(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ユニット化された単位電池を複数直列接続して列電池を構成し、この列電池を複数並列接続して構成した電池電源を備え、この電池電源から給電電路を介して負荷へ給電する直流給電回路において、
高抵抗値の第1抵抗器と低抵抗値の第2抵抗器とを直列接続して構成した正極側電圧検出回路と負極側電圧検出回路を設け、この2組の電圧検出回路を直列に接続して前記電池電源の正(P)極および負(N)極出力端子間に接続するとともに、第3抵抗器とダイオードと測定極性を切り換えるスイッチとを直列接続して構成した正極側接地電流検出回路と負極側接地電流検出回路を設け、この2組の接地電流検出回路を前記ダイオードの極性を逆極性にして並列接続して前記2組の電圧検出回路の中間接続点と接地点との間に接続し、前記各組の電圧検出回路の第2抵抗器から基準電圧を取り出し、かつ、前記各組の接地電流検出回路の第3抵抗器から検出電圧を取り出し、前記各組の電圧検出回路から取り出した基準電圧と、前記各組の接地電流検出回路から取り出した検出電圧とに基づいて前記直流給電回路の絶縁抵抗値を演算によって求めることを特徴とする直流給電回路の絶縁抵抗測定方法。
給電電路の絶縁抵抗測定と電池電源の絶縁抵抗測定とを選択可能にし、電池電源の絶縁抵抗測定を選択したとき、前記基準電圧と前記2組の接地電流検出回路から取り出した正極側および負極側検出電圧の合計電圧とに基づいて前記電池電源の絶縁抵抗値を演算によって求めることを特徴とする請求項1に記載の直流給電回路の絶縁抵抗測定方法。
選択可能にした給電電路の絶縁抵抗測定と電池電源の絶縁抵抗測定から、給電電路の絶縁抵抗測定を選択したときは、前記の正極側または負極側の基準電圧と前記2組の接地電流検出回路から取り出した正極側または負極側の検出電圧とに基づいて前記給電電路の正極側電路または負極側電路の絶縁抵抗値を演算によって求めることを特徴とする請求項1に記載の直流給電回路の絶縁抵抗測定方法。
予め前記直流給電回路の絶縁抵抗の基準となる基準絶縁抵抗値を設定し、前記直流給電回路の絶縁抵抗値をこの基準絶縁抵抗値としたとき、前記各組の接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出す検出電圧が前記各組の電圧検出回路から取り出す基準電圧と等しい電圧、またはこの基準電圧の1/2の電圧となるように前記第3抵抗器の抵抗値を設定することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の直流給電回路の絶縁抵抗測定方法。
ユニット化された単位電池を複数個直列接続して列電池を構成し、この列電池を複数個並列接続して構成した電池電源を備え、この電池電源から給電電路を介して負荷へ給電する直流給電回路において、
高抵抗値の第1抵抗器と低抵抗値の第2抵抗器とを直列接続して構成した2組の電圧検出回路を、前記電池電源の正極および負極出力端子間に直列に接続して構成した正極側電圧検出回路および負極側電圧検出回路と、
第3抵抗器とダイオードと測定極性を切り換えるスイッチとを直列接続して構成した2組の接地電流検出回路を、前記2組の電圧検出回路の中間接続点と接地点との間に前記ダイオードの極性を逆極性にして並列接続して構成した正極側接地電流検出回路および負極側接地電流検出回路と、
前記正極側電圧検出回路および負極側電圧検出回路の各第2抵抗器並びに前記正極側接地電流検出回路および負極側接地電流検出回路の各第3抵抗器の両端から電圧を取り出す電圧検出手段と、
前記正極側電圧検出回路の第2抵抗器から取り出した基準電圧に対する前記正極側接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出した検出電圧の比を演算して前記給電回路における負極側給電電路の絶縁抵抗値を求める第1演算手段と、
前記負極側電圧検出回路の第2抵抗器から取り出した基準電圧に対する前記負極側接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出した検出電圧の比を演算して前記給電回路における正極側給電電路の絶縁抵抗値を求める第2演算手段と、
前記正極側接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出した検出電圧と前記負極側接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出した検出電圧との合計電圧を求める第3の演算手段と、
前記正極側電圧検出回路の第2抵抗器から取り出した基準電圧または前記負極側電圧検出回路の第2抵抗器から取り出した基準電圧と前記前記第3の演算手段により求めた合計電圧との電圧比を演算して前記給電回路における電池電源の絶縁抵抗値を求める第4の演算手段と、を備えることを特徴とする直流給電回路の絶縁抵抗測定装置。
前記給電電路の絶縁抵抗測定と電池電源の絶縁抵抗測定とを切換指令する測定位置切換器と、正極側の絶縁抵抗測定と負極側の絶縁抵抗測定を切換指令する測定極性切換器とを備えることを特徴とする請求項6に記載の直流給電回路の絶縁抵抗測定装置。
前記正極側接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出した検出電圧または負極側接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出した検出電圧と前記第3の演算手段により求めた合計電圧との比に前記電池電源の列電池の単位電池の直列接続個数を乗算して絶縁不良の生じた単位電池の位置を特定する第5の演算手段を備えることを特徴とする請求項6〜8の何れか1項に記載の直流給電回路の絶縁抵抗測定装置。
予め前記直流給電回路の絶縁抵抗の基準となる基準絶縁抵抗値を設定し、前記電池電源の絶縁抵抗の絶縁抵抗値をこの基準絶縁抵抗値としたとき、前記各組の接地電流検出回路の第3抵抗器から取り出す検出電圧が前記各組の電圧検出回路から取り出す基準電圧と等しい電圧、またはこの基準電圧の1/2の電圧となるように前記第3抵抗器の抵抗値を設定したことを特徴とする請求項6〜9の何れか1項に記載の直流給電回路の絶縁抵抗測定装置。
【背景技術】
【0002】
この発明が対象とする、特に、船舶の電気推進システム等に使用される直流給電回路は、電池電源や給電電路を接地しないことが原則であり、該当する規格等で規定されている。
また、船舶の電気推進システムに用いる電池電源は高電圧大電流の大容量を必要とするため、ユニット化された単位電池を多数直並列接続して構成する。
この電池電源および電池電源からの給電電路には多数の電気機器、装置が接続される。従って、電池電源を構成する多数個の単位電池、並びに電池電源からの給電電路およびこれに接続される多数の電気機器、装置の一部に絶縁抵抗の低下が発生すると地絡や短絡事故に発展する恐れがあり、極めて危険である。
しかし、これまで知られている、例えば特許文献1に示すような従来の絶縁抵抗測定装置では、電池電源から負荷へ給電するための接地されない給電電路の絶縁抵抗を測定することしか行われていなかった。
【0003】
前記特許文献1に示された従来の絶縁抵抗測定装置は、
図9に示すように構成されている。
この
図9に示す従来の絶縁抵抗測定装置は、検出抵抗101〜105によってT型検出回路を構成し、抵抗102、104および105の各々から信号106(電圧V1)、108(電圧V2)および107(電圧V3)をそれぞれ得る。これらの信号106〜108は絶縁変換器109、110、111の一次側に入力され、それぞれ絶縁変換されて二次信号112〜114となる。
