特許第6540686号(P6540686)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6540686品質対照をその上に有する顕微鏡スライド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540686
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】品質対照をその上に有する顕微鏡スライド
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20190628BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20190628BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20190628BHJP
   G02B 21/34 20060101ALI20190628BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20190628BHJP
   G01N 1/28 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
   G01N33/50 F
   G01N33/48 P
   G01N33/53 Y
   G01N33/48 Q
   G02B21/34
   G01N1/00 102B
   !G01N1/28 U
【請求項の数】18
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-505501(P2016-505501)
(86)(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公表番号】特表2016-520814(P2016-520814A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】US2014031275
(87)【国際公開番号】WO2014165327
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】61/806,841
(32)【優先日】2013年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598041463
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】パン,ジェンギュ
(72)【発明者】
【氏名】マックローチ,コリン
(72)【発明者】
【氏名】ラザール,マイケル・スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】フィルキンス,ロバート・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジンティ,フィオナ
【審査官】 草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−519376(JP,A)
【文献】 特表2002−533695(JP,A)
【文献】 特表2008−541019(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0338014(US,A1)
【文献】 特開平08−145988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織試料用の顕微鏡スライドであって、
試料固定領域を有する第1の主面を備える細長い平面状の基板であって、試料固定領域内に、組織試料が固定され得る基板と、
試料固定領域に隣接する第1の位置で第1の主面上に固定された第1の陽性対照試料と、
試料固定領域に隣接する第2の位置で第1の主面上に固定された第2の陽性対照試料と、
試料固定領域に隣接する第3の位置で第1の主面上に固定された第3の陽性対照試料と
を含み、
第1の位置及び第2の位置の間を伸びる線分が前記試料固定領域を通過し、第2の位置及び第3の位置の間を伸びる線分が前記試料固定領域を通過し、且つ、第3の位置及び第1の位置の間伸びる線分が前記試料固定領域を通過する、顕微鏡スライド。
【請求項2】
組織試料用の顕微鏡スライドであって、
試料固定領域を有する第1の主面を備える細長い平面状の基板であって、試料固定領域内に、組織試料が固定され得る基板と、
試料固定領域に隣接する第1及び第2の位置で第1の主面上にそれぞれ固定された、共通の第1のバイオマーカーを含む第1及び第2の陽性対照試料のペアと、
試料固定領域に隣接する第3及び第4の位置で第1の主面上にそれぞれ固定された、共通の第2のバイオマーカーを含む第3及び第4の対照試料のペアと
を含み、
前記第2のバイオマーカーは、前記第1のバイオマーカーとは異なり、または、前記第1のバイオマーカーと同一で信号レベルが異なり、
前記第1及び第2の位置は試料固定領域を挟んで正反対に位置し、且つ、前記第3及び第4の位置は試料固定領域を挟んで正反対に位置する、顕微鏡スライド。
【請求項3】
料固定領域に隣接する第4の位置で第1の主面上に固定された第4の陽性対照試料をさらに含第1の位置、第2の位置、第3の位置及び第4の位置の間に伸びる線分がそれぞれ前記試料固定領域を通過する、請求項記載の顕微鏡スライド。
【請求項4】
複数の前記陽性対照試料が、試料固定領域の周囲に沿って均等に離間されている、請求項1乃至3のいずれか1項記載の顕微鏡スライド。
【請求項5】
a)2つ以上の陽性対照試料が、試料固定領域の全周囲を囲む連続的な線を形成し、
b)陽性対照試料が、細胞ペレット、対照組織試料、又は生体材料を担持する担体からなる群から選択され、
c)陽性対照試料及び組織試料が同じバイオマーカーを含んでおり
d)第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料が、共通してバイオマーカーを含み、
e)第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料が、異なるバイオマーカー含み、対照が、組織試料が分析されるときに両方とも検出可能であり、
f)対照試料のそれぞれが、2つ以上の異なる種類のバイオマーカーを含み、
g)スライドが、組織固定領域の周りに3つ以上の対照試料を含み、組織固定領域の部分を挟んで配置された、対照試料の少なくとも2つが、共通のバイオマーカーを含み、、
h)異なる量のバイオマーカーを含む対照試料が、顕微鏡スライド上に含まれ、同様の対照試料のペアが組織固定領域の一部分を挟んで配置されるように少なくともペアとして配され、
i)対照思料の少なくとも1つが、試料固定領域よりも高い位置にあり、及び/又は
j)試料固定領域に隣接する位置で第1の主面上に固定された1つ以上の陰性対照試料をさらに含む、請求項記載の顕微鏡スライド。
【請求項6】
対照試料のそれぞれが、スライド基板の組織固定領域の部分を挟んで配置された別の対照に対応するペアを成す関連バイオマーカーを含むバイオマーカーを含む、請求項記載の顕微鏡スライド。
【請求項7】
2つのペアを成す関連バイオマーカーが、同じバイオマーカーであるか、或いは異なっていて、組織試料が分析されるときに両方とも検出可能である、請求項6記載の顕微鏡スライド。
【請求項8】
対照試料の少なくとも1つが、試料固定領域よりも高い位置にある、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の顕微鏡スライド。
【請求項9】
対照試料が配置されている位置で第1の主面上に配置された1以上の支持プラットフォームをさらに備え、支持プラットフォームが、第1の主面よりも高い位置にある支持面を備え、1以上の対照試料が、支持面に固定されているか、或いは試料固定領域が、平面状の凹領域をさらに備え、基板に、平面状の凹領域と第1の主面の開口とを流体連通するように延在する凹部が形成されている、請求項8記載の顕微鏡スライド。
【請求項10】
分析される組織試料を受けるように適合された、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の顕微鏡スライドを備え、スライドが、実行される分析に関係する表示を含むラベルを受けるようにさらに適合されている、キット。
