の繊維の素材が混紡された糸または生地の場合、繊維の素材に応じて染料の選定、染色工程、及び後加工の加工条件が異なるため、水の使用が多くなり、加工後の廃水処理に対する負担が大きくなる。
【0005】
また、色コーティング工程は、既存に高温の熱硬化によるコーティングにより、低い単価、様々な色具現において利点があるが、繊維とコーティング液の接着力の不良により摩擦堅牢度が非常に不十分であり、樹脂の熱溶融または低粘度樹脂の含浸と、熱硬化方式による高熱を使用し、工程上の多くの問題が発生するため生産速度が遅くなり、量産化の可能性が低い。
【0006】
衣類用繊維として使われている一般の繊維のうち、天然から得られる綿、羊毛、絹、麻などが天然繊維であり、天然繊維である綿から化学変化を通じて再生されたレーヨン繊維が再生繊維に分類され、合成繊維には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリエチレンテレフタレート(PTT)、陽イオン染料加染ポリエチレンテレフタレート(Cation dyeable PET、CDP)、ナイロン(Nylon)、アクリル(Acrylic)、スパンデックス(Spandex)纎維などがある。セルロース系の天然繊維である綿、麻、レーヨンなどは反応性染料で、羊毛、絹、ナイロン繊維は酸性染料で、アクリルとモダクリル繊維は陽イオン染料で、PET繊維は分散染料で、高温染色の方法によって、それぞれの染色条件で色発現を行う。
【0007】
産業用として使用されている繊維は、物性、耐熱性、またはその他の機能性を向上させた繊維であって、従来に商用化されている染料及びその他の添加剤、熱水による染色工程では色発現し難い繊維であるので難染性繊維と称する。これは、繊維高分子が硬直な高分子鎖で構成されているか、染料と反応できない化学構造となっているので、染料の浸透及び耐久性が不足しているためである。このような繊維には、ポリエチレン(Polyethylene、PE)、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)繊維と、高性能の産業用繊維として、ガラス繊維、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weigh Polyethylene、UHMWPE)、アラミド繊維、炭素繊維、ポリイミド(Polyimide、PI)、ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole、PBO)、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole、PBI)などの高強度、高耐熱性の繊維に属し、上記のような問題によって、衣類用よりは産業用に多く使われている。
【0008】
ガラス繊維の場合、成分の構成に応じて、目標とする製品の物性が左右されるが、色発現のための原着工程において、主成分であるシリカの内部に、染料または顔料が混合されれば、製品物性の変化が予測できないので色発現が難しい。PE、PP繊維は、ポリオレフィン繊維の種類であって、染料と反応可能な染着機が存在しないので色発現が難しく、その他に、UHMWPE、アラミド、PBO、PBIなどの高性能の繊維の場合、高分子構造及び非結晶領域が最小化されているので、染料の浸透が難しくなり、色発現が難しい。また、炭素繊維は、炭化工程を通じて構造的に炭素のみで構成されており、繊維自体が濃色の黒色であるので、色発現が難しい。
【0009】
最近、難染性繊維のうち、UHMWPEの場合には、従来に商用化されている染料では色発現が難しいので、新規の染料が開発されたことがある。従来の商用化されている分散染料の色素母体に、繊維高分子と類似したアルキル基の置き換えを通じて超疏水性染料を合成し、染色工程により色発現ができるようにした。しかし、繊維自体の低い耐熱性により、高温の熱水を使用する染色工程において、繊維自体の物性変化を引き起こす恐れがあり、染料の量産及び商用化が難しい状況であり、他の難染性繊維には適用できないので、用途の展開が難しい。よって、既存の色発現工程である原着工程または染色工程では、着染の難しい難染性繊維に対する新しい色発現工程が必要である実情であり、繊維固有の物性変化が少なく、商用化が容易であり、安価で色発現を行うべきである。
【0010】
また、国内のみならず全世界的に産業及び生活環境に対する消費者の安全意識が高まっていることによって、昼夜間時によく目立つよう、繊維製品の高可視性の色の付与に関心が集まっており、製品開発に拍車をかけている。高可視性の繊維製品の市場は、モダクリル、PET、ナイロンなどのような衣類用の繊維だけでなく、UHMWPE、アラミドなどのような産業用の繊維にも適用できるよう、蛍光染料を用いた高可視性の色の付与工程を開発しているが、蛍光染料は日光による変色及び高可視性の低下、カラー数の制限などの問題によって使用が制限されている。使用例として、欧州における作業服市場の場合、高可視性のYellow、Red、Orange色に対する性能の範囲を提示しているにもかかわらず、染料を用いた高温染色法では高可視性を表わせない。