【0004】
二次信号112〜114は、ローパスフィルタ115、116、118により高調波成分が除去されて信号119〜121となり、そのうち信号119と120が正極側割算器125に、また信号120と121が負極側割算器126に入力され、割算が実行される。また、極性判別器122は信号120の極性を判別し、信号120が(+)方向のとき、すなわち電圧V3が(+)方向のときは信号123をオンとする出力を発生し、(−)方向のときは信号124をオンとする出力を発生する。
【0005】
極性判別器122(PC)が(+)方向の信号123を出力したときは、正極側の演算器125、131や表示装置135、警報装置136を動作させ、負極側をロックする。同様に、極性判別器122が(−)方向の信号124を出力したときは、負極側の演算器126、132や表示装置135、警報装置136を動作させ、正極側をロックする。
【0006】
以下、極性判別器122(PC)が(+)方向の信号123を出力し、正極側電路の絶縁抵抗を測定する場合について説明する。
【0007】
正極側電路の絶縁抵抗を測定する場合について、
図10の絶縁抵抗の測定動作説明図を参照して説明する。
【0008】
ここで、正極側の抵抗101の抵抗値R11対抵抗102の抵抗値R12、または、負極側の抵抗103の抵抗値R21対抵抗104の抵抗値R22の抵抗値の比をそれぞれ1:1/100〜1:1/25程度とするが、これは測定しようとする回路の電圧値、または測定しようとする絶縁抵抗値の範囲などによって最適な値を選定する。
【0009】
例えば、直流電圧500V回路の絶縁抵抗を測定する場合、検出抵抗101、103の抵抗値R11、R21を1MΩ、検出抵抗102、104の抵抗値R12、R22を10KΩに選定したとき、正極側の電路と大地Eとの間の絶縁抵抗RPXの抵抗値RPxが無限大(RPx=∞)であるとすると、
図7に示す絶縁抵抗RPXに流れる電流IPXは0となり、流れない。その結果、検出抵抗102、104の両端電圧V1、V2はV1=V2で、検出抵抗101、102、103、104に流れる電流ISは、電池電源100の電圧をVとすると、
IS≒V÷(R11+R12+R21+R22)
であり、M電位はVP=VN=250Vで、抵抗101と102の抵抗比は100:1であるから、抵抗102、104には、
V1=V2=250V/100≒2.5V
の電圧が発生することになる。
【0010】
いま、給電回路の正極側電路Pの絶縁抵抗RPXの抵抗値RPxが低下したとすると、接地回路には、
IPX=V÷(RPx+R3+R21+R22)
となる接地電流IPXが流れ、検出抵抗105の両端には、
V3=IPX×R3
の電圧が発生する。
このとき、検出抵抗102の両端電圧V1は電流ISで決定され、検出抵抗105の両端電圧V3は電流IPXで決定される。すなわち、抵抗101、絶縁抵抗RPXの抵抗値がそれぞれ抵抗102、105の抵抗値よりも充分に大きい場合、R12=R3とすれば、検出抵抗102の両端電圧V1と、検出抵抗105の両端電圧V3の割合は、検出抵抗101の抵抗値R11と絶縁抵抗RPXの抵抗値RPxの割合の逆数と考えられるから、V1とV3の電圧比n(=V1/V3)を求め、この電圧比nに検出抵抗101の抵抗値R11を乗じると、
n×R11=RPx
から絶縁抵抗値RPxを求めることができる。
【0011】
以上のことは、
図9の回路では、以下のように実行される。
【0012】
すなわち、検出抵抗102の両端電圧V1の信号106が、絶縁変換器109→信号112→ローパスフィルタ115を介して信号119となり、割算器125の一方に入力される。また、接地電流IPXによって発生する検出抵抗105の両端電圧V3の信号107が絶縁変換器110→信号113→ローパスフィルタ116を介して信号120となり、割算器25の他方に入力されるとともに、極性判別器122へ入力される。
【0013】
このときは、信号120が正(+)方向であるから、極性判別器122が(+)方向を判別してオンとなる信号123を出力し、割算器125および乗算器131を演算状態とし、表示装置135および警報装置136を正極側に切替える。また、オフとなる信号124により、割算器126および乗算器132を非演算状態とし、負極側の表示装置135および警報装置136の動作をロックする。
【0014】
上記切替えによって、割算器125では信号119と信号120との比nであるV1/V3を示す信号127を出力し、乗算器131の一方に入力する。定数設定器129は、検出抵抗器101および103の抵抗値R11およびR21と等しい値に設定された定数Kを示す信号130を出力し、乗算器131の他方に入力する。従って、乗算器131は割算器125からの出力信号127と、定数設定器129からの定数Kを示す信号130とを掛け合わせ、信号133を出力する。
【0015】
信号133は、
RPx=n×K=(V1/V3)×R11 (1)
で求められ、求めるべき絶縁抵抗値RPxを示す。
この式で、nはV1/V3、Kは抵抗101の抵抗値R11と等しい値の設定した定数である。
【0016】
このようにして求めた絶縁抵抗値RPxは、表示装置135で読み取って表示する一方、警報装置136で監視する。警報装置136は、読み取った絶縁抵抗値RPxを予め設定した基準絶縁抵抗値と比較し、これよりも低下したら警報出力信号137を発生する。表示装置135では、絶縁抵抗値RPxを時系列に記録することにより絶縁抵抗値の時系列の変化を表示するなど、安全管理のための処理も行われる。なお、
図9のように、測定用電源138および電源スイッチ139を設けておけば、これらを使用することで無通電状態、つまり活線状態でない状態での給電電路、機器または装置の絶縁抵抗の測定が可能となる。
【0017】
次に、負極側電路の絶縁抵抗を測定する場合について説明する。
この場合、測定しようとする絶縁抵抗RNXの抵抗値RNxであり、これに流れる接地電流INXに基づいて検出抵抗105から検出電圧V3が取り出される。この電圧V3と、抵抗102の両端電圧V1の代わりに取り出した抵抗104の両端電圧V2とにより上記と同様の関係から、次の(2)式から絶縁抵抗値RNxを求めることができる。
RNx=n×K=(V2/V3)×R21 (2)
この式において、nはV2/V3であり、Kは抵抗103の抵抗値R21と等しい値に設定した定数である。
【0018】
図9の回路における、信号106、112、119、127および133を信号108、114、121、128および134に、演算回路125、131を演算回路126、132に、また信号123をオフ、信号124をオンにそれぞれ置き換えることにより、正極側電路の絶縁抵抗RPXの抵抗値RPxを測定する場合と全く同様にして負極側電路Nの絶縁抵抗の抵抗値RNxを測定することができる。
【0019】
正極側電路の絶縁抵抗RPXの抵抗値RPxが1MΩであるとき、前記のようにR11、R21が1MΩ、R12、R22およびR3が10kΩ、電源電圧Vが500Vであるとすると、
図8から、V1とV3は等しく、およそ2.5Vとなり、両電圧比nは、
n=V1/V3=2.5/2.5=1
となる。この電圧比n=1から前記(1)式により、正極電路の絶縁抵抗値RPxを求めると、1MΩとなる。
【0020】
同様に、電圧比n=V1/V3=10では、絶縁抵抗値RPxとして、(1)式から
RPx=(K=1MΩ)×(n=10)=10MΩ
が求まる。
同様に、電圧比n=V1/V3=100では、
RPx=(K=1MΩ)×(n=100)=100MΩ、
電圧比n=0.1では、
RPx=(K=1MΩ)×(n=0.1)=0.1MΩ
