(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6540689
(24)【登録日】2019年6月21日
(45)【発行日】2019年7月10日
(54)【発明の名称】レーダーモジュール、輸送機器、及び物体識別方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/93 20060101AFI20190628BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20190628BHJP
G01S 13/34 20060101ALN20190628BHJP
【FI】
G01S13/93 220
G08G1/16 C
!G01S13/34
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-511387(P2016-511387)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015001847
(87)【国際公開番号】WO2015151507
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72291(P2014-72291)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】高田 雄二
【審査官】
▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−271559(JP,A)
【文献】
特開2008−219284(JP,A)
【文献】
特開2005−284799(JP,A)
【文献】
特表2006−500664(JP,A)
【文献】
米国特許第06377205(US,B1)
【文献】
特表2007−512989(JP,A)
【文献】
斉藤勝司,“火事から私たちを守ってくれる 火災警報器のしくみ”,子供の科学,(株)誠文堂新光社,2012年 1月10日,Volume 75, Number 2,Pages 30-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/72 − G01S 1/82
G01S 3/80 − G01S 3/86
G01S 5/18 − G01S 7/64
G01S 13/00 − G01S 17/95
B60R 21/00 − B60R 21/13
B60R 21/34 − B60R 21/38
G08G 1/00 − G08G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナと、
受信アンテナと、
送信信号を生成する信号源と、
前記送信アンテナを介して前記送信信号を目標物体に向けて送信する送信部と、
前記送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を前記受信アンテナを介して受信する受信部と、
前記受信部から出力される受信信号に基づいて信号処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で得られた情報を出力する外部インターフェースと、を備え、
前記信号処理部は、前記受信信号の受信電力の平均値と分散値を算出し、前記平均値の2乗を前記分散値で除算した判定指標が1近傍に設定される第1の基準値より小さい場合に、前記目標物体が人であると判定する、
ことを特徴とするレーダーモジュール。
【請求項2】
送信アンテナと、
受信アンテナと、
送信信号を生成する信号源と、
前記送信アンテナを介して前記送信信号を目標物体に向けて送信する送信部と、
前記送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を前記受信アンテナを介して受信する受信部と、
前記受信部から出力される受信信号に基づいて信号処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で得られた情報を出力する外部インターフェースと、を備え、
前記信号処理部は、前記受信信号の受信電力の平均値と分散値を算出し、前記信号処理部は、前記平均値の2乗から前記分散値を減算した判定指標が0近傍に設定される第2の基準値より小さい場合に、前記目標物体が人であると判定する、
ことを特徴とするレーダーモジュール。
【請求項3】
前記信号源、前記送信部、前記受信部、及び前記信号処理部が一枚の基板上に配置されたワンチップICを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のレーダーモジュール。
【請求項4】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナが形成されたプリント回路基板上に前記ワンチップIC及び前記外部インターフェースが実装され、当該プリント回路基板がシールドケースで覆われていることを特徴とする請求項3に記載のレーダーモジュール。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のレーダーモジュールと、
前記レーダーモジュールから出力された情報に基づいて、危険を回避又は軽減するための動作を行う安全運転支援動作部と、を備えることを特徴とする輸送機器。
【請求項6】
前記安全運転支援動作部は、前記レーダーモジュールから出力された情報に基づいて、当該輸送機器の停止動作を支援する停止動作部を有することを特徴とする請求項5に記載の輸送機器。