【0011】
また、最近、繊維製品の消費者は余暇生活、野外活動、及び安全意識が増加しているので、高可視性、機能性、または高性能の繊維の素材を要求しており、衣類用の一般繊維が単独に使用されておらず、2種以上の衣類用繊維の素材を使用するか、衣類用繊維の素材と産業用繊維の素材との混紡製品が大半である。このような場合、染色工程が複雑であり、水の使用及び廃水が増加し、産業用繊維の素材の使用が制限的になるしかない。よって、素材の種類を問わず、要求される色を発現するためには、コーティング工程が最も適合である。
【0012】
色発現の工程中、熱硬化コーティング工程は、前述したように、摩擦によるコーティング層の耐久性と生産性の問題点、熱敏感性素材の制限を克服するためには、紫外線硬化を用いて繊維に色コーティングを適用することができる。紫外線硬化は液状の樹脂が完全に硬化するまで数秒から数分以内に完成できるので、生産性の向上が可能であり、滑らかな表面の形成によって、摩擦による堅牢度が増進されることができ、熱敏感性繊維の素材に適用可能な方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2011−0101755号公報(2011年9月16日公開)
【特許文献2】韓国登録特許第10−1383087号公報(2014年4月8日公告)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
よって、本発明では、衣類用の一般繊維から産業用の難染性繊維までの高堅牢度薄膜カラーコーティング技術であって、既存の熱硬化糸コーティング方式に比べて約90%の省エネ率を有し、水のような媒体を使用せず、廃水が発生されず、燃焼による二酸化炭素の無排出、高い転換度(degree of conversion)で水洗工程が省略できるエコ的な製造方法を提供すると共に、優秀な接着力を有する高堅牢度染色方法を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
よって、本発明によると、色素0.4〜1重量%、紫外線硬化型モノマー90〜98.5重量%、紫外線硬化型オリゴマー1〜8重量%、及び光開始剤0.1〜1重量%を混合した紫外線硬化コーティング液を備えた後、繊維糸を前記紫外線硬化コーティング液に含浸した後、一定の圧力の圧着ローラを2回以上通過させ、前記繊維糸の表面に薄膜コーティング層を形成させた後、前記コーティングされた繊維糸を地表から垂直方向へ進行させながら、非活性ガス雰囲気で波長範囲260〜395nmの紫外線ランプとLEDに照射して、前記紫外線硬化コーティング液を硬化させることを特徴とする、紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法が提供される。
【0016】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0017】
本発明の繊維糸の染色方法は、衣類及び産業用繊維の素材からなる糸を紫外線硬化コーティング液に含浸して薄膜コーティング層を形成させた後、紫外線硬化コーティング液を硬化させる方法であって、色発現のための顔料と紫外線硬化型樹脂を適当な濃度で配合した後、紫外線光を照射して前記配合液を硬化して色が発現された繊維糸を製造する方法に関する。
【0018】
本発明において、薄膜カラーコーティングの対象となる繊維の素材は、衣類用として、綿、羊毛、絹、麻、レーヨン(Rayon)、アセテート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリエチレンテレフタレート(PTT)、陽イオン染料加染ポリエチレンテレフタレート(Cation dyeable PET、CDP)、ナイロン(Nylon)、アクリル(Acrylic)、スパンデックス(Spandex)纎維のうち、何れか一つ以上と、産業用として、ガラス繊維糸、ポリエチレン(Polyethylene、PE)纎維糸、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)纎維糸、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weigh Polyethylene、UHMWPE)纎維糸、アラミド繊維糸、炭素繊維糸、ポリイミド(Polyimide、PI)纎維糸、ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole、PBO)纎維糸、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole、PBI)纎維糸、またはこのうち2種以上が混合された繊維糸から選択される何れか一つであって、熱水またはその他の媒体を使用せずに色発現するための繊維である。