【請求項11】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の顕微鏡スライドを作製する方法であって、
顕微鏡スライド上に陽性対照試料の薄層を移動させて固定するステップを含む方法。
【請求項12】
陽性対照試料が、細胞ペレットを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
移動ステップが、
a)接触印刷すること、
b)マイクロディスペンス技術によって、溶融したワックス溶液中の一定分量の、ホルマリンで固定した細胞ペレットをスライド上に加えること、又は
c)ホルマリンで固定されてパラフィン包埋された細胞のスライドサイズのブロックを切片にすることと、顕微鏡スライド上にブロックを移動させること、及び請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の顕微鏡スライドを作製するためにブロックの一部を除去すること
を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の顕微鏡スライドを染色するステップと、
性対照試料を検出するステップと
を含む、分析方法。
【請求項15】
a)陽性対照試料の位置のすべてからの信号の存在が、染色品質の確認をもたらすか、
b)陽性対照試料の位置のすべてからの信号の存在が、染色品質のリアルタイムの確認をもたらすか、
c)陽性対照試料のある位置からの信号の不在が、染色の失敗を示すか、
d)スライドが、試料固定領域に隣接する位置で第1の主面上に固定された1つ以上の陰性対照試料をさらに含み、陰性対照試料のある位置からの信号の存在が、染色の失敗を示すか、或いは
e)顕微鏡スライドが、組織試料をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
陽性対照試料が、細胞ペレットであり、検出ステップが、細胞ペレットを含まない、画像の部分をマスクすること及び細胞ペレットの各細胞の内部のマーカーの局在を明らかにすることを含む、請求項14記載の方法。
【請求項17】
細胞ペレットの各細胞の核及び各細胞の各核の周りの環状領域の輪郭を描く、2つの区画への画像分割を実行するステップをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
視野内の細胞ペレットの各細胞の両方の区画における各マーカーの平均染色を測定するステップ及び全体の視野メトリックを生成するためにこれらの細胞レベルメトリックを集約するステップをさらに含み、視野メトリックが、知られている細胞核マーカーの平均細胞核発現を含む、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子病理学の分野に関する。より具体的には、本発明は、顕微鏡スライド上の組織試料の高品質染色を確保するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織診断は、患者ケアにとってより重要になってきており、処理量に対して高まる需要を満たすためにこれまで以上の自動化を必要としている。自動化された免疫染色技術は、大部分のIHC研究室で広く使用されている。機器は、手作業の免疫染色工程(抗原回収、抗体及び溶液の適用、インキュベーション、並びに洗浄などの重要なステップを含む)を模倣するように設計されている。様々なシステムが、様々な度合いの柔軟性及びスライド能力を有しているが、これらの目標は、同じである、すなわち、エラーを最小限に抑え、高い品質の染色を実現して、一貫した解釈が患者試料から引き出され得るようにすることである。
【0003】
しかしながら、これらの自動染色器におけるエンジニアリング対照ツールの準備にもかかわらず、染色溶液の不正確な分注及び気泡又は厚い、密でない、もしくは折り畳まれた組織切片の存在に起因する患者試料の不完全な範囲(これは、結果的に分析にとって偽陰性の不均一な染色という問題を発生させる)という問題を有することは珍しくない。例えば、Shi,S−R.,Taylor,C.R.,Antigen Retrieval Immunohistochemistry Based Research and Diagnostics,2010,Wiley,Singaporeを参照のこと。さらに、市場に出回っている一般的な自動染色器は、染色領域を約50mmの長さに制限している。ある製造業者のカバーガラス技術は、染色領域を21×50mmに制限している。別の製造業者の液体ボルテックス空気混合プロトコルは、25×50mmの染色領域を取り扱う。現在、これらの特定の染色領域内の組織切片全体が均一に又は完全に染色されていることを検証する対照方法は存在しない。
【0004】
現在、スライド上の組織の不十分な染色は、過去に照らして識別されるのみである。多くのそれほど明白でない現象は、これまで気付かれ得なかった。DakoのHercepTest(商標)は、バッチ対照として染色の実施のそれぞれに含まれた、0、1+、及び3+の染色強度スコアを有する3つのペレット状の、ホルマリンで固定されてパラフィン包埋されたヒト乳癌細胞株を含む別々のスライドを含む。しかしながら、バッチ対照は、バッチ内で個別のスライドのそれぞれにおける染色の欠陥を識別することができない。
【0005】
別の以前の手法では、患者試料切片は、陽性又は陰性の組織又は細胞の対照を既に含むスライドの上に調製される。これらの組織の由来は、機関に応じて様々であり、それらの染色挙動は、患者変動性に起因してバッチ間で異なる。図1に示されているように、従来技術は、平面状の基板2であって、その上に組織試料3及び細胞対照4が固定される基板2を有する組織試料スライド1を提供している。細胞対照4の形態は、試料と基板2の一方の長手方向端部5との間の領域でスライドに固定された細胞ペレットである。図2は、癌マーカーIHCアッセイのための細胞対照4’a〜4’iの9ドットアレイを含む、従来技術の別の組織試料スライド1’(メリーランド州ロックビルのBio−Quick Corporationによって販売されている)を描いている(http://www.bio−quick.com/qc−dots%C2%AE−cancer−array−ca−control−slides)。細胞対照4’a〜4’iは、陽性及び陰性の対照を含み得るが、それぞれ、互いに異なる対照として示されている。スライド1’は、細胞ペレットのアレイを含んでいるが、単一の細胞ペレットを含むスライドと同様の情報を提供する。すなわち、細胞ペレットマーカーは、分析中の組織試料から受信される信号の較正にもっぱら使用される。スライド1と同様に、スライド1’では、試料と基板2’の一方の長手方向端部5’との間に対照4’a〜4’iが配置されており、このため、対照4’a〜4’iは、試料のサイズ及びオペレータの技能に応じて患者の試料の近く又は遠くに位置し得る。それゆえ、組織の片側のみへのこれらの対照の配置は、組織試料自体が完全かつ均一に染色されたか否かにについての信頼できる指標を提供しない。
【0006】
したがって、当該技術は、組織試料の全体が完全かつ均一に染色されたことを保証する方法において対照を使用するスライドを欠いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0338014号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明は、試料固定領域に隣接する陽性対照試料を有する顕微鏡スライドを提供する。これらのスライドは、組織試料の分析(病理染色など)に適しており、染色品質のリアルタイムの確認をもたらす。陽性対照試料又は陽性対照は、組織試料の分析中に検出され得る1つ以上のバイオマーカーを含む。したがって、陽性対照の染色の不足は、染色の失敗のリアルタイムの識別をもたらす。随意に、さらに陰性対照試料が、スライド上に含まれてもよい。陰性対照試料又は陰性対照は、陽性対照に見られる1つ以上のバイオマーカーを含まない。したがって、陰性対照の染色もまた、染色の失敗のリアルタイムの識別をもたらす。
【0009】