【請求項7】
前記安全運転支援動作部は、前記レーダーモジュールから出力された情報に基づいて、当該輸送機器の運転動作を支援する運転動作部を有することを特徴とする請求項5に記載の輸送機器。
【請求項8】
前記安全運転支援動作部は、前記レーダーモジュールから出力された情報に基づいて、搭乗者又は外部に対して警告を行う警告部を有することを特徴とする請求項5に記載の輸送機器。
【請求項9】
前記警告部は、表示によって警告を行う表示部を有することを特徴とする請求項8に記載の輸送機器。
【請求項10】
前記警告部は、音声によって警告を行う音声出力部を有することを特徴とする請求項8に記載の輸送機器。
【請求項11】
前記警告部は、臭気を発することによって警告を行う臭気発生部を有することを特徴とする請求項8に記載の輸送機器。
【請求項12】
前記警告部は、搭乗者に触覚変化をもたらすことによって警告を行う刺激発生部を有することを特徴とする請求項8に記載の輸送機器。
【請求項13】
前記警告部は、警告を示す情報を無線で送信する無線通信部を有することを特徴とする請求項8に記載の輸送機器。
【請求項14】
所定の送信信号を送信し、前記送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を受信するレーダー装置における物体識別方法であって、
前記反射信号に基づく受信電力を取得する第1ステップと、
前記受信電力の平均値を算出する第2ステップと、
前記受信電力の分散値を算出する第3ステップと、
前記平均値と前記分散値を用いて前記目標物体を識別する第4ステップと、を備え、
前記第4ステップにおいて、前記平均値の2乗を前記分散値で除算した判定指標が1である場合に、前記目標物体が人であると判定する、
ことを特徴とする物体識別方法。
【請求項15】
所定の送信信号を送信し、前記送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を受信するレーダー装置における物体識別方法であって、
前記反射信号に基づく受信電力を取得する第1ステップと、
前記受信電力の平均値を算出する第2ステップと、
前記受信電力の分散値を算出する第3ステップと、
前記平均値と前記分散値を用いて前記目標物体を識別する第4ステップと、を備え、
前記第4ステップにおいて、前記平均値の2乗から前記分散値を減算した判定指標が0である場合に、前記目標物体が人であると判定する、
ことを特徴とする物体識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波を使用したレーダーモジュール、レーダーモジュールを搭載した輸送機器、及び物体識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報通信技術を利用して道路交通上の問題解決を図る高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)の開発が進めされている。この分野では、例えば、センサーによって自動車の周囲環境(例えば、周囲の自動車や歩行者、障害物等)を検出し、検出結果に基づいて危険を回避又は軽減するための安全支援動作(例えば警告、ブレーキ制御等)を行う技術が実用化されている。
【0003】
このセンサーの1つとして、波長が1〜10mm(周波数:30〜300GHz)のミリ波を使用するレーダー(いわゆるミリ波レーダー)が知られている。ミリ波レーダーは電波を使用するため、雨や霧などの悪天候下でも一定の感度を確保できるという利点がある。ミリ波レーダーは、自動車の周囲に送信信号(電波)を送信し、検出対象の物体(以下「目標物体」)で反射した反射信号(反射波)を受信して解析することにより、周囲環境に関する情報(目標物体の位置(距離、方位)、相対速度等)を取得することができる。
【0004】
ミリ波センサーは、自動車事故を回避することを目的として、主に車両検知用として普及してきた。さらに近年では、自動車等の人工物と歩行者(人)を分離して検出すべく、広帯域の79GHz帯(77〜81GHz)のミリ波を使用した高分解能のミリ波レーダーが実用化されている。例えば特許文献1、2には、反射信号の受信電力のばらつき(分散、標準偏差など)を利用して、人であるか否かを判断する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−167554号公報
【特許文献2】特開2013−96915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2では、反射信号の受信電力のばらつき(例えば分散値)が、基準値と比較して大きければ、目標物体が人であると判断する。しかしながら、受信電力のばらつきは、信号量とノイズ量の比(SNR:Signal to Noise Ratio)によって変化する。例えば、目標物体が人工物であっても、低SNR環境では受信電力のばらつきは大きくなる。そのため、基準値の適切な設定が困難であり、目標物体が人工物であるにもかかわらず、人であると誤検知される虞がある。
【0007】
本発明の目的は、低SNR環境であっても目標物体が人であるか否かを精度よく識別できるレーダーモジュール、輸送機器、及び物体識別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るレーダーモジュールは、送信アンテナと、
受信アンテナと、
送信信号を生成する信号源と、
前記送信アンテナを介して前記送信信号を目標物体に向けて送信する送信部と、