【0019】
本発明において、前記繊維糸にコーティングするための紫外線硬化コーティング液は、色素0.4〜1重量%、紫外線硬化型モノマー90〜98.5重量%、紫外線硬化型オリゴマー1〜8重量%、及び光開始剤0.1〜1重量%を混合した紫外線硬化コーティングを使用する。
【0020】
紫外線硬化型モノマー90重量%未満では、コーティング液の接着力の低下によって堅牢度に問題が発生する可能性があり、98.5重量%を超過する場合には、色素またはオリゴマーの含量が減少され、色発現及び物性に問題が発生する可能性がある。紫外線硬化型オリゴマー1重量%未満では、低い粘度によるコーティング層の色素量の減少によって色発現が難しくなる可能性があり、硬い触感などの問題が発生する可能性があり、8重量%を超過する場合には、粘度の増加によって薄膜のコーティング層の形成ができないので、製織性が減少する問題が発生する可能性もある。
【0021】
前記紫外線硬化コーティング液のうち、色素は紫外線に対する変色耐久性を有する無機または有機顔料、染料、インクなどを含む色素を使用することが望ましく、アゾ系、ナプトル系、プタロシアニン系のうち、何れか一つを使用することができる。
【0022】
また、前記色素は、紫外線に対する変色耐久性を有する蛍光顔料、蛍光染料、蛍光インクから選択される何れか一つ以上の高可視性(High Visible)色素のものを使用することで可視性を向上させることができるので好ましい。
【0023】
一般的に、紫外線硬化コーティング液に使用される樹脂の場合、大半がアクリレート系列のオリゴマー、反応性希釈剤であるモノマーで造成されているが、選択される繊維の素材の表面の特性に応じて、以下のようにモノマーとオリゴマーを異ならせることができる。
【0024】
本発明において、難染性繊維であるガラス繊維糸、ポリエチレン(Polyethylene、PE)纎維糸、ポリプロピレン(Polypropylene、PP)纎維糸、超高分子量ポリエチレン(Ultra High Molecular Weigh Polyethylene、UHMWPE)纎維糸、アラミド繊維糸、炭素繊維糸、ポリイミド(Polyimide、PI)纎維糸、ポリベンゾオキサゾール(Polybenzoxazole、PBO)纎維糸、ポリベンゾイミダゾール(Polybenzimidazole、PBI)纎維糸から選択される何れか一つ以上を処理する場合に使用される紫外線硬化コーティング液は、色素0.9〜10重量%、紫外線硬化型モノマー30〜89重量%、紫外線硬化型オリゴマー10〜40重量%、及び光開始剤0.1〜20重量%を混合した紫外線硬化コーティング液を使用することが好ましいが、紫外線硬化型モノマー30重量%未満では、コーティング液の接着力の低下によって堅牢度に問題が発生する可能性があり、89重量%を超過する場合には、色素またはオリゴマー含量が減少され、色発現及び物性に問題が発生する可能性がある。紫外線硬化型オリゴマー10重量%未満では、低い粘度によるコーティング層の色少量の減少によって色発現が難しくなる可能性があり、硬い触感などの問題が発生する可能性があり、40重量%を超過する場合には、粘度の増加によって薄膜のコーティング層を形成することができず、製織性が減少する問題が発生する可能性がある。
【0025】
前記紫外線硬化コーティング液のうち、紫外線硬化型モノマーは、メチルメタクリレート(methyl methacrylate)、イソボルニルアクリレート(Isobonyl acrylate)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−hydroxyethyl acrylate)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−hydroxyethyl methacrylate)、2−ヒドロキシプロピルアクリレート(2−hydroxypropyl acrylate)、n−ブチルアクリレート(n−butyl acrylate)、ヘキサンジオールジアクリレート(Hexanediol diacrylate)、エトキシエトキシエチルアクリレート(Etoxy Etoxy ethylacrylate)、オクタデシルアクリレート(Octadecyl acrylate)のうち、何れか一つ以上を使用することが好ましい。
【0026】