このように、一態様において、本発明は、染色される組織試料用の顕微鏡スライドを提供する。顕微鏡スライドは、細長い実質的に平面状の基板を含み、この基板は、組織試料が固定され得る試料固定領域を有する第1の主面を含む。スライドは、試料固定領域に隣接する第1の位置で第1の主面上に固定された第1の陽性対照試料及び試料固定領域に隣接する第2の位置で第1の主面上に固定された第2の陽性対照試料をさらに含む。第1の位置及び第2の位置は、第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料の染色の品質が組織試料の染色の品質の指標となるように離間されている。
【0010】
別の態様において、本発明は、染色される組織試料用の顕微鏡スライドを提供する。顕微鏡スライドは、細長い実質的に平面状の基板を含み、この基板は、組織試料が固定され得る試料固定領域を有する第1の主面を含む。スライドは、試料固定領域に隣接する第1の位置で第1の主面上に固定された第1の陽性対照試料及び試料固定領域に隣接する第2の位置で第1の主面上に固定された第2の陽性対照試料を含む。第1の位置及び第2の位置は、試料固定領域の少なくとも一部が基板の長手方向軸線に沿って第1の位置と第2の位置との間に延在するように離間されている。
【0011】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の顕微鏡スライドを作製する方法であって、顕微鏡スライド上の第1の位置及び第2の位置に陽性対照試料の薄層を移動させて固定するステップを含み、第1の位置及び第2の位置が、第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料の染色の品質が組織試料の染色の品質の指標となるように離間されている方法を提供する。
【0012】
さらに別の態様において、本発明は、分析の方法であって、第1の位置及び第2の位置にそれぞれ配置された陽性対照試料のための検出手段によって本発明の顕微鏡スライドを染色するステップを含む方法を提供する。第1の位置及び第2の位置は、陽性対照試料の染色の品質が組織試料の染色の品質の指標となるように離間されており、少なくとも第1の位置及び第2の位置から陽性対照試料が検出される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スライドの組織固定領域に隣接する位置に対照として細胞ペレットを有する、従来技術のスライドを描いている。
図2】スライドの組織固定領域に隣接する位置に多数の細胞ペレットを有する、従来技術の別のスライドを描いている。
図3】スライドの組織固定領域の部分を挟んで配置された細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係るスライドを描いている。
図4】組織固定領域の部分を挟んで配置された細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係る別のスライドを描いている。
図5】スライドの両側の縁部に沿って互いに組織固定領域の両側に配置された細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係るさらに別のスライドを描いている。
図6】細胞ペレットが長手方向に互いに離間され、かつスライドの長手方向軸線から横方向に離間されている、図5のスライドの代替的な実施形態を描いている。
図7】スライドの組織固定領域の周りに配置された3つの細胞ペレットを有する、本発明の別の実施形態を描いている。
図8】スライドの組織固定領域の周りに配置された4つの細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係るさらに別のスライドを描いている。
図9】互いに組織固定領域を挟んで配置された異なる細胞ペレットのペアを有する、本発明の実施形態に係るさらに別のスライドを描いている。
図10】スライドの両側の縁部に沿って組織固定領域に隣接して配置された異なる細胞ペレットの多数のペアを有する、本発明の実施形態に係るさらに別のスライドを描いている。
図11】実質的に均等に離間された細胞ペレットによって周囲に境界が形成されている組織固定領域を有する、本発明の実施形態に係る代替的なスライドを描いている。
図12】異なる種類のペレットによって周囲に境界が形成されている組織固定領域を有する、本発明の実施形態に係る別の代替的なスライドを描いている。
図13】スライド上の組織固定領域の周りに8つの細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係るスライドを描いている。
図14】本発明の実施形態に係るさらに別の代替的なスライドを描いており、ここでは、スライドの組織固定領域の周りに配置された細胞ペレットがさらに、顕微鏡スライドの第1の主面上の支持プラットフォーム上に配されている。
図15】スライドの組織固定領域の周りに配置された細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係るさらに別の代替的なスライドを描いており、ここでは、組織試料は、平面状の凹領域内の、顕微鏡スライドの第1の主面上に固定されている。
図16】スライドの組織固定領域の周りに配置された細胞ペレットを有する、本発明の実施形態に係るさらに別の代替的なスライドを描いており、ここでは、顕微鏡スライドは、試料固定領域よりも高い位置にある実質的に平面状のラベル領域をさらに備える。
図17】本発明の実施形態に係るスライドを作製するためのシステムを描いている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、スライドに固定された組織試料の適切な染色についてより高い確信をもたらす革新的な対照試料レイアウトを備える顕微鏡スライドを提供する。本発明のスライドは、組織試料の自動化された染色及び分析に適している。本発明の顕微鏡スライドは、特に、組織試料の自動化された、複数ラウンドの多重分析に適している。これらのスライドは、組織の画像化/分析中の、染色品質の確認を可能にする。また、これらのスライドは、染色のすべてのラウンドが完了した後に、染色の各ラウンド後に形成された画像の評価によって染色品質を確認することを可能にする。一部の実施形態では、本明細書に開示されている顕微鏡スライド及び方法は、特に、組織化学、免疫染色、免疫組織化学、免疫アッセイ、免疫蛍光、又は蛍光インサイツハイブリダイゼーションに適用可能であり得る。
【0015】
図3に示されているように、本発明の第1の態様は、顕微鏡スライド10であって、これに固定される組織試料15を染色するための顕微鏡スライド10を提供する。スライド10は、試料固定領域16(その周辺は仮想線によって示されている)を有する第1の主面14を有する細長い実質的に平面状の基板12を含み、試料固定領域16内には、組織試料15が固定され得る。スライド10は、試料固定領域16に隣接する第1の位置で第1の主面14上に固定された第1の陽性対照試料20a及び試料固定領域16に隣接する第2の位置で第1の主面14上に固定された第2の陽性対照試料20bをさらに用意している。第1の位置及び第2の位置は、第1の陽性対照試料20a及び第2の陽性対照試料20bの染色の品質が組織試料15の染色の品質の指標となるように離間されている。すなわち、対照試料20a及び20bが、組織試料15と基板12の長手方向縁部17a及び17bのそれぞれとの間に配置されているため、組織試料15の染色後の、対照試料20a及び20bの両方における信号の検出は、染色範囲が基板12の両方の端部を含んでいたこと、すなわち、単一の隣接部に配置された単一の対照試料のみが染色を示す場合に比べて組織試料15の完全な染色のより良い表徴を示す。基板の組織固定領域の周りに多数の陽性対照試料を配することによって、本発明は、組織試料の周りの対照がそれぞれ染色されたことを示すときに完全な組織染色のより大きな確信をもたらす。陽性対照試料からの検出信号の欠如は、組織試料の完全な染色の失敗の指標となる。対照試料の染色は、染色の各ラウンド後の、基板上の組織の画像化中に明らかとなり、これにより、組織自体が適切に染色されたことのリアルタイムの確信がもたらされる。さらに、画像が、その後の分析のために保持されるとき、本発明は、さらなる評価が是認される場合に対照試料染色の記録の提供を可能にする。
【0016】