を求めることができる。
【0021】
なお、給電回路の電源100の電圧が変動した場合、これに比例して電流IS、IPXおよびINXが変動してV1、V2およびV3も変動するが、電圧比n=V1/V3およびn=V2/V3は変わらない。従って、この従来装置によれば、測定しようとする給電回路の電圧が変動しても測定値はその影響を受けないで、安定して絶縁抵抗の測定ができる利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
この発明の実施の形態を説明する。
この発明が対象とする船舶の電気推進システムの直流給電回路における給電電路は、接地しない非接地給電電路とすることが原則である。 また、船舶の電気推進システムに用いる電池電源は大容量となるため、ユニット化された多数の単位電池を直並列接続して、高電圧、大電流の直流電力の出力が可能な構成となっている。
この電池電源から直流電力を給電する給電電路には多数の電気機器および装置が接続される。
【0039】
図1は、電気推進システムの直流給電回路に使用することのできるこの発明による絶縁抵抗測定装置の実施の形態を示す回路構成図である。
【0040】
図1において、B1およびB2は、m(mは2以上の整数)個のユニット化された単位電池B11〜B1m、およびB21〜B2mをそれぞれ直列に接続して構成した直列電池群(ここでは列電池と称する)である。列電池B1、B2を複数個(ここでは2個)並列接続して電池電源Bを構成する。列電池B1、B2の正(P)極端子はそれぞれ、電池スイッチ1、2を介して電池電源Bの正(P)極出力端子Pに並列接続され、負(N)極端子は負(N)極出力端子Nに並列接続される。電池電源Bの出力端子P、Nにはそれぞれ電源スイッチ5、5を介して正(P)極給電電路LPおよび負(N)極給電電路LNが接続される。給電電路LP、LN間には、ここには図示されない多数の負荷となる電気機器および装置が接続され、電池電源Bから給電電路LP、LNを介して負荷となる電気機器および装置に直流電力が給電される。
【0041】
絶縁抵抗測定部IRMは、高抵抗値の第1抵抗器R11、R21と低抵抗値の第2抵抗器R12、R22とをそれぞれ直列接続して構成した2組の電圧検出回路を備える。各組の電圧検出回路は、正(P)極側電圧検出回路11および負(N)極側電圧検出回路12となる。2組の電圧検出回路11と12は、直列接続して、電池電源Bの正(P)、負(N)極出力端子P、N間に接続される。電圧検出回路11、12の第2抵抗器R12、R22の両端に生じる、基準電流ISに依存した電圧は、絶縁検出器13、14を介して基準電圧V1、V2として取り出される。
【0042】
また、絶縁抵抗測定装置IRMは、直流給電回路の絶縁抵抗を通して大地Eへ流れる正(P)、負(N)極側の接地電流IPX、INXを検出するために、2組の接地電流検出回路15、16を備える。接地電流検出回路15、16は、それぞれ、検出抵抗器R31、ダイオードDP、スイッチPa2、および検出抵抗器R32、ダイオードDN、スイッチNa2を直列接続して構成される。そして、この2組の検出回路15、16は、互にダイオードDP、DNを逆極性にして並列に接続され、電圧検出回路11と12の中間接続点Mと、接地点Eとの間に接続される。
検出抵抗R31、R32の両端に生じた、接地電流IPX、INXに依存した電圧V31、V32は、絶縁検出器17、18を介して取り出される。
【0043】
割算部23、24、32、演算部25、26、加算部31、乗算部27、28、33、38、定数設定器34、39は、前記の検出回路で検出された電圧V1、V2、V31、V32から電池電源B、給電電路LP、LNの絶縁抵抗値を演算により求めるとともに、電池電源の絶縁抵抗が低下し絶縁不良となった単位電池を演算により特定する測定演算部を構成する。
【0044】
測定個所切換スイッチ35は、絶縁抵抗の測定個所を電池電源Bまたは給電電路LP、LNに選択的に切り換えて指令するスイッチである。測定個所切換スイッチ35で「電池電源」位置を選択すると、単位電池を直並列接続して構成した電池電源Bの絶縁抵抗の測定と、絶縁抵抗の低下した絶縁不良個所を特定する測定が指令される。測定個所切換スイッチ35で「給電電路」位置を選択すると、電池電源Bから給電される給電電路の正(P)極側給電電路LPと大地Eとの間、および負(N)極側給電電路LNと大地E間の絶縁抵抗の測定が指令される。
【0045】
測定極性切換器36は、P極側での測定と、N極側での測定とを周期的に交互に切り換えて指令する切換器であり、P極側測定を指令するときは、「1」信号の指令信号PSSを出力し、N極側測定を指令するときは「1」信号の指令信号NSSを出力する。
【0046】
また、電池電源Bの絶縁抵抗の測定を、1列の列電池(単列電池)で行うか、または並列にした複数列電池で行うかを切り換えて指令する単列・複列測定切換器37を備える。この単列・複列測定切換器37は、単列電池で絶縁抵抗の測定を指令するときは、「0」信号の指令信号SPSを出力し、複列電池の絶縁抵抗の測定を指令するときは、この指令信号SPSを「1」信号に切り換える。
【0047】
制御部30は、測定個所切換スイッチ35、測定極性切換器36および単列・複列測定切換器37からの各種指令信号に基づいて、検出回路および測定演算部に設けた切換スイッチPa1、Pa2、Pa3、Na1、Na2、Na3の切り換えを制御するとともに測定演算部の演算動作を制御する。
【0048】
さらに、監視・記録部40は、測定演算部で求められた測定値を時系列に記録し、かつ、測定値を常時監視し、正常となる範囲から外れたことが検知されたときは、表示装置41に表示したり、警報装置42を介して警報したりすることにより電池電源を備えた直流給電回路の安全を管理するものである、
【0049】
[実施例1]
このように構成されたこの発明の絶縁抵抗測定装置の第1の実施例による測定動作を説明する。
絶縁抵抗の測定は、(1)電池電源絶縁抵抗を測定するモード、(2)電池電源絶縁不良個所を特定するモード、(3)給電電路の絶縁抵抗を測定するモードの各モードで行わる。
以下に、前記各測定モードにおけるこの発明の絶縁抵抗測定装置の動作を説明する。
【0050】
(1)電池電源絶縁抵抗測定モード
この測定モードでは、測定個所切換スイッチ35を「電池電源」位置に切り換えて、測定個所として電池電源Bを選択する。
測定個所切換スイッチ35を「電池電源」位置に切り換えると、測定個所切換信号SSが「1」信号となり、制御部30および監視・記録部40に、電池電源の絶縁抵抗測定が指令される。この切換信号SSを受けて、制御部30は、給電電路側の絶縁抵抗の演算を行う割算部23、24への信号S1P、S1Nを「1」から「0」信号に切り換えて出力する。これにより割算部23、24の演算動作がロック(停止)されるので、給電電路の絶縁抵抗測定動作が停止される。
【0051】
また、制御部30は、電池電源側の絶縁抵抗の測定に必要な演算を行う演算部31には、電池電源側の絶縁抵抗の測定を指令する信号S2を「1」信号にして出力する。これにより、演算部31は、動作ロック状態が解除され、演算動作状態となる。
【0052】
測定極性切換器36は、電池電源Bの正(P)極側の絶縁抵抗測定を指令する信号PSSと、負(N)極側の絶縁抵抗測定を指令する信号NSSを適宜の周期で交互に切換えて制御部30に与える。
【0053】
制御部30は、P極側測定指令信号PSSを受信すると、P極測定選択信号PSを出力し、N極測定選択信号NSを停止する。これにより、P極側測定回路では、P極選択スイッチPa1、Pa2、Pa3がオンとなる。そして、N極側測定回路では、N極選択スイッチNa1、Na2、Na3がオフとなる。これにより、抵抗器R11が短絡され、P極側の接地電流検出回路15がオンにされ、かつN極側の接地電流検出回路16がオフにされ、測定回路は、電池電源BのP極側の絶縁抵抗の測定を行う状態となる。