前記送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を前記受信アンテナを介して受信する受信部と、
前記受信部から出力される受信信号に基づいて信号処理を行う信号処理部と、
前記信号処理部で得られた情報を出力する外部インターフェースと、を備え、
前記信号処理部は、前記受信信号の受信電力の平均値と分散値を算出し、算出された平均値と分散値を用いて、前記目標物体を識別することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る輸送機器は、上記のレーダーモジュールと、
前記レーダーモジュールから出力された情報に基づいて、危険を回避又は軽減するための動作を行う安全運転支援動作部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る物体識別方法は、所定の送信信号を送信し、前記送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を受信するレーダー装置における物体識別方法であって、
前記反射信号に基づく受信電力を取得する第1ステップと、
前記受信電力の平均値を算出する第2ステップと、
前記受信電力の分散値を算出する第3ステップと、
前記平均値と前記分散値を用いて前記目標物体を識別する第4ステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、人のRCSが指数分布になることを利用し、反射波の受信電力の平均値と分散値を用いて目標物体を識別するので、低SNR環境であっても目標物体が人であるか否かを精度よく識別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る自動車の安全運転支援に関する制御系のブロック図である。
【
図2】レーダーモジュールの検知範囲を示す図である。
【
図3】自動車に搭載されるレーダーモジュールのブロック図である。
【
図4】人判定部における物体識別処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】目標物体が人である場合と人工物である場合の判定指標の変化を示す図である。
【
図6】目標物体が人である場合と人工物である場合の受信電力の測定結果(分布状態)を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態では、本発明に係る輸送機器として自動車を例に挙げて説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動車1の安全運転支援に関する制御系のブロック図である。
図1に示すように、自動車1は、レーダーモジュール10及び安全運転支援動作部20を備える。
【0015】
レーダーモジュール10は、例えば79GHz帯のミリ波を利用するFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のミリ波レーダーである。レーダーモジュール10は、例えば
図2に示すように、自動車の前バンパーや後バンパーに配置される。
図2には、前バンパーの車幅方向中央部、及び後バンパーの車幅方向両側部にレーダーモジュール10を配置した場合の検知範囲を示している。これにより、運転者の死角に存在する目標物体を検知することができる。
【0016】
レーダーモジュール10は、自動車1の周囲環境(例えば、周囲の自動車や歩行者、障害物等)を検知し、周囲環境に関する情報を安全運転支援動作部20に出力する。周囲環境に関する情報には、目標物体の有無、目標物体までの距離、及び目標物体の識別結果(人であるか否か)が含まれる。
【0017】
安全運転支援動作部20は、レーダーモジュール10から出力された周囲環境に関する情報に基づいて、危険を回避又は軽減するための安全運転支援動作を行う。具体的な安全運転支援動作については後述する。
【0018】
図3は、自動車1に搭載されるレーダーモジュール10のブロック図である。
図3に示すように、レーダーモジュール10は、信号源11、送信部12、送信アンテナ13、受信アンテナ14、受信部15、信号処理部16、及び外部インターフェース17等を備える。
【0019】
レーダーモジュール10においては、信号源11、送信部12、受信部15、信号処理部16、及びI/Oポート(図示略)が一枚の基板上に配置されたワンチップICを適用できる。送信アンテナ13及び受信アンテナ14は、例えばプリント回路基板上に形成された銅箔パターンによって構成される。送信アンテナ13及び受信アンテナ14を有するプリント回路基板に、信号源11等を有するワンチップIC、IC外付け部品、及び外部インターフェース17等が実装される。そして、このプリント回路基板がシールドケースで覆われることにより、レーダーモジュール10が構成される。
【0020】
信号源11は、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)の制御電圧に三角波の変調信号を加えることにより、周波数変調(FM:frequency modulation)された送信信号を生成する。
送信部12は、例えば送信信号を送信アンテナ13に出力するとともに、送信信号の一部を受信部15に分配する方向性結合器を含む。
送信アンテナ13は、送信信号を自動車1の周囲に送信波として放射する。送信波は目標物体に到達すると、目標物体の反射率に応じて反射する。
【0021】