望ましくは、第1の位置及び第2の位置は、試料固定領域16の少なくとも一部が基板12の長手方向軸線に沿って第1の位置と第2の位置との間に延在するように離間される。用語「基板12の長手方向軸線」は、基板12の細長い長さに沿って両側の端部17a及び17bの間に中心を通って伸びる直線を意味する。本説明のために、基板12の長手方向軸線は、主面14に沿って伸びるとさらに考えられる。したがって、試料固定領域16の少なくとも一部が、これらの位置の間に長手方向に延在するように、これらには長手方向の間隔がある。本明細書で説明されるように、第1の位置及び第2の位置のこのような長手方向の間隔は、これらの位置の間に横方向の間隔をさらに含んでもよい。すなわち、この場合、これらの位置の少なくとも一方が、長手方向軸線と基板12の細長い縁部18a又は18bとの間に離間される。これらの実施形態のそれぞれにおいて、第1の位置及び第2の位置は、一方又は両方が長手方向軸線から横方向にも離間される場合であってもスライドの長手方向軸線に沿って離間されると考えられる。本発明の各実施形態に関して、対照試料20a及び20bの間に伸びる直線は、試料固定領域16を横切る。本発明では、組織試料15の適切な染色の確信は、組織試料の部分が2つの対照試料間の直線に沿って配置される場合にさらに高くなり得ると考えられている。
【0017】
本発明では、顕微鏡スライド10の基板12は、組織の染色及び分析に適した材料(実験室用ガラス製品に適したガラスなど)から形成されると考えられている。基板12は、望ましくは、実質的に平面状の部材であり、以下で注目する特定の実施形態を除いて、主面14は、望ましくは平面である。基板12は、矩形形状を有するものとして描かれているが、本発明では、基板12は、非直線状の縁部又は単一の連続的な非直線状の縁部を有する円形形状又は他の形状を有してもよいとさらに考えられている。
【0018】
本発明の顕微鏡スライドのすべての実施形態に関して、組織固定領域は、図示のその周辺を示す仮想線(点線)によって示されている。本発明では、実際の組織固定領域が、主面上の線によって、又は主面にエッチングされた極小の溝によって指定されてもよいと考えられてはいるが、線は、スライド基板の主面上に見えなくてもよい。さらに、組織固定領域の形状は、一般的に、実質的に矩形として示されているが、組織固定領域の周囲の境界の形状は、分析される組織試料(又はその一部)を含むのに十分な表面積を提供する任意の形状(楕円形又は円形など)であってもよい。本発明では、基板の主面上の対照試料の位置は、組織試料が本発明に従って適切に配置されて固定されるべきである領域をユーザに示すと考えられている。同様に、患者組織試料は、概ね楕円形の形状によって示されているが、患者試料は、任意の形状(円形、正方形、矩形、又は不規則な形など)であってもよいと考えられる。患者試料の形状は、本発明の態様に影響を及ぼさない。陽性対照試料のレイアウトは、所望の効果(すなわち、患者試料の染色変動性の制御)を得るために患者試料の寸法及び形態に応じて調整されてもよい。
【0019】
さらに、本発明では、本発明によって用いられる陽性対照試料は、望ましくは、細胞ペレット、対照組織試料、又は生体材料(細胞ホモジネート、ペプチド、タンパク質、及びDNAなど)を担持する担体から選択されると考えられている。担体は、粒子、ゲル、又は他の形態であってもよい。患者の組織試料は、切片にされて、これらのスライド上に置かれ得るが、これに関して陽性対照試料は、染色の失敗(不均一な染色溶液の分注など)のリアルタイムの識別をもたらし、また、大きな組織試料のための染色境界に関する顧慮をもたらす。
【0020】
第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料は、好ましくは、共通して1以上のバイオマーカー(すなわち、マーカー)を含む。バイオマーカー又はマーカーによって、これが検出手段によって検出され得る細胞成分を含むことが意味されている。例示的な細胞成分は、タンパク質、核酸分子、又は炭水化物を含む。好ましくは、この共通のバイオマーカーは、組織試料を検出するのと同じ検出手段によって検出され得る。或いは、第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料は、異なるバイオマーカーを含んでもよい。本発明では、両方の陽性対照試料が、何らかの検出手段によって両方とも検出可能な限り、本発明の目標、すなわち、染色の失敗の識別は達成されると考えられている。したがって、本発明では、第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料が、共通のバイオマーカーを含む限り、同じであるか、又は同じ細胞株から形成された細胞ペレットを含むことは必須ではないと考えられている。或いは、第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料が、完全に異なるバイオマーカーを含む場合であっても、染色の失敗は、対照が、組織試料が分析されるときに両方とも検出され得る限り、本方法を用いて識別され得る。
【0021】
本発明では、各陽性対照試料自体が、2つ以上の異なる種類のバイオマーカー(例えば、抗原)を含んでもよいとさらに考えられている。各細胞株が、様々な検出手段によって検出され得る限り、本発明では、異なる種類の抗原を発現する細胞株が、細胞ペレットを作製するために互いに混合されてもよいとさらに考えられている。これらの陽性対照試料は、特に、多重実験に有用である。したがって、第1のマーカーは、両方の陽性対照試料において、多重実験の第1のラウンドのための陽性対照として検出される。第2のマーカーは、両方の陽性対照試料において、多重実験の第2のラウンドのための陽性対照として検出される、等々。
【0022】
したがって、本発明の対照試料中に用意される各マーカーは、スライド基板の組織固定領域の部分を挟んで配置される、対応するペアを成す関連マーカーを含むことが理解される。上述したように、ペアを成す関連マーカーは、同じであってもよい。或いは、ペアを成す関連マーカーは、組織試料が分析されるときに両方とも検出され得る限り、異なるバイオマーカーであってもよい。
【0023】
図4に示されているように、本発明は、顕微鏡スライド110をさらに提供する。なお、ここでは、同じ番号は、本発明の他の実施形態と同じ構成要素を示している。本発明のすべての実施形態に関して、適用される組織試料には、常に「15」の番号が付けられている。用語「同じ番号」は、スライドの異なる実施形態の同じ構成要素であって、それらの符号の最後の二桁を共有する同じ構成要素が、一般的に互いに同様であることを示している。同様に、符号に同じ最後の二桁を有する構成要素が、さらに添え字によって示されている場合があるが、添え字は、これらの構成要素が構造又は構成において実質的に同じだが、別々に配されていることを示している。
【0024】
スライド110は、平面状の主面114を有する実質的に平面状の基板112を含む。主面114は、試料固定領域116を含み、そこには、組織試料15が、従来の手段によって固定されてもよい。スライド110は、第1の陽性対照試料120a及び第2の陽性対照試料及び120bを含み、第1の陽性対照試料120a及び第2の陽性対照試料及び120bは、それぞれ、主面114の第1の位置及び第2の位置に配されている。第1の陽性対照試料120aは、試料固定領域116と基板112の第1の長手方向縁部117aとの間にあり、第2の陽性対照試料120bは、試料固定領域16の脇に横方向に配置されている。「の脇に横方向に配置される」によって、位置が、基板112の細長い軸線に対して横方向の直線に沿って、試料固定領域116と基板112の横方向縁部118a及び118bの一方との間に配置されることが意味されている。
【0025】
図5に示されているように、本発明では、顕微鏡スライド210であって、第1の陽性対照試料220a及び第2の陽性対照試料220bを固定するための第1の位置及び第2の位置が、主面214上の試料固定領域216の両側にあるように、すなわち、これらの位置が、試料固定領域216を挟んで実質的に横方向に離間されるように設計された顕微鏡スライド210がさらに考えられている。前と同様に、同じ番号は、本発明の同じ構成要素を示している。図5に示されているように、対照試料220aが、試料15と基板212の縁部218aとの間に配置されている一方で、対照試料220bは、試料15と基板212の縁部218bとの間に対向して配置されている。