【0054】
また、制御部30は、N極測定指令NSSを受信すると、N極測定選択信号NSを出力して、P極測定選択信号PSを停止するので、N極測定回路では、N極選択スイッチNa1、Na2、Na3がオンとなり、そして、P極測定回路では、P極選択スイッチPa1、Na2、Na3がオフとなり、測定回路は、N極側の絶縁抵抗の測定を行う状態となる。
【0055】
電池電源の絶抵抗測定は、複数の列電池を並列に接続して構成した電池電源Bのうちの1つの列電池、たとえば、列電池B1を選択して絶縁抵抗の測定を行うモード(ここでは、これを単列電池測定モードと呼ぶ)と、並列接続された複数の列電池B1、B2の絶縁抵抗を測定するモード(ここでは、これを複列電池測定モードと呼ぶ)があり、単列・複列測定切換器37の切換操作により、これらのモードの何れかを選択する。
【0056】
複列電池測定モードを選択する場合は、
図1の実施例においては、絶縁抵抗測定時に、2つの電池スイッチ1、2を共にオンにし、単列電池測定を選択するときは、2つの電池スイッチ1、2の何れか一方、例えは、列電池B1側のスイッチ1だけをオンにし、他方の電池スイッチ2をオフにする。そして、電池スイッチ1、2の操作により単列電池測定モードを選択したときは、単列・複列測定切換器37を、「単列」位置に切換える。これにより、単列・複列測定切換器37は、指令信号SPSを「0」信号にして単列電池測定を指令する。そして、単列・複列測定切換器37は、「複列」位置に切換えられると、指令信号SPSを「1」信号にして複列電池測定を指令する。
【0057】
単列・複列測定切換器37から出力される指令信号SPSは、乗算器38に動作指令として加えられる。指令信号SPSが「1」のときは、乗算器38は、演算動作状態にされ、「0」のときは、演算動作がロックされて演算動作を停止する状態となる。
【0058】
ここでは、単列電池測定が選択されているので、単列・複列測定切換器37から、「0」信号の指令信号SPSが出力され、乗算器38に与えられる。このため、乗算器38は、演算部31の出力VEに定数設定器39に設定された定数1/2を乗算する動作を停止する。
【0059】
(1−1)単列電池絶縁抵抗測定モード
図2に、電池電源Bの単列電池の絶縁抵抗測定状態を示すので、これを参照しながら単列電の池絶縁抵抗測動作を説明する。
測定極性切換器36からP極側絶縁抵抗測定を指令する信号PSSが出力されると、制御部30が、P極選択指令信号PSを「1」をにし、N極選択指令信号NSを「0」にする。これにより、P極選択スイッチPa1、Pa2、Pa3がオンにされ、N極選択スイッチNa1、Na2、Na3がオフにされるので、測定回路は、P極側の絶縁抵抗測定状態となる。
この状態では、スイッチPa1がオンされることにより、抵抗器R11が短絡されるので、抵抗器R12、R21、R22を通して基準電流ISが流れ、検出抵抗器R12から基準電圧V1を得る。
【0060】
ここで、抵抗器R11、R12、R21、R22の抵抗値を、それぞれr11、r12、r21、r22とし、電池電源Bの電圧をVBとする。そして、抵抗器R11とR21の抵抗値r11とr21は、互いに等しい高い抵抗値に選ばれ、抵抗器R12とR22の抵抗値r12とr22は、互いに等しい低い抵抗値に選ばれている。さらに、接地電流検出回路15、16の検出抵抗器R31、R32の抵抗値r31、r32は、抵抗器R12、R22の抵抗値r12、r22と等しい抵抗値に選ばれている。
したがって、r11=r21≫r12=r22=r31=r32の関係となる。
P極側絶縁抵抗測定状態において電圧検出回路11、12には、次の(3)式で示す基準電流ISが流れる。
IS=VB÷(r12+r22+r21)≒VB÷r21 ・・・(3)
∵ r12+r22 ≪ r21
したがって、抵抗器R12の両端に発生する基準電圧V1は、
V1=r12×IS ・・・(4)
となり、基準電流ISに依存した電圧となる。
【0061】
また、測定極性切換器36からN極側絶縁抵抗測定を指令する信号NSSが出力されると、制御部30が、P極選択指令信号PSを「0」にし、N極選択指令信号NSを「1」にする。これにより、スイッチNa1、Na2、Na3がオンにされ、スイッチPa1、Pa2、Pa3がオフにされることにより、測定回路は、N極側絶縁抵抗測定状態となる。
【0062】
この状態では、スイッチNa1がオンされることにより、抵抗器R21が短絡されるので、抵抗器R11、R12、R22を通して、(5)式に示す基準電流ISが流れる。
IS=VB÷(r11+r12+r22)≒VB÷r11 ・・・(5)
∵ r12+r22 ≪ r11
したがって、抵抗器R22の両端に発生する基準電圧V2は、
V2=r22×IS ・・・(6)
となり、基準電流ISに依存した電圧となる。
ここで、r11=r21であるからP極側測定とN極側測定を切り換えても、基準電圧V1とV2は等しくなる。
【0063】
P極側測定のときに、
図2に示すように、何らかの原因で、列電池B1の単位電池B11とB12の間の接続点S1で、絶縁抵抗RX1を介して接地する事故が発生し、絶縁抵抗が低下すると、電池電源Bの列電池B1のP極→スイッチPa1→抵抗器R12→抵抗器R31→ダイオードDP→スイッチPa2→大地E→接地抵抗RX1→列電池B1の接続点S1→単位電池B11のN極の経路で接地電流IPX1が流れる。この接地電流IPX1は、次の(7)式のとおりとなる。
IPX1=VB1(1-S1)÷(r12+r31+Rx1) ・・・(7)
ここで、VB1(1-S1)は接続点S1と列電池B1のP極との間、すなわち、1個目の単位電池B11からS1点までの単位電池の合計電圧、r12は抵抗器R12の抵抗値、r31は抵抗器R31の抵抗値、Rx1は絶縁抵抗RX1の絶縁抵抗値である。
【0064】
接地電流検出回路15の検出抵抗器R31によって検出される電圧V31は、次の(8)式で示される。
V31=IPX1×r31 ・・・(8)
【0065】
次のN極側測定のときは、P極スイッチPa1およびPa2がオフされ、N極スイッチNa1およびNa2がオンされる。このため、この場合は、接地した列電池B1の接続点S1→絶縁抵抗RX1→大地E→スイッチNa2→ダイオードDN→抵抗器R32→抵抗器R22→スイッチNa1→列電池B1のN極の経路で接地電流INX1が流れる。この接地電流INX1は、次の(9)式で示される。
INX1=VB1(S1-m)÷(Rx1+r32+r22) ・・・(9)
ここで、VB1(S1-m)は列電池B1の接続点S1と電池電源N極の間、すなわち、S1点からm個目の単位電池までの単位電池の合計電圧、r32は抵抗器R32の抵抗値、r22は抵抗器R22の抵抗値である。
【0066】
接地電流検出回路16の検出抵抗器R32の両端から、次の(10)式で示されるように接地電流INX1に依存した検出電圧V32が検出される。
V32=INX1×r32 ・・・(10)
【0067】
列電池B1の接地点S5で、絶縁抵抗RX5を通して接地されるような絶縁不良が生じた場合は、接続点S5と列電池B1のP極との間の単位電池合計電圧VB1(1-S5)、および接続点S5と列電池B1のN極との間の単位電池合計電圧VB1(5-m)によって流れる。P極側接地電流IPX5およびN極側接地電流INX5が、それぞれP極、N極接地電流検出回路15、16の検出抵抗器R31およびR32によって検出電圧V31およびV32として検出される。