受信アンテナ14は、目標物体で反射して生成される反射信号を受信し、受信部15に出力する。
受信部15は、例えば受信アンテナ14から出力された反射信号と、送信部12(方向性結合器)から出力された送信信号とを混合して、ビート信号(受信信号)を生成するミキサーを含む。受信部15は、生成したビート信号を信号処理部16に出力する。
【0022】
信号処理部16は、周波数解析部161、物体検知部162、及び人判定部163を有する。
周波数解析部161は、AD変換器(図示略)でデジタル化されたビート信号に対して高速フーリエ変換(FFT:Fast Fourier Transform)等の処理を実行して、周波数解析を行う。
物体検知部162は、周波数解析部161で算出されたビート信号の周波数分布(ビート周波数のピーク)に基づいて、目標物体を検知するとともに、検知された目標物体までの距離及び目標物体との相対速度を算出する。
人判定部163は、目標物体が検知されたビート信号の受信電力に基づいて、検知された目標物体が人であるか否かを判定する。人判定部163における物体識別処理については後述する。
信号処理部16で生成された周囲環境に関する情報は、外部インターフェース17を介して安全運転支援動作部20に出力される。
【0023】
図4は、人判定部163における物体識別処理の一例を示すフローチャートである。
図4に示す物体識別処理は、例えば物体検知部162において新たに目標物体が検知されることに伴い開始される。なお、信号処理部16に入力されたビート信号は所定期間、記憶部(図示略)に記憶されるものとする。
【0024】
ステップS101において、人判定部163は、目標物体が検知されたビート信号の受信電力P
rを複数取得する。受信電力P
rの安定した分布を得るためには、取得データ数は7個以上であることが好ましい。
ステップS102において、人判定部163は、受信電力P
rの平均値Eを算出する。
ステップS103において、人判定部163は、受信電力P
rの分散値Vを算出する。
【0025】
ステップS104において、人判定部163は、平均値Eの2乗と分散値Vを比較する。平均値Eの2乗を分散値Vで除算した判定指標E
2/Vが第1の基準値S1よりも小さい場合、処理はステップS105に移行する。判定指標E
2/Vが第1の基準値S1以上の場合、処理はステップS106に移行する。「第1の基準値S1」は、判定指標E
2/Vによって目標物体を識別するためのものであり、1近傍に設定される。
【0026】
ステップS105において、人判定部163は、検知された目標物体は「人」であると判定する。
ステップS106において、人判定部163は、検知された目標物体は「人工物」であると判定する。
【0027】
ところで、自由空間におけるレーダーの受信電力P
rは、下式(1)で表される。
【0029】
式(1)において、レーダー反射断面積(RCS:Radar Cross Section)σ以外の項は一定値であると考えられるので、受信電力P
rはRCSに比例する。目標物体が人である場合、人の表面は振動しているので、RCSは一定値とならずに変動する。RCSが指数分布に従うと仮定すると、受信電力P
rも指数分布に従う。なお、目標物体が人である場合の受信電力P
rが指数分布に近くなることは実験により確認されている。
【0030】
図6は、目標物体が人である場合と人工物(ここではリフレクター)である場合の受信電力の測定結果(分布状態)を示すヒストグラムである。
図6より、リフレクターの測定データの分布はライス分布に近く、人の測定データの分布はレイリー分布に近いことが分かる。これより、目標物体が人である場合の受信電力P
rは指数分布に従うと考えてよい。
【0031】
したがって、目標物体が人である場合、理想的には受信電力P
rの平均値Eの2乗と分散値Vは等しく、E
2/V=1となる。この関係は、
図5に示すようにSNRによらず一定である。
【0032】
一方、目標物体が人以外の人工物(車両等)である場合、RCSは一定値になると考えられる。この場合、受信電力P
rのばらつきはSNRに応じて変動し、受信電力P
rの平均値Eの2乗は分散値Vよりも明らかに大きく、E
2/V>1となる(
図5参照)。
【0033】
これより、受信電力P
rの平均値Eの2乗と分散値Vの比E
2/Vを判定指標として用いることにより、目標物体が人であるか人以外の人工物であるかを精度よく判定することができる。また、
図5に示すように、目標物体が人である場合の判定指標E
2/Vと目標物体が人工物である場合の判定指標E
2/Vとは大きく乖離するので、適切な第1の基準値S1を容易に設定することができる。
【0034】
このように、レーダーモジュール10は、送信アンテナ13と、受信アンテナ14と、送信信号を生成する信号源11と、送信アンテナ13を介して送信信号を目標物体に向けて送信する送信部12と、送信信号が目標物体で反射して生じる反射信号を受信アンテナ14を介して受信する受信部15と、受信部15から出力される受信信号(ビート信号)に基づいて信号処理を行う信号処理部16と、信号処理部16で得られた情報を出力する外部インターフェース17と、を備える。信号処理部16(人判定部163)は、受信信号の受信電力P
rの平均値Eと分散値Vを算出し、算出された平均値Eと分散値Vを用いて、目標物体を識別する。
具体的には、信号処理部16(人判定部163)は、受信電力P
rの平均値Eの2乗と分散値Vを比較して、平均値Eの2乗を分散値Vで除算した判定指標E
2/Vが1近傍に設定される第1の基準値S1よりも小さい場合に、目標物体が人であると判定する。