【0026】
図6は、本発明の別の顕微鏡スライド310を描いている。スライド310は、第1の主面314を含む実質的に平面状の基板312を含み、第1の主面314は、分析される組織試料を受けるための組織試料固定領域316を有する。スライド310は、第1の対照試料320a及び第2の対照試料320bをさらに含み、第1の対照試料320a及び第2の対照試料320bは、それぞれ、表面314上の第1の位置及び第2の位置に配置されている。第1の位置及び第2の位置は、基板の長手方向軸線に沿って長手方向に離間され、かつ長手方向軸線から横方向に(又は長手方向軸線のどちらか一方の側に)離間されている。すなわち、対照試料320aは、長手方向端部317a及び縁部318bのより近くに配置されている対照試料320bに対して、長手方向端部317b及び縁部318aのより近くに配置されているように示されている。第1の位置及び第2の位置は、互いに試料固定領域316を挟んで実質的に対角線上に位置する、すなわち、試料固定領域316を挟んで長手方向かつ横方向に離間されている。なお、本発明では、用語「対角線上に」は、2つの位置の間に引かれた直線が、組織試料の境界を形成する多面体の2つの互いに隣接しない縁部を通過すると言われ得ることを単に示すと考えられている。
【0027】
図7は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド410を描いており、ここでは、同じ番号は、同じ構成要素を表している。スライド410は、第1の主面414を含む実質的に平面状の基板412を含み、第1の主面414は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域416を有する。スライド410は、第1の対照試料420a、第2の対照試料420b、及び第3の対照試料420cをさらに含み、第1の対照試料420a、第2の対照試料420b、及び第3の対照試料420cは、それぞれ、表面414上の第1の位置、第2の位置、及び第3の位置に配置されている。対照試料420a、420b、及び420cの長手方向及び横方向の間隔は、望ましくは、3つの位置の間に伸びる線分がそれぞれ試料固定領域416を通過することを保証するものである。本発明では、対照試料の2つが、それらの間の線分が試料固定領域416を通過しないように互いに隣接して配置されてもよいとさらに考えられている。とはいえ、3つの対照試料は、3つすべてが染色の証拠となるときに完全な組織染色のさらなる確信をもたらすために主面414上で共通の縦座標を共有しないことが望ましい。
【0028】
対照試料420a〜420cは、同じバイオマーカーを含むものとして示されているが、本発明では、組織固定領域の周りに3つ以上の対照試料を配する実施形態に関して、これらの対照試料のそれぞれが、本発明から逸脱することなくバイオマーカーの異なる組合せをさらに提供し得ることがさらに考えられている。限定としてではなく例示として、第1の対照試料は、バイオマーカー「X」及び「Y」を含んでもよく、第2の対照試料は、バイオマーカー「Y」及び「Z」を含んでもよく、さらに、第3の対照試料は、バイオマーカー「Z」及び「X」を含む。本発明に従って組織固定領域の周りに3つのこのような別個の対照試料を用いることによって、ペアを成すバイオマーカー「X」、「Y」、及び「Z」は、組織試料を対象とする染色についてのより高い度合いの確信をもたらし得る。このように、用いられる各対照試料が、1つ以上の他の対照試料と同じ組成を有することが望ましい場合がある一方で、対照試料中のバイオマーカーの組合せは、組織固定領域の周りの対照試料のバイオマーカーの配分が、本発明に従って組織固定領域の部分を挟んで配置される2つ以上のバイオマーカーを提供する限り変更されてもよい。
【0029】
図8は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド510を描いている。スライド510は、第1の主面514を含む実質的に平面状の基板512を含み、第1の主面514は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域516を有する。スライド510は、第1の陽性対照試料520a、第2の陽性対照試料520b、第3の陽性対照試料520c、及び第4の陽性対照試料520dをさらに含み、第1の陽性対照試料520a、第2の陽性対照試料520b、第3の陽性対照試料520c、及び第4の陽性対照試料520dは、それぞれ、表面514上の第1の位置、第2の位置、第3の位置、及び第4の位置に配置されている。対照試料520a、520b、520c、及び520dの長手方向及び横方向の間隔は、望ましくは、4つの位置の間に伸びる線分がそれぞれ試料固定領域516を通過することを保証するものである。本発明では、対照試料の2つ又は3つが、それらの間の線分が試料固定領域516を通過しないように互いに隣接して配置されてもよいとさらに考えられている。とはいえ、4つの対照試料は、4つすべてが染色の証拠となるときに完全な組織染色のさらなる確信をもたらすために主面514上で共通の縦座標を共有しないことが望ましい。
【0030】
当業者によって理解されるように、本発明では、特定の実施形態では、2つ以上の陽性対照試料が、試料固定領域の全周囲を囲む実質的に連続的な線を形成してもよいとさらに考えられている。このように、試料固定領域の周囲に境界を形成するために使用される対照試料の正確な数及び間隔は、要求に応じて選択されてもよい。
【0031】
図9に示されているように、本発明では、顕微鏡スライド610であって、第1の陽性対照試料620a及び第2の陽性対照試料620bを固定するための第1の位置及び第2の位置に加えて、顕微鏡スライド610が、第3の対照試料622a及び第4の対照試料622bを固定するための第3の位置及び第4の位置をさらに含むように設計された顕微鏡スライド610がさらに考えられている。前と同様に、同じ番号は、本発明の同じ構成要素を示している。図9に示されているように、第1の陽性対照試料620a及び第2の陽性対照試料620bは、同じ検出手段によって検出され得る共通のバイオマーカーを含む。本発明では、第3の対照試料622a及び第4の対照試料622bは、対照試料620a及び620bとは異なる共通のバイオマーカーを含んでもよいと考えられている。或いは、第3の対照試料622a及び第4の対照試料622bは、信号レベルは異なるが第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料と同じバイオマーカーを含んでもよい。また、第3の対照試料622a及び第4の対照試料622bは、第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料と同程度に陰性対照としての役割を果たしてもよい。
【0032】
図9に示されているように、スライド610は、第1の主面614を含む実質的に平面状の基板612を含み、第1の主面614は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域616を有する。第1の位置及び第2の位置は、基板の長手方向軸線に沿って長手方向に離間され、かつ長手方向軸線から横方向に(すなわち、長手方向軸線のどちらか一方の側に)又は長手方向軸線に対して離間されている。すなわち、対照試料620aは、長手方向端部617b及び縁部618bのより近くに配置されている対照試料620bに対して、長手方向端部617a及び縁部618aのより近くに配置されているように示されている。第1の位置及び第2の位置は、互いに試料固定領域616を挟んで実質的に正反対に位置する、すなわち、試料固定領域616を挟んで長手方向に離間されている。とはいえ、本発明では、正確な位置は、領域616を挟んで互いに正確に対向するように幾何学的に制限される必要はないと考えられている。同様に、第3の位置及び第4の位置は、基板の長手方向軸線に沿って長手方向に離間され、かつ長手方向軸線から横方向に(又は長手方向軸線のどちらか一方の側に)離間されている。すなわち、対照試料622aは、長手方向端部617b及び縁部618aのより近くに配置されている対照試料622bに対して、長手方向端部617a及び縁部618bのより近くに配置されているように示されている。第3の位置及び第4の位置は、互いに試料固定領域616を挟んで実質的に正反対に位置する、すなわち、試料固定領域616を挟んで長手方向に離間されている。とはいえ、本発明では、正確な位置は、領域616を挟んで互いに正確に対向するように幾何学的に制限される必要はないと考えられている。