【0068】
また、接地事故等により絶縁抵抗の低下が列電池B1の接続点S9で発生した場合は、接続点S9と列電池B1のP極間の単位電池の合計電圧VB1(1-S9)、および接続点S9と列電池B1のN極との間の単位電池合計電圧VB1(S9-m)によるP極側接地電流IPX9およびN極側接地電流INX9がそれぞれ検出抵抗器R31およびR32によって検出電圧V31およびV32として検出される。
【0069】
ここで、各抵抗器の抵抗値r11、r21とr12、r22は、
r11=r21≪r12=r22
の関係にあるので、前記の通りP極側測定とN極側測定とを交互に切り換えても基準電流IS、基準電圧V1、V2は変化しない。また、基準電流ISは接地電流IPX1、IPX5、IPX9、INX1、INX5、INX9に対して十分大きな電流を流しておけば、接地電流IPX、INXが基準電流ISに重畳しても基準電圧V1、V2の変動を極めて小さくすることができる。
【0070】
検出電圧V31、V32から単列電池の絶縁抵抗値を求めるための演算処理について
図1を参照して説明する。
P極側測定のときは、制御部30からのP極側選択信号PSにより選択スイッチPa1、Pa2、Pa3がオンされ、選択スイッチNa1、スイッチNa2、Na3がオフされているので、P極側電圧検出回路11の抵抗器R12から取り出したP極側基準電圧V1(=R12×IS)は、絶縁検出器13→ローパスフィルタ19→スイッチPa3を通して割算部32の一方の入力に加えられる。そして、P極側接地電流検出回路15の検出抵抗R31から取り出した検出電圧V31(=r31×IPX1)は、絶縁検出器17→ローパスフィルタ21を通して割算部23、演算部25および加算部31に加えられる。
【0071】
N極側測定のときは、制御部30からのN極側選択信号NSによりスイッチNa1、Na2、Na3がオンされ、スイッチPa1、スイッチPa2、Pa3がオフにされているので、N極側電圧検出回路12の抵抗器R22から取り出したN極側基準電圧V2(=R22×IS)は絶縁検出器14→ローパスフィルタ20→スイッチNa3を通して割算部32の一方の入力に加えられる。そして、N極側接地電流検出回路16の検出抵抗R32から取り出した検出電圧V32(=r32×INX1)は、絶縁検出器18→ローパスフィルタ22を通して割算部24、演算部26および加算部31に加えられる。
【0072】
測定個所切換器35は、「電池電源」位置に切り換えられているので、制御部30から加算部31に指令信号S2が与えられ、加算部31は加算演算動作状態にある。
また、制御部30は測定極性切換器36からの切換指令信号PSS、NSSに同期して読み取り信号S3を加算部31に与える。これにより、加算部31は、読み取り信号S3に同期して、P極側検出電圧V31とN極側検出電圧V32を読み取って記憶し、1サイクル毎に記憶した両検出電圧を加算する動作をし、合計電圧VE(=V31+V32)を求める。今は単列電池測定モードあるから、乗算部38が演算動作を停止しているので、加算部31の出力の合計電圧VEが、そのまま割算部32の他方の入力に加えられる。
【0073】
割算部32は、一方の入力に加えられた基準電圧V1と他方の入力に加えられた合計電圧VE(=V31+V32)との割算(V1÷VE)およびもう一方の入力に加えられた基準電圧V2と合計電圧VE(=V31+V32)との割算(V2÷VE)を実行して、基準電圧VS(=V1=V2)と合計電圧VEとの電圧比VEDを求める。この電圧比VEDは、乗算器33に加えられ、ここで抵抗器R11(R21)の抵抗値r11(r21)と等しい抵抗値に設定された定数設定器34の定数Kとを乗算することにより絶縁抵抗値Rxを求めることができる。
すなわち、絶縁抵抗RXの絶縁抵抗値Rxは、次の(11)で求められる。
Rx=V1÷VE×r11=V2÷VE×r21 ・・・(11)
【0074】
図5は、縦軸に基準電圧V1、V2と検出電圧の合計電圧VE(=V31+V32)との電圧比VED(=V1/VE、=V2/VE)をとり、横軸に絶縁抵抗値Rxをとって相互の関係を示す測定特性図である。ここに示す特性線R1は、定数設定器34に設定される定数K、したがって抵抗器R11,R21の抵抗値r11、r21を1MΩに設定した場合の特性線である。そして、特性線R0.5は、定数K、したがって抵抗器R11,R21の抵抗値r11、r21を0.5MΩに設定したときの特性線、そして、特性線R2は、定数K、したがって抵抗器R11,R21の抵抗値r11、r21を2MΩに設定したときの特性線である。
【0075】
この
図5から、定数Kを1MΩに設定している場合は、特性線R1から基準電圧V1、V2と検出電圧の合計電圧VEとの電圧比VEDが1であれば、絶縁抵抗値は1MΩ、電圧比VSDが0.5であれば0.5MΩ、電圧比VEDが2であれば2MΩのように絶縁抵抗値Rxを読み取ることができる。したがって、基準電圧と検出電圧との電圧比を示す割算部32の出力VEDと定数Kとから絶縁抵抗値Rxが求まる。
【0076】
定数Kを2MΩに設定した場合は、特性線R2から電圧比VEDに対する絶縁抵抗値を読取ることができ、電圧比VEDが1のとき、絶縁抵抗値は2MΩとなり、電圧比VEDが0.5のとき、絶縁抵抗値は1MΩとなる。
また、定数Kを0.5MΩに設定した場合は、特性線R0.5から電圧比VEDに対する絶縁抵抗値を読取ることができ、電圧比VEDが1のときの絶縁抵抗値は、0.5MΩとなり、電圧比VEDが2のとき、絶縁抵抗値は1MΩとなる。
【0077】
測定誤差の補正が必要なときは、定数設定器34から乗算部33に与える定数Kに補正を加え、この補正を加えた定数Kと電圧比VEDと乗算することによって絶縁抵抗RXの測定誤差を補正した信号VEMを求めることができる。
【0078】
ここで、加算部31におけるP極側検出電圧V31とN極側検出電圧V32を加算(V31+V32)して合計電圧VEを求める理由について説明する。
図2の接続点S1で絶縁抵抗低下(絶縁不良)が生じたとき、電池電源のP極側から流れるP極側接地電流IPX1および検出電圧V31は、前記したように(7)式および(8)式で示される。
IPX1=VB1(1-S1)÷(r12+r31+Rx1)
=VB11÷(r12+r31+Rx1) ・・・(7)
この式において、VB1(1-S1)は、列電池B1における1個目の電池B11から接続点S1までの間の電池の合計電圧である。
図2においては、VB1(1-S1)=VB11となる。
V31=IPX1×r31 ・・・(8)
そして、電池電源のN極側から流れるN極側接地電流INX1および検出電圧V32は、同様に(9)式および(10)式で示される
INX1=VB1(S1-m)÷(Rx1+r32+r22)
=V9÷(Rx1+r32+r22) ・・・(9)
この式において、VB1(S1-m)は、列電池B1おける接続点S1からm個目の電池B1mまでの電池の合計電圧である。
図2においては、VB1(S1-m)=V9となる。
V32=INX1×r32 ・・・(10)
【0079】
すなわち、P極側検出電圧V31は接続点S1からP極間の列電池B1の単位電池B11の合計電圧VB1(1-S1)、N極側検出電圧V32は、接続点点S1からN極間の単位電池B12〜B1mの合計電圧VB1(S1-m)であるから、検出電圧の合計電圧VE=V31+V32は、列電池B1の全電圧VBを絶縁抵抗RXの抵抗値Rxで除した接地電流に依存した電圧であることが理解できる。
【0080】
(1−2)複列電池絶縁抵抗測定モード
上記では、直列接続された1列(単列)の列電池の絶縁抵抗測定について説明したが、次に、列電池を複数並列接続した複列電池電源の絶縁抵抗の測定動作(複列電池絶縁抵抗測定モード)を、