前記紫外線硬化コーティング液のうち、紫外線硬化型オリゴマーは、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、不飽和ポリエスタ系アクリレート、ビニル系、ポリビニルブチラール(Polyvinyl butyral)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate)のうち、何れか一つ以上のオリゴマーを使用することができる。このように様々なモノマー及びオリゴマーが使用されている理由は、コーティング層と繊維との接着力が優秀な配合液を製造するためであり、繊維の表面の特性と類似した物性を有するコーティング液を配合するために選択すべきである。
【0027】
前記紫外線硬化コーティング液のうち、光開始剤は、水素置き換え型であるベンゾフェノン、Irgacure 184(1−Hydroxy−cyclohexyl−phenyl ketone)、Irgacure 1173(2−Hydroxy−2−methyl−1−phenyl−1−propanone)、Irgacure 907(2−methyl−1−[4−(methylthio)phenyl]−2−(4−mor−pholinyl)−1−propanone)、Darocure TPO(Diphenyl(2、4、6−trimethylbenzoyl)phos−phine oxide)のうち、何れか一つ以上を使用して、紫外線照射波長と一致するようにすることが好ましい。
【0028】
このように備えられた前記紫外線硬化コーティング液を前記20本以上の繊維糸にコーティングするためには、一定の重みで糸が巻かれている20個以上のコーンを、備えられたクリルから始まって、圧着ローラで圧力を加えて繊維糸の内部まで浸透させ、紫外線硬化後、カラーコーティング膜が均一であると共に、薄膜であるべきであり、同数のワインダー装置に巻き直す。この段階は、図1の側面図と図2の平面図を有するコーティング装置で行うことが好ましい。
【0029】
図1に示されている糸コーティング装置は、クリル部100、胴体200、含浸部300、圧着ローラ301、紫外線硬化部400、ワインダー装置500を備えるものであって、クリル部からワインダー装置へ繊維糸を移送する。この際、クリル部に差し込んだコーンから移送される繊維糸101が、搬送による張力によって切糸される恐れもあるので、無張力で繊維糸が移送されることができる必要もある。胴体200はブラシのような形態であって、20本以上の糸が固まることを防止するためであり、それぞれの繊維糸がガイドロールを通じてコーティング液が盛り込まれている含浸部へ移送される。含浸部300は繊維糸が移送される際、ガイドロール302を使用する場合に固まることを防止するために、一定の間隔に溝があるべきであり、胴体200に代替することが可能である。一定の圧力の圧着ローラ301を通じて2回以上、または1分以上の含浸条件でなければならないが、これは繊維糸が含浸時にコーティング液と繊維糸の界面に発生される表面張力を相殺させ、コーティング液が繊維糸の内部まで浸透させるためである。さらに、紫外線硬化部400に到達する前に、圧着ローラによって前記繊維糸の表面に薄膜コーティング層を形成させるところ、圧着ローラは繊維糸の表面に配合液が一定の厚さのコーティング層が形成されるように圧着するものであって、コーティング層の厚さに応じて色コーティングされた糸の製織可能性を探ることができる。一定の厚さのコーティング層を形成するための圧着ローラは、圧力の調節ができる柔軟な材質のゴムやシリコン材質及びスチールロールを使用する。圧着ローラの圧力調節は繊維糸の表面のコーティング層の厚さを調節するための装置であって、高い圧力の圧着時に薄過ぎる薄膜または一部の未コーティングされた部分が発生され、色の均一性が低下する恐れがあり、低い圧力の圧着時にはコーティング層が厚過ぎるので、液状のコーティング液の流れによって、硬化後にコーティング層の均一度が低下され、コーティング糸を用いた製織が不可になる可能性がある。
【0030】
前記コーティングされた繊維糸を地表から垂直方向へ進行させながら、波長範囲260〜395nmの紫外線を照射して、前記紫外線硬化コーティング液を硬化させるところ、前記紫外線照射は、水銀ランプにFe、Ga、Mgのうち、何れか一つ以上の金属物質が添加された紫外線ランプ硬化部401と、最も長波長(395nm)の紫外線を照射することができる紫外線LED硬化部402と、を使用することが好ましいが、これは、水銀ランプまたはメタルハライドランプより長波長の紫外線が照射され、コーティング層の硬化を数秒から数分以内に完成できるので、生産性の向上が可能になる。紫外線LEDは、照射した場合、常温(20〜30℃)で硬化することができるので、熱に敏感な繊維の素材に適用することが容易である。
【0031】