【0033】
図10に示されているように、本発明では、顕微鏡スライド710であって、第1の陽性対照試料720a及び第2の陽性対照試料720bを固定するための第1の位置及び第2の位置並びに第3の対照試料722a及び第4の対照試料722bを固定するための第3の位置及び第4の位置に加えて、顕微鏡スライド710が、第5の対照試料724a及び第6の対照試料724bを固定するための第5の位置及び第6の位置をさらに含むように設計された顕微鏡スライド710がさらに考えられている。前と同様に、同じ番号は、本発明の他の実施形態の同じ構成要素を示している。図10に示されているように、第1の陽性対照試料720a及び第2の陽性対照試料720bは、同じ検出手段によって検出され得る共通のバイオマーカーを含む。本発明では、第3の対照試料722a及び第4の対照試料722bが、第1の対照試料720a及び第2の対照試料720bとは異なる共通のバイオマーカーを含んでもよいこと、並びに、第5の対照試料724a及び第6の対照試料724bが、さらに異なる共通のバイオマーカーを含んでもよいことが考えられている。或いは、第3の対照試料722a及び第4の対照試料722b並びに第5の対照試料724a及び第6の対照試料724bは、信号レベルは異なるが第1の陽性対照試料及び第2の陽性対照試料と同じバイオマーカーを含んでもよい。また、第3の対照試料722a及び第4の対照試料722bのペア並びに第5の対照試料724a及び第6の対照試料724bのペアの一方が、陰性対照としての役割を果たしてもよい。
【0034】
図10に示されているように、スライド710は、第1の主面714を含む実質的に平面状の基板712を含み、第1の主面714は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域716を有する。第1の位置及び第2の位置は、基板の長手方向軸線に沿って長手方向に離間され、かつ長手方向軸線から横方向に(又は長手方向軸線のどちらか一方の側に)離間されている。すなわち、対照試料720aは、長手方向端部717b及び縁部718bのより近くに配置されている対照試料720bに対して、長手方向端部717a及び縁部718aのより近くに配置されているように示されている。第1の位置及び第2の位置は、互いに試料固定領域716を挟んで実質的に正反対に位置する、すなわち、試料固定領域716を挟んで長手方向に離間されている。とはいえ、本発明では、正確な位置は、領域716を挟んで互いに正確に対向するように幾何学的に制限される必要はないと考えられている。
【0035】
第3の陽性対照試料722a及び第4の陽性対照試料722bを固定するための第3の位置及び第4の位置は、主面714上の試料固定領域716の両側にある。すなわち、これらの位置は、試料固定領域716を挟んで実質的に横方向に離間されている。対照試料722aが、試料15と基板712の縁部718aとの間に配置されている一方で、対照試料722bは、試料15と基板712の縁部718bとの間に対向して配置されている。
【0036】
第1の位置及び第2の位置と同様に、第5の位置及び第6の位置は、基板の長手方向軸線に沿って長手方向に離間され、かつ長手方向軸線から横方向に(又は長手方向軸線のどちらか一方の側に)離間されている。すなわち、対照試料724aは、長手方向端部717a及び縁部718bのより近くに配置されている対照試料724bに対して、長手方向端部717b及び縁部718aのより近くに配置されているように示されている。第5の位置及び第6の位置は、互いに試料固定領域716を挟んで実質的に正反対に位置する、すなわち、試料固定領域716を挟んで長手方向に離間されている。とはいえ、本発明では、正確な位置は、領域716を挟んで互いに正確に対向するように幾何学的に制限される必要はないと考えられている。
【0037】
上記の図9及び図10並びに以下の図12に示されているように、異なる量のバイオマーカー(例えば、抗原レベル)(前に述べた異なる種類のバイオマーカーとは対照的に)を含む2つ以上の陽性対照試料が、顕微鏡スライド上に含まれてもよい。このような実施形態では、対照試料の種類のそれぞれは、同じ対照試料のペアが、組織固定領域の一部分を挟んで配置されるように少なくともペアとして用意される。例えば、異なるレベルの抗原発現を有する異なる細胞株が、個々の細胞ペレットを作製するために選択されてもよい。或いは、異なる量の細胞を有する同じ細胞株が、異なる細胞ペレットを作製するために選択されてもよい。これらの細胞ペレットは、試料固定領域の周りに所定のパターンで配置されてもよい。このように、対照は、低レベル、中レベル、又は高レベルの特定のバイオマーカーを含んでもよい。或いは、対照は、ゼロレベル、中レベル、又は高レベルの特定のバイオマーカーを含んでもよい。これらの対照試料は、定量化され、結果が、それらの予想される細胞の発現レベル又は量と比較されてもよい。これらの結果は、顕微鏡スライド表面にわたって十分かつ均一な範囲が存在するか否か、又は、試料抗原が適切に回収されたか否か(特に、大きな組織試料のための酵素抗原回収方法において)を判定することができる。
【0038】
他の実施形態では、2つ以上の異なる種類のバイオマーカー(例えば、抗原)を含む陽性対照試料が、顕微鏡スライド上に含まれる。また、これらの実施形態では、陽性対照試料のそれぞれは、異なる抗原レベルを含んでもよい。例えば、異なるレベルのタンパク質発現を有する異なる細胞株が、個々の細胞ペレットを作製するために選択されてもよい。或いは、異なる種類の抗原を含む細胞株が選択され、異なる細胞ペレットのそれぞれが、異なる量の細胞を含むようにされてもよい。これらの細胞ペレットは、試料固定領域の周りに所定のパターンで配置されてもよい。これらの陽性対照試料は、定量化され、結果が、それらの予想される発現レベルと比較されてもよい。
【0039】
多重実験に関して、多数の細胞ペレットが、すべてのマーカーに及ぶ染色強度の範囲を確保するために使用されてもよい。このような場合、対照は、すべてのマーカーに関して空間パターンの推定を可能にするように設計されたパターンでスライド上に選択されて配列されてもよい。
【0040】
異なるバイオマーカーレベル又は異なる種類のバイオマーカーを有する陽性対照試料に加えて、さらに陰性対照試料が加えられてもよい。それゆえ、特定の実施形態では、本発明の顕微鏡スライドは、陽性対照試料及び陰性対照試料の両方を含んでもよい。したがって、本発明の顕微鏡スライドは、試料固定領域に隣接する位置で第1の主面上に固定された1つ以上の陰性対照試料を含んでもよい。
【0041】
表1は、本発明の特定の実施形態に従って細胞ペレット対照を作製することに有用な例示的な細胞株を提示している。細胞株は、異なるレベルのHER2発現を有する。
【0042】
【表1】
図11は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド810を描いている。前と同様に、同じ番号は、同じ構成要素を示している。スライド810は、第1の主面814を含む実質的に平面状の基板812を含み、第1の主面814は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域816を有する。スライド810は、8つの対照試料820a〜820hをさらに含み、8つの対照試料820a〜820hは、それぞれ、表面814上の8つの位置に配置されている。図11に示されているように、顕微鏡スライド810は、実質的に均等に離間されている細胞ペレットによって周囲に境界が形成された組織固定領域を含む。
【0043】