図3を参照して説明する。
【0081】
複数の列電池が並列接続された状態での電池電源の絶縁抵抗測定は、
図3に示すように、2つの電池スイッチ1、2を共にオンにして行う。ここでは、当然、測定個所切換器35は、「電池電源」位置に切り換えられている。
第1列の列電池B1の接続点S1で、接地事故等により絶縁抵抗RX1の低下が生じると、P極側測定(スイッチPa1、Pa2、Pa3がオン、スイッチNa1、Na2、Na3がオフ)のときには、第1列の列電池B1の接続点S1から、P極側測定回路15を通して、(7)式で示す接地電流IPX1が流れる(接地電流の流れる経路は
図3参照)。
IPX1=VB1(1-S1)÷(r12+r31+Rx1)
=VB11÷(r12+r31+Rx1) ・・・(7)
また、第2列の列電池B2からは、P極側測定回路15を通して、次の(12)で示す接地電流IPX2が流れる。
IPX2=[VB2−(VB12+…+VB1m)]÷(r12+r31+Rx1)
=[(VB21+…+VB2m)(VB12+…+VB1m)]
÷(r12+r31+Rx1) ・・・(12)
この式おいて、VB2は、列電池B2の全電圧、VB21…VB2mは列電池B2の各単位電池B21…B2mの電圧、VB12…VB1mは列電池B1の各単位電池B12…B1mの電圧である。
【0082】
ここで、列電池B1と列電池B2の電池電圧が等しいとすれば、(12)式の分子の電池電圧は、1段目の単位電池B21の電圧VB21となるから、接地電流IPX2は(13)式のようになる(接地電流の流れる経路は
図3参照)。
IPX2=VB21÷(r12+r31+Rx1) ・・・(13)
この場合、第1列の列電池B1からながれる接地電流IPX1と、そして第2列電池B2から流れる接地電流IPX2とが検出抵抗器R31に共通に流れるから、各単位電池の電池電圧が等しいとすれば、検出抵抗器R31に流れる電流は、単列電池の測定を行う場合の2倍の電流が流れることになり、測定誤差が生じる。
【0083】
N極側測定のときも、同様に接続点S1を通して検出抵抗器R32に、(14)式で示す第1列電池B1からの接地電流INX1と、(15)式で示す第2列電池B2lからの接地電流INX2とが流れる(接地電流の流れる経路は
図3参照)。
INX1=(VB12+…+VB1m)÷(Rx1+r32+r22)
・・・(14)
INX2=[(VB21+…+VB2m)−VB11]
÷(Rx1+r32+r22) ・・・(15)
この場合も、各電池の電池電圧が等しいとすれば、検出抵抗R32には、第1列電池B1から接地電流INX1が流れ、第2列電池B2から接地電流INX2が流れるから、検出抵抗R32には単列電池の測定の場合の2倍の電流が流れ、測定誤差が生じる。
【0084】
また、列電池が2列以上であっても電池電圧が等しければ、検出抵抗器R31、R32に流れる接地電流の検出電圧の合計値VEは単列電池測定の場合の2倍の電流にしかならない。
【0085】
そこで、列電池を複数個並列接続した電池電源をそのまま測定する、複列電池測定の場合は、
図1に示す単列・複列測定切換器37を「複列測定」位置に切り換えて、乗算部38に乗算を指令する信号SPSを与える。これにより乗算部38は、加算部31で求められた2倍の合計電圧2VEに定数設定器39に設定された定数「1/2」を乗算する演算を実行し、2VEの1/2の信号VEを得る。これを合計値信号VEとして、前記の単列電池測定の場合と同様に割算部32で基準電圧V1、V2とVEとの電圧比VEDを求めることにより、電池電源Bの絶縁抵抗値Rxを求めることができる。
【0086】
なお、複列電池測定において、絶縁抵抗の低下した列電池を特定する場合は、
図1に示す各列電池に設けた電池スイッチ1または2の何れかをオフにしたとき、絶縁抵抗の低下が検出されず、絶縁が回復したことが検出されれば、オフした側の列電池が絶縁抵抗の低下した絶縁不良の列電池であることを特定することができる。
【0087】
(1−3)電池電源の絶縁不良個所(位置)特定モード
次に、電池電源における絶縁抵抗の低下した絶縁不良(接地)位置を特定するモードについて
図1を参照して説明する。
【0088】
単列電池の絶縁抵抗測定において、絶縁不良個所(位置)を特定する場合は、列電池のP極端からの位置は、演算部25で演算して求める。そして、N極側からの位置は演算部26で演算して求める。
P極側から絶縁不良により絶縁抵抗の低下した単位電池の位置を特定する演算部25は、次の(16)式の演算により、絶縁不良位置が列電池のP極端から何(M)個目の単位電池(M(P))であるかを求める。
M(P)=(V31÷VE)×m=V31÷(V31+V32)×m
・・・(16)
ここで、V31はP極側接地電流検出回路15の検出電圧、V32はN極側接地電流検出回路16の検出電圧、VEは、P極側検出電圧V31とN極側検出電圧V32を加算した合計電圧(=V31+V32)、mは列電池の予め設定された単位電池の直列接続個数である。
なお、複列電池測定においては、前記した理由により、検出電圧の合計電圧VEは、VE=(V31+V32)×1/2として求める必要がある。
【0089】
演算部25によって求めるV31÷VEの演算値は、絶縁抵抗低下の生じた電池の接続点S1のP極側検出電圧V31(P極端から地絡した位置の電池B1sまでの合計電圧VB1‐sに相当する)と列電池の全電圧VBに相当する合計電圧VE(=V31+V32)との比であるから、この電圧比に(16)式で示すように列電池の電池直列接続個数mを乗算することによって、絶縁抵抗低下が生じた絶縁不良の単位電池がP極からM個目の単位電池であることを算出することができる。
【0090】
また、演算部26でも同様に、N極側測定の検出電圧V32とP、N両極検出電圧の合計電圧VE(=V31+V32)とに基づいて、(17)式の演算をすることにより、絶縁抵抗低下の生じた絶縁不良の単位電池がN極側からm個目の単位電池であることを求めることができる。
M(N)=(V32÷VE)×m=V32÷(V31+V32)×m
・・・(17)
【0091】
(2)給電電路絶縁抵抗測定モード
次に測定個所切換器35を「給電電路」位置に切り換えて給電電路の絶縁抵抗を測定するモードについて説明する。
給電電路絶縁抵抗測定モードとする場合は、測定個所切換器35を「給電電路」位置に切り換える。これにより、
図4に示す電池電源Bから給電されるP極側給電電路LPと大地Eとの間の絶縁抵抗RXP、またはN極側電路LNと大地Eとの間の絶縁抵抗RXNの絶縁抵抗値RxP、またはRxNを測定することができる。
【0092】
この場合は、前記で説明した
図2に示す「電池電源」位置(電池電源絶縁抵抗測定モード)での測定動作とは、逆の動作になる。
すなわち、
図4に示すように、電池スイッチ1、2および電源スイッチ5をオンにして、電池電源Bから給電電路LP、LNを介して図示しない負荷機器に直流電力を給電している状態において、P極側給電電路LPの絶縁抵抗RXPの絶縁抵抗値RxPを測定する場合は、測定極性切換器36から信号PSSが入力されたとき、制御部30は、電池電源絶縁抵抗測定モードのときならP極側を選択する信号PSを出力する代わりにN極側を選択する信号NSを出力する。そして測定極性切換器36がN極側絶縁抵抗RXNの絶縁抵抗値RxNを測定するための信号NSSを出力するときは、制御部30はP極側を選択する信号PSを出力する。