【0035】
レーダーモジュール10によれば、人のRCSが指数分布になることを利用し、受信信号の受信電力P
rの平均値Eと分散値Vを用いて目標物体を識別するので、低SNR環境であっても目標物体が人であるか否かを精度よく識別することができる。
【0036】
レーダーモジュール10の人判定部163で得られた目標物体の識別結果は、目標物体の有無、目標物体までの距離等とともに、周囲環境に関する情報として安全運転支援部20に出力される。安全運転支援動作部20は、周囲環境に関する情報に基づいて、危険を回避又は軽減するための安全運転支援動作を行う。
【0037】
図1に示すように、安全運転支援動作部20は、停止動作部21、運転動作部22、及び警告部23を有する。
停止動作部21は、周囲環境に関する情報に基づいて、自動車1の停止動作を支援する。具体的には、停止制御部211の制御下で、ブレーキ212が動作し、自動車1を自動的に減速又は停止させる。これにより、速やかに危険を回避することができる。
【0038】
運転動作部22は、周囲環境に関する情報に基づいて、自動車1の運転動作を支援する。具体的には、運転制御部221の制御下で、ハンドル222が動作し、自動車1の走行方向を自動的に変更する。これにより、速やかに危険を回避することができる。
【0039】
警告部23は、周囲環境に関する情報に基づいて、搭乗者又は外部に対して警告を行う。具体的には、警告制御部231の制御下で、シートベルト232が自動的に巻き上げられ、搭乗者に刺激を与える。搭乗者は、シートベルト232による触覚変化を知覚することで、危険を察知することができる。
【0040】
また、警告制御部231の制御下で、シート233が振動し、搭乗者に刺激を与える。搭乗者は、シート233による触覚変化を知覚することで、危険を察知することができる。
【0041】
また、警告制御部231の制御下で、表示部234が表示によって警告を行う。表示部234としては、例えば、カーナビゲーションシステム等の液晶ディスプレイ、フロントガラス、搭乗者が装着しているメガネ又はヘッドアップディスプレイ、又はバックモニター等を適用できる。
表示部234は、例えば人がいる方向を表示部234に2D表示したり、人までの距離に応じて表示部234の表示色(背景色など)を変更したりする(安全:青→黄→赤:危険)ことにより、搭乗者に対して警告を行う。搭乗者は、視覚によって危険を察知することができる。
【0042】
また、警告制御部231の制御下で、音声出力部(スピーカー)235が音声によって警告を行う。搭乗者は、聴覚によって危険を察知することができる。
【0043】
また、警告制御部231の制御下で、無線通信部236が搭乗者又は歩行者が所持する携帯端末(例えばスマートフォン)に対して警告情報を送信する。警告情報を受信した携帯端末では、表示又は音声によって警告が行われる。搭乗者又は歩行者は、自身が所持する携帯端末からの伝達情報によって危険を察知することができる。
【0044】
また、警告制御部231の制御下で、臭気発生部237が臭気を発生する。搭乗者は、嗅覚によって危険を察知することができる。
【0045】
さらには、ヘッドライトのパッシングやクラクションによって周囲に危険を察知させるようにしてもよい。また、目標物体までの距離や目標物体がある方向に合わせてヘッドライトの照射態様を変化させるようにしてもよい。
【0046】
自動車1においては、周囲環境に関する情報に基づいて、安全運転支援動作部20が上述したような動作を行うので、自車の安全性はもちろん、他車及び歩行者の安全性も格段に向上する。
【0047】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、目標物体が人であると判定するための判定指標として、受信電力P
rの平均値Eの2乗から分散値Vを減算した値(E
2−V)を用いることもできる。この場合、判定指標(E
2−V)が0近傍に設定される第2の基準値より小さい場合に、目標物体が人であると判定される。
ただし、目標物体が人である場合の判定指標(E
2−V)と目標物体が人工物である場合の判定指標(E
2−V)の乖離幅は、E
2/Vを判定指標とした場合よりも小さく、適切な第2の基準値の設定が難しくなるので、判定指標としてはE
2/Vを用いることが好ましい。
【0048】
また、レーダーモジュール10には、パルス方式、FSK(Frequency Shift Keying)等、FMCW方式以外の方式を適用してもよい。
また、本発明に係るレーダーモジュールは、自動車の他、鉄道車両、船舶、飛行機等の輸送機器、又は道路に設置される路側機に搭載することができる。輸送機器には、その他のレーダーモジュール(例えば76GHzミリ波レーダー)やステレオカメラ等のセンサーを組み合わせて搭載してもよい。複数のセンサーを搭載することにより、輸送機器の周囲環境をさらに的確に把握することができる。
【0049】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0050】
2014年3月31日出願の特願2014−072291の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0051】
1 自動車(輸送機器)
10 レーダーモジュール
11 信号源
12 送信部
13 送信アンテナ
14 受信アンテナ
15 受信部
16 信号処理部
17 外部インターフェース
20 安全運転支援動作部
161 周波数解析部
162 物体検知部
163 人判定部