図12は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド910を描いており、ここでは、同じ番号は、同じ構成要素を示している。スライド910は、第1の主面914を含む実質的に平面状の基板912を含み、第1の主面914は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域916を有する。スライド910は、8つの対照試料920a〜920d及び922a〜922dをさらに含み、8つの対照試料920a〜920d及び922a〜922dは、それぞれ、表面914上の8つの位置に交互に配置されている。図12に示されているように、顕微鏡スライド910は、実質的に均等に離間されている細胞ペレットによって周囲に境界が形成された組織固定領域を含む。望ましくは、陽性対照試料920a〜920dは、同じ検出手段によって検出され得る共通のバイオマーカーを含む。同様に、対照試料922a〜922dは、920a〜920dの共通のバイオマーカーとは異なる共通のバイオマーカーを含んでもよい。或いは、対照試料922a〜922dは、検出レベルは異なるが陽性対照試料と同じバイオマーカーを含んでもよい。また、対照試料922a〜922dは、陽性対照試料920a〜920dに対して陰性対照としての役割を果たしてもよい。
【0044】
図13は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド1010を描いている。スライド1010は、第1の主面1014を含む実質的に平面状の基板1012を含み、第1の主面1014は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域1016を有する。スライド1010は、8つの陽性対照試料1020a〜1020hをさらに含み、8つの陽性対照試料1020a〜1020hは、それぞれ、表面1014上の8つの位置に配置されている。図13に示されているように、対照試料1020a、1020h、及び1020gは、組織試料15と長手方向縁部1017aとの間に配置されており、長手方向縁部1017aと平行な線分を形成している。また、対照試料1020hは、実質的に対照試料1020a及び1020gの中間に配置されている。同様に、対照試料1020c、1020d、及び1020eは、組織試料15と長手方向縁部1017bとの間に配置されており、長手方向縁部1017bと平行な線分を形成している。また、対照試料1020dは、実質的に対照試料1020c及び1020eの中間に配置されている。
【0045】
図13に示されているように、対照試料1020bは、実質的に対照試料1020a及び1020cの中間に配置されている。対照試料1020a、1020b、及び1020cは、組織試料15と縁部1018aとの間に配置されており、実質的に、縁部1018aと平行な線分を形成している。対照試料1020fは、実質的に対照試料1020e及び1020gの中間に配置されている。対照試料1020e、1020f、及び1020gは、組織試料15と縁部1018bとの間に配置されており、実質的に、縁部1018bと平行な線分を形成している。
【0046】
図14は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド1110を描いており、ここでは、同じ番号は、同じ構成要素を示している。スライド1110は、第1の主面1114を含む実質的に平面状の基板1112を含み、第1の主面1114は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域1116を有する。スライド1110は、試料固定領域1116の周りに配置された8つの陽性対照試料1120a〜1120hをさらに含む。さらに、スライド1110は、主面1114に固定された実質的に平面状のプラットフォーム1130a〜1130hを含み、プラットフォーム1130a〜1130hはそれぞれ、実質的に平面状のプラットフォーム面1132a〜1132hをそれぞれ有する。したがって、プラットフォーム面1132a〜1132hのそれぞれは、それぞれ、その上に対照試料1120a〜1120hをそれぞれ支持している。プラットフォーム面1132a〜1132hは、第1の主面1114よりも高い位置にあり、このため、対照試料1120a〜1120hがそれぞれ、成功した染色を示す場合に、組織試料15も同様に適切に染色されたことのさらにより大きな確信が得られる(特に、スライド1110が染色中に表を上に向けて配置されている(すなわち、第1の主面1114が上を向いている)ときに)。望ましくは、プラットフォーム1130a〜1130hは、組織試料よりも大きな厚さを有するが、本発明では、どんな厚さであっても染色の確信度の向上がもたらされると考えられている。
【0047】
対照試料1120a、1120h、及び1120g(並びにプラットフォーム1130a、1130h、及び1130g)は、組織試料15と長手方向縁部1117aとの間に配置されており、長手方向縁部1117aと平行な線分を形成している。また、対照試料1120hは、実質的に対照試料1120a及び1120gの中間に配置されている。同様に、対照試料1120c、1120d、及び1120e(並びにプラットフォーム1130c、1130d、及び1130e)は、組織試料15と長手方向縁部1117bとの間に配置されており、実質的に、長手方向縁部1117bと平行な線分を形成している。また、対照試料1120dは、実質的に対照試料1120c及び1120eの中間に配置されている。
【0048】
対照試料1120bは、実質的に対照試料1120a及び1120cの中間に配置されている。対照試料1120a、1120b、及び1120cは、組織試料15と縁部1118aとの間に配置されており、縁部1118aと平行な線分を形成している。対照試料1120fは、実質的に対照試料1120e及び1120gの中間に配置されている。対照試料1120e、1120f、及び1120gは、組織試料15と縁部1118bとの間に配置されており、実質的に、縁部1118bと平行な線分を形成している。
【0049】
図15は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド1210を描いており、ここでは、同じ番号は、同じ構成要素を示している。スライド1210は、貼り付けられた平面状の基板プラットフォーム1240を含む実質的に平面状の基板1212を含む。貼り付けられた基板プラットフォームは、プラットフォーム面1242及び基板1212の第1の主面1214への開放された入口(open registry)のアパーチャ1250を含む。主面1214は、アパーチャ1250を介して露出されている、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域1216を含む。スライド1212は、プラットフォーム面1242上の、アパーチャ1250の周りに配置された8つの陽性対照試料1220a〜1220hをさらに含む。アパーチャ1250及び第1の主面1214は、組織試料を固定するための平面状の凹領域を形成している。図15に示されているように、対照試料1220a、1220h、及び1220gは、組織試料15と長手方向縁部1217aとの間に配置されており、実質的に、長手方向縁部1217aと平行な線分を形成している。また、対照試料1220hは、実質的に対照試料1220a及び1220gの中間に配置されている。同様に、対照試料1220c、1220d、及び1220eは、組織試料15と長手方向縁部1217bとの間に配置されており、実質的に、長手方向縁部1217bと平行な線分を形成している。また、対照試料1220dは、実質的に対照試料1220c及び1220eの中間に配置されている。
【0050】
対照試料1220bは、実質的に対照試料1220a及び1220cの中間に配置されている。対照試料1220a、1220b、及び1220cは、組織試料15と縁部1218aとの間に配置されており、縁部1218aと平行な線分を形成している。対照試料1220fは、実質的に対照試料1220e及び1220gの中間に配置されている。対照試料1220e、1220f、及び1220gは、組織試料15と縁部1218bとの間に配置されており、縁部1218bと平行な線分を形成している。本発明では、基板プラットフォーム1240には、染色後に試料固定領域1216から染色剤を排液することを補助するためにアパーチャ1250と基板1212の縁部とを流体連通するように延在する細長い溝(図示せず)がさらに形成されてもよいとさらに考えられている。スライド1210が、主面1214が上向きの状態で染色されるとき、試料固定領域1216とプラットフォーム面1242との相対高さは、対照試料1220a〜1220hのすべてが、それらが染色されたことを示す場合に組織試料15の適切な染色のさらなる確信をもたらす。