また、制御部30は、測定極性切換器36から信号PSSを受けると、演算指令S1Pに出力し、演算指令S1Nを停止するので、割算部24では演算動作が行われ、割算部23では演算動作がロックされる。反対に、制御部30は、測定極性切換器36から信号NSSを受けると、演算指令S1Nに出力し、演算指令S1Pを停止するので割算部24では演算動作がロックされ、割算部23では演算動作が行われる。
【0093】
このため、P極側給電電路LPの絶縁抵抗RXPの絶縁抵抗値RxPを測定する場合には、信号NSによりスイッチNa1、Na2、Na3がオンし、スイッチPa1、Pa2、Pa3がオフすることになる。これは、正(P)極側給電路LPから絶縁抵抗RXPを通して流れる接地電流IPXが、前記の電池電源絶縁抵抗測定モードでのP極側測定電流(接地電流)IPX1とは電流方向が逆になるから、P極側の給電電路の絶縁抵抗RXPを測定する場合は、N極側接地電流検出回路16で測定を行う必要があるためである。
【0094】
このときは、スイッチNa1、Na2がオンするため、抵抗器R21は短絡される。これにより、給電電路LP→絶縁抵抗RXP→大地E→スイッチNa2→ダイオードDN→検出抵抗器R32→電圧検出抵抗器R22→電池電源N極の経路で接地電流IPXが流れ、抵抗器R22で検出した基準電圧V2と、検出抵抗器R32で検出した検出電圧V32とから、P極側給電電路絶縁抵抗RXPの絶縁抵抗値RxPを求める処理を行う。
この処理は、N極側の割算器24で、基準電圧V2を検出電圧V32で割算して、両電圧の比V3PDを求め、これに乗算器28で、定数設定器34に設定された抵抗器R21の抵抗値r21と等しい抵抗値に設定された定数Kを乗算して絶縁抵抗値RxPを示すV3PMを求める処理が実行される。
給電電路の絶縁抵抗を測定する場合は、電池電源Bの全電圧VBに基づき絶縁抵抗RXを通して大地に流れる接地電流IXを接地電流検出回路の検出抵抗器R3で検出するので、接地電流検出回路15と16の何れか一方の検出回路の検出電圧V3に基づいて、絶縁抵抗値を求めることができる。
【0095】
すなわち、P極側給電電路LPの絶縁抵抗測定は、電池電源のN極側検出回路16を用いて測定し、また、N極側給電電路LNの絶縁抵抗測定は、電池電源のP極側検出回路15を用いて行う。
そのため、測定個所切換器35を、「給電電路」位置へ切り換えたときは、制御部30の測定極性切換器36の切換信号に対する動作を逆にする。すなわち、測定極性切換器36からP極側切換信号PSSが加わったときは、N極選択信号NSにより、N極側スイッチNa1、Na2をオンし、かつN極側の割算部24に指令信号S1Pに加え、これを演算動作状態とする。割算部24は、電圧検出抵抗R22から基準電圧V2と接地電流検出回路16の検出抵抗R32から取り出した検出電圧V32との電圧比V3PD(=V2÷V32)を演算し、その出力を乗算部28に与える。
乗算部28は、この電圧比V3PDと、定数設定器34に設定された抵抗器R21の抵抗値r21と等しい抵抗値に設定された定数Kとを乗算してP極側給電電路LPの絶縁抵抗値RxPを示すV3PMを求め、監視・記録部40に出力する。監視・記録部40は、これを読取って、記録、表示および警報を行う。
【0096】
また、N極側給電電路LPの絶縁抵抗測定を行うときは、制御部30がP極選択信号PSを出力し、P極側スイッチPa1、Pa2をオンにする。同時に指令信号S1NをオンにしてP極側割算部23を動作させる。割算部23は、電圧検出抵抗R12から基準電圧V1と接地電流検出回路15の検出抵抗R31から取り出した検出電圧V31との比V3ND(=V1÷V31)を演算し、その出力を乗算部27に与える。
乗算部27は、この電圧比V3NDと、定数設定器34に設定された抵抗器R21の抵抗値r21と等しい抵抗値に設定された定数Kとを乗算してN極側給電電路L
Nの絶縁抵抗値Rx
Nを示すV3
NMを求め、監視・記録部40に出力する。監視・記録部40は、これを読取って記録、表示および警報を行う。
【0097】
監視・記録制御部40は、絶縁抵抗の測定個所切換器35からの切換信号SSによって電池電源または給電電路の各絶縁抵抗測定データを時系列に記録、表示して絶縁抵抗変化を監視できるようにし、また、測定した絶縁抵抗値が予め設定した基準絶縁抵抗値以下に低下したときは警報を発するようにする。これにより、電気推進システムにおける電池電源、給電電路の絶縁抵抗を常時監視することができるので、システムを安全に管理することができる。
【0098】
[実施例2]
次に、
図6に示すこの発明の第2の実施例について説明する。
この第2の実施例は、予め絶縁抵抗値Rxの監視の基準となる基準絶縁抵抗値Rxsを設定して、単列電池電源の絶縁抵抗の測定を行うものである。
【0099】
第2の実施例では、500Vの電池電源Bの電源電圧から電圧検出回路11、12により分圧して2.5Vの基準電圧V1、V2を取り出すために、電圧検出回路の高抵抗の抵抗器R11、R21および低抵抗の検出抵抗器R12,R22の抵抗値をそれぞれ、
図6に示すように10kΩおよび50Ωに設定している。
【0100】
接地電流検出回路15、16の検出抵抗器R31、R32の抵抗値は、電池電源Bの絶縁抵抗RXの監視の基準となる基準絶縁抵抗値Rxsを設定し、これに基づいて決定する。
例えば、基準絶縁抵抗値Rxsを1MΩに設定した場合は、絶縁抵抗RXの絶縁抵抗値Rxを基準絶縁抵抗値Rxs(1MΩ)として、検出抵抗器R31、R32から取り出す検出電圧V31、V32が前記基準電圧2.5Vの1/2の1.25Vとなるようにこれらの抵抗器R31、R32の抵抗値を決定する。ここでは、検出抵抗器R31、R32の抵抗値を、
図6に示すように5kΩに設定する。これにより、検出抵抗器R31、R3から取り出す検出電圧V31、V32は、2電圧検出回路から取り出す2.5Vの基準電圧V1、V2の1/2の1.25Vとなる。
【0101】
接地電流検出回路15,16の検出抵抗R31、R32の抵抗値をこのように設定すると、絶縁抵抗RXの抵抗値Rxが1MΩになったとき、検出電圧V31、V32を合計した検出電圧VE(=V31+V32)は2.5Vとなる。この合計電圧VEは、電圧検出抵抗器R12、R22から取り出した基準電圧VS(V1、V2)=2.5Vと等しくなる。
【0102】
電圧検出回路11、12および接地電流検出回路15、16の各抵抗器の抵抗値を
図6のように設定した場合、
図1の絶縁抵抗測定装置IRMにおける定数設定器34に設定する定数Kは、基準絶縁抵抗値Rxsが1MΩに設定されているので、これと等しい値の1MΩに設定する。この定数Kは、基準絶縁抵抗値Rxsを2MΩに設定したときは、2MΩに設定し、基準絶縁抵抗値Rxsを0.5MΩに選定したときは、0.5MΩに設定する。
絶縁抵抗測定装置IMRによる電池電源Bの絶縁抵抗の測定手順は、前記した実施例1の場合と全く同じであるので、実施例1の説明を参照されたい。
【0103】
測定回路の回路定数を
図6に示すように設定した実施例2の絶縁抵抗測定装置IMRにより単列の電池電源B1の絶縁抵抗測定を行う場合、電池電源B1の絶縁抵抗値Rxが1MΩになったときに、正負各極性の接地電流検出回路15、16の検出抵抗R31、R22から取り出される検出電圧V31、V32を、絶縁抵抗測定装置IRMの加算部31で加算して求めた合計電圧VEは、2.5Vとなる。
【0104】
絶縁抵抗測定装置IRMの割算器32で、基準電圧となる電圧検出抵抗器R12、R22から取り出した基準電圧V1またはV2と、合計電圧VEとの電圧比VEDを求めるが、ここでは、V1、V2およびVEは、何れも2.5Vであるから、電圧比VEDは1(=2.5÷2.5)となる。
【0105】
この割算器32で求めた電圧比VEDは、乗算器33に加えられ、ここで基準絶縁抵抗値Rxsに設定された定数設定器34の定数Kと乗算して絶縁抵抗値Rxを示すVEMが求められる。電圧比VEDは1で、定数Kは1MΩに設定されているから、