紫外線硬化はラジカル重合であって、コーティング液内に溶解されたり、硬化工程において、空気中に存在する酸素によって停止反応が発生する酸素禁止作用によって硬化速度が低下する可能性がある。よって、硬化速度を向上させるための方法として、紫外線硬化部内にアルゴン、窒素、または二酸化炭素などの非活性ガス405を流して、酸素禁止作用のような硬化速度の阻害要素を遮断するための装置が必須的である。
【0032】
紫外線照射工程の前後に赤外線(Infrared)乾燥部を更に設けて赤外線乾燥工程を行うことができるが、これは、含有されている水分を乾燥させたり、水溶性または水分酸配合液を使用する場合、水分乾燥を通じて硬化度を向上させることに目的がある。
【0033】
本発明において、20本以上の繊維糸を移送させながら、コーティング液含浸から紫外線照射工程まで、地表から垂直方向へ進行させる工程で行うことが好ましいのは、含浸及び圧着ローラの進行後、コーティングされた配合液が一定の厚さの薄膜を維持できるようにするためである。若し地表と水平方向、または一定の角度を有する方向に設計される場合、硬化前の液状の配合液が重力によってコーティング進行方向の垂直方向へと流れ性を有するため、糸に沿って丸い形態の結び現象が発生され、一定の薄膜コーティング層を形成することができず、使用用途に合う織物に製織することが不可になる。このようにコーティング及び硬化された繊維糸は、投入される繊維糸と同じ個数のワインダー装置に巻かれて、堅牢度の染色糸の製品が完成される。
【発明の効果】
【0034】
よって、本発明によると、衣類用の一般繊維から産業用の難染性繊維までの高堅牢度薄膜カラーコーティング技術であって、既存の熱硬化糸コーティング方式に比べて約90%の省エネ率を有し、水のような媒体を使用せず、廃水が発生されず、燃焼による二酸化炭素の無排出、高い転換度(degree of conversion)で水洗工程が省略できるエコ的な製造方法を提供すると共に、優秀な接着力を有する高堅牢度染色方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色工程の側面図である。
図2】本発明の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色工程の平面図である。
図3】本発明の実施例の繊維糸の色度座標(Chromaticity Coordinates)Redグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の参考例1では、本発明の紫外線硬化方式を適用した繊維糸の高堅牢度染色方法の非限定的な例示を行っている。
【0037】
参考例1
プタロシアニン系有機顔料(Blue)1重量%、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)モノマー84重量%、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー8重量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)モノマー12重量%、ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyethyl acrylate)モノマー2重量%、光開始剤としてベンゾフェノン(Benzophenone)0.5重量%、Irgacure 1173 0.3重量%、Darocure TPO 0.2重量%が混合された紫外線硬化コーティング液を備えた後、衣類用の一般繊維であるポリエチレンテレフタレート繊維糸を前記コーティング液が盛り込まれている含浸部へ進行させて一定量のコーティング液を塗布した後、2つの圧着ローラに一定の圧力(1MPa)で圧着して薄膜コーティング層を形成させた後、地表から垂直方向へ非活性ガスである窒素雰囲気下で、波長範囲260〜395nmの紫外線ランプとLEDを照射し、液状のコーティング液を光硬化を通じて50m/minの速度で硬化し、リワインダー(rewinder)部で枷の形態に巻いて完成した。コーティング作業が完了された衣類用の一般繊維であるポリエチレンテレフタレート(PET)の染色の物性テストの結果は表1のようである。
【0038】
【表1】
以下の参考例2では、本発明の産業用の難染性繊維糸の染色方法の非限定的な例示を行っている。
【0039】
参考例2