【0051】
図16は、本発明のさらに別の顕微鏡スライド1310を描いており、ここでは、同じ番号は、同じ構成要素を示している。スライド1310は、第1の主面1314を含む実質的に平面状の基板1312を含み、第1の主面1314は、分析される組織試料15を受けるための組織試料固定領域1316を有する。スライド1310は、8つの陽性対照試料1320a〜1320hをさらに含み、8つの陽性対照試料1320a〜1320hは、それぞれ、図13のスライド1010について説明されているのと概ね同様の、表面1314上の8つの位置に配置されている。スライド1310は、主面1314に固定されたラベル1360をさらに備える。ラベル1360は、ラベル面1362を含み、ラベル面1362上には、スライド、組織試料、又は染色工程に関係する情報などの表示が印刷されている。このような表示はさらに、表面1362上に印刷されたバーコードか、又はそこに固定された別のラベルのバーコードによって提供されてもよい。図16に示されているように、ラベル1360は、長手方向縁部1317aと対照試料1320a、1320h、及び1320gとの間に位置している。本発明では、ラベル1360と同様のラベルが、本発明を具体化したスライド上に設けられてもよいと考えられている。
【0052】
別の態様において、本発明は、組織試料分析のためのキットを提供する。キットは、本発明の特定の実施形態に係る1つ以上の顕微鏡スライドを含む。スライドは、分析される組織試料を受けるように適合されている。望ましくは、スライドは、実行される分析に関係する表示を含むラベルを受けるようにさらに適合される。また、キットは、スライドについての情報を提供し、スライドの適切な使用法を指示するユーザマニュアルを含んでもよい。
【0053】
別の態様において、本発明は、本発明の態様に係る顕微鏡スライドを作製する方法であって、陽性対照試料の薄層を顕微鏡スライド上の少なくとも第1の位置及び第2の位置に移動させて固定するステップを含む方法を提供する。好ましくは、使用されるスライドは、帯電したスライドである。好ましくは、陽性対照試料の薄層を顕微鏡スライド上に移動させて固定するステップの後に、その後のベーキングステップが含まれる。
【0054】
特定の実施形態では、薄層の対照試料は、約5ミクロンの試料の切片である。
【0055】
特定の実施形態では、陽性対照試料は、細胞ペレットを含む。好ましくは、細胞ペレットは、溶融したパラフィンワックス中に懸濁された、ホルマリンで固定した細胞を含む。
【0056】
図17は、本発明の顕微鏡スライドに対照試料を固定するためのシステム1500を描いている。システム1500は、実質的に平面状のプリントヘッド面1584を有するスタンプ1582を含み、プリントヘッド面1584は、そこから突出する1つ以上のプリントヘッド1586を有する。プリントヘッド1586は、スライドの主面上に堆積されるある量の対照試料材料を保持するための平面を形成している。システム1500は、溶融したパラフィンワックス及びホルマリンで固定した細胞ペレットの懸濁液を含むリザーバ1588にプリントヘッド1586を浸漬させる。細胞ペレットは、プリントヘッド1586に付着する。次に、システム1500は、スライド1510の主面1514にスタンプ1582を移動させる。スタンプ1582は、主面1514への細胞ペレットの移動をもたらすために表面1514に接触される。プリントヘッド1586は、スライド1510の試料固定領域1516の周りの、本発明の対照試料に対応する位置に細胞ペレットを堆積させるようにプリント面1584に配列されている。当該技術分野で周知のように、スライドは、細胞ペレットの移動をより良く可能にするために帯電されてもよい。さらに、本発明では、次にスライドは、対照試料を適所に固定するためにベーキングされると考えられている。本発明では、スライドの試料固定領域の周りの他の利用可能な位置に、異なるマーカーを含む対照試料を堆積させるために異なる配列のプリントヘッドを有する異なるプリントヘッドが用いられてもよいとさらに考えられている。一般的に、堆積される細胞の厚さは、細胞の単分子層に関して約5ミクロンのオーダーであり、これは、スライドに固定される組織切片の厚さと概ね同等である。この接触印刷方法は、処理量が高く、単純で、低コストである。
【0057】
本発明のスライド上に対照試料を堆積させるための他の方法は、限定のためではなく例示のために、溶融したワックス溶液中の一定分量の、ホルマリンで固定した細胞ペレットをスライド上に加えるマイクロディスペンス技術を使用することを含む。或いは、対照試料の細胞は、スライドサイズのブロックでホルマリンで固定されてパラフィン包埋されてもよい。ブロックからのスライス全体が、スライド上に配置され、後に、試料固定領域が、機械的又は化学的な手段によって刻出されてもよい。或いはさらに、ブロックは、スライドの試料固定領域の形状のアパーチャを形成して、試料固定領域の周囲の外形部のみがスライドに適用されるようにするために中抜きされてもよい。
【0058】
別の態様において、本発明は、分析の方法を提供する。
【0059】
一実施形態では、分析の方法は、陽性対照試料のための検出手段によって本発明の実施形態に係る顕微鏡スライドを染色するステップと、少なくとも第1の位置及び第2の位置から陽性対照試料を検出するステップとを含む。
【0060】
特定の実施形態では、陽性対照試料のすべての位置からの信号の存在は、染色品質のリアルタイムの確認をもたらす。したがって、陽性対照試料のある位置からの信号の不在は、染色の失敗を示す。
【0061】
特定の実施形態では、スライドは、試料固定領域16に隣接する位置で第1の主面上に固定された1つ以上の陰性対照試料をさらに含み、この場合、陰性対照試料のある位置からの信号の存在は、染色の失敗を示す。
【0062】
特定の実施形態では、顕微鏡スライドは、組織試料をさらに含む。
【0063】
特定の実施形態では、陽性対照試料は、細胞ペレットであり、検出ステップは、細胞ペレットを含まない、画像の部分をマスクすること及び細胞ペレットの各細胞の内部のマーカーの局在を明らかにする(account for)ことを含む。好ましくは、本方法は、細胞ペレットの各細胞の核及び各細胞の各核の周りの環状領域の輪郭を描く、2つの区画への画像分割を実行するステップをさらに含む。好ましくは、本方法は、視野内の細胞ペレットの各細胞の両方の区画における各マーカーの平均染色を測定するステップ及び全体の視野メトリックを生成するためにこれらの細胞レベルメトリックを集約するステップをさらに含む。視野メトリックは、知られている細胞核マーカーの平均細胞核発現を含んでもよい。より好ましくは、本方法は、線形統計モデルの係数を調べることによってアーチファクトを検出するステップ及び線形統計モデルを用いて空間染色アーチファクトを推定するステップをさらに含み、この場合、応答は、各細胞ペレットに関する視野レベルの染色メトリックであり、予測器は、スライドの2つの空間次元である。さらにより好ましくは、本方法は、不均一な染色プロファイルを推定して取り去ることに適したモデルを使用することによって小さな空間アーチファクトを補正するステップをさらに含む。
【0064】
本発明の特定の実施形態について示し、説明してきたが、本発明の教示から逸脱することなく変更及び修正が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。以上の説明及び添付図面に記載されている主題は、限定としてではなく例示としてのみ提示されている。本発明の実際の範囲は、従来技術に基づくその適切な観点から考慮された場合の以下の特許請求の範囲において規定されることが意図されている。
図1
図2
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図5
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図10
図11
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図17