VEM(Rx)=VED×K=1×1MΩ=1MΩ ・・・(18)
となり、絶縁抵抗値Rxとして1MΩが求められる。
電圧比VEDが2となれば、絶縁抵抗値Rxは2MΩとなり、電圧比VEDが0.5となれば、絶縁抵抗値Rxは0.5MΩとなる。
【0106】
この実施例2において、接地電流検出回路15、16から取り出される検出電圧V31とV32を合計した電圧VEと絶縁抵抗値Rxとは、
図7に示すように反比例する関係を有する。
図7において、特性線RS1は、基準絶縁抵抗値Rxsを1MΩに設定したときの特性線、特性線RS2は、基準絶縁抵抗値Rxsを2MΩに設定したときの特性線、そして特性線RS0.5は、基準絶縁抵抗値Rxsを0.5MΩに設定したときの特性線である。
【0107】
それぞれの特性線が2.5Vとなる基準電圧線VSと交差する点の絶縁抵抗値Rxが、設定した基準絶縁抵抗Rxsを示す。すなわち、特性線RS1の場合は、基準電圧線VSと交差する点の絶縁抵抗値Rxは1MΩ、特性線RS2の場合は、基準電圧線VSと交差する点の絶縁抵抗値Rxは2MΩ、特性線RS0.5の場合は、基準電圧線VSと交差する点の絶縁抵抗値Rxは0.5MΩがそれぞれ基準絶縁抵抗値Rxsとなる。
【0108】
このように、基準絶縁抵抗値Rxsを設定し、この基準絶縁抵抗値Rxsに基づいて、正、負極接地電流検出回路15、16の検出抵抗器R31,R32の抵抗値r31、r32を設定すると、検出抵抗器R31、R32から取り出した検出電圧V31とV32の合計電圧VEと
図7の対応する特性線とから基準絶縁電池電源の絶縁抵抗値Rxを求めることもできる。
また、この実施例2のように絶縁抵抗の監視基準となる基準絶縁抵抗値Rxsを決めて、絶縁抵抗の測定を行うようにすると、
図7から明らかなように、絶縁抵抗値Rxが、例えば、特性線RS1についてみれば、1MΩより大きい範囲では、絶縁抵抗値Rxの変化に対して合計検出電圧VEの変化が小さく、検出感度が低くなるが、絶縁抵抗値Rxが基準絶縁抵抗値Rxsの1MΩより小さい範囲では、絶縁抵抗値Rxの変化に対して合計検出電圧VEの変化が大きく、検出感度が高くなる。
【0109】
絶縁抵抗値Rxが基準絶縁抵抗値Rxsより大きくなる範囲は絶縁状態が正常であるから、検出感度が低くなっても特に問題はない。そして、絶縁抵抗値Rxが基準絶縁抵抗値Rxsより小さい範囲は、絶縁状態が異常であるから、検出感度が高くなることは、絶縁状態の異常を確実に検知するうえで利点となる。
【0110】
前記の実施例2の説明では、単列電池絶縁抵抗測定モードの測定についてしか説明していないが、この実施例2も、実施例1と同様に、複列電池絶縁抵抗測定モード、電池電源の絶縁不良個所(位置)特定モードでの測定も行えることは言うまでもないことである。
【0111】
[実施例3]
前記の第2の実施例は、基準絶縁抵抗Rxに基づいて接地電流検出回路の検出抵抗器の抵抗値を設定して、電池電源の絶縁抵抗を測定する装置の例であり、このままでは、給電電路の絶縁抵抗の測定には適用できない。
図8に、第3の実施例として、基準絶縁抵抗Rxに基づいて接地電流検出回路の検出抵抗器の抵抗値を設定して、給電電路の絶縁抵抗の測定を行うことを可能にする装置の例を示す。
【0112】
この第3の実施例では、
図8に示すように、正、負極の接地電流検出回路15、16における検出抵抗器として、電池電源絶縁抵抗測定用の検出抵抗器R31aおよびR32aと給電電路絶縁抵抗測定用の検出抵抗器R31bおよびR32bを設け、それぞれ、切換スイッチ31a、31b、32a、32bを介して選択可能に並列接続する。
【0113】
図1の絶縁抵抗測定装置IRMの測定個所切換器35を「電池電源」位置に切換えて電池電源の絶縁抵抗測定が指令されると、制御部30からの指令により、選択スイッチ31a、32aがオンにされ、選択スイッチ31b、32bがオフにさる。これにより、電池電源測定用の検出抵抗器R31a、R32aが選択され、これらの検出抵抗器R31a、R32aから検出電圧V31、V32が取り出される。
【0114】
そして、測定個所切換器35を「給電電路」位置に切換えて給電電路の絶縁抵抗測定が指令されると、制御部30からの指令により、選択スイッチ31b、32bがオンにされ、選択スイッチ31a、32aがオフにされる。これにより、給電電路測定用の検出抵抗器R31b、R32bが選択され、これらの検出抵抗器R31b、R32bから検出電圧V31、V32が取り出される。
【0115】
電池電源絶縁抵抗測定においては、電圧検出回路11,12か取り出された基準電圧VS(V1、V2)と、接地電流検出回路15,16の検出電圧V31、V32の合計電圧VEとの電圧比に基づいて電池電源の絶縁抵抗値を求める関係で、電池電源の基準絶縁抵抗値Rxsに基づく電池電源測定用の検出抵抗器R31a、R32aの抵抗値は、第2の実施例で説明したように、検出抵抗器R31a、R32aから得られる電圧V31、V32が基準電圧VSの1/2の電圧となる設定する。
このため、第6図の第2の実施例と回路条件を同じにした場合、第3の実施例においても、
図8に示すように、電池電源測定用の検出抵抗器R31a、R32aの抵抗値は、第2の実施例と同ように、5kΩに設定される。
【0116】
これに対して、給電電路の絶縁抵抗を測定する場合は、前記第1の実施例における(2)給電電路絶縁抵抗測定モードの項で説明したように、接地電流検出回路15、16の各検出抵抗器R31b、R32bから、電池電源の全電圧(500V)により各極の給電電路の絶縁抵抗を通して流れる接地電流に基づく電圧V31、V32取り出される。
【0117】
このため、給電電路絶縁抵抗測定用検出抵抗器R31b、32bの抵抗値r31b、r32bは、これらの検出抵抗器R31b、32bから取り出される電圧V31、V32が電圧検出回路11、12から取り出される基準電圧VS(V1、V2)と等しい電圧となるように設定する必要がある。これに従えば、
図8の給電電路絶縁抵抗測定用検出抵抗器R31b、32bの抵抗値r31b、r32bは、図示するように、電池電源絶縁抵抗測定用検出抵抗器R31a、R32aの抵抗値(5kΩ)の2倍の10kΩとなる。
実施例3においても、
図1の絶縁抵抗測定装置IRMの定数設定器34の定数Kは、基準絶縁抵抗値Rxsを1MΩに設定した場合は、これと等しい1MΩに設定する。
【0118】
この第3の実施例においては、測定個所切換器35から給電電路の絶縁抵抗測定が指令されると、前記したとおり選択スイッチ31b、32bがオンにされて、選択スイッチ31a、32aがオフにされることにより、接地電流検出回路15、16において給電電路測定用検出抵抗R31b、R32bが選択される。
【0119】
これらの抵抗器から取り出された検出電圧V31、V32は、
図1の絶縁抵抗測定装置IRMの割算器23、24に加えられ、ここで、電圧検出回路11、12から取り出された基準電圧V1、V2との電圧比V3ND(=V1/V31)、およびV3PD(=V2/V32)が求められる。電圧比V3ND、V3PDは、乗算器27、28に加えられ、ここで、定数設定器34の基準絶縁抵抗値Rxsに設定された定数Kと乗算して、給電電路の絶縁抵抗値V3NM、V3PMが求められる。
この第3の実施例の接地電流検出回路15、16から検出される検出電圧V31、V32と絶縁抵抗値Rxとの関係は、
図7に示す第2の実施例の検出特性と同じく、反比例の関係となる。このため、この実施例3によっても設定した基準絶縁抵抗値Rxs、例えば1MΩ付近での検出感度を高めることができる利点が得られる。