プタロシアニン系有機顔料(Blue)1重量%、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)モノマー50重量%、エトキシエトキシエチルアクリレート(Etoxy Etoxy ethylacrylate)モノマー15重量%、ヘキサンジオールジアクリレート(Hexanediol diacrylate)モノマー8重量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)モノマー15重量%、ポリビニルブチラール(Polyvivyl butyral)オリゴマー10重量%、光開始剤としてベンゾフェノン(Benzophenone)0.5重量%、Irgacure 1173 0.3重量%、Darocure TPO 0.2重量%が混合された紫外線硬化コーティング液を備えた後、難染性繊維である超高分子量ポリエチレン繊維糸を前記コーティング液が盛り込まれている含浸部へ進行させて一定量のコーティング液を塗布した後、2つの圧着ローラに一定の圧力(1MPa)で圧着して薄膜コーティング層を形成させた後、地表から垂直方向へ非活性ガスである窒素雰囲気下で、波長範囲260〜395nmの紫外線ランプとLEDを照射し、液状のコーティング液を光硬化を通じて50m/minの速度で硬化し、リワインダー(rewinder)部で枷の形態に巻いて完成した。コーティング作業が完了した難染性繊維である超高分子量ポリエチレンの染色製品に対する物性テストの結果は表2のようである。
【0040】
【表2】
【0041】
参考例3
プタロシアニン系有機顔料(Blue)8重量%、メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)モノマー50重量%、エトキシエトキシエチルアクリレート(Etoxy Etoxy ethylacrylate)モノマー5重量%、ヘキサンジオールジアクリレート(Hexanediol diacrylate)モノマー2重量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)モノマー5重量%、ポリビニルブチラール(Polyvivyl butyral)オリゴマー20重量%、光開始剤としてベンゾフェノン(Benzophenone)5重量%、Irgacure 1173 3重量%、Darocure TPO 2重量%が混合された紫外線硬化コーティング液を備えた後、難染性繊維である超高分子量ポリエチレン繊維糸を前記コーティング液が盛り込まれている含浸部へ進行させて一定量のコーティング液を塗布した後、2つの圧着ローラに一定の圧力(1MPa)で圧着して薄膜コーティング層を形成させた後、地表から垂直方向へ波長範囲260〜395nmの紫外線を照射し、液状のコーティング液を光硬化を通じて硬化し、リワインダー(rewinder)部で枷の形態に巻いて完成した。コーティング作業が完了した難染性繊維である超高分子量ポリエチレンの薄膜カラーコーティングの物性テストの結果は表3のようである。
【0042】
【表3】
【実施例1】
【0043】
メチルメタクリレート(Methyl methacrylate)モノマー70重量%、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー8重量%、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)モノマー12重量%、ヒドロキシエチルアクリレート(2−Hydroxyethyl acrylate)モノマー8重量%、光開始剤としてベンゾフェノン(Benzophenone)0.5重量%、Irgacure 1173 0.3重量%、Darocure TPO 0.2重量%, 及び 高可視性(High Visible)蛍光顔料の Red 1重量%を混合した紫外線硬化コーティング液を備えた後、衣類用と産業用の繊維が混紡されたモダクリル(38%)、綿(32%)、メタアラミド(30%)繊維糸を前記コーティング液が盛り込まれている含浸部へ進行させて一定量のコーティング液を塗布した後、2つの圧着ローラに一定の圧力(1MPa)で圧着して薄膜コーティング層を形成させた後、地表から垂直方向へ非活性ガスである窒素雰囲気下で、波長範囲260〜395nmの紫外線ランプとLEDを照射し、液状のコーティング液を光硬化を通じて50m/minの速度で硬化し、リワインダー(rewinder)部で枷の形態に巻いて完成した。コーティング作業が完了されたモダクリル混紡繊維の高可視性の物性テストの結果は表4のようである。高可視性の性能は カラーに対するX、Y値の範囲が評価方法の規格に定められており、測定されたX、Y値がその範囲内に含まれているべきであり、これをグラフに示した。
【0044】
【表4】
【符号の説明】
【0045】
100 クリル部
101 繊維糸
200 胴体
300 含浸部
301 圧着ローラ
302 ガイドロール
400 紫外線硬化部
401 紫外線ランプ硬化部
402 紫外線LED硬化部
403 メタルハライドランプ
404 紫外線LED
405 非活性ガス
500 ワインダー装置
図1
図2
図3